JP5146811B2 - 電子写真感光体、それを用いた画像形成方法、画像形成装置及び画像形成装置用プロセスカートリッジ - Google Patents

電子写真感光体、それを用いた画像形成方法、画像形成装置及び画像形成装置用プロセスカートリッジ Download PDF

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Description

本発明は、極めて耐摩耗性の高い有機電子写真感光体に関するものであり、さらに帯電性、感度、残留電位蓄積性等の電気特性にも優れ、且つ、電気特性及び画像流れに対する環境安定性が良好であり、加えて電子写真プロセスから発生する酸化性ガスに対して解像度低下や中間調濃度低下等の画像欠陥が生じにくい、高耐久、高性能且つ高安定な電子写真感光体に関するものである。また、その長寿命、高安定な電子写真感光体を使用した画像形成方法、画像形成装置及び画像形成装置用プロセスカートリッジに関する。
近年、有機感光体(OPC)は良好な性能、様々な利点から、無機感光体に換わり複写機、ファクシミリ、レーザープリンタ及びこれらの複合機に多く用いられている。この理由としては、例えば(1)光吸収波長域の広さ及び吸収量の大きさ等の光学特性、(2)高感度、安定な帯電特性等の電気的特性、(3)材料の選択範囲の広さ、(4)製造の容易さ、(5)低コスト、(6)無毒性、等が挙げられる。一方、最近画像形成装置の小型化から感光体の小径化が進み、機械の高速化やメンテナンスフリーの動きも加わり感光体の高耐久化が切望されるようになってきた。この観点からみると、有機感光体は、電荷輸送層が低分子電荷輸送物質と不活性高分子を主成分としているため一般に柔らかく、電子写真プロセスにおいて繰り返し使用された場合、現像システムやクリーニングシステムによる機械的な負荷により摩耗が発生しやすいという欠点を有している。加えて高画質化の要求からトナー粒子の小粒径化に伴いクリーニング性を挙げる目的でクリーニングブレードのゴム硬度の上昇と当接圧力の上昇が余儀なくされ、このことも感光体の摩耗を促進する要因となっている。この様な感光体の摩耗は、感度の劣化、帯電性の低下などの電気的特性を劣化させ、画像濃度低下、地肌汚れ等の異常画像の原因となる。また摩耗が局所的に発生した傷は、クリーニング不良によるスジ状汚れ画像をもたらす。そこで、有機感光体の耐摩耗性を向上させる試みが、様々な方向から検討されてきた。
中でも多官能のラジカル硬化性モノマーを硬化した架橋表面層を有するもの(例えば、特許文献1参照。)は、官能基量の多いモノマーを使用でき緻密な3次元網目構造が形成され高い耐摩耗性が発揮できること、光、熱、放射線で瞬時に硬化膜が形成可能なこと、硬化反応に酸や塩基の触媒を必要とせず硬化材料が電気特性に悪影響を及ぼさないこと等で注目される。更に、この架橋表面層の電気特性を改良する目的でラジカル重合性官能基を有する電荷輸送物質を併用し、電荷輸送構造を架橋構造中に固定したもの(例えば、特許文献2、3参照。)が提案され、この技術により耐摩耗性と電荷輸送性とを両立でき、架橋表面層の残留電位上昇、傷に対する膜厚余裕度が向上した。
一方、ラジカル硬化性組成物からなる架橋表面層は高度に架橋した3次元網目構造を形成でき高い耐摩耗性が得られるものの、元来硬化組成物中には極性基が多量に存在し誘電率が大きいため、温湿度等の環境変動や帯電器から発生する酸化性ガスで低抵抗化、感度低下などの電気特性劣化、濃度変化、画像流れ、解像度低下などの画像劣化が起こりやすいという課題がある。これに対し、官能基の一部をアルキル置換した多官能モノマーを用いる技術(例えば、特許文献4参照。)により、官能基の代わりに不活性な置換基を導入し環境変動の影響を緩和している。更に、ビスフェノールA誘導体2官能モノマーを併用したもの(例えば、特許文献5、6参照。)により架橋表面層の環境安定性や下層との接着性を向上させる技術が提案され、画像濃度変動や表面層の剥離を抑制している。
上記のような技術により架橋表面層の環境対応性や酸化性ガスに対する安定性を改良してきたが、高い耐摩耗性を狙い官能基量を増やすと極性基や未反応官能基が増加し、反対に官能基量を減らすと機械的強度が低下するため、依然として温湿度や酸化性ガスに対する環境安定性と耐摩耗性は相反関係にあり、両特性を十分に両立させるものには至っていない。
また近年の高画質化、高耐久化の要望が高まり、環境安定性と耐摩耗性を高度なレベルで両立させる必要が切望されている。
特許第3262488号公報 特許第3194392号公報 特開2000−66425号公報 特開2006−3863号公報 特許第2896823号公報 特開2006−71856号公報
本発明の課題は、耐摩耗特性に優れ且つ電気的特性が良好で、更に優れた環境対応性を有する高耐久、高性能な電子写真感光体を提供することである。より詳しくは、多官能モノマーを用いた架橋表面層の高い耐摩耗性を維持したまま、温湿度環境や帯電器から発生する酸化性ガスに対し高い安定性を有し、画像濃度変動や画像流れ及び解像度低下が起こりにくい電子写真感光体を提供することである。
また、かかる高耐久、高安定な長寿命感光体を使用し、長期間にわたり高画質化を実現した画像形成方法、画像形成装置及び画像形成装置用プロセスカートリッジを提供することである。
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、次の(1)〜(11)により上記目的を達成できることを見出して、本発明を完成するに至った。
すなわち、上記課題は、以下の本発明によって解決される。
(1)導電性支持体上に少なくとも、ラジカル硬化されていない感光層と、ラジカル硬化組成物を含有する架橋表面層を有する電子写真感光体において、前記ラジカル硬化組成物が、少なくとも下記一般式(B)、一般式(C)、又は一般式(D)のいずれかの化学式で表されるラジカル重合性化合物を含有する塗工液を感光層表面に塗布した後、ラジカル硬化させて形成された組成物であることを特徴とする電子写真感光体。
式中、R 及びRは水素原子又はメチル基を表し、R、R、R及びRはそれぞれ水素原子、炭素数1〜6の直鎖状または分岐状または環状アルキル基、アリル基、ハロゲン原子、アリール基を表し、R及びR10は水素原子、メチル基、エチル基を表す。但しR〜Rの全てが水素原子である場合を除く。Rの炭素数とR10の炭素数の和は0〜2である。)
(式中、R 11 、R 12 、R 13 及びR 14 はそれぞれ水素原子又はメチル基を表し、R 5 、R 6 、R 7 及びR 8 はそれぞれ水素原子、炭素数1〜6の直鎖状または分岐状または環状アルキル基、アリル基、ハロゲン原子、アリール基を表し、R 9 及びR 10 は水素原子、メチル基、エチル基を表す。但しR 5 〜R 8 の全てが水素原子である場合は除く。R 9 の炭素数とR 10 の炭素数の和は0〜2である。)
(式中、R 21 、R 22 はそれぞれ水素原子又はメチル基を表し、R 5 、R 6 、R 7 及びR 8 はそれぞれ水素原子、炭素数1〜6の直鎖状または分岐状または環状アルキル基、アリル基、ハロゲン原子、アリール基を表し、R 9 及びR 10 は水素原子、メチル基、エチル基を表し、nは1〜50の整数を表す。但しR 5 〜R 8 の全てが水素原子である場合は除く。R 9 の炭素数とR 10 の炭素数の和は0〜2である。)
)前記ラジカル硬化組成物が、少なくとも上記一般式(B)、(C)、(D)で表されるラジカル重合性化合物のいずれかと、更にラジカル重合性官能基を3つ以上有するモノマーを含有する塗工液を感光層表面に塗工した後、ラジカル硬化させて形成された組成物であることを特徴とする前記()に記載の電子写真感光体。
)前記ラジカル硬化組成物が、少なくとも上記一般式(B)、(C)、(D)で表されるラジカル重合性化合物のいずれかと、更にラジカル重合性官能基を1つ以上有する電荷輸送性化合物を含有する塗工液を感光層表面に塗工した後、ラジカル硬化させて形成された組成物であることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の電子写真感光体。
)前記ラジカル硬化組成物が、光のエネルギーを用いた手段で硬化されていることを特徴とする前記(1)〜()のいずれかに記載の電子写真感光体。
)前記ラジカル硬化されていない感光層が、導電性支持体上に少なくとも電荷発生層と電荷輸送層を順次積層した構成をとることを特徴とする前記(1)〜()のいずれかに記載の電子写真感光体。
)電子写真感光体を用いる画像形成方法において、該電子写真感光体が前記(1)〜()いずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成方法。
)少なくとも帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、及び電子写真感光体を具備してなる画像形成装置において、該電子写真感光体が前記(1)〜()のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成装置。
)前記(1)〜()のいずれかに記載の電子写真感光体と、更に帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段、除電手段から選択される少なくとも1つの手段とが一体となり、画像形成装置と着脱自在であることを特徴とする画像形成装置用プロセスカートリッジ。
本発明のラジカル硬化されていない感光層と、一般式(A)の構造を含むラジカル硬化組成物を含有する架橋表面層を有する電子写真感光体を用いることによって、耐摩耗性が高く、良好な電気特性を有し、更に環境安定性、耐ガス性が優れた電子写真感光体が実現される。したがってこの感光体を用いることで、より高画質な画像を長期にわたり提供できる高性能で且つ信頼性の高い画像形成方法、画像形成装置及び画像形成装置用プロセスカートリッジが提供できる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明においては、架橋表面層を形成するラジカル硬化組成物の構造中に下記一般式(A)の化学構造を組み込むことにより、優れた耐摩耗性と同時に、温湿度に広く対応できる環境安定性を有し、また帯電器から発生するオゾンガス、窒素酸化物ガス(NOxガス)等の酸化性ガスに強く、画像濃度の変動、画像流れ、及び解像度低下を抑制できることが判明した。
(式中、R5、R6、R7及びR8はそれぞれ水素原子、炭素数1〜6の直鎖状または分岐状または環状アルキル基、アリル基、ハロゲン原子、アリール基を表し、R9及びR10は水素原子、メチル基、エチル基を表す。但しR5〜R8の全てが水素原子であるものは除く。R9の炭素数とR10の炭素数の和は0〜2である。)
<耐摩耗性発現理由に関して>
まず本発明の架橋表面層が高い耐摩耗性を有することを説明する。
従来、ラジカル硬化性組成物からなる架橋表面層は、緻密な3次元網目構造が形成でき、これにより高い耐摩耗性が発揮されることが知られていた。特許第3262488号公報(特許文献1)及び特開2006−227761号公報に記載されているように、耐摩耗性を支配する要因は硬化組成物中のラジカル硬化性官能基量であり、例えばアクリル基の場合アクリル当量(モノマー分子量を官能基数で割った値)の小さいモノマーを用いることで、より緻密な3次元架橋構造が形成され、高い耐摩耗性が達成されることが開示されている。また、官能基数が多いモノマー、例えば3官能以上のモノマー、更には6官能モノマーを用いることも耐摩耗性向上には有効であり、これは官能基の中の少なくとも1つが重合することで分子量が増大する確率が高まることによる。例えば、2官能以下のモノマーを主成分として用いると機械的強度が低下し、先の特許文献にも記載されているように架橋表面層の耐摩耗性が低下することが予想されるものであった。
これに対し、本発明ではラジカル硬化組成物中に一般式(A)で表される構造単位を含有させることで、前記多官能モノマーを用いた場合に匹敵する高い耐摩耗性が得られることが判明した。これは、従来の技術にはみられないものである。この理由は明らかではないが以下のように推測される。硬化組成物中に一般式(A)の構造単位を含有させる場合、上記公報文献記載の多官能脂肪族モノマーに比べ官能基の割合は希薄となり、機械的強度が低下すると考えられていた。しかし、架橋密度は低下するものの、直鎖状ポリマーでみられる分子間の絡み合いの効果(この場合は一般式(A)の構造間の絡み合い)が発現するものと推定される。感光体の摩耗は、クリーニング作用からの熱や帯電器の放電により切断された分子が現像剤やクリーニングブレードで引き抜かれることで起こるため、絡み合いやスタッキングの力が分子の引き抜きを防止し、摩耗を抑制に繋がったと推測される。
更にまた、硬化組成物中に電荷輸送性物質(官能基を有するもの又は官能基を有しないものいずれにおいても)を含有させる場合、ベンゼン環を有する一般式(A)の構造単位を含有させることにより、広いπ電子共役構造からなる電荷輸送物質はマトリックスとの相溶性が向上する。このため架橋表面層の均一性が向上し、機械的強度が増加したと考えられる。
<環境安定性発現理由に関して>
次に、本発明の架橋表面層が環境変動や酸化性ガスに強い理由を記載する。
