JP5143077B2 - 建物の壁構造設計支援システム - Google Patents
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Description
制震壁は一般の壁の一部として使用される。本出願人等により開発された所定の構造の制震壁は耐力壁を兼ねることもできる。耐力壁の配置は、建物の強度設計上最も重要な要素である。従って、建物の壁構造の設計時に同時に制震壁の配置等を決定することが望ましい。制震壁の配置には、その制震機能を有効に生かすための要求や制約がある。その制約をクリアする条件を求めてから最終的に設計者が配置決めをする。しかしながら、建物の間取りと壁構造の設計時に、使用材料の制約や間取り等の注文内容の変更等により条件が変更されることも多い。設計者はそのつど最適化のために試行錯誤を繰り返すことも少なくない。このとき、制震壁の配置とその他の壁の配置を選択する作業は非常に煩雑になる。
本発明は上記の課題を解決することを目的とし、制震壁の配置決定を全自動もしくは半自動で行い、設計者の作業負荷を軽減することができる、建物の壁構造設計支援システムと建物の壁構造設計支援プログラムと記録媒体を提供する。
〈構成1〉
建物の間取り図データと、当該建物に設けるべき制震壁の数を示すデータと、前記間取り図データ中で制震壁を設置しない場所を特定する制約条件データとを記憶した記憶装置と、前記記憶装置に記憶された前記間取り図データ中で、前記制約条件データにより特定された場所を検索する検索手段と、前記検索手段の検索結果から、前記間取り図データ中の制震壁を設置しない領域を除外した設置適合領域を判定する領域判定手段と、前記間取り図中の壁を設けるべき位置を通過する直線を壁線と呼ぶとき、その壁線と前記間取り図の図心とを検出する間取り図解析手段と、前記間取り図中に、必要な数の制震壁を配置する位置を探索して、その位置情報を自動的に取得する探索手段とを備え、前記間取り図の図心を原点とし、前記壁線に平行なX軸とY軸とからなる直交座標を設定し、前記設置適合領域に外接し前記X軸に平行な2本の直線と前記Y軸に平行な2本の直線を最外周線と呼ぶとき、前記探索手段は、第1象限において、前記X軸と前記最外周線との交点に最も近いX軸に平行な壁線を選択し、その壁線と前記最外周線との交点からその壁線を辿って制震壁を設けるべき場所を探索し、該当する場所がみつからないときは、前記X軸と前記最外周線との交点から次に近いX軸に平行な壁線を選択し、再びその壁線と前記最外周線との交点からその壁線を辿って制震壁を設けるべき場所を探索するという動作を繰り返し、探索をして最初に制震壁が収まった場所を第1象限のX軸に平行な制震壁の設置場所に決定し、第3象限において、前記X軸と前記最外周線との交点に最も近いX軸に平行な壁線を選択し、その壁線と前記最外周線との交点からその壁線を辿って制震壁を設けるべき場所を探索し、該当する場所がみつからないときは、前記X軸と前記最外周線との交点から次に近いX軸に平行な壁線を選択し、再びその壁線と前記最外周線との交点からその壁線を辿って制震壁を設けるべき場所を探索するという動作を繰り返し、探索をして最初に制震壁が収まった場所を第3象限のX軸に平行な制震壁の設置場所に決定し、第2象限において、前記Y軸と前記最外周線との交点に最も近いY軸に平行な壁線を選択し、その壁線と前記最外周線との交点からその壁線を辿って制震壁を設けるべき場所を探索し、該当する場所がみつからないときは、前記Y軸と前記最外周線との交点から次に近いY軸に平行な壁線を選択し、再びその壁線と前記最外周線との交点からその壁線を辿って制震壁を設けるべき場所を探索するという動作を繰り返し、探索をして最初に制震壁が収まった場所を第2象限のY軸に平行な制震壁の設置場所に決定し、第4象限において、前記Y軸と前記最外周線との交点に最も近いY軸に平行な壁線を選択し、その壁線と前記最外周線との交点からその壁線を辿って制震壁を設けるべき場所を探索し、該当する場所がみつからないときは、前記Y軸と前記最外周線との交点から次に近いY軸に平行な壁線を選択し、再びその壁線と前記最外周線との交点からその壁線を辿って制震壁を設けるべき場所を探索するという動作を繰り返し、探索をして最初に制震壁が収まった場所を第4象限のY軸に平行な制震壁の設置場所に決定する、という動作を必要な制震壁の数だけ繰り返して、制震壁を設置するための設置場所データを取得することを特徴とする建物の壁構造設計支援システム。
