以下、実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
まず、第1の実施の形態について説明する。
図1は第1の実施の形態に係るループ型ヒートパイプの概略模式図、図2は第1の実施の形態に係るループ型ヒートパイプの適用例を示す図である。
図1に示すループ型ヒートパイプ10Aは、蒸発器11及び凝縮器12、並びに蒸発器11と凝縮器12とを連結する蒸気管13及び液管14を備えている。これら蒸発器11、凝縮器12、蒸気管13及び液管14は、環状の流路を形成し、その環状流路内には作動流体が封入されている。作動流体には、例えば、水やアルコールを用いることができ、このような作動流体が、ループ型ヒートパイプ10Aの環状流路内に、その飽和蒸気圧に保たれて封入されている。図2には、このようなループ型ヒートパイプ10Aを電子機器20Aに適用した場合の要部を模式的に図示している。ここでは、電子機器20Aとして、ノートブック型のコンピュータを例示している。
ループ型ヒートパイプ10Aの蒸発器11は、例えば、図2に示すような電子機器20Aに内蔵される、マザーボード等の回路基板21に実装されたCPU(Central Processing Unit)22等の発熱体と熱的に接続されて配置される。蒸発器11の内部には、気体の作動流体が通過可能で、また、液体の作動流体が毛細管現象によって浸み込むウィックが設けられている。ウィックに浸み込んだ液体の作動流体は、電子機器20Aの発熱体であるCPU22から供給される熱で加熱され、蒸発(気化)する。
凝縮器12は、作動流体が流通する流路の周囲に熱的に接続された複数の放熱フィン12cを有している。この放熱フィン12cには、電子機器20Aの起動に伴って運転を開始するメインファン15から送風が行われ、それにより、凝縮器12の流路内を流通する作動流体は、冷却され、凝縮(液化)する。
蒸気管13は、蒸発器11の作動流体の出口11bと、凝縮器12の作動流体の入口12aとを連結し、蒸発器11で加熱された作動流体を凝縮器12へと導く。なお、蒸気管13内には、必ずしも気体の作動流体のみが流通するとは限らず、このループ型ヒートパイプ10Aの作動状態や設置環境によっては、蒸発器11の出口11bから凝縮器12の入口12aまでの間に、気液混合の作動流体が流通する場合もある。
液管14は、凝縮器12の作動流体の出口12bと、蒸発器11の作動流体の入口11aとを連結し、凝縮器12で冷却された作動流体を蒸発器11へと導く。なお、液管14内には、必ずしも液体の作動流体のみが流通するとは限らず、このループ型ヒートパイプ10Aの作動状態や設置環境によっては、凝縮器12の出口12bから蒸発器11の入口11aまでの間に、気液混合の作動流体が流通する場合もある。
なお、蒸気管13及び液管14は、銅等の金属を用いて形成することができる。
このようなループ型ヒートパイプ10Aにおいて、その液管14には、例えば、蒸発器11の手前に、液管14の周囲に熱的に接続された複数の起動用放熱フィン16、及びそれらの起動用放熱フィン16に送風を行う起動用ファン17が配置されている。起動用ファン17による起動用放熱フィン16への送風は、蒸発器11、凝縮器12、蒸気管13及び液管14において検出される温度(Tcpu,Tvp,Tcond,Tlq)等に基づき、制御装置18によって制御されるようになっている。
ループ型ヒートパイプ10Aでは、起動用ファン17から起動用放熱フィン16に送風が行われることにより、起動用放熱フィン16で囲まれた液管14内の作動流体が冷却される。これにより、ループ型ヒートパイプ10Aでは、起動用放熱フィン16を設けた液管14の部分に存在する作動流体の液化を促進し、液化した作動流体を蒸発器11に供給することができるようになっている。
なお、図1及び図2は、ループ型ヒートパイプ10Aを模式的に示したものであって、各要素の構成、配置、形状等は、図示した形態に限定されるものではない。例えば、蒸発器11及び凝縮器12の配置や、それらを連結する蒸気管13及び液管14の形状(配管レイアウト)は、組み込む電子機器20A等の内部構成等に応じて任意に設定可能である。また、蒸発器11、凝縮器12、蒸気管13及び液管14の配置や形状に応じて、メインファン15、起動用放熱フィン16及び起動用ファン17等、その他の要素の配置も任意に設定可能である。
続いて、上記のようなループ型ヒートパイプ10Aの蒸発器11として適用可能な蒸発器の構成の一例について説明する。
図3は蒸発器の説明図であって、(A)は蒸発器の一例の斜視模式図、(B)は(A)の蒸発器の分解図である。また、図4は図3(A)のX−X断面模式図、図5は図3(A)のY−Y断面模式図である。
図3〜図5に示すように、蒸発器30Aは、インテークマニホールド31、ウィック32が挿入される金属管33を備えた金属ケース34、及びエキゾーストマニホールド35を有する。金属ケース34は、発熱体であるCPU22の上に、例えばサーマルグリース等の熱接合材を介して、熱的に接続される。金属ケース34の上面側には、金属ケース34内の温度の均一化を図るため、断熱材36が設けられる。
インテークマニホールド31及びエキゾーストマニホールド35は、銅等の金属を用いて形成することができる。インテークマニホールド31は、液管14に接続され、作動流体37は、液管14からインテークマニホールド31を経て蒸発器30A内に流入する。また、エキゾーストマニホールド35は、蒸気管13に接続され、作動流体37は、蒸発器30Aからエキゾーストマニホールド35を経て蒸気管13に流出する。インテークマニホールド31及びエキゾーストマニホールド35は、それらを流通する作動流体37が外部に漏れ出さないように、金属ケース34の側端面に接合される。
