JP5146017B2 - 鉛アノードスライムの塩素浸出方法 - Google Patents
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Description
下記の(1)〜(3)の工程を含むことを特徴とする鉛アノードスライムの塩素浸出方法が提供される。
(1)前記鉛アノードスライムを100〜350℃の温度で焙焼に付し、焙焼物を得る。
(2)前記焙焼物を酸性水溶液中に懸濁させたスラリーを形成する。
(3)前記スラリー中に塩素ガスを吹込み、塩素浸出に付し、塩化銀の形態で銀を含む浸出残渣と有価金属を含む浸出液とを得る。
本発明の鉛アノードスライムの塩素浸出方法は、銀とその他の有価金属を含む鉛アノードスライムを塩素浸出する方法であって、下記の(1)〜(3)の工程を含むことを特徴とする。
(1)前記鉛アノードスライムを100〜350℃の温度で焙焼に付し、焙焼物を得る。
(2)前記焙焼物を酸性水溶液中に懸濁させたスラリーを形成する。
(3)前記スラリー中に塩素ガスを吹込み、塩素浸出に付し、塩化銀の形態で銀を含む浸出残渣と有価金属を含む浸出液とを得る。
すなわち、従来の方法に従い、前記鉛アノードスライムをそのまま塩素浸出の付すと、該鉛アノードスライム中に含有される銀が塩化銀の形態に変換される。このとき、主要成分として含まれるアンチモン、ビスマス等の15属元素の金属は、下記の式(1)に従い、塩素により酸化浸出され溶解され、次いで、それぞれの溶解度により、下記の式(2)に従い、加水分解され酸化物を生成する。なお、下記の式(1)、(2)は、アンチモンの場合を示す。上記のような湿式法により生成した酸化物は、非常に微細であり、かつろ過性が不良なものとなる。
式(2):2SbCl5+5H2O=Sb2O5+10HCl
上記(2)工程において、上記焙焼物のスラリーを形成する際、特に限定されるものではないが、事前に、焙焼物を粉砕処理に付し、1mm以下の粒状にすることができる。
すなわち、上記焙焼物は、凝結が進み砂状になっており、真比重が重く、そのまま塩素浸出の反応槽に投入すると、攪拌羽根及び槽底面が磨耗による損傷を受ける。そのため、磨耗の影響が緩和される粒度、例えば1mm以下の粒度に粉砕することが好ましい。
このとき、焙焼物と鉛アノードスライムとの混合比率としては、特に限定されるものではないが、質量比で焙焼物:鉛アノードスライム=40:60〜60:40が好ましく、48:52〜52:48がより好ましい。この範囲で混合することにより、ろ過性の悪化を極力抑えて、塩酸の使用量を減少することができる。
上記塩素浸出の条件としては、特に限定されるものではないが、温度を75〜85℃に、及び酸化還元電位(銀/塩化銀電極規準)を1000mV以上に調整することが好ましい。
飽和度が低下するため、見掛け上反応速度が変らなくなる。しかも、温度が高いと使用する反応槽の材質が制限される。
前記湿式法により銀粉を回収する製錬方法としては、例えば、上記浸出残渣から、下記の(イ)〜(ハ)の工程からなる方法により高純度の塩化銀を製造し、得られた塩化銀をアルカリ水溶液中で還元剤により処理する工程で、金属銀粉を得る方法が挙げられる。
(イ)上記浸出残渣を亜硫酸塩水溶液中で浸出し、銀を該液中に抽出して、銀を含む浸出液と不溶解残渣を形成する浸出工程、
(ロ)前記浸出液を中和して酸性にし、塩化銀を析出して、該塩化銀と母液を形成する塩化銀生成工程、及び
(ハ)前記塩化銀を酸性水溶液中で酸化剤を添加して酸化処理し、不純物元素を溶出分離して、精製された塩化銀と不純物元素を含む溶液を形成する塩化銀精製工程
上記(ロ)の工程のpHは、特に限定されるものではないが、0〜4.5が好ましく、1〜2がより好ましい。すなわち、pHを4.5以下に低下することによって、亜硫酸イオンが、順次亜硫酸水素イオン、亜硫酸、二酸化硫黄に変換され、銀との錯形成能力が失われるため、ほぼ全量の銀を塩化銀として回収することが可能である。
表1に組成を示す鉛アノードスライムを用いた。
次に、焙焼をしていない湿潤状態の鉛アノードスライム(比較例1)と前記焙焼物(実施例1、実施例2)のそれぞれを、スラリー濃度が300g/Lになるように水に懸濁し、酸濃度が0.5mol/Lになるように塩酸を添加した。
続いて、これらのスラリーの温度を80℃に調整し、酸化還元電位が銀/塩化銀電極で1000mV以上となるまで塩素ガスを吹込んだ。冷却後、ろ過を行い、塩素浸出残渣を得た。
工業規模で、図2に示す工程で、鉛アノードスライムの焙焼工程、焙焼物の粉砕工程、及び塩素浸出工程を行い、得られた浸出残渣から銀粉の回収を行なった。
図2は、鉛アノードスライムを原料として用いて、高純度銀を製造する製錬方法の工程図である。
所定温度の熱風を押し込み、加熱する形式のバンドドライヤーを用い、表2に組成を示す鉛アノードスライム(湿量で1407kg)を装入用ホッパーに投入し、連続的かつ定量的にバンドドライヤーへ装入して焙焼を行った。バンドドライヤーの操業条件としては、前記鉛アノードスライムの乾燥、酸化焙焼が行なえるように、滞留時間を40分とし、熱風温度を350℃に調整した。