元来耐摩耗性の高い架橋表面層では、ウレタン硬化、アクリル硬化、シロキサン硬化、エポキシ硬化など架橋構造を問わず、緻密な網目構造を形成するため多量の反応性置換基が必要となり、得られた架橋膜も極性基が多くなる。このため環境変動や酸化性ガスに弱い。
先に記したラジカル硬化組成物中の官能基を増やす方向や官能基数の多い多官能モノマーを多量に用いる方向は、更に極性基(例えばエステル基)の増加を招き、水分吸着性が高まり結果として高湿環境で画像流れが発生しやすくなる。また、非常に緻密な架橋構造が形成されると分子の運動性が凍結され、特に低温状態で電荷輸送物質の立体構造変化が抑制され、感度低下を招く。また、硬化組成物中の官能基を増やすと硬化後に残存する未反応官能基が増加し、これに伴い帯電器から発生する反応性の高い酸化性ガスの吸着量が増加し、架橋表面層の低抵抗化や解像度低下を招く。
これに対し、本発明の硬化組成物中に一般式(A)の構造単位を含有させることで、環境変動や酸化性ガスによる影響が緩和される。この理由は明らかではないが以下のように推測される。硬化組成物中に一般式(A)の構造単位を含有させる場合、先の多官能脂肪族モノマーを用いたものに比べ、官能基濃度が薄められ架橋表面層の環境安定性が向上すると考えられる。また、実際の網目の間隔も広がることで分子が動きやすい状態が保たれ、加えて極性基が減ることで誘電率も上がらず、従って高い電荷輸送性を維持できるため低温での感度低下を抑制できると考えられる。更に嵩高い構造が網目構造の空間を埋めることにより、膜内部へのガス浸透性が低く酸化性ガスの影響を低減できたと考えられる。加えてビスフェノールA構造と異なり、ベンゼン核の水素を、それより嵩高い直鎖状または分岐状または環状アルキル基、アリル基、ハロゲン原子、アリール基等で置換することにより、極性基である酸素原子への酸化性ガスの吸着を抑制し、更に耐ガス性が向上できたと考えられる。
上記のような理由から、本発明の硬化組成物中に一般式(A)の構造単位を含有させることで、耐摩耗性に優れ、環境変動や酸化性ガスにも強い、両特性を同時に改良された架橋表面層が達成できたと考えられる。
<ラジカル硬化組成物に関して>
次に、本発明の架橋表面層を形成するラジカル硬化組成物の構成成分について説明する。
本発明は、前記ラジカル硬化組成物中に一般式(A)の構造単位を含有させるものであるが、かかる構造単位を有するラジカル重合性モノマー、ラジカル重合性オリゴマー又はラジカル重合性官能基を有するポリマー等のラジカル重合性化合物を、光、熱又は電子線のエネルギーにより硬化することで、架橋表面層中の硬化物構造中に導入される。この硬化に際し、一般式(A)の構造単位は分解することなく固定化され、硬化表面層を熱分解GC分析によるマススペクトル測定、赤外分光分析による特性吸収測定等で確認できる。一般式(A)の構造単位は全ラジカル硬化組成物量に対し5〜80質量%、好ましくは10〜50質量%である。硬化組成物中の一般式(A)の構造単位が5質量%未満では、目的とする環境変動や酸化性ガスに対する電気特性や画像劣化を抑制できない。また、80質量%を超えると硬化性官能基が少なくなり耐摩耗性、耐傷性などの機械的強度が低下する。
上記ラジカル重合性モノマー、オリゴマー、ポリマーはラジカル重合性官能基を有しているが、この官能基とは炭素−炭素2重結合を有し、ラジカル重合可能な基であれば何れでもよい。これらラジカル重合性官能基としては、例えば、下記に示す1−置換エチレン官能基、1,1−置換エチレン官能基等が挙げられる。
(1)1−置換エチレン官能基としては、例えば以下の式で表される官能基(P)が挙げられる。
官能基(P)
CH2=CH−X1
(ただし、式中、X1は、置換基を有していてもよいフェニレン基、ナフチレン基等のアリーレン基、置換基を有していてもよいアルケニレン基、−CO−基、−COO−基、−CON(R30)−基(R30は、水素、メチル基、エチル基等のアルキル基、ベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基等のアラルキル基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基を表わす。)、または−S−基を表わす。)
これらの置換基を具体的に例示すると、ビニル基、スチリル基、2−メチル−1,3−ブタジエニル基、ビニルカルボニル基、アクリロイルオキシ基、アクリロイルアミド基、ビニルチオエーテル基等が挙げられる。
(2)1,1−置換エチレン官能基としては、例えば以下の式で表される官能基(R)が挙げられる。
官能基(R)
CH2=C(Y)−X2
(ただし、式中、Yは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基等のアリール基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、メトキシ基あるいはエトキシ基等のアルコキシ基、−COOR31基(R31は、水素原子、置換基を有していてもよいメチル基、エチル基等のアルキル基、置換基を有していてもよいベンジル、フェネチル基等のアラルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基等のアリール基)、または−CONR3233(R32およびR33は、水素原子、置換基を有していてもよいメチル基、エチル基等のアルキル基、置換基を有していてもよいベンジル基、ナフチルメチル基、あるいはフェネチル基等のアラルキル基、または置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基等のアリール基を表わし、互いに同一または異なっていてもよい。)、また、X2は官能基(P)のX1と同一の置換基及び単結合、アルキレン基を表わす。ただし、Y,X2の少なくとも何れか一方がオキシカルボニル基、シアノ基、アルケニレン基、及び芳香族環である。)
これらの置換基を具体的に例示すると、α−塩化アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、α−シアノエチレン基、α−シアノアクリロイルオキシ基、α−シアノフェニレン基、メタクリロイルアミノ基等が挙げられる。
なお、これらX1、X2、Yについての置換基にさらに置換される置換基としては、例えばハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メチル基、エチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等が挙げられる。
これらのラジカル重合性官能基の中では、特にアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基が有用であり、アクリロイルオキシ基を有する化合物は、例えば水酸基がある化合物とアクリル酸(塩)、アクリル酸ハライド、アクリル酸エステルを用い、エステル化反応あるいはエステル交換反応させることにより得ることができる。また、メタクリロイルオキシ基を有する化合物も同様にして得ることができる。ラジカル硬化性官能基を複数有する場合、それらが同一であっても異なっても良い。
<一般式(B)のラジカル重合性化合物に関して>
一般式(A)の構造単位を導入するには、下記一般式(B)で表されるラジカル重合性化合物を含有する塗工液を感光層上に塗工した後、ラジカル硬化させることが特に好ましい。
(式中、R1及びR2はそれぞれ炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状アルキレン基、1−ケトヘキシレン基を表し、R3及びR4は水素原子又はメチル基を表し、R5、R6、R7及びR8はそれぞれ水素原子、炭素数1〜6の直鎖状または分岐状または環状アルキル基、アリル基、ハロゲン原子、アリール基を表し、R9及びR10は水素原子、メチル基、エチル基を表し、n、mはそれぞれ0〜4の整数を表す。但しR5〜R8の全てが水素原子である場合を除く。R9の炭素数とR10の炭素数の和は0〜2である。)
一般式(B)で表されるラジカル重合性化合物は、例えば以下の製造法により容易に合成することができる。
<n、mがいずれも0の場合>
B1−1工程
<n、mが0以外の場合>
B2−1工程
B2−2工程
一般式(B)で表されるラジカル重合性化合物としては、以下のものが例示されるが、これらの化合物に限定されるものではない。
<一般式(C)のラジカル重合性化合物に関して>
一般式(A)の構造単位を導入するには、下記一般式(C)で表されるラジカル重合性化合物を含有する塗工液を感光層上に塗工した後、ラジカル硬化させることが特に好ましい。
(式中、R11、R12、R13及びR14はそれぞれ水素原子又はメチル基を表し、R5、R6、R7及びR8はそれぞれ水素原子、炭素数1〜6の直鎖状または分岐状または環状アルキル基、アリル基、ハロゲン原子、アリール基を表し、R9及びR10は水素原子、メチル基、エチル基を表す。但しR5〜R8の全てが水素原子である場合を除き、R9の炭素数とR10の炭素数の和は0〜2である。)
一般式(C)で表されるラジカル重合性化合物は、例えば以下の製造法により容易に合成することができ・BR>驕B
C1−1工程
この時エポキシ環の開環方向により、下記類似構造体が副生する。
これらの分離は容易では無く、混合体として使用する事もできる。混合体として使用しても特性に影響が無く、コスト的に有利である。
C1−2工程
また、C1−1工程を次の方法(C2−1&C2−2)に変えても容易に合成出来る。
C2−1工程
C2−2工程
この時エポキシ環の開環方向により、下記類似構造体が副生する。
C2−3工程
また、一般式(C)のR11〜R14が全て同じ基である場合は、下記C3工程により合成することができる。
C3−1工程
C3−2工程
以上の各工程における反応条件は、従来公知のエポキシ環のヒドロキシ基への開環付加反応や酸クロリドとヒドロキシ基によるエステル化反応の条件にて行うことができる。
また、工程に記載以外の従来合成方法を適用することも可能である。例えば、(メタ)アクリロイル化の工程を上記工程では、酸クロリドとヒドロキシ基との反応を用いて例示したが、適応する酸とヒドロキシ基との脱水縮合反応を用いることも可能であり、また、アクリロイル化では、下記(C4)に示す反応を適用することもできる。
C4工程
一般式(C)で表されるラジカル重合性化合物としては、以下のものが例示されるが、これらの化合物に限定されるものではない。
<一般式(D)のラジカル重合性化合物に関して>
一般式(A)の構造単位を導入するには、下記一般式(D)で表されるラジカル重合性化合物を含有する塗工液を感光層上に塗工した後、ラジカル硬化させることが特に好ましい。
(式中、R21、R22はそれぞれ水素原子又はメチル基を表し、R5、R6、R7及びR8はそれぞれ水素原子、炭素数1〜6の直鎖状または分岐状または環状アルキル基、アリル基、ハロゲン原子、アリール基を表し、R9及びR10は水素原子、メチル基、エチル基を表し、nは1〜50の整数を表す。但しR5〜R8の全てが水素原子である場合は除く。R9の炭素数とR10の炭素数の和は0〜2である。)
一般式(D)のラジカル重合性化合物は下記の経路で合成される。
D1−1工程
D1−2工程
一般式(D)で表されるラジカル重合性化合物としては、以下のものが例示されるが、これらの化合物に限定されるものではない。
本発明に好適に用いられる一般式(B)、(C)、(D)のラジカル重合性化合物は、硬化性を有する構成物質全量に対し10〜100質量%、好ましくは20〜70質量%である。これらのラジカル重合性化合物が10質量%未満では、硬化組成物中における一般式(A)の構造単位が希薄となり、目的とする環境変動や酸化性ガスに対する電気特性や画像劣化を抑制できない。また、70質量%を超えると硬化性官能基が少ないため耐摩耗性、耐傷性などの機械的強度が低下することがある。
<ラジカル重合性官能基を3つ以上有するモノマーに関して>
本発明の架橋表面層は一般式(A)の構造単位を有する硬化組成物を含有しているが、耐摩耗性、硬度、塗工液粘度、硬化速度等を調節する目的で、架橋表面層塗工液に、ラジカル重合性官能基を3つ以上有するモノマーを混合使用することができる。このラジカル重合性官能基としては、先の一般式(A)の構造単位を有するラジカル重合性化合物で示したものが挙げられ、特にアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基が有用である。
3官能以上のラジカル重合性モノマーとしては、以下のものが例示されるが、これらの化合物に限定されるものではない。
