JP5622719B2 - リポソーム組成物の製造方法 - Google Patents
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Description
脂溶性化合物をリポソームへ封入する場合、比較的容易に高い封入率を達成できるが、アムホテリシンB(リポソーム医薬品アンビゾームの主薬)のような膜親和性の非常に高い化合物の場合を除き、一般的に血漿中での保持安定性は低く、体内動態が十分に改善されることは難しい。水溶性化合物のリポソームへの封入方法にはリピドフィルム法(ボルテックス法)、逆相蒸発法、界面活性剤除去法、凍結融解法やリモートローディング法(pH勾配法、イオン勾配法)等様々な方法がある。しかしながら、100%近い高い封入率が得られるのはリモートローディング法のみであり、その他の方法では5〜30%程度の封入率しか得られない。
pH勾配法によりリポソームに封入される化合物の一例として、例えば、ドキソルビシン(DOX、pKa:8.2)が挙げられる。pH4の緩衝液によりリポソーム溶液を調製した後に、リポソーム外相をpH7の緩衝液に置換する。このリポソーム溶液にDOXを加えた場合、加えられたpH7の溶液中では分子型のDOXは脂溶性となるため、水相ではなくリポソーム膜に移行する。さらにリポソーム膜に移行したDOXがpH4のリポソーム内相と接触した場合、イオン型となりリポソーム内相に溶け込んでいく。このように、解離平衡の移動によってDOXはリポソーム外相から内相に輸送される(非特許文献1、非特許文献2、および特許文献1を参照。)。
非特許文献3には、コレステロールフリーリポソームという特別な組成のリポソームにおいてpH勾配法を行う際に、リポソーム外相に活性化合物と共にエタノールを添加することで、活性化合物の封入率を向上させる技術が開示されている。
特許文献2には、pH勾配に加えて、リポソーム内相に銅イオンを存在させることで、活性化合物の封入率を向上させる技術が開示されている。
特許文献4には、硫酸アンモニウムによるイオン勾配に加えて、リポソーム外相に活性化合物と共にボロン酸を添加することで、リポソーム内に活性化合物を取り込む技術が開示されている。
また、特許文献5には、硫酸アンモニウムによるイオン勾配に変えて、グルクロン酸アニオンによるイオン勾配を利用して活性化合物をリポソームに取り込むことで、硫酸アンモニウムを利用した場合に比べて、活性化合物の放出速度を向上させる技術が開示されている。
非特許文献5では、難水溶性化合物であるベタメタゾンを数種類のCyD誘導体を用いて予め可溶化し、リピドフィルム法によってリポソーム内に封入している(封入率は3%以下)。ベタメタゾンとの会合定数が高いCyD誘導体を用いることで、保持安定性が高まり徐放効果が得られることが示されている。
また、非特許文献6では、難水溶性化合物であるケトプロフェンをHP−β−シクロデキストリンで予め可溶化しており、得られた複合体に対して種々の封入法が試みられている。MLV(multilamellar vesicles)では約75%と比較的高い封入率を達成しているが、EPR効果を狙う際に用いるSUV(small unilamellar vesicles)では約55%の封入率に留まる。しかしながら、当該文献で用いられている封入方法でリポソーム内相にこのような高い封入率で封入するのは理論的に不可能であり、ケトプロフェンがリポソーム内水相ではなく脂質二重層に分配している可能性が高い。
さらに、非特許文献7では、予めプレドニゾロンとCyDの複合体を作成し、凍結融解法でリポソーム内へ封入すると、水溶性物質のリポソーム膜透過性が上がることが開示されている。
非特許文献8では、DOXのみを封入したリポソームよりもDOXとγ−シクロデキストリンの複合体を封入したリポソームの方が高い腫瘍内DOX濃度と抗腫瘍効果を示すことが開示されている。当該文献においても、予めDOXとγ−シクロデキストリンとの複合体を形成し、この複合体をリポソームに内包させている。同様に、特許文献6には、予め水溶性化合物とCyDとの複合体を形成し、この複合体をリポソームに内包させることで、活性化合物の放出を徐放化する技術が開示されている。
[1]
リポソーム組成物を製造する方法であって、
リポソームを含み、リポソーム内相にシクロデキストリンをさらに含むリポソーム分散液を供するステップと、
前記リポソーム分散液と活性化合物とを混合するステップと、
前記リポソーム分散液のリポソーム内相に前記活性化合物を導入するステップと、
を含む方法。
[2]
前記リポソーム分散液が、リポソーム外相と比べてより高濃度のシクロデキストリンをリポソーム内相に含む、[1]に記載の方法。
[3]
前記リポソーム分散液が、シクロデキストリンをリポソーム外相に実質的に含まない、[1]または[2]に記載の方法。
[4]
前記リポソーム分散液を供するステップが、
リポソームを含み、リポソーム内相およびリポソーム外相に前記シクロデキストリンをさらに含むリポソーム準備液を供するステップと、
前記リポソーム準備液のリポソーム外相を置換または希釈することにより、リポソーム外相における前記シクロデキストリンの濃度を調整するステップと
を含む、[1]〜[3]のいずれかに記載の方法。
[5]
前記導入するステップが、混合するステップにより得られた混合液におけるリポソームの膜透過性を上げるステップを含む、[1]〜[4]のいずれかに記載の方法。
[6]
前記導入するステップが、前記混合液をリポソームの脂質二重膜の相転移温度以上に昇温するステップを含む、[1]〜[5]のいずれかに記載の方法。
[7]
[1]〜[6]のいずれかに記載の方法で製造されたリポソーム組成物。
[8]
前記活性化合物が抗腫瘍剤である、[7]に記載のリポソーム組成物。
[9]
リポソームを含み、リポソーム内相にシクロデキストリンおよび活性化合物をさらに含むリポソーム組成物であって、活性化合物が(8E、12E、14E)−7−{(4−シクロヘプチルピペラジン−1−イル)カルボニル}オキシ−3、6、16、21−テトラヒドロキシ−6、10、12、16、20−ペンタメチル−18、19−エポキシトリコサ−8、12、14−トリエン−11−オリド(E7107)、エリブリン、ドキソルビシン、エピルビシン、ピラルビシン、ダウノルビシン、ドセタキセルおよびパクリタキセルならびにこれらの薬理学的に許容される塩からなる群から選択される、リポソーム組成物。
[10]
前記活性化合物がメシル酸エリブリンである、[9]に記載のリポソーム組成物。
[11]
前記リポソーム組成物が固体状または液体状である、[7]〜[10]のいずれかに記載のリポソーム組成物。
[12]
リポソーム内相に活性化合物を含むリポソーム組成物を調製するためのキットであって、リポソームを含み、リポソーム内相にシクロデキストリンをさらに含むリポソーム試薬を含む、キット。
[13]
前記リポソーム試薬が固体状または液体状である、[12]に記載のキット。
[14]
前記リポソーム試薬を含み、活性化合物をさらに含む、[12]または[13]に記載のキット。
[15]
前記活性化合物が抗腫瘍剤である、[14]に記載のキット。
本発明において参照される文献に開示されている内容は、本発明に参照として取り込まれる。
「リポソーム」とは、脂質二重層により包囲された内相を有する微細閉鎖小胞を意味する。本発明において、リポソームは、小さな1枚膜リポソーム(SUV:small unilamellar vesicle)、大きな1枚膜リポソーム(LUV:large unilamellar vesicle)、さらに大きな1枚膜リポソーム(GUV:giant unilamellar vesicle)、同心円状の複数の膜を有する多重層リポソーム(MLV:multilamellar vesicle)、同心円状でなく不規則に複数の膜を有するリポソーム(MVV:Multivesicular vesicle)等を含む。
