以下、実施形態について図に基づいて説明する。以下の実施形態において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
先ず、本実施形態に係る車両用空調装置の概略構成について、図面を参照しつつ説明する。以下の説明で前後左右上下の方向を用いて説明するときは、車両用シートに着座した乗員から見た前後左右上下の方向を示すものとする。そして、各図に適宜示す矢印についても同様の定義を用いており、車両幅方向とは左右方向に相当している。
図1、図2に示すように、本実施形態に係る車両用空調装置1は、車両Cの車室I内を快適な空調環境にする為に、車室Iの天井部Rに配置されており、空調ケース10内部に送風機20や蒸発器50等を収容して構成されている。
当該車両用空調装置1の空調ケース10には、吸込口16及び吹出口45が配置されており、それぞれ車室I内と連通している。従って、当該車両用空調装置1は、送風機20の作動によって、吸込口16から車室I内の空気を空調ケース10内部に吸い込み、蒸発器50によって温度調整された送風空気Fとして、吹出口45から車室Iへ供給することができる。
本実施形態において、車両用空調装置1は、三列シートの所謂ミニバンタイプの車両Cに搭載されている。当該車両Cの車室Iには、一列目シートSa、二列目シートSb及び三列目シートScが、車両前方から後方に向かってこの順番で配置されている。当該車両Cにおいて、一列目シートSaは、運転席及び助手席として構成されている。そして、二列目シートSb及び三列目シートScは、例えば、それぞれ3人の乗員が着座可能なベンチタイプのシートによって構成されている。
図2に示すように、車両用空調装置1は、車室Iの天井部Rにおいて、一列目シートSaの後方且つ二列目シートSbの前方に配置されており、車両幅方向における中央部分に位置している。当該車両用空調装置1は、二列目シートSb、三列目シートScの近くに配置された操作パネルの操作に従って作動し、車室Iにおける二列目シートSb、三列目シートSc側の空調を行うように構成されている。
つまり、当該車両用空調装置1は、主に、二列目シートSbや三列目シートScに着座した乗員Pによって操作され、当該車室I後側の乗員Pの快適性を向上させる為に用いられる。つまり、二列目シートSb、三列目シートScの乗員は、運転席や助手席の乗員Pを介さずに、当該車両用空調装置1の空調運転を行うことができる。
尚、一列目シートSaと二列目シートSbの間にあたる天井部Rを構成するルーフヘッドライニングには、車両用空調装置1における吸込口16及び吹出口45の位置に対応するように開口部が形成されている。従って、車両用空調装置1の吸込口16及び吹出口45は、当該開口部を通じて車室I側へ露出するように配置される。
次に、本実施形態に係る車両用空調装置1の具体的構成について、図1〜図5を参照しつつ詳細に説明する。上述したように、当該車両用空調装置1は、車両Cの天井部Rに配置される空調ケース10内部に、送風機20と、蒸気圧縮式の冷凍サイクルの一部を構成する蒸発器50とを収容して構成されている。
図3〜図5に示すように、当該空調ケース10は、車両用空調装置1における上側の外殻を構成する上部ケース11と、車両用空調装置1における下側の外殻を構成する下部ケース13とによって構成されている。上部ケース11と下部ケース13は、ネジ等によって組み付けられている。
上部ケース11には、複数の上側固定部12が左右対称に形成されている。当該上側固定部12は、車両Cの天井部Rにおける上方側車体部材に対して、空調ケース10を固定する際に用いられる。一方、下部ケース13には、複数の下側固定部14が左右対称に形成されている。当該下側固定部14は、天井部Rにおける車室I側に位置する車体部材(例えば、ルーフリインフォースメント)に対して、空調ケース10を固定する際に用いられる。
図1に示すように、各下側固定部14は、空調ケース10における上側固定部12よりも車両前方側に位置している。即ち、空調ケース10は、夫々異なる位置に形成された上側固定部12、下側固定部14を用いて車両Cの天井部Rに固定される為、車両用空調装置1を天井部Rにおける所定位置に固定することができる。
