JP5138855B2 - 糸状菌において発現されるdnaライブラリーのハイスループットスクリーニング - Google Patents

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Description

【0001】
発明の概要
本発明は、糸状菌宿主における、DNAライブラリー、特に合成、ゲノム、及びcDNAライブラリーの発現と続くスクリーニングについての方法を提供する。この系は、例えば、浸漬培養における効率的な胞子形成により、伝達性生殖要素を生成する、形質転換されたか又はトランスフェクトされた糸状菌株を利用する。真菌は、好ましくは、もつれた菌糸体の形成を最少化するか又は消失させる形態を示す。特に好ましい真菌株はまた、評価のために単離可能な量の外因性タンパク質を発現することも可能である。本発明の突然変異真菌株は、その伝達性生殖要素の産生、高レベルの発現、及び非常に低い培養粘度により、ハイスループットスクリーニング技術に特に好適である。
【0002】
発明の背景
天然に存在する微生物の集団は、広範囲の生化学及び代謝上の多様性を示す。部分的には、多くの微生物を単離して培養することが難しいために、これらの集団において存在する潜在的に価値のあるタンパク質及びポリペプチドの大多数が同定を免れている。実際、今日まで培養されているのは、全世界の微生物の1%未満であると推定されている。培養されたことがない未同定の微生物、さらに既知の微生物にも由来する、タンパク質、ポリペプチド及び代謝物の特徴づけに対する新たなアプローチへの切実なニーズがある。(本明細書で以下に使用される「タンパク質」という用語には、ペプチド及びポリペプチドも同様に包含されると理解するべきである。) また、上記のタンパク質の修飾及び/又は産生を可能にするように、これらのタンパク質をコードする遺伝子の同定及び単離への新たなアプローチに対するニーズも存在する。
【0003】
この問題に対する1つのアプローチは、Short により、米国特許第5,958,672号;6,001,574号、6,030,779号及び6,057,103号(これらの内容は参照により本明細書に援用されている)において説明されている。このアプローチでは、存在する可能性がある生物を単離するか又は培養することを試みるか、又は試みることなく、環境サンプル(例えば土壌サンプル)からゲノムDNAライブラリーが直接調製される。このDNAライブラリーを大腸菌(E. coli)のなかで発現させ、発現されたタンパク質を関心の特性又は活性についてスクリーニングする。Short は、この方法における真菌宿主細胞の使用を仄めかしているが、記載しても、可能であるともしていない。
【0004】
上記のアプローチではいくつかの重大な欠点が問題となるが、その1つは、大腸菌がイントロンを有する遺伝子を有効には発現しないことである。土壌微生物の種の約90%は真核生物(主に真菌)であり、これはそのゲノムDNAのなかにイントロンを概して有する。すでに約100,000種のユーミコタン(eumycotan)真菌が知られているが、推定1,000,000種がまだ発見されていないので(B. Kandrick, The Fifth Kingdom, Mycologue Publications 1999)、タンパク質及び代謝物が多様である潜在可能性は真菌ゲノムのなかでずっと高いはずである。しかしながら、イントロンがあるために、真菌のタンパク質及び代謝物レパートリーのほとんどは、細菌発現系の力が及ばないものである。多くのクラスの酵素(例、分泌性真菌リグニンペプチダーゼ、及びマンガン依存性ペルオキシダーゼ)は真菌に固有であるだけでなく、グリコシル化される酵素(例、リグニンペルオキシダーゼ、A. niger インベルターゼ)を含む、多くの真菌タンパク質が存在する。そして、そのようなタンパク質は、大腸菌により発現されると、グリコシル化されないであろう。真菌ゲノムの数がすっと多くて、サイズ及び複雑性もより大きいこと、多くの真菌タンパク質が独自であること、そして、多くの真菌タンパク質がグリコシル化されることは、いずれもゲノムDNAの細菌での発現により実際に検出され得る、ある環境サンプル内にある微生物タンパク質及び代謝物の多様性の分画が10%よりずっと少ないことを示す。
【0005】
部分的には、AIDSの広がりと臓器移植レシピエント集団の増加により、免疫寛容性又は免疫抑制の個体の集団が増加し、真菌感染の数及び多様性が急速に増加している(Infect. Med. 16: 380-382, 385-386 (1999))。抗真菌薬の新たなターゲットについての現在進行中の探索において、病原性真菌由来のタンパク質を同定して特徴づけることへのニーズがある。このためには、真菌ゲノムから誘導されるDNAライブラリーをスクリーニングする能力が必要とされる。また、真菌ゲノムにおけるイントロンの存在は、現在利用しうるほとんどの細菌宿主において、ゲノムDNAライブラリーの発現を困難にしている。また、抗生物質耐性菌による感染の罹患数も上昇し、抗菌活性を有する新たな真菌代謝物のハイスループットスクリーニングへのニーズを創出している。
【0006】
高等生物の真核ゲノムも、DNAライブラリーを細菌において完全に発現させるにはあまりに複雑である。あらゆる真核の種を考慮すると、細菌は既知のあらゆる種の約0.3%しか表さない(E. O. Wilson,「生物学的多様性の現状」,Biodiversity, ナショナル・アカデミー・プレス、ワシントンDC, 1988, 第1章)。従って、細菌発現系にかけられる世界の遺伝子多様性の分画はきわめて限られている。
【0007】
イントロンに絡む問題を避けるには、cDNAライブラリーを調製し、それを細菌において発現させることが可能である。しかしながら、このアプローチはRNA転写物の存在に依存するので、活発に転写されない遺伝子はこのライブラリーに表れないだろう。多くの所望されるタンパク質は、特定の条件においてのみ発現され(例えば、病原性真菌におけるビルレンス因子)、これらの条件は、mRNAが採取されるときに存在しない可能性がある。さらに、cDNAライブラリーを調製するのに十分なRNAを入手するには,かなりの量の生物を培養することが必要である。培養では十分に増殖しない環境サンプル中の生物、又は適当な培養条件が知られていない微生物では、十分なRNAが容易に、又は信頼し得るほどに得られないであろう。対照的に、ランダムプライマーか又はある種の遺伝子群を選好するように設計されたプライマーのいずれかを使用するPCR増幅により、ごく少数の個別細胞から十分なゲノムDNAを得ることができる。最後に、生物において高度に発現されている遺伝子は、mRNAでは過剰に表れる傾向があり、cDNAライブラリーでも、わずかに発現される遺伝子を犠牲にして過剰に発現されるものである。ゲノムライブラリーの代わりにcDNAライブラリーが利用される場合は、存在するmRNA種の高いレベルの適用範囲を有するために、ずっと多い数のクローンをスクリーニングしなければならない。なぜなら、ゲノムライブラリーのほうが存在する遺伝子の多様性により近似した代表を有するからである。明らかに、ともかくも可能であれば、ゲノムDNAライブラリーをスクリーニングすることがより望ましい。
【0008】
また、大腸菌は多くのタンパク質を分泌することができず、従って、スクリーニングが遺伝子産物の分泌に左右されるスクリーニング目的の宿主細胞として望ましくない。大腸菌、及び細菌の宿主全般にある追加の欠点は、数多くの真核タンパク質の活性に必要とされる翻訳後の修飾の多くを原核生物が提供し得ないことである。グリコシル化だけでなく、サブユニット開裂、ジスルフィド結合形成、及び適切なタンパク質の折りたたみは、活性タンパク質を産生するためにしばしば必要とされる翻訳後プロセシングの例である。
【0009】
そのようなプロセシングを保証するには、哺乳動物細胞を時々使用し得るが、哺乳動物細胞は維持するのが難しく、高価な培地を必要とし、一般的には高い効率で形質転換されない。cDNAライブラリースクリーニングの宿主として哺乳動物細胞を利用する努力がなされてきた(Schouten et al., WO99/64582)が、そのような形質転換系は、従って、タンパク質のハイスループットスクリーニングに好便ではない。ライブラリースクリーニングに先立って、形質転換されたプロトプラストを哺乳動物細胞と融合させることを含むアプローチが記載されている(米国特許第5,989,814号)が、細菌又は酵母では、タンパク質ライブラリーの発現が細胞融合に先立って起きてしまう。宿主細胞における発現の後でグリコシル化パターンを酵素的に修飾する努力もある(Meynial-Salles and Combes, J. Biotechnol., 46: 1-14 (1996))が、そのような方法は特定の産物について設計されなければならず、DNAライブラリーからのタンパク質の発現については適していない。より最近、Maras et al., Eur. J. Biochem., 249: 701-707 (1997)(米国特許第5,834,251号も参照のこと)は、ヒトGlcNAcトランスフェラーゼIを発現するように工学処理された Trichoderma reesei 株について説明した。この酵素は、N−アセチルグルコサミンを、他の発現された外因性タンパク質上のマンノース残基へ移動させる。これは天然の哺乳動物の産物をより密接に近似させることへの最初の工程である。
【0010】
酵母の宿主細胞としての使用は、上記の問題のいくつかを解決するが、他の問題も持ち込む。酵母は外因性タンパク質を過剰にグリコシル化する傾向があり(Bretthauer and Castellino, 1999, Biotechnol. Appl. Biochem. 30: 193-200)、変化したグリコシル化パターンにより、発現される哺乳動物タンパク質がしばしばきわめて抗原性になってしまう(C. Ballou, in Molecular Biology of the Yeast Saccharomyces, J. Strathern et al., eds., Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY, 1982, 335-360)。酵母は、限定された数のイントロンには対処し得るが、それらは、脊椎動物のようなより高等な種に由来する複雑な遺伝子を処理することが概してできない。糸状菌からの遺伝子でさえ、通常酵母にとっては複雑すぎて、効率よく転写することができず、そしてこの問題は、酵母と糸状菌との発現及びスプライシング配列における違いにより複雑化される(例えば、M. Innis et al., Science 1985 228: 21-26 を参照のこと)。こういった欠点にもかかわらず、酵母についての形質転換及び発現の系は、概してcDNAライブラリーを用いる使用について、精力的に開発されてきた。哺乳動物起源の天然で分泌される膜タンパク質(Klein, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1996 93: 7108-7113;Treco, 米国特許第5,783,385号)、及び異種の真菌タンパク質(Dalboge and Heldt-Hansen, Mol. Gen. Genet. 243: 253-260 (1994))及び哺乳動物タンパク質(Tekamp-Olson and Meryweather, 米国特許第6,017,731号)についてスクリーニングするために使用される酵母の発現系が開発されている。
【0011】
酵母発現系の文脈で使用される「酵母」という用語は、概して S. cerevisiae 及び Pichia pastoris のようなサッカロミセス(Saccharomycetales)目の生物を意味する。本明細書の目的によれば、「真菌」及び「真菌の」という用語は、Basidiomycetes(担子菌類)、Zygomycetes(接合菌類)、Oomycetes(卵菌類)及び Chythridiomycetes 及び Euascomycetes 綱の Ascomycetes(子嚢菌類)を意味すると理解されるべきであり、これらはサッカロミセス(Saccharomycetales)目ではない。糸状菌は、無性増殖期のその菌糸伸長、及び強制好気性の炭素異化により酵母から区別され得る(酵母における栄養成長は単細胞葉状体からの発芽により達成され、酵母は発酵異化を利用し得る)。
【0012】
真菌遺伝子産物の適切なイントロンスプライシング、及びグリコシル化、折りたたみ、及び他の翻訳後修飾は、真菌宿主種により最も効率よく処理され得て、土壌サンプルからゲノムDNAをスクリーニングすることについて糸状菌をもっとも優れた宿主にする。それは、プロテアーゼ、セルラーゼ、及びアミラーゼのような、実用上関心のもたれる真菌酵素の産生についても糸状菌を優れた宿主にする。また、糸状菌が、哺乳動物遺伝子を含む、他の真核遺伝子の産物を転写、翻訳、プロセシング、及び分泌することが可能であることも見出されている。最後の特性は、糸状菌を生物医学上関心のもたれるタンパク質の産生にとって魅力的な宿主にする。糸状菌により導入されるグリコシル化パターンのほうが、酵母により導入されるパターンよりも、哺乳動物タンパク質のそれにより密接に似ている。上記の理由から、異種タンパク質の発現のために真菌宿主系を開発することに多量の努力が払われてきて、数多くの真菌発現系が開発された。この領域の研究の概説については Maras et al., Glycoconjugate J., 16: 99-107 (1999);Peberdy, Acta Microbiol. Immunol. Hung. 46: 165-174 (1999);Kruszewsa, Acta Biochim. Pol. 46: 181-195 (1999);Archer et al., Crit. Rev. Biotechnol. 17: 273-306 (1997);及び Jeenes et al., Biotech. Genet. Eng. Rev. 9: 327-367 (1991) を参照のこと。
【0013】
真菌ゲノムから誘導されるDNAライブラリーのハイスループット発現及びアッセイも、現在機能が不明である多くの哺乳動物遺伝子に機能を特定するときに有用であろう。例えば、関心の活性又は特性を有する真菌タンパク質がひとたび同定されれば、コーディング遺伝子の配列をヒトのゲノム配列に比較して、相同遺伝子を捜し得る。
【0014】
Yelton et al., 米国特許第4,816,405号は、異種タンパク質を産生及び分泌するための糸状子嚢菌類(Ascomycetes)の修飾を開示する。Buxton et al., 米国特許第4,885,249号、及び Buxton and Radford, Mol. Gen. Genet. 196: 339-344 (1984) は、宿主細胞へ取込まれ得る選択マーカーを含有するDNAベクターによるアスペルギルス ニガー(Aspergillus niger)の形質転換を開示する。McKnight et al., 米国特許第4,935,349号及び Boel, 米国特許第5,536,661号は、アスペルギルス及び他の糸状菌における異種遺伝子の発現を指令し得るプロモーターを含む、アスペルギルスにおいて真核遺伝子を発現させる方法を開示する。Royer et al., 米国特許第5,837,847号、及び Berka et al., WO00/56900号は、天然及び突然変異の フサリウム属のプロモーターを利用する、Fusarium venenatum において使用する発現系を開示する。Conneely et al., 米国特許第5,955,316号は、アスペルギルスにおけるラクトフェリンの発現及び産生に適したプラスミド構築体を開示する。アスペルギルスではクラドスポリウム属のグルコースオキシダーゼがすでに発現された(米国特許第5,879,921号)。
【0015】
ニューロスポラでも同様の技術が使用されてきた。Lambowitz, 米国特許第4,486,533号は、糸状菌の自己複製DNAベクターと、ニューロスポラにおける異種遺伝子の導入及び発現についてのその使用を開示する。Stuart et al.は、米国特許第5,695,965号において、Neurospora crassa スフェロプラストの哺乳動物遺伝子及び内因性転写調節要素での同時形質転換を、米国特許第5,776,730号において、低下したレベルの細胞外プロテアーゼを有するニューロスポラの改良株を説明する。ニューロスポラの形質転換についてのベクターは、米国特許第5,834,191号に開示される。Takagi et al.は、米国特許第5,436,158号において、リゾープス属の形質転換系を説明する。Sisniega-Barroso et al.は、WO99/51756において、糸状菌の形質転換系を説明する。これはアスペルギルス アワモリ(Aspergillus awamori)由来のグルタミン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子のプロモーターを利用する。Dantas-Barbosa et al., FEMS Microbiol. Lett. 1998 169: 185-190 は、酢酸リチウム法又はエレクトロポレーションのいずれかを使用する、Humicola grisea var. thermonidea のハイグロマイシンB抵抗性への形質転換を説明する。
【0016】
より成功した真菌の発現系には、例えば Berka et al., 米国特許第5,578,463号に開示されるような、アスペルギルス及びトリコデルマのものがある。また、Devchand and Gwynne, J. Biotechnol. 17:3-9 (1991) 及び Gouka et al., Appl. Microbiol. Biotechnol. 47: 1-11 (1997) を参照のこと。Myceliophthora thermophila、Acremonium alabamense、Thielavia terrestris 及び Sporotrichum cellulophilum の形質転換株の例が、WO96/02563及び米国特許第5,602,004、5,604,129及び5,695,985号に示されているが、これらはアスペルギルス及びトリコデルマの系のある欠点を説明し、大規模なタンパク質の産生には他の真菌がより適していると示唆する。
【0017】
子嚢菌類以外の菌糸の形質転換についての方法が当技術分野で知られている;例えば、Munoz-Rivas et al., Mol. Gen. Genet. 1986 205: 103-106 (Schizophyllum commune);van de Rhee et al., Mol. Gen. Genet. 1996 250: 252-258 (Agaricus bisporus);Arnau et al., Mol. Gen. Genet. 1991 225: 193-198 (Mucor circinelloides);Liou et al., Biosci. Biotechnol. Biochem. 1992 56: 1503-1504 (Rhizopus niveus);Judelson et al., Mol. Plant Microbe Interact. 1991 4: 602-607 (Phytophthora infestans);及び de Groot et al., Nature Biotechnol. 1998 16: 839-842 (Agaricus bisporus) を参照のこと。
【0018】
例えばプロトプラスト融合のような、通常の糸状菌の形質転換法に加え、Chakraborty and Kapoor, Nucleic Acids Res. 18: 6737 (1990) は、エレクトロポレーションによる糸状菌の形質転換を説明する。De Groot et al., Nature Biotechnol. 16: 839-842 (1998) は、いくつかの糸状菌の Agrobacterium tumefaciens 仲介の形質転換を記載する。DNAの真菌へのバイオリスティック(biolistic)導入が実施されている;例えば、Christiansen et al., Curr. Genet. 29: 100-102 (1995);Durand et al., Curr. Genet. 31: 158-161 (1997);及び Barcellos et al., Can. J. Microbiol. 44: 1137-1141 (1998) を参照のこと。細胞の「磁気バイオリスティック」トランスフェクションについての磁気粒子の使用が米国特許第5,516,670号及び5,753,477号に説明され、糸状菌に適用し得ることが期待されている。
【0019】
真菌を宿主として使用する発現系を開発するために多くの研究がなされていることは明らかである。しかしながら、一般的な真菌宿主はいずれも糸状菌であり、非撹拌培養、及び撹拌されたバイオリアクター槽の非常に粘稠な懸濁(浸漬)培養において、絡み合った菌糸のマットを形成する傾向がある。上記の糸状菌の特性はまた真菌宿主細胞における酵素の工業生産にもいくつかの問題を引き起こす。例えば、菌糸体の濃密な凝集物の高粘度及び/又は局所形成は、撹拌、通気、及び栄養物の分散における困難につながる。一般に、糸状菌は、培養物の粘性により、懸濁培養物をマイクロタイタープレートへマイクロピペッティングすることに適していない。さらに、絡み合った菌糸体により、DNAライブラリーを発現する典型的な糸状菌の培養物は、大量スケールで分離クローンへ容易には分離されず、ハイスループットアッセイ系において必要とされるような個別遺伝子型の評価を妨げる。
【0020】
典型的な糸状菌は、定常撹拌の不在下で、液体培地の表面上にマットの形態で増殖する傾向があり、そこで気泡状の胞子が産生される。それらは、浸漬培養では概して胞子形成しない。上記の特性はいずれも、マイクロタイタープレートにおける糸状菌クローンの培養、及びそのような培養物のハイスループットスクリーニングの効率的な操作と使用に対して実質的な障害を呈示する。懸濁した胞子又は他の生殖コンピテント要素が個別のマイクロタイターウェルへの分離及び分配に適するのに対し、気泡状胞子の産生は、表面マットが形成される場合、マイクロタイターウェルの交叉汚染を導く。マット形成を防ぐのに必要とされる程度まで培地をマイクロタイターウェルにおいて撹拌することは、実現可能ではない。気泡状胞子の制御が困難な問題に加え、表面マットは光透過に干渉し、多くのアッセイ(特に、分光学的な吸光度アッセイ)を困難又は不可能にする。表面マットはまた、酸素添加、試薬及び栄養分の追加、及びピペッティングのような方法にも干渉する。
