JP5170896B2 - 光ファイバケーブルの製造方法 - Google Patents
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しかし、光ファイバテープ心線に付与される余長が大きすぎると、溝内で小径で曲がった状態で収納される箇所が生じることとなり、伝送損失を増加させる要因となる。そのため、光ファイバテープ心線には設計通りの適切な余長が付与されることが重要となる。この余長は製造時残留歪特性として評価され、例えば、製造時残留歪が0.05%以下であれば適切な余長が付与されていると判断できる。
なお、光ファイバケーブルの製造時にスロットロッドに付加される張力と、光ファイバテープ心線に付加される張力を制御することにより、光ファイバテープ心線に所望の余長を付与することができる。
図4に示す光ファイバケーブル製造装置100は、スロットロッド供給部110、張力付加部120、テープ心線供給部130、テープ心線落とし込み部140、押え巻き部150、ケーブル引取部(キャプスタン式)160、ケーブル巻取部170を備えて構成される。
このとき、スロットロッド10には、張力付加部120とケーブル引取部160との間で所定の張力が付加される。この張力によりスロットロッド10は0.1%程度伸長される。
スロットロッド10に付加された張力は、スロットロッド10がケーブル引取部160に到達してキャプスタンで方向転換された時点で解放され、これに伴いスロットロッド10の長さは元に戻る。
このとき、テープ心線落とし込み部140からケーブル引取部160のキャプスタンで方向転換されるまでの落とし込み区間Lでの巻きつけ効果により、光ファイバテープ心線20とスロットロッド10との間に所定の摩擦力が発生し、これにより光ファイバテープ心線20に一定張力が付加されても光ファイバテープ心線20が長手方向(テープ心線供給部側)に移動しないようになっている。
一方で、光ファイバテープ心線20とスロットロッド10との間に十分な摩擦力が生じなければ、スロットロッド10がケーブル引取部160のキャプスタンで方向転換されたとき、光ファイバテープ心線20にかかる張力(バックテンション)により光ファイバテープ心線20が引き戻されてしまう。この場合、光ファイバテープ心線には、期待する余長が付与されない。
また、製造終了時に落とし込み長Lに相当する分のスロットロッド及び光ファイバ心線は無駄となるため、落とし込み長Lが長ければそれだけ無駄となる量が増加することとなり、コスト低減の妨げとなる。
光ファイバテープ心線の積層の高さ:δs(mm)
溝の高さ:h(mm)
溝の撚りピッチ:p(mm)
最外層に位置する光ファイバテープ心線の中心点の層心半径:R(mm)
最も上及び最も下に積層される光ファイバテープ心線に用いられる光ファイバ心線をφ30mmのマンドレルに100ターン巻きつけたときの損失:A(dB)
溝の深さ方向クリアランス:C=h−δs(mm)
損失係数:Dt=C・p/(A・R2)
前記光ファイバ心線を前記スロットロッドの溝に収容する際の落とし込み長:L(m)
としたとき、
0<C≦0.6
Dt≧2.0
A≦1
400≦p≦700
20≦L<40
を満足するように、溝の深さ方向クリアランスC、溝の撚りピッチp、光ファイバ心線をφ30mmのマンドレルに100ターン巻きつけたときの損失A、最外層に位置する光ファイバテープ心線の中心点の層心半径Rのうち少なくとも1つを調整することを特徴とする。
図1は、スロット型光ファイバケーブルの一例を示す断面図である。
図1に示すように、スロット型光ファイバケーブル1は、スロットロッド10、光ファイバテープ心線20、押え巻きテープ30、シース40と、を備えて構成される。
スロットロッド10の中心部には、張力を負担するテンションメンバ11が軸方向に設けられている。テンションメンバ11は、7本の鋼線を撚り合わせた鋼撚り線で構成されている。
スロットロッド10の外周面には、軸方向に沿って13本の溝12が一方向の螺旋状に形成されている。それぞれの溝12には、10枚の光ファイバテープ心線20が収納される。
