JP5141436B2 - 衝撃吸収式ステアリングコラム装置 - Google Patents

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Description

この発明は、自動車用操舵装置を構成してその内側にステアリングシャフトを回転自在に支持するステアリングコラムのうち、衝突事故の際に衝撃エネルギを吸収しつつ全長を縮める、衝撃吸収式ステアリングコラム装置の改良に関する。
自動車用操舵装置は、例えば図14に示す様に構成して、ステアリングホイール1の操作に基づき、操舵輪(一般的には前輪)に所望の舵角を付与する様にしている。このステアリングホイール1は、ステアリングシャフト2の後端部に支持固定している。又、このステアリングシャフト2は、ステアリングコラム3の内側に、回転自在に支持している。上記ステアリングホイール1の上下位置及び前後位置を調節可能にする為に、上記ステアリングシャフト2及び上記ステアリングコラム3を伸縮可能な構造とすると共に、このステアリングコラム3の前端部に結合固定したハウジング4を車体5に対し、横軸6を中心とする揺動変位を可能に支持している。又、上記ステアリングシャフト2を、アウタチューブ7とインナシャフト8とをスプライン係合させる事により、回転力の伝達を可能としつつ、伸縮を可能にした構造としている。更に、上記ステアリングコラム3を、アウタコラム9とインナコラム10とを伸縮可能に嵌合させた、所謂テレスコピック構造としている。尚、上記アウタチューブ7と上記インナシャフト8との前後位置、並びに、上記アウタコラム9と上記インナコラム10との前後位置は、それぞれ図示の例とは逆であっても良い。
又、上記ステアリングシャフト2の前端部で上記ハウジング4から突出した部分は、第一の自在継手11を介して、中間シャフト12の後端部(上端部)に結合している。更に、この中間シャフト12の前端部(下端部)は、第二の自在継手13を介して、ステアリングギヤユニット14の入力軸に結合している。このステアリングギヤユニット14内には、この入力軸と共に回転するピニオンと、このピニオンと噛合したラックとが設けられており、この入力軸の回転に伴ってこのラックを軸方向に移動させ、左右1対のタイロッド15、15を押し引きする様にしている。尚、上記ハウジング4には電動モータ16を支持固定し、この電動モータ16の出力軸の回転を上記ステアリングシャフト2に、上記ハウジング4に内蔵した減速機を介して伝達可能とし、このステアリングシャフト2に補助動力を付与可能としている(電動式のパワーステアリング装置を構成している)。
上述の様な自動車用操舵装置の使用時、前記ステアリングホイール1の操作に基づいて上記ステアリングシャフト2が回転すると、この回転が、上記第一の自在継手11、上記中間シャフト12、上記第二の自在継手13を介して、上記ステアリングギヤユニット14の入力軸に伝わり、上記ピニオンと上記ラックとの噛合に基づいて、上記両タイロッド15、15が押し引きされる。そして、これら両タイロッド15、15の押し引きに伴って前輪を支持したナックルを揺動変位させ、前輪に舵角を付与する。
前述の様に構成し、上述の様に作用する操舵装置を搭載した自動車が衝突事故を起こした場合、この自動車が他の自動車等に衝突する、所謂一次衝突に続いて、運転者の身体が上記ステアリングホイール1に衝突する、所謂二次衝突が発生する。このうちの一次衝突の際には、車体の前部が潰れて上記ステアリングギヤユニット14が後方に押されるので、このステアリングギヤユニット14の後方への変位に拘らず、上記ステアリングホイール1が後方に変位しない(運転者の身体に向けて突き上げられない)様にする必要がある。この為に従来から、一次衝突時に、上記中間シャフト12を収縮させたり、この中間シャフト12及び上記ステアリングギヤユニット14を、上記第一の自在継手11を中心として後方に揺動変位させる事により、上記ステアリングホイール1の後方への変位を阻止している。
