JP5141868B2 - 粉体の乾燥方法、及び希土類焼結磁石の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、粉体と液体との混合物を乾燥して、液体を蒸発、除去する方法に関する。
希土類焼結磁石を製造する際、焼結に供する原料粉末を微細化することにより飽和磁束密度及び保磁力等の磁気特性を確保している。ところが、原料粉末の微細化は、成形体の寸法精度、生産性を阻害する要因となる。
原料粉末は磁場中で加圧成形される。この磁場中成形において、静磁場又はパルス磁場を印加して原料粉末の粒子を配向させる。この磁場中成形時、原料粉末が微細であるほどその流動性が悪く、金型への充填性が問題となる。粉末の金型への充填性が劣ると、金型へ粉末を十分に充填することができないために成形体の寸法精度が得られない、あるいは金型への充填自体に時間がかかって生産性を阻害するという問題がある。特に薄肉形状や複雑形状の成形体を得る場合にこの問題が顕著となる。
流動性を向上させるためには、粒子を顆粒化すればよい。しかし、顆粒化のために、例えばPVA(ポリビニルアルコール)といったバインダを用いると、粒子同士の付着力が比較的強くなる。このように付着力の強い顆粒を磁場中成形に供しても、各一次合金粒子を配向させることは容易ではない。したがって、得られる希土類焼結磁石は配向度が低く磁気特性、特に残留磁束密度(Br)が低いものとなる。また、バインダに含まれる炭素が残留すると、磁気特性低下の要因となることから、このバインダを除去する工程が重要となる。
以上の問題に対して、本発明者等は特許文献1〜3において、一次合金粒子に対して第1有機液体と第1有機液体よりも飽和蒸気圧の高い第2有機液体とを添加して混合物を得る工程と、混合物を用いて一次合金粒子から構成された顆粒を作製する工程と、を備える希土類焼結磁石用原料粉体の製造方法を提案した。
この提案は、以下の知見に基づいている。すなわち、バインダにより顆粒を作製する場合、バインダを溶解する溶媒として、また、一次合金粒子を分散する分散媒として、所謂有機溶媒を所定量含むスラリを作製していた。ところが本発明者らの検討によれば、有機溶媒のみで顆粒を作製することができること、さらに有機溶媒のみで作製された顆粒は、一次合金粒子同士の付着力が比較的弱いため、磁場中成形時に印加される磁場により一次合金粒子に分離して、良好な配向状態を実現できる。さらに有機溶媒(以下、有機液体)のみで顆粒を作製する場合、顆粒を作製するための湿分として必要な有機液体の量と、顆粒がその形態を維持するために必要な有機液体の量には差異があり、後者の方が少なくて済む。有機液体は、従来のPVA等のバインダに比べて磁気特性に及ぼす影響は極めて小さいといえるが、顆粒を形成している状態の有機液体の量が希土類焼結磁石の磁気特性に影響を及ぼすことも確認された。そこで、相対的に飽和蒸気圧の低い第1有機液体と相対的に飽和蒸気圧の高い第2有機液体を用いて顆粒を作製することにより、その後、第2有機液体を優先的に顆粒から蒸発させる一方、第1有機液体を顆粒に残留させるようにしたのが、特許文献1〜3の提案である。
特開2006−16644号公報 特開2006−19382号公報 特開2006−128598号公報
特許文献1〜3において、顆粒形成後には、顆粒を乾燥して第2有機液体を蒸発、除去する。第2有機液体の除去について、特許文献1〜3は、減圧雰囲気に顆粒を晒して揮発させることが簡易かつ効果的であると述べている。そして、減圧雰囲気は常温であってもよいが、加熱された減圧雰囲気でもよく、また、減圧されていない加熱雰囲気でもよいことが述べられている。
しかしながら、第2有機液体だけを完全に蒸発、除去することは物理的に不可能である。このため、第2有機液体を過不足無く除去することが重要である。例えば、第2有機液体の除去が不完全であると、顆粒内に所望以上の有機液体が含まれることとなる。有機液体は粒子同士の結合材として作用するため、磁場配向の妨げとなる。結果としてこの顆粒から得られる希土類焼結磁石は磁気的な配向が低く、残留磁束密度が低くなる。逆に、第2有機液体の除去が完全に行われたとしても、乾燥過多になり第1有機液体まで過剰に除去されてしまうと、顆粒を維持するための有機液体が不足してしまう。結果として顆粒から粒子が分離し、その流動性を阻害する。
以上のことから、顆粒作製後の乾燥時に、第2有機液体が系内から過不足なく除去されるタイミングを知り、それに合わせて減圧などの第2有機液体を除去する操作を停止することが重要である。
これまで、乾燥はその時間を特定して行われていた。ところが、後述するように、同じ量の顆粒に対して同じ時間だけ乾燥しても、乾燥後の顆粒に残留する有機液体量にばらつきが生じた。
また、乾燥時間を特定する以外に、乾燥終了のタイミングを、顆粒の重量測定により決めることも考えられる。この重量測定には、第1及び第2の2つの方法がある。