【0021】
培養物の物理特性に対する真菌形態の影響は認知されていて、より好ましい形態を有する天然に存在する株が、例えば Jensen and Boominathan, 米国特許第5,695,985号により説明されるように、同定されてきた。明瞭な枝分かれを有する、遊離した菌糸体の均一分散が、特に望ましい形態として説明された。Schuster and Royer, 国際特許出願WO97/26330号及び米国特許第6,184,026号は、異種タンパク質の工業生産により適した形態を有する真菌細胞を同定する同様の方法を示唆する。この方法は、特定の変化した形態を見出すために、親の真菌細胞株の野生株よりも、突然変異体をスクリーニングし、この突然変異体を形質転換し、そして、形質転換した突然変異体の培養物が親の細胞株より多くの異種タンパク質を産生するかどうかを評価することを含む。少なくとも10%以上の菌糸が枝分かれした突然変異体が特に請求される。この方法は、トリコデルマ、フサリウム及びアスペルギルスの株について示されていて、数多くの他の属に適用可能であることが示唆されている。
【0022】
アスペルギルス オリザエ(Aspergillus oryzae)突然変異体の培養粘度に対する枝分かれ頻度の効果が Bocking et al., Biotechnol. Bioeng. 65: 638-648 (1999) により試験されたが、この研究では、より高度に枝分かれした株ほど低い粘度を示した。Van Wezel et al., PCT出願WO00/00613号は、枝分かれを減少させる、及び/又は糸状微生物の断片化を増強することにより培養物の粘度を低下する方法を記載する。この方法は、ストレプトマイセス グリセウス(Streptomyces griseus)のSsgA遺伝子で微生物を形質転換することを含む。この方法は アクチノミセス(Actinomycetales)目の糸状細菌において明示されるが、糸状菌に適用され得ると述べられている。Dunn-Coleman et al., WO00/56893号は、HbrA2突然変異体 A. nidulans を記載し、これは42℃以上で増殖させると、過剰に枝分かれした表現型を示し、菌糸枝分かれの度合いと培養粘度との線形の関連性に関心をもった。
【0023】
糸状菌発現系の分野におけるほとんどのこれまでの努力は、酵素の工業産生に適した株の同定にこれまで向けられてきた。それ故に、培養物の粘度、形質転換の安定性、異種タンパク質の単位体積あたりの収量、及びバイオマスの比率としての収量に関心が集中してきた。DNAライブラリーが真菌において発現された;例えば、Gems and Clutterbuck, Curr. Genet. 1993 24: 520-524 を参照すること。ここではアスペルギルス ニデュランス(Aspergillus nidulans)ライブラリーが A. nidulans において発現された。Gems et al., Mol. Gen. Genet. 1994 242: 467-471 では、ペニシリウム属由来のゲノムライブラリーがアスペルギルスにおいて発現された。上記の報告はいずれも発現されるタンパク質のスクリーニングを開示も示唆もしなかった。DNAライブラリー由来の遺伝子の発現が示されたのは、突然変異対立遺伝子の宿主における相補性を介してである。この相補法は、検出することを望むそれぞれの外因性タンパク質活性に特定の突然変異体宿主を必要とし、一般的なライブラリースクリーニングのツールを提供するものではない。
【0024】
トリコデルマ レッセイ(Trichoderma reesei)における発現により、アスペルギルス ニガー(Aspergillus niger)インベルターゼ遺伝子のクローニングが Berges et al., Curr. Genet. 1993 24: 53-59 により記載された。選択マーカーを含有するコスミドベクターにおいて構築される A. niger ゲノムライブラリーを使用し、宿主として(スクロースを利用することができない)T. reesei を使用して、A. niger インベルターゼ遺伝子が、同胞選択法によりクローン化された。ここでは、再び、単一の発現される外因性タンパク質の存在を検出するには宿主のごく特異的な特徴が必要とされ、ゲノムライブラリーのスクリーニングについては開示されず、可能でなかった。
【0025】
DNAライブラリーの発現に適した真菌宿主細胞の特徴は、工業的なタンパク質の製造に適した宿主の特徴と多くの点で異なる。一般的には、ハイスループットスクリーニングに適した真菌宿主は、数多くの判定基準を満たすべきである。中でも以下のことである:
−宿主は高い効率で形質転換されなければならない。
−宿主はイントロン含有遺伝子をプロセスし、必要なスプライシングを実行しなければならない。
−宿主は、発現されるタンパク質が活性形態で産生されるように、翻訳後にプロセスしなければならない。
−ライブラリーがあるタンパク質についてアッセイされ得る場合、宿主はそのタンパク質をアッセイによる検出に十分高い収量で産生しなければならない。
−宿主は、使用の容易さと融通性のために、多様な発現調節要素を受入れるべきである。
−宿主は、容易に選択されるマーカーの使用を許容すべきである。
−宿主細胞培養物は低い粘度であるべきである。
−宿主は、プロテアーゼが不足している、及び/又はプロテアーゼ発現を抑制されすいものであるべきである。
−宿主は、多種多様な外因性タンパク質の活性又は特性についてのスクリーニングを許容しなければならない。
−宿主真菌の培養物における菌糸は、単一クローンの単離を妨げるほどに絡み合っていてはならず、小型化ハイスループットスクリーニングのフォーマットにおける(例えば、マイクロピペッティングによる)効率的な導入及び複製を妨げるまでに粘性を高めるほど絡み合ってはならない。
−宿主は表面マットを形成すべきでなく、浸漬培養物として選好的に増殖すべきである。
−宿主はハイスループットスクリーニングにおいて提供される増殖条件の下で、浸漬した胞子又は他のプロパギュールの効率的な産生を可能にすべきである。
【0026】
代謝物がスクリーニングされる場合は、宿主細胞が代謝物を培地へ分泌し、それらが容易に検出及び/又はアッセイされ得るならば、有利であろう。理想的には、宿主は外因性タンパク質だけを分泌するべきである。
【0027】
タンパク質がアッセイされる場合は、宿主が、そのタンパク質の単離及び精製を可能にするほど十分な異種タンパク質も発現すれば、特に有利であろう。この特徴をもった宿主細胞は、他の生物へ遺伝子を導入するのに必要とされる時間のかかる分子生物学的操作を用いずに、単に宿主細胞を培養することによって、すべての関心の異種タンパク質をさらに特徴づけることを可能にするだろう。好ましくは、より信頼し得て、より多様化したアッセイを可能にするので、宿主にはタンパク質の分泌が可能であるべきである。
【0028】
遺伝子そのもののさらなる研究及び修飾が実施され得るように、宿主細胞が、異種DNAの容易な単離に適していることも有利であろう。
こういった宿主の特質に加え、形質転換系はまたある種の特徴を示すべきである。形質転換頻度は、意味のあるスクリーニングに必要とされる形質転換体の数を生成するほどに高くなければならない。理想的には、外来タンパク質の発現は、単一プロモーターに作用する単一インデューサー、単一の経路によって誘導される。
【0029】
今日まで、上記判定基準のすべて、又はほとんどさえ満足させる宿主細胞及び形質転換系の組み合わせは1つも開発されていない。従って、DNAライブラリー、特にゲノム及び/又は真核ゲノムライブラリーの遺伝子産物を効率的に発現し得る真菌宿主細胞及び形質転換系へのニーズが存在する。
【0030】
発明の簡単な説明
本発明は、浸漬培養において増殖されるときに、「伝達性生殖要素(transferable reproductive element)」を産生する糸状菌を利用する。「伝達性生殖要素」は、(1)培地において他のそのような要素から容易に分離され、そして、(2)モノクローナル培養物へ自己生殖し得る、胞子、胎芽(propagule)、菌糸フラグメント、プロトプラスト、ミクロペレット、又は他の真菌要素を意味する。この真菌は、好ましくは、あまり明瞭でない糸状の表現型及び/又は密集した増殖形態も示し、そして、ハイスループットDNAライブラリーのスクリーニングに関わる物理的な操作に適した低粘度培養物を産生する。特に好ましいのは、撹拌の不在下でも、表面マットとしてではなく浸漬培養物として増殖する傾向がある糸状菌である。
【0031】
本発明は、国際特許出願PCT/NL99/00618及びPCT/EP99/202516に開示される形質転換系の諸特性を利用する。上記の出願は クリソスポリウム ルクノウェンス(Chrysosporium lucknowense)及び アスペルギルス ソーヤ(Aspergillus sojae)のような糸状菌宿主について効率的な形質転換系を説明する。上記の出願はまた、野生型宿主細胞の利点をすべて保持するが、その糸状表現型を幾分失って、従って低粘度培養物を提供する突然変異株が容易に調製されることを開示する。
【0032】
本発明における使用に好ましい真菌は多量の外因性タンパク質を発現及び分泌し、これまでに知られている糸状菌宿主に比べて高いタンパク質/バイオマスの比率をもたらす。本発明は高収量の形質転換体を示す形質転換系を提供する。本発明はまた、異種のcDNAインサート、及び特にゲノムDNAインサートのタンパク産物を効率的に発現する形質転換真菌のライブラリーを提供する。本発明のもう1つの側面では、形質転換された真菌のライブラリーが異種タンパク質の活性又は特性についてのスクリーニング、又は形質転換された真菌により外因性タンパク質の活性の結果として産生される代謝物についてのスクリーニング、又は誘導された異種のDNA又はRNA転写物についてのスクリーニングにおいて使用され得る。本発明が、上記の表現型の特徴を有する非形質転換株の代謝物についてのハイスループットスクリーニングも可能にすることが理解されよう。
【0033】
本明細書で使用される「突然変異糸状菌」という用語は、天然に見出されない真菌を単に意味する。密集した増殖形態、低粘度、減少したプロテアーゼレベル、浸漬増殖、等のような所望される表現型の特徴につながる「突然変異」は、UV照射及び化学突然変異誘発のような古典的手段か、又はカセット突然変異誘発のような分子生物学的手段のいずれかにより無作為に導入される場合があるか、又は遺伝子工学の方法により計画的に導入される場合がある。天然に存在する真菌が必要な特性を保有することが見出された場合、それは当然ながら本発明の方法に使用され得るだろう。
【0034】
本発明のさらにもう1つの側面では、形質転換された真菌のライブラリーが、例えば特に発現されるタンパク質又は代謝物の高レベル生産のような、真菌それ自身の有用な特性について、スクリーニングされ得る。本発明のこの側面は、タンパク質の産生、タンパク質のプロセシング、及びタンパク質の分泌の最も好ましい組み合わせを有する特定の形質転換体が検出され得る、関心の発現タンパク質についての定量的なアッセイにより明示される。
【0035】
本発明のもう1つの側面では、形質転換された真菌のライブラリーが、関心の核酸プローブにハイブリダイズし得るDNA配列の存在についてスクリーニングされ得る。
【0036】
発明の詳細な説明
最も広い側面では、本発明は、懸濁状態において伝達性生殖要素を作成する形質転換された糸状菌、そのような真菌のライブラリー、及び、発現される外因性タンパク質に関連するか又は代謝物、即ち、内因性及び/又は外因性の酵素により産生される低分子産物に関連した生化学又は生物学的活性のような、関心の生物学的特性についてそのようなライブラリーをスクリーニングする方法に向けられる。低粘度糸状菌のライブラリーは核酸配列を含有する真菌を含み、それぞれの核酸配列は異種タンパク質をコードし、前記核酸配列のそれぞれは発現調節領域と、所望により分泌シグナルコーディング配列及び/又は担体タンパク質コーディング配列に機能可能的に連結している。好ましくは、本発明による形質転換株は異種タンパク質を分泌する。
【0037】
本発明の発現及びスクリーニングの方法、及びそこにおいて利用される真菌は、多様な応用において有用性を有する真菌、タンパク質、代謝物、及びDNA分子の産生に有用である。本発明の方法はまた、核酸及びタンパク質の配列情報をもたらすのにも有用であり、この情報それ自体が特許請求される方法の貴重な産物とみなされる。
【0038】
本発明の好ましい糸状菌は培地の低粘度により特徴づけられる。典型的な工業用糸状菌が200センチポアズ(cP)よりかなり高い、通常1,000cP以上の粘度を有する培養物を産生する、さらに10,000cPまで達し得るのに対し、本発明の真菌は、最適又は最適に近い増殖条件の下、十分な栄養分の存在下で48時間又はそれ以上培養した後に、200cP未満、好ましくは100cP未満、より好ましくは60cP未満、最も好ましくは10cP未満の培養粘度を示す。本発明の糸状菌は、通常、短く、分離した、絡み合わない菌糸、又はミクロペレットにより特徴づけられる形態を示す。ミクロペレットは、より大きく、多数の絡み合ったクローンから誘導されるペレットとは異なるような、単一のクローンから生じる、わずかに絡み合っているか又は全く絡み合わない菌糸の集合物である。例えば、突然変異体のUV18−25クリソスポリウム ルクノウェンス(Chrysosporium lucknowense)株(粘度<10cP)、及び形態的に類似した突然変異体のトリコデルマ ロンギブラキアタム(Trichoderma longibrachiatum)X−252株(粘度<60cP)は、長さ100〜200ミクロンの短く、分離した、絡み合わない菌糸の存在により特徴づけられ、低粘度に工学処理された突然変異体のアスペルギルス ソーヤ(Aspergillus sojae)pclAは、かなり枝分かれした短い菌糸を持った密集形態により特徴づけられる(図14を参照のこと)。WO97/26330号に記載の低粘度真菌が「より広範な菌糸の枝分かれ」を有すると記載されているのに対し、本発明のいくつかの真菌は、非突然変異株に比較して、同等又はごくわずかに減少した菌糸の枝分かれを有する。培養物の粘度を制御することに主要な役割を担うのは菌糸の長さであるらしい。
【0039】
特に好ましい真菌の株は、分泌される外因性タンパク質/バイオマスの高い比率を有することによって特徴づけられる。この比率は、好ましくは1:1より大きく、より好ましくは2:1より大きく、さらにより好ましくは6:1又はそれより大きい。最も好ましくは、この比率は8:1又はそれ以上である。そのような高い比率がハイスループットスクリーニング環境において有利であるのは、それにより高濃度の外因性タンパク質が生じ、より高感度及び/又はより迅速なスクリーニングアッセイを可能にするからである。このことは、アッセイ溶液の容積が減少する、例えば96穴プレートから384穴プレートへ、さらに1536穴プレートへ移行するにつれて、特に利益がある。本発明の方法は、上記のマイクロタイタープレートフォーマットのいずれにも、及び液体サンプルを利用する他のほとんどのHTSフォーマットに適している。
【0040】
任意の糸状菌が、本明細書に記載の突然変異の方法により、本発明における使用に適した突然変異株へ変換され得る。好ましい糸状菌の属には、クリソスポリウム、チエラヴィア(Thielavia)、ニューロスポラ、アウレオバシジウム、フィリバシジウム、ピロミセス(Piromyces)、クリプトコッカス(Cryplococcus)、アクレモニウム、トリポクラジウム(Tolypocladium)、スクタリジウム(Scytalidium)、スキゾフィラム(Schizophyllum)、スポロトリクム、ペニシリウム、ギベレラ(Gibberella)、ミセリオフトラ(Myceliophthora)、ムコール、アスペルギルス、フサリウム、ヒュミコラ(Humicola)及びトリコデルマ、並びにそれらのアナモルフ(anamorph)及びテレオモルフ(telomorph)である。より好ましいのは、クリソスポリウム、トリコデルマ、アスペルギルス、及びフサリウムである。最も好ましいのはクリソスポリウムである。真菌の属及び種は、Barnett and Hunter, Illustrated Genera of Imperfect Fungi, 3rd Edition, 1972, Burgess Publishing Company に開示されるものに一致した形態により定義され得る。クリソスポリウム属の真菌の分類に関する詳細を提供する典拠は、Van Oorschot, C. A. N. (1980)「クリソスポリウム及び関連した属の改訂」Studies in Mycology No. 20, Centraal Bureau voor Schimmelcultures (CBS), Baarn, The Netherlands, pp. 1-36 である。上記の教示により、クリソスポリウム属は、Hyphomycetales 目に属する Moniliaceae 科に分類される。
【0041】
真菌の命名法に関する情報を提供するもう1つの手近な典拠は、ブダペスト条約の寄託、特にオンラインデータベースを提供するものである(以下のインターネットアドレスは http プロトコールを利用する)。ATCC(US)は www.atcc.org に、CBS(NE)は www.cbs.knaw.nl に、VKM(RU)は www.bdt.org.br.bdt.msdn.vkm/general に情報を提供する。もう1つの典拠は、NT.ars-grin.gov/fungaldatabase である。これらの機関は、真菌の種を区別する特徴に関する教示を提供し得る。Ascomycota の他の分類法は www.ncbi.nlm.nih.gov/htbin-post/Taxonomy/wgetorg?mode=Undef&id=4890 に見出し得る。このもう1つの分類法によると、クリソスポリウム属は Onygenaceae 科、Onygenales 目、Ascomucota 門に属する。
【0042】
クリソスポリウムの定義には、限定しないが、以下の株が含まれる:C. botryoides, C. carmichaelii, C. crassitunicatum, C. europae, C. evolceannui, C. farinicola, C. fastidium, C. filiforme, C. georgiae, C. globiferum, C. globiferum var. articulatum, C. globiferum var. niveum, C. hirundo, C. hispanicum, C. holmii, C. indicum, C. inops, C. keratinophilum, C. kreiselii, C. kuzurovianum, C. lignorum, C. lobatum, C. lucknowense, C. lucknowence Garg 27K, C. medium, C. medium var. spissescens, C. mephiticum, C. merdarium, C. merdarium var. roseum, C. minor, C. pannicola, C. parvum, C. parvum var. crescens, C. pilosum, C. pseudomerdarium, C. pyriformis, C. queenslandicum, C. sigleri, C. sulfureum, C. synchronum, C. tropicum, C. undulatum, C. vallenarense, C. vespertilium, C. zonatum が含まれる。
【0043】
C. lucknowense が特に興味深いクリソスポリウムの種であるのは、それがセルラーゼタンパク質の天然の高い生産者を提供しているからである(国際特許出願WO98/15633号、PCT/NL99/00618、及び米国特許第5,811,381及び6,015,707号)。Chrysosporium lucknowense 株の例は、国際寄託の受託番号のATCC 44006、CBS 251.72、CBS 143.77、CBS272.77、及びVKM F−3500Dである。さらにクリソスポリウムの定義に含まれるのは、天然でか、又は誘発された突然変異誘発のいずれかにより突然変異したものを含む、クリソスポリウムの前世代種から誘導される種である。本発明の方法は、1つの態様において、放射線照射と化学突然変異誘発の組み合わせにより得られるクリソスポリウムの突然変異体を利用するが、これは懸濁状態で伝達性生殖要素を産生する傾向があり、短く、分離した、絡み合わない菌糸により特徴づけられる形態(「密集増殖」)と、浸漬増殖と懸濁培養時における発酵培地の低粘度により特徴づけられる表現型を示す。もう1つの態様では、本発明は、表現型が類似したトリコデルマの突然変異体を利用する。さらに他の態様では、本発明は表現型が類似したアスペルギルス ソーヤ(Aspergillus sojae)又はアスペルギルス ニガー(Aspergillus niger)の突然変異体を利用する。
【0044】
例えば、VKM F−3500D(「C1」株)は、紫外光へさらすことによって突然変異され、UV13−6株を産生する。この株は、引き続きさらにN−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジンで突然変異され、NG7C−19株を産生した。この最後の株を紫外光により突然変異させ、UV18−25(VKM F−3631D)株を生じた。この突然変異プロセスの間に、形態上の特徴は液体培養又はプレート上において、並びに顕微鏡下で、やや変化した。それぞれの連続的な突然変異誘発ごとに、培養物は、クリソスポリウムの特徴であるとして説明される羽状及びフェルト状の外観をあまり示さなくなり、最後にコロニーはフラットでマット状の外観になった。ある培地の野生株で観察される褐色の色素は突然変異株ではほとんど見られなかった。液体培養では、突然変異体UV18−25は、顕著に、野生株C1や突然変異体UV13−6及びNG7C−19よりも粘性を欠いていた。すべての株はクリソスポリウムの全体的な顕微鏡下の特徴を維持していたが、菌糸体(mycelia)は連続した突然変異ごとに狭くなり、UV18−25では、菌糸体の独特の断片化が観察し得た。この菌糸体の断片化はUV18−25の培養に関連したより低い粘度の原因となり得る。株が気泡状に胞子形成する能力は、それぞれの突然変異工程ごとに減少した。上記の結果は、ある株がクリソスポリウム属に遺伝的には属しても、伝統的な分類(形態学)の定義からの逸脱を示す場合があることを示す。
