以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
本実施の形態は、傾斜させた試料容器を撮像して得られた撮像画像に対して画像処理を行って撮像画像中の液面の高さを検出し、その液面の高さより上方の領域の画像に基づいて、試料容器内の血液試料の凝固判定を行い、また、直立状態の試料容器を撮像して得られた撮像画像に対して画像処理を行って試料容器中の血液量を検出し、これらの凝固判定結果及び血液量検出結果に基づいて、試料容器の搬送制御及び分析装置の吸引動作の制御を行う血液試料分析システムである。
[血液試料分析システムの構成]
図1は、本実施の形態に係る血液試料分析システムの全体構成を示す概略平面図である。図1に示すように、血液試料分析システム1は、試料投入装置2と、試料搬送装置3と、試料収容装置4と、血球分析装置5と、塗抹標本作製装置6と、システム制御装置7とを備えている。
<試料投入装置2の構成>
試料投入装置2は、2つの試料送出ユニット21a,21bと、当該2つの試料送出ユニット21a,21bの間に配置された試料チェックユニット22とを備えている。当該試料投入装置2は、サンプルラックに収納された複数の試料容器を載置することができ、そのサンプルラックに収容された試料容器中の血液試料の凝固判定及び血液量検出を行い、また、試料容器に貼付されたバーコードラベルのバーコードを読み取って検体IDを取得し、検体ID、凝固判定結果、及び血液量のデータをシステム制御装置7に送信する。
図2は、試料容器の外観を示す斜視図であり、図3は、サンプルラックの外観を示す斜視図である。図2に示すように、試料容器8は、管状をなしており、上端が開口している。内部には患者から採取された血液試料が収容され、上端の開口は蓋部8aにより密封されている。試料容器8は、透光性を有するガラス又は合成樹脂により構成されており、内部の血液試料が視認可能となっている。また、試料容器8の側面には、バーコードラベル8bが貼付されている。このバーコードラベル8bには、検体IDを示すバーコードが印刷されている。サンプルラック9は、10本の試料容器8を並べて保持することが可能である。サンプルラック9では、各試料容器8が垂直状態(立位状態)で保持される。また、サンプルラック9の側面には、バーコードラベル9aが貼付されている。このバーコードラベル9aには、ラックIDを示すバーコードが印刷されている。
図4は、試料送出ユニット21aの外観構成を示す斜視図である。図4に示すように、試料送出ユニット21aは、試料容器8を収容されたサンプルラック9を載置するための凹状のラック載置部211を有している。このラック載置部211は、長方形状をなしており、複数のサンプルラック9を同時に載置することが可能である。なお、このときサンプルラック9は、横方向に試料容器8が並ぶように載置される。ラック載置部211には、図示しない係合部が設けられており、この係合部がサンプルラック9に係合した状態で前後方向へ移動することで、ラック載置部211上でサンプルラック9が移送されるようになっている。また、試料送出ユニット21bは、CPU及びメモリから構成された制御部213を備えている。かかる制御部213は、係合部等の動作機構の制御を行う。
試料送出ユニット21aは、試料チェックユニット22の右側に配置されている(図1参照)。試料送出ユニット21aのラック載置部211の奥側の左方壁部は欠落しており、ここがラック送出口212となっている。ラック載置部211に載置されたサンプルラック9は、手前側から奥側へ向かう方向、つまり後方向へ移送され、ラック載置部211の最も奥側の位置に到達した後、このラック送出口212から左側の試料チェックユニット22へ搬出される。また、試料チェックユニット22の左側に配置されている試料送出ユニット21bは、ラック載置部211の奥側の右方壁部が欠落してラック導入口(図示せず)が形成されており、このラック導入口によって試料チェックユニット22からサンプルラック9が導入されるようになっている。また、試料送出ユニット21bのラック載置部211の前側(正面側)の左方壁部も欠落しており(図示せず)、この部分がラック送出口となっている。ラック導入口から導入されたサンプルラック9は、ラック載置部211により前方に移送され、最も前方の位置に到達した後、ラック送出口から左方へ送出される。
また、図4に示すように、試料送出ユニット21aには、操作パネル214が設けられている。ユーザはこの操作パネル214を操作して、血液試料分析システム1に分析開始の指示又は分析終了の指示を与えることができる。
図5は、試料チェックユニット22の構成を示す平面図である。図5に示すように、試料チェックユニット22は、試料送出ユニット21aから導入されたサンプルラック9を載置するためのラック載置部221と、ラック載置部221上のサンプルラック9のバーコード(ラックバーコード)を読み取るバーコードリーダ222aと、サンプルラック9に収容された試料容器8のバーコード(検体バーコード)を読み取るバーコードリーダ222bと、ユーザが手作業で使用するハンディバーコードリーダ222cと、試料容器8を水平回転させる水平回転機構223と、試料容器8のバーコードラベル8bの有無を検出するための光学センサ223aと、試料容器8をサンプルラック9から取り出し、傾倒させる試料容器傾倒機構224と、試料容器8を撮像する2つのカメラ225a,225bと、CPU及びメモリを備えており、水平回転機構223及び試料容器傾倒機構224等の動作機構の制御を行う制御部226と、液晶表示部227とを備えている。また、かかる試料チェックユニット22は、システム制御装置7とデータ通信が可能であるように接続されており、バーコードリーダ222a,222b,222cで読み取ったデータ、及びカメラ225a,225bの撮像画像をシステム制御装置7へ送信するように構成されている。
ラック載置部221は、平面視において長方形状をなす凹状に窪んだ部分である。当該ラック載置部221の奥側端の右側壁部には、試料送出ユニット21aからサンプルラック9を導入するためのラック導入口221aが設けられている。また、ラック載置部221の奥側端の左側壁部には、ラック載置部221からサンプルラック9を送出するためのラック送出口221bが設けられている。かかるラック載置部221の最も奥側の部分(図において、二点鎖線にて示した部分)は、サンプルラック9を搬送するための搬送路として用いられ、これ以外の部分は、サンプルラック9を貯留するために用いられる。
バーコードリーダ222aは、発光部と受光部(ラインセンサ)を備えており(図示せず)、搬送路上にあるサンプルラック9のラックバーコードを読み取ることが可能な位置に配置されている。ラック導入口221aから導入されたサンプルラック9は、図示しない係合手段に係合されて上述した搬送路上を移送される。そして、当該搬送路上において、サンプルラック9のラックバーコードが、バーコードリーダ222aにより読み取られる。読み取られたラックIDは、システム制御装置7へ送信される。
バーコードリーダ222bは、発光部と受光部(ラインセンサ)を備えており(図示せず)、搬送路上にあるサンプルラック9に収容されている試料容器8の検体バーコードを読み取ることが可能な位置に配置されている。このバーコードリーダ222bの上方には、水平回転機構223が設けられている。
図6は、試料チェックユニット22の一部の構成を模式的に示した正面図である。図6に示すように、水平回転機構223は、サンプルラック9上の試料容器8の上端に当接する当接部223dを有しており、この当接部223dはモータによって水平方向に回転可能に構成されている。当接部223dが試料容器8の蓋部8aに当接した状態で水平回転することにより、試料容器8がサンプルラック9の内部で水平回転することになる。また、水平回転機構223の前方には、光学センサ223aが配置される。かかる光学センサ223aは、発光素子223bと受光素子223cとにより構成されている。水平回転機構223により、試料容器8が水平回転している間に、発光素子223bからこの試料容器8に光が照射され、その反射光が受光素子223cにより受光される。発光素子223bの光を反射している面にバーコードラベルが存在している場合には、かかる受光素子223cの受光レベルが所定値を越え、発光素子223bの光を反射している面にバーコードラベルが存在していない場合には、受光レベルが前記所定値以下となる。そこで、制御部226が、試料容器8を水平回転させつつ光学センサ223aの受光素子223cの受光レベルをチェックし、その受光レベルが前記所定値以下となる位置で水平回転機構223の水平回転運動が停止させる。これにより、バーコードラベル8bが存在しない面が前方を向くように、試料容器8の角度が調整される。
上述のように、バーコードラベル8bが存在しない面が前方を向いているときには、試料容器8の後方にあるバーコードリーダ222bが試料容器8のバーコードラベル8bと対向することになる。ここで、バーコードリーダ222bによりバーコードラベル8bから検体IDが読み取られる。
また、光学センサ223aは、図示しない垂直駆動機構により上下方向に移動可能となっている。かかる光学センサ223aは、サンプルラック9がラック載置部221の上記搬送路上にあるときには、サンプルラック9の前側に配置される。また、サンプルラック9がラック載置部221の前方に移送される際には、光学センサ223aが、サンプルラック9の移送に干渉しない位置まで、上記垂直駆動機構により上昇される。
