JP5622719B2 - リポソーム組成物の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、リポソーム組成物の製造方法に関する。また、本発明は、リポソーム組成物、およびリポソーム組成物を調製するためのキットに関する。
リポソームは、1つ以上の脂質二重層により包囲された内相を有する微細閉鎖小胞であり、水溶性物質を内相に、脂溶性物質を脂質二重層に保持することができる。リポソームに活性化合物を封入し、標的組織へ送達する際には、いかにして活性化合物をリポソームへ高い効率で封入するか、また、いかにしてリポソームによる活性化合物の保持安定性を確保するかが重要なポイントとなる。
脂溶性化合物をリポソームへ封入する場合、比較的容易に高い封入率を達成できるが、アムホテリシンB(リポソーム医薬品アンビゾームの主薬)のような膜親和性の非常に高い化合物の場合を除き、一般的に血漿中での保持安定性は低く、体内動態が十分に改善されることは難しい。水溶性化合物のリポソームへの封入方法にはリピドフィルム法(ボルテックス法)、逆相蒸発法、界面活性剤除去法、凍結融解法やリモートローディング法(pH勾配法、イオン勾配法)等様々な方法がある。しかしながら、100%近い高い封入率が得られるのはリモートローディング法のみであり、その他の方法では5〜30%程度の封入率しか得られない。
リモートローディング法として、pH勾配や硫酸アンモニウムイオン勾配を利用したものが知られている。pH勾配を利用したリモートローディング法であるpH勾配法とは、目的の化合物のpHによる分子型/イオン型の乖離平衡の移動を利用して化合物をリポソーム内に取り込む技術である。
pH勾配法によりリポソームに封入される化合物の一例として、例えば、ドキソルビシン(DOX、pKa:8.2)が挙げられる。pH4の緩衝液によりリポソーム溶液を調製した後に、リポソーム外相をpH7の緩衝液に置換する。このリポソーム溶液にDOXを加えた場合、加えられたpH7の溶液中では分子型のDOXは脂溶性となるため、水相ではなくリポソーム膜に移行する。さらにリポソーム膜に移行したDOXがpH4のリポソーム内相と接触した場合、イオン型となりリポソーム内相に溶け込んでいく。このように、解離平衡の移動によってDOXはリポソーム外相から内相に輸送される(非特許文献1、非特許文献2、および特許文献1を参照。)。
また、このようなリモートローディング法を改良した種々の技術が報告されている。
非特許文献3には、コレステロールフリーリポソームという特別な組成のリポソームにおいてpH勾配法を行う際に、リポソーム外相に活性化合物と共にエタノールを添加することで、活性化合物の封入率を向上させる技術が開示されている。
特許文献2には、pH勾配に加えて、リポソーム内相に銅イオンを存在させることで、活性化合物の封入率を向上させる技術が開示されている。
硫酸アンモニウムイオン勾配を利用したリモートローディング法である硫酸アンモニウム法とは、pH勾配法におけるpH勾配に代えて、2価の硫酸アンモニウムのイオン勾配を利用して活性化合物をリポソーム内相に取り込む技術である(非特許文献1および特許文献3を参照。)。
特許文献4には、硫酸アンモニウムによるイオン勾配に加えて、リポソーム外相に活性化合物と共にボロン酸を添加することで、リポソーム内に活性化合物を取り込む技術が開示されている。
また、特許文献5には、硫酸アンモニウムによるイオン勾配に変えて、グルクロン酸アニオンによるイオン勾配を利用して活性化合物をリポソームに取り込むことで、硫酸アンモニウムを利用した場合に比べて、活性化合物の放出速度を向上させる技術が開示されている。
このように、封入率の面からリモートローディング法は優れた封入方法である。しかしながら、リポソーム内相に封入された活性化合物が結晶化するDoxil(DOXのリポソーム製剤)等の特殊な例を除くと、リモートローディング法を用いた場合、活性化合物は血漿中でリポソームから漏出しやすく、活性化合物の保持安定性が低いという問題点がある。
一方で、保持安定性を高めるため、あるいは活性化合物の溶解度を高めるためにシクロデキストリン(以下、「CyD」とも記す。)で活性化合物を予め可溶化させた後、Vortexing法等によりシクロデキストリンと活性化合物の複合体をリポソームに封入する技術が報告されている。しかしながら、この方法では封入率が5〜20%であり、大量生産を行うのは非常に困難である。
非特許文献4では、モデル化合物としてサリチル酸とCyDを共有結合で結合させた化合物が用いられており、当該化合物のリポソーム内への封入にはリピドフィルム法が採用されている(封入率は8%以下)。リポソーム内相中で活性化合物とCyDがコンプレックスを作ることで保持安定性が高まることが示唆されている。
非特許文献5では、難水溶性化合物であるベタメタゾンを数種類のCyD誘導体を用いて予め可溶化し、リピドフィルム法によってリポソーム内に封入している(封入率は3%以下)。ベタメタゾンとの会合定数が高いCyD誘導体を用いることで、保持安定性が高まり徐放効果が得られることが示されている。
また、非特許文献6では、難水溶性化合物であるケトプロフェンをHP−β−シクロデキストリンで予め可溶化しており、得られた複合体に対して種々の封入法が試みられている。MLV(multilamellar vesicles)では約75%と比較的高い封入率を達成しているが、EPR効果を狙う際に用いるSUV(small unilamellar vesicles)では約55%の封入率に留まる。しかしながら、当該文献で用いられている封入方法でリポソーム内相にこのような高い封入率で封入するのは理論的に不可能であり、ケトプロフェンがリポソーム内水相ではなく脂質二重層に分配している可能性が高い。
さらに、非特許文献7では、予めプレドニゾロンとCyDの複合体を作成し、凍結融解法でリポソーム内へ封入すると、水溶性物質のリポソーム膜透過性が上がることが開示されている。
非特許文献8では、DOXのみを封入したリポソームよりもDOXとγ−シクロデキストリンの複合体を封入したリポソームの方が高い腫瘍内DOX濃度と抗腫瘍効果を示すことが開示されている。当該文献においても、予めDOXとγ−シクロデキストリンとの複合体を形成し、この複合体をリポソームに内包させている。同様に、特許文献6には、予め水溶性化合物とCyDとの複合体を形成し、この複合体をリポソームに内包させることで、活性化合物の放出を徐放化する技術が開示されている。
以上のように、従来技術の方法では、リポソームへの活性化合物の高い封入率と、リポソームにおける活性化合物の保持安定性を両立することは難しいのが現状である。
米国特許第5192549号明細書 国際公開第2006/037230号パンフレット 米国特許第5316771号明細書 米国特許第6051251号明細書 国際公開第2005/046643号パンフレット 国際公開第94/23697号パンフレット
佐塚泰之,"リポソームの調製法",「リポソーム応用の新展開:人工細胞の開発に向けて(秋吉一成,辻井薫監修)」,エヌ・ティー・エス, (2005), pp.33-37. Mayer LD et al., Biochimica et Biophysica Acta, (1986), 857:pp.123-126. N. Dos Santos et al., Biochimica et Biophysica Acta, (2004), 1661(1):pp.47-60 Y. Hagiwara et al., Chem. Pharm. Bull., (2006), 54(1):pp.26-32 G. Piel et al., International Journal of Pharmaceutics, (2006), 312:pp.75-82 F. Maestrelli et al., International Journal of Pharmaceutics, (2006), 312:pp.53-60 D.G. Fatouros et al., European Journal of Pharmaceutical Sciences, (2001), 13:pp.287-296 H. Arima et al., Journal of Drug Targeting, 2006, 14(4):pp.225-232
本発明が解決しようとする課題は、活性化合物の保持安定性が高いリポソームを高い封入率で製造する方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、驚くべきことに、予めリポソーム内相にシクロデキストリンを封入することで、リポソーム外相に添加した活性化合物がリポソーム内相へと移動し、極めて高い封入率で活性化合物をリポソーム内相に封入できること、また得られたリポソーム組成物における活性化合物の保持安定性が極めて高いことを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
[1]
リポソーム組成物を製造する方法であって、
リポソームを含み、リポソーム内相にシクロデキストリンをさらに含むリポソーム分散液を供するステップと、
前記リポソーム分散液と活性化合物とを混合するステップと、
前記リポソーム分散液のリポソーム内相に前記活性化合物を導入するステップと、
を含む方法。
[2]
前記リポソーム分散液が、リポソーム外相と比べてより高濃度のシクロデキストリンをリポソーム内相に含む、[1]に記載の方法。
[3]
前記リポソーム分散液が、シクロデキストリンをリポソーム外相に実質的に含まない、[1]または[2]に記載の方法。
[4]
前記リポソーム分散液を供するステップが、
リポソームを含み、リポソーム内相およびリポソーム外相に前記シクロデキストリンをさらに含むリポソーム準備液を供するステップと、
前記リポソーム準備液のリポソーム外相を置換または希釈することにより、リポソーム外相における前記シクロデキストリンの濃度を調整するステップと
を含む、[1]〜[3]のいずれかに記載の方法。
[5]
前記導入するステップが、混合するステップにより得られた混合液におけるリポソームの膜透過性を上げるステップを含む、[1]〜[4]のいずれかに記載の方法。
[6]
前記導入するステップが、前記混合液をリポソームの脂質二重膜の相転移温度以上に昇温するステップを含む、[1]〜[5]のいずれかに記載の方法。
[7]
[1]〜[6]のいずれかに記載の方法で製造されたリポソーム組成物。
[8]
前記活性化合物が抗腫瘍剤である、[7]に記載のリポソーム組成物。
[9]
リポソームを含み、リポソーム内相にシクロデキストリンおよび活性化合物をさらに含むリポソーム組成物であって、活性化合物が(8E、12E、14E)−7−{(4−シクロヘプチルピペラジン−1−イル)カルボニル}オキシ−3、6、16、21−テトラヒドロキシ−6、10、12、16、20−ペンタメチル−18、19−エポキシトリコサ−8、12、14−トリエン−11−オリド(E7107)、エリブリン、ドキソルビシン、エピルビシン、ピラルビシン、ダウノルビシン、ドセタキセルおよびパクリタキセルならびにこれらの薬理学的に許容される塩からなる群から選択される、リポソーム組成物。
[10]
前記活性化合物がメシル酸エリブリンである、[9]に記載のリポソーム組成物。
[11]
前記リポソーム組成物が固体状または液体状である、[7]〜[10]のいずれかに記載のリポソーム組成物。
[12]
リポソーム内相に活性化合物を含むリポソーム組成物を調製するためのキットであって、リポソームを含み、リポソーム内相にシクロデキストリンをさらに含むリポソーム試薬を含む、キット。
[13]
前記リポソーム試薬が固体状または液体状である、[12]に記載のキット。
[14]
前記リポソーム試薬を含み、活性化合物をさらに含む、[12]または[13]に記載のキット。
[15]
前記活性化合物が抗腫瘍剤である、[14]に記載のキット。
本発明によれば、新規なリポソーム組成物の製造方法を提供することができる。本発明のリポソームの製造方法により高い効率でリポソーム内相へ活性化合物を封入することができる。また、当該方法により製造されるリポソームは、活性化合物の高い保持安定性を有する。
in vitroラット血漿中(37℃)でのE7107の保持安定性を示す。 in vitroラット血漿中(37℃)でのメシル酸エリブリンの保持安定性を示す。 in vivo WiDr担癌ヌードマウスでのE7107の血中滞留性および腫瘍移行性を示す。 in vivo WiDr担癌ヌードマウスでのE7107の血中滞留性および腫瘍移行性を示す。 in vivo WiDr担癌ヌードマウスでのリポソームによるメシル酸エリブリンの抗腫瘍活性を示す。 in vivo FaDu担癌ヌードマウスでのリポソームによるメシル酸エリブリンの抗腫瘍活性を示す。 in vivo FaDu担癌ヌードマウスでのリポソームによるメシル酸エリブリンの抗腫瘍活性を示す。 in vivo ACHN担癌ヌードマウスでのリポソームによるメシル酸エリブリンの抗腫瘍活性を示す。
本発明を、発明を実施するための形態により具体的に説明するが、本発明は、以下の発明を実施するための形態に限定されるものではなく、種々変形して実施することができる。
本発明において参照される文献に開示されている内容は、本発明に参照として取り込まれる。
[定義]
「リポソーム」とは、脂質二重層により包囲された内相を有する微細閉鎖小胞を意味する。本発明において、リポソームは、小さな1枚膜リポソーム(SUV:small unilamellar vesicle)、大きな1枚膜リポソーム(LUV:large unilamellar vesicle)、さらに大きな1枚膜リポソーム(GUV:giant unilamellar vesicle)、同心円状の複数の膜を有する多重層リポソーム(MLV:multilamellar vesicle)、同心円状でなく不規則に複数の膜を有するリポソーム(MVV:Multivesicular vesicle)等を含む。
「リポソーム内相」は、リポソームの脂質二重層に包囲された水性領域を意味し、「内水相」および「リポソーム内水相」と同義で用いる。「リポソーム外相」は、リポソームが液体中に分散している場合に、リポソームの脂質二重層に包囲されていない領域(すなわち、内相および脂質二重層以外の領域)を意味する。
「リポソーム組成物」とは、リポソームを含み、リポソーム内相にシクロデキストリンと活性化合物とをさらに含む組成物を意味する。本発明において、リポソーム組成物は、固体状および液体状のものを含む。
