JP5136535B2 - カルボキシル基含有含フッ素共重合体 - Google Patents

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本発明は、カルボキシル基含有含フッ素共重合体に関する。更に詳しくは、コーティング材等の塗膜形成成分として有効に用いられるカルボキシル基含有含フッ素共重合体に関する。
含フッ素重合体は耐熱性、機械的特性、耐薬品性及び耐候性に優れていることから多くの分野に於いて幅広く用いられている。その用途の一つとして、塗料の塗膜形成成分として利用されており、例えばテトラフルオロエチレン重合体、フッ化ビニリデン重合体などを用いたフッ素樹脂塗料が知られている。このものは優れた耐候性、耐薬品性などを有することから、コーティング材として化学工業、建築、機械などの分野に使用されている。コーティング材としては、顔料分散性及び基材への密着性が優れているカルボキシル基などの官能基を含有する共重合体が望まれている。一般にフルオロオレフィンは、炭化水素系のカルボキシル基含有単量体との共重合性に乏しく、特に水系重合におけるこれらの共重合体は、ほとんど知られていない。例えば、フルオロオレフィンとアクリル酸、クロトン酸、マレイン酸等は、通常の重合条件では共重合反応性が乏しく、せいぜい各々のホモポリマーを生成するに過ぎない。
特許文献1〜4などにおいては、フルオロオレフィン単量体とカルボキシル基含有単量体を共重合させるため、一般的に第3単量体としてビニルエーテルまたはビニルエステルなどの炭化水素モノマーを40%以上共重合させている。従って、フッ素樹脂中のフッ素含有量が低下し、含フッ素樹脂に求められる撥水撥油性、耐薬品性等の塗膜特性が十分に得られない。また、残モノマーの除去が必要であり、工程が複雑となる。特許文献5においては、フッ化ビニリデンと無水マレイン酸の共重合体を溶液重合などで得て、酸無水物部分をアルコールまたは水にて開環させる方法を記載している。しかし、この方法では酸無水物部分の開環工程が必要であるため、工程が複雑である。特許文献6においては、不飽和二塩基酸のモノエステルまたはビニレンカーボネートとフッ化ビニリデンを主成分とする単量体からなる共重合体が記載されているが、フッ化ビニリデンとの重合反応性が低下し、重合時間の増加などの非効率化を招く。
特許文献7においては、カルボキシル基含有単量体 CX2=C(X1)-Rf-COOY(X、X1:H,F、Y:H,NH4,金属原子、Rf:含フッ素アルキレン基など)と含フッ素エチレン性単量体とを重合して得られる含フッ素重合体が開示されている。このようなカルボキシル基含有フッ素共重合体として以下の化合物が例示されている。
CF2=CFCF2COOH
CF2=CFCF2OCF2CF2CF2COOH
CH2=CFCF2CF2COOH
CH2=CF(CF2CF2)2COOH
CH2=CFCF2OCF(CF3)COOH
CH2=CFCF2OCF(CF3)CF2OCF(CF3)COOH
CH2=CFCF2CF2CH2CH2COOH
これらは、エチレン性部位と官能基部位の間に炭素数が1〜40の含フッ素アルキルキ基があるため、ポリマーの凝集力が低下し、接着性の低下につながっている。このことから、十分な接着性を得るため、多量の高価な官能基含有単量体、例えば CH2=CFCF2OCF(CF3)CF20CF(CF3)COOH が必要となり、経済的に不利である。
特開平4−31776号公報 特開平4−226111号公報 特許第2884819号公報 特開平10−319593号公報 特開平2−604号公報 特開平6−172452号公報 WO98−55557
本発明の目的は、フルオロオレフィンと含フッ素不飽和カルボン酸単量体を直接共重合させたカルボキシル基含有含フッ素共重合体を提供することにある。
かかる本発明の目的は、共重合体中に0.1〜5モル%のα-トリフルオロメチルアクリル酸を共重合させ、重量平均分子量Mwが100,000〜1,000,000であるカルボキシル基含有含フッ素共重合体によって達成される。
本発明に係るカルボキシル基含有含フッ素共重合体は、含フッ素不飽和カルボン酸単量体であるα-トリフルオロメチルアクリル酸をフルオロオレフィン単量体と好収率(重合率)で共重合させることができ、基板等へのコーティング材の塗膜形成成分として有効に利用される。
実施例1で得られた含フッ素共重合体AのFT-IRスペクトルである。 実施例4で得られた含フッ素共重合体EのFT-IRスペクトルである。 比較例1で得られた含フッ素共重合体GのFT-IRスペクトルである。