ウィック32は、一端に開口32aを有し、他端が閉塞した筒状体であり、ここでは、3本のウィック32が、等間隔で並列に、それらの開口32a側で一体化されている場合を例示している。ウィック32には、例えば、銅粉末を焼結した多孔質体が用いられ、その場合、ウィック32の内側の空洞部と外側とは、径が10μm〜50μm程度の微細な多数の細孔によって連通される。
インテークマニホールド31に液体の作動流体37が流入すると、その作動流体37は、毛細管現象によってウィック32内に浸み込み、ウィック32は、その作動流体37で濡れる。また、ウィック32自体やその表面、ウィック32内側の空洞部に存在する気体の作動流体37は、ウィック32の細孔を通じて、その内側の空洞部と外側との間を流通する。
金属ケース34は、銅等の金属を用いて形成することができる。金属ケース34には、両端が開口した3本の銅管等の金属管33が、各ウィック32の位置に対応して等間隔で並列に、金属ケース34をその平面方向に貫通して挿入される。金属ケース34と金属管33の外壁との間は、密閉空間34aになっている。この密閉空間34aには、図5に示したように、所定の加熱用作動流体38が、その飽和蒸気圧に保たれて封入されている(図3及び図4では図示を省略)。加熱用作動流体38には、作動流体37と同様、水やアルコール等を用いることができ、作動流体37と同種のものを用いても、異種のものを用いても、いずれであっても構わない。
金属ケース34に挿入される金属管33の内壁には、その管軸方向に、所定深さの複数の溝33aが、所定ピッチで形成されている。各ウィック32は、その閉塞端側から、このような各金属管33の一端側から他端側に向かって、それぞれ挿入される。
なお、上記のような構成を有する蒸発器30Aでは、例えば、縦30mm×横30mmのサイズのCPU22に対し、金属ケース34を、厚さ2mmの銅等の金属板を用いて、縦50mm×横50mm×高さ20mmのサイズで形成することができる。各金属管33には、外径14mm、内径10mm(管壁厚さ2mm)、深さ1mmの溝33aが2mmピッチで形成されたものを用い、各ウィック32には、外径10mm、内径4mmのものを用いることができる。この場合、ウィック32の外壁は、金属管33の内壁に形成した溝33aの先端に接するようになる。
ここで、上記図1及び図2に示したループ型ヒートパイプ10Aの蒸発器11として、上記図3〜図5に示した蒸発器30Aを適用した場合を例に、ループ型ヒートパイプ10Aの作動メカニズムについて説明する。
まず、ループ型ヒートパイプ10Aでは、CPU22が発熱すると、その熱で蒸発器30Aが加熱される。蒸発器30Aが加熱されると、その金属ケース34内の金属管33との間にある密閉空間34aに封入された加熱用作動流体38が加熱され、その蒸発が起こる。加熱用作動流体38の蒸気は、その金属ケース34内の密閉空間34aに充満するようになる。
このとき、金属管33の外表面が加熱用作動流体38の蒸気に比べて低温であると、金属管33の外表面に接触した加熱用作動流体38の蒸気は、冷却されて凝縮し、その凝縮に伴う熱が金属管33に伝わる。このような加熱用作動流体38の凝縮とそれに伴う金属管33への伝熱は、金属管33の外表面の低温部分ほど起こり易い。そのため、CPU22からの熱を、加熱用作動流体38を介して各金属管33に均一性良く伝えることができる。
金属管33に伝えられた熱は、金属管33内のウィック32に作動流体37が浸み込んでいるような場合には、その作動流体37に伝わる。液体の作動流体37は、その加熱により蒸発し、それによって生じた高温の作動流体37の蒸気は、金属管33との間の溝33aを通って、或いはウィック32の細孔を経た後に溝33aを通って、エキゾーストマニホールド35側に移動していく。また、金属管33内(ウィック32内側の空洞部等も含む)に存在していた、元々気体状態の作動流体37も、金属管33に伝えられた熱によって加熱され、同様にエキゾーストマニホールド35側に移動していく。
エキゾーストマニホールド35に移動した高温の作動流体37の蒸気は、さらに蒸気管13へと移動し、蒸気管13を通って凝縮器12へと供給される。なお、蒸発器30Aと凝縮器12との距離やループ型ヒートパイプ10Aの設置環境等によっては、作動流体37の蒸気の一部が、蒸気管13内を移動する間に凝縮する場合もある。
凝縮器12に到達した作動流体37は、その熱が放熱フィン12cに伝わり、このように作動流体37の熱が伝わった放熱フィン12cは、メインファン15から送風が行われることで冷却される。作動流体37は、その全部又は一部が、この過程で冷却されて凝縮し、それによって低温化された作動流体37が、液管14を通って蒸発器30A側に送られる。なお、凝縮器12と蒸発器30Aとの距離やループ型ヒートパイプ10Aの設置環境等によっては、作動流体37の一部が、液管14内を移動する間に蒸発する場合もある。
液体の作動流体37が液管14を通って蒸発器30Aのインテークマニホールド31に到達し、さらにウィック32に浸み込むと、その液体の作動流体37は、CPU22からの熱で加熱され、その結果、作動流体37の蒸気が発生する。そして、発生した作動流体37の蒸気は、熱を伴って蒸気管13側へと送られる。
このように、蒸発器30Aを用いたループ型ヒートパイプ10Aでは、作動流体37の相変化を利用し、作動流体37をその環状流路内で循環させる。そして、その過程で、CPU22から蒸発器30Aに供給された熱を凝縮器12に輸送してループ型ヒートパイプ10Aの外部へと放熱する。これにより、発熱するCPU22の冷却を行う。
なお、ループ型ヒートパイプ10Aには、上記のような蒸発器30Aのほか、次の図6及び図7に示すような構成を有する蒸発器30Bを適用することも可能である。