建物に設けるべきX軸方向の制震壁の数が奇数の場合に、前記探索手段は、構成1に記載の前記偶数の制震壁を設置する位置情報を取得する処理に加えて、最後に残った制震壁について、前記原点に最も近いX軸に平行な壁線を選択し、前記原点からその壁線を辿って制震壁を設けるべき場所を探索し、該当する場所がみつからないときは、前記原点から次に近いX軸に平行な壁線を選択し、再び原点からその壁線を辿って制震壁を設けるべき場所を探索するという動作を繰り返し、探索をして最初に制震壁が収まった場所を制震壁の設置場所に決定して、制震壁を設置するための設置場所データを取得することを特徴とする建物の壁構造設計支援システム。
構成1または2に記載の建物の壁構造設計支援システムにおいて、前記探索手段は、探索をする壁線の近傍に既に配置が決定された制震壁があるときには、当該制震壁から所定距離の範囲に新たな制震壁を設置しないという制約条件を前記制約条件データに追加することを特徴とする建物の壁構造設計支援システム。
構成1乃至3のいずれかに記載の建物の壁構造設計支援システムにおいて、前記探索手段は、前記制震壁を設置する位置データを取得した後、前記全ての壁線上に所定の選択基準に従って選択された壁種とその設置場所を示すその他の壁の設置場所データを取得することを特徴とする建物の壁構造設計支援システム。
構成1乃至4のいずれかに記載の建物の壁構造設計支援システムにおいて、前記制震壁は、設計上の耐力壁の基準を満たすものであることを特徴とする建物の壁構造設計支援システム。
構成5に記載の建物の壁構造設計支援システムにおいて、前記記憶装置には、予め設計上の基準を満たす耐力壁を配置するべき場所の位置データが記憶されており、前記探索手段は、前記壁線を辿って、前記耐力壁を設けるべき場所を探索して、最初に制震壁が収まった場所を制震壁の設置場所に決定することを特徴とする建物の壁構造設計支援システム。
構成1乃至6のいずれかに記載の建物の壁構造設計支援システムにおいて、前記探索手段は、前記制震壁を設置する設置場所データを取得した後に、該当する場所全てに基礎の立ち上がりが設けられるように、前記記憶装置に記憶された基礎データを修正することを特徴とする建物の壁構造設計支援システム。
構成1乃至7のいずれかに記載の建物の壁構造設計支援システムにおいて、前記制震壁は、上下一対の横架材と左右一対の垂直材とからなる矩形架構の内側に上下方向に隙間を有する面状部材を配置し、前記隙間に挟み込まれた制震ゴムを有することを特徴とする建物の壁構造設計支援システム。
構成1乃至7のいずれかに記載の建物の壁構造設計支援システムにおいて、前記探索手段は、前記第1象限、第3象限、第2象限、第4象限という探索場所の選択動作に替えて、前記X軸と前記最外周線との交点に最も近いX軸に平行な壁線を選択し、その壁線と前記最外周線との交点からその壁線を辿って制震壁を設けるべき場所を探索し、該当する場所がみつからないときは、前記X軸と前記最外周線との交点から次に近いX軸に平行な壁線を選択し、再びその壁線と前記最外周線との交点からその壁線を辿って制震壁を設けるべき場所を探索するという探索動作を繰り返し、この探索動作をして最初に制震壁が収まった場所をX軸に平行な一方の制震壁の設置場所に決定し、その後、前記Y軸を挟んでX座標の符号が反対になる場所において、前記と同様の探索動作をして最初に制震壁が収まった場所をX軸に平行なもう一方の制震壁の設置場所に決定し、前記Y軸と前記最外周線との交点に最も近いY軸に平行な壁線を選択し、その壁線と前記