すなわち、本発明において好適に用いられる3官能以上のラジカル重合性モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパンアルキレン変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキシ変性(以後EO変性)トリアクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキシ変性(以後PO変性)トリアクリレート、トリメチロールプロパンカプロラクトン変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンアルキレン変性トリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)、グリセロールトリアクリレート、グリセロールエピクロロヒドリン変性(以後ECH変性)トリアクリレート、グリセロールEO変性トリアクリレート、グリセロールPO変性トリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、ジペンタエリスリトールカプロラクトン変性ヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、アルキル化ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、アルキル化ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、アルキル化ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジメチロールプロパンテトラアクリレート(DTMPTA)、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、リン酸EO変性トリアクリレート、2,2,5,5,−テトラヒドロキシメチルシクロペンタノンテトラアクリレートなどが挙げられ、これらは、単独又は2種類以上を混合使用しても差し支えない。
本発明に混合使用できるラジカル重合性官能基を3つ以上有するモノマーの量は、硬化性を有する構成物質全量に対し0〜90質量%、好ましくは0〜50質量%であり、本発明の目的とする環境変動や酸化性ガスに対する電気特性や画像の安定性を十分発揮させるには、一般式(B)、(C)、(D)のラジカル重合性化合物に対し等量以下にすることが好ましい。
<ラジカル重合性官能基を1つ以上有する電荷輸送性化合物に関して>
本発明の架橋表面層は一般式(A)の構造単位を有する硬化組成物を含有しているが、架橋表面層の電荷輸送性を向上し良好な感度や低い残留電位を長期にわたり維持する目的で、ラジカル重合性官能基を1つ以上有する電荷輸送性化合物を混合使用することができる。更に、これにより架橋表面層の膜厚を厚くでき、架橋表面層が摩耗消失するまでの更なる長寿命化が達成される。また、架橋表面層を厚膜化できることにより、キャリアや紙粉付着による傷の影響も緩和できる。
本発明に用いられるラジカル重合性官能基を1つ以上有する電荷輸送性化合物とは、例えばトリアリールアミン、ヒドラゾン、ピラゾリン、カルバゾールなどの正孔輸送性構造、例えば縮合多環キノン、ジフェノキノン、シアノ基やニトロ基を有する電子吸引性芳香族環などの電子輸送構造を有しており、且つラジカル重合性官能基を有する化合物を指す。このラジカル重合性官能基としては、先のラジカル重合性化合物で示したものが挙げられ、特にアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基が有用である。1分子中のラジカル重合性官能基の数は、1個以上複数個でも良いが、架橋表面層の内部応力を抑え平滑な表面性を得やすいため、また良好な電気特性を持続させるためには、ラジカル重合性官能基が1個である方が好ましい。電荷輸送性化合物が2個以上ラジカル重合性官能基を有する場合、嵩高い正孔輸送性化合物が複数の結合で架橋結合中に固定されるためによる大きな歪みからその余裕度が低下する場合があり、電荷輸送性構造や官能基数から凹凸やクラック、膜剥がれが起こる場合がある。また、この大きな歪みは電荷輸送時の中間体構造(カチオンラジカル)が安定して保てず、電荷のトラップによる感度の低下、残留電位の上昇が起こりやすくなる。ラジカル重合性官能基を有する電荷輸送性化合物の電荷輸送性構造としてはトリアリールアミン構造が高移動度性から好適で、中でも下記一般式(1)又は(2)の構造で示される化合物を用いた場合、感度、残留電位等の電気的特性が良好に持続される。
〔式中、R101は水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアリール基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、−COOR41(R41は水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を表す。)、ハロゲン化カルボニル基若しくはCONR4243(R42及びR43は水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい。)を表わし、Ar1、Ar2は置換もしくは未置換のアリーレン基を表わし、同一であっても異なってもよい。Ar3、Ar4は置換もしくは未置換のアリール基を表わし、同一であっても異なってもよい。Xは単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル2価基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表わす。Zは置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル2価基、アルキレンオキシカルボニル2価基を表わす。m、nは0〜3の整数を表わす。〕
以下に、一般式(1)、(2)の具体例を示す。
前記一般式(1)、(2)において、R101の置換基中、アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等、アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が、アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基が、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等がそれぞれ挙げられ、これらは、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メチル基、エチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等により置換されていても良い。
101の置換基のうち、特に好ましいものは水素原子、メチル基である。
Ar3、Ar4は置換もしくは未置換のアリール基を表わし、本発明においては該アリール基としては縮合多環式炭化水素基、非縮合環式炭化水素基及び複素環基が含まれるものとする。
該縮合多環式炭化水素基としては、好ましくは環を形成する炭素数が18個以下のもの、例えば、ペンタニル基、インデニル基、ナフチル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、as(asym)−インダセニル基、s(sym)−インダセニル基、フルオレニル基、アセナフチレニル基、プレイアデニル基、アセナフテニル基、フェナレニル基、フェナントリル基、アントリル基、フルオランテニル基、アセフェナントリレニル基、アセアントリレニル基、トリフェニレル基、ピレニル基、クリセニル基、及びナフタセニル基等が挙げられる。
該非縮合環式炭化水素基としては、ベンゼン、ジフェニルエーテル、ポリエチレンジフェニルエーテル、ジフェニルチオエーテル及びジフェニルスルホン等の単環式炭化水素化合物の1価基、あるいはビフェニル、ポリフェニル、ジフェニルアルカン、ジフェニルアルケン、ジフェニルアルキン、トリフェニルメタン、ジスチリルベンゼン、1,1−ジフェニルシクロアルカン、ポリフェニルアルカン、及びポリフェニルアルケン等の非縮合多環式炭化水素化合物の1価基、あるいは9,9−ジフェニルフルオレン等の環集合炭化水素化合物の1価基が挙げられる。
複素環基としては、カルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、オキサジアゾール、及びチアジアゾール等の1価基が挙げられる。
また、前記Ar3、Ar4で表わされるアリール基は例えば以下に示すような置換基を有してもよい。
(1)ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基等。
(2)アルキル基;
好ましくは、C1〜C12とりわけC1〜C8、さらに好ましくはC1〜C4の直鎖または分岐鎖のアルキル基であり、これらのアルキル基にはさらにフッ素原子、水酸基、シアノ基、C1〜C4のアルコキシ基、フェニル基又はハロゲン原子、C1〜C4のアルキル基もしくはC1〜C4のアルコキシ基で置換されたフェニル基を有していてもよい。具体的にはメチル基、エチル基、n−ブチル基、i−プロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−プロピル基、トリフルオロメチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−エトキシエチル基、2−シアノエチル基、2−メトキシエチル基、ベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基、4−フェニルベンジル基等が挙げられる。
(3)アルコキシ基(−OR44);
44は(2)で定義したアルキル基を表わす。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、t−ブトキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、i−ブトキシ基、2−ヒドロキシエトキシ基、ベンジルオキシ基、トリフルオロメトキシ基等が挙げられる。
(4)アリールオキシ基;
アリール基としてはフェニル基、ナフチル基が挙げられる。これは、C1〜C4のアルコキシ基、C1〜C4のアルキル基またはハロゲン原子を置換基として含有してもよい。具体的には、フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、4−メトキシフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基等が挙げられる。
(5)アルキルメルカプト基またはアリールメルカプト基;
具体的にはメチルチオ基、エチルチオ基、フェニルチオ基、p−メチルフェニルチオ基等が挙げられる。
(6)以下の式で表される置換基
(式中、R45及びR46は各々独立に水素原子、前記(2)で定義したアルキル基、またはアリール基を表わす。アリール基としては、例えばフェニル基、ビフェニル基又はナフチル基が挙げられ、これらはC1〜C4のアルコキシ基、C1〜C4のアルキル基またはハロゲン原子を置換基として含有してもよい。R45及びR46は共同で環を形成してもよい。)
具体的には、アミノ基、ジエチルアミノ基、N−メチル−N−フェニルアミノ基、N,N−ジフェニルアミノ基、N,N−ジ(トリール)アミノ基、ジベンジルアミノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、ピロリジノ基等が挙げられる。
(7)メチレンジオキシ基、又はメチレンジチオ基等のアルキレンジオキシ基又はアルキレンジチオ基等。
(8)置換又は無置換のスチリル基、置換又は無置換のβ−フェニルスチリル基、ジフェニルアミノフェニル基、ジトリルアミノフェニル基等。
一方、前記Ar1、Ar2で表わされるアリーレン基としては、前記Ar3、Ar4で表されるアリール基から誘導される2価基である。
前記Xは単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表わす。
置換もしくは無置換のアルキレン基としては、C1〜C12、好ましくはC1〜C8、さらに好ましくはC1〜C4の直鎖または分岐鎖のアルキレン基であり、これらのアルキレン基にはさらにフッ素原子、水酸基、シアノ基、C1〜C4のアルコキシ基、フェニル基又はハロゲン原子、C1〜C4のアルキル基もしくはC1〜C4のアルコキシ基で置換されたフェニル基を有していてもよい。具体的にはメチレン基、エチレン基、n−ブチレン基、i−プロピレン基、t−ブチレン基、s−ブチレン基、n−プロピレン基、トリフルオロメチレン基、2−ヒドロキシエチレン基、2−エトキシエチレン基、2−シアノエチレン基、2−メトキシエチレン基、ベンジリデン基、フェニルエチレン基、4−クロロフェニルエチレン基、4−メチルフェニルエチレン基、4−ビフェニルエチレン基等が挙げられる。
置換もしくは無置換のシクロアルキレン基としては、C5〜C7の環状アルキレン基であり、これらの環状アルキレン基にはフッ素原子、水酸基、C1〜C4のアルキル基、C1〜C4のアルコキシ基を有していても良い。具体的にはシクロヘキシリデン基、シクロへキシレン基、3,3−ジメチルシクロヘキシリデン基等が挙げられる。
置換もしくは無置換のアルキレンエーテル2価基としては、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基等のアルキレンオキシ2価基、あるいはエチレングリコール、プロピレングリコール等から誘導されるアルキレンジオキシ2価基、若しくはジエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコール等から誘導される、ジ又はポリ(オキシアルキレン)オキシ2価基等が挙げられ、アルキレンエーテル2価基のアルキレン基はヒドロキシル基、メチル基、エチル基等の置換基を有してもよい。