図6及び図7は別形態の蒸発器の説明図である。なお、図6は上記図3(A)のX−X断面に対応する模式図、図7は上記図3(A)のY−Y断面に対応する断面模式図である。また、図6及び図7では、図3〜図5に示した要素と同一の要素については同一の符号を付している。
図6及び図7に示すように、蒸発器30Bは、上記図3〜図5に示した蒸発器30Aの密閉空間34aに、銅やアルミニウム等の高熱伝導材料39が充填された構造を有する。他の部分の構成は、上記図3〜図5に示した構成と同様とすることができる。
この図6及び図7に示したような蒸発器30Bを用いた場合には、CPU22からの熱が金属ケース34、高熱伝導材料39、さらに金属管33へと伝わる。この金属管33に伝わった熱により、金属管33内(溝33a、ウィック32自体、ウィック32内側の空洞部)に存在する作動流体37は加熱され、その蒸気が発生する。そして、その作動流体37の蒸気は、ウィック32との間にある金属管33の溝33aを通って蒸気管13側へと送られる。以降、作動流体37は、上記同様に循環され、その過程で、CPU22から蒸発器30Bに供給された熱が凝縮器12に輸送されてループ型ヒートパイプ10Aの外部へと放熱される。これにより、発熱するCPU22が冷却される。
なお、この図6及び図7には、金属ケース34内に高熱伝導材料39を充填し、金属ケース34と高熱伝導材料39とを別体で構成する場合を例示した。このほか、銅等の金属ブロックに貫通孔を形成し、その貫通孔内に金属管33を挿入することで、上記同様の機能を実現してもよい。
ところで、上記のような電子機器に組み込まれたループ型ヒートパイプでは、その環状流路内の作動流体の循環が、発熱体であるCPUから蒸発器に熱が供給されることによって開始する。従って、例えば、CPUが停止していて蒸発器に熱が供給されないような場合には、循環が停止する。
このように作動流体の循環が停止しているときに、例えば、蒸発器が凝縮器よりも高い位置にあるような場合には、液体の作動流体は、その重力によって蒸発器側から凝縮器側へと落下する。その結果、蒸発器やその付近に液体の作動流体が存在せず、蒸発器内のウィックが乾いてしまうといった現象(ドライアウト)が起こり得る。蒸発器にこのようなドライアウトが起こっている状態では、電子機器を起動し、そのCPUから蒸発器に熱が供給されても、作動流体の蒸気が発生せず、作動流体の循環を開始することができない。従って、作動流体の循環によってCPUを冷却することができない。
なお、このようなドライアウトに関しては、例えば、蒸気管内に多孔質フィルタを設けておき、ループ型ヒートパイプの起動時にそのフィルタの凝縮器側の部分を加熱し、凝縮器や液管内に存在する作動流体を蒸発器に流入させるといった手法も考えられている。しかし、この手法の場合、フィルタが、ループ型ヒートパイプの起動後には、作動流体が循環する際の流動抵抗となるため、ループ型ヒートパイプの熱輸送能力を十分に発揮させることが難しくなる。
また、ドライアウトは、蒸発器が凝縮器よりも高い位置にある場合のほか、それらが水平面内にあるような場合にも、同様に起こり得る。例えば、電子機器に組み込まれたループ型ヒートパイプの作動流体の循環によって、その電子機器のCPUの冷却が行われていた場合を想定する。このような場合に、蒸発器と凝縮器とが水平面内にある状態で電子機器の電源が切られると、CPUから蒸発器に供給される熱が減少していき、最終的には作動流体の循環が停止する。しかし、この間も、蒸発器内では、CPUの余熱によって作動流体の蒸発が起こる場合がある。そのため、次にこの電子機器を起動させたときに、蒸発器にドライアウトが発生していて、作動流体の循環を開始することができない、といった事態が起こり得る。
また、上記のような電子機器の起動時に限らず、起動後、電子機器の稼働中に、それに組み込まれたループ型ヒートパイプの作動流体の循環が遅くなったり停止してしまったりするような場合も起こり得る。
例えば、電子機器のCPUの稼働率が低下してCPUの発熱量が減少すると、ループ型ヒートパイプの蒸発器に供給される熱が減少し、蒸発器で発生する作動流体の蒸気が減少してしまう場合がある。この場合、ループ型ヒートパイプの作動流体の循環が、遅くなったり停止したりし易くなる。特に、蒸発器と凝縮器との距離が離れている場合や、蒸発器が凝縮器よりも低い位置にある場合等、循環抵抗が比較的大きくなるような場合には、そのような作動流体の循環の遅れや停止が起こり易くなる。
一方、上記第1の実施の形態に係るループ型ヒートパイプ10Aでは、液管14に設けた起動用放熱フィン16、及びそれに送風する起動用ファン17を用い、環状流路内の作動流体の循環を制御する。即ち、ループ型ヒートパイプ10Aの起動時或いは起動後の蒸発器11、凝縮器12、蒸気管13及び液管14の温度等に基づき、制御装置18によって、蒸発器11手前の起動用放熱フィン16に対する起動用ファン17からの送風を制御する。それにより、起動時或いは起動後の蒸発器11手前の作動流体を適宜液化し、液体の作動流体を蒸発器11に安定的に供給して、作動流体を循環させる。
以下、第1の実施の形態に係るループ型ヒートパイプ10Aの作動流体の循環制御について、より詳細に説明する。
まず、ループ型ヒートパイプ10Aの制御装置18の構成について説明する。
図8は制御装置の構成例を示す図である。
制御装置18は、ループ型ヒートパイプ10Aの各部の温度Tcpu,Tvp,Tcond,Tlqを検出する温度検出部18aを有している。
ここでは、蒸発器11、蒸気管13、凝縮器12及び液管14の表面にそれぞれ熱電対を設置し、それらの熱電対を用い、温度検出部18aで各部の温度Tcpu,Tvp,Tcond,Tlqを検出する。温度検出部18aによって検出される温度Tcpu,Tvp,Tcond,Tlqはそれぞれ、蒸発器11に熱的に接続されるCPU22の温度、蒸気管13内の作動流体の温度、凝縮器12内の作動流体の温度、液管14内の作動流体の温度に対応する。温度検出部18aは、例えば、これらの温度Tcpu,Tvp,Tcond,Tlqをそれぞれ、所定時間間隔で連続的に検出する。
