JP4941798B2 - 部分含浸プリプレグ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、繊維強化複合材料の成形に適した中間材料としての部分含浸プリプレグに関する。
【0002】
【従来の技術】
繊維強化複合材料の成形法の一つとして、強化繊維基材にマトリックス樹脂を含浸させた中間体であるプリプレグを用いる方法がある。プリプレグの形態には、一般にシート状と紐(あるいはテープ)状の2種があるが、シート状のプリプレグの方が多く用いられている。このような成形法を用いる具体的な用途としては、航空機部材、船舶部材、風車ブレード、ゴルフシャフト、釣り竿、ラケットなどがある。
【0003】
従来のシート状プリプレグは、ほとんどがマトリックス樹脂を強化繊維に完全に含浸したものが使われてきた。しかし、最近では、強化繊維にマトリックス樹脂を部分的に含浸したプリプレグを用いる成形方法が提案されている。その代表的な構成は、3種あり、強化繊維層/マトリックス樹脂層の2層から成るもの(タイプ1)、マトリックス樹脂層/強化繊維層/マトリックス樹脂層の3層からなるもの(タイプ2)、強化繊維層/マトリックス樹脂層/強化繊維層の3層からなるもの(タイプ3)の3種である。米国特許6,139,942号公報にタイプ1およびタイプ2の具体例が、国際公開特許WO 00/27632号公報にタイプ1およびタイプ3の具体例が、それぞれ記載されている。
【0004】
従来のプリプレグを積層して複合材料を成形する場合は、層間に閉じこめられた空気が成型品のボイドとなる恐れがあるため、これを防ぐためにオートクレーブなどを用いて高圧をかけて成形することが多かった。ところが、部分含浸プリプレグでは、未含浸の強化繊維の部分が通気パスとなるため、予め充分に減圧した後加熱および加圧を行えば、従来のプリプレグの成形より低い圧力でボイドの少ない成形が可能になるという利点がある。さらに付帯的な効果として、強化繊維の拘束が少ないため従来のプリプレグよりドレープ性が良いことが指摘できる。
【0005】
しかし、従来の部分含浸プリプレグでは、厚み方向の通気パスがないため、大面積の部材を成形するときには通気パスが長くなり、脱気に時間がかかったり、脱気が不十分になって中央部にボイドが生じたりする恐れがあった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、容易に脱気が可能で、ボイドの少ない大面積の部材を生産性よく製造することが可能な部分含浸プリプレグを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明に係る部分含浸プリプレグは、シート状強化繊維層とマトリックス樹脂層からなり、強化繊維の40体積%以上が未含浸で、マトリックス樹脂層の面積被覆率が70〜99%の範囲にあり、マトリックス樹脂層の形態がストライプ状またはタイル状であることを特徴とするものからなる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明について、望ましい実施の形態とともに詳細に説明する。
本発明の部分含浸プリプレグに用いる強化繊維としては、ガラス繊維、アラミド繊維、炭素繊維、ボロン繊維などが好ましく用いられる。これらの強化繊維を複数組み合わせて用いてもよい。強化繊維の形態は、シード状であれば、あらゆる公知の形態が使用可能で、織物、ニット、マット、ステッチドファブリックなどが好ましく用いられる。
【0009】
本発明の部分含浸プリプレグに用いるマトリックス樹脂としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のいずれも用いることができる。
【0010】
熱硬化性樹脂としては、未硬化のあるいは半硬化した一液型樹脂が用いられる。特にエポキシ樹脂、フェノール樹脂、シアネート樹脂、ビスマレイミド樹脂などが好ましく用いられる。
【0011】
熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリイミド、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトンなどが好ましく用いられる。