図1等に示すように、空調ケース10の車両幅方向中央部分には、ファン収容部15が配置されている。ファン収容部15は、当該空調ケース10における車両後方側部分を構成しており、その内部に送風機20を収容している。又、ファン収容部15の下面には、吸込口16が形成されており、空調ケース10及びファン収容部15の内部と車室I内とを連通している。
送風機20は、ファン収容部15内部において吸込口16に対向するように配置されており、吸込口16から車室I内の空気を吸い込み、送風空気Fとして空調ケース10内部へ送風する。送風機20は、天井部Rにおける車体部材(例えば、ルーフリインフォースメント)に対して固定されることで、ファン収容部15内部に配置されている。当該送風機20は、遠心多翼ファン(即ち、シロッコファン)を電動モータ21にて駆動する電動送風機である。遠心多翼ファンは略円筒形を為しており、径方向外側に多数の羽根を有している。
電動モータ21は、送風機20の下部を構成しており、車両上下方向に沿って伸びる駆動軸を有している。遠心多翼ファンは電動モータ21の駆動軸に固定されている為、送風機20は、電動モータ21を作動させることで、吸込口16を介して遠心多翼ファンの軸芯部に吸い込んだ空気を径方向外側へ吹き出させることができる。そして、送風機20における遠心多翼ファンの回転数(送風量)は、図示しない空調制御装置から出力される制御電圧によって制御される。
図1等に示すように、ファン収容部15における車両前方側には、送風口25が形成されている。当該送風口25は、送風機20の作動によって、吸込口16から吸い込まれた空気が送風空気Fとして送風される際にファン収容部15から吹き出される部分である。当該送風口25は、空調ケース10内を流れる送風空気Fを供給する為の部分であり、本発明における送風口として機能する。
そして、当該車両用空調装置1は、ファン収容部15に加えて、第1空気通路30と、第2空気通路35と、第3空気通路40とを有している。第1空気通路30、第2空気通路35、第3空気通路40は、それぞれ、送風口25を介して送風された送風空気Fの流路として機能する。
第1空気通路30は、車両用空調装置1の空調ケース10内部において、ファン収容部15に形成された送風口25から車両前方側に伸びるように形成されている。従って、送風口25から送風された送風空気Fは、第1空気通路30内部を車両前側に流れる。
図5に示すように、空調ケース10内部の車両前方側には、リブ34が配置されている。当該リブ34の上端は、空調ケース10における車両上側の内面から所定の距離だけ離れた位置に位置している。従って、第1空気通路30を流れた送風空気Fは、空調ケース10の内部においてリブ34の上方を通過する。つまり、本実施形態に係る第1空気通路30は、ファン収容部15の送風口25から車両前方側へリブ34まで伸びた空気通路として定義することができる。
図1等に示すように、当該車両用空調装置1は、空調ケース10における第1空気通路30内部に蒸発器50を有している。当該蒸発器50は、冷媒配管接続部51を介して、蒸気圧縮式の冷凍サイクルに接続されており、冷媒が流れるチューブ52と、チューブ52に接合された複数枚のプレートフィン53を有している。
図示は省略するが、蒸気圧縮式の冷凍サイクルは、蒸発器50に加えて、圧縮機と、凝縮器と、減圧部(例えば、膨張弁やキャピラリチューブ等)とを有しており、これらを冷媒配管で接続して構成されている。従って、当該冷凍サイクルでは、圧縮機によって冷媒を高温高圧状態に圧縮して凝縮器において放熱させた後、この冷媒を減圧部で減圧させて蒸発器50内に流入させる。
これにより、蒸発器50は、第1空気通路30を流れる送風空気Fとチューブ52内を流れる冷媒との間における熱交換によって、送風空気Fから吸熱して冷却することができる。即ち、蒸発器50は、当該車両用空調装置1における冷却用熱交換器として機能し、本発明における熱交換器に相当する。
そして、蒸発器50におけるチューブ52は、第1空気通路30を車両幅方向に横断するように直線状に伸びる複数の直管部分の端部を、略U字状を為すU字管で接続して構成されている。従って、当該チューブ52は、第1空気通路30内を車両幅方向に従って蛇行するように配置される。そして、チューブ52の端部は、冷媒配管接続部51に接続されている為、チューブ52の内部には、冷媒配管接続部51を介して、蒸気圧縮式冷凍サイクルの冷媒が流出入する。