さらに、制御装置18は、温度検出部18aによって検出された温度を用いて所定の演算処理を実行する演算処理部18b、及び、その演算処理結果を用い、起動用ファン17の送風を制御するための情報を生成する制御情報生成部18cを有している。
演算処理部18bは、温度検出部18aによって検出された温度Tcpu,Tvp,Tcond,Tlqのほか、予め設定された設定値α1,α2,α3,Tcpu(MAX)を用い、所定の演算処理を実行する。
制御情報生成部18cは、演算処理部18bによる演算処理結果を用い、例えば、起動用ファン17をオン/オフ状態にするための制御情報を生成し、その制御情報を起動用ファン17に送る。起動用ファン17は、その制御情報に基づき、オン/オフ状態に制御されるようになっている。
次に、このような制御装置18による作動流体の循環制御フローについて説明する。
まず、ループ型ヒートパイプ10Aの起動時における作動流体の循環制御について説明する。
図9はループ型ヒートパイプの起動時における作動流体の循環制御フローの一例である。
ループ型ヒートパイプ10Aが組み込まれた電子機器20Aでは、電源が供給されると、CPU22が起動し、発熱が起こる。CPU22から発生した熱は、ループ型ヒートパイプ10Aの蒸発器11へと供給される。ループ型ヒートパイプ10Aでは、まず、制御装置18の温度検出部18aにより、環状流路の各部の温度Tvp,Tcond,Tlqが検出される(ステップS1)。
次いで、制御装置18の演算処理部18bにより、検出された温度Tvp,Tlq間の温度差Tvp−Tlqが所定温度差α1より大きくなるか否かが判定される(ステップS2)。所定温度差α1は、例えば、20℃に設定される。
このステップS2において、検出された温度Tvp,Tlqが、Tvp−Tlq>α1の条件を満たさない場合には、温度Tvpに対して温度Tlqが比較的高い状態になっている。このような場合、温度Tlqが検出された蒸発器11手前に、液体の作動流体が存在しない、或いは存在していても少ない可能性がある。即ち、既に蒸発器11のドライアウトが発生している、或いはそのままCPU22からの熱の供給が続けばドライアウトが発生してしまう可能性がある。
そのため、ステップS2において、Tvp−Tlq>α1の条件が満たされない場合には、制御装置18の制御情報生成部18cにより、起動用ファン17をオン状態とする制御情報が生成される。生成された制御情報は、制御情報生成部18cから起動用ファン17に送られる。そして、その制御情報に基づき、起動用ファン17から起動用放熱フィン16への送風が行われる(ステップS3)。
その後は、同様に、温度検出部18aによってループ型ヒートパイプ10Aの各部の温度Tvp,Tcond,Tlqが検出される(ステップS1)。そして、検出された温度Tvp,Tlqが、Tvp−Tlq>α1の条件を満たすまでは、起動用ファン17による送風が行われる(ステップS2,S3)。
このようにして起動用ファン17による送風を行うと、起動用放熱フィン16が設けられている液管14の部分が集中的に冷却され、その部分に存在する気体の作動流体が冷却されて、その凝縮が促進される。そして、それによって生じた液体の作動流体が、蒸発器11に移動し、その内部のウィックに浸み込むと、CPU22から供給される熱によって作動流体の蒸発が始まるようになる。
なお、前述のように、作動流体は、このループ型ヒートパイプ10Aの環状流路内に、飽和蒸気圧に保って封入してある。そのため、僅かな温度差でも作動流体の蒸発と凝縮が起こる。上記条件に用いる所定温度差α1としては、蒸発器11で液体の作動流体が加熱により蒸発し、液管14に存在する気体の作動流体が冷却により凝縮するのに十分な温度差を設定すればよく、一例として、ここでは所定温度差α1を20℃に設定している。
一方、ステップS2において、Tvp−Tlq>α1の条件が満たされる場合には、演算処理部18bにより、今度は、検出された温度Tcond,Tlq間の温度差Tcond−Tlqが所定温度差α2より大きくなるか否かが判定される(ステップS4)。所定温度差α2は、例えば、10℃に設定される。
蒸発器11での作動流体の蒸発が始まり、作動流体の循環が始まると、通常、凝縮器12の温度Tcondが上昇するようになる。ステップS4において、Tcond−Tlq>α2の条件が満たされない場合には、温度Tlqに対して温度Tcondが未だ低く、作動流体の循環が始まっていない、或いは未だ順調に循環していない可能性がある。このような場合には、制御情報生成部18cにより、起動用ファン17をオン状態とする制御情報が生成され、その制御情報に基づき、起動用ファン17から起動用放熱フィン16への送風が行われる(ステップS3)。その後は、ステップS1以降の処理が行われる。
一方、ステップS4において、Tcond−Tlq>α2の条件が満たされる場合には、ループ型ヒートパイプ10Aの起動が完了し、その環状流路内を作動流体が循環していると判定することができる。このような場合には、制御情報生成部18cにより、起動用ファン17をオフ状態とする制御情報が生成され、その制御情報に基づき、起動用ファン17から起動用放熱フィン16への送風が停止される(ステップS5)。
このように、ループ型ヒートパイプ10Aでは、その起動時の各部の温度Tvp,Tlq,Tcondに基づき、起動用放熱フィン16に対する起動用ファン17からの送風を制御する。それにより、ループ型ヒートパイプ10Aの起動時に、その液管14内に液体の作動流体が存在するようにし、液体の作動流体を蒸発器11に安定的に供給して、作動流体の循環を開始させる。