「リポソーム内相」は、リポソームの脂質二重層に包囲された水性領域を意味し、「内水相」および「リポソーム内水相」と同義で用いる。「リポソーム外相」は、リポソームが液体中に分散している場合に、リポソームの脂質二重層に包囲されていない領域(すなわち、内相および脂質二重層以外の領域)を意味する。
「リポソーム分散液」とは、リポソームを含み、リポソーム内相にシクロデキストリンをさらに含む組成物であって、リポソーム外相のシクロデキストリン濃度は調整されているが、リポソーム内相に活性化合物が導入される前の組成物を意味する。リポソーム外相におけるシクロデキストリンの濃度の調整については後述するが、リポソーム分散液としては、リポソーム外相のシクロデキストリン濃度が、リポソーム内相の濃度よりも低い分散液や、リポソーム外相にシクロデキストリンが実質的に含まれない分散液が挙げられる。
なお、シクロデキストリンによる活性化合物の溶解度(みかけの溶解度)の向上が有意に認められる場合、シクロデキストリンを実質的に含むと言い、リポソーム外相が、シクロデキストリンを実質的に含まないとは、リポソーム外相が、シクロデキストリンによる活性化合物の溶解度(みかけの溶解度)の向上が有意に認められる量のシクロデキストリンを含まないことを意味する。
「リポソーム準備液」とは、リポソームを含み、リポソーム内相およびリポソーム外相にシクロデキストリンをさらに含む組成物であって、リポソーム外相のシクロデキストリン濃度が調整される前の組成物を意味する。
「リポソーム試薬」とは、液体状の場合、リポソーム分散液を意味し、固体状の場合は、所定の溶媒に溶解または懸濁することでリポソーム分散液を得ることのできる試薬を意味する。溶媒については後述する。後述するように、固体状のリポソーム試薬は、例えばリポソーム分散液を乾燥させることで得られる。
なお、本明細書において、固体と液体を混合するとは、固体を液体に溶解することと懸濁することとを包含するものとし、混合、溶解、懸濁は互いに交換可能に用いる。同様に、溶媒と分散媒も互いに交換可能に用いる。
本発明における活性化合物は、シクロデキストリンと複合体を形成する化合物であれば特に限定されるものではない。活性化合物は、医薬(診断薬を含む)、化粧料、食品などの分野において用いられる化合物から選択することができる。活性化合物は、1種の化合物または2種以上の化合物の組み合わせであってもよい。
活性化合物としては、低分子化合物等が挙げられ、中でも、抗腫瘍剤、抗菌剤、抗炎症剤、抗心筋梗塞剤、造影剤として用いられる化合物が好適である。
活性化合物は、分子量が100〜2000であるものが好ましく、200〜1500であるものがより好ましく、300〜1000であるものがさらに好ましい。一般にこれらの範囲において、活性化合物のリポソーム膜透過性が良好であり、好適に本発明を適用できる。
また、後述するように本発明は、活性化合物とシクロデキストリンとの相互作用を利用するものであり、シクロデキストリンの存在下で、シクロデキストリンの非存在下よりも溶解度(みかけの溶解度)が上昇する活性化合物であれば、本発明を適用することができる。理論に拘束されるものではないが、活性化合物の分子全体または分子の一部がシクロデキストリンの環状構造内部(空孔)に包接されることにより、活性化合物の溶解度(みかけの溶解度)が、シクロデキストリンを含まない水または水性溶媒中での溶解度よりも上昇すると考えられる。例えば、α−シクロデキストリンの空孔内径は0.45〜0.6nm、β−シクロデキストリンの空孔内径は0.6〜0.8nm、γ−シクロデキストリンの空孔内径は0.8〜0.95nmと言われており、活性化合物が、これら空孔内径と相互作用(包接)できる領域(特に疎水性領域)を有している場合、活性化合物はシクロデキストリン存在下で溶解度が上昇すると考えられる。
また、近年は、ヒドロキシ−β−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、スルフォブチルエーテル−β−シクロデキストリンのようなシクロデキストリンが入手可能であり、これらシクロデキストリンでも活性化合物の溶解度を上昇させることができる。しかしながら、これらシクロデキストリンの場合には、活性化合物の溶解度上昇は必ずしもシクロデキストリンの環状構造内部(空孔)への包接によるものではなく、ヒドロキシ基やスルフォブチルエーテル基との分子間相互作用によるものであることが知られている。本発明においては、このような分子間相互作用に基づく溶解度上昇でもよい。
本発明において、シクロデキストリンは、活性化合物と複合体を形成するものであれば、特に限定されるものではない。シクロデキストリンは、複数のグルコース単位が環状にα−(1,4)−結合したものであり、種々の置換基を有してもよい。6〜8個のグルコース単位により構成されるシクロデキストリン(それぞれα、β、γ−シクロデキストリンと呼ばれる。)およびこれらの誘導体が安定であり好ましい。
また、シクロデキストリンは、活性化合物との会合定数の大きいものが好ましい。例えば、活性化合物の大きさに応じてシクロデキストリンにおけるグルコース単位の数を選択することでより高い会合定数を得ることができる。また、会合定数がpHに依存する場合には、リポソーム内相のpHにおける会合定数が大きくなるようシクロデキストリンを選択することが好ましい。これらによりシクロデキストリン存在下での活性化合物の溶解度(みかけの溶解度)をより向上させることができる。具体的には、活性化合物とシクロデキストリンの会合定数が、100以上であることが好ましく、1000以上であることがより好ましい。
さらに、目的に応じて、シクロデキストリン自体の安全性や使用実績などに応じて好ましいシクロデキストリンを選択することができる。
これらのうち、水溶性の高いシクロデキストリン類が好ましいが、より好ましくはα−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、HP−α−シクロデキストリン、HP−β−シクロデキストリン、HP−γ−シクロデキストリン、G2−β−シクロデキストリン、SBE−β−シクロデキストリンであり、更に好ましくはα−シクロデキストリン、HP−β−シクロデキストリン、SBE−β−シクロデキストリンを挙げることができる。
本発明のリポソームは、膜構成成分として、リン脂質および/またはリン脂質誘導体を含むことが好ましい。リン脂質およびリン脂質誘導体としては、例えば、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、カルジオリピン、スフィンゴミエリン、セラミドホスホリルエタノールアミン、セラミドホスホリルグリセロール、セラミドホスホリルグリセロールホスファート、1,2−ジミリストイル−1,2−デオキシホスファチジルコリン、プラスマロゲン、ホスファチジン酸等を挙げることができる。リン脂質およびリン脂質誘導体は、これらのうち1種または2種以上の組み合わせであってもよい。
リン脂質およびリン脂質誘導体における脂肪酸残基は特に限定されないが、例えば、炭素数12〜20の飽和または不飽和の脂肪酸残基を挙げることができ、具体的には、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸等の脂肪酸由来のアシル基を挙げることができる。また、卵黄レシチン、大豆レシチン等の天然物由来のリン脂質、および不飽和脂肪酸残基に部分的にまたは完全に水素添加した部分水素添加卵黄レシチン、(完全)水素添加卵黄レシチン、部分水素添加大豆レシチン、(完全)水素添加大豆レシチン等を用いることもできる。
リポソームを調製する際に用いるリン脂質および/またはリン脂質誘導体の配合量(モル分率)は、特に限定されないが、リポソーム膜成分全体に対して10〜80%が好ましく、30〜60%がより好ましい。
