以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。また、実施形態の説明では、説明の便宜を図るために、「前」とは車両の前側を、また「後」とは車両の後側を、また「左」とは車両の左側を、また「右」とは車両の右側をそれぞれ表すこととしている。
図2において、符号1は、車両の左側にステアリングホイール(図示せず)を備えた左ハンドル車の車室に設置されたインストルメントパネルである。このインストルメントパネル1は、図3に示すように、車両前部に設けられたエンジンルームR1と、その後方に設けられた車室R2とを仕切る鋼板製のダッシュパネルDPに接近して配置され、所定箇所が車両に固定されている。上記ダッシュパネルDPの下縁部には、フロアパネルFPの前縁部が連なっている。図3における符号Eは、エンジンルームR1に搭載されたエンジンを示している。
図2に示すように、上記インストルメントパネル1の左右中央部には車室R2内の乗員の胸元に向けて調和空気を吹き出すためのセンタベント吹出口2が、また左右端部には同様のサイドベント吹出口3,3がそれぞれ開口されている。また、インストルメントパネル1の上壁部前端近傍には、フロントウィンドガラス(図示せず)の内面に向けて曇りを取るための空調空気を吹き出す左右1対のデフロスタ吹出口4,4が開口されている。
上記インストルメントパネル1内には、補強メンバとしてのインパネメンバMが収容されるとともに、本発明の実施形態に係る車両用空調装置Aが搭載されている。空調装置Aは、図3に示すように、インストルメントパネル1の上壁部から下方に離れて配置されている。空調装置Aの上端部とインストルメントパネル1の上壁部との間には、上記センタベント吹出口2及びサイドベント吹出口3に連通するベントダクト6と、上記デフロスタ吹出口4に連通するデフロスタダクト7とが配置されている。これらベントダクト6及びデフロスタダクト7は、インストルメントパネル1に固定されている。
上記インパネメンバMは、図1にも示すように、左右方向に延びる高剛性な鋼管材で構成され、車体の剛性を効果的に向上できる位置として、車両の側面視で、インストルメントパネル1内の中央部付近に位置している。このため、インパネメンバMは、空調装置Aの略中央部を貫通している。インパネメンバMの両端部は、車両の左右両ピラー(図示せず)に固定されるとともに、ブラケット等(図示せず)を介してインストルメントパネル1の左右両端部にも固定されている。また、このインパネメンバMの左側には、図示しないが、ステアリングシャフトを回転可能に支持するステアリングコラムが固定されている。尚、本発明は右側にステアリングホイールを備えた右ハンドル車に対しても適用できるのは勿論である。
上記空調装置Aは、送風機10、冷却用熱交換器としてのエバポレータ11及び加熱用熱交換器としてのヒータコア12を該空調装置Aの左右方向略中央部に集約した、いわゆるフルセンタタイプの空調装置であり、車両の左右方向略中央部に位置付けられている。上記送風機10、エバポレータ11及びヒータコア12は、本発明の空調用機器を構成するものである。
上記空調装置Aは、上記送風機10、エバポレータ11及びヒータコア12を有する空調ケース8を備えている。空調ケース8は、図3に示すように、側面視で、上方に開放した大略U字状をなしており、該空調ケース8の上半部における前側部8aと後側部8bとは前後方向に離れている。前側部8aと後側部8bとの間の下端部には、上記インパネメンバMの左右方向略中央部を収容するインパネメンバ収容部13が設けられている。このインパネメンバ収容部13は、上記インパネメンバMの位置に対応して、空調装置Aの上下方向略中央部近傍で、かつ、前後方向略中央部近傍に位置付けられている。インパネメンバ収容部13は、空調ケース8を左右方向に貫通するように形成され、空調ケース8の左右両側面において開放されている。インパネメンバ収容部13の前後方向の寸法は、上記インパネメンバMの外径よりも長く設定され、インパネメンバMは、その外周面が空調ケース8の外面から離間した状態とされ、車両の走行時の振動等によって空調ケース8に接触しないようになっている。