一方、運転者の保護を図るべく、二次衝突に伴って運転者の身体に加わる衝撃を緩和する為には、この二次衝突時に上記ステアリングホイール1を、運転者の身体から加えられた衝撃エネルギを吸収しつつ、前方に変位させる事が好ましい。この為従来から、例えば特許文献1〜8に記載されている様に、各種構造の衝撃吸収式ステアリングコラム装置が提案され、且つ、広く実施されている。
これら各特許文献のうちの特許文献1〜2には、金属製の板材(特許文献1の場合)或は線材(特許文献2の場合)を曲げ形成して成るエネルギ吸収部材を車体とステアリングコラムとの間に掛け渡し、二次衝突時には、このエネルギ吸収部材を塑性変形させつつこのステアリングコラムを前方に変位させる構造が記載されている。この様な従来構造のうち、特許文献1に記載された構造の場合、素材である金属板からエネルギ吸収部材を造る際の材料の歩留が悪いだけでなく、このエネルギ吸収部材の組み付け作業が面倒である為、コストが嵩む。又、特許文献2に記載された構造の場合には、材料の歩留確保の面からは優れているが、組み付け作業の面倒は依然として残る。更に、二次衝突時に於ける運転者保護の充実を図るべく、二次衝突の進行に伴って吸収する衝撃エネルギを次第に大きくする為のチューニングが難しい。
又、特許文献3〜4には、二次衝突時にステアリングホイールと共に前方に変位する部分に前後方向に長い長孔を形成すると共にこの長孔にボルトを挿通し、二次衝突時にこの長孔を拡幅しつつ、この長孔に沿ってこのボルトを変位させる構造が記載されている。この様な特許文献3〜4に記載された従来構造の場合には、上記長孔を形成した部材の剛性確保と小型・軽量化とを両立させにくい。
又、特許文献5〜7には、二次衝突時に衝撃エネルギを吸収する特性を変える構造が記載されているが、何れも複雑で、コストが嵩む事が避けられない。
更に、特許文献8には、図15〜16に示す様に、アウタコラム9aの一端部にインナコラム10aの一端部を、合成樹脂製のスリーブ17を介して内嵌し、このスリーブ17のうちでこのインナコラム10aから外れた部分の内周面に、それぞれが軸方向に長い複数本のリブ18、18を形成した構造が記載されている。この様な特許文献8に記載された従来構造の場合、二次衝突時には上記インナコラム10aが上記アウタコラム9a内に、上記各リブ18、18を塑性変形させ(押し潰し)つつ押し込まれる。この様な特許文献8に記載された従来構造の場合には、上記各リブ18、18を安定した状態で塑性変形させる事が難しく、二次衝突時に於ける衝撃エネルギの吸収性能を安定させる事が難しいものと考えられる。
実公平8−2026号公報 特許第3409572号公報 実願昭47−130653号(実開昭49−85726号)のマイクロフィルム 実願昭58−43046号(実開昭59−147673号)のマイクロフィルム 英国特許出願公開2350328号公報 欧州特許出願公開1555188号公報 特開2006−36042号公報 特開2004−249764号公報
本発明は、上述の様な事情に鑑み、小型・軽量に構成でき、しかも安定したエネルギ吸収性能を得られる構造を低コストで実現すべく発明したものである。
本発明の衝撃吸収式ステアリングコラム装置は、従来から知られている衝撃吸収式ステアリングコラム装置と同様に、それぞれが円筒状であるアウタコラムとインナコラムとを、このアウタコラムの一端部内径側にこのインナコラムの一端部を内嵌した状態に組み合わせて成る。そして、全長を縮める方向の衝撃荷重が加わった場合に、上記アウタコラムに対する上記インナコラムの挿入長さを、衝撃エネルギを吸収しつつ増大させる。