「リポソーム分散液」とは、リポソームを含み、リポソーム内相にシクロデキストリンをさらに含む組成物であって、リポソーム外相のシクロデキストリン濃度は調整されているが、リポソーム内相に活性化合物が導入される前の組成物を意味する。リポソーム外相におけるシクロデキストリンの濃度の調整については後述するが、リポソーム分散液としては、リポソーム外相のシクロデキストリン濃度が、リポソーム内相の濃度よりも低い分散液や、リポソーム外相にシクロデキストリンが実質的に含まれない分散液が挙げられる。
なお、シクロデキストリンによる活性化合物の溶解度(みかけの溶解度)の向上が有意に認められる場合、シクロデキストリンを実質的に含むと言い、リポソーム外相が、シクロデキストリンを実質的に含まないとは、リポソーム外相が、シクロデキストリンによる活性化合物の溶解度(みかけの溶解度)の向上が有意に認められる量のシクロデキストリンを含まないことを意味する。
「リポソーム準備液」とは、リポソームを含み、リポソーム内相およびリポソーム外相にシクロデキストリンをさらに含む組成物であって、リポソーム外相のシクロデキストリン濃度が調整される前の組成物を意味する。
「リポソーム試薬」とは、液体状の場合、リポソーム分散液を意味し、固体状の場合は、所定の溶媒に溶解または懸濁することでリポソーム分散液を得ることのできる試薬を意味する。溶媒については後述する。後述するように、固体状のリポソーム試薬は、例えばリポソーム分散液を乾燥させることで得られる。
なお、本明細書において、固体と液体を混合するとは、固体を液体に溶解することと懸濁することとを包含するものとし、混合、溶解、懸濁は互いに交換可能に用いる。同様に、溶媒と分散媒も互いに交換可能に用いる。
[活性化合物]
本発明における活性化合物は、シクロデキストリンと複合体を形成する化合物であれば特に限定されるものではない。活性化合物は、医薬(診断薬を含む)、化粧料、食品などの分野において用いられる化合物から選択することができる。活性化合物は、1種の化合物または2種以上の化合物の組み合わせであってもよい。
活性化合物としては、低分子化合物等が挙げられ、中でも、抗腫瘍剤、抗菌剤、抗炎症剤、抗心筋梗塞剤、造影剤として用いられる化合物が好適である。
活性化合物は、分子量が100〜2000であるものが好ましく、200〜1500であるものがより好ましく、300〜1000であるものがさらに好ましい。一般にこれらの範囲において、活性化合物のリポソーム膜透過性が良好であり、好適に本発明を適用できる。
活性化合物は、水溶性化合物および脂溶性化合物を含み、水または水性溶媒へ少なくとも多少とも溶解するものであれば、本発明を適用することができる。
また、後述するように本発明は、活性化合物とシクロデキストリンとの相互作用を利用するものであり、シクロデキストリンの存在下で、シクロデキストリンの非存在下よりも溶解度(みかけの溶解度)が上昇する活性化合物であれば、本発明を適用することができる。理論に拘束されるものではないが、活性化合物の分子全体または分子の一部がシクロデキストリンの環状構造内部(空孔)に包接されることにより、活性化合物の溶解度(みかけの溶解度)が、シクロデキストリンを含まない水または水性溶媒中での溶解度よりも上昇すると考えられる。例えば、α−シクロデキストリンの空孔内径は0.45〜0.6nm、β−シクロデキストリンの空孔内径は0.6〜0.8nm、γ−シクロデキストリンの空孔内径は0.8〜0.95nmと言われており、活性化合物が、これら空孔内径と相互作用(包接)できる領域(特に疎水性領域)を有している場合、活性化合物はシクロデキストリン存在下で溶解度が上昇すると考えられる。
また、近年は、ヒドロキシ−β−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、スルフォブチルエーテル−β−シクロデキストリンのようなシクロデキストリンが入手可能であり、これらシクロデキストリンでも活性化合物の溶解度を上昇させることができる。しかしながら、これらシクロデキストリンの場合には、活性化合物の溶解度上昇は必ずしもシクロデキストリンの環状構造内部(空孔)への包接によるものではなく、ヒドロキシ基やスルフォブチルエーテル基との分子間相互作用によるものであることが知られている。本発明においては、このような分子間相互作用に基づく溶解度上昇でもよい。
本発明において、抗腫瘍剤としては、特に限定されないが、例えば、塩酸イリノテカン、塩酸ノギテカン、エキサテカン、RFS−2000、Lurtotecan、BNP−1350、Bay−383441、PNU−166148、IDEC−132、BN−80915、DB−38、DB−81、DB−90、DB−91、CKD−620、T−0128、ST−1480、ST−1481、DRF−1042、DE−310等のカンプトテシン誘導体;ドセタキセル水和物、ドセタキセル、パクリタキセル、IND−5109、BMS−184476、BMS−188797、T−3782、TAX−1011、SB−RA−31012、SBT−1514、DJ−927等のタキサン誘導体;イホスファミド、塩酸ニムスチン、カルボコン、シクロホスファミド、ダカルバジン、チオテパ、ブスルファン、メルファラン、ラニムスチン、リン酸エストラムスチンナトリウム、6−メルカプトプリンリボシド、エノシタビン、塩酸ゲムシタビン、カルモフール、シタラビン、シタラビンオクホスファート、テガフール、ドキシフルリジン、ヒドロキシカルバミド、フルオロウラシル、メトトレキサート、メルカプトプリン、リン酸フルダラビン、アクチノマイシンD、塩酸アクラルビシン、塩酸イダルビシン、塩酸ピラルビシン、塩酸エピルビシン、塩酸ダウノルビシン、塩酸ドキソルビシン、エピルビシン、ピラルビシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、塩酸ピラルビシン、塩酸ブレオマイシン、ジノスタチンスチマラマー、ネオカルチノスタチン、マイトマイシンC、硫酸ブレオマイシン、硫酸ペプロマイシン、エトポシド、酒石酸ビノレルビン、硫酸ビンクリスチン、硫酸ビンデシン、硫酸ビンブラスチン、塩酸アムルビシン、ゲフィニチブ、エキセメスタン、カペシタビン、TNP−470、TAK−165、KW−2401、KW−2170、KW−2871、KT−5555、KT−8391、TZT−1027、S−3304、CS−682、YM−511、YM−598、TAT−59、TAS−101、TAS−102、TA−106、FK−228、FK−317、E7070、(8E、12E、14E)−7−{(4−シクロヘプチルピペラジン−1−イル)カルボニル}オキシ−3、6、16、21−テトラヒドロキシ−6、10、12、16、20−ペンタメチル−18、19−エポキシトリコサ−8、12、14−トリエン−11−オリド(E7107)、エリブリン、メシル酸エリブリン、KRN−700、KRN−5500、J−107088、HMN−214、SM−11355、ZD−0473等を挙げることができる。上記抗腫瘍剤において、塩として記載している化合物は、任意の塩であってもよく、フリー体であってもよい。また、フリー体として記載している化合物は、任意の塩であってもよい。活性化合物としては、上記化合物またはその薬理学的に許容される塩からなる群から選択されるが、例えば、(8E、12E、14E)−7−{(4−シクロヘプチルピペラジン−1−イル)カルボニル}オキシ−3、6、16、21−テトラヒドロキシ−6、10、12、16、20−ペンタメチル−18、19−エポキシトリコサ−8、12、14−トリエン−11−オリド(E7107)、エリブリン、ドキソルビシン、エピルビシン、ピラルビシン、ダウノルビシン、ドセタキセルおよびパクリタキセルならびにこれらの薬理学的に許容される塩からなる群から選択される。
抗菌剤としては、特に限定されないが、例えば、アンホテリシンB、セフォチアム−ヘキセシル、セファロスポリン、クロラムフェニコール、ジクロフェナック等を挙げることができる。上記抗菌剤において、化合物は、任意の塩であってもよい。
抗炎症剤としては、特に限定されないが、例えば、プロスタグランジン類(PGE1、PGE2)、デキサメサゾン、ハイドロコルチゾン、ピロキシカム、インドメタシン、プレドニゾロン等を挙げることができる。上記抗炎症剤において、化合物は、任意の塩であってもよい。
抗心筋梗塞剤としては、特に限定されないが、例えば、アデノシン、アテノロール、ピルジカイニド等を挙げることができる。上記抗心筋梗塞剤において、化合物は、任意の塩であってもよい。
造影剤としては、特に限定されないが、例えば、イオパミドール、イオキサグル酸、イオヘキソール、イオメプロール等を挙げることができる。上記造影剤において、化合物は、任意の塩であってもよい。
[シクロデキストリン]
本発明において、シクロデキストリンは、活性化合物と複合体を形成するものであれば、特に限定されるものではない。シクロデキストリンは、複数のグルコース単位が環状にα−(1,4)−結合したものであり、種々の置換基を有してもよい。6〜8個のグルコース単位により構成されるシクロデキストリン(それぞれα、β、γ−シクロデキストリンと呼ばれる。)およびこれらの誘導体が安定であり好ましい。
シクロデキストリンは、活性化合物等に応じて適宜選択することができる。具体的には、シクロデキストリン自体の水への溶解度が高いことが好ましい。これにより、より多くのシクロデキストリンをリポソーム内相に封入することが容易となる。より具体的には、シクロデキストリンは、水への溶解度が10mg/mL以上であるものが好ましく、50mg/mL以上であるものがより好ましく、100mg/mL以上であるものがさらに好ましい。
また、シクロデキストリンは、活性化合物との会合定数の大きいものが好ましい。例えば、活性化合物の大きさに応じてシクロデキストリンにおけるグルコース単位の数を選択することでより高い会合定数を得ることができる。また、会合定数がpHに依存する場合には、リポソーム内相のpHにおける会合定数が大きくなるようシクロデキストリンを選択することが好ましい。これらによりシクロデキストリン存在下での活性化合物の溶解度(みかけの溶解度)をより向上させることができる。具体的には、活性化合物とシクロデキストリンの会合定数が、100以上であることが好ましく、1000以上であることがより好ましい。
さらに、目的に応じて、シクロデキストリン自体の安全性や使用実績などに応じて好ましいシクロデキストリンを選択することができる。
具体的には、シクロデキストリンとして、例えば、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、ヘキサキス(2,3,6−トリ−O−アセチル)−α−シクロデキストリン、ヘプタキス(2,3,6−トリ−O−アセチル)−β−シクロデキストリン、オクタキス(2,3,6−トリ−O−アセチル)−γ−シクロデキストリン、アセチル化α−シクロデキストリン、アセチル化β−シクロデキストリン、アセチル化γ−シクロデキストリン、ヘキサキス(2,3,6−トリ−O−メチル)−α−シクロデキストリン、ヘプタキス(2,3,6−トリ−O−メチル)−β−シクロデキストリン、オクタキス(2,3,6−トリ−O−メチル)−γ−シクロデキストリン、ヘキサキス(2,6−ジ−O−メチル)−α−シクロデキストリン、ヘプタキス(2,6−ジ−O−メチル)−β−シクロデキストリン、オクタキス(2,6−ジ−O−メチル)−γ−シクロデキストリン、部分メチル化α−シクロデキストリン、部分メチル化β−シクロデキストリン、部分メチル化γ−シクロデキストリン、2−O−(2−ヒドロキシ)プロピル−α−シクロデキストリン、2−O−(2−ヒドロキシ)プロピル−β−シクロデキストリン、2−O−(2−ヒドロキシ)プロピル−γ−シクロデキストリン、(2−ヒドロキシ)プロピル−α−シクロデキストリン(ヒドロキシプロピル−α−シクロデキストリン、HP−α−シクロデキストリン)、(2−ヒドロキシ)プロピル−β−シクロデキストリン(ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、HP−β−シクロデキストリン)、(2−ヒドロキシ)プロピル−γ−シクロデキストリン(ヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリン、HP−γ−シクロデキストリン)、カルボキシルメチル化α−シクロデキストリン、カルボキシルメチル化β−シクロデキストリン、カルボキシルメチル化γ−シクロデキストリン、スクシニル化α−シクロデキストリン、スクシニル化β−シクロデキストリン、スクシニル化γ−シクロデキストリン、ヘプタキス(3−O−アリル−2,6−ジ−O−メチル)−β−シクロデキストリン、カルボキシルエチル化α−シクロデキストリン、カルボキシルエチル化β−シクロデキストリン、カルボキシルエチル化γ−シクロデキストリン、ヘキサキス(2,6−ジ−O−n−ペンチル)−α−シクロデキストリン、ヘプタキス(2,6−ジ−O−n−ペンチル)−β−シクロデキストリン、オクタキス(2,6−ジ−O−n−ペンチル)−γ−シクロデキストリン、ヘキサキス(3−O−n−ブチル−2,6−ジ−O−n−ペンチル)−α−シクロデキストリン、ヘプタキス(3−O−n−ブチル−2,6−ジ−O−n−ペンチル)−β−シクロデキストリン、オクタキス(3−O−n−ブチル−2,6−ジ−O−n−ペンチル)−γ−シクロデキストリン、ヘプタキス(2,6−ジ−O−n−ブチル)−β−シクロデキストリン、n−ブチル化α−シクロデキストリン、n−ブチル化β−シクロデキストリン、n−ブチル化γ−シクロデキストリン、ヘキサキス(2,3,6−トリ−O−ベンゾイル)−α−シクロデキストリン、ヘプタキス(2,3,6−トリ−O−ベンゾイル)−β−シクロデキストリン、オクタキス(2,3,6−トリ−O−ベンゾイル)−γ−シクロデキストリン、パルミチル化β−シクロデキストリン、6−O−モノトシル化β−シクロデキストリン、エチル化α−シクロデキストリン、エチル化β−シクロデキストリン、エチル化γ−シクロデキストリン、ヘプタキス(2,6−ジ−O−エチル)−β−シクロデキストリン、ヘキサキス(2,3,6−トリ−O−エチル)−α−シクロデキストリン、ヘプタキス(2,3,6−トリ−O−エチル)−β−シクロデキストリン、オクタキス(2,3,6−トリ−O−エチル)−γ−シクロデキストリン、6−モノデオキシ−6−モノアミノ−β−シクロデキストリン塩酸塩、ヘキサキス(3−O−アセチル−2,6−ジ−O−n−ペンチル)−α−シクロデキストリン、ヘプタキス(3−O−アセチル−2,6−ジ−O−n−ペンチル)−β−シクロデキストリン、オクタキス(3−O−アセチル−2,6−ジ−O−n−ペンチル)−γ−シクロデキストリン、ヘキサキス(2,6−ジ−O−n−ペンチル−3−O−トリフルオロアセチル)−α−シクロデキストリン、ヘプタキス(2,6−ジ−O−n−ペンチル−3−O−トリフルオロアセチル)−β−シクロデキストリン、オクタキス(2,6−ジ−O−n−ペンチル−3−O−トリフルオロアセチル)−γ−シクロデキストリン、ヘキサキス(2,6−ジ−O−メチル−3−O−n−ペンチル)−α−シクロデキストリン、ヘプタキス(2,6−ジ−O−メチル−3−O−n−ペンチル)−β−シクロデキストリン、オクタキス(2,6−ジ−O−メチル−3−O−n−ペンチル)−γ−シクロデキストリン、(2−ヒドロキシ)エチル化α−シクロデキストリン、(2−ヒドロキシ)エチル化β−シクロデキストリン、(2−ヒドロキシ)エチル化γ−シクロデキストリン、ヘキサキス(2,3,6−トリ−O−n−オクチル)−α−シクロデキストリン、ヘプタキス(2,3,6−トリ−O−n−オクチル)−β−シクロデキストリン、オクタキス(2,3,6−トリ−O−n−オクチル)−γ−シクロデキストリン、ヘキサキス(2,3−ジ−O−アセチル−6−O−tert−ブチルジメチルシリル)−α−シクロデキストリン、ヘプタキス(2,3−ジ−O−アセチル−6−O−tert−ブチルジメチルシリル)−β−シクロデキストリン、オクタキス(2,3−ジ−O−アセチル−6−O−tert−ブチルジメチルシリル)−γ−シクロデキストリン、スクシニル化(2−ヒドロキシ)プロピルα−シクロデキストリン、スクシニル化(2−ヒドロキシ)プロピルβ−シクロデキストリン、スクシニル化(2−ヒドロキシ)プロピルγ−シクロデキストリン、ヘキサキス(6−O−tert−ブチルジメチルシリル)−α−シクロデキストリン、ヘプタキス(6−O−tert−ブチルジメチルシリル)−β−シクロデキストリン、オクタキス(6−O−tert−ブチルジメチルシリル)−γ−シクロデキストリン、ヘキサキス(6−O−tert−ブチルジメチルシリル−2,3−ジ−O−メチル)−α−シクロデキストリン、ヘプタキス(6−O−tert−ブチルジメチルシリル−2,3−ジ−O−メチル)−β−シクロデキストリン、オクタキス(6−O−tert−ブチルジメチルシリル−2,3−ジ−O−メチル)−γ−シクロデキストリン、ヘキサキス(2,6−ジ−O−tert−ブチルジメチルシリル)−α−シクロデキストリン、ヘプタキス(2,6−ジ−O−tert−ブチルジメチルシリル)−β−シクロデキストリン、オクタキス(2,6−ジ−O−tert−ブチルジメチルシリル)−γ−シクロデキストリン、オクタメシチレン−γ−シクロデキストリン、ヘキサキス(2,3,6−トリ−O−トリフルオロアセチル)−α−シクロデキストリン、ヘプタキス(2,3,6−トリ−O−トリフルオロアセチル)−β−シクロデキストリン、オクタキス(2,3,6−トリ−O−トリフルオロアセチル)−γ−シクロデキストリン、スルホプロピル化α−シクロデキストリン、スルホプロピル化β−シクロデキストリン、スルホプロピル化γ−シクロデキストリン、6−O−モノマルトシル−β−シクロデキストリン、6−O−マルトシル−β−シクロデキストリン(いわゆるG2−β−シクロデキストリン)、(2−カルボメトキシ)プロポキシ−β−シクロデキストリン、ヘプタキス(3−O−アセチル−2,6−ジ−O−n−ブチル)−β−シクロデキストリン、(2−シアノ)エチル−α−シクロデキストリン、(2−シアノ)エチル−β−シクロデキストリン、(2−シアノ)エチル−γ−シクロデキストリン、6−モノデオキシ−6−モノアジド−β−シクロデキストリン、6−モノデオキシ−6−モノイオド−β−シクロデキストリン、6A,6E−ジデオキシ−6A,6B−ジイオド−β−シクロデキストリン、6−モノデオキシ−6−モノブロモ−β−シクロデキストリン、6A,6B−ジデオキシ−6A,6B−ジブロモ−β−シクロデキストリン、スルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン(いわゆるSBE−β−シクロデキストリン;カプチゾール)等を挙げることができる。シクロデキストリンは、これらのうち1種または2種以上の組み合わせであってもよい。
これらのうち、水溶性の高いシクロデキストリン類が好ましいが、より好ましくはα−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、HP−α−シクロデキストリン、HP−β−シクロデキストリン、HP−γ−シクロデキストリン、G2−β−シクロデキストリン、SBE−β−シクロデキストリンであり、更に好ましくはα−シクロデキストリン、HP−β−シクロデキストリン、SBE−β−シクロデキストリンを挙げることができる。
[脂質]
本発明のリポソームは、膜構成成分として、リン脂質および/またはリン脂質誘導体を含むことが好ましい。リン脂質およびリン脂質誘導体としては、例えば、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、カルジオリピン、スフィンゴミエリン、セラミドホスホリルエタノールアミン、セラミドホスホリルグリセロール、セラミドホスホリルグリセロールホスファート、1,2−ジミリストイル−1,2−デオキシホスファチジルコリン、プラスマロゲン、ホスファチジン酸等を挙げることができる。リン脂質およびリン脂質誘導体は、これらのうち1種または2種以上の組み合わせであってもよい。
リン脂質およびリン脂質誘導体における脂肪酸残基は特に限定されないが、例えば、炭素数12〜20の飽和または不飽和の脂肪酸残基を挙げることができ、具体的には、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸等の脂肪酸由来のアシル基を挙げることができる。また、卵黄レシチン、大豆レシチン等の天然物由来のリン脂質、および不飽和脂肪酸残基に部分的にまたは完全に水素添加した部分水素添加卵黄レシチン、(完全)水素添加卵黄レシチン、部分水素添加大豆レシチン、(完全)水素添加大豆レシチン等を用いることもできる。
リポソームを調製する際に用いるリン脂質および/またはリン脂質誘導体の配合量(モル分率)は、特に限定されないが、リポソーム膜成分全体に対して10〜80%が好ましく、30〜60%がより好ましい。
本発明のリポソームは、膜構成成分として、リン脂質および/またはリン脂質誘導体以外に、膜安定化剤としてコレステロール、コレスタノール等のステロール類、炭素数8〜22の飽和または不飽和のアシル基を有する脂肪酸類、α−トコフェロール等の酸化防止剤を含んでもよい。
リポソームを調製する際に用いるこれらステロール類の配合量(モル分率)は、特に限定されないが、リポソーム膜成分全体に対して、1〜60%が好ましく、10〜50%がより好ましく、30〜50%がさらに好ましい。また、脂肪酸類の配合量(モル分率)は、特に限定されないが、リポソーム膜成分全体に対して、0〜30%が好ましく、0〜20%がより好ましく、0〜10%がさらに好ましい。酸化防止剤の配合量(モル分率)は酸化防止効果が得られる量が添加されれば十分であるが、リポソーム膜成分全体の0〜15%が好ましく、0〜10%がより好ましく、0〜5%がさらに好ましい。
本発明のリポソームは、膜構成成分として、機能性脂質または修飾脂質を含有していてもよい。
機能性脂質として、血中滞留性脂質誘導体、温度変化感受性脂質誘導体、pH感受性脂質誘導体等を挙げることができる。修飾脂質として、PEG化脂質、糖脂質、抗体修飾脂質、ペプチド修飾脂質等が挙げられる。
血中滞留性脂質誘導体としては、例えば、グリコフォリン、ガングリオシドGM1、ガングリオシドGM3、グルクロン酸誘導体、グルタミン酸誘導体、ポリグリセリンリン脂質誘導体、ホスフォエタノールアミンとメトキシポリエチレングリコールの縮合体である、N−{カルボニル−メトキシポリエチレングリコール−2000}−1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスフォエタノールアミン、N−{カルボニル−メトキシポリエチレングリコール−5000}−1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスフォエタノールアミン、N−{カルボニル−メトキシポリエチレングリコール−750}−1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスフォエタノールアミン、N−{カルボニル−メトキシポリエチレングリコール−2000}−1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスフォエタノールアミン(MPEG2000−ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン)、N−{カルボニル−メトキシポリエチレングリコール−5000}−1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスフォエタノールアミン等のポリエチレングリコール誘導体(メトキシポリエチレングリコール縮合体など)等を挙げることができる。リポソームが血中滞留性脂質誘導体を含有することにより、リポソームが外来異物として肝臓などにおいて捕捉されにくくなることで、リポソームの血中滞留性を向上させることなどが可能となる。
温度変化感受性脂質誘導体としては、例えば、ジパルミトイルホスファチジルコリン等を挙げることができる。リポソームが温度変化感受性脂質誘導体を含有することにより、特定の温度においてリポソームを崩壊させる、リポソームの表面特性を変化させるなどが可能となる。さらに腫瘍等の標的部位の加温と組み合わせることで、標的部位でリポソームが崩壊し、標的部位に活性化合物を放出させることなどが可能となる。
pH感受性脂質誘導体としては、例えば、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン等を挙げることができる。リポソームがpH感受性脂質誘導体を含有することにより、エンドサイトーシスによりリポソームが細胞へ取り込まれる際にリポソームとエンドソームとの膜融合を促し、活性化合物の細胞質への送達を改良することなどが可能となる。
糖脂質、抗体修飾脂質およびペプチド修飾脂質としては、標的細胞または標的組織に親和性のある糖、抗体またはペプチドを結合した脂質が挙げられる。修飾脂質を用いることで、能動的にリポソームを標的細胞または標的組織に送達することができる。
リポソームを調製する際に用いる機能性脂質または修飾脂質の配合量(モル分率)は、特に限定されないが、リポソーム膜構成成分脂質全体の0〜50%が好ましく、0〜30%がより好ましく、0〜20%がさらに好ましい。
[リポソーム]
上記した通り、リポソームは脂質二重層により包囲された内相を有する微細閉鎖小胞である。
理想的には、リポソームは、a)リポソーム準備液の外相を置換又は希釈した後では、シクロデキストリンがリポソーム内相から外相には漏れ出ないバリア能を有しており、b)活性化合物をリポソーム外相から内相に導入するステップでは活性化合物を透過させ、しかもシクロデキストリンが外相には漏れ出ないバリア能を同時に併せ持つ膜透過性を有し、c)活性化合物を内相にいったん封入した後では、活性化合物とシクロデキストリンとの複合体(「活性化合物/シクロデキストリン複合体」とも記す)ならびに仮に存在する場合はフリーの(複合体を形成していない)活性化合物およびシクロデキストリンのいずれもリポソーム外相には漏れ出ないバリア能を有していることが好ましい。また、医薬として用いる場合、リポソームは生体内で安定であることが好ましく、また、リポソームは、生体に投与した際に血中では活性化合物/シクロデキストリン複合体ならびに仮に存在する場合はフリーの活性化合物およびシクロデキストリンのいずれもリポソーム外相には漏れ出ないバリア能を有することが好ましい。
実用可能なレベルでこのような膜透過性を有するリポソームのための膜構成成分の組成は、当業者であれば、必要に応じて後述する実施例を参照することで、活性化合物やシクロデキストリン、標的組織などに応じて適宜設定することができる(菊池寛他、「リポソームI−調製法と検定法−」、細胞工学, (1983), 2(9):pp.1136-1149および当該文献に引用される文献等参照)。
なお、生体膜と同様にリポソーム膜の物質透過性は、その物質の分子量に大きく依存し、一般的には分子量1000前後を境界として透過性が大きく変化すると考えられている。偶然にも安定なシクロデキストリンのうち一番小さなシクロデキストリンであるα―シクロデキストリンの分子量が973であり、β−シクロデキストリンの分子量が1135、γ−シクロデキストリンの分子量が1297、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HP−β―シクロデキストリン)の分子量が1380〜1480であり、シクロデキストリンはリポソーム膜透過性が低い。このため、シクロデキストリンに応じて膜構成成分等を適切に設定することで、シクロデキストリンが一度リポソーム内相に封入されれば、後述するように温度を上げるなどにより膜流動性を上げたとしても、シクロデキストリンのリポソーム外相への漏出を十分に抑制することができる。一方で、活性化合物に応じて膜構成成分等を適切に設定することで、活性化合物はリポソーム膜を透過できる。活性化合物はリポソーム内相に入ると、シクロデキストリンとの複合体(一般に分子量が1000を大きく超える)を形成し、リポソーム膜透過性が極めて低くなる。
理論に拘束されるものではないが、このように、シクロデキストリンは、それ自身のリポソーム膜透過性が十分に低い性質のみならず、活性化合物と複合体を形成することで、シクロデキストリンの溶解度(みかけの溶解度)を上昇させ、さらに活性化合物と複合体を形成することで、活性化合物のリポソーム膜透過性を低下させる性質を有し、偶然ではあるが、本発明によるリポソームによる活性化合物の封入および保持にとって理想的な性質を有する。
なお、医薬として用いる場合、リポソームが、標的組織、細胞または細胞内小器官に到達した後は、活性化合物または活性化合物/シクロデキストリン複合体がリポソームから放出されることが好ましい。リポソームは、一般に膜構成成分自体は生分解性であり、最終的には標的組織等で分解される。これにより、封入されていた活性化合物/シクロデキストリン複合体(および存在する場合はフリーの活性化合物)が放出されると考えられる。更に最終的には、活性化合物/シクロデキストリン複合体は、希釈効果、化学平衡または酵素によるシクロデキストリンの分解によってフリーの活性化合物を放出すると考えられる。また、リポソーム自体が細胞に取り込まれてもよい。
また、リポソーム組成物は固形癌などの標的組織へのターゲティングばかりでなく、血液癌などへの活性化合物の送達にも用いることができ、血中での徐放性製剤(slow release formulation)や放出制御製剤(controlled release formulation)等として用いることも可能である。