ラック載置部221の搬送路上において、サンプルラック9は、隣り合う試料容器8の間隔を1ピッチとしたピッチ送りで左方向へ間欠的に移送される。水平回転機構223より所定ピッチ分だけ左側の位置には、上述した試料容器傾倒機構224が設けられている。図7は、試料容器傾倒機構224の概略構成を示す側面図である。試料容器傾倒機構224は、試料容器の上端付近を左右両側から把持する把持部224aと、モータ224bと、モータ224bの回転軸と把持部224aとを連結するベルト224cとを備え、モータ224bの回転により把持部224aを上下方向に移送することが可能である。また、把持部224aは、モータ224dの回転軸に連結されており、モータ224dの回転動作によって把持部224aが前後方向へ延びた中心軸の回りを回転することが可能である。
水平回転機構223により、バーコードラベル8bが前面に存在しない状態にまで回転された試料容器8は、サンプルラック9が左方向へ移送されることにより試料容器傾倒機構224の位置まで到達する。ここで試料容器傾倒機構224の把持部224aが試料容器8の上端付近を把持し、その状態のまま上昇されることにより、試料容器8がサンプルラック9から取り出される。試料容器8がサンプルラック9から完全に離脱して第1撮像位置224eまで到達すると、把持部224aの上昇動作が停止される。第1撮像位置224eにある試料容器8の前方には、カメラ225aが配置されている。また、白色LED225cがカメラ225aに対して所定の位置に配置されており、この白色LED225cにより試料容器8が照明される。
図8は、カメラ225aと、白色LED225cと、試料容器8との位置関係及び白色LEDから発せられた光の進行方向を説明するための模式図である。図8に示すように、白色LED225cは第1撮像位置224eにある試料容器8へ向けて光を発し、且つ、その試料容器8の反射光が、試料容器8の前方に位置するカメラ225aに直接入射しない位置及び向きに配置されている。これにより、反射光がカメラ225aに直接当たることがなく、露出オーバーによるいわゆる白飛びを防止することができる。
把持部224aにより第1撮像位置224eにおいて把持された試料容器8は、立位状態(垂直状態)のままカメラ225aにより撮像され、これによって得られた撮像画像データは、システム制御装置7へ送信される。その後、把持部224aがモータ224dにより垂直回転され、これによって試料容器8が傾倒する。把持部224aは、図6において二点鎖線で示すように、試料容器8の底部が蓋部8aよりも上方に位置する第2撮像位置224fに試料容器8が至るまでの所定角度回動される。第2撮像位置224fにある試料容器8の前方には、カメラ225b(図5参照)が配置されている。また、白色LED225d(図5参照)がカメラ225bに対して所定の位置に配置されており、この白色LED225dにより試料容器8が照明される。白色LED225dとカメラ225bとの相対的位置関係は、白色LED225cとカメラ225aとの相対的位置関係と同一とされる。つまり、白色LED225dは第2撮像位置224fにある試料容器8へ向けて光を発し、且つ、その試料容器8の反射光が、試料容器8の前方に位置するカメラ225bに直接入射しない位置及び向きに配置されている。
把持部224aにより第2撮像位置224fにおいて把持された試料容器8は、上記のように傾斜した状態のままカメラ225aにより撮像され、これによって得られた撮像画像データは、システム制御装置7へ送信される。全ての試料容器8の撮像が完了したサンプルラック9は、ラック送出口221bから送出される。
バーコードリーダ222cは、発光部と受光部(ラインセンサ)を備えており(図示せず)、電気信号を送信するための柔軟なケーブルにより試料チェックユニット22の本体と接続されている。かかるバーコードリーダ222cは、バーコードリーダ222bでは読み取り不能であったバーコードをユーザが手作業で再度読み取るような場合に使用される。
<試料搬送装置3の構成>
次に、試料搬送装置3の構成について説明する。図1に示すように、血液試料分析システム1は、3つの試料搬送装置3を備えている。血球分析装置5,5及び塗抹標本作製装置6の前方には、各別に試料搬送装置3,3,3が配置されている。隣り合う試料搬送装置3,3は接続されており、サンプルラック9を受渡しすることが可能である。また、最も右側の試料搬送装置3は、上述した試料投入装置2に接続されており、試料投入装置2から搬出されたサンプルラック9を導入することが可能となっている。最も左側の試料搬送装置3は、試料収容装置4に接続されており、試料収容装置4へサンプルラック9を搬出することが可能となっている。
各試料搬送装置3は、コンベア31とラックスライダ32とを備えている。図9は、コンベア31の構成を示す斜視図であり、図10は、ラックスライダ32の構成を示す斜視図である。図9に示すように、コンベア31には、それぞれ左右方向へ延びた2つのラック搬送路31a,31bが設けられている。後側のラック搬送路31aは、血球分析装置5又は塗抹標本作製装置6に供給すべき試料を収容するサンプルラック9を搬送するための測定ラインである。一方、前側のラック搬送路31bは、血球分析装置5又は塗抹標本作製装置6に供給すべき試料を収容していないサンプルラック9を搬送するためのスキップラインである。また、コンベア31は、CPU及びメモリを備えており、各動作機構を制御する制御部31cを備えている。
ラックスライダ32は、コンベア31の右側に配置されており、コンベア31の測定ライン31a及びスキップライン31bへのサンプルラック9の振り分け投入を行う。ラックスライダ32は、1つの可動搬送路32aを備えており、当該可動搬送路32aは、図示しないモータによって前後方向に移動可能となっている。かかる可動搬送路32aの動作は、前述した制御部31cによって制御される。
また、試料搬送装置3は、図示しないラックバーコードリーダが設けられており、これらのバーコードリーダによって読み取られたラックIDは、制御部31cに与えられる。また、試料搬送装置3は、システム制御装置7と通信可能に接続されており、システム制御装置7から測定オーダを受信するように構成されている。制御部31cは、システム制御装置7から与えられた測定データ及びバーコードリーダにより読み取られたラックIDに基づき、そのサンプルラック9に血球分析装置5又は塗抹標本作製装置6に供給すべき試料が収容されているか否かを判定するようになっている。そして、血球分析装置5又は塗抹標本作製装置6に供給すべき試料が収容されているサンプルラック9がラックスライダ32に導入されると、可動搬送路32aを後側へ移動させてこのサンプルラック9を測定ライン31aに送出する。また、血球分析装置5又は塗抹標本作製装置6に供給すべき試料が収容されていないサンプルラック9がラックスライダ32に導入されると、可動搬送路32aを前側へ移動させてこのサンプルラック9をスキップライン31bに送出する。つまり、血球分析装置5の分析対象でない試料しか収容していないサンプルラック9は、血球分析装置5の前側に配置されている試料搬送装置3においては、スキップライン31bに搬送され、塗抹標本作製装置6による塗抹標本作製対象でない試料しか収容していないサンプルラック9は、塗抹標本作製装置6の前側に配置されている試料搬送装置3においては、スキップライン31bに搬送される。一方、サンプルラック9内に、血球分析装置5による分析対象の試料が1つでもある場合は、血球分析装置5の前側に配置されている試料搬送装置3においては、このサンプルラック9は測定ライン31aに搬送される。
また、制御部31cは、測定ライン31aにサンプルラック9を送出した場合において、血球分析装置5(塗抹標本作製装置6)が試料を吸引する吸引位置に分析(塗抹標本作製処理)の対象とする試料容器を移送し、血球分析装置5(塗抹標本作製装置6)が試料の吸引を完了した後に、次の分析対象(塗抹標本作製処理対象)の試料容器を前記吸引位置まで移送するという動作を繰り返し行う。
<試料収容装置4の構成>
試料収容装置4は、分析又は塗抹標本作製を終了したサンプルラック9を試料搬送装置3から受け取り、収容する。その構成は、試料送出ユニット21a,21bと同様であるので、説明を省略する。
<血球分析装置5の構成>
血球分析装置5は、光学式フローサイトメトリー方式の多項目血球分析装置であり、血液試料に含まれる血球に関して側方散乱光強度、蛍光強度等を取得し、これらに基づいて試料中に含まれる血球を分類し、且つ、種類毎に血球数を計数し、このように分類された血球が種類毎に色分けされたスキャッタグラムを作成し、これを表示する。かかる血球分析装置5は、血液試料を測定する測定ユニット51と、測定ユニット51から出力された測定データを処理し、血液試料の分析結果を表示する情報処理ユニット52とを備えている。
図11は、測定ユニット51の概略構成を示すブロック図である。測定ユニット51は、試料分注部511と、測定試料調製部512と、光学検出部513と、信号処理回路514と、制御部515とを備えている。
試料分注部511は、吸引管(図示せず)を備えており、この吸引管を試料搬送装置3の測定ライン31a上を搬送されたサンプルラック9の試料容器8の蓋部8aに突き刺して、この試料容器8から血液試料を吸引する。測定試料調製部512は、混合容器(図示せず)を備えており、試料分注部511により分注された血液試料、試薬及び希釈液を混合撹拌し、測定試料を調製する。
光学検出部513は、フローセル(図示せず)を備え、このフローセルに測定試料を供給することにより測定試料の細い流れを形成し、その測定試料に対して光を照射して、光学センサにより側方散乱光信号、前方散乱光信号、及び蛍光信号を取得する。これらの信号は、信号処理回路514へ出力される。信号処理回路514は、光学検出部513から出力される電気信号を処理する回路である。かかる信号処理回路514は、側方散乱光信号、前方散乱光信号、蛍光信号のピーク及びパルス幅等のパラメータを取得する。