最外周線との交点からその壁線を辿って制震壁を設けるべき場所を探索し、該当する場所がみつからないときは、前記Y軸と前記最外周線との交点から次に近いY軸に平行な壁線を選択し、再びその壁線と前記最外周線との交点からその壁線を辿って制震壁を設けるべき場所を探索するという探索動作を繰り返し、この探索動作をして最初に制震壁が収まった場所をY軸に平行な一方の制震壁の設置場所に決定し、その後、前記X軸を挟んでY座標の符号が反対になる場所において、前記と同様の探索動作をして最初に制震壁が収まった場所をY軸に平行なもう一方の制震壁の設置場所に決定する、という動作を必要な制震壁の数だけ繰り返して、制震壁を設置するための設置場所データを取得することを特徴とする建物の壁構造設計支援システム。
コンピュータを、構成1または9に記載のシステムとして機能させる壁構造設計支援プログラム。
〈構成11〉
構成10に記載の壁構造設計支援プログラムを記録したコンピュータで読み取り可能な記録媒体。
間取り図の図心を原点とし、壁線に平行なX軸とY軸とからなる直交座標を設定して、最外周線に近い場所から制震壁の配置を決めるので、各制震壁の間の距離をできるだけ離すように配置できる。また、例えば、X軸に平行な制震壁を第1象限と第3象限に配置し、Y軸に平行な制震壁を第2象限、第4象限に配置するといった要領で配置場所を決めるので、全ての制震壁を原点に対してバランスよく配置することができる。
〈構成2の効果〉
設置すべきX軸方向の制震壁の数が奇数のときは、X軸方向に向いた制震壁が最後に1個残る。原点に最も近いX軸上を探索することにより、これらを原点に近い位置に配置できる。Y軸方向についても同様であり、X軸をY軸とみなして処理をすればよい。
〈構成3の効果〉
制震壁はできるだけ分散配置することが好ましい。このとき、制震壁から所定距離の範囲に新たな制震壁を設置しないという制約条件を制約条件データに加えれば、これまでと全く同様の演算処理を繰り返して何個でも制震壁の配置を自動的に探索できる。
〈構成4の効果〉
制約条件の厳しい制震壁の配置を最先に決定して、その後他の壁種の選択をすることで、壁設計作業を容易にすることができる。
〈構成5の効果〉
設計上の耐力壁の基準を満たす制震壁を使用すれば、制震壁の配置を最先に決定して、その後他の壁種の選択をすることで、壁設計作業を容易にすることができる。
〈構成6の効果〉
予め設計上の基準を満たす耐力壁を配置するべき場所を求めておき、その場所に制震壁を配置するように制御すると、制震壁をより最適な位置に自動配置できる。
〈構成7の効果〉
制震壁を設置した場所には基礎の立ち上がりが設けられることが好ましい。既に基礎の設計が終了している場合には、制震壁を設置する場所を自動的に決定したときに、この条件を満たすように基礎データを自動的に修正することができる。
〈構成8の効果〉
矩形架構の内側に上下方向に隙間を有する面状部材を配置し、隙間に制震ゴムを挟み込んだ構成の制震壁は、例えば、全体を木製にして高強度の耐力壁を構成できる。これを使用すれば、木造住宅に整合性の良い耐震構造とすることができる。
図1は、本実施例のシステムの機能ブロック図である。
図において、コンピュータ11は、演算処理装置20と記憶装置30を備える。この装置に間取り図データ等の演算処理に必要なデータを入力し、自動計算をさせて、制震壁の設置場所データを出力させる。演算処理装置20と記憶装置30は、コンピュータ11の本体に内蔵されていても外付けされていても構わない。コンピュータ11は、コンピュータプログラムを実行することにより、所定のタイミングで、演算処理装置20の部分に図示したいずれかの手段として機能する。コンピュータ11は、このコンピュータプログラムの実行中に、記憶装置30を使用して、予め記憶された演算処理に必要なデータを読み取る。またあるいは、新たなデータを記憶装置30に書き込んで記憶させる。