【0045】
特に、クリソスポリウムのアナモルフ形態は、本発明によるスクリーニング応用に適していることが見出された。アナモルフの代謝はそれを高度の発現に特に適したものにする。アナモルフとテレモルフの遺伝子構成は同一であるので、テレモルフもまた適しているはずである。アナモルフとテレモルフの違いは、一方が無性状態であるのに対し、他方が有性状態であることであり、この2つの状態はある条件下では異なる形態を示す。
【0046】
もう1つの例は、遺伝子操作した Aspergillus sojae の突然変異株を具体化する。これら突然変異体の1つでは、特定のエンドペプチダーゼをコードする遺伝子が壊された。このことにより、亢進した枝分かれと短い菌糸を示す密集増殖の表現型、及び浸漬培養におけるミクロペレットの形成をもたらした。さらに、この応用において言及される Aspergillus sojae は、特定の浸漬培養条件下で効率的な胞子形成を示すように誘発され得るが、それにより、それはハイスループットスクリーニング系における使用に特に適したものになる。この場合、伝達性生殖要素の形成を導く条件は、EDTA 0.6g/mlを含有する合成培地だけから構成された。この導入条件は宿主ごとに異なるものだが、ある宿主が適していることが見出されれば、この条件がすぐに知られるのは明らかである。
【0047】
非毒性及び非病原性の真菌株を使用することが好ましく、その多くのものが当技術分野で知られていて、このことは実施者へのリスクを軽減し、スクリーニング法全体を簡略化するだろう。好ましい態様では、真菌は、外因性タンパク質の分解を最少化するほどにプロテアーゼが欠乏している、及び/又はプロテアーゼの産生が抑制されている。このプロテアーゼ欠乏株の発現宿主としての使用はよく知られている;例えば、PCT出願WO96/29391を参照のこと。プロテアーゼ欠乏株は、突然変異体をスクリーニングすることによって産生され得るか、又はプロテアーゼ遺伝子(群)を「ノックアウト」するか、又は、他のやり方では、例えば Christensen and Hynes, 米国特許第6,025,185号(非機能性のareA遺伝子を有するアスペルギルス オリザエ(Aspergillus oryzae))に記載のような、当技術分野で知られている方法により不活性化され得る。
【0048】
プロテアーゼの発現が低減されたクリソスポリウム突然変異体を創出し得ることが見出されていて、それにより、特にタンパク様の産物がプロテアーゼ活性に感受性がある場合は、それがタンパク様産物の産生にずっと適したものになる。このように、本発明はまた、非突然変異クリソスポリウム株、例えば C. lucknowense 株のC1(VKM F−3500D)よりもプロテアーゼを少なく産生する突然変異体のクリソスポリウム株を利用し得る。特に、そのような株の(分泌される融合タンパク質を開裂するように意図された選択プロテアーゼ以外の)プロテアーゼ活性は、C1株により産生される量の半分未満、より好ましくはその量の30%未満、及び最も好ましくはその量の約10%未満である。減少したプロテアーゼ活性は、スキムミルクプレート上に形成される輪の測定、又はウシ血清アルブミン(BSA)分解によるような、既知の方法により測定され得る。
【0049】
宿主糸状菌内の他の遺伝子、例えばセルラーゼや他の多量に分泌されるタンパク質をコードするものを不活性化し、宿主タンパク質によるアッセイの干渉を最少化することが所望され得る。分泌タンパク質をコードする遺伝子は、欠失させるか又は突然変異させ得る。あるいは、望まれないタンパク質の発現に関与する誘導系又は他の経路を制御する遺伝子を、そのような発現を低下させるように修飾してもよい。内因性プロモーターが本発明のベクター(以下参照)に利用される場合、同一のインデューサーの制御下にある他のタンパク質の遺伝子を不活性化することが特に望ましい場合がある。プロテアーゼ分泌の抑制を受けている真菌では、プロテアーゼの発現が環境条件に反応する調節要素の制御下にあるので、このような条件(例、アミノ酸濃度)は、プロテアーゼの産生を最少化するように操作し得る。
【0050】
好ましくは、選択される宿主における高い発現を可能にする相同発現調節領域が形質転換ベクターにおいて利用される。トリコデルマ又はアスペルギルスのような異種の宿主から誘導される高発現調節領域は当技術分野でよく知られていて、使用することもできる。例を挙げると、限定しないが、大量に発現されることが知られていて、従って本発明における使用に適した発現調節配列を提供するタンパク質の例は、ハイドロホビン、プロテアーゼ、アミラーゼ、キシラナーゼ、ペクチナーゼ、エステラーゼ、β−ガラクトシダーゼ、セルラーゼ(例、エンドグルカナーゼ、セロビオヒドロラーゼ)及びポリガラクツロナーゼである。
【0051】
発現調節領域は、発現されるタンパク質をコードする核酸配列に機能可能的に連結したプロモーター配列を含む。プロモーターは、発現される配列の開始コドンに対する位置づけが発現を可能にするように連結される。プロモーター配列は構成的であり得るが、好ましくは誘導性である。誘導性プロモーター及び好適な誘導培地の使用は、プロモーターに機能可能的に連結した遺伝子の発現に有利である。相同種から、又はあるタンパク質の発現を許容し得る異種株からの任意の発現調節配列が想定される。発現調節配列は、適切には、真菌の発現調節領域、例えば、ascomycete (子嚢菌)調節領域である。好適にも、子嚢菌の発現調節領域は、以下の属のいずれにも由来する調節領域である:アスペルギルス、トリコデルマ、クリソスポリウム、ヒュミコラ(Humicola)、ニューロスポラ、トリポアラジウム(Tolypoaladium)、フサリウム、ペニシリウム、タラロミセス(Talaromyces)、あるいはエメリセラ(Emericela)及びヒポクレア(Hypocrea)のようなそれらの他の有性形態。トリコデルマ由来のセロビオヒドロラーゼプロモーター;アスペルギルス由来のアルコールデヒドロゲナーゼA、アルコールデヒドロゲナーゼR、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、TAKAアミラーゼ、グルコアミラーゼ、及びグリセルアルデヒドリン酸デヒドロゲナーゼのプロモーター;ニューロスポラのホスホグリセリン酸及び交叉経路調節プロモーター;Rhizomucor miehei のリパーゼ及びアスパラギン酸プロテイナーゼのプロモーター;Penicillium canescens のβ−ガラクトシダーゼプロモーター;及びクリソスポリウム由来のセロビオヒドロラーゼ、エンドグルカナーゼ、キシラナーゼ、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼA、及びプロテアーゼのプロモーターが代表例である。宿主に対して特に適応される可能性がより高いので、宿主株と同一の属に由来する発現調節配列が好ましい。
【0052】
非常に大量にタンパク質を発現する、クリソスポリウムの株に由来する天然の発現調節配列が特に好ましい。そのような株の例は、モスクワの全ロシアコレクション(VKM)寄託研究所を有するブダペスト条約により寄託されてきた。野生型C1株はVKM F−3500D(寄託日:29−08−1996)を有し、C1 UV13−6突然変異体はVKM F−3632D(寄託日:02−09−1998)の番号で寄託され、C1 NG7C−19突然変異体はVKM F−3633D(寄託日:02−09−1998)の番号で寄託され、C1 UV18−25突然変異体はVKM F−3631D(寄託日:02−09−1998)の番号で寄託された。これらの株は低粘度突然変異の産生の供給源としても好ましく、実際、VKM F−3631D株は必要な低粘度表現型をすでに示す。X−252と明示された、低粘度突然変異のトリコデルマ株は、T. longibrachiatum(ATCC 26921)のQM 9414株の突然変異により誘導された、Trichoderma longibrachiatum 18.2KK を2ラウンド放射線照射した後に得られた。他の態様では、本発明は、Aspergillus sojae 及び Aspergillus niger の表現型が類似した突然変異体を利用する。
【0053】
好ましくは、宿主がクリソスポリウムである場合、クリソスポリウムのプロモーター配列は、宿主によるその認識が十分保証されるように利用される。ある種の異種発現調節配列も、ネーティブなクリソスポリウムの配列と同じくらい効率的にクリソスポリウムにおいて機能する。このことは、クリソスポリウムの形質転換に使用され得る有名な構築体及びベクターを可能とし、この宿主において高率の形質転換及び発現を可能にするベクターを構築する他の多くの可能性を提供する。例えば、例えば Christiansen et al., Bio/Technology 1988 6: 1419-1422 による記載のように、標準的なアスペルギルス形質転換技術を使用し得る。アスペルギルス形質転換ベクターの詳細を提供する他の文献、例えば、米国特許第4,816,405、5,198,345、5,503,991、5,364,770、5,705,358、5,728,547及び5,578,463号、EP−B−215.594(トリコデルマについても)とその内容は参照により本明細書に組込まれている。クリソスポリウム株ではセルラーゼについてきわめて高い発現率が観察されたので、セルラーゼ遺伝子の発現調節領域は特に好ましい。
【0054】
本発明のベクターは、酵素、好ましくは分泌される酵素をコードする遺伝子から誘導されるプロモーター配列を含み得る。プロモーター配列を取り得る好適な酵素の例は、炭水化物分解酵素(例、セルラーゼ、キシラナーゼ、マンナナーゼ、マンノシダーゼ、ペクチナーゼ、アミラーゼ、例えばグルコアミラーゼ、α−アミラーゼ、α−及びβ−ガラクトシダーゼ、α−及びβ−グルコシダーゼ、β−グルカナーゼ、キチナーゼ、キタナーゼ)、プロテアーゼ(エンドプロテアーゼ、アミノプロテアーゼ、アミノ−及びカルボキシ−ペプチダーゼ)、他の加水分解酵素(リパーゼ、エステラーゼ、フィターゼ)、オキシドレダクターゼ(カタラーゼ、グルコース−オキシダーゼ)及びトランスフェラーゼ(トランスグリコシラーゼ、トランスグルタミナーゼ、イソメラーゼ及びインベルターゼ)である。クリソスポリウム ルクノウェンス(Chrysosporium lucknowense)由来のいくつかの例を表Aに示す。
【0055】
核酸構築体は、好ましくはクリソスポリウム、より好ましくは Chrysosporium lucknowense 又はその誘導体に由来する、発現されるタンパク質をコードする核酸配列に機能可能的に連結した、核酸発現調節領域を含む。特に好ましい核酸構築体は、セルラーゼ又はキシラナーゼの発現、好ましくはセロビオヒドロラーゼの発現、最も好ましくは表Aに記載の55kDaセロビオヒドロラーゼ(CBH1)の発現に関連したクリソスポリウム由来の発現調節領域を含む。さらなる例としては、ハイドロホビン、プロテアーゼ、アミラーゼ、キシラナーゼ、エステラーゼ、ペクチナーゼ、β−ガラクトシダーゼ、セルラーゼ(例、エンドグルカナーゼ、セロビオヒドロラーゼ)及びポリガラクツロナーゼのクリソスポリウムプロモーター配列も本発明の範囲に該当すると考察される。
【0056】
【表1】
Figure 0005138855
表Aに開示される酵素発現のプロモーター又は調節領域のいずれもが適切にも利用され得る。これらのプロモーター及び調節領域の核酸配列は、クリソスポリウム株から容易に得られる。プロモーター配列を決定し得る方法は数多くあり、当技術分野でよく知られている。一般に、プロモーター配列は、関連遺伝子のはじめにあるATG開始コドンの直前に見出される。例えば、プロモーター配列は、関連遺伝子の上流にある配列を欠失させること、組換えDNA技術を使用すること、及び上記の欠失の遺伝子発現に及ぼす影響を検査することによって同定され得る。また、例えば、関連遺伝子の上流領域の配列をコンセンサスプロモーター配列と比較することによって、しばしば推量され得る。
【0057】
例えば、C1エンドグルカナーゼのプロモーター配列は、対応する遺伝子をクローニングすることによって、このやり方(PCT/NL99/00618を参照のこと)で同定された。本発明による好ましいプロモーターは、クリソスポリウム由来の55kDaセロビオヒドロラーゼ(CBH1)、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼA、及び30kDaキシラナーゼ(XylF)のプロモーターであり、これらの酵素はそれ自身のプロモーターにより高レベルで発現される。Chrysosporium lucknowense、特に C. lucknowense GARG 27K の炭水化物分解酵素のプロモーターは、有利にも、他の真菌宿主生物においてタンパク質のライブラリーを発現することに使用され得る。
【0058】
本発明による核酸配列の特別な態様は、クリソスポリウム、アスペルギルス及びトリコデルマについて知られている。クリソスポリウムのプロモーターはPCT/NL99/00618に記載されている。先行技術は、アスペルギルスにおける使用のために数多くの発現調節領域を提供する。例えば、米国特許第4,935,349;5,198,345;5,252,726;5,705,358;及び5,965,384号;及びPCT出願WO93/07277号。トリコデルマにおける発現が米国特許第6,022,725号に開示される。上記特許の内容はそのまま参照により本明細書に組込まれている。
【0059】
ヒドロホビン遺伝子は高度に発現される真菌遺伝子である。従って、好ましくはクリソスポリウム由来のヒドロホビン遺伝子のプロモーター配列が、本発明の好適な態様における発現調節配列として、好適にも適用され得る。トリコデルマレッセイ(Trichoderma reesei)及びトリコデルマ ハルジアナム(Trichoderma harzianum)のヒドロホビン遺伝子の配列は、アスペルギルス フミゲイタス(Aspergillus fumigatus)及びアスペルギルス ニデュランス(Aspergillus nidulans)の遺伝子配列と同様に、例えば先行技術において開示され、関連する配列情報は参照により本明細書に組込まれている(Nakari-Setala et al., Eur. J. Biochem. 1996, 235: 248-255;Parta et al., Infect. Immun. 1994 62: 4389-4395;Munoz et al., Curr. Genet. 1997, 32: 225-230;及び Stringer et al., Mol. Microbiol. 1995 16: 33-44)。上記の配列情報を使用して、当業者は、上記に示唆されるような標準技術に従って不適当な実験をせずに、クリソスポリウムヒドロホビン遺伝子の発現調節配列を得ることができる。本発明により組換えクリソスポリウム株は、異種タンパク質をコードする配列に機能可能的に連結したヒドロホビン調節領域を含み得る。
【0060】
発現調節配列はまた追加的に、エンハンサー又はサイレンサー(silencer)を含み得る。これらは先行技術においてもよく知られていて、通常、プロモーターからやや離れたところに位置づけられる。発現調節配列はまた、アクチベーター結合部位及びリプレッサー結合部位を有するプロモーターも含み得る。場合によっては、そのような部位がこのタイプの調節をなくすために修飾され得る。例えば、creA部位が存在する糸状菌プロモーターが説明されている。このcreA部位は、creAの存在から通常生じるグルコース抑制が除去されることを保証するように、突然変異され得る。そのようなプロモーターの使用は、グルコース存在下でプロモーターにより調節される核酸配列によりコードされるタンパク質のライブラリーの産生を可能にする。この方法はWO94/13820及びWO97/09438号に例示される。これらのプロモーターはそのcreA部位と一緒か、又は一緒でなく使用され得る。creA部位が突然変異した突然変異体は、本発明により、組換え株の発現調節配列として使用され得て、次いで、それが調節する核酸配列のライブラリーがグルコースの存在下で発現され得る。そのようなクリソスポリウムのプロモーターは、WO97/09438号に示されるものに類似したやり方で脱抑制を確実にする。creA部位の同一性は先行技術から知られる。他のやり方では、突然変異していないCreA結合部位を有するプロモーターを、抑制系のどこにでも、例えばcreA遺伝子そのものの中に突然変異を有する宿主株に適用し、その株が、creA結合部位の存在にもかかわらず、グルコースの存在においてタンパク質のライブラリーを産生し得るようにすることが可能である。
【0061】
ターミネーター配列も発現調節配列であり、これらは、発現される配列の3’末端に機能可能的に連結している。多種多様な既知の真菌ターミネーターが本発明の宿主株において機能的であり得る。この例は、A. nidulans のtrpCターミネーター、A. niger のα−グルコシダーゼターミネーター、A. niger のグルコアミラーゼターミネーター、Mucor miehei のカルボキシプロテアーゼターミネーター(米国特許第5,578,463号を参照のこと)、及び Trichoderma reesei のセロビオヒドロラーゼターミネーターである。クリソスポリウムのターミネーター配列、例えばEG6ターミネーターも、当然ながら、クリソスポリウムにおいて十分機能する。
【0062】
本発明による使用に適した形質転換ベクターは、シグナル配列をコードする配列に機能可能的に連結した、発現される外因性の核酸配列を所望により有し得る。シグナル配列は、発現されるタンパク質のアミノ酸配列に機能可能的に連結されるとき、宿主細胞からのタンパク質の分泌を可能にするアミノ酸配列である。このようなシグナル配列は異種タンパク質に関連したものであり得るか、又はそれは宿主にとってネーティブなものであり得る。シグナル配列をコードする核酸配列は、シグナル配列及び異種タンパク質の翻訳を許容するようにインフレームで位置づけなければならない。シグナル配列が特に好ましいのは、本発明が指令された分子進化とともに使用され、単一の、分泌される外因性タンパク質が進化される場合である。
【0063】
関心のタンパク質を発現する確率を減少させるので、ライブラリーを発現するために使用され得るベクターにシグナル配列を取込むことはあまり有利ではないことが理解される。DNAを無作為に切断し、ベクターへクローニングすることによって製造されるゲノムライブラリーでは、ライブラリーの遺伝子のシグナル配列へのインフレームの融合を得る確率は低い。また、インフレームの融合が得られた場合でも、選択されたシグナル配列は必ずしもすべての遺伝子に機能しているわけではない。こういった理由から、ゲノムDNAライブラリーをスクリーニングするときには、シグナル配列を利用せずに、細胞内の外因性タンパク質の活性又は存在についてスクリーニングすることが好ましい場合がある。細胞内タンパク質の活性又は存在の分析は、形質転換体のライブラリーを、真菌細胞をプロトプラストへ変換する酵素で前処理し、次いで溶解することによって達成され得る。この方法については van Zeyl et al., J. Biotechnol. 59: 221-224 (1997) により説明されている。この方法がクリソスポリウムに適用され、マイクロタイタープレートで増殖したクリソスポリウム形質転換体からのコロニーPCRを可能にした。
【0064】
クリソスポリウム株からのタンパク質の分泌を許容し得る任意のシグナル配列が想定される。そのようなシグナル配列は、好ましくは真菌のシグナル配列であり、より好ましくは、Ascomycete のシグナル配列である。好適なシグナル配列は、一般には真核生物、好ましくは酵母から、又は以下の真菌の属から誘導され得る:アスペルギルス、トリコデルマ、クリソスポリウム、ピキア(Pichia)、ニューロスポラ、リゾムコール、ハンセヌラ、ヒュミコラ(Humicola)、ムコール、トリポクラジウム(Tolypocladium)、フサリウム、ペニシリウム、サッカロマイセス、タラロミセス(Talaromyces)、又は エメリセラ(Emericella)及びヒポクレア(Hypocrea)のような、それらの交代する性形態。特に有用であるシグナル配列は、セロビオヒドロラーゼ、エンドグルカナーゼ、β−ガラクトシダーゼ、キシラナーゼ、ペクチナーゼ、エステラーゼ、ヒドロホビン、プロテアーゼ又はアミラーゼにネーティブに関連したものである。この例には、アスペルギルス又は Humicola のアミラーゼ又はグルコアミラーゼ、Aspergillus oryzae のTAKAアミラーゼ、Aspergillus niger のα−アミラーゼ、ムコールのカルボキシペプチダーゼ(米国特許第5,578,463号)、リゾムモラ ミエヘイ(Rhizomucor miehei)からのリパーゼ又はプロテイナーゼ、トリコデルマのセロビオヒドロラーゼ、クリソスポリウム由来 ペニシリウム カネセンス(Penicillium canescens) CBH1 のβ−ガラクトシダーゼ、及びサッカロマイセスのα−接合因子が含まれる。
【0065】
あるいは、シグナル配列は、バシラス株のアミラーゼ又はズブチリシン遺伝子からであり得る。宿主株と同一の属からのシグナル配列がきわめて適しているのは、それが特定の宿主に対し特異的に適応される可能性が最も高いからであり;従って、Chrysosporium lucknowense が宿主である場合、シグナル配列は、好ましくはクリソスポリウムのシグナル配列である。クリソスポリウム株のC1、UV13−6、NG7C−19及びUV18−25はごく多量にタンパク質を分泌し、これらの株からのシグナル配列は特に興味深い。糸状菌及び酵母からのシグナル配列は、非真菌起源のシグナル配列と並んで有用であり得る。
【0066】