リポソームを調製する際に用いるこれらステロール類の配合量(モル分率)は、特に限定されないが、リポソーム膜成分全体に対して、1〜60%が好ましく、10〜50%がより好ましく、30〜50%がさらに好ましい。また、脂肪酸類の配合量(モル分率)は、特に限定されないが、リポソーム膜成分全体に対して、0〜30%が好ましく、0〜20%がより好ましく、0〜10%がさらに好ましい。酸化防止剤の配合量(モル分率)は酸化防止効果が得られる量が添加されれば十分であるが、リポソーム膜成分全体の0〜15%が好ましく、0〜10%がより好ましく、0〜5%がさらに好ましい。
機能性脂質として、血中滞留性脂質誘導体、温度変化感受性脂質誘導体、pH感受性脂質誘導体等を挙げることができる。修飾脂質として、PEG化脂質、糖脂質、抗体修飾脂質、ペプチド修飾脂質等が挙げられる。
リポソームを調製する際に用いる機能性脂質または修飾脂質の配合量(モル分率)は、特に限定されないが、リポソーム膜構成成分脂質全体の0〜50%が好ましく、0〜30%がより好ましく、0〜20%がさらに好ましい。
上記した通り、リポソームは脂質二重層により包囲された内相を有する微細閉鎖小胞である。
理想的には、リポソームは、a)リポソーム準備液の外相を置換又は希釈した後では、シクロデキストリンがリポソーム内相から外相には漏れ出ないバリア能を有しており、b)活性化合物をリポソーム外相から内相に導入するステップでは活性化合物を透過させ、しかもシクロデキストリンが外相には漏れ出ないバリア能を同時に併せ持つ膜透過性を有し、c)活性化合物を内相にいったん封入した後では、活性化合物とシクロデキストリンとの複合体(「活性化合物/シクロデキストリン複合体」とも記す)ならびに仮に存在する場合はフリーの(複合体を形成していない)活性化合物およびシクロデキストリンのいずれもリポソーム外相には漏れ出ないバリア能を有していることが好ましい。また、医薬として用いる場合、リポソームは生体内で安定であることが好ましく、また、リポソームは、生体に投与した際に血中では活性化合物/シクロデキストリン複合体ならびに仮に存在する場合はフリーの活性化合物およびシクロデキストリンのいずれもリポソーム外相には漏れ出ないバリア能を有することが好ましい。
実用可能なレベルでこのような膜透過性を有するリポソームのための膜構成成分の組成は、当業者であれば、必要に応じて後述する実施例を参照することで、活性化合物やシクロデキストリン、標的組織などに応じて適宜設定することができる(菊池寛他、「リポソームI−調製法と検定法−」、細胞工学, (1983), 2(9):pp.1136-1149および当該文献に引用される文献等参照)。
理論に拘束されるものではないが、このように、シクロデキストリンは、それ自身のリポソーム膜透過性が十分に低い性質のみならず、活性化合物と複合体を形成することで、シクロデキストリンの溶解度(みかけの溶解度)を上昇させ、さらに活性化合物と複合体を形成することで、活性化合物のリポソーム膜透過性を低下させる性質を有し、偶然ではあるが、本発明によるリポソームによる活性化合物の封入および保持にとって理想的な性質を有する。
また、リポソーム組成物は固形癌などの標的組織へのターゲティングばかりでなく、血液癌などへの活性化合物の送達にも用いることができ、血中での徐放性製剤(slow release formulation)や放出制御製剤(controlled release formulation)等として用いることも可能である。
なお、本発明において、リポソームの粒子径は、動的光散乱法(準弾性光散乱法)による重量平均粒子径を意味する。ここでは動的光散乱(Dynamic Light Scattering)測定器(例えば、Malvern Instruments Ltd社製Zetasizer Nano ZSモデルや大塚電子株式会社製ELS-8000)により測定された粒子径を示す。測定器は粒子のブラウン運動を測定し、確立された動的光散乱法理論に基づいて粒子径を決定している。
本発明によるとリポソーム組成物が提供される。リポソーム組成物は、リポソームを含み、リポソーム内相にシクロデキストリンおよび活性化合物をさらに含む。上記した通り、リポソーム組成物は、固体状および液体状のものを含む。リポソーム組成物が固体状のものの場合、後述するように所定の溶媒に溶解または懸濁することで、液体状のものとすることができる。また、リポソーム組成物が凍結した固体の場合には室温放置等により融解させることで、液体状のものとすることができる。
リポソーム組成物におけるリポソームの濃度および活性化合物の濃度は、リポソーム組成物の目的、剤形等に応じて適宜設定することができる。リポソーム組成物が液剤の場合において、リポソームの濃度はリポソームの構成成分である全脂質の濃度として、0.2〜100mM、好ましくは1〜30mMとすることができる。リポソーム組成物を医薬として用いる場合における活性化合物の濃度(用量)については後述する。リポソーム組成物におけるシクロデキストリンの量は、活性化合物に対して0.1〜1000モル当量が好ましく、1〜100モル当量がより好ましい。
本発明におけるリポソームは、脂質二重層に活性化合物およびシクロデキストリンが分配されていてもよい。
この溶媒(分散媒)に分散したリポソームを安定に長期間保存するには、凝集などの物理的安定性の面から、溶媒(分散媒)中の電解質を極力なくすことが好ましい。また、脂質の化学的安定性の面から、溶媒(分散媒)のpHを酸性から中性付近(pH3.0〜8.0)に設定することや窒素バブリングにより溶存酸素を除去することが好ましい。
リポソーム組成物に含まれる糖または多価アルコールの濃度は特に限定されないが、リポソームが溶媒に分散した状態において、例えば、糖の濃度は、2〜20%(W/V)が好ましく、5〜10%(W/V)がより好ましい。多価アルコールの濃度は、1〜5%(W/V)が好ましく、2〜2.5%(W/V)がより好ましい。これら溶媒をリポソーム分散液におけるリポソーム外相として用いることもでき、リポソーム準備液のリポソーム外相をこれら溶媒で置換または希釈することで、リポソーム外相の溶液をこれら溶液とすることができる。
本発明によるとリポソーム組成物を製造する方法が提供される。リポソーム組成物を製造する方法は、リポソームを含み、リポソーム内相にシクロデキストリンをさらに含むリポソーム分散液を供するステップと、前記リポソーム分散液と活性化合物とを混合するステップと、前記リポソーム分散液のリポソーム内相に前記活性化合物を導入するステップとを含む。
シクロデキストリン溶液におけるシクロデキストリンの濃度は、より濃いほど好ましく、シクロデキストリンの溶媒(後述)への溶解度や粘度等に応じて設定することができる。これによりリポソーム分散液のリポソーム内相におけるシクロデキストリン濃度をより濃くでき、より多くの活性化合物を封入できる。例えば、シクロデキストリン溶液におけるシクロデキストリンの濃度は、100〜250mM、好ましくは100〜200mMとすることができる。
シクロデキストリン溶液の溶媒としては、例えば、リン酸塩緩衝液、クエン酸塩緩衝液、リン酸塩緩衝化生理食塩液等の緩衝液、生理食塩水、細胞培養用の培地などを挙げることができる。シクロデキストリン溶液のpHは、適宜設定することができ特に限定されるものではないが、3〜11が好ましく、4〜9がより好ましく、5〜8がさらに好ましい。
リポソームの調製における各種条件(膜構成成分の量、温度など)は、リポソームの調製方法や目的とするリポソームの組成、粒子径等に応じて適宜設定することができる(前掲、菊池(1983)等参照)。ただし、シクロデキストリンは、リポソームから脂質(特にコレステロールなど)を取り去る効果があることが知られている。このため、この効果を考慮し、リポソームの調製に用いる脂質の量を設定することが好ましい。
遠心分離は、例えば、遠心加速度が、好ましくは100,000g以上、より好ましくは300,000g以上で実施することができる。遠心によりリポソーム外相を置換することで、リポソーム外相の置換とあわせて、リポソームの濃縮を行うことができる。