図5等に示すように、当該蒸発器50において、チューブ52の直管部分は、車両前後方向に複数(本実施形態では4本)配置され、車両上下方向には、車両前後方向よりも少ない複数(本実施形態では2本)配置されている。即ち、各チューブ52の直管部分の間には、車両前後方向及び車両上下方向にそれぞれ所定の間隔が形成されている。従って、第1空気通路30を流れる送風空気Fは、蒸発器50を通過する際に、チューブ52の間を通過して、チューブ52内部を流れる冷媒との熱交換が行われる。
複数枚のプレートフィン53は、熱伝導性の良い材料でプレート状に形成されており、図1、図5に示すように、車両幅方向に間隔をあけてチューブ52の直管部分に対して接合されている。従って、チューブ52内部を流れる冷媒は、チューブ52の管壁に加えてプレートフィン53を介して、第1空気通路30を流れる送風空気Fから吸熱することができる。各プレートフィン53は、その厚み方向が車両幅方向と一致するように配置されている為、より広い面積で送風空気Fと冷媒との間の熱交換を行うことができる。
尚、この冷凍サイクルで用いられる冷媒としては、HFC系冷媒(具体的には、R134a)を採用しており、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない蒸気圧縮式の亜臨界冷凍サイクルを構成している。もちろん、冷媒としてHFO系冷媒(例えば、R1234yf)等を採用してもよい。これらの冷媒は、本発明における熱交換媒体の一例である。
そして、空調ケース10内部における車両前方側には、第2空気通路35が形成されている。第2空気通路35は、空調ケース10における車両前側の壁面とリブ34の間の空間によって構成されている。即ち、第2空気通路35は、車両幅方向中央部分を車両前方に伸びる第1空気通路30の端部から、それぞれ車両幅方向(即ち、車両右方向及び左方向に)に伸びている。
図5等に示すように、第2空気通路35の車両前側の部位は、空調ケース10における車両前側の壁面によって閉塞されている。従って、当該車両用空調装置1では、第1空気通路30を通過した送風空気Fは、第2空気通路35内に流入すると、第2空気通路35の車両前側の壁面にあたる。
空調ケース10における車両前側の壁面は車両幅方向に伸びている為、第2空気通路35の車両前側の壁面にあたった送風空気Fは、この壁面に従って車両右方向、車両左方向へと案内される。つまり、第2空気通路35に流入すると、当該送風空気Fは、第2空気通路35に従って車両右方向、車両左方向へと流れる。当該第2空気通路35は、本発明における第2空気通路として機能する。
ここで、空調ケース10における車両前側の壁面は、図5に示すように、上部ケース11の車両前側の壁面と、下部ケース13の車両前側の壁面によって構成されている。上部ケース11の車両前側の壁面と、下部ケース13の車両前側の壁面は、凹凸嵌合構造によって嵌め合わされている。この構造を採用することで、空調ケース10における車両前側の壁面は、空調ケース10の外部に対する気密性を担保している。
即ち、第2空気通路35は、空調ケース10の外部に対する気密性を有している。従って、当該車両用空調装置1において、第2空気通路35は、当該第2空気通路35に流入した送風空気Fを空調ケース10の外部に漏出させることなく、第3空気通路40へ案内することができる。
空調ケース10内部における車両幅方向両側には、夫々、第3空気通路40が形成されており、車両後方側に向かって伸びている。つまり、各第3空気通路40は、空調ケース10における第1空気通路30及び蒸発器50に対して、車両左右側方の位置に形成されている。
そして、各第3空気通路40は、空調ケース10の車幅方向両側において、それぞれ第2空気通路35に接続されている為、第2空気通路35を通過した送風空気Fを車両後方側へ導くことができる。つまり、第2空気通路35は、車両前方に向かって第1空気通路30を通過した送風空気Fの流れの向きを、水平方向に180°転換させることができ、第3空気通路40内を車両後方側へ導くことができる。
この第2空気通路35は、その車両前方側の部位が空調ケース10の壁面にて閉塞されている為、空調ケース10の車両前側部位において、送風空気Fを空調ケース10の外部へ漏出させることなく、第3空気通路40へ流入させることができる。そして、第3空気通路40は、空調ケース10の車両幅方向両側にて、車両後方部分に形成された補強部46まで伸びている。
第3空気通路40の後端部に位置する補強部46の前側部分には、吹出口45がそれぞれ形成されている。各吹出口45は、空調ケース10の車両後方側において、下部ケース13を開口して形成されており、空調ケース10における第3空気通路40内部と車室I内部とを連通している。従って、第3空気通路40を流れた送風空気Fは、各吹出口45を介して、空調ケース10内部から車両後方側へ向かって車室I内に吹き出される。
図1〜図5に示すように、当該車両用空調装置1は、空調ケース10内において、吸込口16から吹出口45までの送風空気Fの流路を、第1空気通路30と、第2空気通路35と、第3空気通路40とによって、車両前後方向に沿って送風空気FがUターンするように構成することで、車両用空調装置1における車両前後方向のサイズを小さくして、コンパクトに構成することができる。
又、当該車両用空調装置1において、第2空気通路35は、空調ケース10の車両前方部分において、第1空気通路30を通過した送風空気Fの流れを水平方向に180°転換させて、第3空気通路40に導くように構成されている。更に、第3空気通路40は、空調ケース10内部において、第1空気通路30及び蒸発器50に対して左右両側に配置されている。
即ち、当該車両用空調装置1によれば、第1空気通路30と、第2空気通路35と、第3空気通路40とを、水平な略同一平面上に配置することができる為、車両用空調装置1における車両上下方向のサイズを小さくして、コンパクトに構成することができる。
当該車両用空調装置1は、図2に示すように車両Cの天井部Rに配置される為、車両前後方向及び車両上下方向に関して、装置をコンパクトに構成することで、車室Iを広くすることができ、乗員Pの居住空間を充分に確保することができる。
続いて、上述した車両用空調装置1における送風空気Fの流れについて、図6、図7を参照しつつ詳細に説明する。当該車両用空調装置1による空調運転が開始されると、冷凍サイクルにおける圧縮機の作動と共に、電動モータ21の作動が開始される。
これにより、送風機20の作動が開始され、車両用空調装置1における車両後方側に配置されたファン収容部15の吸込口16を介して、車室I内の空気が空調ケース10内に吸い込まれる。
図6に示すように、吸込口16から吸い込まれた空気は、送風機20の作動に伴って、ファン収容部15の車両前方側に形成された送風口25から、送風空気Fとして、第1空気通路30内に吹き出される。
第1空気通路30内に流入した送風空気Fは、図7に示すように、蒸発器50におけるチューブ52及びプレートフィン53の間を通過して、第1空気通路30内を車両前方側に流れていく。この時、送風空気Fは、蒸発器50にて冷媒との間で熱交換を行って冷却される。
そして、第1空気通路30内の蒸発器50を通過した送風空気Fは、空調ケース10の車両前方側に配置されたリブ34の上方を通過して第2空気通路35内に流入する。当該送風空気Fは、第2空気通路35の車両前側の壁面にあたって、車両幅方向へ向かうように案内される。つまり、第2空気通路35に流入した送風空気Fの一部は、第2空気通路35に従って車両右方向に流れ、他の部分は第2空気通路35に従って車両左方向に流れていく。
この時、第2空気通路35の車両前側の壁面は、凹凸嵌合構造によって気密性を保持している。従って、第2空気通路35は、第1空気通路30から流入した送風空気Fを、空調ケース10の外部に漏出させることなく、車両幅方向へ案内できる。
第2空気通路35内を車両右方向に流れた送風空気Fは、空調ケース10の車両右側に配置された第3空気通路40内に流れ込む。この場合の第2空気通路35は、第1空気通路30を車両前方側に向かって流れる送風空気Fの向きを、水平方向右側に向かって180°転換させて、車両右側の第3空気通路40を車両後方側へ導く。