リポソームの粒子径は目的に応じて設定することができる。例えば、注射剤等としてEPR(Enhanced Permeability and Retention)効果により癌組織や炎症組織へとリポソームを送達することを意図する場合、リポソームの粒子径は、好ましくは30〜400nm、より好ましくは50〜200nmである。また、マクロファージへとリポソームを送達することを意図する場合、リポソームの粒子径は、好ましくは30〜1000nm、より好ましくは100〜400nmである。また、リポソーム組成物を経口製剤や経皮製剤として用いる場合など、リポソームの粒子径は、数ミクロンとすることができる。なお、(1)正常組織では(血管内皮細胞が密に血管壁を構成しているため)血管壁がバリアーとなり、高分子や特定の大きさのリポソームのような微細粒子は組織内に分布できないが、病変組織では(血管内皮細胞間に隙間ができていて)血管壁がルーズとなって血管透過性が亢進しており、高分子や微細粒子は血管外の組織に分布でき(enhanced permeability)、また、(2)正常組織ではリンパ系が発達しているが、病変組織ではリンパ系が発達していないためにいったん取り込まれた高分子や微細粒子が全身系に回収されずにその病変組織に留まる(enhanced retention)ことが知られており、EPR効果と呼ばれている(松村、前田, Cancer Research, (1986), 46:pp.6387-6392)。これにより、リポソームの粒子径を調整することで、体内動態を制御することができる。
なお、本発明において、リポソームの粒子径は、動的光散乱法(準弾性光散乱法)による重量平均粒子径を意味する。ここでは動的光散乱(Dynamic Light Scattering)測定器(例えば、Malvern Instruments Ltd社製Zetasizer Nano ZSモデルや大塚電子株式会社製ELS-8000)により測定された粒子径を示す。測定器は粒子のブラウン運動を測定し、確立された動的光散乱法理論に基づいて粒子径を決定している。
リポソーム内相の溶媒は特に限定されるべきものではなく、例えば、リン酸塩緩衝液、クエン酸塩緩衝液、リン酸塩緩衝化生理食塩液等の緩衝液、生理食塩水、細胞培養用の培地などを挙げることができる。溶媒として、緩衝液を用いる場合には、緩衝剤の濃度が5〜300mMであることが好ましく、10〜100mMであることがより好ましい。リポソーム内相のpHは、特に限定されるものではないが、3〜11が好ましく、4〜9がより好ましい。
[リポソーム組成物]
本発明によるとリポソーム組成物が提供される。リポソーム組成物は、リポソームを含み、リポソーム内相にシクロデキストリンおよび活性化合物をさらに含む。上記した通り、リポソーム組成物は、固体状および液体状のものを含む。リポソーム組成物が固体状のものの場合、後述するように所定の溶媒に溶解または懸濁することで、液体状のものとすることができる。また、リポソーム組成物が凍結した固体の場合には室温放置等により融解させることで、液体状のものとすることができる。
リポソーム組成物におけるリポソームの濃度および活性化合物の濃度は、リポソーム組成物の目的、剤形等に応じて適宜設定することができる。リポソーム組成物が液剤の場合において、リポソームの濃度はリポソームの構成成分である全脂質の濃度として、0.2〜100mM、好ましくは1〜30mMとすることができる。リポソーム組成物を医薬として用いる場合における活性化合物の濃度(用量)については後述する。リポソーム組成物におけるシクロデキストリンの量は、活性化合物に対して0.1〜1000モル当量が好ましく、1〜100モル当量がより好ましい。
本発明におけるリポソームは、脂質二重層に活性化合物およびシクロデキストリンが分配されていてもよい。
リポソーム組成物が液剤の場合におけるリポソーム組成物の溶媒(分散媒)は特に限定されるべきものではなく、例えば、リン酸塩緩衝液、クエン酸塩緩衝液、リン酸塩緩衝化生理食塩液等の緩衝液、生理食塩水、細胞培養用の培地などを挙げることができる。リポソーム組成物におけるリポソーム外相のpHは、特に限定されるものではないが、3〜11が好ましく、4〜9がより好ましい。
リポソーム組成物には、さらに、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、イノシトール、リボース、キシロース等の単糖類、乳糖、ショ糖、セロビオース、トレハロース、マルトース等の二糖類、ラフィノース、メレジトース等の三糖類、シクロデキストリン等の多糖類、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、マルチトール等の糖アルコールなどの糖や、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、エチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、1,3−ブチレングリコールなどの多価アルコール等を加えてもよい。糖とアルコールとを組み合わせて用いてもよい。
この溶媒(分散媒)に分散したリポソームを安定に長期間保存するには、凝集などの物理的安定性の面から、溶媒(分散媒)中の電解質を極力なくすことが好ましい。また、脂質の化学的安定性の面から、溶媒(分散媒)のpHを酸性から中性付近(pH3.0〜8.0)に設定することや窒素バブリングにより溶存酸素を除去することが好ましい。
リポソーム組成物に含まれる糖または多価アルコールの濃度は特に限定されないが、リポソームが溶媒に分散した状態において、例えば、糖の濃度は、2〜20%(W/V)が好ましく、5〜10%(W/V)がより好ましい。多価アルコールの濃度は、1〜5%(W/V)が好ましく、2〜2.5%(W/V)がより好ましい。これら溶媒をリポソーム分散液におけるリポソーム外相として用いることもでき、リポソーム準備液のリポソーム外相をこれら溶媒で置換または希釈することで、リポソーム外相の溶液をこれら溶液とすることができる。
リポソーム組成物の固形製剤は、例えば、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、イノシトール、リボース、キシロース糖の単糖類、乳糖、ショ糖、セロビオース、トレハロース、マルトース等の二糖類、ラフィノース、メレジノース等の三糖類、シクロデキストリン等の多糖類、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、マルチトール等の糖アルコールなどの糖を含むことが好ましいが、より好ましくは、グルコース、乳糖、ショ糖、トレハロース、ソルビトールの配合であり、さらに好ましくは、乳糖、ショ糖、トレハロースの配合である。これにより、固形製剤を安定に長期間保存することができる。また、凍結する場合には、固形製剤は、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、エチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、1,3−ブチレングリコール等の多価アルコール(水溶液)を含むことが好ましい。多価アルコール(水溶液)は、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールがより好ましく、グリセリン、プロピレングリコールがさらに好ましい。これにより、固形製剤を安定に長期間保存することができる。糖と多価アルコールとを組み合わせて用いてもよい。
[リポソーム組成物の製造方法]
本発明によるとリポソーム組成物を製造する方法が提供される。リポソーム組成物を製造する方法は、リポソームを含み、リポソーム内相にシクロデキストリンをさらに含むリポソーム分散液を供するステップと、前記リポソーム分散液と活性化合物とを混合するステップと、前記リポソーム分散液のリポソーム内相に前記活性化合物を導入するステップとを含む。
リポソーム分散液を供するステップは、リポソーム準備液を供するステップと、前記リポソーム準備液のリポソーム外相を置換または希釈することにより、リポソーム外相における前記シクロデキストリンの濃度を調整するステップとを含むことが好ましい。
リポソーム準備液は、シクロデキストリン溶液中でリポソームを調製することで調製できる。シクロデキストリン溶液は、前記シクロデキストリンを含む溶液であれば特に限定されるものではない。
シクロデキストリン溶液におけるシクロデキストリンの濃度は、より濃いほど好ましく、シクロデキストリンの溶媒(後述)への溶解度や粘度等に応じて設定することができる。これによりリポソーム分散液のリポソーム内相におけるシクロデキストリン濃度をより濃くでき、より多くの活性化合物を封入できる。例えば、シクロデキストリン溶液におけるシクロデキストリンの濃度は、100〜250mM、好ましくは100〜200mMとすることができる。
シクロデキストリン溶液の溶媒としては、例えば、リン酸塩緩衝液、クエン酸塩緩衝液、リン酸塩緩衝化生理食塩液等の緩衝液、生理食塩水、細胞培養用の培地などを挙げることができる。シクロデキストリン溶液のpHは、適宜設定することができ特に限定されるものではないが、3〜11が好ましく、4〜9がより好ましく、5〜8がさらに好ましい。
シクロデキストリン溶液は、前記溶媒にシクロデキストリンを混合して溶解させることにより得ることができる。必要に応じて、例えば50℃程度に溶媒を加温して溶解させることにより、より迅速にシクロデキストリン溶液を得ることもできる。
リポソームの調製は、リピドフィルム法(ボルテックス法、)、逆相蒸発法、超音波法、プレーベジクル法、エタノール注入法、French Press法、コール酸除去法、Triton X−100バッチ法、Ca2+融合法、エーテル注入法、アニーリング法、凍結融解融合法等が挙げられる。
リポソームの調製における各種条件(膜構成成分の量、温度など)は、リポソームの調製方法や目的とするリポソームの組成、粒子径等に応じて適宜設定することができる(前掲、菊池(1983)等参照)。ただし、シクロデキストリンは、リポソームから脂質(特にコレステロールなど)を取り去る効果があることが知られている。このため、この効果を考慮し、リポソームの調製に用いる脂質の量を設定することが好ましい。
必要に応じて任意に、リポソームの粒子径を調整することができる。粒子径は、例えば孔径のそろったメンブランフィルターを用いて、高圧力下でイクストルージョン(押し出し濾過)を行うことで調整することができる。粒子径の調整は、本発明のリポソーム組成物の製造における任意のタイミングで行うことができ、例えば、リポソーム準備液におけるリポソーム外相を調整する前、リポソーム準備液におけるリポソーム外相を調整した後、または活性化合物をリポソーム内相へ導入した後に行うことができる。粒子径の調整は、活性化合物をリポソーム内相へ導入する前に行うことが好ましく、リポソーム準備液におけるリポソーム外相を調整する前に行うことがより好ましい。
得られたリポソーム準備液のリポソーム外相を置換または希釈することにより、リポソーム外相における前記シクロデキストリンの濃度を調整することで、リポソーム分散液を得ることができる。リポソーム外相の置換または希釈は、1回で行ってもよく、各種置換または希釈する方法を組み合わせて複数回行ってもよい。
リポソーム準備液のリポソーム外相を置換する方法としては、透析、遠心分離、ゲルろ過等の方法が挙げられる。
透析は、例えば、透析膜を用いて行うことができる。透析膜としては、セルロースチューブやスペクトラポア等の分子量で分画する膜が挙げられる。
遠心分離は、例えば、遠心加速度が、好ましくは100,000g以上、より好ましくは300,000g以上で実施することができる。遠心によりリポソーム外相を置換することで、リポソーム外相の置換とあわせて、リポソームの濃縮を行うことができる。
ゲルろ過は、例えば、SephadexやSepharose等のカラムを用いて、分子量に基づいて分画することにより実施することができる。
リポソーム準備液のリポソーム外相を希釈する方法としては、例えばシクロデキストリンを含有しない溶液をリポソーム外相に添加する方法が挙げられる。
リポソーム外相を置換および/または希釈する際に用いる溶媒(分散媒)としては、例えばリン酸塩緩衝液、クエン酸塩緩衝液、リン酸塩緩衝化生理食塩液等の緩衝液、生理食塩水、細胞培養用の培地などを挙げることができる。当該溶媒のpHは、特に限定されるものではないが、3〜11であることが好ましく、4〜10であることがより好ましく、5〜10がさらに好ましい。後述するように、活性化合物のリポソーム内相への導入にpH勾配を利用することもできる。この場合、リポソーム外相が目的のpHとなるように溶媒のpHを設定することができる。
得られたリポソーム分散液は、リポソーム外相に実質的にシクロデキストリンを含有していないことがより好ましい。これにより、より効果的に活性化合物をリポソーム内相に導入することができる。
しかしながら、何らかの理由でリポソーム分散液のリポソーム外相にシクロデキストリンを添加した場合など、リポソーム分散液が、リポソーム外相にシクロデキストリンを含有していても、活性化合物をリポソーム内相に導入することができる。この場合であっても、リポソーム分散液は、リポソーム外相と比べてより高濃度のシクロデキストリンをリポソーム内相に含むことが好ましい。特に、リポソーム外相のシクロデキストリン濃度がリポソーム内相のシクロデキストリン濃度と比して、1/2以下あることが好ましく、1/5以下であることがより好ましい。
必要に応じて任意に、活性化合物のリポソーム内相への導入にpH勾配を利用することもできる。この場合、リポソーム分散液におけるリポソーム内相およびリポソーム外相のpHの差は、好ましくは1〜5であり、より好ましくは2〜3である。活性化合物の種類に応じて、リポソーム内相と外相のいずれのpHを高くすることもできる。一方で、リポソーム内相とリポソーム外相のpHの差が実質的になくても、すなわち、リポソーム外相とリポソーム内相とのpHが実質的に同じであってもよい。pH勾配は、pH勾配法で用いられる従来公知の化合物を用いることにより調整できるが、例えばアルギニン、ヒスチジン、グリシンなどのアミノ酸、アスコルビン酸、安息香酸、クエン酸、グルタミン酸、リン酸、酢酸、プロピオン酸、酒石酸、炭酸、乳酸、ホウ酸、マレイン酸、フマル酸、りんご酸、アジピン酸、塩酸、硫酸などの酸、上記酸のナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などの塩、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、アンモニア水、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ性化合物等が挙げられる。