第1の方法としては、定期的に乾燥中の顆粒全量の重量を測定し、この重量変化がなくなった時点で第2有機液体の蒸発が完了したものと判断する方法である。この方法は、乾燥機全体の重量を測定する方法、及び乾燥機から顆粒を取り出して顆粒の重量を測定する方法に区分される。前者の方法では、乾燥機は電源、真空ポンプなどに接続されており、これらを総合した重量を測定してしまうので、全体に占める重量が小さい顆粒のみの重量を精度よく測定することが難しい。後者では顆粒の重量を精度良く測定することは可能であるが、顆粒の重量の測定の度に乾燥機から顆粒を取り出す必要がある。この際、乾燥、つまり減圧又は加熱を停止しなければならず、生産性を低下させる。また、この場合、所定の時間毎に顆粒の重量を測定するが、測定したタイミングが乾燥終了のタイミングと一致するわけではないので、乾燥終了のタイミングを把握することが困難である。さらに、測定のために顆粒を乾燥機から取り出すと、顆粒が酸化する危険が増す、などの問題がある。
また、第2の方法として、乾燥中の顆粒の一部を取り出し(サンプリング)、これに含まれる有機液体量を測定する方法がある。取り出した顆粒を不活性ガス雰囲気下で加熱して有機液体を蒸発させ、この加熱の前後の重量差から有機液体量を把握することができる。この方法も、減圧又は加熱を停止しなければサンプリングすることは難しいし、測定したタイミングが乾燥終了のタイミングと一致するわけではないので、乾燥終了のタイミングを把握することが困難である。また、有機液体量が測定された顆粒は、有機液体のほとんどが除去されてしまうために成形に供することができなくなり、歩留まりを低下させるといった問題がある。
そこで本発明は、粉体と液体との混合物から液体を蒸発、除去する乾燥の際に、乾燥を終了するタイミングをリアルタイムに判断することができ、かつこのタイミングの判断のために粉体を消費することのない、乾燥方法を提供することを目的とする。
本発明者等は、第1有機液体及び第2有機液体を用いて顆粒を作製した後に、顆粒を乾燥する過程で、顆粒の温度が低下することを経験した。この温度低下は、第2有機液体が気体へ相変化する際に生じる蒸発潜熱によるものである。そこで、第1有機液体及び第2有機液体を用いて作製した顆粒を減圧雰囲気下に置いて、その温度変化を測定したところ、当初の温度から温度は一旦低下した後に、低下した温度近傍の温度が維持され、その後に温度が再び上昇して当初の温度まで戻る、という温度変化の履歴を示すことが確認された。このことから、粉体と液体との混合物を乾燥する際に、蒸発潜熱に伴う温度変化を検知することにより、液体が蒸発、除去されたことを把握できることを知見した。
本発明はこの知見に基づくものであり、第1有機液体と、第1有機液体より高い飽和蒸気圧を有する第2有機液体とからなる液体を介して一次粒子同士が付着された顆粒を、第2有機液体を蒸発させる雰囲気に置くステップ(a)と、第2有機液体の蒸発量が予定された量に達したら、第2有機液体を蒸発させる雰囲気を解除するステップ(b)と、を備え、ステップ(a)の間に顆粒の温度を経時的に測定して得られる温度変化の履歴曲線において顆粒の温度変化が安定な期間から温度上昇が急峻な期間に転じる変化点が現れるまでの乾燥開始からの経過時間をt0、乾燥を開始してからの経過時間をt1とすると、t1/t0が1.0〜1.5の範囲で、第2有機液体を蒸発させる雰囲気を解除することを特徴とする粉体の乾燥方法である。
本発明の粉体の乾燥方法は、顆粒の温度変化に基づいて、第2有機液体を蒸発させる雰囲気の解除を行うことを特徴とするが、第2有機液体を蒸発させる雰囲気を解除する具体的なタイミングは、第2有機液体を除去する程度に応じて適宜定めることができる。前述したように、当初の温度から温度は一旦低下した後に、低下した温度近傍の温度が維持される温度変化が安定な期間、その後に温度上昇が急峻となり当初の温度まで戻る、という履歴を示す。つまり、混合物の温度変化を示す履歴曲線には、通常、温度変化の履歴曲線において、温度変化が安定な期間から温度上昇が急峻な期間に転じる変化点が現れる。したがって、この温度変化が安定な期間から温度上昇が急峻な期間に転じる変化点が現れる期間内の任意のタイミングで液体を蒸発させる雰囲気を解除することができる。ただし、変化点を過ぎることは、液体の蒸発がより完全又は完全に近いことを意味する。したがって、液体の蒸発をより完全又は完全に近付けたい場合には、混合物の温度を経時的に測定し、温度変化の履歴曲線に現れる前記変化点に基づいて、雰囲気の解除を行うことが好ましい。この尺度として、乾燥開始から前記変化点が現れるまでの経過時間をt0、乾燥を開始してからの経過時間をt1とすると、t1/t0が1.0〜1.5の範囲で雰囲気の解除を行。なお、上述した温度変化が安定とは、温度が一定の場合に限らず、温度が微減又は微増する場合をも包含する。