制御部515は、CPU及びメモリを備えており、試料搬送装置3とデータ通信可能に接続されている。かかる制御部515は、試料搬送装置3から与えられた分析項目にしたがって、試料分注部511、測定試料調製部512、光学検出部513、及び信号処理回路514を制御し、上記分析項目に対応する測定動作を実行させる。また、信号処理回路514によって得られた上記パラメータを含む測定データを情報処理ユニット52へ送信するように構成されている。
また、測定ユニット51は、通常測定モードと微量測定モードの2つの動作モードにより動作可能となっている。微量測定モードでは、通常測定モードに比べて少ない量の血液試料が試料分注部511により吸引され、通常測定モードに比べて高い希釈率の測定試料が測定試料調製部512により調製され、光学検出部513によりその測定試料の光学的測定が行われる。
次に、情報処理ユニット52の構成について説明する。情報処理ユニット52は、コンピュータにより構成されている。図12は、情報処理ユニット52の構成を示すブロック図である。情報処理ユニット52は、コンピュータ52aによって実現される。図12に示すように、コンピュータ52aは、本体521と、画像表示部522と、入力部523とを備えている。本体521は、CPU521a、ROM521b、RAM521c、ハードディスク521d、読出装置521e、入出力インタフェース521f、通信インタフェース521g、及び画像出力インタフェース521hを備えており、CPU521a、ROM521b、RAM521c、ハードディスク521d、読出装置521e、入出力インタフェース521f、通信インタフェース521g、及び画像出力インタフェース521hは、バス521jによって接続されている。
CPU521aは、RAM521cにロードされたコンピュータプログラムを実行することが可能である。そして、後述するような分析プログラム524aを当該CPU521aが実行することにより、コンピュータ52aが情報処理ユニット52として機能する。
ROM521bは、マスクROM、PROM、EPROM、又はEEPROM等によって構成されており、CPU521aに実行されるコンピュータプログラム及びこれに用いるデータ等が記録されている。
RAM521cは、SRAMまたはDRAM等によって構成されている。RAM521cは、ハードディスク521dに記録されている分析プログラム524aの読み出しに用いられる。また、CPU521aがコンピュータプログラムを実行するときに、CPU521aの作業領域として利用される。
ハードディスク521dは、オペレーティングシステム及びアプリケーションプログラム等、CPU521aに実行させるための種々のコンピュータプログラム及び当該コンピュータプログラムの実行に用いられるデータがインストールされている。後述する分析プログラム524aも、このハードディスク521dにインストールされている。
読出装置521eは、フレキシブルディスクドライブ、CD−ROMドライブ、またはDVD−ROMドライブ等によって構成されており、可搬型記録媒体524に記録されたコンピュータプログラムまたはデータを読み出すことができる。また、可搬型記録媒体524には、コンピュータを情報処理ユニット52として機能させるための分析プログラム524aが格納されており、コンピュータ52aが当該可搬型記録媒体524から分析プログラム524aを読み出し、当該分析プログラム524aをハードディスク521dにインストールすることが可能である。
なお、前記分析プログラム524aは、可搬型記録媒体524によって提供されるのみならず、電気通信回線(有線、無線を問わない)によってコンピュータ52aと通信可能に接続された外部の機器から前記電気通信回線を通じて提供することも可能である。例えば、前記分析プログラム524aがインターネット上のサーバコンピュータのハードディスク内に格納されており、このサーバコンピュータにコンピュータ52aがアクセスして、当該コンピュータプログラムをダウンロードし、これをハードディスク521dにインストールすることも可能である。
また、ハードディスク521dには、例えば米マイクロソフト社が製造販売するWindows(登録商標)等のマルチタスクオペレーティングシステムがインストールされている。以下の説明においては、本実施の形態に係る分析プログラム524aは当該オペレーティングシステム上で動作するものとしている。
入出力インタフェース521fは、例えばUSB,IEEE1394,又はRS-232C等のシリアルインタフェース、SCSI,IDE,又はIEEE1284等のパラレルインタフェース、及びD/A変換器、A/D変換器等からなるアナログインタフェース等から構成されている。入出力インタフェース521fには、キーボード及びマウスからなる入力部523が接続されており、ユーザが当該入力部523を使用することにより、コンピュータ52aにデータを入力することが可能である。
通信インタフェース521gは、Ethernet(登録商標)インタフェースである。通信インタフェース521gはLANを介して測定ユニット51に接続されている。コンピュータ52aは、通信インタフェース521gにより、所定の通信プロトコルを使用して当該LANに接続された測定ユニット51との間でデータの送受信が可能である。
画像出力インタフェース521hは、LCDまたはCRT等で構成された画像表示部522に接続されており、CPU521aから与えられた画像データに応じた映像信号を画像表示部522に出力するようになっている。画像表示部522は、入力された映像信号にしたがって、画像(画面)を表示する。
<塗抹標本作製装置6の構成>
塗抹標本作製装置6は、血液試料を吸引し、スライドガラス上に滴下して、その血液試料をスライドガラス上で薄く引き延ばし、乾燥させた上で、当該スライドガラスに染色液を供給してスライドガラス上の血液を染色することにより、塗抹標本を作製する。
図13は、塗抹標本作製装置6の概略構成を示すブロック図である。図13に示すように、塗抹標本作製装置6は、試料分注部61と、塗抹部62と、スライドガラス搬送部63と、染色部64と、制御部65とを備えている。
試料分注部61は、吸引管(図示せず)を備えており、この吸引管を試料搬送装置3の測定ライン31a上を搬送されたサンプルラック9の試料容器8の蓋部8aに突き刺して、この試料容器8から血液試料を吸引する。また、試料分注部61は、吸引した血液試料をスライドガラス上に滴下するように構成されている。塗抹部62は、スライドガラス上に滴下された血液試料を塗抹して乾燥させ、さらに、スライドガラスに印字するように構成されている。
スライドガラス搬送部63は、塗抹部62によって血液試料が塗抹されたスライドガラスを図示しないカセットに収容させ、さらにそのカセットを搬送するために設けられている。染色部64は、スライドガラス搬送部63によって染色位置まで搬送されたカセット内のスライドガラスに対して、染色液を供給する。制御部65は、試料搬送装置3から与えられた標本作製指示にしたがって、試料分注部61、塗抹部62、スライドガラス搬送部63、及び染色部64を制御し、上記の塗抹標本作製動作を実行させる。また、制御部65は、塗抹標本の作製が終了したときに、塗抹標本の作製の終了通知を試料搬送装置3へ送信する。
<システム制御装置7の構成>
システム制御装置7は、コンピュータにより構成されており、血液試料分析システム1の全体を制御する。このシステム制御装置7は、試料投入装置2から検体ID、及びラックIDを受け付け、検体IDをキーにしてホストコンピュータ(図示せず)から測定オーダを取得する。また、システム制御装置7は、カメラ225a,225bから出力された撮像画像に対して画像処理を実行し、収容容器内の血液試料が凝固しているか否かを判定し、且つ、試料容器内の血液試料の量を検出する。さらに、システム制御装置7は、測定オーダを試料搬送装置3へ送信する。
システム制御装置7は、コンピュータ7aによって実現される。図12に示すように、コンピュータ7aは、本体71と、画像表示部72と、入力部73とを備えている。本体71は、CPU71a、ROM71b、RAM71c、ハードディスク71d、読出装置71e、入出力インタフェース71f、通信インタフェース71g、及び画像出力インタフェース71hを備えており、CPU71a、ROM71b、RAM71c、ハードディスク71d、読出装置71e、入出力インタフェース71f、通信インタフェース71g、及び画像出力インタフェース71hは、バス71jによって接続されている。
ハードディスク71dは、オペレーティングシステム及びアプリケーションプログラム等、CPU71aに実行させるための種々のコンピュータプログラム及び当該コンピュータプログラムの実行に用いられるデータがインストールされている。後述するシステム制御プログラム74aも、このハードディスク71dにインストールされている。
読出装置71eは、フレキシブルディスクドライブ、CD−ROMドライブ、またはDVD−ROMドライブ等によって構成されており、可搬型記録媒体74に記録されたコンピュータプログラムまたはデータを読み出すことができる。また、可搬型記録媒体74には、コンピュータをシステム制御装置7として機能させるためのシステム制御プログラム74aが格納されており、コンピュータ7aが当該可搬型記録媒体74からシステム制御プログラム74aを読み出し、当該システム制御プログラム74aをハードディスク71dにインストールすることが可能である。