一方、第2空気通路35内を車両左方向に流れた送風空気Fは、空調ケース10の車両左側に配置された第3空気通路40内に流れ込む。この場合の第2空気通路35は、第1空気通路30を車両前方側に向かって流れる送風空気Fの向きを、水平方向左側に向かって180°転換させて、車両左側の第3空気通路40を車両後方側へ導く。
つまり、第2空気通路35は、空調ケース10の外部に漏出させることないので、第1空気通路30から流入した送風空気Fの全てを、第3空気通路40の内部に流入させることができる。
図5に示すように、各第3空気通路40に流入した送風空気Fは、車両後方側に向かって流れていき、空調ケース10における車両後方部分に配置されている各吹出口45を介して、空調ケース10内部から車両後方側に向かって車室I内部へ吹き出される。
これにより、当該車両用空調装置1によれば、蒸発器50における熱交換によって温度調整された送風空気Fを、各吹出口45から供給することができるので、車室I内の快適性を向上させることができる。
又、当該車両用空調装置1によれば、送風空気Fの流れが車両左右方向に分岐する前の第1空気通路30内に蒸発器50が配置されている為、例えば、各第3空気通路40内に熱交換器を配置する場合に比べて、蒸発器50の組付け工数を低減することができる。
そして、本実施形態に係る車両用空調装置1は、図2に示すように、車両Cの天井部Rにおいて、車両前後方向に関して一列目シートSaと二列目シートSbの間に配置されており、車両幅方向における中央部に位置している。従って、車両用空調装置1における各吹出口45は、車両Cの天井部Rにおいて、可能な限り車両後方側に配置される。
従って、当該車両用空調装置1によれば、一列目シートSaに座った乗員Pから離れた位置に各吹出口45を配置することができるので、車室I内に送風空気Fが吹き出される際の吹出音の発生源を遠ざけて、吹出音による快適性の低下を抑制できる。
又、第2空気通路35の車両前側は空調ケース10における車両前側の壁面で閉塞されており、第2空気通路35の空調ケース10外部に対する気密性が担保されている。これにより、当該車両用空調装置1によれば、車両用空調装置1の車両前側部位において、空調ケース10の外部へ送風空気Fが漏出することを防止できる。
即ち、当該車両用空調装置1は、乗員Pに近い位置での送風空気Fの吹き出しを防止すると共に、乗員Pから遠い位置に配置された吹出口45にて、車室I内に送風空気Fを吹き出させることができる。当該車両用空調装置1によれば、車室I内に送風空気Fが吹き出される際の吹出音の発生源を、確実に乗員Pから遠ざけて、吹出音による快適性の低下を抑制できる。
そして、各吹出口45は、第3空気通路40を通過した送風空気Fを、車両後方側に向かって、車室I内へ吹き出すように構成されている。これにより、当該送風空気Fは、一列目シートSaの乗員Pから離れる方向へ流れる為、音の指向性の観点からも吹出音による快適性の低下を抑制できる。
又、図1〜図4に示すように、当該車両用空調装置1は、空調ケース10の車両後方部分に、吸込口16及び送風機20を有している。従って、当該車両用空調装置1を、上述のように車両Cに搭載することで、一列目シートSaに座った乗員Pから離れた位置に、吸込口16及び送風機20を配置することができる。
これにより、当該車両用空調装置1は、吸込口16を介して車室I内の空気を吸い込む際の吹込音や、送風機20の作動に伴う電動モータ21の作動音の発生源を遠ざけ、吹込音や作動音といった運転騒音による快適性の低下を抑制することができる。
尚、本実施形態に係る車両用空調装置1は、上述したように、主として車室I後方側(即ち、二列目シートSbや三列目シートScの乗員P)の快適性を向上させる目的で、車両Cに搭載されており、二列目シートSbや三列目シートScの乗員Pによって操作される。
従って、二列目シートSbや三列目シートScに座った乗員Pにとっては、吹出音、吸込音等の運転騒音は、車両用空調装置1の作動に伴う機能音と認識され、快適性を大きく低下させることはないと考えられる。