本発明による粉体の乾燥方法は、希土類焼結磁石の製造方法に適用することができる。すなわち本願は、所定組成の一次合金粒子に対して第1有機液体と第1有機液体よりも飽和蒸気圧の高い第2有機液体とを添加して混合物を得る工程と、混合物を造粒して、第1有機液体及び第2有機液体を介して一次合金粒子同士が付着された予備顆粒を作製する工程と、予備顆粒から第2有機液体を蒸発させて、第1有機液体を介して一次合金粒子同士が付着された成形用顆粒を得る乾燥工程と、成形用顆粒に磁場を印加しつつ加圧成形して成形体を得る工程と、成形体を焼結する工程と、を備え、乾燥工程は、予備顆粒を、第2有機液体を蒸発させる雰囲気に置きながら、予備顆粒の温度を経時的に測定して得られる温度変化の履歴曲線において、予備顆粒の温度変化が安定な期間から温度上昇が急峻な期間に転じる変化点が現れるまでの乾燥開始からの経過時間をt0、乾燥を開始してからの経過時間をt1とすると、t1/t0が1.0〜1.5の範囲で、第2有機液体を蒸発させる雰囲気を解除することを特徴とする希土類焼結磁石の製造方法をも提供することができる。
この製造方法は、顆粒の流動性及び得られる磁石の残留磁束密度(Br)の両者を備える上で好ましい。
以上説明したように、本発明によれば、粉体と液体との混合物から液体を乾燥して除去する際に、乾燥を終了するタイミングをリアルタイムに判断することができ、かつこのタイミングの判断のために粉体を消費することのない、粉体の乾燥方法を提供することができる。
本発明は、粉体と液体との混合物を、液体を蒸発させる雰囲気に置くステップ(a)と、液体の蒸発量が予定された量に達したら、液体を蒸発させる雰囲気を解除するステップ(b)と、を備え、ステップ(a)の間に混合物の温度を経時的に測定し、混合物の温度変化に基づいて、液体を蒸発させる雰囲気を解除することを特徴とする。以下、本発明をより具体的に説明する。
本発明は、粉体と液体との混合物を乾燥の対象とし、混合物に含まれる液体を蒸発させる。本発明における混合物としては、前述したように、一次合金粒子に対して第1有機液体と第1有機液体よりも飽和蒸気圧の高い第2有機液体とを添加して得られた顆粒を対象とすることができる。ただし、本発明は、蒸発される液体の蒸発潜熱による温度変化を利用するものであるから、顆粒に限らず、他の粉体と液体との混合物についても広く適用できることが明らかである。したがって、一種類の液体で顆粒を作製した場合に、この顆粒を対象として本発明の乾燥方法を適用することができる。
混合物に含まれる液体を蒸発させる雰囲気としては、蒸発させる液体の種類にもよるが、減圧雰囲気、加熱雰囲気を用いるのが一般的である。減圧雰囲気と加熱雰囲気とを組み合わせた雰囲気にすることもできる。
減圧雰囲気を実現するためには、チャンバ内に混合物を置き、チャンバ内を所定の真空度に減圧すればよい。このときの真空度は、蒸発させる液体の飽和蒸気圧を考慮して設定すべきである。液体が第1有機液体と第1有機液体よりも飽和蒸気圧の高い第2有機液体とからなり、第2有機液体の蒸発を目的とする乾燥の場合、チャンバ内を、第2有機液体は蒸発するが第1有機液体は蒸発しない(蒸発しにくい)減圧状態とすればよい。
加熱雰囲気を実現するためには、チャンバ内に混合物を置き、チャンバ内を所定の手段で加熱すればよい。このときの加熱は、一定の熱容量をチャンバ内に加えるように行う必要がある。例えば、所定温度に加熱されたガスをチャンバ内にフローさせればよい。
液体の蒸発量が予定された量に達したら、液体を蒸発させる雰囲気を解除する。
液体の蒸発量が予定された量に達する場合としては、混合物に含まれる液体の全部を蒸発させる場合のみならず、混合物に含まれる液体の一部を蒸発させる場合も包含する。混合物に含まれる液体の全部を蒸発させる場合、適正に液体の全部を蒸発できることは勿論、液体を蒸発させる雰囲気を不必要に継続させる必要はない。本発明によれば、液体を蒸発させる雰囲気を解除、換言すれば乾燥を終了するタイミングを適切に設定することができる。混合物に含まれる液体の一部を蒸発させる場合として、前述した第1有機液体及び第2有機液体のように異種の液体を含む場合に、特定の液体のみを蒸発させる場合がある。また、一種類の液体の中の一部のみを蒸発させる場合にも本発明を適用することができる。
液体を蒸発させる雰囲気を解除するには、当該雰囲気が減圧雰囲気の場合には、減圧のための操作をやめて、当該雰囲気を例えば大気圧に戻せばよい。また、当該雰囲気が加熱雰囲気の場合には、加熱のための操作をやめて、当該雰囲気を例えば常温に戻せばよい。この乾燥終了のタイミングを適切に設定することが本発明の趣旨である。
本発明では、ステップ(a)の間に混合物の温度を経時的に測定する。温度の測定には、公知の温度測定手段(温度計)を用いることができる。例えば、熱電対、放射温度計等を用いることができる。混合物の温度の測定は、典型的には、温度計を混合物に接触させて測定する。例えば、顆粒の温度を測定する場合には、温度計の温度測定部分の上に顆粒を堆積させた状態、又は堆積された顆粒の上に温度計の温度測定部分を置いた状態を維持しながら、顆粒の温度を測定する。ただし、本発明はこの形態に限定されない。つまり、本発明は、温度計を混合物から離間させて温度を測定する場合も、混合物の温度を測定する一形態として包含する。本発明は、混合物の温度変化を検知できればよいのであって、混合物の絶対的な温度を必要とするものでない。一方で、混合物の温度変化は、混合物から離間した領域においても検知することができるからである。