入出力インタフェース71fは、例えばUSB,IEEE1394,又はRS-232C等のシリアルインタフェース、SCSI,IDE,又はIEEE1284等のパラレルインタフェース、及びD/A変換器、A/D変換器等からなるアナログインタフェース等から構成されている。入出力インタフェース71fには、キーボード及びマウスからなる入力部73が接続されており、ユーザが当該入力部73を使用することにより、コンピュータ52aにデータを入力することが可能である。また、入出力インタフェース71fには、上述した試料チェックユニット22に設けられたカメラ225a,225bが接続されており、かかるカメラ225a,225bにより得られた撮像画像を取り込むことが可能となっている。
通信インタフェース71gは、Ethernet(登録商標)インタフェースである。通信インタフェース71gはLANを介して試料投入装置2、試料搬送装置3、試料収容装置4、及び図示しないホストコンピュータに接続されている。コンピュータ7aは、通信インタフェース71gにより、所定の通信プロトコルを使用して当該LANに接続された上記の各装置との間でデータの送受信が可能である。
なお、システム制御装置7のその他の構成は、上述した情報処理ユニット52の構成と同様であるので、その説明を省略する。
[血液試料分析システムの動作]
以下、本実施の形態に係る血液試料分析システム1の動作について説明する。
<試料投入装置2の動作>
図14A及び図14Bは、試料投入装置2の動作の流れを示すフローチャートである。ユーザは、試料容器8を収容したサンプルラック9を試料送出ユニット21aのラック載置部211に載置し、試料送出ユニット21aの操作パネル214を操作して、血液試料分析システム1に分析開始の指示を与える。試料送出ユニット21aの制御部213は、かかる分析開始の指示を受け付け(ステップS101)、これによりサンプルラック9の移送を開始する(ステップS102)。試料送出ユニット21aのラック載置部211に載置されたサンプルラック9は、ラック載置部211上を後方へ移送され、その後、サンプルラック9は左方向へと移送され、試料チェックユニット22へと受け渡される。
試料チェックユニット22に導入されたサンプルラック9は、試料チェックユニット22の制御部226により、ラック載置部221の搬送路上を左方向へ1ピッチ毎に移送される(ステップS103)。そして、サンプルラック9のラックバーコードがバーコードリーダ222aにより読み取られ、制御部226へ与えられる(ステップS104)。制御部226は、試料容器8が水平回転機構223の前方の位置に存在するか否かを判定する(ステップS105)。この処理は、例えば、光学センサ223aの受光素子223cの受光レベルを参照することにより行われる。試料容器8が水平回転機構223の前方位置に存在しない場合には(ステップS105においてNO)、制御部226は、処理をステップS110に移す。一方、試料容器8が水平回転機構223の前方に位置したときには(ステップS105においてYES)、制御部226は、当接部223dを試料容器8の蓋部8aに当接させて回転させながら(ステップS106)、光学センサ223aの受光素子223cの受光レベルを所定値と比較し(ステップS107)、受光レベルが所定値以下の場合には(ステップS107においてNO)、処理をステップS106へ戻し、試料容器8の水平回転を継続する。一方、受光レベルが所定値を越える場合には(ステップS107においてYES)、制御部226は、当接部223dの水平回転を停止させ(ステップS108)、バーコードリーダ222bに検体バーコードを読み取らせる(ステップS109)。
次に制御部226は、試料容器傾倒機構224の前方に試料容器8が存在するか否かを判定する(ステップS110)。この処理は、例えば、水平回転機構223の前方位置に存在していた試料容器8が何回ピッチ送りされたかにより判定される。試料容器傾倒機構224の前方位置に試料容器8が存在しない場合には(ステップS110においてNO)、制御部226は、処理をステップ116へ移す。試料容器傾倒機構224の前方位置に試料容器8が存在する場合には(ステップS110においてYES)、制御部226は、試料容器8を把持部224aにより把持し、上方の第1撮像位置まで持ち上げ(ステップS111)、システム制御装置7へ第1画像取込指示信号を送信する(ステップS112)。システム制御装置7は、後述するように、この第1画像取込指示信号を受信すると、カメラ225aの撮像画像を取り込み、その後、この撮像画像に対して画像処理を実行し、試料容器8の血液量を検出する。
次に、制御部226は、把持部224aを所定角度垂直回動させて、第2撮像位置まで試料容器8を傾倒させ(ステップS113)、システム制御装置7へ第2画像取込指示信号を送信する(ステップS114)。システム制御装置7は、後述するように、この第2画像取込指示信号を受信すると、カメラ225bの撮像画像を取り込み、その後、この撮像画像に対して画像処理を実行し、試料容器8の血液凝固の有無を判定する。
次に、制御部226は、把持部224aを反対方向に回動させて、再度試料容器8を垂直状態に戻し、さらに把持部224aを下降させて、試料容器8をサンプルラック9に収容する(ステップS115)。
なお、上述のステップS105〜S109の処理と、ステップS110〜S115の処理は、ここでは説明を簡単にするために順次的に実行するように記載しているが、実際は並行して実行される。つまり、例えば、サンプルラック9に収容された一の試料容器8に対しては、試料容器8の水平回転動作を行いつつ、他の試料容器8に対しては、試料容器8のサンプルラック9からの引き抜き動作を行う。
制御部226は、サンプルラック9に収容された全ての試料容器8に対して上記の処理を完了したか否か、正確には、サンプルラック9の右端の試料容器収容部が試料容器傾倒機構224の前方に位置しているか否かを判定し(ステップS116)、サンプルラック9の右端がまだ試料容器傾倒機構224の前方位置に到達していない場合には(ステップS116においてNO)、サンプルラック9を1ピッチ左方向へ移送し(ステップS117)、処理をステップS105へ戻す。
サンプルラック9の右端が試料容器傾倒機構224の前方位置に到達した場合には(ステップS116においてYES)、制御部226は、このサンプルラック9のラックID及びこのサンプルラック9に収容されている全試料容器8の検体IDをシステム制御装置7へ送信する(ステップS118)。ステップS118において送信されるデータでは、サンプルラック9における試料容器8の保持位置(1〜10)と、保持されている試料容器の検体IDとが対応付けられている。次いで、制御部226は、サンプルラック9をさらに左方向へ移送して、試料送出ユニット21bへこのサンプルラック9を送出する(ステップS119)。試料送出ユニット21bの制御部213は、受け入れたサンプルラック9を移送する(ステップS120)。サンプルラック9は、試料送出ユニット21bのラック載置部211上を移送され、その後、左方向へ移送されて、試料搬送装置3へ受け渡される。
試料送出ユニット21aの制御部213は、分析動作の終了条件(分析終了指示がユーザから与えられたか、試料送出ユニット21aのラック載置部211上にサンプルラック9がないこと)が満たしているか否かを判定し(ステップS121)、満たしていなければ(ステップS121においてNO)、処理をステップS102へ戻し、満たしていれば(ステップS121においてYES)、処理を終了する。
<システム制御装置7の測定オーダ取得動作>
次に、システム制御装置7の動作について説明する。システム制御装置は、試料投入装置2から受信した検体IDにより、その検体(血液試料)に対する測定オーダを取得する。ここで、測定オーダとは、血液試料に対して分析を行うべき分析項目の指示を示すデータであり、検体ID、患者ID及び患者氏名等の検体の属性情報と、分析項目の情報とが含まれる。
図15は、測定オーダの取得処理の手順を示すフローチャートである。図15に示すように、試料投入装置2から送信されたラックID及び検体IDがシステム制御装置7に受信されると(ステップS131)、システム制御装置7のCPU71aに割り込み要求が発生し、ステップS132の処理が呼び出される。
ステップS132において、CPU71aは、受信した検体IDのうちの1つを送信し、図示しないホストコンピュータへその検体IDに対応する測定オーダを要求する(ステップS132)。CPU71aは、測定オーダの受信を待機し(ステップS133においてNO)、ホストコンピュータから送信された測定オーダがシステム制御装置7に受信されると(ステップS133においてYES)、受信した測定オーダをラックIDに対応付けてハードディスク71dに記憶する(ステップS134)。CPU71aは、ラックIDに対応している検体ID、即ち、そのラックIDのサンプルラック9に収容されている全ての試料容器8の検体IDの全てについて測定オーダの問い合わせが完了したか否かを判定し(ステップS135)、測定オーダの問い合わせをしていない検体IDが存在する場合には(ステップS135においてNO)、ステップS132に処理を戻し、まだ測定オーダの問い合わせを行っていない検体IDに対応する測定オーダをホストコンピュータに要求する。
一方、全ての検体IDについて測定オーダの問い合わせが完了した場合には(ステップS135においてYES)、CPU71aは、処理を終了する。
<システム制御装置7の血液量検出動作>
また、システム制御装置7は、カメラ225aの撮像画像を取り込み、この撮像画像に対して画像処理を実行することで、試料容器8の血液量を検出する。