ビニレン基は、
で表わされ、式中、R47は水素、アルキル基(前記(2)で定義されるアルキル基と同じ)、アリール基(前記Ar3、Ar4で表わされるアリール基と同じ)、aは1または2、bは1〜3を表わす。
前記Zは置換もしくは未置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル2価基、アルキレンオキシカルボニル基2価を表わす。
置換もしくは未置換のアルキレン基としては、前記Xのアルキレン基と同様なものが挙げられる。
置換もしくは無置換のアルキレンエーテル2価基としては、前記Xのアルキレンエーテル2価基が挙げられる。
アルキレンオキシカルボニル2価基としては、カプロラクトン変性2価基が挙げられる。
また、本発明のラジカル重合性官能基を有する電荷輸送性化合物として更に好ましくは、下記一般式(3)の構造の化合物が挙げられる。
(式中、o、p、qはそれぞれ0又は1の整数、Raは水素原子、メチル基を表わし、Rb、Rcは水素原子以外の置換基で炭素数1〜6のアルキル基を表わし、複数の場合は異なっても良い。s、tは0〜3の整数を表わす。Zaは単結合、メチレン基、エチレン基、
を表わす。)
上記一般式で表わされる化合物としては、Rb、Rcの置換基として、特にメチル基、エチル基である化合物が好ましい。
本発明で用いる上記一般式(1)及び(2)特に(3)のラジカル重合性官能基を有する電荷輸送性化合物は、炭素−炭素間の二重結合が両側に開放されて重合するため、末端構造とはならず、連鎖重合体中に組み込まれ、3官能以上のラジカル重合性モノマーとの重合で架橋形成された重合体中では、高分子の主鎖中に存在し、かつ主鎖−主鎖間の架橋鎖中に存在(この架橋鎖には1つの高分子と他の高分子間の分子間架橋鎖と、1つの高分子内で折り畳まれた状態の主鎖のある部位と主鎖中でこれから離れた位置に重合したモノマー由来の他の部位とが架橋される分子内架橋鎖とがある)するが、主鎖中に存在する場合であってもまた架橋鎖中に存在する場合であっても、鎖部分から懸下するトリアリールアミン構造は、窒素原子から放射状方向に配置する少なくとも3つのアリール基を有し、バルキーであるが、鎖部分に直接結合しておらず鎖部分からカルボニル基等を介して懸下しているため立体的位置取りに融通性ある状態で固定されているので、これらトリアリールアミン構造は重合体中で相互に程よく隣接する空間配置が可能であるため、分子内の構造的歪みが少なく、また、電子写真感光体の表面層とされた場合に、電荷輸送経路の断絶を比較的免れた分子内構造を採りうるものと推測される。
ラジカル重合性官能基を1つ以上有する電荷輸送性化合物としては、以下のものが例示されるが、これらの化合物に限定されるものではない。
また、本発明に用いられるラジカル重合性官能基を有する電荷輸送性化合物は、架橋表面層が4μmより薄い場合は必ずしも含有させる必要はないが、架橋表面層が4μm以上の場合には電荷輸送性能を付与するために重要となる。架橋表面層が4μm以上の場合、この成分は架橋表面層全量に対し20〜80質量%、好ましくは30〜70質量%になるように塗工液成分の含有量を調整する。この成分が20質量%未満では架橋表面層の電荷輸送性能が充分に保てず、繰り返しの使用で感度低下、残留電位上昇などの電気特性の劣化が現れる。また、80質量%を超えると一般式(A)で示される構造単位を有する硬化組成物の含有量が低下し、高い耐摩耗性が発揮されない。使用されるプロセスによって要求される電気特性や耐摩耗性が異なるため一概には言えないが、両特性のバランスを考慮すると30〜70質量%の範囲が最も好ましい。
<その他のラジカル重合性官能基を有する添加剤に関して>
本発明の架橋表面層は、上記一般式(A)で表される構造単位を含有するものであるが、これ以外に塗工時の粘度調整、架橋表面層の応力緩和、低表面エネルギー化や摩擦係数低減などの機能付与の目的で1官能及び2官能のラジカル重合性モノマー、機能性モノマー及びラジカル重合性オリゴマーを併用することができる。これらのラジカル重合性モノマー、オリゴマーとしては、公知のものが利用できる。
1官能のラジカル重合性モノマーとしては、例えば、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−エチルヘキシルカルビトールアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソアミルアクリレート、イソブチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、フェノキシテトラエチレングリコールアクリレート、セチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ステアリルアクリレート、スチレンモノマーなどが挙げられる。
2官能のラジカル重合性モノマーとしては、例えば、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ビスフェノールA−EO変性ジアクリレート、ビスフェノールF−EO変性ジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレートなどが挙げられる。
機能性モノマーとしては、例えば、オクタフルオロペンチルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、2−パーフルオロイソノニルエチルアクリレートなどのフッ素原子を置換したもの、特公平5−60503号公報、特公平6−45770号公報記載のシロキサン繰り返し単位:20〜70のアクリロイルポリジメチルシロキサンエチル、メタクリロイルポリジメチルシロキサンエチル、アクリロイルポリジメチルシロキサンプロピル、アクリロイルポリジメチルシロキサンブチル、ジアクリロイルポリジメチルシロキサンジエチルなどのポリシロキサン基を有するビニルモノマー、アクリレート及びメタクリレートが挙げられる。
ラジカル重合性オリゴマーとしては、例えば、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエステルアクリレート系オリゴマーが挙げられる。
但し、1官能及び2官能のラジカル重合性モノマーやラジカル重合性オリゴマーを多量に含有させると架橋表面層の3次元架橋結合密度が実質的に低下し、耐摩耗性の低下を招く。このためこれらのモノマーやオリゴマーの含有量は、架橋表面層の硬化性を有する構成物質全量に対し30質量%以下、好ましくは20質量%以下に制限される。
<重合開始剤に関して>
また、本発明の架橋表面層はラジカル硬化組成物中に少なくとも上記一般式(A)で表される構造単位を含有するものであるが、必要に応じて硬化反応を効率よく進行させるために架橋表面層塗布液中に重合開始剤を含有させても良い。
光重合開始剤としては、ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−2−モルフォリノ(4−メチルチオフェニル)プロパン−1−オン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、などのアセトフェノン系またはケタール系光重合開始剤、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、などのベンゾインエーテル系光重合開始剤、ベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイルビフェニル、4−ベンゾイルフェニールエーテル、アクリル化ベンゾフェノン、1,4−ベンゾイルベンゼン、などのベンゾフェノン系光重合開始剤、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、などのチオキサントン系光重合開始剤、その他の光重合開始剤としては、エチルアントラキノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシエステル、9,10−フェナントレン、アクリジン系化合物、トリアジン系化合物、イミダゾール系化合物、が挙げられる。また、光重合促進効果を有するものを単独または上記光重合開始剤と併用して用いることもできる。例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2−ジメチルアミノ)エチル、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、などが挙げられる。
熱重合開始剤としては、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(パーオキシベンゾイル)ヘキシン−3、ジ−t−ブチルベルオキサイド、t−ブチルヒドロベルオキサイド、クメンヒドロベルオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシ)プロパンなどの過酸化物系開始剤、アゾビスイソブチルニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル、アゾビスイソブチルアミジン塩酸塩、4,4’−アゾビス−4−シアノ吉草酸などのアゾ系開始剤が挙げられる。
これらの重合開始剤は1種又は2種以上を混合して用いてもよい。重合開始剤の含有量は、ラジカル重合性を有する総含有物100質量部に対し、0.5〜40質量部、好ましくは1〜20質量部である。
<その他の添加剤に関して>
更に、本発明の架橋表面層塗工液は必要に応じて、各種可塑剤(応力緩和や接着性向上の目的)、レベリング剤、ラジカル反応性を有しない低分子電荷輸送物質、バインダー樹脂などの添加剤が含有できる。これらの添加剤は公知のものが使用可能であり、可塑剤としてはジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の一般の樹脂に使用されているものが利用可能で、その使用量は塗工液の総固形分に対し20質量%以下、好ましくは10質量%以下に抑えられる。また、レベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類や、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーが利用でき、その使用量は塗工液の総固形分に対し3質量%以下が適当である。低分子電荷輸送物質は架橋表面層の電荷輸送性を向上し露光部電位を下げるために有効であるが、添加により硬化性材料が少なくなることから高い耐摩耗性の効果が減じられる。このため添加量は用いるプロセスで調整されるが、架橋表面層全成分の50質量%以下、好ましくは30質量%以下で使用される。バインダー樹脂は架橋表面層の内部応力を減らし均一性を上げ、クラックや傷の発生を抑制する効果がある。但し、他の添加剤と同様に添加により高い耐摩耗性の効果が減じられるため、添加量は20質量%以下、好ましくは10質量%以下に抑えられる。
<塗工溶媒に関して>
本発明の架橋表面層は、少なくとも上記一般式(A)の構造単位を含有するラジカル重合性化合物を含む塗工液を後に記載の感光層上に塗布、硬化することにより形成される。かかる塗工液はラジカル重合性化合物が液体である場合、これに他の成分を溶解して塗布することも可能であるが、必要に応じて溶媒により希釈して塗布される。このとき用いられる溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系、テトラヒドロフラン、ジオキサン、プロピルエーテルなどのエーテル系、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼンなどのハロゲン系、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、セロソルブアセテートなどのセロソルブ系などが挙げられる。これらの溶媒は単独または2種以上を混合して用いてもよい。溶媒による希釈率は組成物の溶解性、塗工法、目的とする膜厚により変わり、任意である。塗布は、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコート法などを用いて行なうことができる。
本発明においては、かかる架橋表面層塗工液を塗布後、外部からエネルギーを与え硬化させ、架橋表面層を形成するものであるが、このとき用いられる外部エネルギーとしては、光、熱又は放射線がある。光のエネルギーとしては主に紫外光に発光波長をもつ高圧水銀灯やメタルハライドランプなどのUV照射光源が利用できるが、ラジカル重合性含有物や光重合開始剤の吸収波長に合わせ可視光光源の選択も可能である。照射光量は50mW/cm2以上、1000mW/cm2以下が好ましく、50mW/cm2未満では硬化反応に時間を要する。1000mW/cm2より強いと反応の進行が不均一となり、架橋表面層の表面に局部的な皺が発生したり、多数の未反応残基、反応停止末端が生ずる。また、急激な架橋により内部応力が大きくなり、クラックや膜剥がれの原因となる。照射時間は構成材料や膜厚によるUV光の浸透性に依存するが、5秒〜5分が好ましく、短すぎると硬化が不十分となり、長すぎると構成材料が分解し電気特性が低下する。また硬化時の温度上昇を50℃以下に制御し、構成材料の分解や不均一な硬化反応を抑えることが望ましい。