特に、本発明の衝撃吸収式ステアリングコラム装置に於いては、上記アウタコラムの軸方向他端寄り部分のうちで、この部分の厚さ方向に関して内径寄り部分に、上記インナコラムの外周面よりも径方向内方に突出した突条部を含む小径部を形成している。
そして、上記インナコラムが上記衝撃荷重により上記アウタコラム内に押し込まれる過程で、このインナコラムの一端縁により上記突条部に剪断応力を加えつつこの突条部を削り取る。
又、本発明の衝撃吸収式ステアリングコラム装置は、上記インナコラムを、炭素鋼板等の金属製とする。又、上記アウタコラムのうちの少なくとも上記小径部を合成樹脂製とする。そして、この小径部を、円周方向に間欠的に存在してそれぞれが軸方向に長い、複数本の突条部により構成する。
更に、本発明の衝撃吸収式ステアリングコラム装置は、上記アウタコラムの円周方向に関する、上記各突条部の幅寸法を、インナコラムの一端縁寄りの先端部で最も小さく、この一端縁から離れる基端部に向かうに従って漸次大きくする。
又、この様な本発明を実施する場合に好ましくは、請求項2に記載した発明の様に、上記各突条部の基端部同士の間に、それぞれの先端位置がこれら各突条部の先端位置よりも、インナコラムの一端縁から離れた部分に存在する、第二の突条部を設ける。そして、このインナコラムとアウタコラムとの軸方向変位の終段で、このインナコラムの一端縁により、上記各突条部に加えて上記各第二の突条部も削り取る。
又、上述の様な請求項1〜2に記載した発明を実施する場合に好ましくは、請求項3に記載した発明の様に、上記インナコラムの一端縁寄り部分で円周方向に関する位相が各突条部の頂部と一致する部分に、このインナコラムの内周面側が軸方向に対し傾斜して径方向に関する厚さ寸法がこの一端縁に向かうに従って小さくなる、くさび状部を形成する。
更に、この様な請求項3に記載した発明を実施する場合に好ましくは、請求項4に記載した発明の様に、上記インナコラムの一端縁を、各くさび状部に対応する部分でこれら各くさび状部に対応しない部分よりも軸方向に突出させる事により、上記一端縁の円周方向に関する形状を波形とする。
上述の様に構成する本発明の衝撃吸収式ステアリングコラム装置は、次の様に機能して、二次衝突時に運転者の身体からステアリングホイールに加わった衝撃のエネルギを吸収しつつ、このステアリングホイールが前方に変位する事を許容する。
先ず、二次衝突に伴って、アウタコラムとインナコラムとのうちの一方のコラムで、上記ステアリングホイールをその後端部に固定したステアリングシャフトを回転自在に支持したアッパコラムが、前方に変位する(運転者の身体により押される)。すると、上記アウタコラムに対する上記インナコラムの挿入量が増大し、このインナコラムの一端縁が、このアウタコラムの軸方向他端寄り部分に設けた小径部を構成する突条部に突き当たる。この状態から、更に上記インナコラムが上記アウタコラム内に押し込まれると、このインナコラムの一端縁が上記突条部を、剪断応力を加えつつ削り取る。そして、この突条部を削り取る為に必要なエネルギ分、二次衝突に伴って上記アッパコラムに加えられた衝撃エネルギを吸収する。この結果、上記ステアリングホイールに衝突した運転者の身体に加わる衝撃を緩和できる。
前述の様に構成し、上述の様に機能する本発明によれば、小型・軽量に構成でき、しかも安定したエネルギ吸収性能を得られる衝撃吸収式ステアリングコラム装置を低コストで実現できる。
先ず、衝撃エネルギを吸収する為の突条部は、合成樹脂を射出成形する事により簡単に構成でき、しかも、上記突条部を含む部材は、上記アウタコラム自身、又は、このアウタコラムに内嵌できるだけの小さなもので足りる。この為、小型・軽量化と低コスト化とを図れる。
又、上記インナコラムの一端縁により上記突条部を、剪断応力を加えつつ削り取る事は安定して行える。この為、安定したエネルギ吸収性能を得られる。
又、上記インナコラムの一端縁により、複数本の突条部を安定して削り取る事ができて、より安定したエネルギ吸収性能を得られる。