この図9に示したような作動流体の循環制御を、ループ型ヒートパイプ10Aを組み込んだ電子機器20Aに適用し、その作動を評価した。まず、電子機器20Aへの電源供給を停止した後、十分に時間が経過し、CPU22及びループ型ヒートパイプ10Aを含む電子機器20A全体が均一に室温に保たれた状態とした。そして、凝縮器12が蒸発器11より下方に位置する体勢、凝縮器12が蒸発器11より上方に位置する体勢、及び凝縮器12と蒸発器11が同じ水平面内にある体勢で、それぞれ電子機器20Aを起動した。図9に示した循環制御を行ったところ、ループ型ヒートパイプ10Aは、電子機器20Aがいずれの体勢のときにも正常に起動し、CPU22の冷却を開始することができた。
続いて、ループ型ヒートパイプ10Aの起動後における作動流体の循環制御について説明する。
電子機器20Aに組み込んだループ型ヒートパイプ10Aの起動後に、CPU22の稼働率低下等で蒸発器11への供給熱量が減少したときには、作動流体の蒸発が減り、環状流路内の作動流体の循環が遅くなったり停止したりする可能性がある。そこで、次に、ループ型ヒートパイプ10Aの起動後における作動流体の循環制御について述べる。
図10はループ型ヒートパイプの起動後における作動流体の循環制御フローの一例である。
ループ型ヒートパイプ10Aが起動して作動流体の循環が始まった後は、まず、温度検出部18aにより、ループ型ヒートパイプ10Aの各部の温度Tcpu,Tvp,Tlqが検出される(ステップS10)。
次いで、演算処理部18bにより、検出された温度Tcpuが、予め設定された上限温度Tcpu(MAX)と比較され、Tcpu>Tcpu(MAX)の条件を満たすか否かが判定される(ステップS11)。
このステップS11において、Tcpu>Tcpu(MAX)の条件が満たされない場合、即ち、温度Tcpuが上限温度Tcpu(MAX)以下である場合には、CPU22の発熱量が少ない、或いは作動流体の循環によってCPU22が冷却されていると言える。このような場合には、起動用ファン17をオン状態とすることを要しないため、起動用ファン17はオフ状態とする(ステップS12)。その際は、温度Tcpuが上限温度Tcpu(MAX)以下であるとの演算処理部18bによる判断に基づき、制御情報生成部18cにより、起動用ファン17をオフ状態とする制御情報が生成され、その制御情報に基づき、起動用ファン17がオフ状態とされる。その後は、ステップS10以降の処理が行われる。
一方、ステップS11において、Tcpu>Tcpu(MAX)の条件が満たされる場合には、続いて、演算処理部18bにより、検出された温度Tvp,Tlq間の温度差Tvp−Tlqが所定温度差α3より大きいか否かが判定される(ステップS13)。所定温度差α3は、例えば、20℃に設定される。なお、所定温度差α3としては、蒸発器11で液体の作動流体が加熱により蒸発し、液管14に存在する気体の作動流体が冷却により凝縮するのに十分な温度差を設定すればよい。
ステップS13において、Tvp−Tlq>α3の条件が満たされない場合には、ループ型ヒートパイプ10Aの作動流体の循環が停止している、或いは作動流体が順調に循環しなくなってきている可能性がある。作動流体の循環が停止したり滞ったりしてくると、蒸発器11への液体の作動流体の供給が不足し、ドライアウトが発生し易くなる。このようなことが原因で、上記のようにCPU22が上限温度Tcpu(MAX)を超えるような高温になってきている可能性がある。
そのため、ステップS13において、Tvp−Tlq>α3の条件が満たされない場合は、制御情報生成部18cにより、起動用ファン17をオン状態とする制御情報が生成される。そして、その制御情報に基づき、起動用ファン17から起動用放熱フィン16への送風が行われる(ステップS14)。これにより、液管14内に存在する気体の作動流体の凝縮を促進する。
一方、ステップS13において、Tvp−Tlq>α3の条件が満たされる場合には、作動流体は停止せずに循環していると判定できる。即ち、このように、温度Tcpuが上限温度Tcpu(MAX)よりも高温であるが、作動流体は循環している、というような場合には、CPU22の過熱を抑制するため、CPU22の稼働率を下げる、又はCPU22を停止する処理が行われる(ステップS15)。この場合、作動流体は循環しているので、その後はステップS12に進み、起動用ファン17はオフ状態とし、ステップS10以降の処理を行う。
ステップS14の起動用ファン17による送風後は、ステップ10に戻り、温度検出部18aにより、温度Tcpu,Tvp,Tlqが検出される。そして、ステップ11において、演算処理部18bにより、Tcpu>Tcpu(MAX)の条件が満たされるか否かが判定される。このとき、温度Tcpuが上限温度Tcpu(MAX)以下となった場合には、ステップS14の起動用ファン17による送風の結果、作動流体が循環を始めた(CPU22が冷却された)と判定することができる。このような場合には、ステップS12に進み、起動用ファン17から起動用放熱フィン16への送風が停止される。
一方、ステップS14の起動用ファン17による送風後も、ステップ11において、温度Tcpuが上限温度Tcpu(MAX)以下とならない場合には、ステップS13に進み、その判定結果に応じた以降の処理が行われる。即ち、起動用ファン17による送風を継続する処理(ステップS14)、或いはCPUの稼働率を下げたりCPUを停止させたりする処理(ステップS15)が行われる。
このように、ループ型ヒートパイプ10Aでは、その起動後の各部の温度Tcpu,Tvp,Tlqに基づき、起動用放熱フィン16に対する起動用ファン17からの送風を制御する。また、起動後の各部の温度Tcpu,Tvp,Tlqに基づき、発熱体であるCPU22の稼動状態を制御する。それにより、ループ型ヒートパイプ10Aの起動後、作動流体の循環に遅れや停止が発生するのを効果的に抑制し、また、CPU22の過熱を効果的に抑制する。
