JP5147418B2 - 金属線材貯蔵体 - Google Patents

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Description

この発明は、一般的には金属線材を輸送または保管するための金属線材の貯蔵形態である金属線材貯蔵体に関し、特定的には合成樹脂製スプールの外周面の周りに巻かれた、相対的に低い熱膨張係数を有し、かつ、相対的に細い金属線材を備えた金属線材貯蔵体に関するものである。
熱膨張係数が相対的に低く、かつ、相対的に細い金属線材の例として、コロナ放電用電極線、ワイヤ放電加工用電極線、電子管のヒータやフィラメント用金属線等に用いられるタングステン線材、モリブデン線材、タングステン合金線材、モリブデン合金線材がある。これらの金属線材は、輸送または保管するためにリールまたはスプールの外周面の周りに巻かれた形態で貯蔵される。
たとえば、特許第2532004号公報(特許文献1)には、コロナ放電用タングステン電極線材料とその製造方法に関する発明が開示されており、伸線されたタングステン素線材がリールを有する巻取部に巻き取られることが記載されている。
また、たとえば、特許第2537813号公報(特許文献2)には、タングステン線の製造方法に関する発明が開示されており、線引されたタングステン線が巻取リールに巻き取られることが記載されている。
さらに、たとえば、特許第2846038号公報(特許文献3)には、タングステン線、モリブデン線等の電子管用金属線材の製造方法に関する発明が開示されており、素線スプールから巻き戻されたタングステン線が加熱酸化処理された後に巻き取りスプールに巻かれることが記載されている。
これらの先行技術文献に記載されているようにタングステン線材等の金属線材は、長尺物として製造された後、最終的にスプールの外周面の周りに巻かれた形態で輸送され、または保管されることが一般的である。
特許第2532004号公報 特許第2537813号公報 特許第2846038号公報
しかしながら、従来から一般的に用いられている合成樹脂製スプールの外周面の周りにタングステン線材等の金属線材を巻いて貯蔵した場合、タングステン線材等の特有の問題として、スプールの外周面の周りに整然と巻き取られた線材であっても、輸送後や長期保管後に、巻かれた線材がゆるむこと、またはたわむことなどによって巻き崩れが発生する割合が高いという問題があった。なお、熱膨張係数が相対的に低いタングステン線材等と異なり、熱膨張係数が相対的に高い銅線材、アルミニウム線材、金線材等では上記のような巻き崩れはほとんど発生しない。
また、このタングステン線材等の特有の問題である巻き崩れという現象は、初冬から初春にかけての時期に、特に発生頻度が高くなるという特徴があった。
このような巻き崩れ現象が生じると、タングステン線材等から最終製品としてのワイヤ放電加工用電極線等を製造するために線材をスプールから繰り出す時に、線材同士が絡み合ったり、ねじれることによって断線にいたるという重大な問題が頻発する。
そこで、この発明の目的は、このようなタングステン線材等の特有の問題を解決し、輸送後や長期保管後における巻き崩れ現象の発生頻度を大幅に低減させることが可能な貯蔵形態としての金属線材貯蔵体を提供することである。
この発明に従った輸送または保管用の金属線材貯蔵体は、ポリカーボネート製スプールと、このポリカーボネート製スプールの外周面の周りに巻かれた、線径が50μm以下で0℃から20℃までの温度範囲における熱膨張係数が10×10-6/℃以下であるタングステン線、モリブデン線、タングステン合金線またはモリブデン合金線のいずれかの金属線材とを備えた金属線材貯蔵体であって、0℃から20℃までの温度範囲におけるポリカーボネート製スプールの熱膨張係数が100×10-6/℃以下、ポリカーボネート製スプールの径方向の金属線材の巻き厚みが1mm以下、ポリカーボネート製スプールにて金属線材の巻き取り領域における巻き取り部の直径が一定である。

この発明の金属線材貯蔵体においては、0℃から20℃までの温度範囲におけるポリカーボネート製スプールの熱膨張係数を100×10-6/℃以下にする。このようにポリカーボネート製スプールの熱膨張係数の範囲が限定されているので、線径が50μm以下で0℃から20℃までの温度範囲における熱膨張係数が10×10-6/℃以下であるタングステン線、モリブデン線、タングステン合金線またはモリブデン合金線をポリカーボネート製スプールの外周面の周りに巻いた場合に、初冬から初春にかけての時期に、巻き取り後の環境温度が大きく低下しても、線材に対してスプールが過大に収縮することがない。これにより、線材のゆるみやたるみの発生を防止することができるので、巻き崩れ現象の発生頻度を大幅に低減させることができる。このような本発明の構成とその構成による作用効果は、後述するように本願発明者らの知見に基づくものである。
