JP5144010B2 - 繊維強化プラスチックパネルの製造方法 - Google Patents
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最近は、ハニカムコアとスキン材(プリプレグ積層体)とをフィルム状接着剤を介して積層し、オートクレーブを用いて加熱・加圧して、プリプレグとフィルム状接着剤とを同時に硬化する方法が多く使われている。
オートクレーブは、非常に高価なため、新規に導入することは困難ばかりでなく、一旦導入すると、そのオートクレーブの大きさにより成形品の大きさが制限され、それより大きな成形品の製造が事実上不可能となる。
そこで、オートクレーブを用いない成形の開発が盛んに行われている。その代表的なものとしては、真空、大気圧のみの低圧下で成形するオーブン成形(真空バッグ成形とも呼ばれる。)がある。オーブン成形では、大気圧以外に圧力を加えないのでオートクレーブのようなしっかりした耐圧力容器でなくても良く、加熱することできる炉(オーブン)であれば成形硬化が可能である。断熱ボードと熱風ヒーターといった簡便な設備でも成形硬化が可能である。
特許文献1には、補強繊維からなるシート状補強基材の片面に熱硬化性樹脂フィルムを貼り合わせて、部分含浸されたプリプレグや熱硬化性樹脂フィルムの両表面に補強繊維からなるシート状補強基材を貼り合わせて、部分含浸されたプリプレグを使用した成形法が記載されている。
繊維強化プラスチックパネルの成形中に粘度が2.5〜5Pa・秒で極小となる熱硬化性樹脂組成物を目付Y(=0.6X〜0.8X)g/m2 に引き伸ばした熱硬化性樹脂組成物シート(A)、
補強繊維の体積含有率が50〜65体積%の複合材料とするために目付Xg/m2 の熱硬化性樹脂組成物シートが必要なシート状補強繊維基材(B)と
(A)と同じ熱硬化性樹脂組成物を目付X−Yg/m2 に引き伸ばした熱硬化性樹脂組成物シート(C)と
をこの順で重ね合わせ、(A)および(C)を構成している熱硬化性樹脂組成物を(B)に部分的に含浸し、(B)の内部に熱硬化性樹脂組成物で含浸されていない部分が連続している、樹脂含浸率10〜60%の部分含浸プリプレグ(D)を得、(D)を(C)側表面がツールに接するように積層して得られたプリプレグ積層体(D´)をツール上で加熱加圧して硬化する、繊維強化プラスチックパネルの製造方法にある。
本発明で、シート状補強繊維基材(B)を構成する補強繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維等の繊維強化プラスチックに補強繊維として用いられるものすべてが使用可能である。
シート状補強繊維基材(B)は、繊維強化プラスチックの機械物性を左右することとなるので、補強繊維の体積含有率が50〜65体積%の複合材料となるようなものを選択する必要がある。補強繊維以外の部分すなわち、50〜35体積%は、後述する熱硬化性樹脂組成物シート(A)、(C)を形成する熱硬化性樹脂組成物が占める。
補強繊維からなるシート状補強基材の形態は、上述のほかに特に制限なく、一方向に引き揃えられた一方向材、織物、編物、またこれらを多方向に積層されたマルチファブリックをステッチングしたステッチングシートような形態のいずれでもよい。ハニカム材の形状に沿って容易に積層できることからドレープ性に優れた、平織、綾織、朱子織等の織物の形態が好ましい。
本発明では、熱硬化性樹脂組成物シート(A)と(C)とを構成する熱硬化性樹脂組成物は、同一組成の熱硬化性樹脂組成物であることが必要である。
その熱硬化性樹脂組成物としては、一般に繊維強化プラスチックのマトリックス樹脂として用いられえるもののうち、繊維強化プラスチックの成形中に粘度が2.5〜5Pa・秒で極小となる熱硬化性樹脂組成物がすべて使用可能である。
この条件を満足するか否かは、以下のようにして判断することができる。
動的粘弾性測定装置を用い、熱硬化性樹脂組成物をサンドイッチパネルの成形時の温度条件に曝し、パラレルプレートで周波数10ラジアン/秒で粘度を測定し、極小粘度を求める。