この図10に示したような作動流体の循環制御を、ループ型ヒートパイプ10Aを組み込んだ電子機器20Aに適用し、その作動を評価した。ここでは、CPU22の出力を、10分間隔で、20W、200W、20W、200Wというように変化させ、低出力状態と高出力状態を交互に作り出すことで、発熱量を変化させた。さらに、このような発熱量の変化を、凝縮器12が蒸発器11より下方に位置する体勢、凝縮器12が蒸発器11より上方に位置する体勢、及び凝縮器12と蒸発器11が同じ水平面内にある体勢の各電子機器20Aについて行った。図10に示した循環制御を行ったところ、ループ型ヒートパイプ10Aは、CPU22の発熱量変化に対し、電子機器20Aがいずれの体勢のときにも正常に作動し、蒸発器11のドライアウトによってCPU22の温度が急激に上昇する等の異常は生じないことが確認された。
以上説明したように、上記第1の実施の形態に係るループ型ヒートパイプ10Aによれば、その環状流路の各部の温度に基づき、制御装置18による起動用ファン17から起動用放熱フィン16への送風制御を行う。それにより、ループ型ヒートパイプ10Aの起動時には、その体勢によらず、液体の作動流体を蒸発器11に安定的に供給し、作動流体の循環を開始させることができる。また、ループ型ヒートパイプ10Aの起動後には、その体勢や供給熱量の変動によらず、作動流体を順調に循環させることができる。このようなループ型ヒートパイプ10Aを電子機器20Aに組み込むことにより、電子機器20Aの信頼性を向上させることが可能になる。また、ループ型ヒートパイプ10Aの蒸発器11、凝縮器12、蒸気管13及び液管14を、高い自由度でレイアウトすることが可能になる。
なお、上記のループ型ヒートパイプ10Aでは、起動時に図9に示したようなフローで作動流体の循環制御を行い、その後、図10に示したようなフローで作動流体の循環制御を行うことができる。また、上記のループ型ヒートパイプ10Aでは、図9及び図10に示したような循環制御のうち、図9に示したような作動流体の循環制御のみを行うようにしても、或いは図10に示したような作動流体の循環制御のみを行うようにすることもできる。
次に、第2の実施の形態について説明する。
図11は第2の実施の形態に係るループ型ヒートパイプの概略模式図、図12は第2の実施の形態に係るループ型ヒートパイプの適用例を示す図である。なお、図11及び図12では、図1及び図2に示した要素と同一の要素については同一の符号を付している。
図11及び図12に示すループ型ヒートパイプ10Bは、蒸発器11手前の液管14に設けられたリザーバタンク40を有している。リザーバタンク40には、液管14を流通する液体の作動流体が、蒸発器11への供給前に、一時的に貯留される。ここでは、このリザーバタンク40に起動用放熱フィン16が取り付けられ、その起動用放熱フィン16に起動用ファン17から送風が行えるようになっている。
リザーバタンク40を設ける場合は、例えば、リザーバタンク40の内壁、及びリザーバタンク40から蒸発器11内部のウィックに至るまでの流路内壁に、ウィックを形成する。その際は、例えば、リザーバタンク40から蒸発器11までの流路内に連続的にウィックを形成する。このような構成とすることにより、リザーバタンク40に供給された液体の作動流体がその内壁のウィックに浸み込み、毛細管現象によって最終的には蒸発器11内部のウィックにまで浸み込むようになる。
この第2の実施の形態に係るループ型ヒートパイプ10Bにおいても、上記第1の実施の形態に係るループ型ヒートパイプ10Aと同様、その起動時及び起動後の作動流体の循環を、起動用ファン17から起動用放熱フィン16への送風により制御することができる。以下、この第2の実施の形態に係るループ型ヒートパイプ10Bの起動時及び起動後における作動流体の循環制御について、上記図9及び図10を参照して説明する。
このループ型ヒートパイプ10Bの場合には、制御装置18の温度検出部18aは、温度Tlqとして、リザーバタンク40の温度を検出する。例えば、リザーバタンク40の表面に熱電対を設置し、その熱電対を用いて測定される温度を、温度検出部18aにより温度Tlqとして検出する。検出される温度Tlqは、リザーバタンク40内の作動流体の温度に対応する。なお、ループ型ヒートパイプ10Bの他の部分の温度Tcpu,Tvp,Tcondは、上記ループ型ヒートパイプ10Aと同様にして、温度検出部18aにより検出される。
ループ型ヒートパイプ10Bの起動時には、図9に示したように、まず、電源供給による電子機器20Bの起動後、制御装置18の温度検出部18aにより、ループ型ヒートパイプ10Bの各部の温度Tvp,Tcond,Tlqが検出される(ステップS1)。
次いで、制御装置18の演算処理部18bにより、検出された温度Tvp,Tlqが、Tvp−Tlq>α1(例えばα1=20℃)の条件を満たすか否かが判定される(ステップS2)。
このステップS2において、Tvp−Tlq>α1の条件が満たされない場合には、リザーバタンク40に液体の作動流体が存在しない、或いは少ない可能性がある。このような場合には、制御装置18の制御情報生成部18cにより、起動用ファン17をオン状態とする制御情報が生成され、その制御情報に基づき、起動用ファン17から起動用放熱フィン16への送風が行われる(ステップS3)。これにより、リザーバタンク40内に存在する気体の作動流体の凝縮を促進する。
その後は、ステップS1に戻り、温度検出部18aによって検出される温度Tvp,Tlqが、Tvp−Tlq>α1の条件を満たすまで、起動用ファン17による送風が行われる(ステップS1〜S3)。