間取り図データ31は例えば、間取り図を構成する部品の部品名と、その部品の間取り図中の設置場所を示すデータを含む。設置場所は例えば座標値で示される。その他の属性データも含まれていてよい。このシステムは、例えば、設計者が建物全体の間取り図データ31を作成する過程で、制震壁の設置場所データ41を得るために利用される。間取り図データには壁構造、外壁構造、窓、内装等各種のデータが入力される。このシステムが利用されるのは、その完成までの間のどの段階でも構わない。後で説明するように、制震壁の設置場所を決め、その後、他の壁種の選択と設置場所の決定をすると、効率の良い作業ができる。
図2は、コンピュータ11のハードウエアブロック図である。
コンピュータ11の本体制御部には、図のようなハードウエアが組み込まれている。内部バス110には、CPU(中央処理装置)111と、ROM(リードオンリメモリ)112と、RAM(ランダムアクセスメモリ)113と、HDD(ハードディスク)114と、入出力インタフェース115とが接続されている。入出力インタフェース115には、ディスプレイ2とキーボード4とマウス5とプリンタ12が接続されている。以上のハードウェアは一般的によく知られたコンピュータに備えられている。なお、この発明の説明に不要なキャッシュメモリ等の詳細なハードウエアの説明は省略する。
図3はこのシステムで演算処理の対象となる間取り図例の説明図である。図4は、その座標軸の説明図である。
図3が煩雑になるので、座標軸以外は図4に示した。図3の間取り図データ31に、図心54を原点とし壁線に平行なX軸81とY軸82とからなる直交座標を設定する。図4に示すように、X軸81とY軸82の交点が原点80であって、図心54と重なっている。X軸81とY軸82の符号の正負の関係で、間取り図が、第1象限91、第2象限92、第3象限93、第4象限94と4個の領域に区分される。図心54を中心として、これらの領域に、図のように制震壁50をバランスよく配置する。
ここには、図3に示した間取り図の外枠のみを表示する。
上記の制約条件データ33には、制震壁は1階の2階床直下部分のみに設置するという制約条件が含まれている。制震壁を設置しない場所47は、その場所に該当する。その結果、これを除外した設置適合領域36は、図のような多角形になる。ここで、設置適合領域36に外接し、X軸81に平行な2本の直線とY軸82に平行な2本の直線を最外周線52とする。この範囲で、制震壁の探索を行うようにするためである。これらの準備処理を検索手段21と、領域判定手段22が行う。
図の設置適合領域中に、図4で示した間取り図中の壁を設けるべき位置を太線で示した。これらの太線を通過する全ての直線を壁線と呼ぶ。壁線61〜64はX軸81に平行な壁線で、壁線71〜75はY軸82に平行な壁線である。制震壁はこれらの壁線上に必ず配置される。また、制震壁の枚数が少ないときは、制震壁をX軸81やY軸82に近い場所に設置するほど効果的である。従って、制震壁の設置場所探索はX軸81やY軸82に近い壁線から行なわれる。これらの壁線の設定を間取り図解析手段23が行う。
図7〜図10は、探索処理の動作説明図である。
探索手段24は、次のような手順で制震壁を設置する場所の探索をする。まず、図7に示すように、第1番目に第1象限91を探索領域に設定する。ここで、X軸81と最外周線52との交点に最も近いX軸81に平行な壁線を選択する。効果の高い場所から先に探索をするためである。この例では、図7中の矢印に示すように、壁線63が最初に選択された。この壁線63と最外周線52との交点からその壁線63を辿って壁を設けるべき場所を探索する。この例では、壁線63と最外周線52との交点に一番近い場所に設置場所が見つかった。そこに最初の制震壁50を配置した。
図11は、設置すべき制震壁が奇数の場合の探索方法説明図である。
上記の実施例は、設置すべき制震壁が任意の偶数の場合に適する。一方、設置すべき制震壁が奇数の場合には最後の1個の制震壁を図心の近くに設置するとよい。それには、以下の処理を実行する。探索手段24が、建物に設けるべきY軸82方向の制震壁の数32が奇数、例えば3枚と判断したとする。このときには、まず、既に説明した要領で、第2象限と第4象限に1枚ずつ制震壁50を配置した後に、図11に示す処理を実行する。