ゲルろ過は、例えば、SephadexやSepharose等のカラムを用いて、分子量に基づいて分画することにより実施することができる。
しかしながら、何らかの理由でリポソーム分散液のリポソーム外相にシクロデキストリンを添加した場合など、リポソーム分散液が、リポソーム外相にシクロデキストリンを含有していても、活性化合物をリポソーム内相に導入することができる。この場合であっても、リポソーム分散液は、リポソーム外相と比べてより高濃度のシクロデキストリンをリポソーム内相に含むことが好ましい。特に、リポソーム外相のシクロデキストリン濃度がリポソーム内相のシクロデキストリン濃度と比して、1/2以下あることが好ましく、1/5以下であることがより好ましい。
イオン勾配法において用いるイオンとしては、特に限定されるものではないが、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、ホウ酸アンモニウム、ギ酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、クエン酸アンモニウム、酒石酸アンモニウム、コハク酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等が挙げられる。また、イオン勾配法において、リポソーム内相のイオン濃度は、活性化合物の種類に応じて適宜選択できるが、高ければ高いほどよく、好ましくは10mM以上、より好ましくは20mM以上、さらに好ましくは50mM以上ある。活性化合物の種類に応じて、リポソーム内相と外相のいずれのイオン濃度を高くすることもできる。一方で、リポソーム内相とリポソーム外相のイオン濃度の差が実質的になくても、すなわち、リポソーム外相とリポソーム内相とのイオン濃度が実質的に同じであってもよい。リポソーム外相を置換または希釈することによっても、イオン勾配を調整することもできる。
混合液を加熱する場合、一般的には、より高い温度に昇温することで、より効率的に活性化合物をリポソーム内相に導入できる。具体的には、活性化合物や用いるリポソーム膜構成成分の熱的安定性を考慮して、昇温する温度を設定することが好ましい。特に、昇温する温度は、リポソームの脂質二重膜の相転移温度以上とすることが好ましい。また、リポソーム内相に活性化合物を導入するステップにおいて、昇温する温度は特に限定されるものではないが、例えば、5℃以上であることが好ましく、室温、例えば、20℃以上であることがより好ましく。また、相転移温度以上とすることが好ましい。しかしながら、これら昇温する温度は本発明を何ら限定するものではない。
一般的には、昇温する温度は、通常20〜100℃であり、好ましくは40〜80℃、より好ましくは45〜65℃であり、相転移温度以上であることが好ましい。
具体的には、ジパルミトイルホスファチジルコリン(単体での相転移温度:41℃)とコレステロールを主体としたリポソーム膜の場合には、その組成にもよるが、一般に昇温温度は、40〜60℃が好ましく、45〜50℃がより好ましい。また、水素添加大豆ホスファチジルコリン(HSPC,単体での相転移温度:50〜60℃)とコレステロールを主体としたリポソーム膜の場合には、その組成にもよるが、一般に昇温温度は、50〜70℃が好ましく、55〜65℃がより好ましい。しかしながら、これら昇温する温度は本発明を何ら限定するものではない。
なお、上記した通り、従来から、シクロデキストリンは生体膜やリポソーム膜から脂質(特にコレステロール)を取り去る効果があることが知られており、例えば、シクロデキストリンにより赤血球が溶血することが報告されている。このため、リポソームを調製するにあたって、リポソーム内相に予めシクロデキストリンを封入するという発想は困難であったと考えられる。
本発明のリポソーム組成物は、医薬分野において治療薬、診断薬等の医薬組成物として用いることができる。リポソーム組成物は、例えば、活性化合物として抗腫瘍剤を用いることで治療薬として用いることができ、造影剤を用いることで診断薬として用いることができる。リポソーム組成物は、化粧料、食品添加物としても用いることができる。
本発明によるとリポソーム組成物を調製するためのキットが提供される。キットは、医薬としてのリポソーム組成物を調製するために用いることができ、臨床現場で医者や患者自身が使用することができる。
<リポソーム内相用水溶液の調製>
クエン酸一水和物840.6mgを純水で溶解し、20mLにメスアップすることで200mM クエン酸水溶液を作成した。HP−β−シクロデキストリン(ROQUETTE社製)280mgまたは560mgを200mM クエン酸水溶液1mLで溶解し、アンモニア水でpHを5.5に調整後、純水を用いて2mLにメスアップすることによりリポソーム内相用水溶液を調製した。
HP-β-シクロデキストリンを含まないリポソーム内相用水溶液は200mM クエン酸水溶液1mLをアンモニア水でpH5.5に調整後、純水を用いて2mLにメスアップすることにより調製した(表1)。
水素添加大豆ホスファチジルコリン(Lipoid社製)44.4mg、コレステロール(Sigma社製)14.5mgおよびポリエチレングリコール2000−ホスファチジルエタノールアミン(Genzyme社製、MPEG2000−ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン)17.4mgをクロロホルム3mLに溶解した後にロータリーエバポレーターでクロロホルムを減圧留去し、リピッドフィルムを作成した。得られたリピッドフィルムに、下記表1に記載の種々の組成のリポソーム内相用水溶液2mLを約60℃に加温して添加し、撹拌してリポソーム準備液を調製した。このリポソーム準備液を20分間超音波処理した後に、約65℃に加温したエクストルーダー(Lipex Biomembranes社製)を用いて整粒し、整粒したリポソーム準備液を得た。得られたリポソーム準備液中のリポソームの粒子径を動的光散乱法で測定したところ、いずれも90〜100nmであった。
Sephadex G−50カラムを用い、得られたリポソーム準備液を0.9%塩化ナトリウム/10mM ヒスチジン水溶液(pH=7.6)で溶出することで、リポソーム外相を0.9%塩化ナトリウム/10mM ヒスチジン水溶液へと置換した。リポソーム外相を置換した後、400,000×gで30分間遠心した。遠心後、再分散し、0.9%塩化ナトリウム/10mM ヒスチジン水溶液を用いて液量を2mLに調整し、リポソーム分散液を得た。
E7107((8E,12E,14E)−7−{(4−シクロヘプチルピペラジン−1−イル)カルボニル}オキシ−3,6,16,21−テトラヒドロキシ−6,10,12,16,20−ペンタメチル−18,19−エポキシトリコサ−8,12,14−トリエン−11−オリド)のエタノール溶液(50mg/mL)を0.9%塩化ナトリウム/10mMヒスチジン水溶液で500倍希釈し、0.1mg/mLのE7107溶液を得た。
10mLのガラス容器中、0.1mLのリポソーム分散液と1mLのE7107溶液を混合し、55℃の水浴中で3分間インキュベートすることにより、リポソーム内にE7107が導入されたリポソーム組成物を得た。
封入率は、以下のようにして求めた。
活性化合物が封入されたリポソーム組成物を400,000×gで30分間超遠心した。上清中の活性化合物濃度をHPLCで測定することで、リポソームに未封入の活性化合物量を定量した。封入率を下記式により計算した。
超遠心後のE7107封入リポソームを0.1mLとなるように再懸濁し、ラット血漿1mLと混合した。混合直後、24時間後、48時間後、72時間後に、以下に記載する方法によりリポソーム内E7107量を測定し、活性化合物の封入率の経時的安定性を評価した。
リポソームと、リポソーム外相に漏れ出たE7107とは、PD−10 Column(Ge Healthcare社製)を用い分離した。回収したリポソーム画分と10%Tween 80溶液を9:1で混合することでリポソームを破壊し、HPLCでリポソーム内に保持されているE7107量を定量した。