以上のようにして混合物の温度を経時的に測定して得られた温度履歴曲線の例が図1、図2に示されている。図1には顆粒に含まれる液体を蒸発させる雰囲気として減圧雰囲気を採用した場合の温度履歴曲線が示されており、図2には顆粒に含まれる液体を蒸発させる雰囲気として加熱雰囲気を採用した場合の温度履歴曲線が示されている。
図1において、乾燥開始、つまり顆粒を減圧雰囲気に置くと、顆粒の温度が急激に低下する。これは、液体の蒸発潜熱により顆粒が吸熱されたためである。急激な温度低下は、乾燥開始から100分経過後には止まり、以降は温度が微減する期間に移行する。この温度が微減する温度変化の安定な期間が乾燥開始から300分経過すると、顆粒の温度上昇が急峻となる。これは、乾燥開始から300分経過すると液体の蒸発が完了し、蒸発潜熱が発生しなくなったためである。この300分経過時点において、温度履歴曲線上に本発明で言うところの変化点Pが現れる。変化点Pが現れたならば、当該液体の蒸発が完了したものとみなして、減圧を解除することができる。ただし、変化点Pが現れた直後に減圧を解除することなく、減圧状態を所定時間維持させることもできる。例えば、温度変化の履歴曲線に変化点Pが現れるまでの経過時間をt0、乾燥を開始してからの経過時間をt1とすると、t1/t0が1.0〜1.5の範囲で雰囲気の解除を行うことができる。この点については、後述する実施例で具体的に説明する。なお、液体の蒸発が完了した、とは、理想的には当該液体が100%蒸発したことを意味するが、工業的な生産において、粉体との混合物として含まれる液体を100%蒸発させることが困難な場合がある。
図2において、乾燥開始、つまり顆粒を加熱雰囲気に置くと、顆粒の温度が上昇する。この温度上昇は、液体の蒸発潜熱と雰囲気の加熱とが重畳された結果として現れている。液体の蒸発が進み、蒸発潜熱による熱量(吸熱)が大きくなると、顆粒の温度上昇の程度が小さくなる。その結果、乾燥開始から120分程度経過すると、温度が微増する温度変化の安定な期間に移行する。しかし、乾燥開始から450分を経過すると、温度上昇が急峻になり、変化点Pが現れる。これは、乾燥開始から450分経過すると液体の蒸発が完了したことを示している。変化点Pが現れたならば、当該液体の蒸発が完了したものとみなして、加熱を解除することができる。
以上では、変化点Pが現れた後に乾燥を終了することを述べたが、温度変化が安定な期間から温度上昇が急峻な期間に転じる変化点の間の任意のときに乾燥を終了することもできる。そうすることにより、蒸発の対象である液体の一部のみを蒸発させることができる。
<乾燥装置の例>
図3に、以上説明した本発明の粉体の乾燥方法を行うことのできる乾燥装置1の構成例を示している。
乾燥装置1は、内部を気密に保つことのできるチャンバ2を備えている。チャンバ2内には、混合物Mを収容する容器3が置かれている。この混合物Mは、例えば一次粒子と液体とからなる顆粒である。混合物Mの中には、温度計4(例えば、熱電対)が挿入されている。乾燥装置1は、減圧手段5(例えば、真空ポンプ)を備えており、この減圧手段5はチャンバ2の内部を所定の減圧雰囲気にする。温度計4及び減圧手段5は、コントローラ6に接続されている。コントローラ6は、温度計4で測定された混合物Mの温度情報を受信する。また、コントローラ6は、減圧手段5の動作の開始、終了を指示する。コントローラ6は、たとえばパーソナルコンピュータで構成することができる。このパーソナルコンピュータは、以下に示す処理を実行するためのプログラムがインストールされている。
チャンバ2内に混合物Mが収容された容器3が置かれた後に、コントローラ6は減圧手段5に対して動作を開始するように指示する。コントローラ6は同時に、温度計4から混合物Mの温度情報を経時的に受信する。コントローラ6は、受信した温度情報に基づいて、図1に示すような温度履歴曲線を描き、かつそれを監視する。コントローラ6は、例えば変化点Pを確認したならば、減圧手段5に、減圧動作を終了するように指示する。この指示により、混合物Mの乾燥は終了する。
以上では、チャンバ2内を減圧雰囲気にする例を示したが、減圧手段5に代えて加熱された不活性ガスなどのガスをチャンバ2内に吹き込むブロアを用いれば、加熱雰囲気に混合物Mを置くことにより、混合物Mに含まれる液体を蒸発させることができる。この場合もコントローラ6は、温度計4からの温度情報を得て、ブロアの動作を制御すればよい。また、ブロアによる加熱ガスの吹き込みの他に、抵抗加熱装置の上に混合物Mを収容した容器3を載せることによって、加熱雰囲気に混合物Mを置くこともできる。この場合もコントローラ6は、温度計4からの温度情報を得て、抵抗加熱装置の動作を制御すればよい。