【0012】
本発明の部分含浸プリプレグを構成する強化繊維層とマトリックス樹脂層は、いずれも1層であっても、複数層であっても、それらが交互に配列されていればよい。最も単純な形態は、強化繊維層/マトリックス樹脂層の2層から成るタイプ1である。マトリックス樹脂層/強化繊維層/マトリックス樹脂層の3層からなるタイプ2、強化繊維層/マトリックス樹脂層/強化繊維層の3層からなるタイプ3は表裏が対称であるため好ましい。タイプ2とタイプ3の主要な違いは、マトリックス樹脂層が表面に露出するかしないかである。マトリックス樹脂が熱硬化性樹脂の場合、この違いは表面タックの有無となって現れる。どちらを用いるかは、成形プロセス上の利便を考慮して選択される。なお、ドレープ性はタイプ2よりタイプ3の方がやや優れる。同様に4層以上の層構成をもつものも可能である。複数の強化繊維層あるいは複数のマトリックス樹脂層をもつ場合、それらは同一である必要はなく、材質、目付、形態が異なっていてもよい。
【0013】
本発明の部分含浸プリプレグのマトリックス樹脂層はフィルム状であるが、空隙部を有し、平面を部分的に被覆する。この空隙部が厚み方向の通気パスとなり、脱気を速くする効果を有する。マトリックス樹脂層の面積被覆率は70〜99%の範囲内にあることが必要である。面積被覆率が小さすぎると、マトリックス樹脂層の厚みが増えて積層作業上不利になり、面積被覆率が大きすぎると、空隙部が少なくなって厚み方向の通気パスとしての機能が充分発揮できない。また、空隙部同士の間隔が大きいと厚み方向に空気が移動する長さが長くなる。したがって、とくに厚みが大きいマトリックス樹脂層においては、任意の150mm ×150mm の正方形中に必ず空隙部が存在する形態をとることが好ましい。
【0014】
このような条件を満たすマトリックス樹脂層の形態は、多くのものが可能であるが、代表的なものとして、マトリックス樹脂層が網目状に連続的で、空隙部が離散的に形成された網目型、マトリックス樹脂層、空隙部ともに一方向にのみ連続なストライプ型、マトリックス層が離散的で、空隙部が網目状に連続的に延びるタイル型の3種を挙げることができる。本発明では、マトリックス樹脂層の形態としてストライプ状またはタイル状に規定している。
【0015】
マトリックス樹脂層の形態は、周期的であってもランダムであってもよいが、周期的である方が、設計や管理が容易である。ここで、周期的とは、少なくとも一方向について並進対称性を有することを意味する。周期的な形態をとる場合は、最小周期が150mm 以下であることが、150mm ×150mm の正方形中に必ず空隙部が存在する十分条件になるため好ましい。ただしこれは必要条件ではなく、最小周期が150mm より大きくても150mm ×150mm の正方形中に必ず空隙部が存在する形態は存在するので、必ずしもこれに限定されない。
【0016】
例えばタイプ3のような構成の部分含浸プリプレグを複数枚積層して成形する場合などは、マトリックス樹脂層同士が隣接する。その場合、マトリックス樹脂層の形態によっては、通気パスが塞がることがありうる。これを避けるには、タイル型の形態のマトリックス樹脂層を用いることが好ましい。なぜなら、タイル型形態であれば、空隙部が網目状であり、どのように重ねても必ず空隙部同士が重なる箇所が存在し、厚み方向の通気パスが確保できるためである。
【0017】
本発明の部分含浸プリプレグは、面方向の通気パスを確保するために強化繊維の40体積%以上を未含浸なまま残すことが必要である。ただし、強化繊維層とマトリックス樹脂層の剥離を避けるためには、ある程度の含浸部があった方が好ましいので、未含浸の強化繊維は98体積%以下であることが好ましい。
【0018】
次に、本発明の理解を一層容易にするため、従来技術と比較しながら、図面を用いて説明する。