更に、上記各突条部を削り取る事により吸収するエネルギを、二次衝突の進行に伴って漸次増大させる事ができて、運転者の保護をより充実させる事ができる。
又、請求項2に記載した発明によれば、二次衝突に伴って衝撃吸収式ステアリングコラムの全長が縮まる最終段階(縮み切る寸前の状態)で、吸収する衝撃エネルギを急増させる事ができる。この結果、上記衝撃吸収式ステアリングコラムの全長が縮み切る際に、収縮の為の荷重が極大値に上昇する際に要する時間を多少長くする(瞬間的に上昇する事を防止する)ダンパ効果を発揮させて、運転者の保護をより一層充実させる事ができる。
更に、請求項3〜4に記載した発明によれば、インナコラムの一端縁を上記各突条部に食い込ませ易くできて、上記エネルギ吸収性能をより安定させられる。
[実施の形態の第1例]
図1〜3は、請求項1、3、4に対応する、本発明の実施の形態の第1例を示している。本例の衝撃吸収式ステアリングコラム装置を構成するステアリングコラム3aは、アウタコラム9bとインナコラム10bとを、全長を伸縮可能に、テレスコープ状に組み合わせて成る。本例の場合、このうちのアウタコラム9bをステアリングホイール側のアッパコラムとし、インナコラム10bをこのステアリングホイールから遠い側のロアコラムとする場合に就いて示している。尚、本例の場合には、上記アウタコラム9bの一端部はその前端部(図1の左端部)となり、上記インナコラム10bの一端部はその後端部(図1の右端部)となる。
上記アウタコラム9bは、鋼板、アルミニウム合金板等の金属板製の保持筒19の内周面を、合成樹脂製のスリーブ20により被覆して成る。このうちの保持筒19は、後端部に、前方から後方に向けて順番に、後方に向かう程直径が漸減する絞り部21と、この絞り部21の小径側端部から連続する円筒部22と、この円筒部22の後端縁から径方向内方に折れ曲がった、内向フランジ状の鍔部23とを設けている。そして、上記円筒部22の内径側にステアリングシャフト2の中間部後端寄り部分を、単列深溝型玉軸受の如く、ラジアル荷重及びスラスト荷重を支承可能な転がり軸受24により、回転のみ自在に支持している。上記ステアリングシャフト2は、前述の図14に示した従来構造と同様に伸縮可能な構造で、上記転がり軸受24により支持された部分に対し軸方向変位可能な前端部は、上記インナコラム10bの前端部に、回転自在に支持されている。
又、上記スリーブ20は、上記アウタコラム9bの内周面のうち、上記円筒部22と上記鍔部23とを除く、ほぼ全体を覆う状態で、このアウタコラム9bの内径側に射出成形(インナモールド成形)されている。上記転がり軸受24は、上記スリーブ20の射出成形に先立って、上記円筒部22に内嵌支持している。上記スリーブ20の前端部(図1の左端部)乃至中間部は、内径が一定である大径円筒部25とし、後端部(図1の右端部)は、内周面に複数本の突条部26、26を形成している。これら各突条部26、26の内接円の直径は上記大径円筒部25の内径よりも小さく、従って、これら各突条部26、26を形成した部分を小径部27としている。これら各突条部26、26は、円周方向に間欠的に且つ等間隔で存在しており、それぞれが軸方向に長い。又、上記アウタコラム9bの円周方向に関する、上記各突条部26、26の幅寸法は、上記インナコラム10bの一端縁寄りで最も小さく、この一端縁から離れる基端部に向かうに従って漸次大きくなる。この為に本例の場合には、上記各突条部26、26を、上記アウタコラム9bの後端側を底辺とした等脚台形状としている。
尚、本例の構造は、ステアリングホイールの前後位置を調節可能とする、テレスコピックステアリングコラム装置を構成する事を意図している為、上記アウタコラム9b及び上記大径円筒部25の軸方向長さを十分に確保している。二次衝突時の衝撃吸収のみを意図するのであれば、上記アウタコラム9b及び上記大径円筒部25の軸方向長さは、図示の場合よりも短くても足りる。