上記空調ケース8の前側部8aと後側部8bとの間には、上記インパネメンバ収容部13から空調装置Aの上方へ向かって空調ケース8の上端部まで延びるインパネメンバ導入部14が形成されている。このインパネメンバ導入部14は、インパネメンバMを空調ケース8の上端部からインパネメンバ収容部13まで導くための導入路を構成するものであり、該空調ケース8の上端部で開放されている。また、このインパネメンバ導入部14は、インパネメンバ収容部13の左右両端に亘って連続していて、空調ケース8の左右両側面においても開放されている。インパネメンバ導入部14の前後方向の寸法は、上端部から下端部に亘って上記インパネメンバMの外径よりも長く設定されている。インパネメンバ導入部14は、側面視で、上下方向略中央部で屈曲していて、その下半部は、上側へ行くほど前方に位置するように傾斜する一方、上半部は、略鉛直に延びている。
また、図1に示すように、上記空調ケース8には、空気導入口としての外気導入口20及び内気導入口21と、空気吹出口としてのデフロスタ口22及びベント口23とが開口されている。尚、これら外気導入口20、内気導入口21、デフロスタ口22及びベント口23の各々の空調ケース8での開口位置は、本実施形態に記載の位置以外の位置に変更してもよいのは勿論である。
図3に示すように、空調ケース8の内部には、上記外気導入口20及び内気導入口21をデフロスタ口22及びベント口23に接続する空気通路25が設けられている。この空気通路25には、外気導入口28及び内気導入口29の少なくとも一方から空気を空気通路25に吸い込むための送風機10を構成するファン26と、上記エバポレータ11と、ヒータコア12と、上記エバポレータ11を経由した冷風及びヒータコア12を経由した温風の混合割合を変えてエアミックスチャンバ27に供給するエアミックスダンパ28と、デフベントダンパ29及びヒートダンパ30とが配置されている。
上記空調ケース8は、図1に示すように、共に樹脂材からなる上部空調ケース31及び下部空調ケース32を一体的に組み付けてなる。上部空調ケース31は、前側部8aと後側部8bとを構成するものであり、左右中央部で左右に2分割されていて分割部31a,31aからなる。上部空調ケース31の前側には、その上部の左右中央に中空円筒状のファンハウジング34が他の部分と一体に形成されている。ファンハウジング34は、インパネメンバ収容部13よりも上方に位置している。このファンハウジング34の内部に、上記ファン26が配置収容されている。ファン26は、シロッコファンであり、その回転軸は水平左右方向に延びている。
上記ファンハウジング34の左側壁(右側壁でもよい)にはモータ取付口(図示せず)が、また右側壁(左側壁でもよい)には吸込口(図示せず)が、また下側には、図3に示すように、吐出部34aがそれぞれ開口されている。モータ取付口の周縁部には、図1に示すように、上記送風機10を構成するモータ35が水平左右方向に延びる出力軸(図示せず)をファンハウジング34内に臨ませて気密状に取付固定されている。このモータ35の出力軸に上記ファン26が回転一体に取付固定されている。つまり、ファン26及びモータ35は、インパネメンバ導入部14よりも前方側の空調ケース8に配置され、インパネメンバ収容部13よりも上方に位置している。
一方、上記ファンハウジング34の吸込口には、上部空調ケース31の一部をなしてはいるが他の部分と別体に形成されたインテークボックス37の下流端が気密状に接続されている。このインテークボックス37は、水平左右方向の中心線を持つ略有底円筒状のもので、その左端が開口端とされている。インテークボックス37の開口端が下流端とされている。インテークボックス37の前側上部は前側に向かって下側に、また後側上部は後側に向かって下側にそれぞれ傾斜している。前側上部には上記外気導入口20が矩形状に開口し、また後側上部には外気導入口20と略同じ形状の上記内気導入口21が開口している。上記内気導入口21はインストルメントパネル1内で車室R2内に開放されている一方、外気導入口20は、フロントウィンドガラス前側の車体カウル部(図示せず)を経て車外に連通している。
上記インテークボックス37の内部には、水平左右方向の支持軸回りに揺動する内外気切換ダンパ(図示せず)が配置されている。この内外気切換ダンパの支持軸はインテークボックス37に支持されている。この支持軸の右端部(左端部でもよい)はインテークボックス37から外部に突出し、その突出部には、図示しないが、リンク機構を介して電動アクチュエータが駆動連結されている。電動アクチュエータによる内外気切換ダンパの支持軸回りの回動切り換えにより、外気導入口20及び内気導入口21の一方が閉じられて他方が開かれ、ファンハウジング34内に導入する空気が外気導入口20からの外気又は内気導入口21からの内気の一方に切り換えられるようになっている。そして、モータ35の作動に伴うファン26の回転により、外気導入口20からの外気又は内気導入口21からの内気がファンハウジング34内(空気通路25の一部)に吸い込まれて吐出部34cから吐出される。