図16は、血液量検出処理の手順を示すフローチャートである。図16に示すように、試料投入装置2から送信された第1画像取込指示信号がシステム制御装置7に受信されると(ステップS141)、システム制御装置7のCPU71aに割り込み要求が発生し、ステップS142の処理が呼び出される。
ステップS142においては、CPU71aは、その時点におけるカメラ225aの撮像画像を取り込む(ステップS142)。次にCPU71aは、取り込んだ撮像画像における試料容器8の像の幅を検出する(ステップS143)。この処理について詳しく説明する。図17は、試料容器8の像の幅を検出する処理を説明するための模式図である。この画像100はカラー画像であり、各画素についてRGBの輝度情報を有している。CPU71aは、この画像100において試料容器8の幅を求めるための処理領域101に対して以下の処理を行う。なお、処理領域101は所定の領域であり、試料容器8の底部付近の像を含む領域であって、バーコードラベルの像が含まれない領域とされる。CPU71aは、処理領域101内のX座標毎に、処理領域101内のY方向の各画素のB(青)輝度値(以下、「B値」という。)を累積する。つまり、処理領域101に含まれる左端の縦に一列の画素群に対して、各画素のB値の累積値(以下、「B輝度累積値」という。)を算出し、次に1つ右側の縦一列の画素群に対して、B輝度累積値を算出する。これをX座標値をインクリメントしながら処理領域101の右端に到達するまで繰り返す。
図17において、101aは上述したようにして求めた処理領域101におけるB輝度累積値のグラフである。処理領域101におけるB輝度累積値は、背景画像の部分では高く、試料容器8の像の部分では低くなる。したがって、CPU71aは、このB輝度累積値のX方向の微分を行い、B輝度累積値の急な立下がり部分と立上り部分とを検出する。これによって、試料容器8の幅が検出される。
次に、CPU71aは、バーコードラベル8bの左右端の像の位置を検出する(ステップS144)。この処理について詳しく説明する。図18は、バーコードラベル8bの像の左右端の位置を検出する処理を説明するための模式図である。CPU71aは、画像100においてバーコードラベル8bの像の左右端の位置を検出するための処理領域102に対して以下の処理を行う。なお、処理領域102は所定の領域であり、画像中の上部の領域であって、バーコードラベルの像が含まれる領域とされる。CPU71aは、処理領域102におけるX座標値毎にB輝度累積値を算出する。図中102aは、処理領域102におけるB輝度累積値のグラフである。グラフ102aに示すとおり、バーコードラベルの像の部分におけるB輝度累積値は、背景画像及び試料容器像におけるB輝度累積値よりも高くなる。したがって、CPU71aは、このB輝度累積値を左から右へ走査し、B輝度累積値が一旦高くなりその後急に低くなる位置をバーコードラベルの左端の像の位置として検出し、次いでB輝度累積値を右から左へ走査し、B輝度累積値が一旦高くなりその後急に低くなる位置をバーコードラベルの右端の像の位置として検出する。
次に、CPU71aは、試料容器像の下端位置を検出する(ステップS145)。この処理について詳しく説明する。図19は、試料容器像の下端位置を検出する処理を説明するための模式図である。CPU71aは、まず、画像100において試料容器像の下端位置及び血液試料の液面像の位置を検出するための処理領域103を決定する。この処理領域103は、ステップS144で検出したバーコードラベルの左端の像の位置と右端の像の位置とで囲まれる領域よりも少し内側の領域とされる。これは、バーコードラベルの左端の像と右端の像との間の領域は、バーコードラベルの像が存在しないためである。
CPU71aは、処理領域103におけるY座標値毎に、X方向にB値を累積したB輝度累積値及びR値を累積したR輝度累積値を算出する。またCPU71aは、Y座標毎に、R輝度累積値をB輝度累積値で除した値(以下、「R/B累積輝度比」という。)を算出する。図中103aは、処理領域103におけるB輝度累積値のグラフであり、図中103bは、処理領域103におけるR/Bのグラフである。グラフ103aに示すとおり、試料容器内の血液試料の像のB輝度累積値は、試料容器内の血液試料が存在しない部分の像及び背景画像のB輝度累積値よりも低くなる。また、血液試料の像においては、その他の部分に比べてR/B累積輝度比が大きくなる。したがって、CPU71aは、このB輝度累積値をY方向に微分し、処理領域103の下端から上方へ向かうときに、B輝度累積値が急に小さくなる位置を試料容器像の下端位置として検出する。
次に、CPU71aは、血液試料において血漿部分と血球部分とが分離しているか否かを判定する(ステップS146)。この処理では、処理領域103のB輝度累積値及びR輝度累積値を試料容器像の下端位置から上へと走査して、R輝度累積値のみが大きくなっていれば、血漿部分と血球部分とが分離していると判定する。
血漿部分と血球部分とが分離している場合には(ステップS146においてYES)、CPU71aは、血液試料の液面像の位置を検出する第1液面像位置検出処理を行い(ステップS147)、血漿部分と血球部分とが分離していない場合には(ステップS146においてNO)、血液試料の液面像の位置を検出する第2液面像位置検出処理を行う(ステップS148)。第1液面像位置検出処理では、血液試料の像から上方へ向かうときに、B輝度累積値が急に大きくなり、且つ、R/B累積輝度比が所定値以下となる位置が液面像の位置として検出される。また、第2液面像位置検出処理では、血液試料像から上方へと向かうときに、B輝度累積値が急に大きくなる位置が液面像の位置として検出される。
次に、CPU71aは、試料容器8内の血液量を算出する(ステップS149)。この処理では、CPU71aが、以下の式(1)及び(2)により血液量BVを算出する。
R=(k・W−2T)/2 …(1)
BV=πR2×(k・H−R)+2πR3/3 …(2)
但し、Rは、試料容器内面の半径を、kは、撮像画像の縮尺率によって定まる係数を、Wは、試料容器像の幅を、Tは試料容器の厚みを、Hは血液試料像の高さ(液面像の位置と試料容器下端像の位置との差)を、それぞれ示している。CPU71aは、血液量BVを算出すると、画像処理の対象となった血液試料の検体IDを有する測定オーダに対応付けてこの血液量をハードディスク71dに記憶し(ステップS1410)、処理を終了する。
<システム制御装置7の血液凝固判定動作>
また、システム制御装置7は、カメラ225bの撮像画像を取り込み、この撮像画像に対して画像処理を実行することで、試料容器8内の血液試料の凝固の有無を判定する。
図20は、血液凝固判定処理の手順を示すフローチャートである。図20に示すように、試料投入装置2から送信された第2画像取込指示信号がシステム制御装置7に受信されると(ステップS151)、システム制御装置7のCPU71aに割り込み要求が発生し、ステップS152の処理が呼び出される。
ステップS152においては、CPU71aは、その時点におけるカメラ225bの撮像画像を取り込む(ステップS152)。次にCPU71aは、取り込んだ撮像画像における試料容器8の像の左端の位置を検出する(ステップS153)。この処理について詳しく説明する。図21は、試料容器8の像の左端位置を検出する処理を説明するための模式図である。この画像110はカラー画像であり、各画素についてRGBの輝度情報を有している。CPU71aは、この画像110において試料容器8の像の左端位置を求めるための処理領域111に対して以下の処理を行う。なお、処理領域111は所定の領域であり、試料容器8の底部付近の像を含む領域とされる。CPU71aは、処理領域111内のY方向のB輝度累積値をX座標ごとに算出する。図中111aは、処理領域111におけるB輝度累積値のグラフである。グラフ111aに示すとおり、試料容器像の部分におけるB輝度累積値は、背景画像におけるB輝度累積値よりも低くなる。したがって、CPU71aは、このB輝度累積値のX方向の微分を行い、このB輝度累積値を左から右へ走査したときのB輝度累積値の立下がり位置を試料容器像の左端位置として検出する。
次に、CPU71aは、試料容器底部像の上端位置を検出する(ステップS154)。この処理について詳しく説明する。図22は、試料容器底部像の上端位置を検出する処理を説明するための模式図である。CPU71aは、画像110において試料容器底部像の上端位置を検出するための処理領域112を決定する。この処理領域112は、ステップS153で検出した試料容器像の左端位置から所定の画素数分右側までの領域とされる。これは、当該画像においては試料容器8の底部が蓋部8aよりも上方に位置する状態で試料容器8が撮像されており、試料容器8の底部が試料容器の上端となるため試料容器の底部像を処理領域に含める必要があるところ、前記左端位置よりも右側の領域に試料容器8の底部の像が存在するためである。
CPU71aは、処理領域112内のX方向のB輝度累積値をY座標ごとに算出する。図中112aは、処理領域112におけるB輝度累積値のグラフである。グラフ112aに示すとおり、試料容器像の部分におけるB輝度累積値は、背景画像におけるB輝度累積値よりも低くなる。したがって、CPU71aは、このB輝度累積値のY方向の微分を行い、このB輝度累積値を上から下へ走査したときのB輝度累積値の立下がり位置を試料容器の底部像の上端位置として検出する。