以上のようにこの発明によれば、線径が50μm以下で0℃から20℃までの温度範囲における熱膨張係数が10×10-6/℃以下であるタングステン線、モリブデン線、タングステン合金線またはモリブデン合金線ポリカーボネート製スプールの外周面の周りに巻いた場合に、巻き取り後の環境温度が大きく低下しても、巻き崩れ現象の発生頻度を大幅に低減させることができる。

まず、本発明に至るまでの本願発明者らの検討と知見について説明する。
図1は、従来または本発明の一つの実施の形態としての金属線材貯蔵体の構成を模式的に示す断面図である。
図1に示すように、従来の金属線材貯蔵体1において、金属線材10が合成樹脂製のスプール20の巻き取り部の外周面の周りに巻かれた形態で貯蔵される。従来の金属線材貯蔵体1においては、金属線材10として線径が50μm以下、たとえば、線径が30μmのタングステン線材が、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂製のスプール20の周りに巻かれた形態で貯蔵される。
図2は、輸送後や長期保管後の従来の金属線材貯蔵体の構成を模式的に示す断面図である。
図2に示すように、たとえば、ABS樹脂製のスプール20の巻き取り部の外周面の周りに巻かれたタングステン線材からなる金属線材10は、たとえば、輸送後や長期保管後に、ゆるむこと、またはたわむことなどによって巻き崩れが発生する。この巻き崩れ現象は初冬から初春にかけての時期に起こる。この発生原因について本願発明者らは次のとおり調査し、検討した。
金属線材10は、たとえば、環境温度が20℃のときにスプール20の外周面の周りに巻かれる。その後、金属線材貯蔵体1は、輸送されるとき、または、保管されるときに、たとえば、温度が0℃の環境に置かれる場合がある。このように、金属線材10の巻き取り後に環境温度が20℃から0℃に大きく低下する。本願発明者らはこのような環境温度の大きな低下に着目した。
図1に示すように、環境温度が20℃のときにタングステン線材がスプール20の周りに巻かれ、たとえば、環境温度が20℃のときのスプール21(実線で示されている)の巻き取り部の直径Dは70mm、巻き取り領域の幅Wは70mmである。これに対して、環境温度が20℃から0℃になると、スプール22(破線で示されている)は全体的に収縮し、たとえば、巻き取り部の外周面の半径方向への収縮量dは80〜100μmであることがわかった。この結果として、図1に示すように、スプール20がスプール21の状態からスプール22の状態に収縮するため、空洞(巻き取り領域における実線と破線の間の領域)が形成される。
一方、タングステン線材からなる金属線材10の線径は30μmであり、タングステンの熱膨張係数は相対的に小さいので、金属線材10の収縮量は、上記の収縮量dに比べてかなり小さい。このため、上記の空洞領域(80〜100μmの段差)に線径が30μmの金属線材10が移動することによって、金属線材10のゆるみやたわみが生じる。これにより、図2に示すように、金属線材10の巻き崩れ現象が発生するものと考えられる。すなわち、巻き崩れ現象の原因が環境温度の大きな低下による合成樹脂製のスプールの過大な収縮にあることを本願発明者らは見出した。なお、トラック等によって金属線材貯蔵体1を輸送する場合には、輸送時に振動がさらに金属線材貯蔵体1に加えられるため、金属線材10の巻き崩れ現象がより発生しやすいものと考えられる。
上記の知見に基づいて、本願発明者らは、巻き崩れ現象の原因を解消するために、合成樹脂材料のカタログ等に記載された熱膨張係数の値が相対的に小さく、かつ、タングステン線材等の金属線材の熱膨張係数の値に近い、合成樹脂からなるスプールを採用した。しかし、上記の巻き崩れ現象の発生頻度を低減させることができなかった。
そこで、本発明者らは、種々調査した結果、合成樹脂材料のカタログ等に記載された熱膨張係数の値が、20℃〜0℃までの室温以下の低温における熱膨張係数の値(測定値)と異なることを見出した。そして、本願発明者らは、合成樹脂材料の20℃〜0℃までの室温以下の低温における熱膨張係数の値(測定値)が相対的に小さく、タングステン線材等の金属線材の熱膨張係数の値に近い、合成樹脂からなるスプールを採用することにより、巻き崩れ現象の原因を解消することができることを見出した。