FV−200型振動ミルに、焙焼工程で得られた焙焼物と水を、焙焼物220kg当たり水150Lの比率で挿入し5分振動し粉砕した。この操作を5回繰返して、焙焼物のすべてを粉砕した。各操作毎に、粉砕機出口で粉砕スラリーのサンプルを200mL採取し、目開き1mmの篩で処理したところ、粒度は1mm以下を満足していた。
ジャケット付の槽(内面FRPライニング、容量6m3)に、得られた粉砕スラリーをポンプで移送し、水で3.5m3まで薄めた。その後、酸濃度調整のため濃塩酸を300L添加し、攪拌しながら蒸気を吹込んで液温度を75℃まで上昇させた。
続いて、塩素ガスを30kg/時間の速度で吹込んで、酸化還元電位を1000mVまで上昇させた後、1000mV以上を1時間維持した後、塩素ガスの吹き込みを停止した。その後、60℃まで冷却後、ろ過面積33m2のフィルタープレスでろ過した。なお、酸化還元電位が上昇するにつれ、スラリーの色調が白く変色した。また、ろ液の塩酸濃度は、1.11mol/Lであった。
塩素浸出工程で得られた残渣を、10m3反応槽に投入し、さらに亜硫酸ソーダ濃度230g/Lの溶液を9m3受入れた。次いで、pHを9に調整しながら、90分攪拌し塩素浸出残渣に含まれる銀を浸出した。浸出後、50m2のろ過面積のフィルタープレスでろ過を行い、不溶解残渣と分離した。スラリーろ過性は良好であり、ろ過作業は、約2時間ほどで終了した。なお、得られた不溶解残渣の銀品位は、0.43%であり、高い銀浸出率であった。
その後、銀を含む浸出液から、塩化銀生成工程、塩化銀精製工程及び銀生成工程からなる上記製錬方法で処理し、高純度の銀粉を回収した。回収した銀粉は、表3の不純物元素組成から、純度99.99質量%以上であり、市場価値のあるものであった。
(1)塩素浸出工程
ジャケット付の槽に、焙焼をしないで、そのまま鉛アノードスライム(湿量で1200kg)を投入し、水で3.5m3まで薄めたこと、及び、酸濃度調節のための塩酸を添加しなかったこと以外は実施例3と同様に塩素浸出処理を行った。
ここで、塩素ガスによる反応で温度が85℃以上に上昇するため、80℃以下になるよう冷却しながら塩素浸出を行なった。酸化還元電位が、1000mVまで上昇後、1000mV以上を1時間維持した後、塩素ガスの吹き込みを停止した。その後、60℃まで冷却後、ろ過面積33m2のフィルタープレスでろ過した。ろ液の塩酸濃度は、2.14mol/Lであった。
(2)浸出残渣の亜硫酸塩浸出工程
塩素浸出工程で得られた残渣を、10m3反応槽に投入し、さらに亜硫酸ソーダ濃度230g/Lの溶液を9m3受入れた。次いで、pHを9に調整しながら、90分攪拌し塩素浸出残渣に含まれる銀を浸出した。浸出後のスラリーは、牛乳状に白濁した、難ろ過性のものであったが、50m2のろ過面積のフィルタープレスでろ過を行った。その結果、ろ過は、約12時間実施したが、ろ過できたのは5m3程度に留まり、その後のろ過処理が進まなかった。
また、比較例2で、酸濃度調節のための塩酸を添加しなかったにもかかわらず、高い塩酸濃度が得られることから、産出そのままの鉛アノードスライムを用いると塩素浸出において塩酸が生成されることが分かる。したがって、本発明の(2)の工程で、焙焼物に産出そのままの鉛アノードスライムを所定の割合で混合することによって、塩酸のコストを低減することができることが分かる。
Claims (6)
- 銀とその他の有価金属を含む鉛アノードスライムを塩素浸出する方法であって、
下記の(1)〜(3)の工程を含むことを特徴とする鉛アノードスライムの塩素浸出方法。
(1)前記鉛アノードスライムを100〜350℃の温度で焙焼に付し、焙焼物を得る。
(2)前記焙焼物を酸性水溶液中に懸濁させたスラリーを形成する。
(3)前記スラリー中に塩素ガスを吹込み、塩素浸出に付し、塩化銀の形態で銀を含む浸出残渣と有価金属を含む浸出液とを得る。 - 前記焙焼物のスラリーを形成する際、事前に、焙焼物を粉砕処理に付し、1mm以下の粒状にすることを特徴する請求項1に記載の鉛アノードスライムの塩素浸出方法。
- 前記焙焼物のスラリーを形成する際、スラリー濃度が100〜500g/Lになるように焙焼物を水に懸濁してスラリーを形成し、次いで0.5〜1.5mol/Lの濃度になるように塩酸を添加することを特徴とする請求項1又は2に記載の鉛アノードスライムの塩素浸出方法。
- 前記焙焼物のスラリーを形成する際、焙焼物に未焙焼の鉛アノードスライムを混合することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の鉛アノードスライムの塩素浸出方法。
- 前記塩素浸出は、温度を75〜85℃に、及び酸化還元電位(銀/塩化銀電極規準)を1000mV以上に調整することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の鉛アノードスライムの塩素浸出方法。
- 前記浸出残渣は、これを原料として、湿式法により銀粉を回収する製錬方法に用いることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の鉛アノードスライムの塩素浸出方法。
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