図12は、制震壁を所定間隔だけ離して設置する処理の説明図である。
上記の処理において、探索をする壁線の近傍に既に配置が決定された制震壁があるときには、制震壁が接近して配置されることになる。制震壁は全体としてバランスよく分散配置されていることが好ましい。この基準に従って制震壁を自動配置するために、次のような処理を実行する。まず、図12に示すように、直前の処理で、第4象限側にある壁線74と最外周線52の交点に隣接して、制震壁50の設置場所が決まったとする。このとき、この制震壁50の周囲のX軸81方向とY軸82方向の一定距離の範囲に、新たな制震壁を設置しない場所48を定めて制約条件を設定する。この制約条件を、図1に示した制約条件データ33に追加する。こうすれば、探索範囲から、図12の一点鎖線で囲まれた制震壁50の周辺領域が除外されることになる。これにより、これまでと全く同様の演算処理を繰り返して何個でも制震壁の配置を自動的に探索できる。
上記のようにして、制震壁を自動的に配置し、その結果をディスプレイ2やプリンタ12を用いて出力して確認することができる。例えば、図13(a)に示すような起動画面55を使用して、間取り図データファイルを選択し、起動ボタンをクリックする。その結果を出力して確認後、設計者は、自動的に決定した制震壁の位置を再調整することができる。その作業の終了後に、探索手段24は、チェック処理を自動的に起動するとよい。例えば、図13(b)に示すように、チェック画面56で、例えば、X軸81方向とY軸82方向の両方について、制震壁の枚数を必要枚数と比較して判定する。自動的に設置場所を探索したときに、例えば、制震壁を配置できる耐力壁が全くみあたらないというケースもある。このときに、このチェック処理で、自動処理の結果の不備が発見される。その対策としては、設計者が間取り図データ中の耐力壁の配置や長さを変更するといった処理をする。これで、再度自動配置処理をさせるとよい。
この図に示す制震壁は耐力壁の基準を満たすものの一例である。図において、上下一対の横架材と左右一対の垂直材により構成した矩形架構95に囲まれるように、左右一対の面状部材96が配置されている。いずれも例えば木材を使用している。面状部材96は矩形架構95に嵌め込まれて固定されている。また、一対の面状部材96の対向側面には所定の隙間97が形成されている。そして、この隙間に制震ゴム98が挟み込まれている。制震ゴム98は一対の面状部材96の対向側面に固定されている。一対の面状部材96の対向側面側には、上下の角部分に切り欠き99がある。この耐力壁は、切り欠き99の部分で矩形架構95のみとなっているから、強い外部応力が加わると切り欠き99の部分に応力が集中するように構成されている。
始めに、ステップS11で、間取り図データ31が、制震壁が設置可能な建物のものかどうかを判断してから処理を開始する。制震壁が設置可能な建物でないときは、エラー表示等をして別処理に移る。制震壁が設置可能な場合には、ステップS12に移行する。ステップS12では、検索手段21、領域判定手段22、間取り図解析手段23が、間取り図データ31や制約条件データ33を読み取って前処理を実行する。これにより、設置適合領域36、壁線データ37、図心データ38、最外周線データ39、設置可能線40を求める。この処理は図16を用いて後で説明する。
まず、検索手段21がステップS31で、間取り図データ31を読み取る。さらに、ステップS32で、制約条件データ33を読み取る。そして、ステップS33で、制震壁を設置しない場所の検索をする。次に、領域判定手段22が、ステップS34で、設置適合領域36の判定をする。そして、ステップS35で、最外周線データ39を生成する。その後、間取り図解析手段23が、ステップS36で図心の検出をする。さらに、ステップS37で、壁線の検出をする。次いで、ステップS38で、設置可能線の生成をする。これで、探索準備が終了する。