<本発明の具体的適用例>
本発明の粉体の乾燥方法は、顆粒を用いて希土類焼結磁石を製造する場合に適用することができる。以下、この希土類焼結磁石の製造方法について説明する。
希土類焼結磁石は、原料合金の粉砕、粉砕により得られた原料粉末の磁場中成形、成形体の焼結という主要な工程を経て製造される。顆粒を用いて希土類焼結磁石を製造する場合、粉砕により得られた原料粉末を造粒して顆粒を作製する。この顆粒作製の際に、前述した第1有機液体及び第2有機液体という、飽和蒸気圧の異なる二種類の有機液体を用いることができる。顆粒形成に供される原料粉末(一次合金粒子)は、平均粒径2.5〜6μm、好ましくは3〜5μmまで粉砕される。この粉砕には、ジェットミルが用いられるのが一般的である。ジェットミルによる微粉砕に先立って、磁場中成形による配向性の向上を目的として、例えばステアリン酸系やオレイン酸系であるステアリン酸亜鉛、例えばステアリン酸系やオレイン酸系であるステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エチレンビスイソステアリン酸アミド、炭化水素であるパラフィン、ナフタレン等を0.01〜0.3wt%程度添加することができる。
以上で得られた微粉砕粉末を造粒して顆粒を作製する。
本発明は有機液体を用いて顆粒を作製する。本発明で用いる有機液体としては、炭化水素系化合物、アルコール系化合物、エーテル系(グリコールエーテル系を含む)化合物、エステル系(グリコールエーテル系を含む)化合物、ケトン系化合物、脂肪酸系化合物、テルペン系化合物の中から選択することができる。なお、有機液体は、一般に有機溶媒と呼ばれている物質を包含するが、本発明では溶媒として機能しないことから有機液体と称する。
本発明では、第1の有機液体と、第1の有機液体よりも飽和蒸気圧の高い第2有機液体を用いて顆粒を作製する。本発明では有機液体を用いるので、微粉砕粉末を酸化させるおそれが小さい。
表1に各種有機液体の飽和蒸気圧を示すが、この中から相対的に飽和蒸気圧の低いものを第1の有機液体として選定し、相対的に飽和蒸気圧の高いものを第2の有機液体として選定することができる。
Figure 0005141868
微粉砕粉末に対する第1の有機液体の添加量は6.0wt%以下(ただし、0を含まず)とすることが好ましい。第1の有機液体がないと液体架橋による顆粒形成が容易でなくなり、一方6.0wt%添加すれば形成された顆粒の形態維持に十分であり、それを超える添加は磁気特性を低下させる要因となる。また、第2の有機液体の添加量は15.0wt%以下(ただし、0を含まず)とすることが好ましい。第2の有機液体がないと顆粒作製に必要な湿分を微粉砕粉末に対して与えることが難しく、15.0wt%を超えると湿分が多くなりすぎて、第2の有機液体除去に工数がかかることになる。
微粉砕粉末と有機液体とを用いて顆粒を作製する方法は、従来公知の造粒法を適用すればよい。また、特許文献3に開示される造粒装置を用いることもできる。
本発明では、以上のようにして得られた顆粒を構成する第2の有機液体を蒸発、除去するが、この乾燥工程に上述した乾燥方法を適用する。減圧雰囲気により乾燥を実施する場合には、減圧雰囲気の圧力を、第1の有機液体の飽和蒸気圧、第2の有機液体の飽和蒸気圧に応じて定める必要がある。図4に、オクタノール、ターピネオール及びエタノールの蒸気圧曲線を示す。図4より、オクタノール又はターピネオールを第1有機液体として用い、エタノールを第2有機液体として用いることができる。この場合、常温付近で減圧雰囲気に顆粒を置くものとすると、その圧力を1000〜2000Paに設定すればよい。
加熱雰囲気に顆粒を晒す場合、温度が高すぎると顆粒を構成する一次合金粒子に酸化が生じ磁気特性の劣化を招くおそれがある。したがって加熱する場合には、加熱温度を20〜80℃とすることが好ましい。
以上のようにして第2の有機液体が蒸発、除去された顆粒に第1の有機液体が残留していないと顆粒の形態を維持することができない。一方、顆粒に残留する第1の有機液体の量が多すぎると磁気特性向上の効果を享受することができない。したがって、顆粒に残留する第1の有機液体の量は6.0wt%以下(ただし、0を含まず)の範囲とすることが好ましい。
以上のようにして造粒された顆粒は磁場中成形に供される。
磁場中成形における成形圧力は0.3〜3ton/cm(30〜300MPa)の範囲で設定される。また、磁場中成形時に印加する磁場は、12〜20kOe(960〜1600kA/m)程度とすればよい。この程度の磁場を印加することにより、顆粒は崩壊して一次合金粒子に分解される。