さらに、本発明の態様のいずれかによる形質転換された組換え宿主真菌は、選択されるマーカーを含み得る。そのような選択マーカーは、形質転換されたか又はトランスフェクトされた細胞の選択を可能にする。選択マーカーは、非形質転換株ににとっては外来の特定を抵抗タイプを提供する遺伝子産物をしばしばコードする。これは、重金属、抗生物質又は殺生物剤全般への抵抗性であり得る。原栄養性も、抗生物質でない多様性の有用な選択マーカーである。独立栄養性のマーカーは宿主細胞において栄養の欠乏を産生し、これらの欠乏を矯正する遺伝子が選択のために使用され得る。通常使用される抵抗性及び独立栄養性の選択マーカーの例は、amdS(アセトアミダーゼ)、hph(ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ)、pyrG(オロチジン−5’−リン酸デカルボキシラーゼ)、及びpyrE(オロト酸P−リボシルトランスフェラーゼ)、trpC(アントラニレートシンターゼ)、argB(オルニチンカルバモイルトランスフェラーゼ)、sC(硫酸アデニルトランスフェラーゼ)、bar(ホスフィノスリシンアセチルトランスフェラーゼ)、niaD(硝酸レダクターゼ)、Sh−ble(ブレオマイシン−フレオマイシン抵抗性)、変異アセト乳酸シンターゼ(スルホニル尿素抵抗性)、及びネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(アミノグリコシド抵抗性)である。クリソスポリウムにおける好ましい選択マーカーは、オロト酸P−リボシルトランスフェラーゼである。選択は共形質転換により実行され得るが、ここでは選択マーカーが別のベクター上にあるか、又は選択マーカーは、異種タンパク質のタンパク質コーディング配列と同じ核酸フラグメント上にある。
【0067】
形質転換頻度のさらなる改善は、AMA1レプリケーター配列の使用により獲得され得るが、これは、例えば Aspergillus niger において有用である(Verdoes et al., Gene 146: 159-165 (1994))。この配列は、数多くの異なる糸状菌の形質転換頻度において10〜100倍の増加をもたらす。さらに、導入されたDNAは、真菌細胞において、多重コピーの形式で、真菌ゲノムへ組込まれずに自律的に維持される。このことは、非組込み状態により異なる形質転換体の遺伝子発現レベルにおける変異が減少するので、本発明のハイスループットスクリーニング法にとって有益であると期待される。さらに、導入されたDNAが宿主DNAと組換えないので、宿主ゲノムにおいては望ましくない突然変異が起こらないはずである。外因性遺伝子の均一なレベルの発現が、AMA1のような自己複製ベクターの使用により獲得され得るか、あるいは、真菌における自己増殖はテロメア配列により促進され得る(例えば、A. Aleksenko and L. Ivanova, Mol. Gen. Genet. 1998 260: 159-164 を参照のこと)。
【0068】
本明細書で使用されるように、「異種タンパク質」という用語は、本発明により発現のために使用される宿主株により通常は発現又は分泌されないタンパク質又はポリペプチドである。異種タンパク質は原核性の起源であり得るか、又はそれは真菌、植物、昆虫、又は哺乳動物のような高等動物から誘導され得る。医薬スクリーニングの目的には、きわめてしばしば、ヒトのタンパク質への選好性が存在するので、好ましい態様は、DNAライブラリーがヒト起源である宿主である。従って、そのような態様はまた、本発明の好適な実施例ともみなされる。
【0069】
ヒトゲノムDNAライブラリーから誘導されるヒト遺伝子ライブラリーの、本発明の糸状菌における発現はいくつかの理由で効率的であることが期待される。ヒト遺伝子の平均サイズは3,000〜5,000bpであること、及びヒトのイントロンは平均約75〜約150bpである(全範囲は40〜>50,000)ことが今日知られている。糸状菌は40〜75bpのイントロンを有するが、それらは長さ500bpまでのイントロンを処理し得る。平均すると、ヒトの遺伝子は、1遺伝子あたり3〜5個のイントロンを担う(M. Deutsch, M. Long, Nucl. Acids Res. 1999 27: 3219-3228; 表B)。ヒトのシグナル配列はまた糸状菌において機能することが知られている。上記の理由から、本発明の方法により、大変多くのヒト遺伝子が高レベルで発現及び分泌され得る可能性がある。
【0070】
【表2】
Figure 0005138855
従って、本発明の方法は、原核及び真核ゲノムの両方から誘導されるDNAライブラリーの発現に有用であることが期待される。上記に説明されたように、本発明の方法は、非常に多くの遺伝子及びタンパク質へ容易に接近し、分泌タンパク質と細胞内タンパク質の両方の発現及び発見が可能である。
【0071】
本発明のさらなる側面には、真菌の突然変異体ライブラリーの構築及びスクリーニングが含まれ、この方法により調製される真菌の突然変異体ライブラリーが本明細書に開示される。該ライブラリーは、本発明により、当業者に知られた方法を使用して、組込み又は非組込みの形質転換の手段を用いて、真菌宿主の形質転換により得ることができる。好ましい宿主株に基づいた、この真菌のライブラリーは、小型化及び/又はハイスループットフォーマットスクリーニング法において、外因性タンパク質の所望される特性及び活性について処理及びスクリーニングされ得る。関心の特性及び活性とは、ライブラリーメンバーの外因性タンパク質に関連した物理的、物理化学的、化学的、生物学的、又は触媒的な特性、又はそのような特性における改善、増加、又は減少を意味する。このライブラリーはまた、外因性及び/又は内因性タンパク質の存在の結果として産生される代謝物について、又は代謝物に関連した特性又は活性についてもスクリーニングされ得る。このライブラリーはまた、そのようなタンパク質又は代謝物の増加又は減少した量を産生する真菌についてもスクリーニングされ得る。
【0072】
本発明のもう1つの側面では、形質転換された真菌のライブラリーは、所望される特性を有する真菌代謝物の存在についてスクリーニングされ得る。そのような代謝物の例には、ポリケタイド、アルカロイド、及びテルペノイドの天然産物が含まれる。本発明の宿主細胞へは多数の遺伝子又は遺伝子クラスター(オペロン)が導入され得ること、及びコード化される酵素の作用により産生される非タンパク質産物が宿主細胞において産生されることが予測される。例えば、ロバスタチンの産生に必要なタンパク質をコードするDNAが Aspergillus oryzae へ導入し得ることが示されている(米国特許第5,362,638号;また、米国特許第5,849,541号も参照のこと)。
【0073】
本発明のもう1つの態様では、形質転換された真菌のライブラリーが、関心の核酸プローブへハイブリダイズするDNAの存在についてスクリーニングされ得る。この態様では、外因性タンパク質の発現及び/又は分泌は、しばしば依然として望ましいものの、必須ではない。タンパク質の発現が必要とされない場合、ベクターには調節配列が必要でないと理解される。
【0074】
本発明のさらにもう1つの態様では、形質転換された真菌のライブラリーが、例えば、物理的又は化学的に極端な環境への耐性、あるいは関心の物質を産生、修飾、分解又は代謝する能力のような、真菌それ自身の所望される特性についてスクリーニングされ得る。そのような望ましい特性は、単一の外因性タンパク質の存在に帰せられ得るか、又は得ない。この態様は、指令進化の方法の一部として利用されるときに特に有用である。
【0075】
異種DNAは、当技術分野でよく知られている方法により生物学的標本から調製される、ゲノムDNA又はcDNAである。生物学的標本は環境のサンプル(例えば、土壌、堆肥、森林の葉積、海水、又は淡水)、又はそれから抽出、濾過、又は遠心分離するか他の方法で濃縮したサンプルであり得る。環境サンプルから誘導される微生物の混合培養物も同じように利用し得る。生物学的サンプルはまた、培養微生物、又は植物、昆虫、又は哺乳動物のような他の動物のような単一の生物種から誘導される場合もある。さらに、異種DNAは合成又は半合成の、例えば、ランダムDNA配列、又はシャッフルされ、突然変異されるか、又は他の方法で変化された天然に存在する断片を含んでなるDNAであり得る。半合成核酸ライブラリーの例は、Wagner et al., WO00/0632号に見出せる。環境サンプル(又はそれから誘導される混合培養物)由来のDNAが新規タンパク質の発見に有利であるのに対し、単一種由来のDNAの使用は、(1)適当なベクターがより賢明に選択されること、及び(2)関心のタンパク質が同定された場合に、実施者がさらなるスクリーニングのために関連又は類似の種へ指向されることにおいて有利であろう。
【0076】
伝統的な真菌宿主に比較して、密集菌糸の形態を示すクリソスポリウム株であるUV18−25を使用すると、形質転換、発現及び分泌の速度が著しく高くなる。このように、本発明による組換え株は、好ましくは、そのような形態を示す。しかしながら、本発明はまた、この特徴を示す真菌の非組換え株、又は他の方法で処理した株も網羅する。本発明の魅力的な態様は、NG7C−19株のそれより低い、好ましくはUV18−25のそれより低い粘度を、対応するか又は同一の培養条件の下で示す、組換えクリソスポリウム株を利用する。我々は、UV18−25の培養物の粘度が10cP未満であることを決定した。これに対し、最適培養条件下で、発酵中期〜後期での以前に知られた Trichoderma reesei のそれは200〜600cPのオーダーであり、伝統的な Aspergillus niger のそれは1500〜2000cPである。従って、本発明はこの低粘度特性を示す、クリソスポリウムのUV18−25(VKM F−3631D)株、トリコデルマのX252株、又は(ATCC 11906から誘導される)A. sojae pclA、又は A. niger pclAのような、操作されたか又は突然変異体の糸状菌を利用し得る。
【0077】
糸状菌培養物の流動性は、ほとんど固体から自由流動する液体に至る、広範囲で変化し得る。粘度は、Brookfield回転粘度計、運動粘度管の使用、落球粘度計又はカップ型粘度計により容易に定量し得る。発酵ブロスは非ニュートン流体であり、見かけ粘度は、ある程度は剪断率に依存する(Goudar et al., Appl. Microbiol. Biotechnol. 1999 51: 310-315)。しかしながら、この効果は本発明で利用される低粘度培養物についてはあまり顕著でない。
【0078】
本発明による、そのような低粘度培養物の発現ライブラリーのスクリーニングにおける使用は、きわめて有利である。糸状菌において発現されるDNAライブラリーのスクリーニングは、比較的遅くて手間のかかる方法にこれまで制限されてきた。一般に、真菌が形質転換される(さらに、形質転換体が所望により選択される)と、形質転換された真菌のライブラリーを個別の生物又は生殖要素へ分散させるには、胞子又は分生子を調製するか、又は菌糸を機械的に壊すことが必要だった。この分散は、単離した生物がクローンコロニー又は培養物へ培養され得るために必要である。次いで、この胞子、分生子、又は菌糸フラグメントを希釈し、標準培養皿において「培養」し、そして、色、基質に対する変化、又は求められているタンパク質の活性又は特性の存在が検出される他の証拠について個別のクローンを視察する。もう1つのアプローチでは、分泌されるタンパク質をコロニーから膜へブロットし、この膜を、関心のタンパク質の活性又は特性の存在を示すものについて探査又は試験する。外因性タンパク質のタンパク分解的な分解が問題になる場合は、膜の使用が有用であることが証明されている(Asgeirsdottir et al., Appl. Environ. Microbiol. 1999, 65:2250-2252)。上記の方法は労働集約的であり、自動化へ適用し得るかは証明されていないし、結果として、真菌発現タンパク質のハイスループットスクリーニングは、慣用の糸状菌についてはこれまで達成されなかった。本開示の目的では、ハイスループットスクリーニングは、1日あたり約1,000個又はそれ以上の形質転換体により発現されるタンパク質を評価し得る部分的又は完全に自動化したスクリーニング方法、特定すると1日あたり5,000個又はそれ以上の形質転換体を評価し得る方法、及び最も特定すると1日あたり10,000個又はそれ以上の形質転換体を評価し得る方法を意味する。
【0079】
従って、本発明による形質転換された真菌ライブラリーの自動化ハイスループットスクリーニングは、数多くの既知の方法で実行され得る。細菌又は酵母に適用可能であることが知られている方法は、概して、本発明の低粘度真菌に適用し得る。このことは、低粘度表現型と組み合わせた伝達性生殖要素の存在により可能になり、結果的に比較的絡み合っていない形態をした菌糸の突然変異真菌が利用される。本質的には、この突然変異真菌及び/又はその伝達性生殖要素は、自動化ハイスループットスクリーニングに関わる機械操作の間、個別の細菌又は酵母とまったく同じように挙動する。このことは、高度に絡み合った菌糸を産生し、個別の生物の互いからの容易な分離を許容しない、野生型の真菌、及びほとんどの工業用真菌とも対照的である。
【0080】
例えば、本発明による形質転換された真菌の希釈懸濁液は、機械的なマイクロピペットを通して96穴マイクロプレートのウェルへ分取し得る。384−又は1536穴マイクロプレートへのピペッティングを可能にする液体取扱い装置も生物をマイクロプレートへ自動分散する作業へ適用し得る。懸濁された生物の濃度は、ウェルあたりの平均生物(又は他の伝達性生殖要素)数を制御することが所望されるように調整し得る。多数の個別生物がウェルへ分取される場合、そのウェル内の所望されるタンパク質の活性又は特性を同定した後に、ウェルの内容物を希釈し、存在する生物を個別のクローンコロニー又は培養物へ培養することが続くことが理解されよう。このやり方では、「ヒット」を示す各ウェルの内容物を後に分離することの必要性を犠牲にして、系のスループットを増加し得る。
【0081】
別の態様では、セルソーターが液体流に挿入され得るが、これは検出セル内にある生物又は他の伝達性生殖要素を検出すると、培養液の流れをマイクロプレートのウェルへ向けることができる。この態様は各ウェルにつき1つの生物という合理的にも正確な分散を可能にする。形質転換体を同定するために、緑色蛍光タンパク質のような光学的に検出し得るマーカーを使用することは、蛍光標示式細胞分取器による形質転換体の自動選択を可能にするので、この態様において特に有用である。
【0082】
さらにもう1つの態様では、固形培地で増殖するコロニーをロボットコロニー採取器により採取し、そのロボットにより、その生物をマイクロタイタープレートのウェルへ移すことが可能である。十分に分離したコロニーは各ウェルにおいて単一のクローンを生じる。
【0083】
次いで、分散した生物を、マイクロプレートウェルのクローン培養へ増殖させる。インデューサー、栄養分などを自動液体分散系により所望されるように加えてよい。この系はまた、関心のタンパク質の活性又は特性の検出を可能にするために必要とされる任意の試薬を加えるために使用され得る。例えば、発色性又は蛍光性の基質を、酵素活性の分光測定又は蛍光測定による検出を可能にするために、加えることができる。マイクロタイタープレートのウェルにおける培養物の低粘度及び浸漬増殖性により、そのような試薬を培養物へ迅速に分散させることが可能になり、アッセイの感度及び信頼性を大いに高める。酸素及び栄養分の分散も多いに高められるので、迅速な増殖と外因性ペプチドの最大の発現及び分泌が促進される。シンチレーション近傍アッセイのようなある種のアッセイは、平衡状態に達するのに可溶成分の分散が不可欠であるが、ここでも、本発明の真菌培養物の低粘度により、このハイスループットアッセイが可能になる。最後に、高度に自動化された系では、関心のクローン培養物を、マイクロタイタープレート内のウェルから自動的に採取、吸引、又はピペット処理することが望ましく、そして、この培養物の低粘度及び浸漬増殖性によりこのことが可能になる。上記のすべての操作は、伝統的な糸状菌培養物、特に非撹拌の剪断されないマイクロタイタープレートウェルの条件において表面マットとして増殖する培養物の粘度では、困難であるか又は不可能であろう。
【0084】
もう1つの態様では、単独の細胞にミクロ流体工学装置を通過させ、関心の特性又は活性を光学的に検出する(Wada et al., WO99/67639号)。ミクロ流体工学装置の操作には低粘度が必須であり、本発明の低粘度突然変異真菌の培養物はミクロ流体工学上の操作に適用し得ることが期待される。Short et al., 米国特許第6,174,673号は、関心の酵素活性を検出するために蛍光発生基質が利用され得ること、そして、そのような活性を発現する宿主細胞が蛍光標示式細胞分取器により単離され得ることを記載した。本発明の方法は、この発現タンパク質の同定法に適合している。
【0085】
1つの態様では、形質転換体がマーカーとして蛍光タンパク質を担う場合、ある培養物に存在する遺伝子発現及び/又は発現タンパク質の量の尺度として、蛍光が定量されて利用され得る。この態様では、Blyna et al. WO00/78997に記載のように、関心の外因性タンパク質を検出することだけでなく、そのタンパク質の比活性を算定することが可能である。この態様が特に好ましいのは、本発明のスクリーニング法が指令進化の方法の一部として利用される場合である。
【0086】
より大きな粘度が受け入れられる場合には、Bochner, 米国特許第6,046,021号に記載のように、マイクロプレートフォーマットにおいて真菌を培養し、生化学アッセイを実施するときに、ゲル形成マトリックスがある種の利点を提供し得る。
【0087】
ハイスループットスクリーニングのもう1つのクラスは、固形基質上で増殖する多数の個別コロニーの測光分析、デジタル造影分光分析による。例えば、Youvan et al., 1994, Meth. Enzymol. 246: 732-748 を参照のこと。この方法では、特殊な試薬の全体吸収又は発光スペクトルの変化が関心の異種タンパク質の活性又は特性の存在を示す。低粘度突然変異体の使用に伴う個別の生物の容易な分散も、この方法における糸状菌の使用を可能にする。側生増殖をあまり示さず、固形培地上で滑らかで、密集した、明確なコロニーを産生するという、本発明の突然変異真菌コロニーの傾向も、そのようなスクリーニング系において有利である。さらに、細菌に比較して優れている真菌の発現及び分泌の特徴により、スペクトル分析のためにより多量のタンパク質が提供される。
【0088】
自動化された微生物の取扱いツールが、特開平11−304666に説明されている。この装置は、個別の細胞を含有する微小滴のトランスファーを可能にし、本発明の真菌株が、その形態の長所により、この装置を用いた個別クローンのミクロ操作に適用し得ることが期待される。
【0089】
自動化された微生物のハイスループットスクリーニング系が、Beydon et al., J. Biomol. Screening 5: 13-21 (2000) に記載されている。このロボットシステムは、400nl容積の液滴を寒天培地へ移し、1時間あたり10,000回のスクリーニング点をプロセス処理することが可能であり、そして、酵母のツ−ハイブリッドスクリーニングを実施するために使用されている。本発明の真菌宿主は、このタイプの系を用いるハイスループットスクリーニングに対して酵母と同じように適用可能であることが期待される。
【0090】
マイクロタイタープレートに代わる手段として、形質転換体をプレート上で増殖させ、マイクロコロニーの形態で、WO00/78997号に記載のように、光学的にアッセイし得る。
【0091】
ハイスループットスクリーニング全般の開発については Jayawickreme and Kost, Curr. Opin. Biotechnol. 8: 629-634 (1997) により論じられている。めったに転写されない差次的に発現される遺伝子についてのハイスループットスクリーニングが von Stein et al., Nucleic Acids Res. 35: 2598-2602 (1997) に説明されている。
【0092】
クリソスポリウム株のUV18−25とトリコデルマ株のX252は、本発明の様々な側面をきわめてよく例示する。しかしながら、本発明は、懸濁状態で伝達性生殖要素を産生し、培養で低粘度を示す他の突然変異体、又は他のやり方で処理される糸状菌の株も利用し得る。真菌の特定の形態が重要でない場合もあるが、本発明は、上記2種の株において短くて絡み合わない菌糸を観察しているものの、密接した広汎な菌糸の枝分かれのような他の形態も、粘度の減少をもたらす可能性がある。本発明による真菌株は、中性pHで、25〜43℃の温度において最適な増殖条件を示すならば、好ましい。そのようなスクリーニング条件は、外因性タンパク質、特に酸性のpHで分解又は不活性化を受けやすいタンパク質の活性を維持するのに有利である。ほとんどの哺乳動物のタンパク質、及び特にヒトのタンパク質は、生理学的なpH及び温度で機能するように進化してきたので、ヒト酵素の正常な活性についてのスクリーニングは、こういった条件下で最もよく実行される。治療使用に意図されるタンパク質はそのような条件下で機能しなければならず、それはまたこれを好ましいスクリーニング条件とする。クリソスポリウム株が、中性のpH及び35〜40℃で十分増殖し、まさにこの特徴を示すのに対し、他の通常利用される真菌宿主の種(例えば、アスペルギルス及びトリコデルマ)は酸性のpHで最もよく増殖するので、この理由のためにさほど適していないかもしれない。
【0093】
本発明の方法のもう1つの応用は、「指令(directed)進化」の方法にあるが、ここでは新規タンパク質をコードするDNA配列が生成され、コードされたタンパク質が宿主細胞において発現され、所望の特徴を示すタンパク質をコードする配列が選択され、突然変異され、再び発現される。この方法は、所望の特徴をもったタンパク質が得られるまで、数多くのサイクルで繰り返される。外因性タンパク質をコードする新規なDNA配列を生成し得る方法の例は、遺伝子シャッフリング、タンパク工学、エラー傾向PCR、部位特異的突然変異誘発、及びコンビナトリアル及びランダム突然変異誘発である。米国特許第5,223,409,5、780、279及び5、770、356号は、指令進化の教示を提供する。さらに、Kuchner and Arnold, Trends in Biotechnology, 15: 523-530 (1997);Schmidt-Dannert and Arnold, Trends in Biotech., 17: 135-136 (1999);Arnold and Volkov, Curr. Opin. Chem. Biol., 3: 54-59 (1999);Zhao et al., Manual of Industrial Microbiology and Biotechnology 2nd Ed., (Demain and Davies, eds.) pp. 597-604, ASMプレス、ワシントン、DC,1999;Arnold and Wintrode, Encyclopedia of Bioprocess Technology: Fermentation, Biocatalysts, and Bioseparation (バイオプロセス技術事典:発酵、生体触媒、及び生物分離)(Flickinger and Drew, eds.) pp. 971-987, ジョンウィリー・アンド・サンズ、ニューヨーク、1999:及び Minshull and Stemmer, Curr. Opin. Chem. Biol. 3: 284-290 を参照のこと。