一方、上記インナコラム10bの一端縁寄り部分に、上記各突条部26、26と同数のくさび状部28、28を、円周方向に関して等間隔で形成している。これら各くさび状部28、28は、上記インナコラム10bの内周面側を軸方向に対し傾斜させる(外周面側は外径が変化しない円筒面のままとする)事により、径方向に関する厚さ寸法を、上記インナコラム10bの一端縁に向かうに従って小さくしている。上記各くさび状部28、28の円周方向に関する幅は、上記各突条部26、26の先端部(頂部)の幅よりも大きいが、基端部(底部)の幅よりも小さい。又、上記各くさび状部28、28の円周方向両端部と、これら各くさび状部28、28同士の間部分29、29とは、図3の(B)に示す様に、傾斜面30、30によりほぼ滑らかに連続させている。即ち、これら各くさび状部28、28に対応して上記インナコラム10bの一端部内周面に存在する凹部の幅寸法は、径方向内側程大きくなる。更に、上記インナコラム10bの一端縁を、上記各くさび状部28、28に対応する部分で、これら各くさび状部28、28に対応しない上記各間部分29、29よりも軸方向に突出させる事により、上記一端縁の円周方向に関する形状を、図3の(A)に示す様に、波形としている。
上述の様なインナコラム10bと、前述の様な上記アウタコラム9bとは、図1に示す様に、このインナコラム10bの一端部を、このアウタコラム9bの一端部で前記スリーブ20の大径円筒部25に内嵌した状態で組み立てる。この状態で、上記各くさび状部28、28の円周方向に関する位相と、前記各突条部26、26の円周方向に関する位相とを一致させる。本例の構造では、上記インナコラム10bの一端部が上記大径円筒部25の内径側で、必要な曲げ剛性を確保しつつ摺動できる範囲で、ステアリングホイールの前後位置を調節可能にできる。
二次衝突時には、上記ステアリングホイールから、前記ステアリングシャフト2、前記転がり軸受24を介して、上記アウタコラム9bに衝撃荷重が加わり、このアウタコラム9bが前方に変位する。この結果、このアウタコラム9bに対する上記インナコラム10bの挿入量が増大し、このインナコラム10bの一端縁のうちで上記各くさび状部28、28に整合する部分が、上記アウタコラム9bを構成するスリーブ20のうちで、前記小径部27を構成する上記各突条部26、26の先端部に突き当たる。この状態から、更に上記インナコラム10bが上記アウタコラム9b内に押し込まれると、このインナコラム10bの一端縁部に設けた上記各くさび状部28、28が上記各突条部26、26を、剪断応力を加えつつ削り取る。そして、これら各突条部26、26を削り取る為に必要なエネルギ分、二次衝突に伴って上記アウタコラム9bに加えられた衝撃エネルギを吸収する。この結果、上記ステアリングホイールに衝突した運転者の身体に加わる衝撃を緩和できる。
本例の場合には、上記インナコラム10bの一端縁で上記各くさび状部28、28に対応する部分を凸円弧としているので、これら各くさび状部28、28が上記各突条部26、26の先端部に食い込み易い。この為、これら各突条部26、26を削り取り始める瞬間に、上記ステアリングホイールに衝突した運転者の身体に大きな衝撃が加わる事がない。更に、上記各突条部26、26の幅は、先端部から基端部に向かうに従って漸増する為、上記各くさび状部28、28が削り取る量、延ては衝撃エネルギの吸収量も、二次衝突の進行に伴って漸増する。この為、上記ステアリングホイールに衝突した運転者の身体に加わる衝撃を効果的に緩和できる。