次いで、成形体を真空中で焼結する。焼結温度は、組成、粉砕方法、平均粒径と粒度分布の違い等、諸条件により調整する必要があるが、1000〜1200℃で1〜10時間程度保持する条件を採用すればよい。焼結後、得られた焼結体に時効処理を施すことができる。
次に本発明が適用される希土類焼結磁石について簡単に説明する。
本発明は、特にR−Fe−B系焼結磁石に適用することが好ましい。
このR−Fe−B系焼結磁石は、希土類元素(R)を25〜37wt%含有する。ここで、本発明におけるRはYを含む概念を有しており、したがってY、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuの1種又は2種以上から選択される。また、本発明が適用されるR−Fe−B系焼結磁石は、ホウ素(B)を0.5〜4.5wt%含有する。さらに、Feの一部をCoで置換することができる。
また、本発明が適用されるR−Fe−B系焼結磁石は、Al、Cu、Zr、Ti、Bi、Sn、Ga、Nb、Ta、Si、V、Ag、Ge等の元素を適宜含有させることができる。
R−Fe−B系焼結磁石に本発明を適用することが好ましいが、他の希土類焼結磁石に本発明を適用することも可能である。例えば、R−Co系焼結磁石に本発明を適用することもできる。
R−Co系焼結磁石は、Rと、Fe、Ni、Mn及びCrから選ばれる1種以上の元素と、Coとを含有する。この場合、好ましくはさらにCu又は、Nb、Zr、Ta、Hf、Ti及びVから選ばれる1種以上の元素を含有し、特に好ましくはCuと、Nb、Zr、Ta、Hf、Ti及びVから選ばれる1種以上の元素とを含有する。
また、本発明は他の希土類焼結磁石への適用を妨げるものではない。
以下、本発明を具体的な実施例に基づいて説明する。
<予備実験>
始めに、同一量の有機液体を含む同一重量の顆粒を減圧下に、所定時間だけ置いたときの、残留する有機液体量を測定した結果を説明する。
ストリップキャスト法により、26.5wt%Nd−5.9wt%Dy−0.25wt%Al−0.5wt%Co−0.07wt%Cu−1.0wt%B−Feの組成を有する原料合金を作製した。
次いで、常温にて原料合金に水素を吸蔵させた後、Ar雰囲気中で600℃×1時間の脱水素を行なう水素粉砕処理を行なった。水素粉砕処理が施された合金に、粉砕性の向上並びに成形時の配向性の向上に寄与する潤滑剤を0.05〜0.1%混合した。潤滑剤の混合は、例えばナウターミキサー等により5〜30分間ほど行なう程度でよい。その後、ジェットミルを用いて平均粒径が5.0μmの微粉砕粉末を得た。
以上の微粉砕粉末を、造粒装置に投入、操作することにより顆粒を作製した。造粒装置は、特許文献3に開示された縦型の造粒装置を用いた。なお、微粉砕粉末とともに、ターピネオールを1.0wt%添加した。
得られた顆粒(8kg)を真空乾燥器内に入れて、6時間、7時間及び9時間経過後のターピネオールの残留量を測定(n=3)した。真空乾燥器内の圧力、温度は、8Torr(1066.56Pa)、40℃に設定した。その結果を表2に示す。
Figure 0005141868
表2に示すように、乾燥時間に対して有機液体の残留量にばらつきがあることが分かる。これは、造粒後の顆粒に含まれる有機液体量にばらつきがあること、乾燥時の蒸発量にばらつきがあることから生じているものと解される。顆粒に含まれる有機液体量のばらつきは、外部温度や造粒中のガス流量などの変動によって造粒中に系内から失われる有機液体量がばらつくことから起こる。また、乾燥時の蒸発量のばらつきは、外部温度が変動すること、真空ポンプの能力を一定に保つことが難しいこと、さらには乾燥時の造粒物の空隙量がばらつくこと、などの外的要因が重なって生じるものと解される。
以上のように、造粒物の乾燥を一定条件(一定時間)で行うと、顆粒から蒸発、除去される有機液体量に過不足が生じるおそれがある。
<減圧乾燥に関する実施例>
ターピネオール(第1有機液体)を0.25wt%、エタノール(第2有機液体)を8.5wt%を添加した以外は、上記の予備実験と同様にして顆粒を作製した。
得られた顆粒(4kg)を真空乾燥器にて乾燥した。真空乾燥器内の圧力(真空度)を8Torr(1066.56Pa)とした。この圧力は、エタノール(第2有機液体)は蒸発しやすいがターピネオール(第1有機液体)は蒸発しにくい減圧雰囲気である。真空乾燥器内に熱電対を引き入れて、顆粒の温度を直接測定した。その結果を図1に示す。
また、以上と同じ条件で顆粒を乾燥しながら、1時間おきに顆粒を10gずつサンプリングし、顆粒に残留している有機液体量を測定した。この有機液体量は、ターピネオール(第1有機液体)及びエタノール(第2有機液体)の合計量である。測定にはハロゲン水分計を用いた。その結果を図1に併せて示す。