探索手段24は、ステップS41で、第1象限を探索範囲に設定する。ステップS42では、X軸に平行な壁線群を選択対象にする。ステップS43では、X軸と最外周線との交点を検出する。ステップS44では、交点に最も近い(未選択)壁線を選択をする。一度選択をして探索をし、制震壁の設置場所が見つからなかったものは除外する。未選択というのは、こうして除外された壁線を除く壁線を指すものとする。ステップS45では、壁線と最外周線との交点を始点にする。
Y軸方向の探索処理では、最初にステップS51で、第2象限を探索範囲に設定する。そして、1枚の制震壁の設置場所が決定すると、ステップS59で、第4象限を探索範囲に設定する。それ以外の処理は、Y軸をY軸に置き換えただけで、図17の処理と変わらない。従って、重複する説明を省略する。なお、上記のフローチャートは、制震壁を偶数設置する場合のもので、制震壁を奇数設置する場合には、例えば、原点に最も近い壁線を選択し、原点を始点にその壁線を辿っていけばよい。この処理は単純なので、フローチャートの図示を省略した。
図19は、探索順の変形例説明図である。
上記のX軸81とY軸82とは、制震壁の設置場所探索動作中に常に不変である必要はない。制震壁50の探索順の例をこの図19に示した。まず始めに、図の(a)に示すように、第1象限、第3象限、第2象限、第4象限という順番に制震壁の設置場所を決めていく。この図では、制震壁50のマーク中に設置場所の決定順を1〜4と表示した。次に、5枚目以降の制震壁の設置場所を探索する。そのとき、X軸81とY軸82の向き、即ち、正負を反転して、第1象限を右上から左下の位置に移動させる。こうすると、図19の(b)に示すように、決定順を5〜8と表示した制震壁の設置場所が決まる。これで、X軸やY軸に平行な制震壁の左右の配置バランスも調整できる。図19(c)の図は、図心上に奇数枚目の制震壁を設置したところを示す。以上の要領で、本発明のシステムでは、自動的に制震壁の設置場所を決定することができる。
図19の(a)に示した例では、第1象限、第3象限、第2象限、第4象限という順番に制震壁の設置場所を決めていった。ここで、図19の(a)において、第2象限、第4象限、第1象限、第3象限という順番に制震壁の設置場所を決めることも考えられる。これでも上記の目的を達成する。しかしこれは、図20の(a)に示すように、X軸の方向をそのままにしてY軸の方向を反転させたとき、第1象限、第3象限、第2象限、第4象限という順番に制震壁の設置場所を決めるのと同等である。また、図19の(a)において、第3象限、第1象限、第4象限、第2象限という順番に制震壁の設置場所を決めることも考えられる。これは、図20の(b)に示すように、Y軸の方向をそのままにしてX軸の方向を反転させたとき、第1象限、第3象限、第2象限、第4象限という順番に制震壁の設置場所を決めるのと同等である。数式中の変数表現の違いがあっても、計算手順は実質同一である。従って、本発明はこれら全ての実施態様を含むものである。
11 コンピュータ
12 プリンタ
20 演算処理装置
21 検索手段
22 領域判定手段
23 間取り図解析手段
24 探索手段
30 記憶装置
31 間取り図データ
32 制震壁の数
33 制約条件データ
34 演算データ
36 設置適合領域
37 壁線データ
38 図心データ
39 最外周線データ
40 設置可能線
41 探索位置情報
45 建物の基礎データ
47 耐震壁を設置しない場所
48 耐震壁を設置しない場所
50 制震壁
52 最外周線
54 図心
55 起動画面
56 チェック画面
61 壁線
62 壁線
63 壁線
71 壁線
72 壁線
73 壁線
74 壁線
75 壁線
80 原点
81 X軸
82 Y軸
91 第1象限
92 第2象限
93 第3象限
94 第4象限
95 矩形架構
96 面状部材
97 隙間
98 制震ゴム
99 切り欠き