24時間後、48時間後、72時間後のそれぞれのE7107量を混合直後のE7107量で除することでリポソーム内の残存率を測定した。
測定結果を図1に示す。リポソーム内相にシクロデキストリンを存在させることで血漿中での安定性が飛躍的に向上した。なお、図1中、HP−β−CDは、HP−β−シクロデキストリンを意味する。
<リポソーム組成物の調製>
実施例1と同様にして、リポソーム内相用水溶液の組成が250mM HP−β−シクロデキストリン/100mM クエン酸(pH=5.5)であり、リポソーム外相を0.9%塩化ナトリウム/10mM ヒスチジン水溶液(pH=7.6)へと置換した、リポソーム分散液を得た。
続いて、10mLのガラス容器中、リポソーム分散液とE7107溶液を混合し、5℃、20℃、40℃、50℃、60℃の水浴中で1分間、5分間、1時間、6時間インキュベートすることにより、リポソーム組成物を得た。
封入率の測定結果を表2に示す。表2から分かるとおり、E7107の封入操作時に加温することで封入操作時間を短縮することが可能であった。また、常温(20℃)でも徐々にE7107が封入されることが明らかとなった。
<リポソーム内相用水溶液の調製>
硫酸アンモニウム396.4mgおよびクエン酸一水和物189.1mgを純水で溶解し、15mLにメスアップすることで200mM 硫酸アンモニウム/60mM クエン酸水溶液を作成した。HP−β−シクロデキストリン700mgあるいはHP−γ−シクロデキストリン(Sigma社製)790mgを200mM 硫酸アンモニウム/60mM クエン酸水溶液2.5mLで溶解し、アンモニア水でpHを5.5に調整後、純水を用いて5mLにメスアップすることによりリポソーム内相用水溶液を調製した。
シクロデキストリンを含まないリポソーム内相用水溶液は200mM 硫酸アンモニウム/60mM クエン酸水溶液2.5mLをアンモニア水でpH5.5に調整後、純水を用いて5mLにメスアップすることにより調製した(表3)。
水素添加大豆ホスファチジルコリン317.9mg、コレステロール116.0mgおよびポリエチレングリコール2000−ホスファチジルエタノールアミン130.4mgをクロロホルム10mLに溶解した後に正確に3本に分注し、それぞれをロータリーエバポレーターでクロロホルムを減圧留去し、リピッドフィルムを作成した。得られたリピッドフィルムに、下記表3に記載の種々の組成のリポソーム内相用水溶液5mLを約60℃に加温して添加し、撹拌してリポソーム準備液を調製した。このリポソーム準備液を20分間超音波処理した後に、約65℃に加温したエクストルーダー(Lipex Biomembranes社製)を用いて整粒し、リポソーム準備液を得た。得られたリポソーム準備液中のリポソームの粒子径を動的光散乱法で測定したところ、いずれも90〜100nmであった。
実施例1と同様に実施して、リポソーム分散液5mLを得た。
メシル酸エリブリンを0.9%塩化ナトリウム/10mM ヒスチジン水溶液で溶解し、1mg/mLのメシル酸エリブリン溶液を得た。
10mLのガラス容器中、0.5mLのリポソーム分散液と0.5mLのメシル酸エリブリン溶液を混合し、55℃の水浴中で3分間インキュベートすることにより、リポソーム内にメシル酸エリブリンが導入されたリポソーム組成物を得た。
封入率は、実施例1と同様に求めた。結果を表3に示す。表3から分かるとおり、リポソーム内水相にシクロデキストリンを存在させることでより高効率にメシル酸エリブリンを封入可能であった。
同様にして、硫酸アンモニウム264.3mgおよびクエン酸一水和物126.1mgを純水で溶解し、メスフラスコを用いて10mLにメスアップすることで200mM 硫酸アンモニウム/60mM クエン酸水溶液を作成した。HP−β−シクロデキストリン 560mg、HP−γ−シクロデキストリン 632mg、G2−β−シクロデキストリン(塩水港精糖株式会社) 584mg、およびCaptisol(CyDex社製) 432mgを秤量し、200mM 硫酸アンモニウム/60mM クエン酸水溶液1mLでそれぞれを溶解した。アンモニア水でpHを5.5に調整後、純水で2mLにメスアップすることによりリポソーム内相用水溶液を調製した。
シクロデキストリンを含まないリポソーム内相用水溶液は200mM 硫酸アンモニウム/60mM クエン酸水溶液1mLをアンモニア水でpH5.5に調整後、純水を用いて2mLにメスアップすることにより調製した(表4)。
脂質混合物(水素添加大豆ホスファチジルコリン:コレステロール:ポリエチレングリコール2000−ホスファチジルエタノールアミン=58.6:19.2:22.2(重量比))を80mgずつ秤量し、上記表4に記載の種々の組成のリポソーム内相用水溶液2mLを約80℃に加温して添加し、撹拌してリポソーム準備液を調製した。このリポソーム準備液を約80℃に加温したエクストルーダー(Lipex Biomembranes社製)を用いて整粒し、リポソーム準備液を得た。
得られたリポソーム準備液を0.9%塩化ナトリウム/10mM ヒスチジン水溶液(pH=7.6)で10mLにメスアップし、400,000×gで30分間遠心した。遠心後、上清を全て廃棄した。沈殿を0.9%塩化ナトリウム/10mM ヒスチジン水溶液で再分散し、メスフラスコを用いて液量を1mLに調整し、リポソーム分散液を得た。
メシル酸エリブリンを0.9% 塩化ナトリウム/10mM ヒスチジン水溶液で溶解し、5mg/mLのメシル酸エリブリン溶液を得た。
10mLのガラス容器中、0.96mLのリポソーム分散液と0.24mLのメシル酸エリブリン溶液を混合し、60℃の水浴中で3分間インキュベートすることにより、リポソーム内にメシル酸エリブリンが導入されたリポソーム組成物を得た。
調製したメシル酸エリブリン封入リポソーム0.2mLとラット血漿1.8mLを混合し、液相インキュベーターを用いて37℃で振盪した。リポソーム組成物とラット血漿の混合直後、振盪開始6時間後、12時間後、24時間後、48時間後、120時間後にサンプリングを行い、ゲル濾過カラムによりフリー体画分を分取した。得られたメシル酸エリブリンのフリー体画分をリポソームから漏出したメシル酸エリブリン量としてHPLCで測定した。
測定結果を図2に示す。図2から分かるとおり、血漿中でも120時間という長時間に亘ってメシル酸エリブリンを安定に保持し、徐放することが可能であることが示された。また、特に、シクロデキストリンを内相に含有するリポソームではメシル酸エリブリンを長期間より安定に保持可能であることが示された。
<リポソーム組成物の調製>
実施例3と同様にして、リポソーム内相用水溶液の組成が200mM HP−β−シクロデキストリン/100mM 硫酸アンモニウム/30mM クエン酸(pH=7.0)であり、リポソーム外相を0.9%塩化ナトリウム/10mM ヒスチジン水溶液(pH=7.6)へと置換した、リポソーム分散液を得た。
続いて、10mLのガラス容器中、リポソーム分散液とメシル酸エリブリン溶液を混合し、5℃、20℃、40℃、50℃、60℃の水浴中で1分間、5分間、1時間、6時間インキュベートすることにより、リポソーム組成物を得た。
封入率の測定結果を表5に示す。表5から分かるとおり、メシル酸エリブリンの封入操作時に加温することで封入操作時間を短縮することが可能であった。また、常温(20℃)でも徐々にメシル酸エリブリンが封入されることが明らかとなった。
<リポソーム内相用水溶液の調製>