また、必要に応じて任意に、活性化合物のリポソーム内相への導入に硫酸アンモニウム等のイオン勾配を利用することもできる。この場合、リポソーム分散液におけるリポソーム内相およびリポソーム外相のイオン濃度の差は大きければ大きいほど良いが、好ましくは10mM以上、より好ましくは20mM以上、さらに好ましくは50mM以上あることが望ましい。
イオン勾配法において用いるイオンとしては、特に限定されるものではないが、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、ホウ酸アンモニウム、ギ酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、クエン酸アンモニウム、酒石酸アンモニウム、コハク酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等が挙げられる。また、イオン勾配法において、リポソーム内相のイオン濃度は、活性化合物の種類に応じて適宜選択できるが、高ければ高いほどよく、好ましくは10mM以上、より好ましくは20mM以上、さらに好ましくは50mM以上ある。活性化合物の種類に応じて、リポソーム内相と外相のいずれのイオン濃度を高くすることもできる。一方で、リポソーム内相とリポソーム外相のイオン濃度の差が実質的になくても、すなわち、リポソーム外相とリポソーム内相とのイオン濃度が実質的に同じであってもよい。リポソーム外相を置換または希釈することによっても、イオン勾配を調整することもできる。
リポソーム分散液におけるリポソームの脂質濃度は、1〜100mMであることが好ましく、1〜50mMであることがより好ましい。これらの範囲において、リポソーム分散液の物性を損なうことなく、より多くのリポソーム粒子を好適に形成することができる。
得られたリポソーム分散液と活性化合物とを混合し、リポソーム分散液のリポソーム内相に活性化合物を導入することで、リポソーム組成物を得ることができる。導入するステップは、リポソーム分散液と活性化合物との混合液におけるリポソームの膜透過性を上げるステップとを含むことが好ましい。これにより、活性化合物のリポソームへの封入をより短時間に行うことができる。しかしながら、リポソーム分散液と活性化合物とを混合した後、リポソームの膜透過性を上げるための操作を特に行わなくても、時間をかければ活性化合物をリポソームへ封入することができる。
活性化合物を混合するステップにおいて、活性化合物の物性に応じて、活性化合物として、溶媒に溶解したものや、固体状のものを用いることができる。溶媒は特に限定されるものではなく、例えば、リポソーム分散液におけるリポソーム外相と同じものを用いることができる。また、活性化合物の溶液を添加して活性化合物をリポソーム分散液と混合することもできる。混合する活性化合物の量は、リポソーム分散液におけるシクロデキストリンに対して好ましくは0.001〜10モル当量、より好ましくは0.01〜1モル当量である。
得られた混合液におけるリポソームの膜透過性を上げる方法として、混合液を加熱する方法、混合液に膜流動化剤を添加する方法等が挙げられる。
混合液を加熱する場合、一般的には、より高い温度に昇温することで、より効率的に活性化合物をリポソーム内相に導入できる。具体的には、活性化合物や用いるリポソーム膜構成成分の熱的安定性を考慮して、昇温する温度を設定することが好ましい。特に、昇温する温度は、リポソームの脂質二重膜の相転移温度以上とすることが好ましい。また、リポソーム内相に活性化合物を導入するステップにおいて、昇温する温度は特に限定されるものではないが、例えば、5℃以上であることが好ましく、室温、例えば、20℃以上であることがより好ましく。また、相転移温度以上とすることが好ましい。しかしながら、これら昇温する温度は本発明を何ら限定するものではない。
リポソームの脂質二重膜の「相転移温度」とは、昇温状態での示差熱分析における吸熱開始温度(吸熱反応が始まった際の温度)を意味する。示差熱分析とは、試料および基準物質の温度を変化させながら、当該試料と基準物質の温度差を時間または温度の関数として測定することで試料の熱特性を分析することができる技術である。リポソームの膜構成成分について示差熱分析を行った場合、温度の上昇につれリポソーム膜成分の流動化が起こり、吸熱反応が観察される。本技術分野において広く知られているように、リポソームの膜成分によって吸熱反応が観察される温度域は大きく変化する。例えばリポソーム膜成分が純粋な脂質で構成される場合、吸熱反応が観察される温度域は非常に狭く、吸熱反応は、吸熱ピーク温度に対して±1℃の範囲内で観察されることが多い。一方で、リポソーム膜成分が複数の脂質で構成される場合、特に天然物由来の脂質で構成される場合など、吸熱反応が観察される温度域が広くなる傾向があり、吸熱反応は、吸熱ピーク温度に対して例えば±5℃の範囲内で観察される(すなわちブロードなピークが観察される)ことがある。本発明において、リポソームの脂質二重膜の相転移温度以上に昇温することで、リポソームの膜流動性が上昇し、活性化合物の膜透過性が上昇すると考えられる。
例えば、活性化合物や用いるリポソーム膜構成成分の熱的安定性等にもよるが、リポソームの脂質二重膜の相転移温度〜相転移温度+20℃の温度範囲であることが好ましく、相転移温度〜相転移温度+10℃の温度範囲であることがより好ましく、相転移温度+5℃〜相転移温度+10℃の温度範囲であることがさらに好ましい。
一般的には、昇温する温度は、通常20〜100℃であり、好ましくは40〜80℃、より好ましくは45〜65℃であり、相転移温度以上であることが好ましい。
具体的には、ジパルミトイルホスファチジルコリン(単体での相転移温度:41℃)とコレステロールを主体としたリポソーム膜の場合には、その組成にもよるが、一般に昇温温度は、40〜60℃が好ましく、45〜50℃がより好ましい。また、水素添加大豆ホスファチジルコリン(HSPC,単体での相転移温度:50〜60℃)とコレステロールを主体としたリポソーム膜の場合には、その組成にもよるが、一般に昇温温度は、50〜70℃が好ましく、55〜65℃がより好ましい。しかしながら、これら昇温する温度は本発明を何ら限定するものではない。
昇温するステップにおいて、相転移温度以上の温度に維持する時間は特に限定されるものではなく、例えば、数秒〜30分の範囲で適宜設定することが可能であるが、活性化合物や脂質の熱的安定性や、効率的な大量生産を考慮すれば、短時間で処理することが望ましい。すなわち、昇温維持時間は1分〜30分であることが好ましく、2分〜5分であることがより好ましい。しかしながら、これら温度維持の時間は本発明を何ら限定するものではない。
また、上記した通り、得られた混合液に膜流動化剤を添加(すなわち、リポソームの外相側に添加)することでも、リポソームの膜透過性を上げることができる。膜流動化剤として、水系溶媒に可溶な有機溶媒、界面活性剤、酵素等を挙げることができる。より具体的には、有機溶媒として、たとえばエチルアルコール、ベンジルアルコール等の一価アルコール類、グリセリン、プロピレングリコール等の多価アルコール類、ジメチルスルホキサイド(DMSO)等の非プロトン性極性溶媒を挙げることができる。界面活性剤として、脂肪酸ナトリウム、モノアルキル硫酸塩、モノアルキルリン酸塩等の陰イオン系界面活性剤、アルキルトリメチルアンモニウム塩等の陽イオン系面活性剤、アルキルジメチルアミンオキシド等の両性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、アルキルモノグリセリルエーテル、脂肪酸ソルビタンエステル等の非イオン性界面活性剤を挙げることができる。酵素として、コリンエステラーゼ、コレステロールオキシダーゼ等を挙げることができる。当業者であれば、リポソーム膜構成成分の組成、膜流動化剤などに応じて、膜流動化剤の添加による活性化合物の封入の効率化の程度や、リポソームの安定性などを考慮して、膜流動化剤の量を設定することができる。
理論に拘束されるものではないが、本発明によると、リポソーム内相にシクロデキストリンを予め封入することで、以下のメカニズムでリポソーム外相に添加した活性化合物がリポソーム内相に自動的に移動するものと考えられる。すなわち、活性化合物にとって、リポソーム内相における溶解度がリポソーム外相での溶解度よりも高い条件、つまりリポソーム内相がリポソーム外相よりもエネルギー的に安定な条件であれば、リポソーム膜を透過できる活性化合物は、活性化合物の濃度勾配に逆らってリポソーム膜を透過し、リポソーム外相からリポソーム内相へと移動すると考えられる。上記した通り、一度リポソーム内相に移動した活性化合物はシクロデキストリンと複合体を形成することで、リポソーム外相へと透過できなくなり、リポソーム内相に保持されると考えられる。
なお、上記した通り、従来から、シクロデキストリンは生体膜やリポソーム膜から脂質(特にコレステロール)を取り去る効果があることが知られており、例えば、シクロデキストリンにより赤血球が溶血することが報告されている。このため、リポソームを調製するにあたって、リポソーム内相に予めシクロデキストリンを封入するという発想は困難であったと考えられる。
本発明のリポソーム組成物の製造方法は、前記導入するステップの後に、得られたリポソーム組成物のリポソーム外相を調整するステップ、および/または、得られたリポソーム組成物を乾燥させるステップをさらに含むことができる。
すなわち、リポソーム組成物を液剤とする場合、上記導入するステップにより得られた液体状のリポソーム組成物をそのまま最終的なリポソーム組成物とすることができ、または得られた液体状のリポソーム組成物におけるリポソーム外相を調整(置換等)することで最終的なリポソーム組成物とすることができる。この際のリポソーム外相の調整は、リポソーム準備液におけるリポソーム外相の調整と同様に行うことができる。リポソーム組成物が液剤である場合、そのまま使用に供することができる。
また、リポソーム組成物を固形製剤とする場合、上記導入するステップにより得られた液体状のリポソーム組成物を乾燥させることにより最終的な固体状のリポソーム組成物とすることができる。リポソーム組成物を乾燥させる方法としては、凍結乾燥や噴霧乾燥等を挙げることができる。リポソーム組成物が固形製剤の場合、リポソーム組成物は適当な溶媒に溶解または懸濁させることで液剤として使用に供することができる。溶媒は、リポソーム組成物の使用の目的等に応じて適宜設定することができ、例えばリポソーム組成物を注射剤として用いる場合、溶媒は、滅菌蒸留水であることが好ましい。リポソーム組成物を医薬として用いる場合、医者や患者により、例えば固形製剤を封入したバイアルに溶媒を注入することで、このような用時調製を行うことができる。また、液体状のリポソーム組成物を凍結させた固形製剤の場合、凍結状態で保存し、使用時に室温で放置融解または加温による急速融解により液体状に戻すことで液剤として使用に供することができる。
[医薬組成物等]
本発明のリポソーム組成物は、医薬分野において治療薬、診断薬等の医薬組成物として用いることができる。リポソーム組成物は、例えば、活性化合物として抗腫瘍剤を用いることで治療薬として用いることができ、造影剤を用いることで診断薬として用いることができる。リポソーム組成物は、化粧料、食品添加物としても用いることができる。
本発明のリポソーム組成物を医薬組成物として用いる場合、リポソーム組成物は、注射(静注、動注、局所注射)、経口、経鼻、経皮、経肺、点眼により投与することができ、特に静脈注射、皮下注射、皮内注射、動脈内注射の他、標的とする細胞や臓器に対しての局所注射などの注射が好ましい。経口投与する場合のリポソーム組成物の剤形としては、例えば、錠剤、散剤、顆粒剤、シロップ剤、カプセル剤、内服液剤等を挙げることができる。非経口投与する場合のリポソーム組成物の剤形としては、例えば、注射剤、点滴剤、点眼剤、軟膏剤、座剤、懸濁剤、パップ剤、ローション剤、エアゾール剤、プラスター剤等を挙げることができ、特に注射剤、点滴剤が好ましい。
医薬組成物の投与量は、対象となる疾患の種類、活性化合物の種類、患者の年齢、性別、体重、症状の程度等により著しく異なるが、通常成人1日当たり約0.1〜2000mg、場合により好ましくは1〜100mgを1日1〜数回にわけて投与することができる。
リポソーム組成物を化粧料として用いる場合においては、化粧料の形態としては、例えば、ローション、クリーム、化粧水、乳液、フォーム剤、ファンデーション、口紅、パック剤、皮膚洗浄剤、シャンプー、リンス、コンディショナー、ヘアトニック、ヘアリキッド、ヘアクリーム等を挙げることができる。
[キット]
本発明によるとリポソーム組成物を調製するためのキットが提供される。キットは、医薬としてのリポソーム組成物を調製するために用いることができ、臨床現場で医者や患者自身が使用することができる。
キットは、リポソーム試薬を含む。リポソーム試薬は、固体状または液体状のいずれでもよい。リポソーム試薬が液体状である場合、上記リポソーム分散液をリポソーム試薬とすることができる。また、リポソーム試薬が固体状である場合、リポソーム試薬は、適当な溶媒に溶解または懸濁することでリポソーム分散液を得ることのできる試薬であり、上記リポソーム分散液を乾燥させることでリポソーム試薬を得ることができる。乾燥は、上記リポソーム組成物の乾燥と同様に行うことができる。キットを使用する際は、リポソーム試薬が固体状である場合、リポソーム試薬を適当な溶媒に溶解または懸濁させることでリポソーム分散液とする。この際の溶媒は、上記リポソーム分散液におけるリポソーム外相と同様である。
本発明のキットは、活性化合物をさらに含むことが好ましい。活性化合物は、固体状または液体状(溶媒に溶解または懸濁された状態)のいずれでもよい。キットを使用する際は、活性化合物が固体状である場合、活性化合物を適当な溶媒に溶解または懸濁させ、液体状とすることが好ましい。溶媒は、活性化合物の物性等に応じて適宜設定することができ、例えば上記リポソーム分散液におけるリポソーム外相と同様とすることができる。
キットにおいて、リポソーム試薬と活性化合物は、別個に包装されていてもよく、または、リポソーム試薬と活性化合物は、それぞれ固体状であり、混合されていてもよい。
リポソーム試薬が固体状である場合に、上記した通り溶解または懸濁させることでリポソーム分散液とすることを除けば、キットは、上記リポソーム組成物の製造方法における、リポソーム分散液と活性化合物との混合、およびリポソーム分散液のリポソーム内相への活性化合物の導入と同様のステップを行うことで使用することができる。これにより、リポソーム試薬のリポソーム内相へ活性化合物が導入されたリポソーム組成物を製造することができる。