以上説明したように、本実施形態に係る車両用空調装置1は、車両Cの天井部Rに配置されており、空調ケース10内部に送風機20や蒸発器50を収容して構成されている。当該車両用空調装置1は、送風機20の作動に伴い空調ケース10内部を流れる送風空気Fを、蒸発器50によって温度調整して車両Cの車室I内に供給する。
図5に示すように、空調ケース10内部には、送風機20によって送風空気Fが供給される送風口25から車両前方側に伸びる第1空気通路30と、空調ケース10の車両前方側において送風空気Fの流れを水平方向に180°転換させる第2空気通路35と、第2空気通路35を流れた送風空気Fを車両後方側に導く第3空気通路40とが形成されている。第3空気通路40における車両後方側の端部には、吹出口45が形成されており、第3空気通路40を通過した送風空気Fを車室I内に供給するように構成されている。
即ち、当該車両用空調装置1によれば、車両Cの天井部Rに配置することで、吹出口45を可能な限り車両後方側に配置することができ、車両用空調装置1の運転騒音の一つである送風空気Fの吹出音の発生源を、一列目シートSa等に座った乗員Pから遠ざけることができる。これにより、当該車両用空調装置1によれば、乗員Pの耳に届く運転騒音を小さくすることができ、運転騒音としての吹出音による快適性の低下を抑制できる。
又、第2空気通路35の車両前側は空調ケース10における車両前側の壁面で閉塞されている為、当該車両用空調装置1は、車両用空調装置1の車両前側部位において、空調ケース10の外部に対する送風空気Fの漏出を防止することができる。
即ち、当該車両用空調装置1は、乗員Pに近い位置での送風空気Fの吹き出しを防止すると共に、乗員Pから遠い位置に配置された吹出口45にて、車室I内に送風空気Fを吹き出させることができる。当該車両用空調装置1によれば、車室I内に送風空気Fが吹き出される際の吹出音の発生源を、確実に乗員Pから遠ざけて、吹出音による快適性の低下を抑制できる。
又、図6に示すように、当該車両用空調装置1によれば、第2空気通路35が第1空気通路30と第3空気通路40の間で送風空気Fの流れ方向を180°転換させるように形成されている為、装置における車両前後方向のサイズをコンパクトにすることができ、車両Cにおける居住空間の確保に貢献することができる。
更に、当該車両用空調装置1においては、空調ケース10の車両後方部分に、ファン収容部15が配置されており、当該ファン収容部15には、車室I内部と連通する吸込口16が形成されている。又、ファン収容部15内部には、送風機20が吸込口16に対向するように配置されている。車両用空調装置1は、送風機20の作動によって、車室I内の空気を吸込口16から吸い込み、送風口25を介して、第1空気通路30内に送風する。即ち、当該車両用空調装置1における吸込口16及び送風機20は、空調ケース10の車両後方側に位置している。
当該車両用空調装置1によれば、車両Cの天井部Rに配置することで、上述した各吹出口45と同様に、吸込口16及び送風機20を可能な限り車両後方側に配置することができる。吸込口16は、車室I内の空気を吸い込む際の吹込音の発生源となり、送風機20は、電動モータ21の作動に伴う作動音の発生源となる。つまり、当該車両用空調装置1によれば、運転騒音である吹込音及び作動音の発生源を一列目シートSa等に座った乗員Pから遠ざけることができ、乗員Pの耳に届く運転騒音を小さくすることができる。
又、当該車両用空調装置1によれば、吹出音、吹込音及び作動音の発生源の何れについても、それぞれ乗員Pから遠ざけることができるので、何れの運転騒音についても、運転騒音による快適性の低下を確実に抑制することができる。
更に、当該車両用空調装置1は、第1空気通路30内部に蒸発器50を有している。当該蒸発器50は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを構成する冷却用熱交換器であり、第1空気通路30を通過する送風空気Fと蒸発器50内部の冷媒との熱交換によって、送風空気Fを冷却する。
従って、当該車両用空調装置1によれば、蒸発器50によって温度調整された送風空気Fを、各吹出口45から車室I内に供給することができるので、車室I内の快適性を更に向上させることができる。