次に、CPU71aは、血液試料の液面像の位置を検出する(ステップS155)。この処理について詳しく説明する。CPU71aは、画像110において血液試料の液面像の位置を検出するための処理領域113(図22参照)に対して以下の処理を行う。なお、処理領域113は所定の領域であり、画像110内の右側部分の領域とされる。これは、血液が凝集することによってできた凝集塊が血液試料中に存在する場合、この凝集塊は通常その重さにより試料容器8の中の底の部分に沈んでいる。このため、正面視において試料容器8の底部が左側に位置する第2撮像位置へと試料容器8が傾倒されると、試料容器8内の血液試料は試料容器8の蓋部8a側(右側)へ移動し、試料容器8内の底部の血液試料は少なくなる。一方、試料容器8の底に沈んでいた凝集塊は、試料容器8の底部の内面に乗り上げ、浅い血液試料の液面から突出した状態となる。従って、画像110内の右側の領域には、液体の血液のみが存在することになり、この部分に処理領域113を設けることにより、処理領域113内に凝集塊の像が含まれず、液体の血液の像が含まれることになる。このように、処理領域113は、液体の表面の像である液面像を検出するのに適した領域である。CPU71aは、処理領域113におけるY座標値毎にB輝度累積値及びR輝度累積値を算出する。図中113aは、処理領域113におけるB輝度累積値のグラフである。まず、CPU71aは、処理領域113の下端から上方へ向かってR/B累積輝度比を順次チェックし、R/B累積輝度比が所定値以上となるか否かを判定する。ここで、血液像の部分ではR/B累積輝度比が大きくなることから、R/B累積輝度比が所定値以上となる場合には、試料容器内に血液が存在していると判断することができる。また、血液が存在しないと判断できる場合、即ち、処理領域113のY軸方向全体に亘ってR/B累積輝度比が所定値を越えない場合には、血液試料の液面像の位置検出に失敗したものとされる。
血液が存在すると判断できる場合には、CPU71aは、その血液が存在していると考えられる位置(R/B累積輝度比が所定値以上である位置)から上方へ向かって、B輝度累積値をチェックし、B輝度累積値の微分値が所定値以上となる場合であって、且つ、R/B累積輝度比が所定値以下となる位置を血液面像の位置として検出する。このような位置が存在しない場合には、血液面像の位置検出に失敗したものとされる。
次に、CPU71aは、ステップS155において血液面像の位置検出に成功したか否かを判定し(ステップS156)、血液面像の位置検出に成功した場合には(ステップS156においてYES)、試料容器の底部像の左端位置及び上端位置並びに血液面像の位置に基づいて、血液凝固の有無を判定するための処理領域を設定する(ステップS157)。図22を参照して、当該処理領域を説明する。ステップS157の処理では、試料容器の底部像の左端位置より右側であり、試料容器の底部像の上端位置より下側であり、血液面像の位置より上側の領域が処理領域114として設定される。図22に示すように、血液が凝固している場合には、凝集塊が液面から上方に突出していることがある。このような場合に、液面像の上方の処理領域114に凝集塊の像が存在することになり、かかる処理領域114に対して画像処理を実行することにより、血液の凝固を検出することができる。
一方、血液面像の位置検出に失敗した場合には(ステップS156においてNO)、試料容器の底部像の左端位置及び上端位置に基づいて、血液凝固の有無を判定するための処理領域が設定される(ステップS158)。図23は、血液面像の位置検出に失敗した場合の血液凝固判定用の処理領域を説明するための模式図である。図23に示すように、この場合の処理領域115は、試料容器の底部像の左端位置より右側であり、且つ、試料容器の底部像の上端位置より下側の所定の大きさの領域とされる。血液が存在すると判断できる場合において、血液面像の位置が検出できなかったときは、血液が凝固することにより粘性を帯び、試料容器の内面に粘着している場合がある。このような場合は、試料容器8を傾倒させても液面を確認することができず、処理領域115の多くの部分が血液像によって占められることになる。そこで、処理領域115に対して画像処理を実行することにより、血液の凝固を検出することができる。
血液凝固検出用の処理領域を設定した後、CPU71aは、血液凝固の有無を判定する(ステップS159A、159B)。この処理について以下に説明する。ステップS159Aにおいて、CPU71aは、処理領域114に含まれる各画素について、単一画素におけるR値とB値との比であるR/B輝度比を算出する。そして、CPU71aは、処理領域114に含まれる全ての画素のうち、B値が所定値以下であり、且つ、R/B輝度比が所定値以下である画素を計数する。この画素数が所定値以上となる場合、即ち、血液面から凝集塊が突出している場合には、血液が凝固していると判定され、前記画素数が所定値未満である場合、即ち、血液面から凝集塊が突出していない場合には、血液が凝固していないと判定される。このように、血液面から突出する凝集塊の有無に基づいて血液凝固の有無を判断することにより、試料容器が垂直な状態での血液部分の面積と試料容器が傾いた状態での血液部分の面積との差に基づいて凝固の有無を判断するような場合と比較して、高精度に血液凝固の有無を判定することができる。また、1枚の撮像画像から血液の凝固判定を行うことができるため、血液試料分析システム1の処理能力を向上させることも可能となる。なお、ステップS159Bにおいては、CPU71aは、処理領域115に含まれる各画素について、ステップS159Aにおける凝固判定処理と同様の処理を行うことにより、血液凝固の有無の判定を行う。
図24Aは、図22に示した画像における処理領域114内の画素のB値及びR/B輝度比に関する分布状態を示すスキャッタグラムであり、図24Bは、図23に示した画像における処理領域115内の画素のB値及びR/B輝度比に関する分布状態を示すスキャッタグラムであり、図24Cは、血液凝固が生じていない血液における処理領域114内の画素のB値及びR/B輝度比に関する分布状態を示すスキャッタグラムである。図において、B値が所定値以下であり、且つ、R/B輝度比が所定値以下であるという条件を満たす範囲を四角枠150にて示している。図24Aに示すように、血液面上に凝集塊が突出している場合には、処理領域114に含まれる全画素のうちの多くの画素(画像100が640×480ドットの場合において数百画素以上)が上記条件を満たす。また、図24Bに示すように、血液が存在すると判断できる場合において、血液面像の位置が検出できなかったときには、処理領域115に含まれる全画素のうちの非常に多くの画素(画像100が640×480ドットの場合において1万画素以上)が上記条件を満たす。一方、図24Cに示すように、血液面上に凝集塊が突出していない場合には、処理領域114に含まれる全画素のうち非常に少数の画素(画像100が640×480ドットの場合において数個)しか上記条件を満たさない。このように、画像のサイズが640×480ドットの場合においては、上記の閾値を100程度に設定することにより、高精度に血液の凝固を検出することができる。
CPU71aは、血液凝固の有無を判定すると、画像処理の対象となった血液試料の検体IDを有する測定オーダに対応付けてこの判定結果をハードディスク71dに記憶し(ステップS1510)、処理を終了する。
<システム制御装置7の測定オーダ送信動作>
後述するように、試料搬送装置3は、システム制御装置7へラックIDを送信して、このラックIDに対応する測定オーダを要求する。システム制御装置7は、かかる要求に応じて、試料搬送装置3へ測定オーダを送信する。
図25は、測定オーダ送信処理の手順を示すフローチャートである。図25に示すように、試料搬送装置3から送信されたラックIDを含む測定オーダの要求データがシステム制御装置7に受信されると(ステップS161)、システム制御装置7のCPU71aに割り込み要求が発生し、ステップS162の処理が呼び出される。
ステップS162において、CPU71aは、受信したラックIDに対応する測定オーダをハードディスク71dから検索する。次に、CPU71aは、サンプルラックの保持位置を示す変数iに1をセットし(ステップS163)、iが10以下であるか否かを判定する(ステップS164)。iが10以下である場合には(ステップS164においてYES)、CPU71aは、保持位置iに試料容器が保持されているか否か(保持位置iに対応する測定オーダが存在するか否か)を判定する(ステップS165)。保持位置iに試料容器が保持されていない場合には(ステップS165においてNO)、CPU71aは、ステップS1612へ処理を移す。
保持位置iに試料容器が保持されている場合には(ステップS165においてYES)、保持位置iの試料に対して血液凝固が検出されたか否かが判定される(ステップS166)。血液凝固が検出された場合には(ステップS166においてYES)、CPU71aは、ステップS1612へ処理を移す。
一方、保値位置iの試料において血液凝固が検出されなかった場合には(ステップS166においてNO)、CPU71aは、保持位置iの血液試料の測定オーダをハードディスク71dから読み出し(ステップS167)、その測定オーダに含まれる分析項目から、分析に必要な血液量Kを決定し(ステップS168)、保持位置iの血液試料において検出された血液量BVと必要血液量Kとを比較して、BV≧Kを満たすか否かを判定する(ステップS169)。BV≧Kの場合(ステップS169においてYES)、CPU71aは、保持位置iと測定オーダとを対応付けた測定オーダ情報をRAM71cに記憶し(ステップS1610)、ステップS1612へ処理を移す。