リポソーム試薬と活性化合物が、それぞれ固体状であり、一緒に包装されている場合には、このリポソーム試薬と活性化合物との混合物を適当な溶媒に溶解または懸濁させる。この際の溶媒は、上記リポソーム分散液におけるリポソーム外相と同様である。これにより、リポソーム分散液と活性化合物とを混合した状態とすることができ、その後、上記リポソーム組成物の製造方法における、リポソーム分散液のリポソーム内相への活性化合物の導入におけるその他のステップを行うことで使用することができる。
本発明を実施例および比較例を挙げて具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
<リポソーム内相用水溶液の調製>
クエン酸一水和物840.6mgを純水で溶解し、20mLにメスアップすることで200mM クエン酸水溶液を作成した。HP−β−シクロデキストリン(ROQUETTE社製)280mgまたは560mgを200mM クエン酸水溶液1mLで溶解し、アンモニア水でpHを5.5に調整後、純水を用いて2mLにメスアップすることによりリポソーム内相用水溶液を調製した。
HP-β-シクロデキストリンを含まないリポソーム内相用水溶液は200mM クエン酸水溶液1mLをアンモニア水でpH5.5に調整後、純水を用いて2mLにメスアップすることにより調製した(表1)。
<リポソーム準備液の調製>
水素添加大豆ホスファチジルコリン(Lipoid社製)44.4mg、コレステロール(Sigma社製)14.5mgおよびポリエチレングリコール2000−ホスファチジルエタノールアミン(Genzyme社製、MPEG2000−ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン)17.4mgをクロロホルム3mLに溶解した後にロータリーエバポレーターでクロロホルムを減圧留去し、リピッドフィルムを作成した。得られたリピッドフィルムに、下記表1に記載の種々の組成のリポソーム内相用水溶液2mLを約60℃に加温して添加し、撹拌してリポソーム準備液を調製した。このリポソーム準備液を20分間超音波処理した後に、約65℃に加温したエクストルーダー(Lipex Biomembranes社製)を用いて整粒し、整粒したリポソーム準備液を得た。得られたリポソーム準備液中のリポソームの粒子径を動的光散乱法で測定したところ、いずれも90〜100nmであった。
<リポソーム分散液の調製>
Sephadex G−50カラムを用い、得られたリポソーム準備液を0.9%塩化ナトリウム/10mM ヒスチジン水溶液(pH=7.6)で溶出することで、リポソーム外相を0.9%塩化ナトリウム/10mM ヒスチジン水溶液へと置換した。リポソーム外相を置換した後、400,000×gで30分間遠心した。遠心後、再分散し、0.9%塩化ナトリウム/10mM ヒスチジン水溶液を用いて液量を2mLに調整し、リポソーム分散液を得た。
<活性化合物溶液の調製>
E7107((8E,12E,14E)−7−{(4−シクロヘプチルピペラジン−1−イル)カルボニル}オキシ−3,6,16,21−テトラヒドロキシ−6,10,12,16,20−ペンタメチル−18,19−エポキシトリコサ−8,12,14−トリエン−11−オリド)のエタノール溶液(50mg/mL)を0.9%塩化ナトリウム/10mMヒスチジン水溶液で500倍希釈し、0.1mg/mLのE7107溶液を得た。
<リポソーム組成物の調製>
10mLのガラス容器中、0.1mLのリポソーム分散液と1mLのE7107溶液を混合し、55℃の水浴中で3分間インキュベートすることにより、リポソーム内にE7107が導入されたリポソーム組成物を得た。
<封入率の測定>
封入率は、以下のようにして求めた。
活性化合物が封入されたリポソーム組成物を400,000×gで30分間超遠心した。上清中の活性化合物濃度をHPLCで測定することで、リポソームに未封入の活性化合物量を定量した。封入率を下記式により計算した。
結果を表1に示す。表1から分かるとおり、リポソーム内水相にシクロデキストリンを存在させることで非常に高効率にE7107を封入可能であった。
<ラット血漿中での安定性>
超遠心後のE7107封入リポソームを0.1mLとなるように再懸濁し、ラット血漿1mLと混合した。混合直後、24時間後、48時間後、72時間後に、以下に記載する方法によりリポソーム内E7107量を測定し、活性化合物の封入率の経時的安定性を評価した。
リポソームと、リポソーム外相に漏れ出たE7107とは、PD−10 Column(Ge Healthcare社製)を用い分離した。回収したリポソーム画分と10%Tween 80溶液を9:1で混合することでリポソームを破壊し、HPLCでリポソーム内に保持されているE7107量を定量した。
24時間後、48時間後、72時間後のそれぞれのE7107量を混合直後のE7107量で除することでリポソーム内の残存率を測定した。
測定結果を図1に示す。リポソーム内相にシクロデキストリンを存在させることで血漿中での安定性が飛躍的に向上した。なお、図1中、HP−β−CDは、HP−β−シクロデキストリンを意味する。
[実施例2]
<リポソーム組成物の調製>
実施例1と同様にして、リポソーム内相用水溶液の組成が250mM HP−β−シクロデキストリン/100mM クエン酸(pH=5.5)であり、リポソーム外相を0.9%塩化ナトリウム/10mM ヒスチジン水溶液(pH=7.6)へと置換した、リポソーム分散液を得た。
続いて、10mLのガラス容器中、リポソーム分散液とE7107溶液を混合し、5℃、20℃、40℃、50℃、60℃の水浴中で1分間、5分間、1時間、6時間インキュベートすることにより、リポソーム組成物を得た。
封入率の測定結果を表2に示す。表2から分かるとおり、E7107の封入操作時に加温することで封入操作時間を短縮することが可能であった。また、常温(20℃)でも徐々にE7107が封入されることが明らかとなった。
[実施例3]
<リポソーム内相用水溶液の調製>
硫酸アンモニウム396.4mgおよびクエン酸一水和物189.1mgを純水で溶解し、15mLにメスアップすることで200mM 硫酸アンモニウム/60mM クエン酸水溶液を作成した。HP−β−シクロデキストリン700mgあるいはHP−γ−シクロデキストリン(Sigma社製)790mgを200mM 硫酸アンモニウム/60mM クエン酸水溶液2.5mLで溶解し、アンモニア水でpHを5.5に調整後、純水を用いて5mLにメスアップすることによりリポソーム内相用水溶液を調製した。
シクロデキストリンを含まないリポソーム内相用水溶液は200mM 硫酸アンモニウム/60mM クエン酸水溶液2.5mLをアンモニア水でpH5.5に調整後、純水を用いて5mLにメスアップすることにより調製した(表3)。
<リポソーム準備液の調製>
水素添加大豆ホスファチジルコリン317.9mg、コレステロール116.0mgおよびポリエチレングリコール2000−ホスファチジルエタノールアミン130.4mgをクロロホルム10mLに溶解した後に正確に3本に分注し、それぞれをロータリーエバポレーターでクロロホルムを減圧留去し、リピッドフィルムを作成した。得られたリピッドフィルムに、下記表3に記載の種々の組成のリポソーム内相用水溶液5mLを約60℃に加温して添加し、撹拌してリポソーム準備液を調製した。このリポソーム準備液を20分間超音波処理した後に、約65℃に加温したエクストルーダー(Lipex Biomembranes社製)を用いて整粒し、リポソーム準備液を得た。得られたリポソーム準備液中のリポソームの粒子径を動的光散乱法で測定したところ、いずれも90〜100nmであった。
<リポソーム分散液の調製>
実施例1と同様に実施して、リポソーム分散液5mLを得た。
<活性化合物溶液の調製>
メシル酸エリブリンを0.9%塩化ナトリウム/10mM ヒスチジン水溶液で溶解し、1mg/mLのメシル酸エリブリン溶液を得た。
<リポソーム組成物の調製>
10mLのガラス容器中、0.5mLのリポソーム分散液と0.5mLのメシル酸エリブリン溶液を混合し、55℃の水浴中で3分間インキュベートすることにより、リポソーム内にメシル酸エリブリンが導入されたリポソーム組成物を得た。
<封入率の測定>
封入率は、実施例1と同様に求めた。結果を表3に示す。表3から分かるとおり、リポソーム内水相にシクロデキストリンを存在させることでより高効率にメシル酸エリブリンを封入可能であった。
<リポソーム内相用水溶液の調製>
同様にして、硫酸アンモニウム264.3mgおよびクエン酸一水和物126.1mgを純水で溶解し、メスフラスコを用いて10mLにメスアップすることで200mM 硫酸アンモニウム/60mM クエン酸水溶液を作成した。HP−β−シクロデキストリン 560mg、HP−γ−シクロデキストリン 632mg、G−β−シクロデキストリン(塩水港精糖株式会社) 584mg、およびCaptisol(CyDex社製) 432mgを秤量し、200mM 硫酸アンモニウム/60mM クエン酸水溶液1mLでそれぞれを溶解した。アンモニア水でpHを5.5に調整後、純水で2mLにメスアップすることによりリポソーム内相用水溶液を調製した。
シクロデキストリンを含まないリポソーム内相用水溶液は200mM 硫酸アンモニウム/60mM クエン酸水溶液1mLをアンモニア水でpH5.5に調整後、純水を用いて2mLにメスアップすることにより調製した(表4)。
<リポソーム準備液の調製>
脂質混合物(水素添加大豆ホスファチジルコリン:コレステロール:ポリエチレングリコール2000−ホスファチジルエタノールアミン=58.6:19.2:22.2(重量比))を80mgずつ秤量し、上記表4に記載の種々の組成のリポソーム内相用水溶液2mLを約80℃に加温して添加し、撹拌してリポソーム準備液を調製した。このリポソーム準備液を約80℃に加温したエクストルーダー(Lipex Biomembranes社製)を用いて整粒し、リポソーム準備液を得た。
<リポソーム分散液の調製>
得られたリポソーム準備液を0.9%塩化ナトリウム/10mM ヒスチジン水溶液(pH=7.6)で10mLにメスアップし、400,000×gで30分間遠心した。遠心後、上清を全て廃棄した。沈殿を0.9%塩化ナトリウム/10mM ヒスチジン水溶液で再分散し、メスフラスコを用いて液量を1mLに調整し、リポソーム分散液を得た。
<薬物溶液の調製>
メシル酸エリブリンを0.9% 塩化ナトリウム/10mM ヒスチジン水溶液で溶解し、5mg/mLのメシル酸エリブリン溶液を得た。
<リポソーム組成物の調製>
10mLのガラス容器中、0.96mLのリポソーム分散液と0.24mLのメシル酸エリブリン溶液を混合し、60℃の水浴中で3分間インキュベートすることにより、リポソーム内にメシル酸エリブリンが導入されたリポソーム組成物を得た。
<ラット血漿中での安定性>
調製したメシル酸エリブリン封入リポソーム0.2mLとラット血漿1.8mLを混合し、液相インキュベーターを用いて37℃で振盪した。リポソーム組成物とラット血漿の混合直後、振盪開始6時間後、12時間後、24時間後、48時間後、120時間後にサンプリングを行い、ゲル濾過カラムによりフリー体画分を分取した。得られたメシル酸エリブリンのフリー体画分をリポソームから漏出したメシル酸エリブリン量としてHPLCで測定した。
測定結果を図2に示す。図2から分かるとおり、血漿中でも120時間という長時間に亘ってメシル酸エリブリンを安定に保持し、徐放することが可能であることが示された。また、特に、シクロデキストリンを内相に含有するリポソームではメシル酸エリブリンを長期間より安定に保持可能であることが示された。
[実施例4]
<リポソーム組成物の調製>
実施例3と同様にして、リポソーム内相用水溶液の組成が200mM HP−β−シクロデキストリン/100mM 硫酸アンモニウム/30mM クエン酸(pH=7.0)であり、リポソーム外相を0.9%塩化ナトリウム/10mM ヒスチジン水溶液(pH=7.6)へと置換した、リポソーム分散液を得た。
続いて、10mLのガラス容器中、リポソーム分散液とメシル酸エリブリン溶液を混合し、5℃、20℃、40℃、50℃、60℃の水浴中で1分間、5分間、1時間、6時間インキュベートすることにより、リポソーム組成物を得た。
<封入率の測定>
封入率の測定結果を表5に示す。表5から分かるとおり、メシル酸エリブリンの封入操作時に加温することで封入操作時間を短縮することが可能であった。また、常温(20℃)でも徐々にメシル酸エリブリンが封入されることが明らかとなった。
[実施例5]
<リポソーム内相用水溶液の調製>
グルタミン1.46gを純水で溶解し、100mLにメスアップすることで100mMグルタミン水溶液を作成した。pHを測定したところ、5.2であった。また、HP−β−シクロデキストリン28.0gおよびグルタミン1.46gを純水で溶解し、100mLにメスアップすることで200mM HP−β−シクロデキストリン/100mM グルタミン水溶液を作成した。HP−γ−シクロデキストリン31.6gおよびグルタミン1.46gを純水で溶解し、100mLにメスアップすることで200mM HP−γ−シクロデキストリン/100mM グルタミン水溶液を作成した。G−β−シクロデキストリン29.2gおよびグルタミン1.46gを純水で溶解し、100mLにメスアップすることで200mM G−β−シクロデキストリン/100mM グルタミン水溶液を作成した。カプチゾル43.2gおよびグルタミン1.46gを純水で溶解し、100mLにメスアップすることで200mM カプチゾル/100mM グルタミン水溶液を作成した。以上のシクロデキストリンを含むグルタミン水溶液は塩酸および水酸化ナトリウムを用いてpHを5.2に調整した(表6)。
同様に、ヒスチジン1.55gを純水で溶解し、100mLにメスアップすることで100mM ヒスチジン水溶液(pH=7.6)を作成した。また、200mM HP−β−シクロデキストリン/100mM ヒスチジン水溶液、200mM HP−γ−シクロデキストリン/100mM ヒスチジン水溶液、200mM G−β−シクロデキストリン/100mM ヒスチジン水溶液、および200mM カプチゾル/100mM ヒスチジン水溶液を作成した。以上のシクロデキストリンを含むヒスチジン水溶液は塩酸および水酸化ナトリウムを用いてpHを7.6に調整した(表6)。
また同様に、アルギニン1.74gを純水で溶解し、100mLにメスアップすることで100mM アルギニン水溶液(pH=11.1)を作成した。また、200mM HP−β−シクロデキストリン/100mM アルギニン水溶液、200mM HP−γ−シクロデキストリン/100mM アルギニン水溶液、200mM G−β−シクロデキストリン/100mM アルギニン水溶液、および200mM カプチゾル/100mM アルギニン水溶液を作成した。以上のシクロデキストリンを含むアルギニン水溶液は塩酸および水酸化ナトリウムを用いてpHを11.1に調整した(表6)。
<リポソーム準備液の調製>