図2に示すように、スロットロッドの外径をds、溝の高さをh、積層されたすべてのテープ心線の厚さの和であるテープ積層の高さをδs、最外層に位置する光ファイバテープ心線の中心点の層心半径をRとする。溝12の深さ方向クリアランスCはC=h−δsで表される。
従来は、製造ラインにおける落とし込み長Lを十分に長く確保することで(例えば、40m)、光ファイバテープ心線20とスロットロッド10との間に所定の摩擦力を発生させる。この摩擦力により光ファイバテープ心線20は溝12の長手方向に移動しないので、光ファイバテープ心線20に所定の余長を付与することができる。
しかし、前述したようにクリアランスCが小さくなると、溝12の軌跡長が短くなったときに、光ファイバテープ心線20の余長を吸収するためのスペースが小さくなるため、光ファイバテープ心線20は溝12内部で緩やかに撓むことができず、小さな曲率で曲がることになる。したがって、光ファイバの曲げに伴う伝送損失の増加が大きくなる(捻回特性の低下)。なお、捻回特性については後述する。
本発明では、上記知見に基づいて、クリアランスCを小さくしても、捻回特性が損なわれず、残留歪特性及び捻回特性がともに良好な光ファイバケーブルを提供する。
これにより、製造ラインの落とし込み長Lを20mとした場合でも、製造時残留歪を0.05%以下とすることができる。
つまり、クリアランスCを0.6mm以下とすることで、光ファイバテープ心線20とスロットロッド10との間に、光ファイバテープ心線が張力により長手方向に移動しない程度の摩擦力を生じさせることができる。
なお、損失係数Dtは、本発明者が光ファイバケーブルの各種パラメータと捻回特性との関係から見出した係数であり、Dt≧2.0を満足する場合に捻回特性が良好となることが実験的に明らかとなっている。
図3は、実施例、比較例、従来例における各種パラメータ及び評価結果(捻回特性、製造時残留歪)を示す説明図である。なお、図3における製造時残留歪は、テープ心線積層体の最外層、最内層のテープ心線の歪のうち最大値である。また、図3における捻回試験時の損失は最外層のテープ心線の両端の光ファイバ心線の測定結果である。なお、捻回試験において、最も損失増加が起こりやすいのは最外層のテープ心線の両端の光ファイバ心線であるため、これらの光ファイバ心線を測定の対象としている。
従来例では、落とし込み長L=40m、クリアランスC=1.10mm、溝の撚りピッチ(以下、溝ピッチという。)p=500mm、最外層テープ層心径R=10.6mm、光ファイバの曲げ損失A=1.0dBとしている。
従来例に係る光ファイバケーブルでは、製造時残留歪ε=0.00%、捻回試験時の損失増加B=0.000dBである。
従来例では、クリアランスC=1.10mmであり、本発明で規定する0<C≦0.6を満たしていないが、落とし込み長Lを長く確保しているので、製造時残留歪が管理値0.05%以下を満足している。
また、損失係数Dt=4.9であり、本発明で規定するDt≧2.0を満たしているので捻回試験時の損失増加は管理値0.05dB以下を満足している。
比較例1では、落とし込み長L=20m、クリアランスC=1.10mm、溝ピッチp=500mm、最外層テープ層心径R=10.6mm、光ファイバの曲げ損失A=1.0dBとしている。すなわち、比較例1の落とし込み長Lは、従来例の1/2となっている。
比較例1に係る光ファイバケーブルでは、製造時残留歪ε=0.06%、捻回試験時の損失増加B=0.000dBである。
比較例1では、クリアランスC=1.10mmであり、本発明で規定する0<C≦0.6を満たしておらず、落とし込み長Lも長く確保されていないので、製造時残留歪が管理値0.05%以下を満足しない。なお、図3では省略しているが、クリアランスC=0.6mmを超える場合には、製造時残留歪が管理値を満足しないという結果が得られている。
一方、損失係数Dt=4.9であり、本発明で規定するDt≧2.0を満たしているので捻回試験時の損失増加は管理値0.05dB以下を満足している。