グルタミン1.46gを純水で溶解し、100mLにメスアップすることで100mMグルタミン水溶液を作成した。pHを測定したところ、5.2であった。また、HP−β−シクロデキストリン28.0gおよびグルタミン1.46gを純水で溶解し、100mLにメスアップすることで200mM HP−β−シクロデキストリン/100mM グルタミン水溶液を作成した。HP−γ−シクロデキストリン31.6gおよびグルタミン1.46gを純水で溶解し、100mLにメスアップすることで200mM HP−γ−シクロデキストリン/100mM グルタミン水溶液を作成した。G2−β−シクロデキストリン29.2gおよびグルタミン1.46gを純水で溶解し、100mLにメスアップすることで200mM G2−β−シクロデキストリン/100mM グルタミン水溶液を作成した。カプチゾル43.2gおよびグルタミン1.46gを純水で溶解し、100mLにメスアップすることで200mM カプチゾル/100mM グルタミン水溶液を作成した。以上のシクロデキストリンを含むグルタミン水溶液は塩酸および水酸化ナトリウムを用いてpHを5.2に調整した(表6)。
同様に、ヒスチジン1.55gを純水で溶解し、100mLにメスアップすることで100mM ヒスチジン水溶液(pH=7.6)を作成した。また、200mM HP−β−シクロデキストリン/100mM ヒスチジン水溶液、200mM HP−γ−シクロデキストリン/100mM ヒスチジン水溶液、200mM G2−β−シクロデキストリン/100mM ヒスチジン水溶液、および200mM カプチゾル/100mM ヒスチジン水溶液を作成した。以上のシクロデキストリンを含むヒスチジン水溶液は塩酸および水酸化ナトリウムを用いてpHを7.6に調整した(表6)。
また同様に、アルギニン1.74gを純水で溶解し、100mLにメスアップすることで100mM アルギニン水溶液(pH=11.1)を作成した。また、200mM HP−β−シクロデキストリン/100mM アルギニン水溶液、200mM HP−γ−シクロデキストリン/100mM アルギニン水溶液、200mM G2−β−シクロデキストリン/100mM アルギニン水溶液、および200mM カプチゾル/100mM アルギニン水溶液を作成した。以上のシクロデキストリンを含むアルギニン水溶液は塩酸および水酸化ナトリウムを用いてpHを11.1に調整した(表6)。
脂質混合物(水素添加大豆ホスファチジルコリン:コレステロール:ポリエチレングリコール2000−ホスファチジルエタノールアミン=58.6:19.2:22.2(重量比))を200mgずつ秤量し、下記表6に記載の種々の組成のリポソーム内相用水溶液5mLを約80℃に加温して添加し、撹拌してリポソーム準備液を調製した。このリポソーム準備液を20分間超音波処理した後に、約80℃に加温したエクストルーダー(Lipex Biomembranes社製)を用いて整粒し、整粒したリポソーム準備液を得た。得られたリポソーム準備液中のリポソームの粒子径を動的光散乱法で測定したところ、いずれも90〜100nmであった。
Sephadex G−50カラムを用い、得られたリポソーム準備液を下記表6に記載の種々の組成のリポソーム外相用水溶液で溶出することで、リポソーム外相を置換した。リポソーム外相を置換した後、400,000×gで30分間遠心した。遠心後、再分散し、下記表6に記載の種々の組成のリポソーム外相用水溶液を用いて液量を5mLに調整し、リポソーム分散液を得た。
これらリポソーム分散液と、実施例3と同様にして作成したメシル酸エリブリン溶液と、を混合し、60℃の水浴中で5分間インキュベートすることにより、リポソーム内にメシル酸エリブリンが導入されたリポソーム組成物を得た。
封入率は、実施例1と同様にして測定した。結果を表6に示す。表6から分かるとおり、いずれのシクロデキストリンを内相に用いた場合でもメシル酸エリブリンの封入率が向上することが明らかとなった。
<リポソーム組成物の調製>
実施例5と同様にして、リポソーム分散液を得た(表7)。
ドキソルビシンを100mM グルタミン水溶液(pH=5.2)または100mM ヒスチジン水溶液(pH=7.6)で溶解し、1mg/mLのドキソルビシン水溶液を得た。
10mLのガラス容器中、0.1mLのリポソーム分散液と0.1mLのドキソルビシン水溶液を混合し、60℃の水浴中で5分間インキュベートした。
封入率は、実施例1と同様に求めた。結果を表7に示す。表7から分かるとおり、リポソーム内相にシクロデキストリンを存在させることでドキソルビシン封入率が向上した。
<リポソーム分散液の調製>
実施例5と同様にして、リポソーム内相が100mM グルタミン水溶液、200mM HP−β−シクロデキストリン/100mM グルタミン水溶液、200mM HP−γ−シクロデキストリン/100mM グルタミン水溶液、または200mM G2−β−シクロデキストリン/100mM グルタミン水溶液で、外相が100mM グルタミン水溶液であるリポソーム分散液を得た(表8)。
また、リポソーム内相が100mM ヒスチジン水溶液、200mM HP−β−シクロデキストリン/100mM ヒスチジン水溶液、200mM HP−γ−シクロデキストリン/100mM ヒスチジン水溶液、または200mM G2−β−シクロデキストリン/100mM ヒスチジン水溶液で、外相が100mM ヒスチジン水溶液であるリポソーム分散液を得た(表8)。
パクリタキセルを5mM HP−β−シクロデキストリン/100mM グルタミン水溶液(pH=5.2)または5mM HP−β−シクロデキストリン/100mM ヒスチジン水溶液(pH=7.6)で溶解し、4μg/mLのパクリタキセル水溶液を得た。
10mLのガラス容器中、5.3mgのHP−β−シクロデキストリンを0.75mLのリポソーム分散液で溶解し、リポソーム外相液を5mM HP−β−シクロデキストリンとした。そこに0.25mLのパクリタキセル水溶液を混合し、60℃の水浴中で5分間インキュベートすることにより、リポソーム組成物を得た。
封入直後のリポソーム組成物を5mM HP−β−シクロデキストリンで2mLにメスアップした。そのうち1mLを使用してパクリタキセル濃度および水素添加大豆ホスファチジルコリン(HSPC)濃度をHPLCにより測定した。また、残りの1mLを純水で10mLにメスアップし、400,000×gで40分間遠心を行った。上清を完全に廃棄し、得られた沈殿を純水で再懸濁し、10mLにメスアップした。再度、400,000×gで40分間遠心を行った。上清を完全に廃棄し、得られた沈殿を純水で再懸濁し、1mLにメスアップした。得られたリポソーム組成物のパクリタキセル濃度およびHSPC濃度をHPLCにより測定した。封入率を下記式により求めた。
結果を表8に示す。表8から分かるとおり、リポソーム内相および外相に同種のシクロデキストリンを存在させた場合においては、内相側のシクロデキストリン濃度を高濃度にすることでパクリタキセルの封入率が顕著に向上した。また、内相と外相に異種のシクロデキストリンを存在させた場合においても、内相側を高濃度にすることによりパクリタキセルの封入率は向上した。
実施例1と同様にして、組成が250mM HP−β−シクロデキストリンおよび100mM クエン酸であるリポソーム内相用水溶液を用いて、リポソーム組成物(E7107濃度:0.2mg/mL,総脂質濃度:10μmol/mL)を得た。
また、非製剤化E7107として、E7107を5%DMSO/5%Tween 80を含有する生理食塩液(大塚製薬株式会社)に溶解した(E7107濃度:3mg/mL)。