上述の本願発明者らの検討と知見に基づいて、本発明の金属線材貯蔵体は、合成樹脂製スプールと、この合成樹脂製スプールの外周面の周りに巻かれた、線径が50μm以下で0℃から20℃までの温度範囲における熱膨張係数が10×10−6/℃以下である金属線材とを備えた金属線材貯蔵体であって、0℃から20℃までの温度範囲における合成樹脂製スプールの熱膨張係数が金属線材の0℃から20℃までの温度範囲における熱膨張係数の10倍以下、または、100×10−6/℃以下である。
たとえば、図1に示すように、本発明の金属線材貯蔵体1において、金属線材10が合成樹脂製のスプール20の巻き取り部の外周面の周りに巻かれた形態で貯蔵される。本発明の金属線材貯蔵体1においては、金属線材10として線径が50μm以下、たとえば、線径が30μmのタングステン線材が、ポリカーボネート(PC)樹脂製のスプール20の周りに巻かれた形態で貯蔵される。
図1に示すように、環境温度が20℃のときにタングステン線材がスプール20の周りに巻かれ、環境温度が20℃のときのスプール21(実線で示されている)の巻き取り部の直径Dは70mm、巻き取り領域の幅Wは70mmである。これに対して、環境温度が20℃から0℃になると、スプール22(破線で示されている)は全体的に収縮し、たとえば、巻き取り部の外周面の半径方向への収縮量dは30〜40μmであることがわかった。この結果として、図1に示すように、スプール20がスプール21の状態からスプール22の状態に収縮するため、空洞(巻き取り領域における実線と破線の間の領域)が形成される。
一方、タングステン線材からなる金属線材10の線径は30μmであり、タングステンの熱膨張係数は相対的に小さいので、金属線材10の収縮量は、上記の収縮量dに比べてかなり小さい。しかし、金属線材10の線径は30μmであるので、上記の空洞領域(30〜40μmの段差)に線径が30μmの金属線材10が移動しても、金属線材10のゆるみやたわみは生じ難い。これにより、図2に示すような金属線材10の巻き崩れ現象が発生し難いものと考えられる。なお、トラック等によって金属線材貯蔵体1を輸送する場合において、輸送時に振動が金属線材貯蔵体1に加えられても、金属線材10の巻き崩れ現象が発生し難いものと考えられる。
このように本発明の金属線材貯蔵体1では合成樹脂製スプールの0℃から20℃までの温度範囲における熱膨張係数の範囲が限定されているので、線径が50μm以下で0℃から20℃までの温度範囲における熱膨張係数が10×10−6/℃以下である金属線材、たとえば、線径が50μm以下の相対的に細いタングステン線材等を合成樹脂製スプールの外周面の周りに巻いた場合に、初冬から初春にかけての時期に、巻き取り後の環境温度が大きく低下しても、線材に対してスプールが過大に収縮することがない。これにより、線材のゆるみやたるみの発生を防止することができるので、巻き崩れ現象の発生頻度を大幅に低減させることができる。
本発明に適用可能な金属線材は、具体的にはタングステン線、モリブデン線、タングステン合金線、モリブデン合金線等である。金属線材の表面には、酸化物層、黒鉛層、または、それらの混合層が形成されていてもよく、あるいは、各種メッキ等の表面処理がされていてもよい。また、金属線材の表面が、電解研磨加工等によって加工されていてもよい。具体的には、タングステン線材の場合、タングステン酸化物層と、黒鉛層と、このタングステン酸化物層および黒鉛層の間に形成されたタングステン酸化物および黒鉛の混合層とからなる多層混合物がタングステン線材の表面に形成されていてもよく、多層混合物の組成としては、タングステン酸化物が0.5〜4.0質量%、黒鉛が0.1〜1.5質量%であってもよい。また、タングステン線材の伸線過程において、中間アニール処理を行う前にタングステン線材の表面層を3〜10質量%除去してもよい。
金属線材は、純タングステンに、添加剤として、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luおよびそれら各々の酸化物を含む群から選ばれた1種以上を少なくとも0.0010〜1.0質量%添加した材料から構成されてもよい。また、金属線材は、タングステンおよびモリブデンのうちの少なくとも1種の高融点金属を母合金とし、この母合金の内部に、添加剤として、酸化セリウムおよび酸化サマリウムのうちの少なくとも1種からなる希土類酸化物が均一に分散している酸化物分散型合金から構成されてもよい。さらに、金属線材は、上記の母合金に、添加剤として、Reを0.001〜1.0質量%添加した材料から構成されてもよい。