図3に示すように、上記空調ケース8内におけるファンハウジング34の下方には、空気通路25の一部をなすエバポレータ収容部38が形成されている。ファンハウジング34の吐出部34cの下流端部は、上記エバポレータ収容部38に接続されている。エバポレータ収容部38には、上記エバポレータ11が空気通路25を横切るように配置されて収容されており、エバポレータ11と送風機10とは上下方向に並んでいる。エバポレータ11は、厚肉な矩形板状のもので、空気通過面が略鉛直方向に沿うように縦置きとされて、インパネメンバ収容部13及びインパネメンバ導入部14よりも前方側の空調ケース8に配置されている。また、空調装置Aを前後方向に見ると、インパネメンバ収容部13と、エバポレータ11の上下方向中間部とが重複している。
上記エバポレータ11は、図示しないが、アルミニウム合金製のチューブ及び伝熱フィンを交互に積層配置してなるコアと、コアのチューブ両端部に配設されたヘッダタンクとを備えたチューブアンドフィンタイプの熱交換器である。このエバポレータ11は、ヘッダタンクに取り付けられた膨張弁機構、エンジンルームR1に配設された図外の圧縮機、凝縮器、受液器と共に冷凍サイクルを構成するものであり、これら機器は冷媒配管によって接続されている。上記圧縮機によって圧縮された冷媒を、凝縮器により冷却して液冷媒としてから受液器及び膨張弁機構を経てエバポレータ11に供給することで、液冷媒の蒸発潜熱によってファン26からの空気がフィン間を通過する際に冷却され、これにより、冷風が生成されるようになっている。尚、エバポレータ11のチューブ内で液冷媒の蒸発がなくて蒸発潜熱が発生しない状態では、エバポレータ11に流入した空気は冷却されずに流入温度のままでエバポレータ11から出るが、本実施形態では、その場合もエバポレータ11から出た空気を冷風とする。
また、上記エバポレータ11の空気流れ上流側には、該エバポレータ11に流入する空気を濾過するフィルタ機構39が配置されている。また、このフィルタ機構39の上流側には、図示しないが、モータ35への印加電圧を制御するブロワモータ印加電圧制御用トランジスタが空気通路25に臨むように取り付けられている。
上記エバポレータ11下流側の空気通路25は冷風通路40と温風通路41とに分岐されている。上記冷風通路40は、エバポレータ11下流側(後側)の略上半部から後方へ向かって上側に湾曲しながら延びている。この冷風通路40により、エバポレータ11を経由した冷風の一部ないし全部を下流側へ直接流すようにしている。
一方、温風通路41は、エバポレータ11下流側の略下半部から後方に延びた後に上側に向かって湾曲して延びている。この温風通路41の途中に上記ヒータコア12が温風通路41を横切るように配置されて収容されている。すなわち、ヒータコア12は、上記エバポレータ11の下流側において、空気通過面が略水平方向に沿うように横置きに配置されている。このヒータコア12の上方には、上記インパネメンバ収容部13が位置している。
上記ヒータコア12も、上記エバポレータ11と同様に、チューブアンドフィンタイプの熱交換器である。このヒータコア12のヘッダタンクは、図示しないが、ヒータ配管を介して上記エンジンEのウォータジャケット(冷却水通路)に接続されている。エンジンEの冷却により昇温した冷却水をヒータコア12に流すことにより、エバポレータ11を経由して冷却された冷風の一部ないし全部と熱交換してそれを加熱し温風が生成されるようになっている。尚、ヒータコア12のチューブに高温度の冷却水が流れないときには、ヒータコア12に流入した空気は加熱されずに流入温度のままでヒータコア12から出るが、本実施形態では、その場合もヒータコア12から出た空気を温風とする。