本発明では、部分含浸プリプレグ(D)を用い、繊維強化プラスチックの成形中の、プリプレグ積層体(D´)と接着剤(E)とが硬化する以前に、熱硬化性樹脂組成物シート(A)、(C)を構成する熱硬化性樹脂でシート状補強繊維基材(B)を含浸する必要があるため、熱硬化性樹脂組成物シート(A)、(C)を構成する熱硬化性樹脂の最低粘度を上記範囲内とする。
本発明では、シート状補強繊維基材の両表面にそれぞれ配置される、熱硬化性樹脂組成物シート(A)と(C)の目付を配分することが重要であり、先に述べたシート状補強繊維基材として、補強繊維の体積含有率が50〜65体積%の複合材料とするために必要な熱硬化性樹脂組成物シートの目付Xg/m2 を基準にして、熱硬化性樹脂組成物シート(A)が目付Y=0.6X〜0.8Xg/m2 、熱硬化性樹脂組成物シート(C)がその残りの目付X−Yg/m2 とすることが必要である。目付をこの範囲とすることにより、オートクレーブを用いずに、特にオーブン成形による真空圧のみの低圧下での成形においても繊維強化プラスチックの表面に樹脂枯れやピンホールの発生を抑制することができる。
本発明では、予め、熱硬化性樹脂組成物シート(A)、シート状補強繊維基材(B)、熱硬化性樹脂組成物シート(C)をこの順で重ね合わせ、熱硬化性樹脂組成物シート(A)、(C)を構成している熱硬化性樹脂組成物をシート状補強繊維基材(B)に部分的に含浸し、シート状補強繊維基材(B)の内部に熱硬化性樹脂組成物で含浸されていない部分が連続している、樹脂含浸率10〜60%の部分含浸プリプレグ(D)を得る。
本発明では、樹脂含浸率を以下の方法で測定する
部分含浸プリプレグをオーブン内に入れ、25℃から昇温速度0.7℃/時間で150℃まで昇温した後、2時間保持し加熱硬化した。この硬化物の断面を研磨し、光学顕微鏡にて観察した。未含浸部分は、熱硬化性樹脂組成物がない空隙として観察される。硬化物の研磨断面の面積をa、この部分の中に存在する空隙部分が占める面積をbとし、樹脂含浸率を下式によって算出した。
樹脂含浸率(%)=(a−b)/a×100
得られた部分含浸プリプレグ(D)は、必要に応じて積層し、プリプレグ積層体(D´)として以下の工程で使用できる。プリプレグ積層体(D´)を作成する場合は、熱硬化性樹脂組成物シート(C)側がその表面に出るように積層することが後の工程から必要である。
プリプレグ積層体(D´)は、熱硬化性樹脂組成物シート(C)側がツールと接するようにツール上に配置される。
プリプレグ積層体(D´)は、加熱加圧され、プリプレグ積層体が硬化され、繊維強化プラスチックパネルとなる。この加熱加圧は、従来の繊維強化プラスチックパネルの成形に使用されていた方法が使用できる。本発明では、上述の構成を有するので、積層体を内部が減圧できるようにバギングし、オーブン(加熱炉)で加熱することによって繊維強化プラスチックパネルを得ることができる。
以下、本発明を実施例により、さらに具体的に説明する。
『熱硬化性樹脂組成物の調製方法』
(1)以下のエポキシ樹脂を混合し、160℃で溶解させて組成物(イ)を調製した。
ジャパンエポキシレジン株式会社製エピコート828 35質量部
旭化成株式会社製アラルダイトAER4152 37質量部
ジャパンエポキシレジン株式会社製エピコート1002 28質量部
日本化薬株式会社製EPPN502H 20質量部
東都化成株式会社製フェノトートYP70 5質量部
(2)以下のエポキシ樹脂等を混合溶解させ、3本ロールミルを用いて均一に分散させて組成物(ロ)を得た。
ジャパンエポキシレジン株式会社製エピコート828 12質量部
保土々谷化学株式会社製DCMU99 4質量部
ジャパンエポキシレジン株式会社製Dicy7 6質量部
(3)組成物(イ)に(ロ)を配合し、ニーダー60℃にて均一に分散させて熱硬化性樹脂組成物を得た成物を得た。
組成物(イ) 120質量部
組成物(ロ) 22質量部
熱硬化性樹脂組成物は、フィルムコーターにより、離型紙に所望の目付を有する熱硬化性樹脂組成物シートとした。