【0094】
コンビナトリアル突然変異誘発の応用が Hu et al., Biochemistry, 1998 37: 10006-10015 に開示される。米国特許第5,763,192号は、合成配列を確率論的に作成し、それを宿主へ導入し、そして、所望の特徴を有する宿主細胞を選択することによって、新規なタンパク質コーディングDNA配列を得る方法を記載する。人工的な遺伝子組換え(DNAシャッフリング)を有効にする方法には、ランダムプライミング組換え(Z. Shao, et al., Nucleic Acids Res., 26: 681-683 (1998))、交互拡張(staggered extension)法(H. Zhao et al., Nature Biotech., 16: 258-262 (1998))及びヘテロ二重鎖組換え(A. Volkov et al., Nucleic Acids Res., 27: e18 (1999))が含まれる。エラー傾向PCRはさらにもう1つのアプローチである(Song and Rhee, Appl. Environ. Microbiol. 66: 890-894 (2000))。
【0095】
指令進化法には選択工程を実施する2種の広く実践される方法がある。1つの方法では、関心のタンパク活性を宿主細胞の生存にとってともかく不可欠にする。例えば、所望される活性がpH8で活性なセルラーゼであれば、セルラーゼ遺伝子が突然変異されて、宿主細胞へ導入され得る。セルロースを唯一の炭素源として形質転換体を増殖し、pHを徐々に上昇させて、ごくわずかの生存体(survivor)しか残らないようにする。おそらくは比較的高いpHで活性なセルラーゼをコードする、生存体由来の突然変異したセルラーゼ遺伝子を、もう1回突然変異のラウンドにかけ、この方法を繰り返し、最後にはpH8でセルロースで十分増殖し得る形質転換体を得る。酵素の熱安定性変異体も、宿主細胞の遺伝子突然変異及び高温培養のサイクルを繰り返すことによって、同じように進化され得る(Liao et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1986 83: 576-580; Giver et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1998 95: 12809-12813)。本出願の目的では、外因性タンパク質をコードするDNA配列の突然変異は、指令進化に利用されるいくつかの方法、例えば、遺伝子シャッフリング、in vivo 組換え、又はカセット突然変異誘発のいずれでも達成し得る。
【0096】
本発明の主たる利点は、「適者生存」選択工程の大量平行性である。何百万、又は何10億もの不成功な突然変異が、それらを個別に評価する必要がないまま考察から同時に除去される。しかしながら、関心の酵素活性を宿主の生存に連結することは必ずしも可能ではない。例えば、所望のタンパク質の特性が関心のターゲットへの結合で選択される場合、この結合特性を生存に必須とすることは難しい可能性がある。また、高い温度又は極端なpHのような強制条件下での生存は多数の要因に依存する可能性があり、宿主細胞が突然変異タンパク質の特性とは関係のない理由で生存することができなければ、所望の突然変異は選択されないか又は失われるだろう。
【0097】
多量平行性の「適者生存」アプローチに代わる手段は、連続スクリーニングである。このアプローチでは、個別の形質転換体が従来の方法、例えば、指示培地上で増殖するコロニーの周りにある澄明又は着色ゾーンの観察、発色又は蛍光酵素アッセイ、免疫アッセイ、結合アッセイ、等によりスクリーニングされる。例えば、補因子としてNADHを必要としないシトクロムP450モノオキシゲナーゼを突然変異及びスクリーニングのサイクルにより進化させた、Joo et al., Nature 399: 670-673 (1999);同様の形式で、逆の立体選択性をもつヒダントイナーゼを進化させた、May et al., Nature Biotech. 18: 317-320 (2000);及び、熱安定性のズブチリシンを進化させた、Miyazaki et al., J. Mol. Biol. 297: 1015-1026 (2000) を参照のこと。
【0098】
このスクリーニングアプローチは、特に大量平行「生存スクリーン」技術のスループットに接近するハイスループット方式で実行され得る場合、単純な「生存スクリーニング」に対して明瞭な利点を有する。例えば、形質転換された生物のデジタル造影(Joo et al., Chemistry & Biology, 6: 699-706 (1999))、又はコロニーのデジタル分光学的評価(Youvan et al., 1994, Meth. Enzymol. 246: 732-748)のような測定を利用することによって、ある程度の平行性が導入された。連続アッセイは、セルソーティングの使用により自動化し得る(Fu et al., Nature Biotech., 17: 1109-1111 (1999))。ハイスループットスクリーニングへの十分確立したアプローチは、市販のプレートリーダーを使用する、マイクロタイタープレートでの発現タンパク質の自動化評価を含み、本発明の方法は指令進化に対するこの様式のハイスループットスクリーニングの応用に十分適している。
【0099】
本発明のこの態様では、関心のタンパク質をコードする遺伝子が、複数の突然変異体を産生する既知の方法により突然変異され、突然変異体のタンパク質をコードするDNAが好適な発現ベクターの手段により、本発明による低粘度糸状菌宿主へ導入され、形質転換体が所望により選択され、培養される。次いで、宿主細胞は上記のようにマイクロタイタープレートのウェルへ分散されるか、又は他のやり方では、個別のモノクローナル培養物(又は、約100個未満の異なるクローンを有するポリクローナル培養物)を提供するように、分割可能な場所へ空間的に分離される。細胞は、好ましくは、マイクロタイタープレートのウェルへ分散される。突然変異DNAによりコードされるタンパク質は、好ましくは、マイクロタイタープレートのウェル内の培地へ分泌される。分散された培養物のそれぞれは関心のタンパク質の活性についてスクリーニングされ、所望の特性を最も強く示すものが選択される。選択された培養物の関心のタンパク質をコードする遺伝子を再び突然変異させ、突然変異DNAを低粘度真菌宿主へ再び導入し、形質転換体を再スクリーニングする。関心の特性の数値が所望されるレベルに達するまで、この突然変異及び再スクリーニング法を繰り返す。
【0100】
別の態様では、大腸菌のような他の生物にある関心の遺伝子の突然変異及び再生によって、指令進化を実行し、次いで、突然変異遺伝子を本発明による糸状菌へスクリーニングのために導入する。
【0101】
スクリーニングアッセイに基づいて関心のタンパク質が、商業上の有用性に必要とされる他の特性を必ずしもすべて有するわけではないことが当業者には容易に理解されるだろう。例えば、酵素活性を保有することは、比活性がどんなに高くても、その突然変異酵素が、必要な熱又はpH安定性、界面活性剤又はプロテアーゼへの抵抗性、又は非免疫原性、又は市販製品に望まれるか又は必要とされ得る他の特性を有することを示すものではない。同定されたタンパク質が商業上有用な特性を有するかどうかを容易に決定する方法についてのニーズが存在する。
【0102】
スクリーニングに対する先行技術のアプローチはこのニーズへの解決法を提供していない。なぜなら、宿主生物(細菌及び酵母)が単離可能量のタンパク質の産生に適応しなかったからである。これまでに、DNAライブラリー調製、遺伝子発現、スクリーニング、研究量の遺伝子産物の発現、及び工業に適した産生株における過剰発現が実行されてきたように、ある生物由来の潜在的に有用な遺伝子を別の生物へ導入することが必要とされてきた。それに対し、本発明の突然変異糸状菌は、特に本明細書に開示されるベクターとともに利用されるとき、外因性タンパク質の優れた過剰生産体及び分泌体となる。特徴づけの目的のためばかりでなく、適用試験における評価のためにも十分なタンパク質が単離され得る。実際、本発明のスクリーニング方法において使用される株は、低粘度、高発現率、及び非常に高いタンパク質/バイオマス比のような望ましい生産特性を保有するので、工業生産にも適している。
【0103】
従って、本発明の好ましい態様では、本方法はさらに、本発明の方法により同定されるクローンコロニー又は培養物を、外因性タンパク質(又はその前駆体)の発現及び分泌を許容する条件下で培養し、そして、続いて産生されるタンパク質を回収して関心のタンパク質を得ることを含む。ライブラリータンパク質の発現及び分泌は、異種タンパク質(又はそのフラグメント)についての遺伝子を有するクローン化遺伝子の、その対応するシグナル配列、又は第三のタンパク質由来のシグナル配列との、すべてが発現調節配列と機能可能的に連結した、インフレームの融合を創出することによって、促進され得る。このアプローチにより、ライブラリータンパク質の上流に異種アミノ酸配列を含有する融合タンパク質が創出される。引き続き、この融合前駆体タンパク質は、当技術分野で知られている精製技術を使用して、単離及び回収され得る。この方法は、所望により、分泌される融合タンパク前駆体を開裂工程にかけて、関心のライブラリータンパク質を産生することを含む。この開裂工程は、Kex−2、Kex−2様のプロテアーゼ、又は他の選択プロテアーゼを用いて実行され得るが、このときベクターは、プロテアーゼ開裂部位が十分分泌されるタンパク担体と関心のタンパク質とを連結するように工学処理される。
【0104】
スクリーニングする宿主生物から直接由来する、突然変異タンパク質の即座の利用可能性は、先行技術のスクリーニング宿主についてはこれまで可能ではなかった。従って、本発明は、ハイスループットスクリーニングに基づいて関心が持たれると考えられる突然変異タンパク質が、さらなる特徴づけに十分な量(ミリグラム)、さらには適用試験用のさらに多くの量(グラム〜キログラム)において単離され得るという点で、利点を提供する。このように、本発明のこの特別な態様は、ハイスループットスクリーニングにおいて検出される1つの特性だけでなく、任意数の所望される特性に基づいて、次ラウンドの指令進化のために突然変異タンパク質を選択することを実務者に許容する。本発明により可能とされるよりストリンジェントな選択基準は、より効率的でコスト効率の高い指令進化法を導くはずである。
【0105】
本発明による組換え突然変異糸状菌株の産生方法は、異種タンパク質をコードする核酸配列を含んでなるDNA配列のライブラリーを、本発明による低粘度の突然変異糸状菌へ導入することを含み、この核酸配列は発現調節領域へ機能可能的に連結している。DNA配列の導入は、形質転換する糸状菌についてそれ自身知られたやり方で実行し得る。当業者は、真菌プロトプラストによるCaCl2−ポリエチレングリコール刺激DNA取込みのようないくつかの十分確立された方法があることを理解されよう(Johnstone et al., EMBO J., 1985, 4: 1307-1311)。プロトプラスト形質転換法については実施例で説明する。他のプロトプラスト又はスフェロプラスト形質転換法が知られていて、他の糸状菌についての先行技術における記載のように使用され得る。異種DNAの真菌ゲノムへの多コピー組込みに適したベクターはよく知られているが、例えば、Giuseppin et al., WO91/00920号を参照のこと。自己複製性プラスミドの使用は、真菌の効率的な形質転換ツールとして長いこと知られてきた(Gems et al., Gene 1991 98: 61-67;Verdoes et al., Gene 1994 146: 159-165;Aleksenko and Clutterbuck, Fungal Genetics Biol. 1997 21: 373-387;Aleksenko et al., Mol. Gen. Genet. 1996 253: 242-246)。そのような方法の詳細は引用文献の多くに見出すことが可能であり、従って、それらは参照により本明細書に援用されている。
【0106】
異種DNAを担うベクターの導入の出発材料として、クリソスポリウムの低粘度突然変異株又は A. sojae を使用することを含む、本発明による代表的な方法を以下に示す。
【0107】
【実施例】
A.密集増殖形態の突然変異体の開発
様々な特許出願が、種々の形態の突然変異体が様々なスクリーニングの方法により単離され得ることを教示する。WO96/02653及びWO97/26330号は、密集形態を示す定義されない突然変異体を説明する。A. sojae のプロタンパク質プロセシング突然変異体が予想外の逸脱した増殖表現型(高度の枝分かれ)を有するものの、タンパク産生には何ら悪影響が観察されないことが見出された。この株を用いた培養実験は、ミクロペレットを有する非常に密集した増殖の表現型を明らかにした。この観察された特徴は、A. sojae だけでなく、他の突然変異した真菌、例えば A. niger にも存在した。
【0108】
(1) A. niger プロタンパク質プロセシング突然変異体の構築
A. niger 由来のプロタンパク質コンベルターゼコーディング遺伝子をクローン化するために、PCRを使用した。様々な酵母種と高等真核性物からの様々なプロタンパク質コンベルターゼ遺伝子の比較に基づいて、それぞれ、4、2、2、512、1152、4608、2048及び49152回縮重している、異なるPCRプライマーを設計した。プライマーのPE4及びPE6を使用する増幅から、コード化されたタンパク質配列が S. cerevisiae のKEX2配列に対して有意な相同性を示す2種の個別クローンが得られた。これらのクローンをさらなる実験のために使用した。
【0109】
クローン化PCRフラグメントの他のプロタンパク質コンベルターゼ遺伝子に対して観察される相同性に基づいて、対応する A. niger の遺伝子をpclA(プロタンパク質コンベルターゼ様の意味)と命名した。 A. niger のゲノム消化物のサザン分析は、異種ハイブリダイゼーション条件(50℃;6xSSCで洗浄)でも追加のハイブリダイゼーションシグナルが明らかでなかったので、pclA遺伝子が A. niger ゲノム内に近縁の遺伝子を有さない単一コピー遺伝子であることを明らかにした。A. niger N401のEMBL3ゲノムライブラリー(van Hartingsveldt et al., Mol. Gen. Genet. 1987 206: 71-75)の初回スクリーニングは、10〜20種のゲノム均等物がスクリーニングされたものの、陽性のハイブリダイズプラークを生じなかった。2回目のスクリーニングにおいて、pclA遺伝子の完全長のゲノムコピーが A. niger N400のEMBL4ゲノムライブラリー(Goosen et al., Curr. Genet. 11: 499-503 (1987))から単離された。
【0110】
5〜10種のゲノム均等物のスクリーニング後に得られた8種のハイブリダイズプラークのうち、6種は1回目の再スクリーニング後も陽性であった。これら6種のクローンは、PCRフラグメントを有するすべてのクローンで(ゲノムDNAについて観察されたように)、2種のハイブリダイズする3及び4kbのEcoRVフラグメント(このPCRフラグメントはEcoRV制限部位を含む)が存在したので、いずれもpclA遺伝子の完全コピーを担う可能性がきわめて高かった。他のプロタンパク質コンベルターゼのサイズとの比較に基づけば、これらのフラグメントはいずれも、5’及び3’隣接配列を有する完全なpclA遺伝子を含有する。この2種のEcoRVフラグメントと重複する5kbのEcoRIフラグメントをさらなる特徴づけのためにサブクローン化した。
【0111】
この制限マップに基づいて、pclA遺伝子の完全なDNA配列をEcoRI及びEcoRVのサブクローンから決定した。得られた配列の分析は、S. cerevisiae KEX2遺伝子及び他のプロタンパク質コンベルターゼのそれに対してかなりの類似性を有するオープンリーディングフレームを明らかにした。さらなる比較に基づいて、2つの推定イントロン配列をコーディング領域内に同定した。この推定イントロンに隣接するプライマーを用いた、pEMBLyexをベースとする A. niger のcDNAライブラリーに対する後続のPCR分析は、これら2つの配列の5’タンパク質だけが本当のイントロンを表すことを明らかにした。コード化されたPclAタンパク質の全体構造は、他のプロタンパク質コンベルターゼのそれと明らかに類似していた。PclAタンパク質の他のプロタンパク質コンベルターゼとの全体的な類似性は約50%であった。
【0112】
クローン化したpclA遺伝子が機能性タンパク質をコードする機能的な遺伝子であることを示すために、pclA遺伝子を欠く株の構築を試みた。従って、pclAコーディング領域の大部分が A. oryzae pyrG 選択マーカーに置換されているpclA欠失ベクターである、pPCL1Aを作成した。引き続き、このベクターからの5kb EcoRIインサートフラグメントを様々な A. niger 株の形質転換に使用した。
【0113】
(pyrG選択に基づいた)これらの形質転換から、数多くの形質転換体を得た。興味深いことに、この形質転換体の一部(1〜50%に及ぶ)は、非常に特徴的に逸脱した表現型を示した(図13)。いくつかの野生型と逸脱した形質転換体のサザン分析は、ひどく制限された(密集)増殖表現型を示すこれらの逸脱した形質転換体がpclA遺伝子を失ったことを明らかにした。野生型の増殖を示す株はすべて、野生型pclA遺伝子に隣接しているか又は非相同位置に組込まれた置換フラグメントのコピーを有することが示された。
【0114】
2) A. sojae プロタンパク質プロセシング突然変異体の構築
A. sojae において対応する突然変異体を構築するために、A. niger の低粘度突然変異体の機能相補性を、A. niger のpclA突然変異体のA. sojae ATCC 11906コスミドライブラリーを用いた形質転換により実行した。結果生じる補完された A. niger の形質転換体から、A. sojae のタンパク質プロセシングプロテアーゼのpclAを含む、ゲノムのコスミドクローンを単離した。単離された配列の部分配列分析から、A. sojae pclA遺伝子のクローニングが確かめられた。このクローン化 A. sojae pclA配列に基づいて、WO01/09352号に記載の再使用pyrG選択マーカーを使用して、我々の実施例の随所に記載されるものに類似したアプローチに倣って、遺伝子置換ベクターを産生した。
【0115】
さらに、pyrG選択マーカ−と、A. sojae pclA遺伝子由来の5’及び3’先端切れフラグメントを担う、遺伝子破壊ベクターを構築した。この遺伝子置換ベクターと遺伝子破壊ベクターを両方とも使用して、ATCC 11906及びATCC 11906誘導体においてpclA突然変異体を産生した。生成する形質転換体のいくつかを用いた培養実験は、改善された形態上の特性、特に密集増殖形態とミクロペレットを明らかにした(図14A及び14B)。
【0116】
(3)他の A. sojae 密集増殖突然変異体の単離
A. sojae ATCC 11906及びその誘導体の形質転換は、真菌選択マーカーを担う線状DNAフラグメントを用いて実施し得る。特定の複製配列が提供されない場合、この方法を使用して得られる形質転換体は、宿主株のゲノムへ組込まれた、導入DNAを担う。導入される選択マーカ−が異種の起源(A. niger)からのものであるので、異種の組換えだけが起こり、マーカーDNAをゲノム内の様々な位置に担う形質転換体の集合が導かれる。この組込みは内因性の A. sojae 配列の破壊をもたらす可能性があり、従って、A. sojae 突然変異株の集合が得られる。このことは、A. niger pyrG選択マーカーを有するDNAフラグメントを使用して A. sojae ATCC 11906alpApyrGから得られる形質転換体の大きな集合の分析により具体化される。全部で数千の形質転換体が分析され、このうち5〜10個が形態的に逸脱した表現型を示した。このうちのいくつかは、pclA突然変異体に匹敵する表現型を示した。A. sojae pclA遺伝子のクローニングについての記載と同様に、この突然変異に対応する遺伝子は、A. sojae の遺伝子ライブラリーから、形態上の表現型の相補性により、単離し得た。クローン化した遺伝子に基いて、対応する遺伝子の破壊/欠失突然変異体を産生することができた。
【0117】
(4)クリソスポリウム密集増殖突然変異体の単離
A. niger pclA遺伝子についての記載に類似したPCRをベースとするクローニングアプローチを使用して、pc11と名づけた、クリソスポリウムのプロタンパク質プロセシング遺伝子のフラグメントを、クリソスポリウムBLUESTAR(TM)遺伝子ライブラリーからクローン化した。完全なゲノム遺伝子コピーを担う遺伝子フラグメントを、このpBLUESTARクローンからサブクローン化した。得られたサブクローンに基づいて、A. sojae についての記載と同じようにして、遺伝子破壊ベクターを作成した。pyrGマーカーの代わりに、クリソスポリウムでは、A. niger pyrE遺伝子の繰り返し隣接バージョンを使用した。クリソスポリウムの遺伝子破壊−形質転換により、密集増殖表現型を有する株が生じた。
【0118】
B.粘度の決定
5種の異なる真菌生物を使用して、真菌発酵物について、以下の機能変数データの範囲を決定した。比較された5種の真菌生物は、Aspergillus niger、 Trichoderma longibrachiatum 18.2 KK (かつての T. reesei)、Trichoderma longibrachiatum X 252、Chrysosporium lucknowense 株UV18−25、及び Aspergillus sojae pclAの株であった。真菌培養物の粘度は、発酵の経過の間に変化し、栄養分の濃度でも変化する。本明細書で報告される測定については、20〜100g/lの炭水化物の炭素源(例えば、セルロース、ラクトース、スクロース、キシロース、グルコース、等)を含有する培地に真菌を接種し、この培養物を「増殖期」に進行させると、この間に炭素源が消費される。振動フラスコの培養物は200rpmで振動させ、一方、1リットルの発酵槽は500〜1000rpmの回転翼で撹拌する。典型的には、最大粘度は、増殖期の付近〜最後で生じる。この時点で培養物を給餌バッチモードへスイッチし、ここでは炭素源の濃度が約0.5g/lより高く上昇しないような速度で、炭素源を培養物へ給餌する。1〜3g/l/時間の給餌速度が典型的である。