α-トリフルオロメチルアクリル酸を共重合させるフルオロオレフィン単量体としては、例えばフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロペン、クロロトリフルオロエチレン、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)等の少くとも一種が共重合反応に供され、好ましくはフッ化ビニリデン99〜1モル%およびテトラフルオロエチレン1〜99モル%の共重合組成またはフッ化ビニリデン40〜99モル%、テトラフルオロエチレン0〜40モル%およびヘキサフルオロプロペン1〜60モル%の共重合組成となるように共重合される。
これらのフルオロオレフィン単量体と共に共重合されるα-トリフルオロメチルアクリル酸 CH2=C(CF3)COOHは、連鎖移動が小さく、短時間の重合時間で高い共重合率で高分子量共重合体を与える。
これらの単量体は、得られる共重合体中0.1〜5モル%、好ましくは0.3〜1モル%を占めるような割合で共重合される。これ以下の共重合割合では、これを例えばコーティング材として用いたとき、基板等への接着性が十分ではなく、一方これ以上の割合で共重合されると、反応収率(重合率)や重量平均分子量Mwが低下するようになる。
共重合反応は、水性媒体を用いる乳化重合法、懸濁重合法等の不均一重合系で行われ、バッチ効率などの経済性を考慮すると、乳化重合法で行われることが好ましい。乳化重合反応は、ペルオキソ硫酸アンモニウムなどの水溶性無機過酸化物またはそれと還元剤とのレドックス系を触媒として、パーフルオロオクタン酸アンモニウム、パーフルオロヘプタン酸アンモニウム、パーフルオロノナン酸アンモニウム等またはそれらの混合物、好ましくはパーフルオロオクタン酸アンモニウムを乳化剤に用いて、一般に圧力約0〜10MPa・G、好ましくは約1〜5MPa・G、温度約20〜100℃で行われる。分子量などを制御するため、共重合反応系内に連鎖移動剤を添加しておくことが好ましく、特に好ましい連鎖移動剤としては、アセトン、メタノール、イソプロパノール、マロン酸エチル、酢酸エチルなどが挙げられる。なお、共重合反応を行う際、重合系内のpHを調節するために、Na2HPO4、NaH2PO4、KH2PO4等の緩衝能を有する電解質物質あるいは水酸化ナトリウム等を添加して用いても良い。
乳化重合反応で形成される水性ラテックスからの含フッ素共重合体の凝析は、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、カリミョウバン等の塩類水溶液中に、水性ラテックスを滴下することにより行われる。得られたカルボキシル基含有含フッ素共重合体は、100,000〜1,000,000、好ましくは300,000〜700,000の重量平均分子量Mw(GPC法)および92〜200℃、好ましくは110〜170℃の融点(DSC法)を有している。
次に、実施例について本発明を説明する。
実施例1
容量3LのSUS316製オートクレーブ内に、イオン交換水1500ml、パーフルオロオクタン酸アンモニウム5.8gおよびNa2HPO4・12H20 5.0gを仕込み、十分に脱気を行った後、マロン酸エチル0.6gおよび次の初期仕込みモノマー混合物
フッ化ビニリデン[VdF] 60g(68.7モル%)
テトラフルオロエチレン[TFE] 42g(30.8モル%)
α-トリフルオロメチルアクリル酸[TFMA] 1g(0.5モル%)
を仕込み、オートクレーブを80℃に加温すると、オートクレーブの内圧は2.1MPa・Gとなった。
ここで、定量ポンプによってペルオキソ硫酸アンモニウム1gを導入し、重合反応を開始させた。重合反応の進行に伴って、オートクレーブの内圧が2.0MPa・G迄低下したら、VdF/TFE=69/31(モル比)の混合ガスを内圧が2.1MPa・Gになる迄回復する操作を、この混合ガス分添量が410gになる迄くり返した。その際、混合ガスを100g分添する毎に、TFMA 1gを仕込み、合計4g仕込んだ。分添終了後、室温迄冷却して重合反応を完結させた。反応時間は330分であった。
オートクレーブから取り出した水性乳濁液を、0.5重量%CaCl2水溶液中に攪拌しながら滴下し、凝析した生成物をロ別し、イオン交換水で十分に攪拌洗浄し、ロ過、乾燥させて、白色粉末状の含フッ素共重合体Aを444g得た(収率85%)。得られた共重合体のFT-IRスペクトル(図1)の1738cm-1付近の吸収からTFMAが共重合されていることが確認された。また、19F-NMRおよびFT-IRから求めた共重合体組成は、
VdF/TFE/TFMA=69.5/30.0/0.5(モル比)