熱のエネルギーを用い硬化する場合、100〜170℃で10分〜3時間が好ましく、100℃より低い温度又は10分より短い時間では、硬化が不十分となる。また、逆に170℃より高い温度又は3時間より長い時間では構成材料の分解や不均一な硬化反応が進行し、良好な架橋表面層が得られない。
放射線のエネルギーとしては電子線が好適に用いられる。電子線の加速電圧は300KV以下、好ましくは150KV以下、線量は1〜100Mradの条件で硬化される。加速電圧が300KVを超える又は線量が100Mradを超えると構成材料の分解が進み、本発明の効果が発揮されない。
これらのエネルギーの中で、反応速度制御の容易さ、装置の簡便さから光のエネルギーを用いたものが有用である。
架橋表面層塗工液の組成物としては、前述した一般式(A)で表される構造単位を有するラジカル重合性化合物以外に、ラジカル重合性官能基を有しないバインダー樹脂、酸化防止剤、可塑剤等の添加剤を多量に含有させると、架橋密度の低下、反応により生じた硬化物と上記添加物との相分離が生じ、有機溶剤に対し可溶性となる。具体的には塗工液の総固形分に対し上記総含有量を20質量%以下に抑えることが重要である。
架橋表面層塗工液の希釈溶媒に関しては、蒸発速度の遅い溶剤を用いた場合、残留する溶媒が硬化の妨げとなったり、下層成分の混入量を増加させることがあり、不均一硬化や硬化密度低下をもたらす。このため有機溶剤に対し、可溶性となりやすい。具体的には、テトラヒドロフラン、テトラヒドロフランとメタノール混合溶媒、酢酸エチル、メチルエチルケトン、エチルセロソルブなどが有用であるが、塗工法と合わせて選択される。また、固形分濃度に関しては、同様な理由で低すぎる場合、有機溶剤に対し可溶性となりやすい。逆に膜厚、塗工液粘度の制限から上限濃度の制約をうける。具体的には、10〜50質量%の範囲で用いることが望ましい。架橋表面層の塗工方法としては、同様な理由で塗工膜形成時の溶媒含有量、溶媒との接触時間を少なくする方法が好ましく、具体的にはスプレーコート法、塗工液量を規制したリングコート法が好ましい。また、下層成分の混入量を抑えるためには、電荷輸送層として高分子電荷輸送物質を用いること、架橋表面層の塗工溶媒に対し不溶性の中間層を設けることも有効である。
架橋表面層の硬化条件としては、加熱または光照射のエネルギーが低いと硬化が完全に終了せず、有機溶剤に対し溶解性があがる。逆に非常に高いエネルギーにより硬化させた場合、硬化反応が不均一となり未架橋部やラジカル停止部の増加や微小な硬化物の集合体となりやすい。このため有機溶剤に対し溶解性となることがある。有機溶剤に対し不溶性化するには、熱硬化の条件としては100〜170℃、10分〜3時間が好ましく、UV光照射による硬化条件としては50〜1000mW/cm2、5秒〜5分で且つ温度上昇を50℃以下に制御し、不均一な硬化反応を抑えることが望ましい。
本発明の架橋表面層の膜厚は、下層のラジカル硬化されていない感光層の構成によって異なるため、感光層の構成に合わせ後で記載する。
以下、本発明をその層構造に従い説明する。
<電子写真感光体の層構造について>
本発明に用いられる電子写真感光体を図面に基づいて説明する。
図1、2は、本発明の電子写真感光体を表わす断面図である。
図1−Aは導電性支持体上に、電荷発生機能と電荷輸送機能を同時に有する感光層が設けられた単層構造で、架橋表面層が感光層の表面部分である場合を示す。すなわち、ラジカル硬化されていない感光層は、図の電荷発生機能と電荷輸送機能を同時に有する感光層を表し、ラジカル硬化組成物を含有する架橋表面層は、図の架橋表面層を表す。図1−Bは、導電性支持体上に、感光層として電荷発生機能を有する電荷発生層が設けられた単層構造で、電荷輸送性化合物を有する架橋表面層が感光層の表面部分である場合を示す。すなわち、ラジカル硬化されていない感光層は、図の電荷発生層を表し、ラジカル硬化組成物を含有する架橋表面層は、図の架橋表面層を表す。
図2は、導電性支持体上に、感光層として、電荷発生機能を有する電荷発生層と電荷輸送物機能を有する電荷輸送層とが積層された積層構造の感光体である。架橋表面層が電荷輸送層の表面部分である場合を示す。すなわち、ラジカル硬化されていない感光層は、図の電荷発生層と電荷輸送層を表し、ラジカル硬化組成物を含有する架橋表面層は、図の架橋表面層を表す。
<導電性支持体について>
導電性支持体としては、体積抵抗1010Ω・cm以下の導電性を示すもの、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を蒸着またはスパッタリングにより、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、あるいはアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板およびそれらを押し出し、引き抜きなどの工法で素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理を施した管などを使用することができる。また、特開昭52−36016号公報に開示されたエンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも導電性支持体として用いることができる。
この他、上記支持体上に導電性粉体を適当な結着樹脂に分散して塗工したものについても、本発明の導電性支持体として用いることができる。
この導電性粉体としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、また、アルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀などの金属粉、あるいは導電性酸化スズ、ITOなどの金属酸化物粉体などが挙げられる。また、同時に用いられる結着樹脂には、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などの熱可塑性、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂が挙げられる。このような導電性層は、これらの導電性粉体と結着樹脂を適当な溶剤、例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、トルエンなどに分散して塗布することにより設けることができる。
更に、適当な円筒基体上にポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、塩化ゴム、テフロン(登録商標)などの素材に前記導電性粉体を含有させた熱収縮チューブによって導電性層を設けてなるものも、本発明の導電性支持体として良好に用いることができる。
<感光層について>
次に感光層について説明する。感光層は積層構造でも単層構造でもよい。
積層構造の場合には、感光層は電荷発生機能を有する電荷発生層と電荷輸送機能を有する電荷輸送層とから構成される。また、単層構造の場合には、感光層は電荷発生機能と電荷輸送機能を同時に有する層、又は電荷発生機能を有する層から構成される。
以下、積層構造の感光層及び単層構造の感光層のそれぞれについて述べる。
<感光層が積層構成のもの>
(1)電荷発生層について
電荷発生層は、電荷発生機能を有する電荷発生物質を主成分とする層で、必要に応じてバインダー樹脂を併用することもできる。電荷発生物質としては、無機系材料と有機系材料を用いることができる。
無機系材料には、結晶セレン、アモルファス・セレン、セレン−テルル、セレン−テルル−ハロゲン、セレン−ヒ素化合物や、アモルファス・シリコン等が挙げられる。アモルファス・シリコンにおいては、ダングリングボンドを水素原子、ハロゲン原子でターミネートしたものや、ホウ素原子、リン原子等をドープしたものが良好に用いられる。
一方、有機系材料としては、公知の材料を用いることができる。例えば、金属フタロシアニン、無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系または多環キノン系顔料、キノンイミン系顔料、ジフェニルメタン及びトリフェニルメタン系顔料、ベンゾキノン及びナフトキノン系顔料、シアニン及びアゾメチン系顔料、インジゴイド系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料などが挙げられる。これらの電荷発生物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
電荷発生層に必要に応じて用いられるバインダー樹脂としては、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミドなどが挙げられる。これらのバインダー樹脂は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。また、電荷発生層のバインダー樹脂として上述のバインダー樹脂の他に、電荷輸送機能を有する高分子電荷輸送物質、例えば、アリールアミン骨格やベンジジン骨格やヒドラゾン骨格やカルバゾール骨格やスチルベン骨格やピラゾリン骨格等を有するポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリシロキサン、アクリル樹脂等の高分子材料やポリシラン骨格を有する高分子材料等を用いることができる。
前者の具体的な例としては、特開平01−001728号公報、特開平01−009964号公報、特開平01−013061号公報、特開平01−019049号公報、特開平01−241559号公報、特開平04−011627号公報、特開平04−175337号公報、特開平04−183719号公報、特開平04−225014号公報、特開平04−230767号公報、特開平04−320420号公報、特開平05−232727号公報、特開平05−310904号公報、特開平06−234836号公報、特開平06−234837号公報、特開平06−234838号公報、特開平06−234839号公報、特開平06−234840号公報、特開平06−234841号公報、特開平06−239049号公報、特開平06−236050号公報、特開平06−236051号公報、特開平06−295077号公報、特開平07−056374号公報、特開平08−176293号公報、特開平08−208820号公報、特開平08−211640号公報、特開平08−253568号公報、特開平08−269183号公報、特開平09−062019号公報、特開平09−043883号公報、特開平09−71642号公報、特開平09−87376号公報、特開平09−104746号公報、特開平09−110974号公報、特開平09−110976号公報、特開平09−157378号公報、特開平09−221544号公報、特開平09−227669号公報、特開平09−235367号公報、特開平09−241369号公報、特開平09−268226号公報、特開平09−272735号公報、特開平09−302084号公報、特開平09−302085号公報、特開平09−328539号公報等に記載の電荷輸送性高分子材料が挙げられる。
また、後者の具体例としては、例えば特開昭63−285552号公報、特開平05−19497号公報、特開平05−70595号公報、特開平10−73944号公報等に記載のポリシリレン重合体が例示される。
また、電荷発生層には低分子電荷輸送物質を含有させることができる。
電荷発生層に併用できる低分子電荷輸送物質には、正孔輸送物質と電子輸送物質とがある。
電子輸送物質としては、たとえばクロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド、ジフェノキノン誘導体などの電子受容性物質が挙げられる。これらの電子輸送物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
正孔輸送物質としては、以下に表わされる電子供与性物質が挙げられ、良好に用いられる。正孔輸送物質としては、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、モノアリールアミン誘導体、ジアリールアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、α−フェニルスチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、9−スチリルアントラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、ジビニルベンゼン誘導体、ヒドラゾン誘導体、インデン誘導体、ブタジェン誘導体、ピレン誘導体等、ビススチルベン誘導体、エナミン誘導体等、その他公知の材料が挙げられる。これらの正孔輸送物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
電荷発生層を形成する方法には、真空薄膜作製法と溶液分散系からのキャスティング法とが大きく挙げられる。