実施例1では、落とし込み長L=20m、クリアランスC=0.60mm、溝ピッチp=400mm、最外層テープ層心径R=9.9mm、光ファイバの曲げ損失A=1.0dBとしている。すなわち、実施例1のクリアランスCは、比較例1のクリアランスC=1.10mmよりも小さくなっている。
実施例1に係る光ファイバケーブルでは、製造時残留歪ε=0.03%、捻回試験時の損失増加B=0.002dBである。
実施例1では、クリアランスC=0.60mmであり、本発明で規定する0<C≦0.6を満たしているので、製造時残留歪が管理値0.05%以下を満足している。
一方、損失係数Dt=2.4であり、本発明で規定するDt≧2.0を満たしているので捻回試験時の損失増加は管理値0.05dB以下を満足している。
比較例2では、落とし込み長L=20m、クリアランスC=0.40mm、溝ピッチp=400mm、最外層テープ層心径R=9.4mm、光ファイバの曲げ損失A=1.0dBとしている。すなわち、比較例2のクリアランスCは、実施例1のクリアランスC=0.60mmよりもさらに小さくなっている。
比較例2に係る光ファイバケーブルでは、製造時残留歪ε=0.00%、捻回試験時の損失増加B=0.102dBである。
比較例2では、クリアランスC=0.40mmであり、本発明で規定する0<C≦0.6を満たしているので、製造時残留歪が管理値0.05%以下を満足している。
一方、損失係数Dt=1.8であり、本発明で規定するDt≧2.0を満たしていないので、捻回試験時の損失増加が管理値0.05dB以下を満足していない。
実施例2では、落とし込み長L=20m、クリアランスC=0.40mm、溝ピッチp=700mm、最外層テープ層心径R=9.4mm、光ファイバの曲げ損失A=1.0dBとしている。すなわち、実施例2の溝ピッチpは、比較例2の溝ピッチp=400mmよりも大きくなっている。
実施例2に係る光ファイバケーブルでは、製造時残留歪ε=0.01%、捻回試験時の損失増加B=0.001dBである。
実施例2では、クリアランスC=0.40mmであり、本発明で規定する0<C≦0.6を満たしているので、製造時残留歪が管理値0.05%以下を満足している。
一方、損失係数Dt=3.2であり、本発明で規定するDt≧2.0を満たしているので捻回試験時の損失増加は管理値0.05dB以下を満足している。
実施例3では、落とし込み長L=20m、クリアランスC=0.40mm、溝ピッチp=400mm、最外層テープ層心径R=9.4mm、光ファイバの曲げ損失A=0.6dBとしている。すなわち、実施例3のファイバ曲げ損失Aは、比較例2のファイバ曲げ損失A=1.0dBよりも小さくなっている。
実施例3に係る光ファイバケーブルでは、製造時残留歪ε=0.01%、捻回試験時の損失増加B=0.002dBである。
実施例3では、クリアランスC=0.40mmであり、本発明で規定する0<C≦0.6を満たしているので、製造時残留歪が管理値0.05%以下を満足している。
一方、損失係数Dt=3.2であり、本発明で規定するDt≧2.0を満たしているので捻回試験時の損失増加は管理値0.05dB以下を満足している。
比較例3では、落とし込み長L=20m、クリアランスC=0.20mm、溝ピッチp=400mm、最外層テープ層心径R=9.4mm、光ファイバの曲げ損失A=0.6dBとしている。すなわち、比較例3のクリアランスCは、実施例3のクリアランスC=0.40mmよりもさらに小さくなっている。
比較例3に係る光ファイバケーブルでは、製造時残留歪ε=0.00%、捻回試験時の損失増加B=0.410dBである。
比較例3では、クリアランスC=0.20mmであり、本発明で規定する0<C≦0.6を満たしているので、製造時残留歪が管理値0.05%以下を満足している。
一方、損失係数Dt=1.6であり、本発明で規定するDt≧2.0を満たしていないので、捻回試験時の損失増加が管理値0.05dB以下を満足していない。
実施例4では、落とし込み長L=20m、クリアランスC=0.20mm、溝ピッチp=400mm、最外層テープ層心径R=9.2mm、光ファイバの曲げ損失A=0.2dBとしている。すなわち、実施例4のファイバ曲げ損失Aは、比較例3のファイバ曲げ損失A=0.6dBよりも小さくなっている。