図6に示すように、第2空気通路35は、空調ケース10の車両前方部分において、第1空気通路30を通過した送風空気Fの流れを水平方向に180°転換させて、第3空気通路40に導くように構成されている。更に、第3空気通路40は、空調ケース10内部において、第1空気通路30及び蒸発器50に対して左右両側に配置されている。
即ち、当該車両用空調装置1によれば、第1空気通路30と、第2空気通路35と、第3空気通路40とを、水平な略同一平面上に配置することができる為、車両用空調装置1における車両上下方向のサイズを小さくして、コンパクトに構成することができる。
図2に示すように、当該車両用空調装置1は車両Cの天井部Rに配置される為、車両前後方向及び車両上下方向に関して、装置をコンパクトに構成することで、車室Iを広くすることができ、乗員Pの居住空間を充分に確保することができる。
(他の実施形態)
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではない。即ち、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。例えば、上述した実施形態の構成を適宜組み合わせても良いし、上述した実施形態を種々変形することも可能である。
(1)上述した実施形態においては、第2空気通路35は、第1空気通路30と第3空気通路40の間で、送風空気Fの流れを水平方向に180°転換するように構成していたが、この態様に限定されるものではなく、第1空気通路30と第3空気通路40の間で、送風空気Fの流れを180°転換する構成であれば、その方向を適宜変更することができる。
例えば、第2空気通路35を、第1空気通路30と第3空気通路40の間で、送風空気Fの流れを車両上下方向に180°転換するように構成しても良い。この場合、第1空気通路30と第3空気通路40は、車両上下方向に並んだ状態で、車両前後方向に沿って伸びるように構成される。この為、車両用空調装置1における車両上下方向のサイズがおおきくなってしまうが、車両幅方向のサイズをコンパクトにすることができる。
(2)又、上述した実施形態においては、第2空気通路35は、車両右側方向及び車両左側方向に夫々伸びるように形成されており、第3空気通路40は、車両右側方向及び車両左側方向において、それぞれ車両前後方向に伸びるように形成されていたが、この第1空気通路30を中心とする車両左右方向に対称な態様に限定されるものではない。
即ち、第2空気通路35を、第1空気通路30の前端部から所定の一方向に向かって伸び、送風空気Fの流れを180°転換するように構成し、第3空気通路40を当該第2空気通路35の端部から車両後方側に向かって伸びるように構成しても良い。
(3)そして、上述した実施形態においては、空調ケース10の一部として、車両後方側にファン収容部15を形成し、その内部に送風機20を配置していたが、この態様に限定されるものではない。例えば、吸込口16及び送風機20を、車両Cにおける空調ケース10から離れた位置に配置して、ダクトを介して、送風口25から第1空気通路30に送風空気Fを供給するように構成してもよい。
(4)又、上述した実施形態では、第1空気通路30内部に熱交換器である蒸発器50を配置していたが、熱交換器による送風空気Fの温度調整を行わない構成としてもよい。この場合においても、吸込口16、送風機20、吹出口45は一列目シートSaの乗員Pから離れた位置に配置される為、運転騒音による快適性の低下を抑制することができる。
(5)そして、上述した実施形態においては、熱交換器として、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを構成する蒸発器50を用いていたが、この態様に限定されるものではない。本発明に係る熱交換器としては、送風空気Fと熱交換することで、送風空気Fの温度を調整することができればよく、例えば、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを構成する凝縮器を用いても良い。
又、本発明に係る熱交換器における熱交換媒体としても、冷凍サイクルを循環する冷媒に限定されるものではなく、エンジン冷却水回路等、種々の冷却水回路を循環する冷却水を用いることも可能である。