一方、BV<Kの場合には(ステップS169においてNO)、CPU71aは、保持位置iと測定オーダと微量測定モードを指示する情報とを対応付けた測定オーダ情報をRAM71cに記憶し(ステップS1611)、ステップS1612へと処理を移す。ステップS1612において、CPU71aは、iを1だけインクリメントし、ステップS164へ処理を戻す。また、CPU71aは、ステップS164においてiが10以下でない場合には(ステップS164においてNO)、RAM71cに記憶した測定オーダ情報を、測定オーダ要求元の試料搬送装置3へ送信し(ステップS1613)、処理を終了する。
<試料搬送装置3の動作>
ここでは、血球分析装置5の前方に配置された試料搬送装置3の動作について説明する。図26は、試料搬送装置3の動作の流れを示すフローチャートである。サンプルラック9が搬送上流側から試料搬送装置3のラックスライダ32へ搬入されるときには、図示しないセンサによってサンプルラック9の到着が検出される。サンプルラック9の検出信号が前記センサから制御部31cに与えられると(ステップS171)、制御部31cのCPUに割り込み要求が発生し、ステップS172の処理が呼び出される。
ステップS172においては、制御部31cは、サンプルラック9のラックバーコードを図示しないバーコードリーダによって読み取り、ラックIDを取得する。制御部31cは、ラックIDを含む測定オーダ要求データをシステム制御装置7へと送信する(ステップS173)。次に、制御部31cは、システム制御装置7から測定オーダ情報の受信を待機する(ステップS174においてNO)。
試料搬送装置3によって測定オーダ情報が受信された場合には(ステップS174においてYES)、制御部31cは、受信された測定オーダ情報を試料搬送装置3のメモリに格納する(ステップS175)。図27は、測定オーダ情報のデータ構造を示す模式図である。ステップS175の処理によって試料搬送装置3のメモリに格納されたデータは、ラックID160と、このサンプルラック9に保持された各血液試料に対する測定オーダ情報161a〜161jとから構成される。測定オーダ情報161a〜161jは、保持位置情報と、測定オーダと、微量測定モード指示データとを含んでいる。また、測定オーダは、検体IDと分析項目データとを含んでいる。
測定オーダ情報をメモリに格納した後、制御部31cは、サンプルラックの保持位置を示す変数iに1をセットし(ステップS176)、iが10以下であるか否かを判定する(ステップS177)。iが10以下である場合には(ステップS177においてYES)、制御部31cは、保持位置iの試料容器8を血球分析装置5が試料を吸引する吸引位置に移送し(ステップS178)、メモリ内の測定オーダ情報から、保持位置iの試料に対する測定オーダが存在するか否かを判定する(ステップS179)。測定オーダが存在しない場合には(ステップS179においてNO)、制御部31cは、ステップS1712へ処理を移す。
一方、保持位置iの試料に対する測定オーダが存在する場合には(ステップS179においてYES)、制御部31cは、その測定オーダ情報に含まれる検体ID及び分析項目データを含む吸引指示データを、血球分析装置5へ送信する(ステップS1710)。また、測定オーダ情報に微量測定モード指示データが含まれる場合には、前記吸引指示データには、その微量測定モード指示データが含まれる。
制御部31cは、血球分析装置5から吸引完了通知信号を待機する(ステップS1711においてNO)。血球分析装置5から吸引完了通知信号を受信した場合には(ステップS1711においてYES)、制御部31cは、ステップS1712へ処理を移す。
ステップS1712において、制御部31cは、iを1だけインクリメントし、ステップS177へ処理を戻す。ステップS177において、iが10以下でない場合には(ステップS177においてNO)、制御部31cは、サンプルラック9を搬送下流側の装置へ搬出し(ステップS1713)、処理を終了する。
<血球分析装置5の動作>
次に、血球分析装置5の動作について説明する。図28は、血球分析装置5の測定ユニット51の動作の流れを示すフローチャートである。測定ユニット51に試料搬送装置3から吸引指示データが受信されると(ステップS181)、測定ユニット51の制御部515のCPUに対して割り込み要求が発生し、ステップS182の処理が呼び出される。
ステップS182において、制御部515は、試料容器内の血液試料の撹拌を行う。その後、制御部515は、この吸引指示データに微量測定モード指示データが含まれているか否かを判定し(ステップS183)、微量測定モード指示データが含まれている場合には(ステップS183においてYES)、試料分注部511に通常測定モードよりも少ない量の血液試料を吸引させ(ステップS184)、微量測定モード指示データが含まれていない場合には(ステップS183においてNO)、通常の量の血液試料を吸引させる(ステップS185)。次いで、制御部515は、吸引完了通知信号を試料搬送装置3へ送信する(ステップS186)。
次に制御部515は、測定試料調製部512に、吸引した血液試料と試薬と希釈液とを混合させて測定試料を調製させ(ステップS187)、調製された測定試料を光学検出部513へ供給して、側方散乱光信号、前方散乱光信号、蛍光信号のピーク及びパルス幅等のパラメータを含む測定データを取得する(ステップS188)。制御部515は、かかる測定データを情報処理ユニット52へ送信し(ステップS189)、処理を終了する。
情報処理ユニット52は、受信した測定データを解析処理して、血液試料に含まれる血球を分類し、血球の種類毎に血球数を係数する。また、情報処理ユニット52は、スキャッタグラム又はヒストグラムを作成し、検体ID及びこれらの分析結果を含む分析結果データをハードディスク521dに記憶する。また、分析結果を示す分析結果画面を画像表示部522に表示する。
<試料収容装置4の動作>
最も搬送下流側の試料搬送装置3から送出されたサンプルラック9は、試料収容装置4に導入される。試料収容装置4は、かかるサンプルラックをラック載置部上で搬送し、収容する。
(実施の形態2)
本実施の形態は、傾斜させた試料容器を撮像して得られた撮像画像に対して画像処理を行って撮像画像中の液面像の位置を検出し、その液面像の位置より上方の領域の画像に基づいて、試料容器内の血液試料の凝固判定を行い、また、直立状態の試料容器を撮像して得られた撮像画像に対して画像処理を行って試料容器中の血液量を検出し、これらの凝固判定結果及び血液量検出結果に基づいて、試料容器の搬送制御及び試料分注機構の動作制御を行う血液試料分析装置である。
[血液試料分析装置の構成]
図29は、本実施の形態に係る血液試料分析装置200の構成を示すブロック図である。血液試料分析装置200は、光学式フローサイトメトリー方式の多項目血球分析装置であり、血液試料に含まれる血球に関して側方散乱光強度、蛍光強度等を取得し、これらに基づいて試料中に含まれる血球を分類し、且つ、種類毎に血球数を計数し、このように分類された血球が種類毎に色分けされたスキャッタグラムを作成し、これを表示する。かかる血液試料分析装置200は、血液試料を測定する測定ユニット250と、測定ユニット250から出力された測定データを処理し、血液試料の分析結果を表示する情報処理ユニット270とを備えている。
図29に示すように、測定ユニット250は、試料分注部251と、測定試料調製部252と、光学検出部253と、信号処理回路254と、ラック搬送部255と、バーコードリーダ256,257と、水平回転機構258と、試料容器傾斜機構259と、制御部260とを備えている。ラック搬送部255は、サンプルラック9を搬送することが可能であり、試料分注部251によって試料容器8内の試料を吸引するための吸引位置までサンプルラック9に保持されている試料容器8を搬送し、また吸引が完了した試料容器8を吸引位置から移送するように構成されている。
ラック搬送部255には、分析前の試料容器8を収容したサンプルラック9を載置する分析前載置台と、分析後の試料容器8を収容したサンプルラック9を貯留する分析後載置台と、分析前載置台から前記吸引位置を経由して分析後載置台へと至るサンプルラック9の搬送路とが設けられている(図示せず)。搬送路には、水平回転機構258及び試料容器傾斜機構259が設けられており、また、当該搬送路上にあるサンプルラック9のラックバーコードを読み取るバーコードリーダ256と、試料容器8の検体バーコードを読み取るバーコードリーダ257とが設けられている。
また、試料容器傾斜機構259の前方には、2つのカメラ及び2つの白色LEDが配置されている。一方のカメラは、試料容器傾斜機構259によってサンプルラック9から引き出され、垂直状態で保持された試料容器8を撮像するためのものであり、他方のカメラは、試料容器傾斜機構259により垂直回転され、試料容器8の底部が蓋部8aよりも上方に位置する状態で保持された試料容器8を撮像するためのものである。これらのカメラは、撮像画像の電気信号を送信するケーブルにより情報処理ユニット270に接続されている。水平回転機構258、試料容器傾斜機構259、カメラ及び白色LEDの構成及び配置は、実施の形態1で説明したものと動様であるので、その説明を省略する。
なお、血液試料分析装置200のその他の構成は、実施の形態1で説明した血球分析装置5の構成と同様であるので、その説明を省略する。
[血液試料分析装置の動作]
次に、本実施の形態に係る血液試料分析装置の動作について説明する。図30A〜図30Cは、本実施の形態に係る血液試料分析装置200の動作の流れを示すフローチャートである。図30Aは、情報処理ユニット270による測定開始指示動作の流れを示すフローチャートであり、図30B及び図30Cは、血液試料分析装置200の試料の分析動作における測定ユニット250による試料の測定動作の流れを示すフローチャートである。