【0119】
粘度は、小サンプルアダプターとスピンドル番号31を使用する、30℃で作動する、Brookfield LVF粘度計に基づいて決定した。新鮮な発酵ブロスのサンプル(10ml)を小サンプルスピンドルの中に置いた。スピンドル速度を調整し、10〜80の範囲で読み取れるようにした。4分後、粘度計目盛から数値を読み取った。この読み取り値に以下に示す因子を掛けて、センチポアズ(cP)で粘度を得た。
【0120】
Figure 0005138855
Figure 0005138855
PDA:
ジャガイモデキストロース寒天(ディフコ) 39g/l (pH5.5)
MPG:
Mandels塩基+
フタル酸K 5g/l
グルコース 30g/l
酵母抽出物 5g/l
IC1
0.5g/L K2HPO4 (pH7.0)
0.15g/L MgSO4・7H2
0.05g/L KCl
0.007g/L FeSO4・7H2
1g/L 酵母抽出物(ohly KAT)
10g/L ペプトン又はファルマメディア(ファルマメディア)
10g/L ラクトース
10g/L グルコース
フレオマイシン50μg/ml又はハイグロマイシン100〜150μg/mlを補充した再生培地(MnR)を使用して、形質転換体を選択する。フレオマイシン5μg/mlを補充したGS培地を使用して、抗生物質への抵抗性を確かめる。
【0121】
PDAは速やかな増殖と良好な胞子形成のための完全培地である。液体培地に胞子懸濁液(90mm PDAプレート/0.1% Tween 5ml由来の胞子)の1/20を接種する。このような培養物を振動フラスコ(200rpm)において27℃で増殖させる。
【0122】
2種の非形質転換クリソスポリウムC1株と1種の Trichoderma reesei 基準株を、2種の培地(GS pH6.8、及びPridham寒天、PA、pH6.8)上で試験した。抗生物質抵抗性のレベルを試験するために、7日後のPDAプレートから胞子を採取した。32℃で選択プレートをインキュベートして、2、4及び5日後に記録をとった。C−1株のNG7C−19及びUV18−25は、基準となる T. reesei 研究室株に比較して、明らかに、フレオマイシンとハイグロマイシンの両方に対して低い基底抵抗性のレベルを有した。このことは、これらの標準真菌選択マーカーがクリソスポリウムに株おいて使用し得ることを明瞭に示すものである。他の標準真菌選択マーカ−についての問題は予期されない。
【0123】
Sh−ble(フレオマイシン抵抗性)が形質転換したクリソスポリウム株の選択は、50μg/mlで上首尾に実行された。これはまた T. reesei について使用された選択レベルであり、このように差別的な選択がクリソスポリウムにおいて容易に達成され得ることを示す。同じ註釈が150μg/mlのレベルでハイグロマイシン抵抗性について形質転換した株についても有効である。
【0124】
最も一般的に適用される真菌の形質転換技術に基づいて、プロトプラスト形質転換技術をクリソスポリウムに使用した。1つの90mm PDAプレート由来の全胞子をIC1 8mlにおいて回復させ、IC1培地50mlの入った振動フラスコへ移し、35℃及び200rpmで15時間インキュベートした。この後で、培養物を遠心分離させ、ペレットをMnPで洗浄し、10ml MnP及びCaylase C3 10mg/mlの溶液へ戻し、揺らしながら(150rpm)35℃で30分間インキュベートした。
【0125】
この溶液を濾過し、濾液を3500rpmで10分間、遠心分離にかけた。ペレットをMnP Ca2+ 10mlで洗浄した。これを25℃で10分間遠心分離した。次いで、50マイクロリットルの冷MPCを加えた。この混合液を氷上に30分間保った後に、PMC 2.5mlを加えた。室温で15分間の後に、処置したプロトプラスト500μリットルをMnRソフト3mlへ混合し、直ちに、フレオマイシン及びハイグロマイシンを選択剤として含有するMnRプレート上に播いた。30℃で5日間のインキュベーション後、形質転換体を分析した(クローンは48時間後に見えるようになった)。基準プラスミドのpAN8−1 10μgを使用して、形質転換効率を決定した。この結果を以下の表Cに示す。
【0126】
【表3】
Figure 0005138855
この結果は、クリソスポリウム形質転換の生存能力がトリコデルマのそれに優ることを示す。これらの株の形質転換可能性は比較可能であるので、1回の実験において得られる形質転換体の数は、クリソスポリウムについては T. reesei より4倍高い。このように、クリソスポリウムの形質転換系は通常使用される T. reesei 系に等しいだけでなく、それに優る場合さえある。この改善はpAN8−1より形質転換が効率的ではないベクターにとって特に有用であると判明し得る。
【0127】
他の数多くの形質転換及び発現プラスミドを、相同なクリソスポリウムタンパク質のコーディング配列と、さらにクリソスポリウムに関する形質転換実験において使用される異種タンパク質のコーディング配列を用いて構築した。このベクターのマップを図6〜11に提供する。
【0128】
発現される相同タンパク質は、クリソスポリウムにより産生されるセルラーゼの群から選択され、ファミリー6(MW 43kDa)に属するエンドグルカナーゼ6からなり、異種タンパク質は、ペニシリウムのファミリー12(MW25 kDa)に属するエンドグルカナーゼ3であった。
【0129】
pF6Gは、エンドグルカナーゼ6のターミネーター配列が続くエンドグルカナーゼ6のオープンリーディングフレームとインフレームでエンドグルカナーゼ6のシグナル配列に連結した、クリソスポリウム・エンドグルカナーゼ6のプロモーターフラグメントを含む。形質転換体の選択は、選択ベクターとの共形質転換を用いることによって実行される。
【0130】
pUT1150は、T. reesei セロビオヒドロラーゼのターミネーター配列が続くエンドグルカナーゼ6のオープンリーディングフレームとインフレームでエンドグルカナーゼ6のシグナル配列に連結した、Trichoderma reesei セロビオヒドロラーゼのプロモーターを含む。さらに、このベクターは、選択マーカ−、即ちフレオマイシン抵抗性遺伝子(SH−ble遺伝子)とともに第二の発現カセットを担う。
【0131】
pUT1152は、A. nidulans アントラニル酸シンターゼ(trpC)のターミネーター配列が続くエンドグルカナーゼ6のオープンリーディングフレームとインフレームでエンドグルカナーゼ6のシグナル配列に連結した、Aspergillus nidulans グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼAのプロモーターを含む。さらに、このベクターは、選択マーカ−、即ちフレオマイシン抵抗性遺伝子(SH−ble遺伝子)とともに第二の発現カセットを担う。
【0132】
pUT1155は、A. nidulans trpCのターミネーター配列が続くエンドグルカナーゼ6のオープンリーディングフレームとインフレームで連結している担体タンパク質のSh−bleとインフレームにある Trichoderma reesei セロビオヒドロラーゼシグナル配列に連結した、A. nidulans グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼAのプロモーターを含む。このベクターは、関心のタンパク質の分泌を非常に多く改善することが知られている関心のタンパク質に融合した担体タンパク質の技術を使用する。
【0133】
pUT1160は、A. nidulans trpCのターミネーター配列が続くペニシリウムのエンドグルカナーゼ3オープンリーディングフレームとインフレームで連結している担体タンパク質のSh−bleとインフレームにある Trichoderma reesei セロビオヒドロラーゼシグナル配列に連結した、Aspergillus nidulans グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼAのプロモーターを含む。
【0134】
pUT1162は、T. reesei セロビオヒドロラーゼのターミネーター配列が続くペニシリウムのエンドグルカナーゼ3のオープンリーディングフレームとインフレームでエンドグルカナーゼ3のシグナル配列に連結した、Trichoderma reesei セロビオヒドロラーゼのプロモーターを含む。さらに、このベクターは、フレオマイシン抵抗性遺伝子(SH−ble遺伝子)asa選択マーカ−とともに第二の発現カセットを担う。
【0135】
当業者には、ゲノム又はcDNAのサンプルがタンパク質コーディングフラグメントへ容易に分断又は消化されて、このフラグメントは本明細書に示されるようなベクターへ連結され、発現ベクターのライブラリーを産生し得ることが明らかであろう。さらに、同時トランスフェクションを利用する方法が適用可能であること、及び自動複製ベクター又は組込みベクターがそのようなベクターのライブラリーで糸状菌をトランスフェクトするために利用され得ることがさらに明らかであろう。
【0136】
【表4】
Figure 0005138855
表Dは、クリソスポリウムUV18−25と Tolypocladium geodes の両方の形質転換の結果を示す。この使用される形質転換プロトコールは以下の異種形質転換についての節で説明する。
【0137】
D.クリソスポリウム形質転換体における異種及び相同の発現
以下の様々な異種タンパク質を分泌する能力について、C1株(NG7C−19及び/又はUV18−25)を試験した:細菌タンパク質(Streptoalloteichus hindustanus フレオマイシン抵抗性タンパク質、Sh−ble)、真菌タンパク質(Trichoderma reesei のキシラナーゼII、XYN2)、及びヒトのタンパク質(ヒトリゾチーム、HLZ)。この方法の詳細を以下に示す:
(1) Streptoalloteichus hindustanus フレオマイシン抵抗性タンパク質(Sh−ble)のC1分泌
C1株のNG7C−19及びUV18−25をプラスミドpUT720(参考文献1)により形質転換した。このベクターは以下の真菌発現カセットを示す:
−Aspergillus nidulans グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(gpdA)のプロモーター(参考文献2)
−合成 Trichoderma reesei セロビオヒドロラーゼI(cbh1)シグナル配列(参考文献1,3)
−Streptoalloteichus hindustanus フレオマイシン抵抗性遺伝子、Sh−ble(参考文献4)
−Aspergillus nidulans トリプトファンシンターゼ(trpC)のターミネーター(参考文献5)
このベクターはまた、プラスミドpUC18(参考文献6)由来のβ−ラクタマーゼ遺伝子(bla)及び大腸菌複製起点も担う。詳しいプラスミドマップを図2に提供する。
【0138】
C1に適用した Durand et al.(参考文献7)により、C1プロトプラストを形質転換した:90mm PDAプレートの非形質転換C1株由来の全胞子をIC1 8mlにおいて回復させ、IC1培地50mlの入った振動フラスコへ移し、35℃及び150rpmで15時間インキュベートした。この後で、培養物をスピンダウンさせ、ペレットをMnPで洗浄し、10ml MnP+Caylase C3 10mg/mlに溶かし、揺らしながら(150rpm)35℃で30分間インキュベートした。この溶液を濾過し、濾液を3500rpmで10分間、遠心分離させた。ペレットをMnP Ca2+ 10mlで洗浄した。これを3500rpmで10分間スピンダウンさせ、ペレットをMnP Ca2+ 1mlに取った。プロトプラスト溶液200μlへpUT720 DNA10μgを加え、室温(約20℃)で10分間インキュベートした。次いで、50μlの冷MPCを加えた。この混合液を氷上に30分間保った後に、PMC 2.5mlを加えた。室温で15分間の後に、処置したプロトプラスト500μlをMnRソフト3mlへ混合し、直ちに、フレオマイシン(50μg/ml,pH6.5)を選択剤として含有するMnRプレート上に播いた。30℃で5日間のインキュベーション後、形質転換体を分析した(クローンは48時間後に見えはじめる)。
【0139】
C1形質転換体(フレオマイシン抵抗性クローン)のSH−ble産生を以下のように分析した:一次形質転換体を、GS+フレオマイシン(5μg/ml)プレートへ楊枝で取り、抵抗性を証明するために32℃で5日間増殖させた。証明された抵抗性クローンをそれぞれGSプレート上にサブクローン化した。1つの形質転換体につき2つのサブクローンを使用して、PDAプレートに接種し、液体培養の開始のために胞子を得た。IC1の液体培地を27℃で5日間増殖させた(200rpmで振動)。次いで、この培地を遠心分離し(5000g,10分)、上澄液500μlを採取した。これらのサンプルから、タンパク質をTCAで沈澱させ、ウェスタンサンプル緩衝液に再懸濁し、全タンパク質を4mg/mlにした(Lowry法、参考文献8)。10μl(約40μgの全タンパク質)を12% アクリルアミド/SDSゲルにロードし、泳動させた(Mini Trans−BlotTM系、バイオラド・ラボラトリーズ)。ウサギ抗Sh−ble抗血清(Societe Cayla,ツールーズ、FR,カタログ#ANTI−0010)を一次抗体として使用するバイオラドの説明書(Schleicher & Schull 0.2μm膜)により、ウェスタンブロッティングを実施した。この結果を図1及び表Eに示す。
【0140】
【表5】
Figure 0005138855
上記のデータは:
1)pUT720由来の異種転写/翻訳シグナルがクリソスポリウムにおいて機能的であること;
2)pUT720の異種シグナル配列がクリソスポリウムにおいて機能的であること;
3)クリソスポリウムが異種細菌性タンパク質の分泌の宿主として使用し得ること、を示す。
【0141】
(2)ヒトリゾチーム(HLZ)のC1選択
C1株のNG7C−19及びUV18−25をプラスミドpUT970G(参考文献9)により形質転換した。このベクターは、以下の真菌発現カセットを示す:
−Aspergillus nidulans グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(gpdA)のプロモーター(参考文献2)
−合成 Trichoderma reesei セロビオヒドロラーゼI(cbh1)シグナル配列(参考文献1,3)
−担体タンパク質として使用される、Streptoalloteichus hindustanus フレオマイシン抵抗性遺伝子、Sh−ble−4(参考文献10)
−プラスミドpAN56−2からクローン化された Aspergillus niger グルコアミラーゼ(glaA2)ヒンジドメイン(参考文献11,12)
−KEX−2様プロテアーゼ開裂部位を特徴づけるリンカーペプチド(LGERK)(参考文献1)
−合成ヒトリゾチーム遺伝子(hlz)(参考文献10)
−Aspergillus nidulans トリプトファンシンターゼ(trpC)のターミネーター(参考文献5)
このベクターはまた、プラスミドpUC18(参考文献6)由来のβ−ラクタマーゼ遺伝子(bla)及び大腸菌複製起点も担う。詳しいプラスミドマップを図3に提供する。
【0142】
すでに実施例1に記載したものと同じ方法に従って、C1プロトプラストをプラスミドpUT970Gで形質転換した。融合タンパク質(SH−ble::GAMヒンジ::HLZ)はフレオマイシン抵抗性に関して機能的であり、従ってC1形質転換体の容易な選択を可能にする。さらに、フレオマイシン抵抗性のレベルはhlz発現のレベルにほぼ相関する。
【0143】
C1形質転換体(フレオマイシン抵抗性クローン)のHLZ産生を以下のようにリゾチーム活性アッセイにより分析した:一次形質転換体を、GS+フレオマイシン(5μg/ml)プレート(抵抗性の証明)とLYSOプレート(HLZ活性を視覚化ゾーンの澄明化により検出)へ楊枝で取った(参考文献1,10)。プレートを32℃で5日間増殖させた。証明されたクローンをそれぞれLYSOプレート上にサブクローン化した。1つの形質転換体につき2つのサブクローンを使用して、PDAプレートに接種し、液体培養の開始のために胞子を得た。IC1の液体培地を27℃で5日間増殖させた(180rpmで振動)。次いで、この培地を遠心分離(5000g,10分)した。これらのサンプルから、リゾチーム活性を Morsky et al.(参考文献13)により測定した。
【0144】
【表6】
Figure 0005138855
上記のデータは:
1)実施例1の論点1及び2が確認されること;
2)Sh−bleがクリソスポリウムにおいて抵抗性マーカーとして機能的であること;
3)Sh−bleがクリソスポリウムにおいて担体タンパク質として機能的であること;
4)KEX−2様プロテアーゼ開裂部位がクリソスポリウムにおいて機能的である(そうでなければ、HLZは活性でない)こと;
5)クリソスポリウムが異種哺乳動物タンパク質の選択の宿主として使用し得ることを示す。
【0145】
(3) Trichoderma reesei キシラナーゼII(XYN2)のC1選択
C1株のUV18−25をプラスミドpUT1064及びpUT1065により形質転換した。pUT1064は、以下の2種の真菌発現カセットを示す:
第一のカセットはフレオマイシン抵抗性形質転換体の選択を可能にする:
−Neurospora crassa 交叉経路制御遺伝子1(cpc−1)プロモーター(参考文献14)
−Streptoalloteichus hindustanus フレオマイシン抵抗性遺伝子、Sh−ble(参考文献4)
−Aspergillus nidulans トリプトファンシンターゼ(trpC)のターミネーター(参考文献5)
第二のカセットはキシラナーゼ産生カセットである:
−T. reesei 株のTR2 cbh1プロモーター(参考文献15)
−T. reesei 株のTR2 xyn2遺伝子(シグナル配列を含む)(参考文献16)
−T. reesei 株のTR2 cbh1ターミネーター(参考文献15)
このベクターはまた、プラスミドpUC19(参考文献6)由来の大腸菌複製起点も担う。詳しいプラスミドマップを図4に提供する。
【0146】
pUT1065は以下の真菌発現カセットを示す:
−A. nidulans グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(gpdA)のプロモーター(参考文献2)
−合成 T. reesei セロビオヒドロラーゼI(cbh1)シグナル配列(参考文献1,3)
−担体タンパク質として使用される、S. hindustanus フレオマイシン抵抗性遺伝子、Sh−ble−4(参考文献10)
−KEX−2様プロテアーゼ開裂部位を特徴づけるリンカーペプチド(SGERK)(参考文献1)
−T. reesei 株のTR2xyn2遺伝子(シグナル配列を含まない)(参考文献16)
−A. nidulans トリプトファンシンターゼ(trpC)のターミネーター(参考文献5)
このベクターはまた、プラスミドpUC18(参考文献6)由来のβ−ラクタマーゼ遺伝子(bla)及び大腸菌複製起点も担う。詳しいプラスミドマップを図5に提供する。
【0147】
すでに実施例1に記載したものと同じ方法に従って、C1プロトプラストをプラスミドpUT1064又はpUT1065で形質転換した。プラスミドpUT1065内の融合タンパク質(SH−ble::XYN2)はフレオマイシン抵抗性に関して機能的であり、従ってC1形質転換体の容易な選択を可能にする。さらに、フレオマイシン抵抗性のレベルはxyn2発現のレベルにほぼ相関する。pUT1064では、xyn2をそれ自身のシグナル配列とともにクローン化した。
【0148】
C1形質転換体(フレオマイシン抵抗性クローン)のキシラナーゼ産生を以下のようにキシラナーゼ活性アッセイにより分析した:一次形質転換体を、GS+フレオマイシン(5μg/ml)プレート(抵抗性の証明)とXYLANプレート(参考文献17)(ここではキシラナーゼ活性が澄明ゾーンの観察により検出される)へ楊枝で取った。プレートを32℃で5日間増殖させた。証明されたクローンをそれぞれXYLANプレート上にサブクローン化した。1つの形質転換体につき2つのサブクローンを使用して、PDAプレートに接種し、液体培養の開始のために胞子を得た。IC1+5g/l フタル酸Kの液体培地を27℃で5日間増殖させた(180rpmで振動)。次いで、この培地を遠心分離(5000g,10分)した。これらのサンプルから、キシラナーゼ活性を Miller et al.(参考文献18)によりDNS技術により測定した。
【0149】
【表7】
Figure 0005138855
上記のデータは:
1)実施例2の論点1〜4が確認されること;
2)C1が異種真菌タンパク質の選択の宿主として利用し得ることを示す。
【0150】
(4)概要
表Hは、UV18−25の形質転換が実施されたプラスミドについての結果を示す。この表は、異種発現調節配列及びシグナル配列と、さらに相同発現調節配列及びシグナル配列を使用する、エンドグルカナーゼ及びセロビオヒドロラーゼについての発現レベルを示す。様々なプラスミドの詳細は本明細書の説明と図の随所から誘導され得る。この産生はアルカリのpHで、35℃の温度で起こる。
【0151】
【表8】
Figure 0005138855
E. Aspergillus sojae 遺伝子ライブラリーの構築
(1)ベクターライブラリー
A. sojae のゲノムDNAを、記述のプロトコール(Punt, van den Hondel, Methods Enzymol. 1992 216: 447-457)を使用して、ATCC 11906から得られるプロトプラストから単離した。単離後、Kolar et al., Gene 1988 62: 127-34 に記載のプロトコールを使用して、プロトプラストからDNAを抽出した。引き続き、このDNAをMboIで部分消化して、平均サイズ30〜50kbのDNAフラグメントを生成した。
【0152】