尚、本例の場合には、上記各くさび状部28、28の幅寸法を前述の様に規制しているので、二次衝突の途中から削り取った合成樹脂を、前記各傾斜面30、30により内径側に押し出す。但し、上記各突条部26、26や上記各くさび状部28、28の形状及び幅寸法等は、必要な性能に応じて、任意に設定できる。言い換えれば、これら各部26、28の形状や幅寸法等により、二次衝突時に衝撃エネルギを吸収する性能を任意に設定できる。更には、上記各くさび状部28、28の先端縁の厚さや傾斜角度を変える(組立作業時に作業員の手指等を傷付けない程度の鋭利にする)事によっても、上記性能を調節できる。何れにしても本例の構造によれば、前述した様な理由により、小型・軽量に構成でき、しかも安定したエネルギ吸収性能を得られる衝撃吸収式ステアリングコラム装置を低コストで実現できる。
[実施の形態の第2例]
図4は、請求項1〜2に対応する、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例の場合には、各突条部26、26の基端部同士の間に、それぞれ第二の突条部31、31を設けている。これら各第二の突条部31、31の軸方向長さは上記各突条部26、26の軸方向長さよりも短く、従って、これら各第二の突条部31、31の先端位置は、これら各突条部26、26の先端位置よりも、インナコラム10bの一端縁から離れた部分に存在する。そして、二次衝突時には、このインナコラム10bと、保持筒19及びスリーブ20aから成るアウタコラム9bとの軸方向変位の終段で、上記インナコラム10bの一端縁により、上記各突条部26、26の基端部に加えて上記各第二の突条部31、31も削り取る様に構成している。
この様な本例の構造によれば、二次衝突に伴って、上記アウタコラム9bと上記インナコラム10bとにより構成される衝撃吸収式ステアリングコラムの全長が縮まる最終段階(縮み切る寸前の状態)で、吸収する衝撃エネルギを急増させる事ができる。即ち、上述した第1例の構造に加えて上記各第二の突条部31、31を加えた分、上記最終段階で上記インナコラム10bの一端縁(後端縁)が削り取る合成樹脂の量を多くできる。この結果、上記衝撃吸収式ステアリングコラムの全長が縮み切る際に、収縮の為の荷重が極大値に上昇する際に要する時間を多少長くする(瞬間的に上昇する事を防止する)ダンパ効果を発揮させて、運転者の保護をより一層充実させる事ができる。
尚、本例の構造を実施する場合に、上記インナコラム10bの一端縁の形状は、前述した第1例の場合と同様であっても良いし、変えても良い。
[実施の形態の第3例]
図5〜8は、請求項1、3、4に対応する、本発明の実施の形態の第3例を示している。本例の衝撃吸収式ステアリングコラム装置に、ステアリングホイールの上下位置を調節する為のチルト機構と、前後位置を調節する為のテレスコピック機構とを組み付けた場合に就いて示している。チルト機構及びテレスコピック機構の基本構造は、前述の図14に示した構造を含め、従来から広く知られている構造と同様であるから、以下の説明は、本例の特徴部分を中心に説明する。
本例の場合には、アウタコラム9cを構成する保持筒19aの前端部を下方に膨出させて、当該部分に、このアウタコラム9cの軸方向に長い長孔32を形成している。一方、車体側に固定の支持ブラケット37に、上下方向に長い長孔38を形成している。そして、これら各長孔32、38に、上記ステアリングホイールの上下位置及び前後位置を調節可能としたり、これら両位置を調節後の位置に固定する為の、調節ボルト33を挿通している。又、上記長孔32を形成した膨出部分に、前後方向のスリット34aと円周方向のスリット34bとを形成して、この部分に於ける上記アウタコラム9cの内径を弾性的に拡縮可能としている。その他の部分の構成及び作用は、前述した実施の形態の第1例と同様であるから、重複する図示並びに説明は省略する。
[実施の形態の第4例]