まず、ユーザが血液試料分析装置200を起動すると、測定ユニット250及び情報処理ユニット270のそれぞれにおいて初期化処理が実行され、測定ユニット250は測定スタンバイ状態となり、情報処理ユニット270はメイン画面(図示せず)を表示する。また、情報処理ユニット270には、検体(試料)番号、当該検体番号と関連付けられた患者の氏名、年齢、性別、診療科等の患者情報、及び分析項目等の情報を含む測定オーダが、ユーザの手入力により予め入力され、これらの測定オーダがハードディスクに記憶される。この状態で、メイン画面に表示されているスタートボタンがクリックされる等、ユーザによるスタート指示の操作が行われると、情報処理ユニット270のCPUが測定開始の指示を受け付け(図29AのステップS2101)、かかるイベントが発生したときには、ステップS2102の処理が呼び出される。
ステップS2102においては、情報処理ユニット270のCPUにより測定開始指示信号が生成され、当該信号が測定ユニット250へと送信される(図29AのステップS2102)。その後、CPUは、この測定開始指示動作に関する処理を終了する。かかる測定開始指示が与えられることにより、図29Bに示す測定ユニット250の測定動作が開始される。測定開始指示信号が測定ユニット250に受信されるというイベントが発生すると(図29BのステップS2131)、測定ユニット270の制御部260は、ラック搬送部255を制御する(ステップS2132)。なお、ステップS2132〜S2147の処理については、ステップS2141、S2143、及びS2147において、情報の送信先が情報処理ユニット270である他は、実施の形態1で説明したステップS103〜S118の処理と同様であるので、その説明を省略する。
情報処理ユニット270は、第1画像取込指示信号を受信した場合に、血液量検出処理を実行し、第2画像取込指示信号を受信した場合に、血液凝固判定処理を実行する。なお、血液量検出処理及び血液凝固判定処理は、実施の形態1において説明したものと同様であるので、その説明を省略する。また、情報処理ユニット270は、ラックID及び検体IDに対応する測定オーダを検索し、測定オーダ毎に、血液凝固判定処理により血液凝固が検出された試料については測定を行わないことを決定し、且つ、血液凝固が検出されなかった試料については、測定オーダと血液量検出処理により検出された血液量とにより、通常測定モードによる測定を行うか、微量測定モードによる測定を行うかを決定する。かかる処理については、測定オーダ情報の送信先が測定ユニット250である他は、実施の形態1において説明したステップ162〜S1613と同様であるので、その説明を省略する。
情報処理ユニット270から測定オーダ情報を受信するというイベントが発生すると(ステップS2148)、制御部260は、受信された測定オーダ情報を制御部260のメモリに格納する(ステップS2149)。その後、制御部260は、サンプルラックの保持位置を示す変数iに1をセットし(ステップS2150)、iが10以下であるか否かを判定する(ステップS2151)。iが10以下である場合には(ステップS2151においてYES)、制御部260は、保持位置iの試料容器8を試料分注部251が試料を吸引する吸引位置に移送し(ステップS2152)、メモリ内の測定オーダ情報から、保持位置iの試料に対する測定オーダが存在するか否かを判定する(ステップS2153)。測定オーダが存在しない場合には(ステップS2153においてNO)、制御部260は、ステップS2160へ処理を移す。
一方、保持位置iの試料に対する測定オーダが存在する場合には(ステップS2153においてYES)、制御部260は、この測定オーダ情報に微量測定モード指示データが含まれているか否かを判定し(ステップS2154)、微量測定モード指示データが含まれている場合には(ステップS2154においてYES)、試料分注部251に通常測定モードよりも少ない量の血液試料を吸引させ(ステップS2155)、微量測定モード指示データが含まれていない場合には(ステップS2154においてNO)、通常の量の血液試料を吸引させる(ステップS2156)。
次に制御部260は、測定試料調製部252に、吸引した血液試料と試薬と希釈液とを混合させて測定試料を調製させ(ステップS2157)、調製された測定試料を光学検出部253へ供給して、側方散乱光信号、前方散乱光信号、蛍光信号のピーク及びパルス幅等のパラメータを含む測定データを取得する(ステップS2158)。制御部260は、かかる測定データを情報処理ユニット270へ送信し(ステップS2159)、iを1だけインクリメントし(ステップS2160)、ステップS2151へ処理を戻す。ステップS2151において、iが10以下でない場合には(ステップS2151においてNO)、制御部260は、サンプルラック9を搬送下流側の貯留位置へ移送する(ステップS2161)。次に、制御部260は、ラック搬送部255の分析前載置台に分析前のサンプルラックが載置されている場合には(ステップS2162においてNO)、処理をステップ2132へと戻し、ラック搬送部255の分析前載置台に分析前のサンプルラックが載置されていない場合には(ステップS2162においてYES)、処理を終了する。
(その他の実施の形態)
なお、上述した実施の形態1及び2においては、傾倒された試料容器を撮像して得た画像の処理領域113におけるB輝度累積値を用いて血液面像の位置を検出する構成について述べたが、これに限定されるものではない。画像処理で液面像の位置を検出することができれば、どのような方法により液面像を検出してもよい。例えば、検出すべき液面像は液面の水平部分に相当するため直線状となっていることから、傾倒された試料容器を撮像して得た撮像画像を2値化し、血液部分とその他の部分とを異なる値として有する2値化画像を得、その2値化画像の「0」の領域と「1」の領域との境界の直線部分を液面像の位置として検出してもよい。
また、上述した実施の形態1及び2においては、血液面像の位置より上方の処理領域114の画像に対して画像処理を実行することにより、血液が凝固しているか否かを判定する構成について述べたが、これに限定されるものではない。傾倒された試料容器を撮像して得た撮像画像を2値化し、血液部分とその他の部分とを異なる値として有する2値化画像を得、その2値化画像の「0」の領域と「1」の領域との境界を検出し、その境界の直線部分の位置(液面像の高さ)を基準として、前記境界に前記直線部分から上方へ突出している部分、即ち、凝集塊の部分が存在するか否かを判定する構成としてもよい。
また、上述した実施の形態1及び2においては、血液試料の液面像よりも上方の処理領域114に含まれる全ての画素のうち、B値が所定値以下であり、且つ、R/B輝度比が所定値以下である画素を計数し、この画素数が所定値以上となる場合には、血液が凝固していると判定し、前記画素数が所定値未満である場合には、血液が凝固していないと判定する構成について述べたが、これに限定されるものではない。上記の処理領域114の画像に対して2値化処理を行って血液部分を例えば「0」とし、それ以外の部分を例えば「1」とし、このようにして得た血液部分の面積を所定の基準値と比較し、面積が基準値以上の場合には血液が凝固していると判定し、面積が基準値未満の場合には血液が凝固していないと判定する構成としてもよい。
また、上述した実施の形態1及び2においては、B値、B輝度累積値、R/B累積輝度比、及びR/B輝度比のB値に関連する値を用いて画像処理を行い、血液量検出及び血液凝固判定の処理を行う構成について述べたが、これに限定されるものではなく、B値の代わりにG値を用いてもよい。
また、上述した実施の形態1においては、血液試料分析システム1が血球分析装置5及び塗抹標本作製装置6を備える構成について述べたが、これに限定されるものではない。血球分析装置5及び塗抹標本作製装置6に代えて、血液凝固測定装置、免疫分析装置、生化学分析装置等、他の血液分析装置を備える構成としてもよい。また、血液試料分析システムは、これらの試料分析装置の中から任意の複数の試料分析装置を備える構成としてもよいし、1つの試料分析装置を備える構成としてもよい。
また、上述した実施の形態においては、コンピュータが画像処理プログラムの血液量検出処理及び血液凝固判定処理を実行することにより、システム制御装置7及び情報処理ユニット270として動作するコンピュータが試料容器中の血液量を検出し、また、試料容器中の血液試料の凝固の有無を判定する構成について述べたが、これに限定されるものではない。画像処理プログラムと同様の処理を実行することが可能なFPGA又はASIC等の専用ハードウェアにより、血液量検出処理及び血液凝固判定処理を実行する構成としてもよい。
また、上述した実施の形態1においては、試料チェックユニット22とは独立して設けられたシステム制御装置7によって、血液量検出処理及び血液凝固判定処理を実行する構成について述べたが、これに限定されるものではない。カメラ225a,225bが設けられた試料チェックユニット22にCPU等からなる画像処理部を内蔵させ、この画像処理部により血液量検出処理及び血液凝固判定処理を実行させる構成としてもよい。また、測定オーダの受信及び試料搬送装置3への測定オーダの送信を行うシステム制御装置7が血液量検出処理及び血液凝固判定処理を行う構成ではなく、血液量検出処理及び血液凝固判定処理を実行する専用の画像処理装置をシステム制御装置7とは別個に設ける構成としてもよい。
また、上述した実施の形態においては、単一のコンピュータ7aによりシステム制御プログラム74aの全ての処理を実行する構成について述べたが、これに限定されるものではなく、上述したシステム制御プログラム74aと同様の処理を、複数の装置(コンピュータ)により分散して実行する分散システムとすることも可能である。