上記冷風通路40の下流端(上端)と温風通路41の下流端(上端)とは互いにエアミックスチャンバ27(温調室)で連通している。このエアミックスチャンバ27は空気通路25の一部を構成しており、このエアミックスチャンバ27において冷風及び温風を混合させ、調和空気を生成する。エアミックスチャンバ27と、冷風通路40及び温風通路41の各下流端との間には、冷風通路40からの冷風と温風通路41からの温風との混合割合を変えて空気の温度を変更する上記エアミックスダンパ28が設けられている。エアミックスダンパ28は、冷風通路40下流端を全閉してエアミックスチャンバ27との連通を遮断したときには、温風通路41下流端を全開してエアミックスチャンバ27と連通させる一方、上記冷風通路40下流端を全開してエアミックスチャンバ27と連通させたときには、温風通路41下流端を全閉してエアミックスチャンバ27との連通を遮断するようになっている。そして、エアミックスダンパ28が、これら2つの位置の中間位置にあるときには、冷風通路40及び温風通路41の各開度を互いに逆方向に変えて、エアミックスチャンバ27に流入する冷風及び温風の各流量を変更し、エアミックスチャンバ27において冷風及び温風の混合割合を変えて空気の温度を変更調整するようになっている。
上記エアミックスダンパ28の支持軸は空調ケース8の右側壁(左側壁でもよい)から空調ケース8外に突出していて、この突出部には図外の電動アクチュエータが駆動連結されている。この電動アクチュエータによりエアミックスダンパ28を回動制御するようにしている。
上記空調ケース8の後側部8bの上面には、その前側に上記デフロスタ口22が、また後側に上記ベント口23がそれぞれ開口されている。上記デフロスタ口22は上記デフロスタダクト7を介して上記インストルメントパネル1のデフロスタ吹出口4,4に、またベント口23は上記ベントダクト6を介してインストルメントパネル1のセンタベント吹出口2及び左右のサイドベント吹出口3,3にそれぞれ接続されている。
また、空調ケース8の後部には、略上下方向に延びるヒートダクト部45が一体に形成されている。このヒートダクト部45の上端部は、エアミックスチャンバ27の後部に接続され、下端部は、空調ケース8の下端部近傍に位置し、開口している。ヒートダクト部45の下端開口部45aは、前席に着座した乗員の足元に位置している。また、ヒートダクト部45の下端部には、車室R2内の後席まで延びる図外のリアヒートダクトの上流端が接続されるようになっている。つまり、ヒートダクト部45は、前席足元への調和空気と後席足元への調和空気の両方が流れるようになっている。
上記エアミックスチャンバ27の上部には、上記デフロスタ口22及びベント口23に連通する連通路46が接続されている。この連通路46も、空気通路25の一部を構成するものである。この連通路46内には、デフロスタ口22とベント口23とを開閉するためのデフベントダンパ29が配設されている。さらに、エアミックスチャンバ27内には、ヒートダクト部45の上端部を開閉するためのヒートダンパ30が配置されている。
これらデフベントダンパ29及びヒートダンパ30は、いずれも水平左右方向の支持軸回りに回動するものである。デフベントダンパ29の回動角度によりデフロスタ口22及びベント口23の開度が変更され、ヒートダンパ30の回動角度によりヒートダクト部45の開度が変更されるようになっている。そして、図示しないが、デフベントダンパ29及びヒートダンパ30の各支持軸は空調ケース8の左側壁(右側壁でもよい)から空調ケース8外に突出していて、この突出部には、カム及びリンクからなる連動機構を介して電動アクチュエータが連結されており、この電動アクチュエータにより各ダンパ29、30を空調モードに合わせて連係させながら開閉制御するようにしている。
次に、上記のように構成された空調装置Aを車両に組み付ける要領について説明する。始めに、インストルメントパネル1にインパネメンバMを固定しておく。そして、このインストルメントパネル1に空調装置Aを組み付けていく。詳しくは、まず、インストルメントパネル1を治具等に固定した後、空調装置Aを移動させることにより、空調ケース8の上端部近傍にインパネメンバMの左右方向略中央部を位置付け、その後、インパネメンバMをインパネメンバ導入部14に挿入していく。この挿入の際には、空調装置Aを、インパネメンバ導入部14の屈曲形状に合わせて該空調装置Aの前後方向に傾動させる。また、インパネメンバ導入部14の前後方向の幅は、インパネメンバMの外径よりも長いので、インパネメンバ導入部14内でインパネメンバMを容易に動かすことが可能である。こうしてインパネメンバMを空調ケース8のインパネメンバ収容部13に到達させて収容した後、空調ケース8の所定箇所をインパネメンバMに固定する。インパネメンバMをインパネメンバ収容部13に収容する際には、インパネメンバ導入部14が空調ケース8の上方及び左右両方に開放されているので、従来例のような分割ケース部の着脱作業は必要ない。