遺伝子ライブラリーの構築に使用する、ベクターのpAOpyrGcosarp1は、Acc65I−BamHI消化したpHELP1(Gems et al., Gene 1991 98:61-67)における、pANsCos1(Osiewacs, Curr. Genet. 1994 26: 87-90)由来の3kb BamHI−HindIIフラグメントとpAO4.2(De Ruiter-Jacobs et al., Curr. Genet. 1989 16: 159-63)由来の3.2kb Acc65I−HindIIIフラグメントの連結により構築した。このコスミドベクターは A. oryzae pyrG選択マーカーを担い、糸状菌において自己増殖性である。
【0153】
Mbol消化したゲノムDNAをBamHI消化したpAOpyrGcosarp1へ連結し、この連結混合物を、Stratagene Supercos1ベクターキット(ストラタジーン社、ラジョア、CA)を使用して、ファージ粒子へパッケージした。これにより、全数約30,000個の個別クローンが生じ、A. sojae ゲノムの約30倍の表現を表す。生成クローンのプールのストック(15%グリセロール)を後の使用のために−80℃で保存した。
【0154】
(2)高頻度形質転換
A. sojae ATCC 11906pyrG突然変異体を、WO01/09352に記載のように、ATCC11906由来のフルオロオロト酸抵抗性誘導体として選択した。この株 A. sojae ATCC 11906pyrGを、A. niger pyrG遺伝子を担う2つのベクターで形質転換した。1つのベクターであるpAB4−1(van Hartingsveldt et al., Mol. Gen. Genet. 206: 71-75 (1987))がpyrG遺伝子のみを担うのに対し、pAB−arp1(Verdoes et al., Gene 146: 159-165 (1994))は、pyrG遺伝子と A. nidulans AMA1配列を担う。ATCC 11906pyrGの形質転換により、pAB4−1由来DNAの1マイクログラムにつき、5〜10個の形質転換体を生じるのに対し、pAB4−arp1の頻度では、少なくとも10〜100倍高かった。形質転換体の表現型分析は、pAB4−arp1形質転換体のpyrG表現型が連続選択の下でのみ維持されるのに対し、pAB4−1形質転換体はpyrG表現型の選択をしてもしなくても安定であることを示した。これらの結果から、pAB4−arp1形質転換体において導入されたプラスミドDNAの自己複製が確認される。AMA1配列又はその誘導体、例えばpAOpyrGcosarp1を担う別の真菌形質転換ベクターについても同様の結果が得られた。
【0155】
(3)真菌形質転換ライブラリーの構築
A. sojae ATCC11906pyrG又は関連した突然変異体、特にその密集形態突然変異体を、形質転換ベクターのpAOpyrGcosarp1に基づいた A. sojae 遺伝子ライブラリーで形質転換した。このベクターは、自由に複製するベクターコピーを有する高頻度の形質転換をもたらす。真菌のプロトプラストを Punt and van den Hondel, Methods Enzymol. 1992 216: 447-457に記載のように、A. sojae 又はクリソスポリウム由来の真菌ゲノムDNAを担うコスミドライブラリーからのDNAで処理し、形質転換されたプロトプラストの連続希釈液を選択寒天培地に播き、得られる形質転換頻度を決定した。残存するプロトプラストを2、3時間選択培地で再生させ、4℃で保存した。形質転換頻度について得られる結果(これは、実験によっては、コスミドライブラリーDNAの1マイクログラムにつき数千個の形質転換体までの数値に達する)に基づいて、この再生プロトプラストの限定的な希釈液を96,248のマイクロタイタープレート、又は他のウェルフォーマットに播き、1つのウェルに1つの形質転換プロトプラストとした。プレートを35℃でインキュベートして、真菌バイオマスを形成させた。この生成した形質転換体のライブラリーをさらなる実験に使用する。
【0156】
クリソスポリウムCBH1の突然変異対立遺伝子を担う真菌形質転換体の集合の構築に同様に戦略を使用した。この戦略はまた、突然変異誘発、遺伝子シャッフリング、又は遺伝子進化アプローチのいずれかで産生される、関心の他の遺伝子から誘導される突然変異体のライブラリーでも使用し得る。
【0157】
F.浸漬培養における胞子形成の誘導
Aspergillus sojae のような多くの真菌は浸漬培養の下では胞子形成を示さない。ここで、われわれは、上記の条件下で胞子形成を得るための、これまでに知られていないアプローチについて説明する。A. sojae ATCC 11906と、特にその密集増殖形態の突然変異体を、酵母抽出物を補充した合成増殖培地において増殖させた。上記の条件下で、静的培養と振動培養のいずれでも、バイオマスの迅速な蓄積が生じる。しかしながら、この培養液体においては胞子形成は起こらない。EDTA 0.6g/kgを加えた同様の増殖培地では、35℃でのインキュベーション2〜4日後に培養液体1mlにつき109個までの胞子に達するかなりの胞子産生を生じる。
【0158】
合成培地(+/−EDTA):g/kg 培地
KH2PO4 2.5
NH4Cl 7.2
MgSO4・7H2O 0.7
CaCl2・2H2O 0.2
酵母抽出物 20
ZnSO4・7H2O 0.015
CoCl2・6H2O 0.005
CuSO4・5H2O 0.016
FeSO4・7H2O 0.040
3BO4 0.005
KI 0.003
MnCl2・2H2O 0.012
Na2MoO4・2H2O 0.003
EDTA (0.6又は0.0)
NaOH/H3PO4でpH5.5へ調整
G.クリソスポリウム及びアスペルギルスの形質転換系
1) A. niger オロト酸p−リボシルトランスフェラーゼ遺伝子pyrEのクローニング
糸状菌の数多くの多用途形質転換系は、ウリジン要求性突然変異株の使用に基づく。これらの突然変異株は、オロチジン−5−リン酸デカルボキシラーゼ(OMPD)又はオロト酸p−リボシルトランスフェラーゼ(OPRT)のいずれかが欠乏している(T. Goosen et al., Curr. Genet. 1987, 11: 499-503;J. Begueret et al., Gene. 1984 32: 487-92)。以前、我々は、A. niger OMPD遺伝子pyrGを単離したことがある(W. van Hartingsveldt et al., Mol. Gen. Genet. 1987 206: 71-5)。A. niger OPRT遺伝子(pyrE)のクローニングは、A. niger のFOA抵抗性ウリジン要求性非pyrG突然変異体の相補性により実行した。相補性のために、ベクターpAOpyrGcosarp1の A. niger コスミドライブラリーを使用した。この相補性の形質転換体からゲノムコスミドクローンを単離し、相補的な A. niger 遺伝子を担うものをpyrEと命名した。このpyrE遺伝子を担う5.5kb SstIIフラグメントをpBLUESCRIPT(TM)(ストラタジーン)にクローン化し、ベクターpBLUEpyrEを生じた。pyrEコーディング領域を含むこのベクターの1.6kbフラグメントを配列決定し、OPRT遺伝子の位置を確かめた(図15を参照のこと)。
【0159】
(2) Chrysosporium lucknowense の栄養要求性形質転換系
ウリジン要求性 Chrysosporium lucknowense 株を、PCT出願WO01/09352号に記載の方法により、C1及びUV18−25からのフルオロオロト酸抵抗性誘導体として選択した。フルオロオロト酸抵抗性誘導体の選択により、2つのタイプのウリジン要求性突然変異体、即ち、オロチジン−5−リン酸デカルボキシラーゼ(OMPD)突然変異体又はオロト酸p−リボシルトランスフェラーゼ(OPRT)突然変異体のいずれかの単離を生じ得る(T. Goosen et al., Curr. Genet. 1987, 11: 499-503)。得られるクリソスポリウム突然変異体の性質を決定するために、利用可能な A. niger の遺伝子のpyrG(OMPD;ベクターpAB4−1、W. van Hartingsveldt et al., Mol. Gen. Genet. 1987 206: 71-5)及びpyrE(pBLUE−pyrE;OPRT)について形質転換実験を実施した。表Iに示されるように、pyrE遺伝子を有する突然変異株の形質転換のみが原栄養性の形質転換体を生じたが、このことはこのクリソスポリウム株がOPRT突然変異体であることを示唆する。これまで採用してきたクリソスポリウム遺伝子の命名法に従って、この突然変異体をpyr5と明示した。
【0160】
【表9】
Figure 0005138855
(3)自己複製性真菌形質転換ベクターの構築及び使用
ベクターのpBLUEpyrEに基づいて、糸状菌に導入されるときに自己複製特性をこのベクターへ提供する配列を担う2種の誘導体を産生した。Aspergillus nidulans AMA1配列(J. Verdoes et al., Gene 1994 146: 159-65)を担う5.5kb HindIIIフラグメントをpBLUEpyrEの独自のHindIII部位に導入し、pBLUEpyrE−AMAを生じた。ヒトのテロメア配列(A. Aleksenko, L. Ivanova, Mol. Gen. Genet. 1998 260: 159-64)を担う2.1kb(部分的)HindIIIフラグメントをpBLUEpyrEの独自のHindIII部位に導入し、pBLUEpyrE−TELを生じた。これらのベクターをアスペルギルス及びクリソスポリウムのOPRT突然変異株へ導入し、原栄養性形質転換体を生じた。得られた形質転換体のいくつかは、自由に複製するプラスミドを担う形質転換体に特徴的な不揃いの表現型を示した(J. Verdoes et al., Gene 1994 146: 159-65)。
【0161】
(4) Chrysosporium lucknowense の形質転換
このプロトコールは本来アスペルギルスの形質転換に使用された方法(P. Punt, C. van den Hondel, Methods in Enzymology 1992 216: 447-457)に基づく。リッチ培地(250ml)に、1Lの三角フラスコにおいて、pyr5クリソスポリウム突然変異体(上記)106胞子/mlを接種した。この培養液を空気インキュベーター(300rpm)において35℃で24〜48時間増殖させた。無菌Miracloth(TM)フィルター(カルビオケム)を介して菌糸体を濾過し、約100ml 1700モスモル(mosmol)のNaCl/CaCl2(0.27M CaCl2/0.6M NaCl)で洗浄した。菌糸の重量を測定し、氷上に保存した。Caylaze(TM)(Cayla)(1gの菌糸あたり20mg)及び、1700モスモルのNaCl/CaCl2(1gの菌糸あたり3.3ml)を加え、この懸濁液を33℃の空気インキュベーター(100rpm)でインキュベートした。プロトプラスト形成を顕微鏡下で追跡した。1〜3時間のインキュベーション後、菌糸体のほとんどが消化され、調製物の顕微鏡の視野にはほとんどプロトプラストしか残らなかった。このプロトプラストを無菌Miraclothフィルターで濾過し、濾液を1倍量の冷STC1700(1.2M ソルビトール/10mM Tris.HCl pH7.5/50mM CaCl2/35mM NaCl)で洗浄した。このプロトプラスとを4℃で10分間、2500rpmでスピンダウンさせた。ペレットをSTC1700に再懸濁させ、再び遠心分離した。ペレットをSTC1700に再懸濁した後、プロトプラストを計数した。最終濃度2x108/mlのプロトプラストへSTC1700を加えた。
【0162】
ベクターDNA(pAB4−1又はpBLUE−pyrE、1〜10μg)を滅菌チューブの底へピペットで入れ、このDNAへ1M ATA(アウリントリカルボン酸)1μl及びプロトプラスト(約2x107個)100μlを加えた。この実験には、DNAを加えない陰性対照を含めた。混合後、プロトプラストを室温で25分間インキュベートした。PEG6000(60% PEG/50mM CaCl2/10mM Tris,pH7.5)を以下のように少しづつ加えた:250μl、混合、250μl、混合、850μl及び混合。この溶液を室温に20分間保った。このチューブをSTC1700 8mlに満たし、混合し、4℃で10分間、2500rpmで遠心分離し、ペレットをSTC1700 250μlに懸濁した。このサンプルのアリコートを選択培地上でのプレート培養に使用した。pyr+選択には、1.5% Daishin寒天、1.2M ソルビトール、1xAspA(硝酸塩)、2mM MgSO4・7H2O、1x微量元素、0.1% カサミノ酸及び1% グルコースを含有するプレートを調整した。amdS(及びpyr+)について選択するならば、プレートは1.5% Oxoid寒天、1.2M ソルビトール、2mM MgSO4・7H2O、1x微量元素、1% グルコース、1xAspA(硝酸塩でない)、15mM CsCl及び10mM アセトアミド又はアクリルアミドを含有した。このプレートを30又は35℃でインキュベートした。
【0163】
PEG6000処理の前後で胞子及び生存プロトプラストを、硝酸塩を含みソルビトールを含むか又は含まない最少培地プレート上で、STC1700に希釈した液をプレート培養することによって計数した。ソルビトールを含まないプレートで10-1、10-2及び10-3希釈液100μlをプレート培養して胞子について計数し、ソルビトールを含むプレートで10-2、10-3、10-4及び10-5希釈液100μlをプレート培養して生存プロトプラストについて計数した。
【0164】
この形質転換の結果を表Iに示す。
H.タンパク質/バイオマス比率
セルラーゼ又はアミラーゼを産生するクリソスポリウム、トリコデルマ、及びアスペルギルスの株について、重量既知のフィルターに規定量の全ブロスアリコートを通し、脱イオン水で洗浄し、そして、このケーキ及びフィルターを60℃で一晩、及び100℃で1時間乾燥することによって、乾燥固形分の全量を決定した。デシケーターにおいて冷却後、乾燥フィルター+フィルターケーキの重量からフィルター重量を引き、除去されたブロスの体積で割ることによってバイオマスを決定した。
【0165】
トリコデルマ及びアスペルギルスの株については、測定をしたときにバイオマス以外の不溶性物質がほとんどなかったので、全乾燥固形分に等しいと仮定した。セルラーゼを産生するクリソスポリウム株については、有意な量のセルロースが培地中にあったので、バイオマスは、全乾燥固形分とセルロースの差として決定された。セルロースを以下のようにアッセイした。
【0166】
測定される全ブロスのアリコートを遠心分離して固形分を除去し、上清を捨てた。このペレットを、元のブロス体積に等しい量の0.1N NaOHへ再懸濁させ、1/10量の0.5N NaOHを加えた。この処置により、セルロース以外のすべてが溶けた。このアルカリ混合液を冷却し、遠心分離して、上清を捨てた。生じたペレットを脱イオン水における再懸濁と遠心分離により2回洗浄した。洗浄したペレットを脱イオン水に再懸濁し、重量既知のパンへ移し、上記のように乾燥させた。乾燥重量をアッセイされるアリコート量で割ることによって、セルロース濃度を決定した。
【0167】
タンパク質は、免疫グロブリン標準品を使用するBradford色素結合法(M. Bradford, 1976, Anal. Biochem. 72: 248)により決定した。様々な糸状菌株において選択発現されるタンパク質についてのタンパク質/バイオマス比を表Jに示す。
【0168】
【表10】
Figure 0005138855
I. A. sojae 及び C. lucknowense におけるグリーン蛍光タンパク質の発現及び分泌
多用途で、容易にスクリーニング可能なレポータータンパク質の例として、クラゲの Aequoria victoria 由来のグリーン蛍光タンパク質(GFP)を A. sojae 及び C. lucknowense において発現させた。GFP(A. Santerre Henriksen et al., Microbiology. 1999, 145: 729-734)及びグルコアミラーゼ−GFP融合遺伝子(pGPDGFP,C. Gordon et al., Microbiology 2000 146: 415-26)を担うベクターを、glaAプロモーターを構成的に発現される A. nidulans gpdAプロモーターで置換することによって、変化させた。pyrG又はamdS選択マーカ−のいずれか一方を使用する、同時形質転換によりこのベクターをクリソスポリウムに導入した。ベクターpGPDGFPとその誘導体を、pyrE又はamdS選択マーカ−のいずれか一方を使用する、同時形質転換によりクリソスポリウムに導入した。発現により輝く蛍光の A. sojae とクリソスポリウム形質転換体を生じ、いずれのベクターにもGFPの発現が確認された。グルコアミラーゼ−GFP融合タンパク質を発現する形質転換体からの培養上澄液の蛍光は、蛍光活性の融合タンパク質の分泌を示した。蛍光タンパク質の発現はまた、蛍光タンパク質の非分泌性の細胞質バージョンを発現する様々な形質転換体から得られる胞子(又は胞子様の胎芽)においても観察された。
【0169】
J.真菌増殖単位の導入
96穴マイクロタイタープレートのウェルに、多チャネルピペットを用いた手動か、又は自動化プレート処理システムの手段のいずれかにより、適当な培地をロードする。量が多いと交叉感染の機会が増すのに対し、蒸発に関わる問題を避けるには、量はあまりに少なくしてはならない。例えば、COSTAR(TM)3799丸底プレートを使用すれば、150μlが作業するのに適当な量である。プレートで増殖させたコロニー由来の胞子を、移入のために楊枝を使用して、プレートに接種する。他のやり方では、少量の胞子、プロトプラスト又は菌糸成分の懸濁液をピペッティングによりプレートに接種し得る。これらの懸濁液は、単離した胞子/プロトプラスト溶液、又はマイクロプレートで増殖した胞子形成培養物から誘導され得る。接種はまた、ピン又は96ピンツールの使用により、マイクロタイタープレートから実施し得る。
【0170】
引き続き、プレートを35℃でインキュベートする。蒸発を最少化するために、蓋付きプレートを利用し得るか、又はO2、H2O及びCO2の交換を可能にし、プレートの表面に付く膜でプレートをシールし得る。さらに蒸発を制限するために、制御された気体インキュベーターを使用し得る。
【0171】
3〜4日のインキュベーションの後で、バイオマスの量は、新鮮な培地を含有する新しいマイクロタイタープレートへの効率的なトランスファーに適したものになる。レプリカプレートの調製には、96ピンのツールが使用される。様々な培養物の配置を有する娘プレートが手動又はロボットのピペット操作又はピンによるトランスファーにより調製され得る。伝達性生殖要素がトランスファーピン上に存在することを保証するには、このピンツールをマイクロタイタープレートの培養液へ浸漬し、20秒間振動させる。次いで、ピンツールを注意深く出発プレートから除去して、新たなマイクロタイタープレートへ複製を作成する。多チャンネルピペットを使用し、親マイクロタイタープレート培養液の約1μlを移すことによって同じように効率的なトランスファー法が達成され得る。いずれの場合でも、胞子、胞子様胎芽、プロトプラスト、又は菌糸又は菌糸体フラグメントのような伝達性生殖要素の存在により、効率的なトランスファーが達成される。プロトプラストは、細胞壁分解酵素での処理に次ぐプロトプラストのトランスファーによりマイクロプレート穴において産生され得る。マイクロプレート内のプロトプラスト形成については C. van Zeijl et al., J. Biotechnol. 1997 59: 221-224 に説明されている。
【0172】
このトランスファーのさらなる改善は、マイクロタイタープレートシェーカー上でマイクロタイタープレート培養物を35℃でインキュベートすることによって得られる。このことにより培養物中の伝達性生殖要素の数が増加する。マイクロタイタープレートの培養物を保存するには、最終濃度15%になるようにグリセロールを加え、プレートを−80℃で保存する。後続のトランスファー実験では、プレートを解凍し、上記に述べたようにトランスファーを実施する。野生型又は市販の株である A. niger 及び A. sojae についての効率的なトランスファーは、これらの株が1日後に活発な表面増殖と空気(aerial)胞子形成を示すので、本明細書で使用される条件の下では容易でなかった。空気胞子形成はトランスファーの間に多量の交叉汚染を引き起こし、ウェルを覆う表面増殖により大部分の既知アッセイ法が後で妨げられる。
【0173】
K.遺伝子を発見するための真菌発現ライブラリーの構築
真菌発現ベクターのpAN52−1NOT(EMBL登録Z32524)又はその誘導体の1つに基づいて、A. nidulans gpdA遺伝子(P. Punt et al., J. Biotechnol. 1991 17: 19-33)の構成的に発現される広い真菌宿主範囲のプロモーターのすぐ上流に独自のBamHIクローニング部位が存在するベクターを構築した。翻訳開始コドン(ATG)を担うゲノムDNAフラグメントが発現されるようなやり方で、このベクターを構築した。このベクターに選択マーカーを提供するために、pBLUEpyrE由来のNotI−BamHIフラグメントを、pAN52−BamHIと命名された、NotI−BglIIで消化した発現ベクターにクローン化し、ベクターpAN52−pyrEを生成した。3〜6kbのサイズ範囲のクリソスポリウムゲノムDNAを部分的なSau3A消化により得た。これらのフラグメントを、BamHI消化した発現ベクターのpAN52−pyrEへ連結した後に、完全なクリソスポリウムゲノムを数倍網羅するのに十分なたくさんの組換えクローンを得た。数多くのこれらクローンをプールして、少なくとも5〜10倍の真菌ゲノム均等物を網羅した。これらプールのプラスミドDNAを調製し、クリソスポリウムpyr5又はアスペルギルスpyrEの突然変異体の形質転換のために使用した。形質転換体の集合を上記のようなマイクロタイタープレートにおいて産生し、さらなる機能性/活性スクリーニングのために使用した。あるいは、PCT/NL99/00618に記載のように、特に調節されるクリソスポリウムプロモーターを使用して発現ライブラリーを構築し得る。
【0174】
実施例に引用される文献
(以下の文献の内容、及び上記に引用したすべての特許及び参考文献は、参照により本明細書に組込まれている)
1.Calmels T. P., Martin F., Durand H., and Tiraby G. (1991) 真菌の分泌タンパク質のプロセシングにおけるタンパク分解現象.J. Biotechnol. 17 (1): 51-66.