前者の方法には、真空蒸着法、グロー放電分解法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、CVD法等が用いられ、上述した無機系材料、有機系材料が良好に形成できる。
また、後述のキャスティング法によって電荷発生層を設けるには、上述した無機系もしくは有機系電荷発生物質を必要ならばバインダー樹脂と共にテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、トルエン、ジクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、アニソール、キシレン、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等の溶媒を用いてボールミル、アトライター、サンドミル、ビーズミル等により分散し、分散液を適度に希釈して塗布することにより、形成できる。また、必要に応じて、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のレベリング剤を添加することができる。塗布は、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコート法などを用いて行なうことができる。
以上のようにして設けられる電荷発生層の膜厚は、0.01〜5μm程度が適当であり、好ましくは0.05〜2μmである。
(2)電荷輸送層について
電荷輸送層は電荷輸送機能を有する電荷輸送物質および結着樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを電荷発生層上に塗布、乾燥することにより形成される。
電荷輸送物質としては、前記電荷発生層で記載した電子輸送物質、正孔輸送物質及び高分子電荷輸送物質を用いることができる。特に高分子電荷輸送物質を用いることは、架橋表面層塗工時の下層の溶解性を低減効果を示し、とりわけ有用である。
結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。
電荷輸送物質の量は結着樹脂100質量部に対し、20〜300質量部、好ましくは40〜150質量部が適当である。但し、高分子電荷輸送物質を用いる場合は、単独でも結着樹脂との併用も可能である。
電荷輸送層の塗工に用いられる溶媒としては前記電荷発生層と同様なものが使用できるが、電荷輸送物質及び結着樹脂を良好に溶解するものが適している。これらの溶剤は単独で使用しても2種以上混合して使用しても良い。また、電荷輸送層の形成には電荷発生層と同様な塗工法が可能である。
また、必要により可塑剤、レベリング剤を添加することもできる。
電荷輸送層に併用できる可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の一般の樹脂の可塑剤として使用されているものがそのまま使用でき、その使用量は、結着樹脂100質量部に対して0〜30質量部程度が適当である。
電荷輸送層に併用できるレベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類や、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーが使用され、その使用量は、結着樹脂100質量部に対して0〜1質量部程度が適当である。
電荷輸送層の膜厚は、5〜40μm程度が適当であり、好ましくは10〜30μm程度が適当である。
(3)架橋表面層について
架橋表面層は、前述の架橋表面層作製方法に記載したように、かかる電荷輸送層の上に本発明の架橋表面層塗工液を塗布、必要に応じて乾燥後、光、熱又は放射線のエネルギーにより硬化反応を開始させ、架橋表面層が形成される。感光層が積層構造では架橋表面層は電荷輸送性化合物(ラジカル重合性官能基を有しているもの又は有していいないものに関わらず)を含有して電荷輸送性機能を付与しても、含有せずに保護層としても良い。このとき架橋表面層の膜厚は、電荷輸送機能を付与する場合、1μm以上、15μm以下、さらに好ましくは2μm以上、13μm以下である。15μmより厚い場合、クラックや膜剥がれが発生しやすくなる。電荷輸送機能を付与せず保護層として用いる場合、更に架橋密度が高くすることができ、耐摩耗性を高めることができる。この場合の架橋表面層の膜厚は、1μm以上、5μm以下、さらに好ましくは2μm以上、4μm以下で使用される。5μmより厚い場合、前述のようにクラックや膜剥がれが発生しやすくなり、また電荷輸送能がないため大幅な感度低下が起きる。架橋表面層の膜厚が1μmより薄いと膜厚ムラによって耐久性がばらつく。
<感光層が単層のもの>
単層構造の感光層は、電荷発生機能と電荷輸送機能を同時に有する層、又は電荷発生機能を有する電荷発生層である。
(1)電荷発生機能と電荷輸送機能を同時に有する単層構造の場合
感光層が電荷発生機能と電荷輸送機能を同時に有する層である場合、感光層は電荷発生機能を有する電荷発生物質と電荷輸送機能を有する電荷輸送物質と結着樹脂を適当な溶媒に溶解ないし分散し、これを塗布、乾燥することによって形成できる。また、必要により可塑剤やレベリング剤等を添加することもできる。電荷発生物質の分散方法、それぞれ電荷発生物質、電荷輸送物質、可塑剤、レベリング剤は前記電荷発生層、電荷輸送層において既に述べたものと同様なものが使用できる。結着樹脂としては、先に電荷輸送層の項で挙げた結着樹脂のほかに、電荷発生層で挙げたバインダー樹脂を混合して用いてもよい。また、先に挙げた高分子電荷輸送物質も使用可能で、架橋表面層への感光層組成物の混入を低減できる点で有用である。
感光層中に含有される電荷発生物質は感光層全量に対し1〜30質量%が好ましく、感光層の下層部分に含有される結着樹脂は全量の20〜80質量%、電荷輸送物質は10〜70質量部が良好に用いられる。
かかる感光層の膜厚は、5〜30μm程度が適当であり、好ましくは10〜25μm程度が適当である。
架橋表面層が単層構造の感光層の表面部分である場合、前述のようにかかる感光層上に本発明の架橋表面層塗工液を塗布、必要に応じて乾燥後、光、熱又は放射線のエネルギーにより硬化し、架橋表面層を形成する。感光層が上記単層構造では架橋表面層は電荷輸送性化合物(ラジカル重合性官能基を有しているもの又は有していいないものに関わらず)を含有して電荷輸送性機能を付与しても、含有せずに保護層としても良い。このとき架橋表面層の膜厚は、電荷輸送機能を付与する場合、1μm以上、15μm以下、さらに好ましくは2μm以上、13μm以下である。15μmより厚い場合、クラックや膜剥がれが発生しやすくなる。電荷輸送機能を付与せず保護層として用いる場合、更に架橋密度を高くすることができ、耐摩耗性を高めることができる。この場合の、架橋表面層の膜厚は、1μm以上、5μm以下、さらに好ましくは2μm以上、4μm以下である。5μmより厚い場合、前述のようにクラックや膜剥がれが発生しやすくなる、また、電荷輸送能がないため大幅な感度低下が起きる。架橋表面層の膜厚が、1μmより薄いと膜厚ムラによって耐久性がばらつく。
(2)電荷発生機能を有する電荷発生層の単層構造の場合
感光層が電荷発生機能を有する電荷発生層である場合、電荷発生層には、前記積層構成で上げた電荷発生層と同様なものが使用できる。電荷発生層上に設けられる架橋表面層は電荷輸送性機能を持たせるため、電荷輸送性化合物を含有させる。このとき電荷輸送性化合物はラジカル重合性官能基を有していても又は有していなくても良い。但し、電荷輸送性化合物としてラジカル重合性官能基を有しているものを用いる場合、本発明の高い耐摩耗性効果が更に優れて発揮でき、好適である。電荷輸送機能を有する架橋表面層は、前述の架橋表面層作製方法に記載したように電荷発生層上に本発明の架橋表面層塗工液を塗布、必要に応じて乾燥後、光、熱、又は放射線のエネルギーにより硬化反応を開始させ、架橋表面層が形成される。このとき、架橋表面層の膜厚は、10〜30μm、好ましくは10〜25μmである。10μmより薄いと充分な帯電電位が維持できず、30μmより厚いと硬化時の体積収縮により下層との剥離が生じやすくなる。
<中間層について>
本発明の感光体においては、架橋表面層が感光層の表面部分となる場合、架橋表面層と感光層との間に中間層を設けることが可能である。この中間層はラジカル硬化組成物を含有する架橋表面層中にラジカル硬化されていない感光層組成物の混入により生ずる、硬化反応の阻害や架橋表面層の凹凸を防止する。また、下層の感光層と架橋表面層の接着性を向上させることも可能である。
中間層には、一般にバインダー樹脂を主成分として用いる。これら樹脂としては、ポリアミド、アルコール可溶性ナイロン、水溶性ポリビニルブチラール、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。中間層の形成法としては、前述のごとく一般に用いられる塗工法が採用される。なお、中間層の厚さは0.05〜2μm程度が適当である。
<下引き層について>
本発明の感光体においては、導電性支持体と感光層との間に下引き層を設けることができる。下引き層は一般には樹脂を主成分とするが、これらの樹脂はその上に感光層を溶剤で塗布することを考えると、一般の有機溶剤に対して耐溶剤性の高い樹脂であることが望ましい。このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂等が挙げられる。また、下引き層にはモアレ防止、残留電位の低減等のために酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で例示できる金属酸化物の微粉末顔料を加えてもよい。
これらの下引き層は、前述の感光層の如く適当な溶媒及び塗工法を用いて形成することができる。更に本発明の下引き層として、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を使用することもできる。この他、本発明の下引き層には、Al23を陽極酸化にて設けたものや、ポリパラキシリレン(パリレン)等の有機物やSiO2、SnO2、TiO2、ITO、CeO2等の無機物を真空薄膜作成法にて設けたものも良好に使用できる。このほかにも公知のものを用いることができる。下引き層の膜厚は0〜5μmが適当である。
<各層への酸化防止剤の添加について>
また、本発明においては、耐環境性の改善のため、とりわけ、感度低下、残留電位の上昇を防止する目的で、架橋表面層、電荷発生層、電荷輸送層、下引き層、中間層等の各層に酸化防止剤を添加することができる。
本発明に用いることができる酸化防止剤として、下記のものが挙げられる。
(フェノール系化合物)
2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアッシド]クリコ−ルエステル、トコフェロール類など。
(パラフェニレンジアミン類)
N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジ−t−ブチル−p−フェニレンジアミンなど。
(ハイドロキノン類)
2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン、2,6−ジドデシルハイドロキノン、2−ドデシルハイドロキノン、2−ドデシル−5−クロロハイドロキノン、2−t−オクチル−5−メチルハイドロキノン、2−(2−オクタデセニル)−5−メチルハイドロキノンなど。
(有機硫黄化合物類)
ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジテトラデシル−3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオープロピオネート)など。
(有機燐化合物類)
トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリ(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2―エチルヘキシル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、ジフェニルモノ(2−エチルヘキシル)ホスファイト、ジフェニルモノデシルホスファイト、トリス(2,4、ジーt−ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4,ジーt―ブチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジーt−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、テトラキス(2,4−ジーt−ブチルフェニル)4,4‘−ビフェニレンージーホスホナイト、ジラウリルハイドロゲンホスファイト、ジフェニルハイドロゲンホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト、テトラフェニルテトラ(トリデシル)ペンタエリスリトールテトラホスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4’イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、水添ビスフェノールA・ペンタエリスリトールホスファイトポリマーなど。