上記のようにしてインストルメントパネル1、インパネメンバM及び空調装置Aを一体化してインパネモジュールを構成した後、該インパネモジュールを車両に搭載し、インパネメンバMや空調装置Aを車両に固定する。この車両への搭載状態においては、空調装置Aのインパネメンバ導入部14が上下方向に延びていて前後方向に幅を有するように位置することになる。
次に、上記空調装置Aの動作について説明する。インテークボックス37内の内外気切換ダンパの切換作動により、外気導入口20又は内気導入口21が全開にされると、送風機10の作動により、外気導入口20からの外気又は内気導入口21からの内気が空調ケース8内の空気通路25の上流端部、つまり、ファンハウジング34内に吸い込まれる。この吸い込まれた空気は、ファンハウジング34の吐出部34cから吐出された後に空調ケース8のエバポレータ収容部38内のエバポレータ11を通過して冷却されて冷風となる。尚、エバポレータ11で液冷媒の蒸発がなくて蒸発潜熱が発生しない状態では、エバポレータ11からは冷却されていない流入温度のままの冷風が出る。
そして、エアミックスダンパ28が冷風通路40を全開し、温風通路41を全閉しているときには、エバポレータ11から出た冷風の全体が温風通路41に流れずに冷風通路40を流れ、その冷風通路40を通って下流側のエアミックスチャンバ27に導入されて調和空気となる。
一方、エアミックスダンパ27が冷風通路40を全閉し、温風通路41を全開しているときには、エバポレータ11から出た冷風の全体が冷風通路40を流れずに温風通路41に流れ、その温風通路41を通って下流側のエアミックスチャンバ27に導入される。この温風通路41にはヒータコア12が配置されているので、温風通路41を通る間に冷風はヒータコア12に加熱されて温風となり、その温風はエアミックスチャンバ27に流入して調和空気となる。尚、ヒータコア12のチューブに高温度の冷却水が流れないときには、ヒータコア12からは加熱されていない流入温度のままの温風が出る。
さらに、上記エアミックスダンパ28を、冷風通路40又は温風通路41の一方の開度が他方の開度に対し相対的に逆になるように切換変更することで、冷風通路40の冷風の流量と温風通路41の温風の流量とが相対的に逆向きに変化する。このことで、エアミックスチャンバ27に流入する冷風及び温風の流量が調整され、エアミックスチャンバ27では温度を変更調整された調和空気が生成される。
基本的には、このようにしてエアミックスチャンバ27で調和空気が生成される。この調和空気は、ベント口23、デフロスタ口22及びヒートダクト部45の少なくとも一つから吹き出される。これら複数の出口のいずれを選択するかは、空調モードに応じてデフベントダンパ29及びヒートダンパ30の連係した開閉切り換えにより切り換えられる。ベント口23から吹き出した調和空気は、ベントダクト6を通ってインストルメントパネル1のセンタベント口2及びサイドベント口3から前席乗員の上半身に向けて供給される。また、デフロスタ口22から吹き出した調和空気は、デフロスタダクト7を通ってインストルメントパネル1のデフロスタ口22からフロントガラスの内面へ向けて供給される。また、ヒートダクト部45から吹き出した調和空気は、前席乗員の足元及び後席乗員の足元に供給される。
次に、上記のように構成された車両が前部から衝突した場合について説明する。衝突により車両前部が潰れて、図4に示すように、エンジンEが後退しダッシュパネルDPが車室側へ変形すると、このダッシュパネルDPの変形により、空調装置Aには後方へ衝撃が作用する。この衝撃を受けた空調装置Aの空調ケース8は、インパネメンバ導入部14が前後方向に幅を有するように位置しているため、この幅が狭まるように空調ケース8の前側部8aが後方に移動して、前側部8aと後側部8bとが近づくように空調ケース8が変形する。これにより、衝突時の衝撃が吸収されて、送風機10、エバポレータ11及びヒータコア12が車室R2の乗員側へ侵入し難くなる。