Claims (11)
- 建物の間取り図データと、当該建物に設けるべき制震壁の数を示すデータと、前記間取り図データ中で制震壁を設置しない場所を特定する制約条件データとを記憶した記憶装置と、
前記記憶装置に記憶された前記間取り図データ中で、前記制約条件データにより特定された場所を検索する検索手段と、
前記検索手段の検索結果から、前記間取り図データ中の制震壁を設置しない領域を除外した設置適合領域を判定する領域判定手段と、
前記間取り図中の壁を設けるべき位置を通過する直線を壁線と呼ぶとき、その壁線と前記間取り図の図心とを検出する間取り図解析手段と、
前記間取り図中に、必要な数の制震壁を配置する位置を探索して、その位置情報を自動的に取得する探索手段とを備え、
前記間取り図の図心を原点とし、前記壁線に平行なX軸とY軸とからなる直交座標を設定し、前記設置適合領域に外接し前記X軸に平行な2本の直線と前記Y軸に平行な2本の直線を最外周線と呼ぶとき、
前記探索手段は、
第1象限において、前記X軸と前記最外周線との交点に最も近いX軸に平行な壁線を選択し、その壁線と前記最外周線との交点からその壁線を辿って制震壁を設けるべき場所を探索し、該当する場所がみつからないときは、前記X軸と前記最外周線との交点から次に近いX軸に平行な壁線を選択し、再びその壁線と前記最外周線との交点からその壁線を辿って制震壁を設けるべき場所を探索するという動作を繰り返し、探索をして最初に制震壁が収まった場所を第1象限のX軸に平行な制震壁の設置場所に決定し、
第3象限において、前記X軸と前記最外周線との交点に最も近いX軸に平行な壁線を選択し、その壁線と前記最外周線との交点からその壁線を辿って制震壁を設けるべき場所を探索し、該当する場所がみつからないときは、前記X軸と前記最外周線との交点から次に近いX軸に平行な壁線を選択し、再びその壁線と前記最外周線との交点からその壁線を辿って制震壁を設けるべき場所を探索するという動作を繰り返し、探索をして最初に制震壁が収まった場所を第3象限のX軸に平行な制震壁の設置場所に決定し、
第2象限において、前記Y軸と前記最外周線との交点に最も近いY軸に平行な壁線を選択し、その壁線と前記最外周線との交点からその壁線を辿って制震壁を設けるべき場所を探索し、該当する場所がみつからないときは、前記Y軸と前記最外周線との交点から次に近いY軸に平行な壁線を選択し、再びその壁線と前記最外周線との交点からその壁線を辿って制震壁を設けるべき場所を探索するという動作を繰り返し、探索をして最初に制震壁が収まった場所を第2象限のY軸に平行な制震壁の設置場所に決定し、
第4象限において、前記Y軸と前記最外周線との交点に最も近いY軸に平行な壁線を選択し、その壁線と前記最外周線との交点からその壁線を辿って制震壁を設けるべき場所を探索し、該当する場所がみつからないときは、前記Y軸と前記最外周線との交点から次に近いY軸に平行な壁線を選択し、再びその壁線と前記最外周線との交点からその壁線を辿って制震壁を設けるべき場所を探索するという動作を繰り返し、探索をして最初に制震壁が収まった場所を第4象限のY軸に平行な制震壁の設置場所に決定する、
という動作を必要な制震壁の数だけ繰り返して、制震壁を設置するための設置場所データを取得することを特徴とする建物の壁構造設計支援システム。 - 建物に設けるべきX軸方向の制震壁の数が奇数の場合に、前記探索手段は、請求項1に記載の前記偶数の制震壁を設置する位置情報を取得する処理に加えて、
最後に残った制震壁について、前記原点に最も近いX軸に平行な壁線を選択し、前記原点からその壁線を辿って制震壁を設けるべき場所を探索し、該当する場所がみつからないときは、前記原点から次に近いX軸に平行な壁線を選択し、再び原点からその壁線を辿って制震壁を設けるべき場所を探索するという動作を繰り返し、探索をして最初に制震壁が収まった場所を制震壁の設置場所に決定して、制震壁を設置するための設置場所データを取得することを特徴とする建物の壁構造設計支援システム。 - 請求項1または2に記載の建物の壁構造設計支援システムにおいて、