で、重量平均分子量Mwは450,000、融点は140℃であった。
分子量の測定:分子量はShodex GPC KD806M+KD-802+KD-Gを用い、溶出液を10mM LiBr/DMF(温度50℃、溶出速度0.5ml/分)によりGPC測定を行った。検出器は視差屈折計、解析はSIC製Labchat 180により行った。
融点の測定:セイコーインスツルメント社製DSC220C型により測定した。温度プログラムは、30℃から10℃/分で250℃まで試料を加熱後、10℃/分で30℃まで冷却し、再度250℃まで10℃/分で昇温する際の吸熱ピーク頂点の温度を融点とした。
実施例2
実施例1において、初期および分添仕込み組成をVdF/TFE/TFMA=64/35/1モル%に変更した。白色粉末状の含フッ素共重合体Bが447g(収率:86%)得られ、その共重合組成はVdF/TFE/TFMA=64.5/35/0.5モル%で、重量平均分子量Mwは440,000であった。また、融点は155℃であった。
実施例
実施例1において、初期および分添仕込み組成をVdF/TFE/TFMA=62/33/5モル%に変更した。白色粉末状の含フッ素共重合体Cが442g(収率:85%)得られ、その共重合組成はVdF/TFE/TFMA=63/32/5モル%で、重量平均分子量Mwは430,000であった。また、融点は140℃であった。
実施例
実施例1において、初期および分添仕込み組成をVdF/TFMA=99/1モル%に変更した。白色粉末状の含フッ素共重合体Dが442g(収率:86%)得られ、その共重合組成はVdF/TFMA=99.5/0.5モル%で(FT-IRスペクトルは図2)、重量平均分子量Mwは460,000であった。また、融点は170℃であった。
実施例
実施例1において、初期および分添仕込み組成をVdF/TFE/HFP(ヘキサフルオロプロピレン)/TFMA=70/20/9/1モル%に変更した。白色粉末状の含フッ素共重合体Eが425g(収率:82%)得られ、その共重合組成はVdF/TFE/HFP/TFMA=69.5/21.5/8.5/0.5モル%であった。重量平均分子量Mwは、470,000であった。また、融点は92℃であった。
比較例1
実施例1において、初期および分添仕込み組成をVdF/TFE=65/35モル%に変更した。白色粉末状の含フッ素共重合体Fが439g得られ、その共重合組成はVdF/TFE=66/34モル%で(FT-IRスペクトルは図3)、重量平均分子量Mwは460,000であった。
比較例2
実施例1において、初期および分添仕込み組成をVdF/TFE=69/29モル%に変更した。白色粉末状の含フッ素共重合体Gが440g得られ、その共重合組成はVdF/TFE=70/30モル%で、重量平均分子量Mwは460,000であった。
比較例3
実施例1において、初期および分添仕込み組成をVdF=100モル%に変更した。白色粉末状の含フッ素共重合体Hが406g得られた。
比較例4
実施例1において、初期および分添仕込み組成をVdF/TFE/HFP=70/20/10モル%とし、他は同じとした。白色粉末状の含フッ素共重合体Iが404g得られた。
参考例
含フッ素共重合体A〜Iを、それぞれジメチルアセトアミドに10重量%の濃度で溶解させ、冷間圧延鋼板(厚さは0.8mm)または銅板(厚さは0.8mm)にキャスティングより塗布し、乾燥させて得られた塗膜について、接着性の評価を行った。
接着性評価(JIS K5400-1990):塗膜にカッターナイフで1mm角の枡目100個の切り目を入れ、セロハン粘着テープで10回剥離試験を行い、残存した枡目数を求めた。95個以上は〇で、80〜95個は△で、80個以下は×とした。
その結果、含フッ素共重合体A〜Eを用いたものは、冷間圧延鋼板および銅板に対していずれも〇の評価が得られたが、含フッ素共重合体F〜Iを用いたものは、いずれも両板に対して×の評価であった。

Claims (3)

  1. 共重合体中に0.1〜5モル%のα-トリフルオロメチルアクリル酸を共重合させ、重量平均分子量Mwが100,000〜1,000,000であるカルボキシル基含有含フッ素共重合体。
  2. フッ化ビニリデン99〜1モル%およびテトラフルオロエチレン1〜99モル%の共重合組成を有する請求項1記載のカルボキシル基含有含フッ素共重合体。
  3. フッ化ビニリデン40〜99モル%、テトラフルオロエチレン0〜40モル%およびヘキサフルオロプロペン1〜60モル%の共重合組成を有する請求項1記載のカルボキシル基含有含フッ素共重合体。
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