以上説明したように、この実施形態に係る空調装置Aによれば、空調ケース8に、上方及び左右両方に開放するインパネメンバ導入部14を設けたので、従来のような分割ケース部を空調ケース8に設けることなく、空調ケース8を貫通するようにインパネメンバMを配置することができる。これにより、空調ケース8を構成する部品点数を減らすことができるとともに、空調ケース8にシール構造を設ける箇所も減らすことができるので、空調装置Aを低コストなものとすることができる。また、インパネメンバ導入部14を上下方向に延びる形状としているので、車両が前部から衝突して空調装置Aに後方へ向けて衝撃が作用すると、インパネメンバ導入部14を利用して空調ケース8を変形させることで衝撃を吸収できる。これにより、送風機10、エバポレータ11及びヒータコア12が車室R2の乗員側に侵入し難くなり、乗員の安全性を高めることができる。
また、エバポレータ11及びモータ35がインパネメンバ収容部13よりも前方側に配置されているため、これらエバポレータ11及びモータ35は、インパネメンバMよりも前方側に位置することになる。これにより、車両の衝突時に、エバポレータ11及びモータ35は、インパネメンバMによって後方への移動が規制されるようになる。その結果、エバポレータ11及びモータ35が車室の乗員側により一層侵入し難くなるので、乗員の安全性をさらに高めることができる。また、図示しないが、空調ケース8の形状を変更することで、ヒータコア12をインパネメンバ収容部13よりも前方側に位置付けるようにしてもよい。
尚、図5に示す変形例1のように、上記インパネメンバ導入部14の一部に、空調ケース8に着脱される付加部品を配設するようにしてもよい。変形例1は、付加部品が空調ケース8内の空気を外部に流出させるデフロスタ付加ダクト60とされている例である。この空調ケース8のデフロスタ口22は、ベント口23よりも下側に位置し、前方へ向けて開口している。上記デフロスタ付加ダクト60は、デフロスタ口22とデフロスタダクト7とを連通させるものであり、両者の間に配置されてデフロスタ口22の周縁部に対し爪嵌合やビス止め等(図示せず)による着脱可能な固定構造により固定されている。デフロスタ付加ダクト60は、空調ケース8への取付部分から前方へ向かって斜め上方に延びており、その上端部は、ファンハウジング34に近接している。従って、デフロスタ付加ダクト60が取り付けられた状態では、インパネメンバ導入部14の上部が一部閉じられた状態となる。この変形例1において、インパネメンバMをインパネメンバ収容部13に収容する際には、まず、デフロスタ付加ダクト60を空調ケース8から取り外しておき、上記と同様にしてインパネメンバMをインパネメンバ収容部13に収容していく。そして、デフロスタ付加ダクト60を空調ケース8に取り付ける。
このように付加部品をインパネメンバ導入部14の一部に配設するようにしたので、組付後にはデッドスペースとなってしまうインパネメンバ導入部14を有効に活用しながら、車両衝突時の空調ケース8の変形による安全性を高めることができる。また、デフロスタ付加ダクト60は、中空状のものであるため、衝撃が作用したときの空調ケース8の変形は殆ど阻害されない。
また、付加部品は、例えば図6に示す変形例2のように、補助ベントダクト65としてもよい。補助ベントダクト65は、インパネメンバ導入部14内で上下方向に延びている。この変形例2では、空調ケース8のエバポレータ11よりも下流側の冷風通路40に対応する部位に、インパネメンバ導入部14に臨むように開口部66が形成されている。この開口部66に、補助ベントダクト65の下流端が接続され、該補助ベントダクト65は冷風通路40に連通している。補助ベントダクト65の下端部は、上記デフロスタ付加ダクト60と同様に、空調ケース8に対して着脱可能に取り付けられている。補助ベントダクト65の中途部には、蛇腹部65aが設けられている。開口部66には、該開口部66を開閉するための補助ダンパ67が回動可能に配置され、図示しないが、補助ダンパ67の支持軸は空調ケース8の右側壁(左側壁でもよい)から空調ケース8外に突出していて、この突出部には電動アクチュエータが駆動連結されている。この電動アクチュエータにより補助ダンパ67を回動制御するようにしている。尚、補助ダンパ67の支持軸には、エアミックスダンパ28のアクチュエータの出力軸を連結するようにしてもよい。