シート状補強繊維基材(B)として、三菱レイヨン株式会社製TRK510を用意した。TRK510は、三菱レイヨン株式会社製炭素繊維パイロフィルTR50S12Lを目付が648g/m2 となるように2/2綾織クロスに製織したものである。
シート状補強基材(B)の両表面に熱硬化性樹脂組成物シート(A)、(C)をそれぞれ重ね合わせて、ヒュージングプレス(アサヒ繊維機械工業株式会社JR−600S、処理長1340mm)を用いて部分含浸プリプレグを得た。このとき、使用した熱硬化性樹脂組成物シートの目付、ヒュージングプレスの条件(圧力は、シリンダー圧力)は、表1に記載した通りである。
部分含浸プリプレグは、320×320mmにカットした。
得られた部分含浸プリプレグが実際に部分含浸か否かは以下の方法によって、樹脂含浸率を測定して確認した。
部分含浸プリプレグをオーブン内に入れ、25℃から昇温速度0.7℃/時間で150℃まで昇温した後、2時間保持し加熱硬化した。この硬化物の断面を研磨し、光学顕微鏡にて観察した。未含浸部分は、熱硬化性樹脂組成物がない空隙として観察される。硬化物の研磨断面の面積をa、この部分の中に存在する空隙部分が占める面積をbとし、樹脂含浸率を下式によって算出した。
樹脂含浸率(%)=(a−b)/a×100
部分含浸プリプレグ[(A)/(B)/(C)]を3枚積層[(A)/(B)/(C)/(A)/(B)/(C)/(A)/(B)/(C)]し、ツールに(C)が接するように配置した。ただし、比較例6のみは、(A)がツールに接するように配置した。
この上に旭硝子株式会社製アフロンフィルム(アフレックス 25N×1200NT)、AIRTECH社製不織布(ポリエステルベンマット A−3000)、真空引き口を設けたAIRTECH社製ナイロンバグフィルム(WHIGHTLON #8400)をかけ、ツールとナイロンバグフィルムとをシーラント材で気密に封じた。
引き口を真空ポンプに通じ、バグフィルム内を減圧してほぼ真空とし、そのまま室温で6時間放置した。ただし、比較例7のみは、15時間放置した。
さらに真空ポンプに接続したまま、加熱炉に移し、1℃/分の昇温速度で100℃まで昇温し1時間放置し、その後1℃/分の昇温速度で150℃まで昇温し2時間放置した。
(ピンホール、樹脂枯れ)
成形時にツールに接していた表面のピンホール個数と樹脂枯れの有無を目視にて観察した。
繊維強化プラスチックパネルを湿式カッターにて切断し、切断面を研磨し光学顕微鏡にて観察し、スキン材の未含浸部分(熱硬化性樹脂組成物の硬化物がない空隙として観察される。)の有無を評価した。
評価結果を表に示した。
Claims (1)
- プリプレグ積層体(D´)をツール上で内部が減圧できるようにバギングし、オーブンで加熱して真空バッグ成形する工程中に粘度が2.5〜5Pa・秒で極小となる、熱硬化性樹脂組成物を、目付Y(=0.6X〜0.8X)g/m2に引き伸ばした熱硬化性樹脂組成物シート(A)と、
補強繊維の体積含有率が50〜65体積%の複合材料とするために目付Xg/m2の熱硬化性樹脂組成物シートが必要なシート状補強繊維基材(B)と、
(A)と同じ熱硬化性樹脂組成物を目付X−Yg/m2 に引き伸ばした熱硬化性樹脂組
成物シート(C)と、
をこの順で重ね合わせ、(A)および(C)を構成している熱硬化性樹脂組成物を(B)に部分的に含浸し、(B)の内部に熱硬化性樹脂組成物で含浸されていない部分が連続している、樹脂含浸率10〜60%の部分含浸プリプレグ(D)を得る工程と、複数の(D)を一方の(A)側表面と他方の(C)側表面が接するように積層してプリプレグ積層体(D´)を得、得られたプリプレグ積層体(D´)の(C)側表面がツールに接するように配置した後、プリプレグ積層体(D´)をツール上で内部が減圧できるようにバギングし、オーブンで加熱して真空バッグ成形する工程とを備える、繊維強化プラスチックパネルの製造方法。
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