これらの表面層、表面処理、添加剤等の有無によらず、金属線材を構成する材料は、0℃から20℃までの温度範囲における熱膨張係数が10×10−6/℃以下であれば、本発明の金属線材貯蔵体に適用可能である。
金属線材の0℃から20℃までの温度範囲における熱膨張係数の下限値は、1×10−6/℃が好ましい。金属線材の0℃から20℃までの温度範囲における熱膨張係数が1×10−6/℃未満であると、低温保管時や低温輸送時等において、金属線材と合成樹脂製スプールの間で収縮率の差が大きくなりすぎるため、巻き崩れ現象が発生する確率が高くなる。また、上記の熱膨張係数が1×10−6/℃以下の金属は希少であり、存在しても商用には適さない。
また、金属線材のヤング率は、300GPa以上が好ましい。金属線材のヤング率が高いほど、スプールに巻き取られた状態で、金属線材が巻き緩む方向の応力が大きく発生するので、巻き崩れやすくなる。このため、金属線材のヤング率が高いほど、本願発明の金属線材貯蔵体による作用効果をより顕著に発揮することができる。
金属線材の線径は、0.015mm(15μm)以上が好ましい。金属線材の線径が0.015mmより細いと、スプールの周りに稠密に巻き上げることが困難となり、スプールの熱膨張係数に関係なく、巻き崩れ現象が発生する確率が高くなる。また、金属線材の線径が0.015mmより細いと、実用上でも、金属線材の強度が不足し、たとえば、ワイヤ放電加工用電極線の用途に適用することができない恐れがある。
金属線材の線径の上限値は、0.050mm(50μm)である。金属線材の線径が0.050mmより太くなると、スプールの熱膨張係数に関係なく、巻き崩れ現象が発生し難くなる。
本発明にスプールを構成する合成樹脂は、具体的にはポリスチレン(PS)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、アクリロニトリルスチレンコポリマー(AS)樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂等である。これらの中でも、0℃から20℃までの熱膨張係数が比較的小さいポリカーボネート(PS)樹脂をスプールの構成材料の主成分とすることが好ましい。
スプールを構成する合成樹脂には、添加剤として、ガラス繊維を含有量が50質量%になるまで添加されていてもよい。ガラス繊維(GF)を添加すると、スプールの強度が向上する。スプールの強度は、搬送時や落下時の変形を抑制するために、ISO178準拠の曲げ強度が105MPa以上であるのが好ましい。この曲げ強度を確保するためには、合成樹脂にガラス繊維が5質量%以上添加されていることが好ましい。
上記のスプールの材質や添加剤等の有無によらず、スプールを構成する材料は、0℃から20℃までの熱膨張係数が100×10−6/℃以下、または金属線材の0℃から20℃までの熱膨張係数の10倍以下の熱膨張係数であれば、少なくとも本発明の作用効果を達成することができる。
合成樹脂製のスプールの0℃から20℃までの熱膨張係数の下限値は、金属線材の0℃から20℃までの熱膨張係数の下限値と一致することが好ましいが、低コストの汎用な合成樹脂を採用することを考慮すると、10×10−6/℃であるのが好ましい。また、スプールを構成する材料の0℃から20℃までの熱膨張係数は、金属線材の0℃から20℃までの熱膨張係数の3倍以上であることが望ましい。
図1に示すように、スプール20の巻き取り領域の幅W(巻き取り幅:胴長)は、90mm以下が好ましい。幅Wが90mmより広いと、スプールの熱膨張係数に関係なく、金属線材の巻き崩れが発生する確率が高くなる。幅Wの下限値は、特に規定されるものではないが、金属線材の運搬や保管の効率を考慮すると、60mmが好ましい。
スプール20の金属線材巻き取り部の直径D(巻き取り径:胴径)は、60mm以上が好ましい。直径Dが60mmより小さいと、金属線材にカールが発生しやすくなるという実用上の問題が生じやすい。直径Dの上限値は、特に規定されるものではないが、スプールに巻かれた金属線材の実使用時の利便性を考慮すると、90mmが好ましい。直径Dが90mmより大きいと、スプール自体の重量が大きくなり、金属線材を繰り出すのに必要なトルクが大きくなるので、金属線材の繰り出しが困難になる。