一方、ステップS2において、Tvp−Tlq>α1の条件が満たされる場合には、リザーバタンク40に液体の作動流体が存在していると判定できる。このような場合には、続いて、演算処理部18bにより、温度Tcond,Tlqが、Tcond−Tlq>α2(例えばα2=10℃)の条件を満たすか否かが判定される(ステップS4)。
このステップS4において、Tcond−Tlq>α2の条件が満たされない場合には、作動流体の循環が始まっていない、或いは順調に循環していない可能性がある。このような場合には、制御情報生成部18cにより、起動用ファン17をオン状態とする制御情報が生成され、その制御情報に基づき、起動用ファン17から起動用放熱フィン16への送風が行われる(ステップS3)。
一方、ステップS4において、Tcond−Tlq>α2の条件が満たされる場合には、ループ型ヒートパイプ10Cの起動が完了したと判定できる。このような場合には、制御情報生成部18cにより、起動用ファン17をオフ状態とする制御情報が生成され、その制御情報に基づき、起動用ファン17から起動用放熱フィン16への送風が停止される(ステップS5)。
このようなループ型ヒートパイプ10Bの起動時における作動流体の循環制御を、上記第1の実施の形態と同様に、ループ型ヒートパイプ10Bを組み込んだ電子機器20Bに適用した。その際は、まず、電子機器20Bへの電源供給を停止した後、十分に時間が経過し、電子機器20B全体が均一に室温に保たれた状態とした。そして、凝縮器12が蒸発器11より下方に位置する体勢、凝縮器12が蒸発器11より上方に位置する体勢、及び凝縮器12と蒸発器11が同じ水平面内にある体勢で、それぞれ電子機器20Bを起動した。ループ型ヒートパイプ10Bは、電子機器20Bがいずれの体勢のときにも正常に起動し、CPU22の冷却を開始することができた。
また、ループ型ヒートパイプ10Bの起動後には、図10に示したのと同様に、まず、制御装置18の温度検出部18aにより、ループ型ヒートパイプ10Bの各部の温度Tcpu,Tvp,Tlqが検出される(ステップS10)。
次いで、制御装置18の演算処理部18bにより、検出された温度Tcpuが、Tcpu>Tcpu(MAX)の条件を満たすか否かが判定される(ステップS11)。
このステップS11において、Tcpu>Tcpu(MAX)の条件が満たされない場合には、制御情報生成部18cにより、起動用ファン17をオフ状態とする制御情報が生成される。そして、その制御情報に基づき、起動用ファン17から起動用放熱フィン16への送風が停止される(ステップS12)。
一方、ステップS11において、Tcpu>Tcpu(MAX)の条件が満たされる場合には、続いて、演算処理部18bにより、温度Tvp,Tlqが、Tvp−Tlq>α3(例えばα3=20℃)の条件を満たすか否かが判定される(ステップS13)。
このステップS13において、Tvp−Tlq>α3の条件が満たされない場合には、リザーバタンク40に液体の作動流体が存在しない、或いは少なく、作動流体の循環が停止している可能性がある。このような場合には、制御装置18の制御情報生成部18cにより、起動用ファン17をオン状態とする制御情報が生成され、その制御情報に基づき、起動用ファン17から起動用放熱フィン16への送風が行われる(ステップS14)。これにより、リザーバタンク40に存在する気体の作動流体の凝縮を促進する。その後は、ステップS10以降の処理が行われる。
一方、ステップS13において、Tvp−Tlq>α3の条件が満たされる場合には、温度Tcpuは上限温度Tcpu(MAX)よりも高温であるが、リザーバタンク40には液体の作動流体が存在しており、作動流体は循環していると判定できる。このような場合には、CPU22の稼働率を下げる、又はCPU22を停止する処理が行われる(ステップS15)。その後は、ステップS14に進み、さらにステップS10以降の処理が行われる。
このようなループ型ヒートパイプ10Bの起動後における作動流体の循環制御を、上記第1の実施の形態と同様に、ループ型ヒートパイプ10Bを組み込んだ電子機器20Bに適用した。その際は、CPU22の出力を、10分間隔で、20W、200W、20W、200Wと変化させて発熱量を変化させた。さらに、このような発熱量の変化を、凝縮器12が蒸発器11より下方に位置する体勢、凝縮器12が蒸発器11より上方に位置する体勢、及び凝縮器12と蒸発器11が同じ水平面内にある体勢の各電子機器20Bについて行った。ループ型ヒートパイプ10Bは、CPU22の発熱量変化に対し、電子機器20Bがいずれの体勢のときにも正常に作動し、蒸発器11のドライアウトによってCPU22の温度が急激に上昇する等の異常は生じないことが確認された。
この第2の実施の形態に係るループ型ヒートパイプ10Bによっても、起動時には、その体勢によらず、作動流体の循環を安定に開始させることができる。また、起動後には、その体勢や供給熱量の変動によらず、作動流体を順調に循環させることができる。これにより、電子機器20Bの信頼性を向上させることが可能になる。
次に、第3の実施の形態について説明する。
図13は第3の実施の形態に係るループ型ヒートパイプの概略模式図、図14は第3の実施の形態に係るループ型ヒートパイプの適用例を示す図である。なお、図13及び図14では、図1及び図2に示した要素と同一の要素については同一の符号を付している。
図13及び図14に示すループ型ヒートパイプ10Cは、蒸発器11手前の液管14に設けた起動用放熱フィン16にメインファン15から送風が行われるようになっている点で、上記第1の実施の形態に係るループ型ヒートパイプ10Aと相違する。