図1ないし図4は、従来技術によるプリプレグを示している。図1は、完全に含浸を行った一般的なプリプレグの断面の模式図であり、強化繊維1と完全含浸されたマトリックス樹脂2から構成されている。図2は、従来技術による部分含浸プリプレグ(タイプ1)の断面の模式図であり、強化繊維1と、部分含浸されたマトリックス樹脂層3からなり、強化繊維1の一部が未含浸部4となる構成を有する。図3は、従来技術による部分含浸プリプレグ(タイプ2)の断面の模式図であり、強化繊維1の両側に部分含浸されたマトリックス樹脂層3が配置され、強化繊維1の内部が未含浸部4となっている構成を有する。図4は、従来技術による部分含浸プリプレグ(タイプ3)の断面の模式図であり、部分含浸されたマトリックス樹脂層3の両側に強化繊維1を有し、両側の表面に未含浸部4が存在する構成を有する。
【0019】
図5ないし図7は、本発明による部分含浸プリプレグを示している。図5ないし図7に示した部分含浸プリプレグを、図2ないし図4に示した従来技術による部分含浸プリプレグと対比すると、マトリックス樹脂層が、空隙を有する部分含浸されたマトリックス樹脂層5に形成されている。図5は、本発明による部分含浸プリプレグ(タイプ1)の断面の模式図であり、図6は、本発明による部分含浸プリプレグ(タイプ2)の断面の模式図であり、図7は、本発明による部分含浸プリプレグ(タイプ3)の断面の模式図である。
【0020】
図8ないし図14に、本発明における部分含浸プリプレグの各形態例を示す。図8は、参考例として、空隙を有する部分含浸されたマトリックス樹脂層5が網目型形態に形成された場合の一例を示しており、図9は、参考例として、別の網目型形態に形成された場合の一例を示している。図10は、空隙を有する部分含浸されたマトリックス樹脂層5がストライプ型形態に形成された場合の一例を示しており、図11は、別のストライプ型形態に形成された場合の一例を示している。図12は、空隙を有する部分含浸されたマトリックス樹脂層5がタイル型形態に形成された場合の一例を示しており、図13は、別のタイル型形態に形成された場合の一例を示しており、図14は、さらに別のタイル型形態に形成された場合の一例を示している。このように、各種の形態に形成できる。
【0021】
本発明の部分含浸プリプレグは、以下の2つの方法を用いて製造することができる。
一つは直接法で、強化繊維シート上に直接マトリックス樹脂を所望の形態になるよう吐出して製造する方法である。複数の吐出部をもち、それらが独立に吐出のオンオフができる装置を用いればあらゆる形態が可能であるが、ストライプ型の場合はオンオフが不要なため、製造装置が簡便になる利点がある。片面に吐出すればタイプ1の部分含浸プリプレグが得られ、両面に吐出すればタイプ2の部分含浸プリプレグが得られる。タイプ1の部分含浸プリプレグともう一枚の強化繊維シートをラミネートすればタイプ3の部分含浸プリプレグが得られる。
【0022】
もう一つは間接法で、一旦マトリックス樹脂のフィルムを作成し、これと強化繊維シートをラミネートすることにより得られる。マトリックス樹脂が熱硬化性樹脂の場合は、離型紙のような支持体上に塗布してフィルムを作成する。間接法の場合は、吐出時に空隙部をもつ形態にしなくても、フィルムを作成した後からスリットやパンチングなどにより空隙部を作ることもできる。
【0023】
本発明の部分含浸プリプレグを用いた複合材料の成形は、たとえば以下のように行う。
部分含浸プリプレグを所望の形態に切り出し、積層したのち、密閉して脱気する。系内の圧力が少なくとも大気圧の1/10以下になった後、所定の条件で加熱および加圧を行って、強化繊維の未含浸部にマトリックス樹脂を含浸させ、マトリックス樹脂が熱硬化性樹脂である場合はさらに硬化を行って成形品を得る。
【0024】
密閉の方法は、バキュームバッグあるいは、気密シール機構を備えた両面金型が好ましく用いられる。厚み方向の通気パスを利用するために、積層物の少なくとも片面にブリーザーあるいはそれと等価なものを配置することが好ましい。加圧は、大気圧あるいはプレス機が好ましく用いられる。特にマトリックス樹脂が熱硬化性樹脂の場合、粘度が低いため大気圧での含浸が可能なため、安価な設備で製造できるため好ましい。
【0025】
本発明の部分含浸プリプレグは比較的面積の大きい(たとえば、1m2 以上の)板状の複合材料に適しており、航空機のフェアリングや自動車の外板(ボンネットやフェンダー)の製造に有用である。
【0026】
【実施例】
以下の原料を加熱混合して一液型エポキシ樹脂組成物を調製した。
“エポトート”YD-128(東都化成(株)製エポキシ樹脂) 64重量部