この変形例2の空調装置Aでは、デフロスタ口22とベント口23との位置関係が上記したものに対し前後逆になっており、デフロスタ口22がベント口23の後側に位置している。上記補助ベントダクト65の上端部は上記ベント口23の前側に隣接配置され、上記ベントダクト6に接続されている。そして、補助ダンパ67が開くと、冷風通路40内の冷風が補助ベントダクト65を通ってベントダクト6に流入するので、補助ベントダクト65を設けない場合に比べて、ベント吹出口2、3から吹き出す冷風量を多く確保することができる。これにより、特に夏場においては冷房性能の向上が図られて乗員の快適性を向上でき、また、暖房時には、頭部に冷風を供給でき、頭寒足熱の快適な暖房を実現できる。この変形例2において、インパネメンバMをインパネメンバ収容部13に収容する際には、まず、補助ベントダクト65を空調ケース8から取り外しておき、上記と同様にしてインパネメンバMをインパネメンバ収容部13に収容していく。そして、補助ベントダクト65を空調ケース8に取り付ける。
また、付加部品は、例えば図7に示す変形例3のように、補助ダクト70としてもよい。この補助ダクト70は大略上下方向に延びている。この変形例3では、空調ケース8のエアミックスチャンバ27に対応する部位に、インパネメンバ導入部14に臨むように開口部71が形成されている。この開口部71に上記補助ダクト70の下端部が接続され、エアミックスチャンバ27に連通している。補助ダクト70は、上記デフロスタ付加ダクト60と同様に、空調ケース8に対して着脱可能に取り付けられている。
この変形例3のインストルメントパネル1には、センタベント吹出口2とデフロスタ吹出口4との間に、アッパーベント吹出口73が設けられており、このアッパーベント吹出口73に上記補助ダクト70の上端部が接続されるようになっている。また、この図に示すように、インパネメンバ導入部14の一部に配設される付加部品は、例えば、空気浄化装置80であってもよい。この空気清浄装置80は、補助ダクト70の中途部に着脱可能に取り付けられている。この変形例3において、インパネメンバMをインパネメンバ収容部13に収容する際には、まず、補助ダクト70を空気浄化装置80と共に空調ケース8から取り外しておき、上記と同様にしてインパネメンバMをインパネメンバ収容部13に収容していく。そして、補助ダクト70を空気浄化装置80と共に空調ケース8に取り付ける。尚、空気浄化装置80は、インパネメンバ導入部14内に位置するように空調ケース8に取り付けてもよい。また、空気浄化装置80の代わりに、マイナスイオン発生装置、高濃度酸素空気(酸素富化空気)取入装置、香り発生装置等を取り付けるようにしてもよい。これにより、乗員の快適性をより一層向上させることができる。また、これら装置80は、1つだけ取り付けるようにしてもよいし、複数取り付けるようにしてもよい。上記した各装置80は、従来より、家庭用の空調装置や空気清浄機等で用いられている周知の構造のものであるため、詳細な説明は省略する。
また、図8に示す変形例4のように、空調ケース8には、デフロスタ口22を開閉するデフロスタダンパ85と、ベント口23及びヒートダクト部45を開閉するベントヒートダンパ86とを設けるようにしてもよい。
また、上記実施形態では、インパネメンバ導入部14が側面視で屈曲して延びる形状とされているが、これに限らず、真っ直ぐに延びる形状や、湾曲して延びる形状であってもよい。また、インパネメンバ導入部14は、インパネメンバ収容部13から下方へ延びるように形成し、空調ケース8の下端部で開放するようにしてもよい。この場合では、空調ケース8の形状を変更するとともに、熱交換器11、12等の位置を変更することで対応できる。
また、本発明において、上下方向に延びるとは、車両搭載状態における鉛直線に対し45゜以下の傾斜角度で延びる場合も含むものであり、従って、インパネメンバ収容部13は、斜め上方や斜め下方に延びるように形成してもよい。また、インパネメンバ導入部14の前後方向の寸法は、上下方向の中途部で変えるようにしてもよい。さらに、インパネメンバ導入部14の前後方向の寸法は、上方へ行くほど長くするようにしてもよい。
また、インパネメンバ導入部14の一部に配設される付加部品としては、例えば、上記ダンパ28、29、30を駆動する電動アクチュエータやリンク等であってもよい。
また、本発明は、フルセンタタイプの空調装置A以外にも、例えば、送風機が熱交換器の左右方向一側に配置されたセミセンタタイプの空調装置にも適用することができる。