これら化合物は、ゴム、プラスチック、油脂類などの酸化防止剤として知られており、市販品を容易に入手できる。
本発明における酸化防止剤の添加量は、添加する層の総質量に対して0.01〜10質量%である。
<画像形成方法及び装置について>
次に図面に基づいて本発明の画像形成方法ならびに画像形成装置を詳しく説明する。
本発明の画像形成方法ならびに画像形成装置とは、本発明のラジカル硬化されていない感光層と、特定のラジカル硬化組成物を含有する架橋表面層を有する感光体を用い、例えば少なくとも感光体に帯電、画像露光、現像の過程を経た後、画像保持体(転写紙)へのトナー画像の転写、定着及び感光体表面のクリーニングというプロセスよりなる画像形成方法ならびに画像形成装置である。
場合により、静電潜像を直接転写体に転写し現像する画像形成方法等では、感光体に配した上記プロセスを必ずしも有するものではない。
図3は、画像形成装置の一例を示す概略図である。感光体を平均的に帯電させる手段として、帯電チャージャ(3)が用いられる。この帯電手段としては、コロトロンデバイス、スコロトロンデバイス、固体放電素子、針電極デバイス、ローラー帯電デバイス、導電性ブラシデバイス等が用いられ、公知の方式が使用可能である。
次に、均一に帯電された感光体(1)上に静電潜像を形成するために画像露光部(5)が用いられる。この光源には、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般を用いることができる。そして、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。
次に、感光体(1)上に形成された静電潜像を可視化するために現像ユニット(6)が用いられる。現像方式としては、乾式トナーを用いた一成分現像法、二成分現像法、湿式トナーを用いた湿式現像法がある。感光体に正(負)帯電を施し、画像露光を行なうと、感光体表面上には正(負)の静電潜像が形成される。これを負(正)極性のトナー(検電微粒子)で現像すれば、ポジ画像が得られるし、また正(負)極性のトナーで現像すれば、ネガ画像が得られる。
次に、感光体上で可視化されたトナー像を転写体(9)上に転写するために転写チャージャ(10)が用いられる。また、転写をより良好に行なうために転写前チャージャ(7)を用いてもよい。これらの転写手段としては、転写チャージャ、バイアスローラーを用いる静電転写方式、粘着転写法、圧力転写法等の機械転写方式、磁気転写方式が利用可能である。静電転写方式としては、前記帯電手段が利用可能である。
次に、転写体(9)を感光体(1)より分離する手段として分離チャージャ(11)、分離爪(12)が用いられる。その他分離手段としては、静電吸着誘導分離、側端ベルト分離、先端グリップ搬送、曲率分離等が用いられる。分離チャージャ(11)としては、前記帯電手段が利用可能である。
次に、転写後感光体上に残されたトナーをクリーニングするためにファーブラシ(14)、クリーニングブレード(15)が用いられる。また、クリーニングをより効率的に行なうためにクリーニング前チャージャ(13)を用いてもよい。その他クリーニング手段としては、ウェブ方式、マグネットブラシ方式等があるが、それぞれ単独又は複数の方式を一緒に用いてもよい。
次に、必要に応じて感光体上の潜像を取り除く目的で除電手段が用いられる。除電手段としては除電ランプ(2)、除電チャージャが用いられ、それぞれ前記露光光源、帯電手段が利用できる。
その他、感光体に近接していない原稿読み取り、給紙、定着、排紙等のプロセスは公知のものが使用できる。
本発明は、このような画像形成手段に本発明に係る電子写真感光体を用いる画像形成方法及び画像形成装置である。
この画像形成手段は、複写装置、ファクシミリ、プリンタ内に固定して組み込まれていてもよいが、プロセスカートリッジの形態でそれら装置内に組み込まれ、着脱自在としたものであってもよい。プロセスカートリッジの一例を図4に示す。
画像形成装置用プロセスカートリッジとは、感光体(101)を内蔵し、他に帯電手段(102)、現像手段(104)、転写手段(106)、クリーニング手段(107)、除電手段(図示せず)の少なくとも一つを具備し、画像形成装置本体に着脱可能とした装置(部品)である。
図4に例示される装置による画像形成プロセスについて示すと、感光体(101)は、矢印方向に回転しながら、帯電手段(102)による帯電、露光手段(103)による露光により、その表面に露光像に対応する静電潜像が形成され、この静電潜像は、現像手段(104)でトナー現像され、該トナー現像は転写手段(106)により、転写体(105)に転写され、プリントアウトされる。次いで、像転写後の感光体表面は、クリーニング手段(107)によりクリーニングされ、更に除電手段(図示せず)により除電されて、再び以上の操作を繰り返すものである。
本発明は、ラジカル硬化されていない感光層と、特定のラジカル硬化組成物を含有する架橋表面層を有する本発明に係る電子写真感光体と、帯電、現像、転写、クリーニング、除電手段の少なくとも一つを一体化した画像形成装置用プロセスカートリッジを提供するものである。
以上の説明から明らかなように、本発明の電子写真感光体は電子写真複写機に利用するのみならず、レーザービームプリンター、CRTプリンター、LEDプリンター、液晶プリンター及びレーザー製版等の電子写真応用分野にも広く用いることができるものである。
<本発明で使用される例示化合物B−1−1の合成例1>
(1)B−1−1の合成
2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン30gをテトラヒドロフラン200mlに溶解し、窒素気流中で水酸化ナトリウム(NaOH:118.7g,水:75ml)を滴下した。この溶液を6℃に冷却し、アクリル酸クロライド42.4gを1時間かけて滴下した。その後、2.5時間攪拌し反応を終了させた。この反応液を水に注ぎ、トルエンにて抽出した。この抽出液を水で繰り返し洗浄した。この反応液を水に注ぎ、トルエンにて抽出した。その後、このトルエン溶液から溶媒を除去し、カラムクロマトグラフィー処理(吸着媒体:シリカゲル、展開溶媒:トルエン/酢酸エチル(1/1))にて精製した。得られた無色のオイルにメタノールを加え、結晶を析出させた。このようにして例示化合物NO.B−1−1の白色結晶21.43g(収率=50.2%)を得た。得られた化合物の融点及び元素分析値を以下に示す。また、赤外吸収スペクトルを図5に示す。
融点:50.5〜51.5℃
<本発明で使用される例示化合物C−1−1の合成例1>
(1)2,2-ビス{3-メチル-4-(2,3-ジヒドロキシプロピルオキシ)フェニル}プロパンの合成
2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン8.57gとグリシジルメタクリレート11.01gをトルエン50mlに溶解させ、トリエチルアミン0.3mlを加え、アルゴン気流中、95℃で9時間攪拌した。その後、室温で10wt%水酸化ナトリウム水溶液33ml、トルエン30mlを加え、92℃で6時間攪拌し反応を終了させた。この反応液を塩酸で中和した後、酢酸エチルにて抽出し、水で繰り返し洗浄した。その後、この酢酸エチル溶液から溶媒を除去し、カラムクロマトグラフィー処理(吸着媒体:シリカゲル、展開溶媒:酢酸エチル/THF(1/1))にて精製した。このようにして無色粉末状の下記構造式Aを8.64g(収率87%)得た。得られた化合物の赤外吸収スペクトルを図6に示す。
(2)C−1−1の合成
2,2-ビス{3-メチル-4-(2,3-ジヒドロキシプロピルオキシ)フェニル}プロパン8.64gをジメチルアセトアミド87mlに溶解させた。3−クロロプロピオン酸クロリド16.75gをアルゴン気流中3℃で加え、室温で7時間攪拌した。その後トリエチルアミン29mlを3℃で加え、60で5時間攪拌し、反応を終了させた。この反応液を水に注ぎ、ジクロロメタンにて抽出した。この抽出液を水で繰り返し洗浄した。その後、このジクロロメタン溶液から溶媒を除去し、カラムクロマトグラフィー処理(吸着媒体:シリカゲル、展開溶媒:n−ヘキサン/酢酸エチル(2/1))にて精製した。このようにして、オイル状の例示化合物C−1−1を10.19g(収率=77%)得た。得られた化合物の元素分析値を以下に示す。また、赤外吸収スペクトルを図7に示す。
<本発明で使用される例示化合物D−1−1の合成例>
かき混ぜ装置、温度計、滴下漏斗をつけた反応容器に、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン5.1g(0.020mol)とエピクロルヒドリン18.51g(200mmol)、トルエン20mlを入れ、窒素気流下、110℃で加熱攪拌した。これに反応系内の温度が100℃〜120℃を維持するように20wt%水酸化ナトリウム水溶液9.60g(48mmol)を30分間かけて滴下し、110℃で4時間反応させた。これを室温まで放冷し、過剰のエピクロルヒドリンを減圧回収した後、トルエンを加えて有機層を水洗浄した。このトルエン溶液を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮した。この液をカラムクロマトグラフィー処理(吸着媒体:シリカゲル、展開溶媒:n−トルエン/酢酸エチル(1/1))し、原料と高分子量成分を除去した。これにより無色のオイル状物質5.05gを得た。
このオイル状物質を再度トルエン80mlに溶解させ、アクリル酸0.72g(10mmol)、トリエチルアミン0.2mlと共に反応容器に入れて、80℃で3時間反応させた。放冷後、水洗し、減圧下で濃縮した。これを、再度トルエン溶液と、活性白土5gを加えて室温で30間吸着処理した後、カラムクロマトグラフィー処理(吸着媒体:シリカゲル、展開溶媒:n−トルエン/酢酸エチル(3/1))にて精製した。このようにして、無色のオイル状のD−1−1を4.5g得た。この物をゲルパーミエーションクロマトグラフィーで分子量を測定したところ、nが1〜10の混合物を主成分とする組成物である値を示した。
以上のように他のジフェノール体についても同様にして合成できる。
次に、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中において使用する「部」は、すべて質量部を表す。
<実施例1>
φ30mmのアルミニウムシリンダー上に、下記組成の下引き層用塗工液、電荷発生層用塗工液、電荷輸送層用塗工液を順次、塗布、乾燥することにより、3.5μmの下引き層、0.2μmの電荷発生層、18μmの電荷輸送層を形成した。この電荷輸送層上に下記組成の架橋表面層塗工液をスプレー塗工し、20分自然乾燥した後、メタルハライドランプ:160W/cm、照射距離:120mm、照射強度:500mW/cm2、照射時間:60秒の条件で光照射を行ない塗布膜を硬化させた。更に130℃で20分乾燥を加え10μmの架橋表面層を設け、本発明の電子写真感光体を得た。
[下引き層塗工液]
アルキッド樹脂: 6部
(ベッコゾール1307−60−EL、大日本インキ化学工業製)
メラミン樹脂: 4部
(スーパーベッカミン G−821−60、大日本インキ化学工業製)
酸化チタン: 40部
メチルエチルケトン: 50部
[電荷発生層用塗工液]
下記構造のビスアゾ顔料: 2.5部
ポリビニルブチラール(XYHL、UCC製): 0.5部
シクロヘキサノン: 200部
メチルエチルケトン: 80部
[電荷輸送層用塗工液]
ビスフェノールZ型ポリカーボネート: 10部
(パンライトTS−2050、帝人化成製)
下記構造式の電荷輸送物質: 7部
テトラヒドロフラン: 100部
1%シリコーンオイルのテトラヒドロフラン溶液: 1部
(KF50−100CS、信越化学工業製)
[架橋表面層塗工液]
下記構造式(例示化合物B−1−1)のラジカル重合性化合物: 5部
ラジカル重合性官能基を3つ以上有するモノマー: 5部
トリメチロールプロパントリアクリレート
(KAYARAD TMPTA、日本化薬製)
ラジカル重合性官能基を1つ以上有する電荷輸送性化合物: 10部
(例示化合物NO.54)
光重合開始剤: 1部
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン
(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)
テトラヒドロフラン: 100部
<実施例2>
実施例1の架橋表面層塗工液を下記のものに変えた以外は実施例1と同様に電子写真感光体を作製した。
下記構造式(例示化合物B−1−2)のラジカル重合性化合物: 5部
ラジカル重合性官能基を3つ以上有するモノマー: 5部
トリメチロールプロパントリアクリレート
(KAYARAD TMPTA、日本化薬製)
ラジカル重合性官能基を1つ以上有する電荷輸送性化合物: 10部
(例示化合物NO.54)
光重合開始剤: 1部
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン
(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)
テトラヒドロフラン: 100部
<実施例3>
実施例1の架橋表面層塗工液を下記のものに変えた以外は実施例1と同様に電子写真感光体を作製した