図9〜11は、請求項1〜2に対応する、本発明の実施の形態の第4例を示している。本例の場合には、アウタコラム9dを、アルミニウム合金をダイキャスト成形して成る保持筒19bと、合成樹脂製で、この保持筒19bに内嵌された、欠円筒状のスリーブ20bとから構成している。このスリーブ20bを内嵌支持すべく、上記保持筒19bの中間部後端寄り部分に、軸方向両側部分よりも内径が大きくなった、保持用大径部35を形成している。上記スリーブ20bとしては、図10の(A)に示す様な複数の突条部26、26のみを形成したもの、或いは図10の(B)に示す様な、複数の突条部26、26に加えて複数の第二の突条部31、31を形成したものを使用する。何れの場合でも、図11の(B)に示す様に、円周方向1個所を切り欠いて、外径を弾性的に拡縮可能とする。
上述の様なスリーブ20bは、この切り欠き部を利用して外径を弾性的に縮めた状態で上記保持筒部19b内に押し込み、上記保持用大径部35部分で外径を弾性的に復元させる。この結果、上述の第3例と同様に、チルト機構及びテレスコピック機構を備えた衝撃吸収式ステアリングコラム装置を実現できる。
アウタコラム9dを構成する保持筒19bを、金属板製のものからアルミニウム合金のダイキャスト成形品とし、それに合わせて上記スリーブ20bの組み付け構造を変えた点以外は、前述した実施の形態の第3例と同様であるから、重複する説明は省略する。
[実施の形態の第5例]
図12も、請求項1〜2に対応する、本発明の実施の形態の第5例を示している。本例の場合には、アルミニウム合金をダイキャスト成形して成る保持筒19cの後端寄り部分に合成樹脂製のスリーブ20cを、この保持筒19cの後端開口部から挿入している。そして、挿入後、この保持筒19cの後端部に転がり軸受24の外輪を内嵌し、更に止め輪36によりこの外輪の抜け止めを図る事で、上記スリーブ20cを、上記保持筒19cの後端よりの所定部分に支持固定している。このスリーブ20cには、図11の(B)に示す様な切り欠きを形成する必要はなく、全周に亙り連続した円筒状とする。
上記保持筒19cに対する上記スリーブ20cの支持構造が異なる点以外は、上述した実施の形態の第4例と同様であるから、重複する説明は省略する。
[実施の形態の第6例]
図13も、請求項1〜2に対応する、本発明の実施の形態の第6例を示している。本例の場合には、アウタコラム9eを前側に設けるロアコラムとし、インナコラム10cを後側に設けるアッパコラムとしている。本例の場合には、上記アウタコラム9eを、アルミニウム合金をダイキャスト成形して成る保持筒19dと、合成樹脂製のスリーブ20dとから構成している。これら保持筒19dとスリーブ20dとの組み合わせ構造は、上述した実施の形態の第5例と同様である。但し、このスリーブ20dの内周面に形成した各突条26、26の前後方向は、先に説明した第1〜5例の場合とは逆に(これら各突条26、26の先端を後方に向けて設置)している。
前後位置が逆になった点以外は、上述した実施の形態の第5例と同様であるから、重複する説明は省略する。
図示は省略するが、アウタコラム全体を合成樹脂を射出成形する事により造り、このアウタコラムの一部内周面に複数の突条部(更に必要に応じて第二の突条部)を形成する事もできる。又、本発明は、手動式のチルト機構及びテレスコピック機構を備えた構造に限らず、電動式のチルト機構及びテレスコピック機構を備えた構造にも、手動式、電動式を問わずにチルト機構とテレスコピック機構とのうちの一方のみを備えた構造にも、更には、何れの機構も備えてない構造にも適用できる。更には、例えば前述の図14に示した様な、電動式パワーステアリング装置を備えた構造にも適用できる。