実施例4に係る光ファイバケーブルでは、製造時残留歪ε=0.00%、捻回試験時の損失増加B=0.000dBである。
実施例4では、クリアランスC=0.20mmであり、本発明で規定する0<C≦0.6を満たしているので、製造時残留歪が管理値0.05%以下を満足している。
一方、損失係数Dt=4.8であり、本発明で規定するDt≧2.0を満たしているので捻回試験時の損失増加は管理値0.05dB以下を満足している。
実施例5では、落とし込み長L=20m、クリアランスC=0.10mm、溝ピッチp=400mm、最外層テープ層心径R=9.2mm、光ファイバの曲げ損失A=0.2dBとしている。すなわち、実施例5のクリアランスCは、実施例4のクリアランスC=0.20mmよりもさらに小さくなっている。
実施例5に係る光ファイバケーブルでは、製造時残留歪ε=0.00%、捻回試験時の損失増加B=0.001dBである。
実施例5では、クリアランスC=0.10mmであり、本発明で規定する0<C≦0.6を満たしているので、製造時残留歪が管理値0.05%以下を満足している。
一方、損失係数Dt=2.4であり、本発明で規定するDt≧2.0を満たしているので捻回試験時の損失増加は管理値0.05dB以下を満足している。
実施例5の結果から、クリアランスC=0.1mmとする場合には、さらにファイバ曲げ損失Aを小さくすることが考えられるが、ファイバ曲げ損失Aを小さくしなくてもDt≧2.0が満たされているので、捻回特性を確保できるということになる。
本発明によれば、優れた製造時残留歪特性及び捻回特性を有する光ファイバケーブルを、短い製造ラインによって実現することが可能となる。したがって、製造ラインの設置に必要な敷地面積を縮小することができるとともに、製造時に無駄となるスロットロッド及び光ファイバ心線の量を低減することができる。
言い換えると、落とし込み長Lを短くする場合には、所望の摩擦が得られるようにクリアランスCを小さくすることで、所望の製造時残留歪特性を満足することができる。また、損失係数Dt≧2.0に従うことにより、クリアランスCを変更することに伴い、溝ピッチp及び/又は使用する光ファイバの曲げ特性Aを、捻回特性が確保されるように容易に調整することができる。
例えば、上記実施形態では、光ファイバテープ心線20の積層枚数を10枚としているが、本発明はこれに限定されず、積層枚数を任意とすることができる。なお、積層枚数が多くなり(例えば、5枚以上)、各種パラメータの設計が複雑になる場合に、本発明は特に有効である。
10 スロットロッド
11 テンションメンバ(鋼撚り線)
12 溝
20 光ファイバテープ心線
30 押え巻きテープ
40 シース(外被)
Claims (1)
- スロットロッドの外周面に軸方向に沿って螺旋状に形成された溝に、複数の光ファイバ心線を並行に並べ一括被覆した厚さ0.3mmの光ファイバテープ心線を10枚積層状態で収容したスロット型光ファイバケーブルの製造方法であって、
光ファイバテープ心線の積層の高さ:δs(mm)
溝の高さ:h(mm)
溝の撚りピッチ:p(mm)
最外層に位置する光ファイバテープ心線の中心点の層心半径:R(mm)
最も上及び最も下に積層される光ファイバテープ心線に用いられる光ファイバ心線をφ30mmのマンドレルに100ターン巻きつけたときの損失:A(dB)
溝の深さ方向クリアランス:C=h−δs(mm)
損失係数:Dt=C・p/(A・R2)
前記光ファイバ心線を前記スロットロッドの溝に収容する際の落とし込み長:L(m)
としたとき、
0<C≦0.6
Dt≧2.0
A≦1
400≦p≦700
20≦L<40
を満足するように、溝の深さ方向クリアランスC、溝の撚りピッチp、光ファイバ心線をφ30mmのマンドレルに100ターン巻きつけたときの損失A、最外層に位置する光ファイバテープ心線の中心点の層心半径Rのうち少なくとも1つを調整することを特徴とする光ファイバケーブルの製造方法。
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