ヒト大腸癌細胞株であるWiDr(大日本製薬株式会社より入手)を10%ウシ胎児血清含有RPMI1640培地で培養し、増殖させた。細胞を0.05%Trypsin−EDTA溶液を用いてフラスコより遊離させ回収した。PBSで洗浄後、Hanks’ Balanced Salt Solution(GIBCO社製)にて5×107個/mLになるように懸濁し、氷上で保持した。6−8週齢の雌性ヌードマウス(BALB/cAJcl−nu/nu;日本クレア株式会社)の右腹側部へ、1匹あたり100μLの細胞懸濁液を皮下注射した。各々のマウスを毎日観察し、状態異常が発見された場合には適宜記録を行った。腫瘍の大きさを経時的にノギスを用いて測定し、腫瘍の大きさを、計算式:長径×(短径の2乗)÷2に基づき算出した。また、マウスの体重も経時的に測定した。腫瘍の大きさが100〜200mm3になった時点で、各試験群間での腫瘍の大きさおよびマウスの体重の平均値が均一になるように群分けを行った。調製したリポソーム組成物(1mg/kg)または非製剤化E7107(30mg/kg)を担癌マウスの尾静脈から単回静脈内投与し、投与後経時的に血液と腫瘍組織を採取した。得られた血液を4℃で遠心分離し、血漿を分取した。腫瘍組織については生理食塩液を約4倍量添加し、均一なホモジネートを調製した。得られた血漿(0.05mL)および腫瘍ホモジネート(0.05g)に0.2mLの内部標準物質(プロプラノロール(Sigma社製)、100ng/mL)を含むアセトニトリル(和光純薬工業株式会社)とメタノール(和光純薬工業株式会社)の等量混和液を添加し、混合した。遠心分離することによりタンパク質を除去し、得られた上清をMultiScreen Filter plate(Millipore社製)で濾過した。その後、濾液(5μL)を以下に示した高速液体クロマトグラフィー(HPLC)/質量分析計(LC/MS/MS)で分析し、血漿中および腫瘍中E7107濃度を測定した。
担癌マウスに単回静脈内投与した時の血漿中および腫瘍組織中E7107濃度推移を図3に示す。図3から分かるとおり、E7107をリポソームで製剤化することにより、E7107の血漿中および腫瘍中での滞留性が著しく向上することが明らかとなった。
実施例1と同様にして、組成が250mM HP−β−シクロデキストリンおよび100mM クエン酸であるリポソーム内相用水溶液を用いてリポソーム分散液を得た。リポソーム分散液とE7107溶液の混合比率をそれぞれ変化させ、5種類のリポソーム組成物(E7107濃度:0.2mg/mL,総脂質濃度:2.5μmol/mL;E7107濃度:0.2mg/mL,総脂質濃度:5μmol/mL;E7107濃度:0.2mg/mL,総脂質濃度:10μmol/mL;E7107濃度:0.2mg/mL,総脂質濃度:20μmol/mL;E7107濃度:0.2mg/mL,総脂質濃度:40μmol/mL)を得た。実施例1と同様に封入率を測定したところ、いずれのリポソーム組成物においても封入率は95%以上であった。
担癌マウスは、ヒト大腸癌由来細胞であるWiDr(大日本製薬株式会社より入手)を雌性ヌードマウス(BALB/cAJcl−nu/nu)の腹部皮下に移植することにより作製した。調製した各種リポソーム製剤化E7107を担癌マウスの尾静脈から単回静脈内投与し、投与後24時間および72時間に血液を採取した。得られた血液を4℃で遠心分離することにより血漿を分取し、実施例8と同様にして、E7107の血漿中濃度を測定した。
担癌マウスに単回静脈内投与した時の血漿中および腫瘍組織中E7107濃度推移を図4に示す。図4から分かるとおり、各リポソーム組成物において同様の血漿中および腫瘍中のE7107濃度推移を示した。
ヒト大腸癌細胞株であるWiDr(大日本製薬株式会社より入手)を10%ウシ胎児血清含有RPMI1640培地で培養し、増殖させた。細胞を0.05%Trypsin−EDTA溶液を用いてフラスコより遊離させ回収した。PBSで洗浄後、Hanks’ Balanced Salt Solution(GIBCO社製)にて5×107個/mLになるように懸濁し、氷上で保持した。6−8週齢のヌードマウス(日本クレア株式会社)の右腹側部へ、1匹あたり100μLの細胞懸濁液を皮下注射した。各々のマウスを毎日観察し、状態異常が発見された場合には適宜記録を行った。腫瘍の大きさを経時的にノギスを用いて測定し、腫瘍の大きさを、計算式:長径×(短径の2乗)÷2に基づき算出した。また、マウスの体重も経時的に測定した。腫瘍の大きさが100〜200mm3になった時点で、各試験群間での腫瘍の大きさおよびマウスの体重の平均値が均一になるように群分けを行い(各試験群のマウス頭数は5匹)、E7107(200μL/20g)を単回尾静脈内投与した。
E7107−2.5mg/kg群(群2)の投与液として、E7107に3.5:6.5:90の割合で、DMSO溶液、Tween−80溶液、5%ブドウ糖液を加え、E7107濃度を0.25mg/mLとした。
群3および群4で用いた3E7107を封入したリポソーム組成物は、実施例1と同様にして作成し、E7107濃度を0.25mg/mLとした。
投与後5日目の腫瘍増殖に対する治療効果として、腫瘍の大きさ、対コントロール比、体重の平均値を表9に示す。
体重減少については、どの群間比較においても有意な減少は見られなかった。
以上の結果から、E7107の1日当たりの投与量は、特に限定されないが、通常、ヒトに対し、1〜100mgとなるようにリポソーム組成物を投与することにより、E7107の抗腫瘍効果を発揮させることができる。
<リポソーム内相用水溶液の調製>
実施例1と同様に、100mM 硫酸アンモニウム/30mM クエン酸水溶液(pH=5.5)および200mM HP−β−シクロデキストリン/100mM 硫酸アンモニウム/30mM クエン酸水溶液(pH=5.5)を調製した。
水素添加大豆ホスファチジルコリン、コレステロール、およびポリエチレングリコール2000−ホスファチジルエタノールアミンを表10に記載の量でそれぞれ秤量した。それぞれをクロロホルム3mLに溶解した後にロータリーエバポレーターでクロロホルムを減圧留去し、リピッドフィルムを作成した。得られたリピッドフィルムに、作成したリポソーム内相用水溶液10mL(Rp.1〜4は100mM 硫酸アンモニウム/30mM クエン酸水溶液、Rp.5〜8は200mM HP−β−シクロデキストリン/100mM 硫酸アンモニウム/30mM クエン酸水溶液)を約80℃に加温して添加し、撹拌してリポソーム準備液を調製した。約80℃に加温したエクストルーダー(Lipex Biomembranes社製)を用いて整粒し、整粒したリポソーム準備液を得た。得られたリポソーム準備液中のリポソームの粒子径を動的光散乱法で測定したところ、Rp.1は77nm、Rp.2は95nm、Rp.3は79nm、Rp.4は128nm、Rp.5は81nm、Rp.6は122nm、Rp.7は76nm、Rp.8は110nmであった。
実施例1と同様にして、リポソーム分散液を得た。また、メシル酸エリブリンを0.9%塩化ナトリウム/10mM ヒスチジン水溶液で溶解し、5mg/mLのメシル酸エリブリン溶液を得た。
10mLのガラス容器中、4.8mLの各リポソーム分散液と0.6mLのメシル酸エリブリン溶液をそれぞれ混合し、60℃の水浴中で3分間インキュベートすることにより、リポソーム内にメシル酸エリブリンが導入されたリポソーム組成物を得た。それぞれのリポソーム組成物に24.6mLの0.9%塩化ナトリウム/10mM ヒスチジン水溶液を添加し、0.2μmポリフッ化ビニリデン(PVDF)フィルター(Whatman社製GD/Xフィルター)を用いて濾過滅菌することで、投与検体(メシル酸エリブリン濃度:0.1mg/mL)を得た。
実施例1と同様にして、封入率を測定し、いずれの処方においても90%以上であることを確認した。
PKパラメーターはnon−compartment model解析ソフトウェア(WinNonlin v.5.0.1)を用いて算出した。メシル酸エリブリンの血漿PKパラメーターおよび腫瘍組織PKパラメーターの結果を、それぞれ表11および表12に示す。
<リポソーム内相用水溶液の調製>
実施例3と同様に、200mM HP−β−シクロデキストリン/100mM 硫酸アンモニウム/30mM クエン酸水溶液(pH=5.5)を調製した。
水素添加大豆ホスファチジルコリン221.8mgおよびコレステロール72.5mgおよびポリエチレングリコール2000−ホスファチジルエタノールアミン86.9mgを秤量した。クロロホルム3mLに溶解した後にロータリーエバポレーターでクロロホルムを減圧留去し、リピッドフィルムを作成した。得られたリピッドフィルムに、作成したリポソーム内相用水溶液10mLを約80℃に加温して添加し、撹拌してリポソーム準備液を調製した。約80℃に加温したエクストルーダー(Lipex Biomembranes社製)を用いて整粒し、整粒したリポソーム準備液を得た。得られたリポソーム準備液中のリポソームの粒子径を動的光散乱法で測定したところ、約90nmであった。