本発明の実施の形態の第1例を示す要部断面図。 図1のイ−イ断面図。 インナコラムの端部断面図(A)及び端面図(B)。 本発明の実施の形態の第2例を示す、図1の右端部に相当する図。 同第3例を示す、操舵装置全体の略側面図。 衝撃吸収式ステアリングコラム装置を取り出して示す縦断側面図。 同じく略側面図。 図7のロ矢視図。 本発明の実施の形態の第4例を示す要部縦断側面図。 スリーブの形状の2例を示す断面図。 アウタコラムを構成する保持筒の縦断側面図(A)及びスリーブの端面図(B)。 本発明の実施の形態の第5例を示す要部縦断側面図。 同第6例を示す要部縦断側面図。 従来から知られている自動車用操舵装置の1例を示す部分縦断側面図。 従来から知られている衝撃吸収式ステアリングコラム装置の1例を示す要部断面図。 スリーブのみを取り出して示す、図15のハ−ハ断面図。
符号の説明
1 ステアリングホイール
2 ステアリングシャフト
3、3a ステアリングコラム
4 ハウジング
5 車体
6 横軸
7 アウタチューブ
8 インナシャフト
9、9a、9b、9c、9d、9e アウタコラム
10、10a、10b、10c インナコラム
11 第一の自在継手
12 中間シャフト
13 第二の自在継手
14 ステアリングギヤユニット
15 タイロッド
16 電動モータ
17 スリーブ
18 リブ
19、19a、19b、19c、19d 保持筒
20、20a、20b、20c、20d スリーブ
21 絞り部
22 円筒部
23 鍔部
24 転がり軸受
25 大径円筒部
26 突条部
27 小径部
28 くさび状部
29 間部分
30 傾斜面
31 第二の突条部
32 長孔
33 調節ボルト
34a、34b スリット
35 保持用大径部
36 止め輪
37 支持ブラケット
38 長孔

Claims (4)

  1. それぞれが円筒状であるアウタコラムとインナコラムとを、このアウタコラムの一端部内径側にこのインナコラムの一端部を内嵌した状態に組み合わせて成り、全長を縮める方向の衝撃荷重が加わった場合に、上記アウタコラムに対する上記インナコラムの挿入長さを、衝撃エネルギを吸収しつつ増大させる衝撃吸収式ステアリングコラム装置に於いて、上記インナコラムが金属製であり、上記アウタコラムの軸方向他端寄り部分のうちで、この部分の厚さ方向に関して内径寄り部分に、上記インナコラムの外周面よりも径方向内方に突出した突条部を含む小径部が形成されており、上記アウタコラムのうちで、少なくともこの小径部は合成樹脂製であり、この小径部が、円周方向に間欠的に存在してそれぞれが軸方向に長い、複数本の突条部により構成されており、上記アウタコラムの円周方向に関するこれら各突条部の幅寸法が、上記インナコラムの一端縁寄りの先端部で最も小さく、この一端縁から離れる基端部に向かうに従って漸次大きくなっており、上記インナコラムが上記衝撃荷重により上記アウタコラム内に押し込まれる過程で、このインナコラムの一端縁により上記突条部に剪断応力を加えつつこの突条部を削り取る事を特徴とする衝撃吸収式ステアリングコラム装置。
  2. 各突条部の基端部同士の間に、それぞれの先端位置がこれら各突条部の先端位置よりも、インナコラムの一端縁から離れた部分に存在する、第二の突条部を設け、このインナコラムとアウタコラムとの軸方向変位の終段で、このインナコラムの一端縁により、上記各突条部に加えて上記各第二の突条部も削り取る、請求項1に記載した衝撃吸収式ステアリングコラム装置。
  3. インナコラムの一端縁寄り部分で円周方向に関する位相が各突条部の頂部と一致する部分に、このインナコラムの内周面側が軸方向に対し傾斜して径方向に関する厚さ寸法がこの一端縁に向かうに従って小さくなるくさび状部を形成した、請求項1〜2のうちの何れか1項に記載した衝撃吸収式ステアリングコラム装置。
  4. インナコラムの一端縁を、各くさび状部に対応する部分でこれら各くさび状部に対応しない部分よりも軸方向に突出させる事により、上記一端縁の円周方向に関する形状を波形とした、請求項3に記載した衝撃吸収式ステアリングコラム装置。
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