脂質混合物(水素添加大豆ホスファチジルコリン:コレステロール:ポリエチレングリコール2000−ホスファチジルエタノールアミン=58.6:19.2:22.2(重量比))を200mgずつ秤量し、下記表6に記載の種々の組成のリポソーム内相用水溶液5mLを約80℃に加温して添加し、撹拌してリポソーム準備液を調製した。このリポソーム準備液を20分間超音波処理した後に、約80℃に加温したエクストルーダー(Lipex Biomembranes社製)を用いて整粒し、整粒したリポソーム準備液を得た。得られたリポソーム準備液中のリポソームの粒子径を動的光散乱法で測定したところ、いずれも90〜100nmであった。
<リポソーム分散液の調製>
Sephadex G−50カラムを用い、得られたリポソーム準備液を下記表6に記載の種々の組成のリポソーム外相用水溶液で溶出することで、リポソーム外相を置換した。リポソーム外相を置換した後、400,000×gで30分間遠心した。遠心後、再分散し、下記表6に記載の種々の組成のリポソーム外相用水溶液を用いて液量を5mLに調整し、リポソーム分散液を得た。
<リポソーム組成物の調製>
これらリポソーム分散液と、実施例3と同様にして作成したメシル酸エリブリン溶液と、を混合し、60℃の水浴中で5分間インキュベートすることにより、リポソーム内にメシル酸エリブリンが導入されたリポソーム組成物を得た。
<封入率の測定>
封入率は、実施例1と同様にして測定した。結果を表6に示す。表6から分かるとおり、いずれのシクロデキストリンを内相に用いた場合でもメシル酸エリブリンの封入率が向上することが明らかとなった。
[実施例6]
<リポソーム組成物の調製>
実施例5と同様にして、リポソーム分散液を得た(表7)。
ドキソルビシンを100mM グルタミン水溶液(pH=5.2)または100mM ヒスチジン水溶液(pH=7.6)で溶解し、1mg/mLのドキソルビシン水溶液を得た。
10mLのガラス容器中、0.1mLのリポソーム分散液と0.1mLのドキソルビシン水溶液を混合し、60℃の水浴中で5分間インキュベートした。
<封入率の測定>
封入率は、実施例1と同様に求めた。結果を表7に示す。表7から分かるとおり、リポソーム内相にシクロデキストリンを存在させることでドキソルビシン封入率が向上した。
[実施例7]
<リポソーム分散液の調製>
実施例5と同様にして、リポソーム内相が100mM グルタミン水溶液、200mM HP−β−シクロデキストリン/100mM グルタミン水溶液、200mM HP−γ−シクロデキストリン/100mM グルタミン水溶液、または200mM G−β−シクロデキストリン/100mM グルタミン水溶液で、外相が100mM グルタミン水溶液であるリポソーム分散液を得た(表8)。
また、リポソーム内相が100mM ヒスチジン水溶液、200mM HP−β−シクロデキストリン/100mM ヒスチジン水溶液、200mM HP−γ−シクロデキストリン/100mM ヒスチジン水溶液、または200mM G−β−シクロデキストリン/100mM ヒスチジン水溶液で、外相が100mM ヒスチジン水溶液であるリポソーム分散液を得た(表8)。
<活性化合物溶液の調製>
パクリタキセルを5mM HP−β−シクロデキストリン/100mM グルタミン水溶液(pH=5.2)または5mM HP−β−シクロデキストリン/100mM ヒスチジン水溶液(pH=7.6)で溶解し、4μg/mLのパクリタキセル水溶液を得た。
<リポソーム組成物の調製>
10mLのガラス容器中、5.3mgのHP−β−シクロデキストリンを0.75mLのリポソーム分散液で溶解し、リポソーム外相液を5mM HP−β−シクロデキストリンとした。そこに0.25mLのパクリタキセル水溶液を混合し、60℃の水浴中で5分間インキュベートすることにより、リポソーム組成物を得た。
<封入率の測定>
封入直後のリポソーム組成物を5mM HP−β−シクロデキストリンで2mLにメスアップした。そのうち1mLを使用してパクリタキセル濃度および水素添加大豆ホスファチジルコリン(HSPC)濃度をHPLCにより測定した。また、残りの1mLを純水で10mLにメスアップし、400,000×gで40分間遠心を行った。上清を完全に廃棄し、得られた沈殿を純水で再懸濁し、10mLにメスアップした。再度、400,000×gで40分間遠心を行った。上清を完全に廃棄し、得られた沈殿を純水で再懸濁し、1mLにメスアップした。得られたリポソーム組成物のパクリタキセル濃度およびHSPC濃度をHPLCにより測定した。封入率を下記式により求めた。

結果を表8に示す。表8から分かるとおり、リポソーム内相および外相に同種のシクロデキストリンを存在させた場合においては、内相側のシクロデキストリン濃度を高濃度にすることでパクリタキセルの封入率が顕著に向上した。また、内相と外相に異種のシクロデキストリンを存在させた場合においても、内相側を高濃度にすることによりパクリタキセルの封入率は向上した。
[実施例8]
実施例1と同様にして、組成が250mM HP−β−シクロデキストリンおよび100mM クエン酸であるリポソーム内相用水溶液を用いて、リポソーム組成物(E7107濃度:0.2mg/mL,総脂質濃度:10μmol/mL)を得た。
また、非製剤化E7107として、E7107を5%DMSO/5%Tween 80を含有する生理食塩液(大塚製薬株式会社)に溶解した(E7107濃度:3mg/mL)。
ヒト大腸癌細胞株であるWiDr(大日本製薬株式会社より入手)を10%ウシ胎児血清含有RPMI1640培地で培養し、増殖させた。細胞を0.05%Trypsin−EDTA溶液を用いてフラスコより遊離させ回収した。PBSで洗浄後、Hanks’ Balanced Salt Solution(GIBCO社製)にて5×10個/mLになるように懸濁し、氷上で保持した。6−8週齢の雌性ヌードマウス(BALB/cAJcl−nu/nu;日本クレア株式会社)の右腹側部へ、1匹あたり100μLの細胞懸濁液を皮下注射した。各々のマウスを毎日観察し、状態異常が発見された場合には適宜記録を行った。腫瘍の大きさを経時的にノギスを用いて測定し、腫瘍の大きさを、計算式:長径×(短径の2乗)÷2に基づき算出した。また、マウスの体重も経時的に測定した。腫瘍の大きさが100〜200mmになった時点で、各試験群間での腫瘍の大きさおよびマウスの体重の平均値が均一になるように群分けを行った。調製したリポソーム組成物(1mg/kg)または非製剤化E7107(30mg/kg)を担癌マウスの尾静脈から単回静脈内投与し、投与後経時的に血液と腫瘍組織を採取した。得られた血液を4℃で遠心分離し、血漿を分取した。腫瘍組織については生理食塩液を約4倍量添加し、均一なホモジネートを調製した。得られた血漿(0.05mL)および腫瘍ホモジネート(0.05g)に0.2mLの内部標準物質(プロプラノロール(Sigma社製)、100ng/mL)を含むアセトニトリル(和光純薬工業株式会社)とメタノール(和光純薬工業株式会社)の等量混和液を添加し、混合した。遠心分離することによりタンパク質を除去し、得られた上清をMultiScreen Filter plate(Millipore社製)で濾過した。その後、濾液(5μL)を以下に示した高速液体クロマトグラフィー(HPLC)/質量分析計(LC/MS/MS)で分析し、血漿中および腫瘍中E7107濃度を測定した。
担癌マウスに単回静脈内投与した時の血漿中および腫瘍組織中E7107濃度推移を図3に示す。図3から分かるとおり、E7107をリポソームで製剤化することにより、E7107の血漿中および腫瘍中での滞留性が著しく向上することが明らかとなった。
[実施例9]
実施例1と同様にして、組成が250mM HP−β−シクロデキストリンおよび100mM クエン酸であるリポソーム内相用水溶液を用いてリポソーム分散液を得た。リポソーム分散液とE7107溶液の混合比率をそれぞれ変化させ、5種類のリポソーム組成物(E7107濃度:0.2mg/mL,総脂質濃度:2.5μmol/mL;E7107濃度:0.2mg/mL,総脂質濃度:5μmol/mL;E7107濃度:0.2mg/mL,総脂質濃度:10μmol/mL;E7107濃度:0.2mg/mL,総脂質濃度:20μmol/mL;E7107濃度:0.2mg/mL,総脂質濃度:40μmol/mL)を得た。実施例1と同様に封入率を測定したところ、いずれのリポソーム組成物においても封入率は95%以上であった。
担癌マウスは、ヒト大腸癌由来細胞であるWiDr(大日本製薬株式会社より入手)を雌性ヌードマウス(BALB/cAJcl−nu/nu)の腹部皮下に移植することにより作製した。調製した各種リポソーム製剤化E7107を担癌マウスの尾静脈から単回静脈内投与し、投与後24時間および72時間に血液を採取した。得られた血液を4℃で遠心分離することにより血漿を分取し、実施例8と同様にして、E7107の血漿中濃度を測定した。
担癌マウスに単回静脈内投与した時の血漿中および腫瘍組織中E7107濃度推移を図4に示す。図4から分かるとおり、各リポソーム組成物において同様の血漿中および腫瘍中のE7107濃度推移を示した。
[実施例10]
ヒト大腸癌細胞株であるWiDr(大日本製薬株式会社より入手)を10%ウシ胎児血清含有RPMI1640培地で培養し、増殖させた。細胞を0.05%Trypsin−EDTA溶液を用いてフラスコより遊離させ回収した。PBSで洗浄後、Hanks’ Balanced Salt Solution(GIBCO社製)にて5×10個/mLになるように懸濁し、氷上で保持した。6−8週齢のヌードマウス(日本クレア株式会社)の右腹側部へ、1匹あたり100μLの細胞懸濁液を皮下注射した。各々のマウスを毎日観察し、状態異常が発見された場合には適宜記録を行った。腫瘍の大きさを経時的にノギスを用いて測定し、腫瘍の大きさを、計算式:長径×(短径の2乗)÷2に基づき算出した。また、マウスの体重も経時的に測定した。腫瘍の大きさが100〜200mmになった時点で、各試験群間での腫瘍の大きさおよびマウスの体重の平均値が均一になるように群分けを行い(各試験群のマウス頭数は5匹)、E7107(200μL/20g)を単回尾静脈内投与した。
E7107−2.5mg/kg群(群2)の投与液として、E7107に3.5:6.5:90の割合で、DMSO溶液、Tween−80溶液、5%ブドウ糖液を加え、E7107濃度を0.25mg/mLとした。
群3および群4で用いた3E7107を封入したリポソーム組成物は、実施例1と同様にして作成し、E7107濃度を0.25mg/mLとした。
投与後5日目の腫瘍増殖に対する治療効果として、腫瘍の大きさ、対コントロール比、体重の平均値を表9に示す。
投与後5日目の腫瘍増殖抑制効果および体重減少の統計的分析をパラメトリック法により行った。各試験群間の比較において0.05未満のP値を示す場合、統計的有意差を意味する。コントロール群に対して、各投与群の腫瘍増殖抑制効果は0.05未満の値を示した。E7107−2.5mg/kg群に対しては、リポソームE7107−2.5mg/kg群の有意な抗腫瘍効果の亢進は認められなかった(P=0.22)。しかし、HP−β−シクロデキストリンを含むリポソームE7107(130mM HP−β−シクロデキストリン)−2.5mg/kg群は、E7107−2.5mg/kg群に対して、有意な腫瘍縮小の亢進を示した(P=0.018)。
体重減少については、どの群間比較においても有意な減少は見られなかった。
以上の結果から、E7107の1日当たりの投与量は、特に限定されないが、通常、ヒトに対し、1〜100mgとなるようにリポソーム組成物を投与することにより、E7107の抗腫瘍効果を発揮させることができる。
[実施例11]
<リポソーム内相用水溶液の調製>
実施例1と同様に、100mM 硫酸アンモニウム/30mM クエン酸水溶液(pH=5.5)および200mM HP−β−シクロデキストリン/100mM 硫酸アンモニウム/30mM クエン酸水溶液(pH=5.5)を調製した。
<リポソーム準備液の調製>
水素添加大豆ホスファチジルコリン、コレステロール、およびポリエチレングリコール2000−ホスファチジルエタノールアミンを表10に記載の量でそれぞれ秤量した。それぞれをクロロホルム3mLに溶解した後にロータリーエバポレーターでクロロホルムを減圧留去し、リピッドフィルムを作成した。得られたリピッドフィルムに、作成したリポソーム内相用水溶液10mL(Rp.1〜4は100mM 硫酸アンモニウム/30mM クエン酸水溶液、Rp.5〜8は200mM HP−β−シクロデキストリン/100mM 硫酸アンモニウム/30mM クエン酸水溶液)を約80℃に加温して添加し、撹拌してリポソーム準備液を調製した。約80℃に加温したエクストルーダー(Lipex Biomembranes社製)を用いて整粒し、整粒したリポソーム準備液を得た。得られたリポソーム準備液中のリポソームの粒子径を動的光散乱法で測定したところ、Rp.1は77nm、Rp.2は95nm、Rp.3は79nm、Rp.4は128nm、Rp.5は81nm、Rp.6は122nm、Rp.7は76nm、Rp.8は110nmであった。
<リポソーム組成物の調製>
実施例1と同様にして、リポソーム分散液を得た。また、メシル酸エリブリンを0.9%塩化ナトリウム/10mM ヒスチジン水溶液で溶解し、5mg/mLのメシル酸エリブリン溶液を得た。
10mLのガラス容器中、4.8mLの各リポソーム分散液と0.6mLのメシル酸エリブリン溶液をそれぞれ混合し、60℃の水浴中で3分間インキュベートすることにより、リポソーム内にメシル酸エリブリンが導入されたリポソーム組成物を得た。それぞれのリポソーム組成物に24.6mLの0.9%塩化ナトリウム/10mM ヒスチジン水溶液を添加し、0.2μmポリフッ化ビニリデン(PVDF)フィルター(Whatman社製GD/Xフィルター)を用いて濾過滅菌することで、投与検体(メシル酸エリブリン濃度:0.1mg/mL)を得た。
実施例1と同様にして、封入率を測定し、いずれの処方においても90%以上であることを確認した。
雌性ヌードマウス(NU/NU、日本チャールズ・リバー株式会社)にヒトメラノーマLOX細胞を皮下に接種し、11日後または12日後に、10mL/kg(メシル酸エリブリンとして1.0mg/kg)となるように尾静脈内投与した。投与後一定時間(15分,30分,1,2,4,8,12,24,36,48時間)経過後に心穿刺による血液採取と腫瘍組織の摘出を実施した(n=3)。血液はヘパリンを含む試験管に取り、採取後30分以内に4℃で10分間1,500×gで遠心分離して血漿を得た。腫瘍は全組織を摘出してPBSで洗浄し、吸水紙でふき取った後にただちに組織重量を測定した。組織を試験管に入れて氷水中で冷却した後、分析操作までは−80℃で保存した。
血漿中および腫瘍組織中のメシル酸エリブリンはLC/MS/MSを用いて測定した.