2.Punt P. J., Dingemanse M. A., Jacobs-Meijsing B. J., Pouwels P. H., and van den Hondel C. A. (1988) Aspergillus nidulans のグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子の単離及び特徴づけ.Gene 69 (1): 49-57.
3.Shoemaker S., Schweickart V., Ladner M., Gelfand D., Kwok s., Myambo K., and Innis M. (1983) Trichoderma reesei 株L27から誘導されるエクソセロビオヒドロラーゼIの分子クローニング.Bio/Technology Oct.: 691-696.
4.Drocourt D., Calmels T., Reynes J. P., Baron M., and Tiraby G. (1990) 低次及び高等真核生物をフレオマイシン抵抗性へ形質転換する Streptoalloteichus hindustanus ble遺伝子のカセット.Nucleic Acids Res. 18 (13): 4009
5.Mullaney E. J., Hamer J. E., Roberti K. A., Yelton M. M., and Timberlake W. E. (1985) Aspergillus nidulans 由来trpC遺伝子の一次構造.Mol. Gen. Genet. 199 (1): 37-45.
6.Yanisch-Perron C., Vieira J., and Messing J. (1987) 改良されたM13ファージクローニングベクターと宿主株:M13mp18及びpUC19ベクターのヌクレオチド配列.Gene 33: 103-119.
7.Durand H., Baron M., Calmels T., and Tiraby G. (1988) 改良されたセルロース分解工業用細菌株の選択のために Trichoderma reesei へ適用される標準的な分子遺伝学.Biochemistry and genetics of cellulose degradation, J. P. Aubert, 編、アカデミックプレス、pp. 135-151
8.Lowry O. H., Rosebrough N. J., Farr A. L., and Randall R. J. (1951) フォリンフェノール試薬を用いたタンパク質の測定.J. Biol. Chem. 193, 265-275.
9.Parriche M., Bousson J. C., Baron M., and Tiraby G. 糸状菌における異種タンパク質発現系の開発.3rd European Conference on Fungal Genetics (真菌遺伝学に関する第3回欧州学会). 1996. ミュンスター、ドイツ.
10.Baron M., Tiraby G., Calmes T., Parriche M., and Durand H. (1992) Sh−bleフレオマイシン抵抗性タンパク質に融合したヒトリゾチームの真菌 Tolypocladium geodes による効率的な分泌.J. Biotechnol. 24 (3): 253-266.
11.Jeenes D. J., Marczinke B., MacKenzie D. A., and Archer D. B. (1993) Aspergillus niger からの異種タンパク質分泌についての先端切れグルコアミラーゼ遺伝子融合.FEMS Microbiol. Lett. 107 (2-3): 267-271.
12.Stone P. J., Makoff A. J. Parish J. H. and Radford A. (1993) neurospora-crassa のグルコアミラーゼ遺伝子のクローニング及び配列分析. Current Genetics 24(3): 205-211
13.Morsky P. (1983) Micrococcus lysodeikticus 細胞のリゾチームの比濁定量:反応条件の再検討.Analytical Biochem. 128: 77-85
14.Paluh J. L., Orbach M. J., Legerton T. L., and Yanofsky C. (1988) Neurospora crassa の交叉経路制御遺伝子、cpc−1は、酵母のGCN4と腫瘍遺伝子v−junコード化タンパク質のDNA結合ドメインに類似のタンパク質をコードする.Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85 (11): 3728-32.
15.Naraki T., Onnela M. L. Ilmen M. Nevalainen K. and Penttila M. (1994) グルコースの存在下で活性な真菌プロモーター.国際特許出願WO94/04673号.
16.Torronen A., March R. L., Messner R., Gonzalez R., Kalkkinen N., Harkki A., and Kubicek C. P. (1992) Trichoderma reesei 由来の2種の腫瘍キシラナーゼ:両方の酵素及び遺伝子の特徴づけ.Biotechnology 10 (11): 1461-5.
17.Farkas V. (1985) セルラーゼ及びキシラナーゼの微生物の生産者を検出するための新規な培地.FEMS Microbiol. Letters 28: 137-140.
18.Miller G. L. (1959) 還元糖を定量するためのジニトロサリチル酸試薬の使用.Anal. Chem. 31: 426-428.
19.Punt P. J. Mattern I. E., van den Hondel C. A. M. J. J. (1988) フレオマイシン抵抗性を与えるアスペルギルス形質転換のためのベクター.Fungal Genetics Newsletter 35, 25-30.

【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、実施例に記載のウェスタンブロットである。
【図2】 図2は、pUT720のマップである。
【図3】 図3は、pUT970Gのマップである。
【図4】 図4は、pUT1064のマップである。
【図5】 図5は、pUT1065のマップである。
【図6】 図6は、pF6gのマップである。
【図7】 図7は、pUT1150のマップである。
【図8】 図8は、pUT1152のマップである。
【図9】 図9は、pUT1155のマップである。
【図10】 図10は、pUT1160のマップである。
【図11】 図11は、pUT1162のマップである。
【図12】 図12は、pclAタンパク質の概略構造である。
【図13】 図13Aは、野生型 Aspergillus niger の顕微鏡写真である。
図13Bは、野生型 Aspergillus niger pclA突然変異体の顕微鏡写真である。
【図14】 図14Aは、野生型 Aspergillus sojae の顕微鏡写真である。
図14Bは、野生型 Aspergillus sojae pclA突然変異体の顕微鏡写真である。
【図15】 図15A〜Eは、pyrE遺伝子の配列決定の結果を示す。下にアミノ酸の配列を示すが、いくつかの配列の不確かさのために連続していない。示されたアミノ酸は最も可能性が高いものである。太字は、推定ないし可能なイントロンを示す。

Claims (49)

  1. DNAベクターのライブラリーによりコードされる複数のタンパク質を発現させる方法であって、ここでベクターのライブラリーは複数の異なるベクターを含み、それぞれの異なるベクターは異なるタンパク質をコードする核酸配列を含んでなり、前記核酸配列は発現調節領域と機能可能的に連結していて、以下の工程:
    (a)懸濁状態における増殖により特徴づけられ、そして、モノクローナルであり、そして懸濁状態において互いに容易に分離されうる、伝達性(transferable)生殖要素の産生により特徴づけられる表現型を有する、複数の個別の糸状菌を提供し;
    (b)前記糸状菌を、複数の個別糸状菌のそれぞれへ少なくとも1つの異種タンパク質をコードする核酸配列を導入するように、前記DNAベクターのライブラリーで安定的に形質転換し;
    (c)形質転換された糸状菌を、伝達性生殖要素の懸濁状態における形成を導く条件下で培養し;
    (d)複数の伝達性生殖要素を互いに分離させ;そして
    (e)同種又は異種のタンパク質をコードする核酸配列によりコードされるタンパク質の発現を導く条件下で、前記分離された個別の伝達性生殖要素を培養し、モノクローナル培養物又はモノクローナルコロニーを形成させる
    を含んでなる、前記方法。
  2. ベクターの各々が分泌シグナルコーディング配列を含む、請求項1に記載の方法。
  3. DNAベクターのライブラリーによりコードされる複数のタンパク質を関心の活性又は特性についてスクリーニングする方法であって、以下の工程:
    (a)請求項1又は2に記載の方法により、モノクローナル糸状菌培養物又はモノクローナル糸状菌コロニーにおいて複数のタンパク質を発現させ;そして
    (b)個別のクローン培養物又はクローンコロニーを関心の活性又は特性についてスクリーニングする
    を含んでなる、前記方法。
  4. 関心の活性又は特性を有するタンパク質をコードするDNA分子を産生する方法であって、以下の工程:
    (a)請求項1又は2に記載の方法により、モノクローナル糸状菌培養物又はモノクローナル糸状菌コロニーにおいて複数のタンパク質を発現させ;
    (b)個別のクローン培養物又はクローンコロニーを関心の活性又は特性についてスクリーニングし;そして
    (c)関心の活性又は特性を示すクローン培養物又はクローンコロニーからDNAを単離する
    を含んでなる、前記方法。
  5. 関心の活性又は特性を有するタンパク質をコードするDNA分子を産生する方法であって、以下の工程:
    (a)請求項4に記載の方法により、関心の活性又は特性を示すクローン培養物又はクローンコロニーからDNAを単離し;そして
    (b)前記DNAの配列を決定する
    を含んでなる、前記方法。
  6. 関心の活性又は特性を有するタンパク質を産生する方法であって、以下の工程:
    (a)請求項5に記載の方法により、関心の活性又は特性を有するタンパク質をコードするDNA分子を産生し;そして
    (b)前記DNA分子の核酸配列を翻訳し、前記DNA分子の核酸配列によってコードされるタンパク質を産生する
    を含んでなる、前記方法。
  7. 複数のモノクローナル糸状菌培養物又はモノクローナル糸状菌コロニーを、関心の活性又は特性を有する代謝物についてスクリーニングする方法であって、以下の工程:
    (a)請求項1又は2に記載の方法により、モノクローナル糸状菌培養物又はモノクローナル糸状菌コロニーにおいて複数のタンパク質を発現させ;そして
    (b)それぞれ個別のクローン培養物又はクローンコロニーを関心の活性又は特性についてスクリーニングする
    を含んでなる、前記方法。
  8. 関心のタンパク質の活性又は特性を最適化する方法であって、以下の工程:
    (a)タンパク質の突然変異形態をコードするDNA配列を含むベクターのライブラリーを提供し;
    (b)懸濁状態における増殖と、モノクローナルであり、そして懸濁状態において互いに容易に分離されうる、伝達性(transferable)生殖要素の産生により特徴づけられる表現型を有する、複数の個別の糸状菌を提供し;
    (c)前記糸状菌を、複数の個別糸状菌のそれぞれへ少なくとも1つの異種タンパク質をコードする核酸配列を導入するように、前記DNAベクターのライブラリーで安定的に形質転換し;
    (d)形質転換された糸状菌を、伝達性生殖要素の形成を導く条件下で培養し;
    (e)複数の伝達性生殖要素を互いに分離させ;
    (f)異種タンパク質をコードする核酸配列によりコードされる異種タンパク質の発現を導く条件下で、前記分離された個別の伝達性生殖要素を培養し、クローナル培養物又はクローナルコロニーを形成させ
    (g)前記クローン培養物又はクローンコロニーを、関心の活性又は特性を有する発現タンパク質についてスクリーニングし;
    (h)関心の活性又は特性を示すタンパク質を発現する1つ又はそれより多くのクローン培養物又はクローンコロニーを単離し;
    (i)関心の活性又は特性を示すタンパク質をコードする、単離されたクローン培養物又はクローンコロニーからのDNAを突然変異させ;
    (j)工程(i)において得られる突然変異したDNA配列を含むベクターのライブラリーを提供し;そして
    (k)関心の特性又は活性が所望のレベルに達するか、又はもはや増進しないかのいずれかになるまで、工程(b)〜(g)を繰り返す
    を含んでなる、前記方法。
  9. 工程(h)及び(i)の間に、工程(h)で単離される1つ又はそれより多くのクローン培養物又はクローンコロニーを培養し;関心の活性又は特性を示す発現タンパク質を単離し;そして、単離されたタンパク質を関心の特性について評価する、ことをさらに含んでなる、請求項8に記載の方法。
  10. スクリーニング工程がハイスループットスクリーニングにより実行される、請求項3に記載の方法。
  11. スクリーニング工程がハイスループットスクリーニングにより実行される、請求項4に記載の方法。
  12. スクリーニング工程がハイスループットスクリーニングにより実行される、請求項5に記載の方法。
  13. スクリーニング工程がハイスループットスクリーニングにより実行される、請求項6に記載の方法。
  14. スクリーニング工程がハイスループットスクリーニングにより実行される、請求項7に記載の方法。
  15. スクリーニング工程がハイスループットスクリーニングにより実行される、請求項8に記載の方法。
  16. スクリーニング工程がハイスループットスクリーニングにより実行される、請求項9に記載の方法。
  17. 糸状菌が、懸濁状態で培養されるときに、最適又はほぼ最適な条件下で十分な栄養分とともに増殖するときの発酵の終点で、200cP未満の培養された糸状菌の粘度により特徴づけられる表現型を有する、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
  18. 糸状菌が、懸濁状態で培養されるときに、最適又はほぼ最適な条件下で十分な栄養分とともに増殖するときの発酵の終点で、100cP未満の培養された糸状菌の粘度により特徴づけられる表現型を有する、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
  19. 糸状菌が、懸濁状態で培養されるときに、最適又はほぼ最適な条件下で十分な栄養分とともに増殖するときの発酵の終点で、60cP未満の培養された糸状菌の粘度により特徴づけられる表現型を有する、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
  20. 糸状菌が、懸濁状態で培養されるときに、最適又はほぼ最適な条件下で十分な栄養分とともに増殖するときの発酵の終点で、10cP未満の培養された糸状菌の粘度により特徴づけられる表現型を有する、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
  21. ベクターが糸状菌のシグナル配列を含む、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
  22. 糸状菌のシグナル配列が、セルラーゼ、β−ガラクトシダーゼ、キシラナーゼ、ペクチナーゼ、エステラーゼ、プロテアーゼ、アミラーゼ、ポリガラクツロナーゼ、及びヒドロホビンからなる群から選択されるタンパク質をコードする糸状菌遺伝子のシグナル配列である、請求項21に記載の方法。
  23. ベクターが選択マーカーをコードするヌクレオチド配列を含む、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
  24. ベクターがタンパク質をコードする核酸配列に機能可能的に連結した発現調節領域を含む、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
  25. 発現調節領域が誘導性プロモーターを含む、請求項24に記載の方法。
  26. 糸状菌が真正子嚢菌類亜綱(Euascomycetes)である、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
  27. 糸状菌が オニゲナレス(Onygenales)目である、請求項26に記載の方法。
  28. 糸状菌がユーロチウム(Eurotiales)目である、請求項26に記載の方法。
  29. 糸状菌が アスコマイコタ(Ascomycota)門であるが、但し、サッカロミセス(Saccharomycetales)目ではない、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
  30. 糸状菌が、アスペルギルス、トリコデルマ、クリソスポリウム、ニューロスポラ、リゾムコール、ハンセヌラ、ヒュミコラ(Humicola)、ムコール、トリポクラディウム(Tolypocladium)、フサリウム、ペニシリウム、タラロマイセス(Talaromyces)、エメリセラ(Emericella)及びヒポクレア(Hypocrea)からなる群から選択される属である、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
  31. 糸状菌が、アスペルギルス、フサリウム、クリソスポリウム、及びトリコデルマからなる群から選択される属である、請求項30に記載の方法。
  32. 糸状菌が受託番号VKM F−3631Dを有するクリソスポリウム株のUV18−25である、請求項31に記載の方法。
  33. 糸状菌が、pclA遺伝子又は蛋白質に突然変異を有するアスペルギルス ソーヤ(Aspergillus sojae)株である、請求項31に記載の方法。
  34. 糸状菌が、pclA遺伝子又は蛋白質に突然変異を有するアスペルギルス ニガー(Aspergillus niger)(黒色麹菌)株である、請求項31に記載の方法。
  35. 発現されたタンパク質のバイオマスに対する質量比が少なくとも1:1である、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
  36. 発現されたタンパク質のバイオマスに対する質量比が少なくとも2:1である、請求項35に記載の方法。
  37. 発現されたタンパク質のバイオマスに対する質量比が少なくとも6:1である、請求項36に記載の方法。
  38. 発現されたタンパク質のバイオマスに対する質量比が少なくとも8:1である、請求項37に記載の方法。
  39. 伝達性生殖要素が個別の糸状菌細胞である、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
  40. 伝達性生殖要素が胞子である、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
  41. 伝達性生殖要素が菌糸のフラグメントである、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
  42. 伝達性生殖要素がミクロペレットである、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
  43. 伝達性生殖要素がプロトプラストである、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
  44. 関心の活性又は特性を有するタンパク質を獲得する方法であって、以下の工程:
    (a)DNAベクターのライブラリーによりコードされる複数のタンパク質を、請求項3に記載の方法により、関心の活性又は特性についてスクリーニングし;
    (b)関心の活性又は特性を発現するモノクローナル培養物又はモノクローナルコロニーを、異種タンパク質をコードする核酸配列によりコードされる異種タンパク質の発現を導く条件下で、適切なスケールで培養し;そして
    (c)発現されたタンパク質を単離する
    を含んでなる、前記方法。
  45. 関心の活性又は特性を有するタンパク質を獲得する方法であって、請求項8又は請求項9に記載の方法により関心の活性又は特性を最適化し、最終工程(h)で単離されたクローン培養物又はクローンコロニーを、好適なスケールで培養し、そして発現されたタンパク質を培養物から単離する、ことを含んでなる、前記方法。
  46. 形質転換された糸状菌のライブラリーを作成する方法であって、以下の工程:
    (a)懸濁状態における増殖により特徴づけられ、そして、モノクローナルであり、そして懸濁状態において互いに容易に分離されうる、伝達性(transferable)生殖要素の産生により特徴づけられる表現型を有する、複数の個別の糸状菌を提供し;そして
    (b)前記糸状菌を、複数の個別糸状菌のそれぞれへ少なくとも1つの異種タンパク質をコードする核酸配列を導入するように、DNAベクターのライブラリーで安定的に形質転換させる;
    ここにおいて、DNAベクターのライブラリーは複数の異なるベクターを含み、それぞれの異なるベクターは異なるタンパク質をコードする核酸配列を含んでなり、前記核酸配列は発現調節領域と機能可能的に連結している
    を含んでなる、前記方法。
  47. ベクターの各々が分泌シグナルコーディング配列を含む、請求項46に記載の方法。
  48. 請求項46又は47に記載の方法により製造される、形質転換された糸状菌のライブラリー。
  49. 関心の活性又は特性を有するタンパク質を発現する、形質転換された糸状菌宿主を獲得する方法であって、以下の工程:
    (a)DNAベクターのライブラリーによりコードされる複数のタンパク質を、請求項3に記載の方法により、関心の活性又は特性についてスクリーニングし;そして
    (b)関心の活性又は特性を発現するモノクローナル培養物又はモノクローナルコロニーを単離する
    を含んでなる、前記方法。
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