下記構造式(例示化合物B−1−3)のラジカル重合性化合物: 5部
ラジカル重合性官能基を3つ以上有するモノマー: 5部
トリメチロールプロパントリアクリレート
(KAYARAD TMPTA、日本化薬製)
ラジカル重合性官能基を1つ以上有する電荷輸送性化合物: 10部
(例示化合物NO.54)
光重合開始剤: 1部
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン
(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)
テトラヒドロフラン: 100部
<実施例4>
実施例1の架橋表面層塗工液を下記のものに変えた以外は実施例1と同様に電子写真感光体を作製した。
下記構造式(例示化合物B−1−4)のラジカル重合性化合物: 5部
ラジカル重合性官能基を3つ以上有するモノマー: 5部
トリメチロールプロパントリアクリレート
(KAYARAD TMPTA、日本化薬製)
ラジカル重合性官能基を1つ以上有する電荷輸送性化合物: 10部
(例示化合物NO.54)
光重合開始剤: 1部
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン
(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)
テトラヒドロフラン: 100部
参考例1
実施例1の架橋表面層塗工液を下記のものに変えた以外は実施例1と同様に電子写真感光体を作製した。
下記構造式(例示化合物B−1−25)のラジカル重合性化合物: 10部
ラジカル重合性官能基を1つ以上有する電荷輸送性化合物: 10部
(例示化合物NO.54)
光重合開始剤: 1部
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン
(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)
テトラヒドロフラン: 100部
参考例2>
実施例1の架橋表面層膜厚を3μm、架橋表面層塗工液を下記のものに変えた以外は実施例1と同様に電子写真感光体を作製した。
下記構造式(例示化合物B−1−44)のラジカル重合性化合物: 10部
光重合開始剤: 1部
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン
(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)
テトラヒドロフラン: 100部
<実施例
実施例1の架橋表面層塗工液を下記のものに変えた以外は実施例1と同様に電子写真感光体を作製した。
下記構造式(例示化合物C−1−1)のラジカル重合性化合物: 10部
ラジカル重合性官能基を1つ以上有する電荷輸送性化合物: 10部
(例示化合物NO.54)
光重合開始剤: 1部
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン
(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)
テトラヒドロフラン: 100部
<実施例
実施例1の架橋表面層塗工液を下記のものに変えた以外は実施例1と同様に電子写真感光体を作製した。
下記構造式(例示化合物D−1−1)のラジカル重合性化合物: 10部
(ゲルろ過クロマトグラフィーで測定したところnは3〜10の混合物であった。)
ラジカル重合性官能基を1つ以上有する電荷輸送性化合物: 10部
(例示化合物NO.54)
光重合開始剤: 1部
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン
(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)
テトラヒドロフラン: 100部
<比較例1>
実施例1の架橋表面層膜厚を3μm、架橋表面層塗工液を下記のものに変えた以外は実施例1と同様に電子写真感光体を作製した。
下記構造式のラジカル重合性モノマー: 10部
エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート(ABE−300、新中村化学工業)
光重合開始剤: 1部
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン
(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)
テトラヒドロフラン: 100部
<比較例2>
実施例1の架橋表面層塗工液を下記のものに変えた以外は実施例1と同様に電子写真感光体を作製した。
ラジカル重合性官能基を3つ以上有するモノマー: 10部
ジペンタエリスリトールカプロラクトン変性ヘキサアクリレート
(KAYARAD DPCA−120、日本化薬製)
ラジカル重合性官能基を1つ以上有する電荷輸送性化合物: 10部
(例示化合物NO.54)
光重合開始剤: 1部
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン
(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)
テトラヒドロフラン: 100部
<比較例3>
実施例1の架橋表面層塗工液を下記のものに変えた以外は実施例1と同様に電子写真感光体を作製した。
下記構造式のラジカル重合性モノマー: 10部
(KAYARAD NPGDA、日本化薬製)
ラジカル重合性官能基を1つ以上有する電荷輸送性化合物: 10部
(例示化合物NO.54)
光重合開始剤: 1部
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン
(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)
テトラヒドロフラン: 100部
<比較例4>
実施例1の架橋表面層を設けず、電荷輸送層の膜厚を28μmとした以外は実施例1と同様に電子写真感光体を作製した。
以上のように作製した実施例1〜8、比較例1〜4の電子写真感光体についてA4サイズ10万枚の通紙試験を実施した。まず、前記感光体を電子写真装置用プロセスカートリッジに装着し、画像露光光源として655nmの半導体レーザーを用いたリコー性imagio Neo270改造機にて初期暗部電位を−750Vに設定した。その後通紙試験を開始し、初期と10万枚複写後の暗部及び露光部電位測定を行った。その結果を下記表に示す。
次に、通紙試験を実施した実施例1〜6、参考例1、2、比較例1〜4のうち、実施例1、5、6、参考例1、2と比較例1〜3の感光体を30℃90%RHの環境中で画像評価を行った。その結果を下記表に示す。
次に、30℃90%RHの環境中で画像評価を行った感光体を、ダイレック製(DY―0102N)NOx暴露試験を行った。NOx環境下(NO:40ppm、NO2:10ppm)で48時間放置し、暗部電位、露光部電位測定を行った。その結果を下記表に示す。
以上、実施例1〜6、参考例1、2に示されるように、架橋表面層が上記一般式(A)の構造を含むことによって、比較例2、3と比較し、1分子あたりに含むラジカル重合性官能基量が少なくとも同等以上の耐久性を示す。比較例4の架橋表面層を設けず、従来の熱可塑性バインダー樹脂を用いた感光体は、本発明の感光体に比べ耐久性が劣る。また、本発明の感光体は、比較例1、2、3と比較し環境安定性、耐ガス性とも優れている。
したがって、本発明のラジカル硬化されていない感光層と、一般式(A)の構造を含むラジカル硬化組成物を含有する架橋表面層を有する電子写真感光体を用いることによって、耐摩耗性が高く、良好な電気特性を有し、更に環境安定性、耐ガス性が優れた感光体が実現された。したがってこの感光体を用いることで、より高画質な画像を長期にわたり提供できる高性能で且つ信頼性の高い画像形成方法、画像形成装置及び画像形成装置用プロセスカートリッジが提供できる。
Aは本発明の電子写真感光体の断面図の一例である。また、Bは本発明の電子写真感光体の断面図の他の例である。 本発明の電子写真感光体の断面図の他の例である。 本発明の画像形成装置の一例を示す概略図である。 本発明の画像形成装置用プロセスカートリッジの一例を示す概略図である。 本発明で使用される例示化合物の合成例で得られたB−1−1の赤外吸収スペクトルである。 本発明で使用される例示化合物C−1−1の合成例で得られた中間体2,2-ビス{3-メチル-4-(2,3-ジヒドロキシプロピルオキシ)フェニル}プロパンの赤外吸収スペクトルである。 本発明で使用される例示化合物の合成例で得られたC−1−1の赤外吸収スペクトルである。
符号の説明
1 感光体
2 除電ランプ
3 帯電チャージャ
4 イレーサ
5 画像露光部
6 現像ユニット
7 転写前チャージャ
8 レジストローラ
9 転写紙
10 転写チャージャ
11 分離チャージャ
12 分離爪
13 クリーニング前チャージャ
14 ファーブラシ
15 クリーニングブレード
101 感光ドラム
102 帯電装置
103 露光
104 現像装置
105 転写体
106 転写装置
107 クリーニングブレード

Claims (8)

  1. 導電性支持体上に少なくとも、ラジカル硬化されていない感光層と、ラジカル硬化組成物を含有する架橋表面層を有する電子写真感光体において、前記ラジカル硬化組成物が、少なくとも下記一般式(B)、一般式(C)、又は一般式(D)のいずれかの化学式で表されるラジカル重合性化合物を含有する塗工液を感光層表面に塗布した後、ラジカル硬化させて形成された組成物であることを特徴とする電子写真感光体。
    式中、R 及びRは水素原子又はメチル基を表し、R、R、R及びRはそれぞれ水素原子、炭素数1〜6の直鎖状または分岐状または環状アルキル基、アリル基、ハロゲン原子、アリール基を表し、R及びR10は水素原子、メチル基、エチル基を表す。但しR〜Rの全てが水素原子である場合を除く。Rの炭素数とR10の炭素数の和は0〜2である。)
    (式中、R11、R12、R13及びR14はそれぞれ水素原子又はメチル基を表し、R5、R6、R7及びR8はそれぞれ水素原子、炭素数1〜6の直鎖状または分岐状または環状アルキル基、アリル基、ハロゲン原子、アリール基を表し、R9及びR10は水素原子、メチル基、エチル基を表す。但しR5〜R8の全てが水素原子である場合は除く。R9の炭素数とR10の炭素数の和は0〜2である。)
    (式中、R21、R22はそれぞれ水素原子又はメチル基を表し、R5、R6、R7及びR8はそれぞれ水素原子、炭素数1〜6の直鎖状または分岐状または環状アルキル基、アリル基、ハロゲン原子、アリール基を表し、R9及びR10は水素原子、メチル基、エチル基を表し、nは1〜50の整数を表す。但しR5〜R8の全てが水素原子である場合は除く。R9の炭素数とR10の炭素数の和は0〜2である。)
  2. 前記ラジカル硬化組成物が、少なくとも上記一般式(B)、(C)、(D)で表されるラジカル重合性化合物のいずれかと、更にラジカル重合性官能基を3つ以上有するモノマーを含有する塗工液を感光層表面に塗工した後、ラジカル硬化させて形成された組成物であることを特徴とする請求項に記載の電子写真感光体。
  3. 前記ラジカル硬化組成物が、少なくとも上記一般式(B)、(C)、(D)で表されるラジカル重合性化合物のいずれかと、更にラジカル重合性官能基を1つ以上有する電荷輸送性化合物を含有する塗工液を感光層表面に塗工した後、ラジカル硬化させて形成された組成物であることを特徴とする請求項1または2に記載の電子写真感光体。
  4. 前記ラジカル硬化組成物が、光のエネルギーを用いた手段で硬化されていることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の電子写真感光体。
  5. 前記ラジカル硬化されていない感光層が、導電性支持体上に少なくとも電荷発生層と電荷輸送層を順次積層した構成をとることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の電子写真感光体。
  6. 電子写真感光体を用いる画像形成方法において、該電子写真感光体が請求項1〜のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成方法。
  7. 少なくとも帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、及び電子写真感光体を具備してなる画像形成装置において、該電子写真感光体が請求項1〜のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成装置。
  8. 請求項1〜のいずれかに記載の電子写真感光体と、更に帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段、除電手段から選択される少なくとも1つの手段とが一体となり、画像形成装置と着脱自在であることを特徴とする画像形成装置用プロセスカートリッジ。
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