PKパラメーターはnon−compartment model解析ソフトウェア(WinNonlin v.5.0.1)を用いて算出した。メシル酸エリブリンの血漿PKパラメーターおよび腫瘍組織PKパラメーターの結果を、それぞれ表11および表12に示す。
表11および表12から、Rp.1〜8の全てのリポソーム組成物において,フリーのメシル酸エリブリンと比較して血漿および腫瘍組織のAUCが増大していることから、メシル酸エリブリンの腫瘍移行量および滞留性が向上していた。
[実施例12]
<リポソーム内相用水溶液の調製>
実施例3と同様に、200mM HP−β−シクロデキストリン/100mM 硫酸アンモニウム/30mM クエン酸水溶液(pH=5.5)を調製した。
<リポソーム準備液の調製>
水素添加大豆ホスファチジルコリン221.8mgおよびコレステロール72.5mgおよびポリエチレングリコール2000−ホスファチジルエタノールアミン86.9mgを秤量した。クロロホルム3mLに溶解した後にロータリーエバポレーターでクロロホルムを減圧留去し、リピッドフィルムを作成した。得られたリピッドフィルムに、作成したリポソーム内相用水溶液10mLを約80℃に加温して添加し、撹拌してリポソーム準備液を調製した。約80℃に加温したエクストルーダー(Lipex Biomembranes社製)を用いて整粒し、整粒したリポソーム準備液を得た。得られたリポソーム準備液中のリポソームの粒子径を動的光散乱法で測定したところ、約90nmであった。
<リポソーム分散液の調製>
Sephadex G−50カラムを用い、得られたリポソーム準備液を0.9%塩化ナトリウム/10mMヒスチジン水溶液(pH=7.6)で溶出することで、リポソーム外相を0.9%塩化ナトリウム/10mMヒスチジン水溶液へと置換した。リポソーム外相を置換した後、400,000×gで30分間遠心した。遠心後、再分散し、0.9%塩化ナトリウム/10mMヒスチジン水溶液を用いて液量を10mLに調整し、リポソーム分散液を得た。
<薬物溶液の調製>
メシル酸エリブリンを0.9% 塩化ナトリウム/10mM ヒスチジン水溶液で溶解し、1mg/mLのメシル酸エリブリン溶液を得た。また、フリー体の投与検体として、0.9% 塩化ナトリウム/10mM ヒスチジン水溶液でメシル酸エリブリン溶液を希釈し、0.22μmのPVDFフィルターを用いて濾過滅菌することで、投与検体(メシル酸エリブリン濃度:0.1mg/mLおよび0.2mg/mLおよび0.4mg/mL)を得た。
<リポソーム組成物の調製>
10mLのガラス容器中、1.8mLのリポソーム分散液と1.2mLのメシル酸エリブリン溶液をそれぞれ混合し、60℃の水浴中で3分間インキュベートすることにより、リポソーム内にメシル酸エリブリンが導入されたリポソーム組成物を得た。得られたリポソーム組成物を0.9% 塩化ナトリウム/10mM ヒスチジン水溶液で希釈し、0.22μmのPVDFフィルターを用いて濾過滅菌することで、投与検体(メシル酸エリブリン濃度:0.1mg/mLおよび0.2mg/mL)を得た。超遠心法により封入率を測定し、90%以上であることを確認した。
ヒト大腸癌細胞株であるWiDrを10%ウシ胎児血清含有RPMI1640培地で培養し、増殖させた。細胞を0.05%Trypsin−EDTA溶液を用いてフラスコより遊離させ回収した。PBSで洗浄後、Hanks’ Balanced Salt Solution(Gibco社製)にて5×10個/mLになるように懸濁し、氷上で保持した。7週齢のヌードマウス(日本チャールス・リバー株式会社)の右腹側部へ、1匹あたり0.1mLの細胞懸濁液を皮下注射した。各々のマウスを毎日観察し、状態異常が発見された場合には適宜記録を行った。腫瘍の大きさを経時的にノギスを用いて測定し、腫瘍の大きさを、計算式:長径×(短径の2乗)÷2に基づき算出した。腫瘍の大きさが100〜200mmになった時点で、各試験群間での腫瘍の大きさおよびマウスの体重の平均値が均一になるように群分けを行い(各試験群のマウス数は5匹)、薬物の尾静脈内投与(0.2mL/20g;7日間隔で2回)を行った。
測定結果を図5に示す。図5から分かるとおり、リポソーム組成物1mg/kg投与群はフリー体2mg/kg投与群またはフリー体4mg/kg(最大耐用量)投与群より明らかに優れた抗腫瘍効果を示した。また、リポソーム組成物1mg/kg投与群およびリポソーム組成物2mg/kg投与群では全個体から腫瘍が完全に消失した。フリー体2mg/kg投与群では5匹中2匹のみが完全治癒であり、リポソーム化による最大薬効の増大および薬効幅の拡大が明らかとなった。また、本試験では全群において一般状態の悪化は観察されなかった。
[実施例13]
<リポソーム内相用水溶液の調製>
実施例3と同様に、200mM HP−γ−シクロデキストリン/100mM 硫酸アンモニウム/30mM クエン酸水溶液(pH=5.5)を調製した。
<薬物溶液の調製>
実施例12と同様にして、フリー体の投与検体(メシル酸エリブリン濃度:0.4mg/mL)を得た。
<リポソーム組成物の調製>
上述のように作製したリポソーム内相溶水溶液を用いた以外は実施例11と同様にして、リポソーム組成物(メシル酸エリブリン濃度:0.3mg/mL)を得た。実施例1と同様にして、封入率を測定し、90%以上であることを確認した。
ヒト咽頭扁平上皮癌細胞株であるFaDu(American Type Culture Collectionより入手)を10%ウシ胎児血清含有MEM培地で培養し、増殖させた。細胞を0.05%Trypsin−EDTA溶液を用いてフラスコより遊離させ回収した。PBSで洗浄後、PBSにて5×10個/mLになるように懸濁し、氷上で保持した。6週齢のヌードマウス(日本チャールス・リバー株式会社)の右腹側部へ、1匹あたり0.1mLの細胞懸濁液を皮下注射した。各々のマウスを毎日観察し、状態異常が発見された場合には適宜記録を行った。腫瘍の大きさを経時的にノギスを用いて測定し、腫瘍の大きさを、計算式:長径×(短径の2乗)÷2に基づき算出した。腫瘍の大きさが100〜200mmになった時点で、各試験群間での腫瘍の大きさおよびマウスの体重の平均値が均一になるように群分けを行い(各試験群のマウス数は5匹)、薬物の尾静脈内投与(0.2mL/20g;7日間隔で3回)を行った。
検体投与後の平均腫瘍体積の推移結果を図6に示す。図6から分かるとおり、メシル酸エリブリンに感受性の低い細胞株を使用したため、フリー体では最大耐用量である4.0mg/kg投与でも腫瘍縮小効果は得られなかった。一方、リポソーム組成物3mg/kg投与群では腫瘍縮小効果が明確に認められ、全例において腫瘍が消失した。
[実施例14]
<リポソーム内相用水溶液の調製>
実施例3と同様に、100mM 硫酸アンモニウム/30mM クエン酸水溶液(pH=5.5)および200mM HP−β−シクロデキストリン/100mM 硫酸アンモニウム/30mM クエン酸水溶液(pH=5.5)および200mM HP−γ−シクロデキストリン/100mM 硫酸アンモニウム/30mM クエン酸水溶液(pH=5.5)を調製した。
<薬物溶液の調製>
実施例12と同様に実施し、フリー体の投与検体(メシル酸エリブリン濃度:0.3mg/mLおよび0.4mg/mL)を得た。
<リポソーム組成物の調製>
上述のように作製したリポソーム内相溶水溶液を用いた以外は実施例11と同様にして、各リポソーム組成物(メシル酸エリブリン濃度:0.2mg/mL)を得た。実施例1と同様にして、封入率を測定し、いずれも90%以上であることを確認した。
ヒト咽頭扁平上皮癌細胞株であるFaDu(American Type Culture Collectionより入手)を10%ウシ胎児血清含有MEM培地で培養し、増殖させた。細胞を0.05%Trypsin−EDTA溶液を用いてフラスコより遊離させ回収した。PBSで洗浄後、PBSにて5×10個/mLになるように懸濁し、氷上で保持した。6週齢のヌードマウス(日本チャールス・リバー株式会社)の右腹側部へ、1匹あたり0.1mLの細胞懸濁液を皮下注射した。各々のマウスを毎日観察し、状態異常が発見された場合には適宜記録を行った。腫瘍の大きさを経時的にノギスを用いて測定し、腫瘍の大きさを、計算式:長径×(短径の2乗)÷2に基づき算出した。腫瘍の大きさが100〜200mmになった時点で、各試験群間での腫瘍の大きさおよびマウスの体重の平均値が均一になるように群分けを行い(各試験群のマウス数は5匹)、薬物の尾静脈内投与(0.2mL/20g;7日間隔で3回)を行った。
検体投与後の平均腫瘍体積の推移結果を図7に示す。図7から分かるとおり、FaDuは、メシル酸エリブリンに感受性の低い細胞株であるため、フリー体では最大耐用量である4.0mg/kg投与でも腫瘍縮小効果は得られなかった。一方、リポソーム組成物2mg/kg投与群では腫瘍縮小効果が明確に認められた。特にHP−γ−シクロデキストリンをリポソーム内相に含有するリポソーム組成物では5匹中1匹で腫瘍が完全に消失するなど高い効果が認められた。
[実施例15]
<リポソーム内相用水溶液の調製>
実施例3と同様に、100mM 硫酸アンモニウム/30mM クエン酸水溶液(pH=5.5)および200mM HP−β−シクロデキストリン/100mM 硫酸アンモニウム/30mM クエン酸水溶液(pH=5.5)を調製した。
<薬物溶液の調製>
実施例12と同様に実施し、フリー体の投与検体(メシル酸エリブリン濃度:0.2mg/mLおよび0.3mg/mLおよび0.4mg/mL)を得た。
<リポソーム組成物の調製>
上述のように作製したリポソーム内相溶水溶液を用いた以外は実施例12と同様にして、リポソーム組成物(メシル酸エリブリン濃度:0.3mg/mL)を得た。実施例1と同様にして、封入率を測定し、いずれも90%以上であることを確認した。
ヒト腎癌細胞株であるACHN(American Type Culture Collectionより入手)を10%ウシ胎児血清含有MEM培地で培養し、増殖させた。細胞を0.05%Trypsin−EDTA溶液を用いてフラスコより遊離させ回収した。PBSで洗浄後、PBSにて5×10個/mLになるように懸濁し、氷上で保持した。6週齢のヌードマウス(日本チャールス・リバー株式会社)の右腹側部へ、1匹あたり0.1mLの細胞懸濁液を皮下注射した。各々のマウスを毎日観察し、状態異常が発見された場合には適宜記録を行った。腫瘍の大きさを経時的にノギスを用いて測定し、腫瘍の大きさを、計算式:長径×(短径の2乗)÷2に基づき算出した。腫瘍の大きさが150〜200mmになった時点で、各試験群間での腫瘍の大きさおよびマウスの体重の平均値が均一になるように群分けを行い(各試験群のマウス数は5匹)、薬物の尾静脈内投与(0.2mL/20g;7日間隔で3回)を行った。
検体投与後の平均腫瘍体積の推移結果を図8に示す。図8から分かるとおり、ACHNは、メシル酸エリブリンに耐性のある細胞株であるため、フリー体投与では2mg/kg投与群、3mg/kg投与群、および4mg/kg(最大耐用量)投与群のいずれにおいても検体投与開始45日後において無処置群との有意な差は認められなかった。一方、いずれのリポソーム組成物3mg/kg投与群においては腫瘍増殖抑制効果が認められ、検体投与開始45日後において無処置群およびフリー体投与群に対し有意に小さい腫瘍体積値を示した。特にHP−β−シクロデキストリンをリポソーム内相に含有するリポソーム組成物で高い腫瘍増殖抑制効果が示された。
以上の結果から、メシル酸エリブリンの1日当たりの投与量は、特に限定されないが、通常、ヒトに対し、0.1〜10mgとなるようにリポソーム組成物を投与することにより、メシル酸エリブリンの抗腫瘍効果を発揮させることができる。
本出願は、2009年3月30日出願の日本特許出願(特願2009−082521号)および米国特許仮出願(61/164653)、ならびに日本特許出願(特願2009−082516号)および米国特許仮出願(61/164678)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
本発明は、活性化合物の保持安定性が高いリポソームを高い封入率で製造する方法を提供することができる。
本発明のリポソーム組成物は、医薬、化粧料、食品の分野で、産業上の利用可能性を有する。中でも、本発明のリポソーム組成物は、医薬として、治療用途、診断用途に用いることが好適である。

Claims (6)

  1. リポソーム組成物を製造する方法であって、
    リポソームを含み、リポソーム内相にシクロデキストリンをさらに含むリポソーム分散液を供するステップと、
    前記リポソーム分散液と活性化合物とを混合するステップと、
    前記リポソーム分散液のリポソーム内相に前記活性化合物を導入するステップと
    を含む方法。
  2. 前記リポソーム分散液が、リポソーム外相と比べてより高濃度のシクロデキストリンをリポソーム内相に含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記リポソーム分散液が、シクロデキストリンをリポソーム外相に実質的に含まない、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記リポソーム分散液を供するステップが、
    リポソームを含み、リポソーム内相およびリポソーム外相に前記シクロデキストリンをさらに含むリポソーム準備液を供するステップと、
    前記リポソーム準備液のリポソーム外相を置換または希釈することにより、リポソーム外相における前記シクロデキストリンの濃度を調整するステップと
    を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
  5. 前記導入するステップが、混合するステップにより得られた混合液におけるリポソームの膜透過性を上げるステップを含む、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
  6. 前記導入するステップが、前記混合液をリポソームの脂質二重膜の相転移温度以上に昇温するステップを含む、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
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