Sephadex G−50カラムを用い、得られたリポソーム準備液を0.9%塩化ナトリウム/10mMヒスチジン水溶液(pH=7.6)で溶出することで、リポソーム外相を0.9%塩化ナトリウム/10mMヒスチジン水溶液へと置換した。リポソーム外相を置換した後、400,000×gで30分間遠心した。遠心後、再分散し、0.9%塩化ナトリウム/10mMヒスチジン水溶液を用いて液量を10mLに調整し、リポソーム分散液を得た。
メシル酸エリブリンを0.9% 塩化ナトリウム/10mM ヒスチジン水溶液で溶解し、1mg/mLのメシル酸エリブリン溶液を得た。また、フリー体の投与検体として、0.9% 塩化ナトリウム/10mM ヒスチジン水溶液でメシル酸エリブリン溶液を希釈し、0.22μmのPVDFフィルターを用いて濾過滅菌することで、投与検体(メシル酸エリブリン濃度:0.1mg/mLおよび0.2mg/mLおよび0.4mg/mL)を得た。
10mLのガラス容器中、1.8mLのリポソーム分散液と1.2mLのメシル酸エリブリン溶液をそれぞれ混合し、60℃の水浴中で3分間インキュベートすることにより、リポソーム内にメシル酸エリブリンが導入されたリポソーム組成物を得た。得られたリポソーム組成物を0.9% 塩化ナトリウム/10mM ヒスチジン水溶液で希釈し、0.22μmのPVDFフィルターを用いて濾過滅菌することで、投与検体(メシル酸エリブリン濃度:0.1mg/mLおよび0.2mg/mL)を得た。超遠心法により封入率を測定し、90%以上であることを確認した。
測定結果を図5に示す。図5から分かるとおり、リポソーム組成物1mg/kg投与群はフリー体2mg/kg投与群またはフリー体4mg/kg(最大耐用量)投与群より明らかに優れた抗腫瘍効果を示した。また、リポソーム組成物1mg/kg投与群およびリポソーム組成物2mg/kg投与群では全個体から腫瘍が完全に消失した。フリー体2mg/kg投与群では5匹中2匹のみが完全治癒であり、リポソーム化による最大薬効の増大および薬効幅の拡大が明らかとなった。また、本試験では全群において一般状態の悪化は観察されなかった。
<リポソーム内相用水溶液の調製>
実施例3と同様に、200mM HP−γ−シクロデキストリン/100mM 硫酸アンモニウム/30mM クエン酸水溶液(pH=5.5)を調製した。
実施例12と同様にして、フリー体の投与検体(メシル酸エリブリン濃度:0.4mg/mL)を得た。
上述のように作製したリポソーム内相溶水溶液を用いた以外は実施例11と同様にして、リポソーム組成物(メシル酸エリブリン濃度:0.3mg/mL)を得た。実施例1と同様にして、封入率を測定し、90%以上であることを確認した。
検体投与後の平均腫瘍体積の推移結果を図6に示す。図6から分かるとおり、メシル酸エリブリンに感受性の低い細胞株を使用したため、フリー体では最大耐用量である4.0mg/kg投与でも腫瘍縮小効果は得られなかった。一方、リポソーム組成物3mg/kg投与群では腫瘍縮小効果が明確に認められ、全例において腫瘍が消失した。
<リポソーム内相用水溶液の調製>
実施例3と同様に、100mM 硫酸アンモニウム/30mM クエン酸水溶液(pH=5.5)および200mM HP−β−シクロデキストリン/100mM 硫酸アンモニウム/30mM クエン酸水溶液(pH=5.5)および200mM HP−γ−シクロデキストリン/100mM 硫酸アンモニウム/30mM クエン酸水溶液(pH=5.5)を調製した。
実施例12と同様に実施し、フリー体の投与検体(メシル酸エリブリン濃度:0.3mg/mLおよび0.4mg/mL)を得た。
上述のように作製したリポソーム内相溶水溶液を用いた以外は実施例11と同様にして、各リポソーム組成物(メシル酸エリブリン濃度:0.2mg/mL)を得た。実施例1と同様にして、封入率を測定し、いずれも90%以上であることを確認した。
検体投与後の平均腫瘍体積の推移結果を図7に示す。図7から分かるとおり、FaDuは、メシル酸エリブリンに感受性の低い細胞株であるため、フリー体では最大耐用量である4.0mg/kg投与でも腫瘍縮小効果は得られなかった。一方、リポソーム組成物2mg/kg投与群では腫瘍縮小効果が明確に認められた。特にHP−γ−シクロデキストリンをリポソーム内相に含有するリポソーム組成物では5匹中1匹で腫瘍が完全に消失するなど高い効果が認められた。
<リポソーム内相用水溶液の調製>
実施例3と同様に、100mM 硫酸アンモニウム/30mM クエン酸水溶液(pH=5.5)および200mM HP−β−シクロデキストリン/100mM 硫酸アンモニウム/30mM クエン酸水溶液(pH=5.5)を調製した。
実施例12と同様に実施し、フリー体の投与検体(メシル酸エリブリン濃度:0.2mg/mLおよび0.3mg/mLおよび0.4mg/mL)を得た。
上述のように作製したリポソーム内相溶水溶液を用いた以外は実施例12と同様にして、リポソーム組成物(メシル酸エリブリン濃度:0.3mg/mL)を得た。実施例1と同様にして、封入率を測定し、いずれも90%以上であることを確認した。
検体投与後の平均腫瘍体積の推移結果を図8に示す。図8から分かるとおり、ACHNは、メシル酸エリブリンに耐性のある細胞株であるため、フリー体投与では2mg/kg投与群、3mg/kg投与群、および4mg/kg(最大耐用量)投与群のいずれにおいても検体投与開始45日後において無処置群との有意な差は認められなかった。一方、いずれのリポソーム組成物3mg/kg投与群においては腫瘍増殖抑制効果が認められ、検体投与開始45日後において無処置群およびフリー体投与群に対し有意に小さい腫瘍体積値を示した。特にHP−β−シクロデキストリンをリポソーム内相に含有するリポソーム組成物で高い腫瘍増殖抑制効果が示された。
本発明のリポソーム組成物は、医薬、化粧料、食品の分野で、産業上の利用可能性を有する。中でも、本発明のリポソーム組成物は、医薬として、治療用途、診断用途に用いることが好適である。
Claims (6)
- リポソーム組成物を製造する方法であって、
リポソームを含み、リポソーム内相にシクロデキストリンをさらに含むリポソーム分散液を供するステップと、
前記リポソーム分散液と活性化合物とを混合するステップと、
前記リポソーム分散液のリポソーム内相に前記活性化合物を導入するステップと
を含む方法。 - 前記リポソーム分散液が、リポソーム外相と比べてより高濃度のシクロデキストリンをリポソーム内相に含む、請求項1に記載の方法。
- 前記リポソーム分散液が、シクロデキストリンをリポソーム外相に実質的に含まない、請求項1または2に記載の方法。
- 前記リポソーム分散液を供するステップが、
リポソームを含み、リポソーム内相およびリポソーム外相に前記シクロデキストリンをさらに含むリポソーム準備液を供するステップと、
前記リポソーム準備液のリポソーム外相を置換または希釈することにより、リポソーム外相における前記シクロデキストリンの濃度を調整するステップと
を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。 - 前記導入するステップが、混合するステップにより得られた混合液におけるリポソームの膜透過性を上げるステップを含む、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
- 前記導入するステップが、前記混合液をリポソームの脂質二重膜の相転移温度以上に昇温するステップを含む、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
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