図1に示すように、乾燥が始まると顆粒の温度が低下する。これはエタノール(第2有機液体量)の蒸発潜熱によるものである。乾燥開始から300分経過時(変化点P)に残留有機液体量の減少がほぼ飽和し、それと同時に顆粒の温度が上昇し始めている。また、この時の残留有機液体量は0.25wt%であり、造粒時に添加したターピネオール(第1有機液体)の量と等しい。この事から、エタノール(第2有機液体)の蒸発が終了したために、それ以後の蒸発潜熱がなくなり、温度が上昇し始めることが分かった。ターピネオール(第1有機液体)はこの真空度では非常にゆるやかな蒸発しか示さず、300分を過ぎてもエタノール(第2有機液体)と比較して微量しか蒸発していない。
以上の結果より、乾燥を開始してから顆粒の温度を観察することにより、顆粒に含まれる有機液体量(又は、蒸発した有機液体量)を、リアルタイムで特定できることが判った。図1に示した例の場合、温度変化を経時的に観察し、温度変化が安定な期間から温度上昇が急峻な期間に転じる変化点Pを過ぎればエタノール(第2有機液体)の全量が蒸発したものとみなして、以後の乾燥処理を終了することにより、ターピネオール(第1有機液体)の不必要な蒸発を防ぐことができる。しかも、真空乾燥器内に熱電対等の温度計を設置することにより温度の測定を行うことができるため、顆粒をサンプリングする必要がなく、有機液体量の測定のために顆粒を消費することもない。また、本実施例の場合、顆粒の絶対温度ではなく、蒸発潜熱に基づく顆粒の温度変化を検知するものであり、外的要因があったとしても、温度変化が安定な期間及び温度上昇が急峻な期間は普遍的に現れる。したがって、本発明によれば、外的要因に左右されることなく、乾燥処理を終了するタイミングを適切に設定することができる。
次に、上記と同様の顆粒を用い、かつ同条件で乾燥を行いながら顆粒の温度を測定した。このとき、任意の時間に顆粒を300gサンプリングし、この顆粒の安息角、そしてこの顆粒を磁場中成形・焼結して得られた焼結磁石の残留磁束密度(Br)を測定した。顆粒には成形時に金型のキャビティに充填される際に流動性が要求されるとともに、焼結後の磁気特性が高いことが要求される。なお、安息角は、成形時の流動性の指標となるもので、安息角が小さいほど流動性が高くなる。磁場中成形は、15kOe(1200kA/m)の磁場中で1.4t/cm(140MPa)の条件で行った。また、焼結は真空中で1080℃まで昇温し4時間保持する条件とした。得られた焼結体に800℃×1時間と560℃×1時間(ともにAr雰囲気中)の2段時効処理を施した。
表3及び図5に安息角及び残留磁束密度(Br)の測定結果を示す。なお、任意の時間毎に顆粒をサンプリングしたが、表3及び図5にはサンプリングした時間(乾燥開始からの時間:t1)を示すのではなく、乾燥を開始してから変化点Pが現れるまでの時間をt0(本例の場合は300分)とすると、t1/t0で与えられるt(−)に対応させて安息角及び残留磁束密度(Br)を示している。
Figure 0005141868
表3及び図5より、以下のことが分かる。
乾燥時間が長くなると、エタノール(第2有機液体)だけでなくターピネオール(第1有機液体)も減少するために顆粒から微粉が発生し、安息角が大きくなる。一方、磁場中成形時に顆粒が崩れやすくなるため配向磁場に対し一次合金粒子の配向性が良くなり、残留磁束密度(Br)は向上する。
逆に乾燥時間が短いと、ターピネオール(第1有機液体)だけではなくエタノール(第2有機液体)も残留するために、有機液体の総残留量が多くなる。したがって、一次合金粒子同士の付着力が増大するために安息角が減少する。また、この付着力の増大のために配向性が低下し、残留磁束密度(Br)が低下する。
以上の結果から、乾燥が足りないと顆粒に残留する有機液体量が多くなり、低い残留磁束密度(Br)しか得ることができない。したがって、高い磁気特性を得るためには、エタノール(第2有機液体)を十分に蒸発させる必要がある。一方、乾燥が過剰になると顆粒の流動性が低下する。ただし、乾燥が不十分なために残留磁束密度(Br)が低下する程度に比べて、流動性低下の程度は小さい。これらのことを考慮すると、乾燥の終了、つまり減圧雰囲気の解除は、1.0≦t≦1.5の範囲で行うことが好ましく、1.0≦t≦1.2の範囲で行うことがより好ましい。
<加熱乾燥に関する実施例>
ターピネオール(第1有機液体)を0.25wt%、エタノール(第2有機液体)を8.5wt%を添加した以外は、上記の予備実験と同様にして顆粒を作製した。
得られた顆粒(4kg)を加熱乾燥器にて乾燥した。この加熱乾燥器内の圧力は大気圧とし、温度65℃の窒素ガスをフロー(流量:20l/min)して乾燥機内を加熱した。加熱乾燥器内に熱電対を引き入れて、顆粒の温度を直接測定した。その結果を図2に示す。
また、以上と同じ条件で顆粒を乾燥しながら、1時間おきに顆粒を10gずつサンプリングし、顆粒に残留している有機液体量を測定した。この有機液体量は、ターピネオール(第1有機液体)及びエタノール(第2有機液体)の合計量である。測定にはハロゲン水分計を用いた。その結果を図2に併せて示す。