本発明に適用可能な金属線材のスプールへの巻き取り方法としては、従来のあらゆる金属線材の巻き取り方法が適用可能である。巻きはじめから巻き終わりまでの金属線材の重なり厚み(スプールの径方向の巻き厚み)は、1mm以下が好ましい。巻き厚みが1mmより厚いと、スプールの熱膨張係数に関係なく、巻き崩れが発生する確率が高くなる。巻き厚みの下限値は、特に規定されるものではないが、金属線材の運搬や保管の効率を考慮すると、0.1mmが好ましい。合成樹脂製のスプールに巻かれた、金属線材の長さ方向に垂直な断面における単位面積あたりの金属線材の占有率は、78%以上、91%以下であることが好ましい。この占有率の範囲内で金属線材が合成樹脂製のスプールの周りに巻かれると、本発明の作用効果をより顕著に達成することができる。
図3は、本発明の金属線材貯蔵体の部分断面を示す断面図である。図3の(A)は、金属線材10の長さ方向に垂直な断面における単位面積あたりの金属線材の占有率が78%の状態を示す。図3の(B)は、金属線材10の長さ方向に垂直な断面における単位面積あたりの金属線材の占有率が91%の状態を示す。
上記の占有率が78%より小さいと、金属線材がもともと緩めに巻かれているため、巻き崩れが発生してしまう恐れがある。上記の占有率が91%より大きい密度で金属線材をスプールの外周面の周りに巻くことはできない。
このような範囲の占有率(密度)で金属線材をスプールの周りに巻きあげるためには、スプールの周りに巻く際のスプールの回転数や巻き速度を調整することにより、金属線材の振れを20μm以下に制御することが好ましい。たとえば、線径が30μmのタングステン線の場合、スプールの周りに巻く際のスプールの回転数を700〜1100rpm、巻き速度を150〜250m/分に調整することにより、金属線材の振れを20μm以下に制御することが可能となる。
まず、表1に示すように、スプールの材料に用いられる樹脂A、樹脂B、樹脂C、樹脂Dと、金属線材の材料に用いられる線材1について、20℃から0℃までの熱膨張係数を測定した。表1中、PCはポリカーボネート樹脂、ASはアクリロニトリルスチレン樹脂、ABSはアクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、GFはガラス繊維、Wはタングステン、CeOはセリア(酸化セリウム)を示す。熱膨張係数は以下のようにして測定された。
表1に示す材質として樹脂A、樹脂B、樹脂C、樹脂Dからなるスプール(胴径70mm×胴長70mm)、表1に示す材質として線材1からなるタングステン棒(直径6mm×長さ70mm)、外側マイクロメーター(デジタル表示、目量:1/1000mm)および恒温槽を用意した。
20℃に設定維持した恒温槽に各スプール、タングステン棒を挿入し、24時間保持した後、個別に取り出し、各スプールの胴径およびタングステン棒の長さを外側マイクロメーターを用いて測定し、20℃における各スプールの胴径、タングステン棒の長さを求めた。20℃での測定を終えた後、1日室温に各スプール、タングステン棒を放置した。0℃に設定維持した恒温槽に各スプール、タングステン棒を挿入し、24時間保持した後、個別に取り出し、各スプールの胴径およびタングステン棒の長さを外側マイクロメーターを用いて測定し、0℃における各スプールの胴径、タングステン棒の長さを求めた。
得られた0℃と20℃における各スプールの胴径およびタングステン棒の長さの寸法の差と温度差とから、材質として樹脂A、樹脂B、樹脂C、樹脂D、線材1の0℃〜20℃間における線膨張係数を算出した。
このようにして測定された樹脂A、樹脂B、樹脂C、樹脂D、線材1の0℃〜20℃の熱膨張係数を表1に示す。樹脂A、樹脂B、樹脂C、樹脂Dに関しては、各合成樹脂のカタログに記載の熱膨張係数も併せて表1に示す。表1から、各合成樹脂のカタログに記載の熱膨張係数と測定された0℃〜20℃の熱膨張係数が異なること、および、その差は合成樹脂の種類によって大きく異なることがわかる。たとえば、樹脂C、樹脂Dは、カタログに記載の熱膨張係数が40×10−6/℃、28×10−6/℃と小さいにもかかわらず、0℃〜20℃の熱膨張係数は170×10−6/℃、180×10−6/℃と大きくなっている。これは、カタログに記載の熱膨張係数が通常、室温より高温側で測定された値と推察されることと、合成樹脂では材質によって熱膨張係数の温度依存性が大きく異なることによるものと考えられる。