“エピコート”1007
(ジャパン・エポキシ・レジン社製エポキシ樹脂) 36重量部
ジシアンジアミド(硬化剤) 3重量部
“オミキュア”94
(CVCスペシャルティケミカル製硬化促進剤) 2重量部
【0027】
このエポキシ樹脂を離型紙上に320g/m2の目付になるよう300mmの幅でコーティングし、コーティング面にポリエステルフィルムを被覆して巻き取ってエポキシ樹脂のフィルムを作成した。このフィルムを35mm幅にスリットした。
【0028】
目付190g/m2の炭素繊維平織クロス(“トレカ”CO7373、東レ(株)製)を1m×1mの正方形に切り出した。切り出した炭素繊維クロス上にスリットした樹脂フィルムをポリエチレンフィルムをはぎ取って5mm間隔で平行に配列し、アイロンで軽く押さえた後離型紙をはぎ取った。もう一枚の炭素繊維クロスを被せ、シリコーンゴムフィルムで覆い、内部を真空吸引して大気圧により圧着して、面積被覆率87.5%、周期40mmのスリット型マトリックス樹脂層をもつタイプ3の部分含浸プリプレグを得た。この部分含浸プリプレグの一部を40℃で1週間放置することにより、樹脂を流動させずに硬化させ、断面を観察したところ、強化繊維の約80体積%が未含浸であった。
【0029】
得られた部分含浸プリプレグ4枚をステンレス平板上に積層し、バキュームバギングを行った。バギングの方法は、国際公開特許WO 00/27632号公報記載の実施例に概ね従ったが、バッグ面側の全面をブリーザー(ガラス繊維クロス)で被覆したことが異なる。
【0030】
バギング後、ロータリーバキュームポンプを用いて5分間脱気し、85℃のオーブンに入れ、12時間硬化した。得られた複合材料は、周辺部、中央部とも1%未満のボイド率であった。
【0031】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の部分含浸プリプレグによれば、比較的低い成形圧力で、大面積であってもボイドの少ない複合材料を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】完全に含浸を行った一般的なプリプレグの断面の模式図である。
【図2】従来技術による部分含浸プリプレグ(タイプ1)の断面の模式図である。
【図3】従来技術による部分含浸プリプレグ(タイプ2)の断面の模式図である。
【図4】従来技術による部分含浸プリプレグ(タイプ3)の断面の模式図である。
【図5】本発明による部分含浸プリプレグ(タイプ1)の断面の模式図である。
【図6】本発明による部分含浸プリプレグ(タイプ2)の断面の模式図である。
【図7】本発明による部分含浸プリプレグ(タイプ3)の断面の模式図である。
【図8】マトリックス樹脂層の網目型形態の一例の模式図である。
【図9】マトリックス樹脂層の網目型形態の一例の模式図である。
【図10】マトリックス樹脂層のストライプ型形態の一例の模式図である。
【図11】マトリックス樹脂層のストライプ型形態の一例の模式図である。
【図12】マトリックス樹脂層のタイル型形態の一例の模式図である。
【図13】マトリックス樹脂層のタイル型形態の一例の模式図である。
【図14】マトリックス樹脂層のタイル型形態の一例の模式図である。
【符号の説明】
1 強化繊維
2 完全含浸されたマトリックス樹脂
3 部分含浸されたマトリックス樹脂層
4 強化繊維層の未含浸部
5 空隙を有する部分含浸されたマトリックス樹脂層
Claims (3)
- シート状強化繊維層とマトリックス樹脂層からなり、強化繊維の40体積%以上が未含浸で、マトリックス樹脂層の面積被覆率が70〜99%の範囲にあり、マトリックス樹脂層の形態がストライプ状またはタイル状であることを特徴とする部分含浸プリプレグ。
- マトリックス樹脂層が、任意の150mm ×150mm の正方形中に必ず空隙部が存在する形態をとることを特徴とする、請求項1の部分含浸プリプレグ。
- マトリックス樹脂層の形態が周期的なものであり、最小周期が150mm 以下であることを特徴とする、請求項1または2の部分含浸プリプレグ。
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