図2に示すように、乾燥が始まると顆粒の温度が上昇する。これは、乾燥開始と同時にエタノールの蒸発に伴う蒸発潜熱が生ずるものの、蒸発潜熱による熱量(吸熱)より、65℃の窒素ガスフローによる熱量が当初は大きいためである。乾燥時間が120分を過ぎると、蒸発潜熱による熱量(吸熱)と窒素ガスフローによる熱量とが拮抗したために、顆粒の温度変化が安定する。さらに、乾燥時間が経ち、450分経過時に、残留有機液体量の減少がほぼ飽和し、それと同時に顆粒の温度上昇が急峻に転じる変化点Pが現れる。この時の残留有機液体量は0.25wt%であり、造粒時に添加したターピネオール(第1有機液体)と等しい。つまり、エタノール(第2有機液体)の蒸発が終了したために、それ以後の蒸発潜熱がなくなり、温度が上昇し始める。ターピネオール(第1有機液体)は、65℃の窒素ガスフローでは非常にゆるやかな蒸発しか示さず、450分を過ぎてもエタノール(第2有機液体)と比較して微量しか蒸発していない。
以上の結果より、加熱による乾燥の場合でも、乾燥を開始してから顆粒の温度を観察することにより、顆粒に含まれる有機液体量(又は、蒸発した有機液体量)を、リアルタイムで特定できることが判った。図2に示した例の場合、温度変化を経時的に観察し、温度変化が安定した後に、温度上昇が急峻に転じる変化点Pが現れた時点で、乾燥対象であるエタノール(第2有機液体)の全量が蒸発したものとみなして、以後の乾燥処理を終了すれば、ターピネオール(第1有機液体)の不必要な蒸発を防ぐことができる。しかも、加熱乾燥器内に熱電対等の温度計を設置することにより温度の測定を行うことができるため、顆粒をサンプリングする必要がなく、有機液体量の測定のために顆粒を消費することもない。
減圧により顆粒を乾燥した場合の、乾燥時間と残留有機液体量、顆粒の温度との関係を示すグラフである。 加熱により顆粒を乾燥した場合の、乾燥時間と残留有機液体量、顆粒の温度との関係を示すグラフである。 本発明の粉体の乾燥方法を実施する乾燥装置の構成を示すブロック図である。 各種有機液体の蒸気圧曲線を示すグラフである。 乾燥開始からの経過時間と安息角、残留磁束密度(Br)の関係を示すグラフである。
符号の説明
1…乾燥装置、2…チャンバ、3…容器、4…温度計、5…減圧手段、6…コントローラ、M…混合物

Claims (6)

  1. 第1有機液体と、前記第1有機液体より高い飽和蒸気圧を有する第2有機液体とからなる液体を介して一次粒子同士が付着された顆粒を、前記第2有機液体を蒸発させる雰囲気に置くステップ(a)と、
    前記第2有機液体の蒸発量が予定された量に達したら、前記第2有機液体を蒸発させる雰囲気を解除するステップ(b)と、を備え、
    ステップ(a)の間に前記顆粒の温度を経時的に測定して得られる温度変化の履歴曲線において、前記顆粒の温度変化が安定な期間から温度上昇が急峻な期間に転じる変化点が現れるまでの乾燥開始からの経過時間をt0、乾燥を開始してからの経過時間をt1とすると、t1/t0が1.0〜1.5の範囲で、前記第2有機液体を蒸発させる雰囲気を解除することを特徴とする粉体の乾燥方法。
  2. t1/t0が1.0〜1.2の範囲で、前記第2有機液体を蒸発させる雰囲気を解除する、
    請求項1に記載の粉体の乾燥方法。
  3. 前記第2有機液体を蒸発させる雰囲気が、前記第2有機液体は蒸発しやすいが前記第1有機液体は蒸発しにくい減圧雰囲気である請求項1又は2に記載の粉体の乾燥方法。
  4. 前記第2有機液体を蒸発させる雰囲気が、加熱された不活性ガスを吹き込むことで形成される加熱雰囲気である請求項1〜3のいずれか一項に記載の粉体の乾燥方法。
  5. 所定組成の一次合金粒子に対して第1有機液体と前記第1有機液体よりも飽和蒸気圧の高い第2有機液体とを添加して混合物を得る工程と、
    前記混合物を造粒して、前記第1有機液体及び前記第2有機液体を介して前記一次合金粒子同士が付着された予備顆粒を作製する工程と、
    前記予備顆粒から前記第2有機液体を蒸発させて、前記第1有機液体を介して前記一次合金粒子同士が付着された成形用顆粒を得る乾燥工程と、
    前記成形用顆粒に磁場を印加しつつ加圧成形して成形体を得る工程と、
    前記成形体を焼結する工程と、を備え、
    前記乾燥工程は、
    前記予備顆粒を、前記第2有機液体を蒸発させる雰囲気に置きながら、前記予備顆粒の温度を経時的に測定して得られる温度変化の履歴曲線において、前記予備顆粒の温度変化が安定な期間から温度上昇が急峻な期間に転じる変化点が現れるまでの乾燥開始からの経過時間をt0、乾燥を開始してからの経過時間をt1とすると、t1/t0が1.0〜1.5の範囲で、前記第2有機液体を蒸発させる雰囲気を解除することを特徴とする希土類焼結磁石の製造方法。
  6. t1/t0が1.0〜1.2の範囲で、前記第2有機液体を蒸発させる雰囲気を解除する、
    請求項に記載の希土類焼結磁石の製造方法。
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