表1に示す樹脂A、樹脂B,樹脂C、樹脂D、線材1を用いて、表2に示す線径の金属線材と、表2に示す各種材質・形状(胴径、胴長)の合成樹脂製スプールを準備した。そして、表2に示す巻き厚みになるように金属線材を合成樹脂製スプールの外周面の周りに巻き付けた。巻き取り中は、スプールの回転数や巻き速度を調整して、金属線材の振れを20μm以下に制御し、金属線材の長さ方向に垂直な断面における単位面積あたりの金属線材の占有率が78%以上、91%以下となるようにして、金属線材を合成樹脂製スプールの外周面の周りに巻き付けた。このようにして、表2に示す試料No.1〜23の金属線材貯蔵体を作製した。
金属線材貯蔵体の試料は、表2に示す試料No.ごとに、同一条件で10個作製した。これらの試料を0℃に設定維持した恒温槽に24時間静置し、その後、20℃に設定維持した恒温槽に24時間静置することを1サイクルとして、このサイクルを5回繰り返した。この0℃〜20℃サイクル試験を行った後、各試料において巻き崩れの有無を確認した。ただし、1サイクル終了ごとに試料の巻き崩れを目視確認し、同一条件の10個の試料のうち、1つでも巻き崩れが発生した場合、表2に示すように、その試料No.について×印を付した。1つも巻き崩れが発生しなかった場合は、その試料No.について○印を付した。
次に、実際の運搬時に発生する巻き崩れ発現の実験を次の通りに行った。22℃の工場内で試料No.1〜4と同一条件の試料を各6個作製した。各試料を化粧箱に個別に装入した。その後、個別に試料が装入された6個の化粧箱を試料No.ごとに輸送用の1個のダンボール箱に詰めた。ダンボール箱内には、各試料のスプールの胴部が水平状態を保つように、6個の化粧箱を順序よく、3列の2段重ねで並べることによって梱包した。
このダンボール箱をトラックにて荷積み地から650kmの距離隔てた荷降ろし地まで運んだ。この際、トラックの荷台には温度調節機能は設けられておらず、荷積み地の気温は−3℃、荷降ろし地の気温は15℃であった。
荷降ろし地の建屋室内(室温20℃)でダンボール箱、化粧箱を順に開梱し、スプールに巻かれた金属線材の巻き付け状態を目視観察した結果、表2にて×印が付されていない試料No.1、No.2と同一条件で作製した試料では、巻き崩れが一切発生していなかったのに対し、表2にて×印が付された試料No.3、No.4と同一条件で作製した試料では、それぞれ1つ以上の試料に巻き崩れが発生していた。
以上の結果から、0℃から20℃までの温度範囲における合成樹脂製スプールの熱膨張係数が、材質として線材1からなるタングステン線材の0℃から20℃までの温度範囲における熱膨張係数の10倍以下、または、100×10−6/℃以下である樹脂A、樹脂Bからなるスプールの外周面の周りにタングステン線材を巻いた場合に、巻き取り後の環境温度が大きく低下しても、線材に対してスプールが過大に収縮することがないので、線材のゆるみやたるみの発生を防止することができ、その結果、巻き崩れ現象の発生頻度を大幅に低減させることができることがわかる。
Figure 0005147418
Figure 0005147418
今回開示された実施の形態と実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は以上の実施の形態と実施例ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての修正と変形を含むものであることが意図される。
従来または本発明の一つの実施の形態としての金属線材貯蔵体の構成を模式的に示す断面図である。 輸送後や長期保管後の従来の金属線材貯蔵体の構成を模式的に示す断面図である。 本発明の金属線材貯蔵体の部分断面を示す断面図である。
符号の説明
1:金属線材貯蔵体、10:金属線材、20:スプール。

Claims (1)

  1. ポリカーボネート製スプールと、このポリカーボネート製スプールの外周面の周りに巻かれた、線径が50μm以下で0℃から20℃までの温度範囲における熱膨張係数が10×10-6/℃以下であるタングステン線、モリブデン線、タングステン合金線またはモリブデン合金線のいずれかの金属線材とを備えた輸送または保管用の金属線材貯蔵体であって、
    0℃から20℃までの温度範囲における前記ポリカーボネート製スプールの熱膨張係数が100×10-6/℃以下
    前記ポリカーボネート製スプールの径方向の前記金属線材の巻き厚みが1mm以下、
    前記ポリカーボネート製スプールにて前記金属線材の巻き取り領域における巻き取り部の直径が一定である、金属線材貯蔵体。
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