前記探索手段は、
探索をする壁線の近傍に既に配置が決定された制震壁があるときには、当該制震壁から所定距離の範囲に新たな制震壁を設置しないという制約条件を前記制約条件データに追加することを特徴とする建物の壁構造設計支援システム。 - 請求項1乃至3のいずれかに記載の建物の壁構造設計支援システムにおいて、
前記探索手段は、
前記制震壁を設置する位置データを取得した後、
前記全ての壁線上に所定の選択基準に従って選択された壁種とその設置場所を示すその他の壁の設置場所データを取得することを特徴とする建物の壁構造設計支援システム。 - 請求項1乃至4のいずれかに記載の建物の壁構造設計支援システムにおいて、
前記制震壁は、設計上の耐力壁の基準を満たすものであることを特徴とする建物の壁構造設計支援システム。 - 請求項5に記載の建物の壁構造設計支援システムにおいて、
前記記憶装置には、予め設計上の基準を満たす耐力壁を配置するべき場所の位置データが記憶されており、前記探索手段は、前記壁線を辿って、前記耐力壁を設けるべき場所を探索して、最初に制震壁が収まった場所を制震壁の設置場所に決定することを特徴とする建物の壁構造設計支援システム。 - 請求項1乃至6のいずれかに記載の建物の壁構造設計支援システムにおいて、
前記探索手段は、前記制震壁を設置する設置場所データを取得した後に、該当する場所全てに基礎の立ち上がりが設けられるように、前記記憶装置に記憶された基礎データを修正することを特徴とする建物の壁構造設計支援システム。 - 請求項1乃至7のいずれかに記載の建物の壁構造設計支援システムにおいて、
前記制震壁は、上下一対の横架材と左右一対の垂直材とからなる矩形架構の内側に上下方向に隙間を有する面状部材を配置し、前記隙間に挟み込まれた制震ゴムを有することを特徴とする建物の壁構造設計支援システム。 - 請求項1乃至7のいずれかに記載の建物の壁構造設計支援システムにおいて、
前記探索手段は、前記第1象限、第3象限、第2象限、第4象限という探索場所の選択動作に替えて、
前記X軸と前記最外周線との交点に最も近いX軸に平行な壁線を選択し、その壁線と前記最外周線との交点からその壁線を辿って制震壁を設けるべき場所を探索し、該当する場所がみつからないときは、前記X軸と前記最外周線との交点から次に近いX軸に平行な壁線を選択し、再びその壁線と前記最外周線との交点からその壁線を辿って制震壁を設けるべき場所を探索するという探索動作を繰り返し、この探索動作をして最初に制震壁が収まった場所をX軸に平行な一方の制震壁の設置場所に決定し、
その後、前記Y軸を挟んでX座標の符号が反対になる場所において、前記と同様の探索動作をして最初に制震壁が収まった場所をX軸に平行なもう一方の制震壁の設置場所に決定し、
前記Y軸と前記最外周線との交点に最も近いY軸に平行な壁線を選択し、その壁線と前記最外周線との交点からその壁線を辿って制震壁を設けるべき場所を探索し、該当する場所がみつからないときは、前記Y軸と前記最外周線との交点から次に近いY軸に平行な壁線を選択し、再びその壁線と前記最外周線との交点からその壁線を辿って制震壁を設けるべき場所を探索するという探索動作を繰り返し、この探索動作をして最初に制震壁が収まった場所をY軸に平行な一方の制震壁の設置場所に決定し、
その後、前記X軸を挟んでY座標の符号が反対になる場所において、前記と同様の探索動作をして最初に制震壁が収まった場所をY軸に平行なもう一方の制震壁の設置場所に決定する、
という動作を必要な制震壁の数だけ繰り返して、制震壁を設置するための設置場所データを取得することを特徴とする建物の壁構造設計支援システム。 - コンピュータを、請求項1または9に記載のシステムとして機能させる壁構造設計支援プログラム。
- 請求項10に記載の壁構造設計支援プログラムを記録したコンピュータで読み取り可能な記録媒体。
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