この第3の実施の形態に係るループ型ヒートパイプ10Cのメインファン15には、凝縮器12の放熱フィン12c側に設けられた第1シャッタ15aと、起動用放熱フィン16側に設けられた第2シャッタ15bが取り付けられている。第1シャッタ15a及び第2シャッタ15bは、その開閉が制御装置18によって制御されるようになっている。なお、メインファン15は、電子機器20Cの起動に伴って運転を開始するようになっており、メインファン15の運転開始時には、第1シャッタ15aが開、第2シャッタ15bが閉の状態になっている。また、ここでは、第2シャッタ15bが開状態となったときの起動用放熱フィン16への送風方向がガイド15cで規定されている。
このようなループ型ヒートパイプ10Cでは、その起動時及び起動後の作動流体の循環が、メインファン15から起動用放熱フィン16への送風によって制御される。以下、ループ型ヒートパイプ10Cの起動時及び起動後における作動流体の循環制御について説明する。
まず、ループ型ヒートパイプ10Cの起動時における作動流体の循環制御について説明する。
図15は第3の実施の形態に係るループ型ヒートパイプの起動時における作動流体の循環制御フローの一例である。
電源供給により電子機器20Cが起動すると、第1シャッタ15aが開、第2シャッタ15bが閉の状態で、メインファン15の運転が始まる。そして、まず、制御装置18の温度検出部18aにより、ループ型ヒートパイプ10Cの各部の温度Tvp,Tcond,Tlqが検出される(ステップS20)。
次いで、制御装置18の演算処理部18bにより、検出された温度Tvp,Tlqが、Tvp−Tlq>α1(例えばα1=20℃)の条件を満たすか否かが判定される(ステップS21)。
このステップS21において、Tvp−Tlq>α1の条件が満たされない場合には、蒸発器11手前に液体の作動流体が存在しない、或いは少ない可能性がある。このような場合には、まず、制御装置18の制御情報生成部18cにより、第1シャッタ15aを閉状態、第2シャッタ15bを開状態とする制御情報が生成される。そして、生成された制御情報が、制御情報生成部18cからメインファン15に送られ、第1シャッタ15aが閉状態、第2シャッタ15bが開状態とされて、メインファン15から起動用放熱フィン16への送風が行われる(ステップS22)。これにより、液管14内に存在する気体の作動流体の凝縮を促進する。
その後は、ステップS20に戻り、温度検出部18aによって検出される温度Tvp,Tlqが、Tvp−Tlq>α1の条件を満たすまで、メインファン15からの送風が行われる(ステップS20〜S22)。
一方、ステップS21において、Tvp−Tlq>α1の条件が満たされる場合には、蒸発器11手前に液体の作動流体が存在すると判定できる。このような場合には、続いて、演算処理部18bにより、検出された温度Tcond,Tlqが、Tcond−Tlq>α2(例えばα2=10℃)の条件を満たすか否かが判定される(ステップS23)。
このステップS23において、Tcond−Tlq>α2の条件が満たされない場合には、作動流体の循環が始まっていない、或いは順調に循環していない可能性がある。このような場合には、制御情報生成部18cにより、第1シャッタ15aを閉状態、第2シャッタ15bを開状態とする制御情報が生成され、その制御情報に基づき、メインファン15から起動用放熱フィン16への送風が行われる(ステップS22)。
一方、ステップS23において、Tcond−Tlq>α2の条件が満たされる場合には、ループ型ヒートパイプ10Cの起動が完了したと判定できる。このような場合には、制御情報生成部18cにより、第1シャッタ15aを開状態、第2シャッタ15bを閉状態とする制御情報が生成され、その制御情報に基づき、メインファン15から起動用放熱フィン16への送風が停止される(ステップS24)。
このようなループ型ヒートパイプ10Cにおける起動時の作動流体の循環制御を、上記第1の実施の形態と同様に、ループ型ヒートパイプ10Cを組み込んだ電子機器20Cに適用した。その際は、まず、電子機器20Cへの電源供給を停止した後、十分に時間が経過し、電子機器20C全体が均一に室温に保たれた状態とした。そして、凝縮器12が蒸発器11より下方に位置する体勢、凝縮器12が蒸発器11より上方に位置する体勢、及び凝縮器12と蒸発器11が同じ水平面内にある体勢で、それぞれ電子機器20Cを起動した。ループ型ヒートパイプ10Cは、電子機器20Cがいずれの体勢のときにも正常に起動し、CPU22の冷却を開始することができた。
続いて、ループ型ヒートパイプ10Cの起動後における作動流体の循環制御について説明する。
図16は第3の実施の形態に係るループ型ヒートパイプの起動後における作動流体の循環制御フローの一例である。
ループ型ヒートパイプ10Cの起動後には、まず、制御装置18の温度検出部18aにより、ループ型ヒートパイプ10Cの各部の温度Tcpu,Tvp,Tlqが検出される(ステップS30)。
次いで、制御装置18の演算処理部18bにより、検出された温度Tcpuが、Tcpu>Tcpu(MAX)の条件を満たすか否かが判定される(ステップS31)。
このステップS31において、Tcpu>Tcpu(MAX)の条件が満たされない場合には、制御情報生成部18cにより、第1シャッタ15aを開状態、第2シャッタ15bを閉状態とする制御情報が生成される。そして、その制御情報に基づき、メインファン15から起動用放熱フィン16への送風が停止される(ステップS32)。
一方、ステップS31において、Tcpu>Tcpu(MAX)の条件が満たされる場合には、続いて、演算処理部18bにより、温度Tvp,Tlqが、Tvp−Tlq>α3(例えばα3=20℃)の条件を満たすか否かが判定される(ステップS33)。
このステップS33において、Tvp−Tlq>α3の条件が満たされない場合には、蒸発器11手前に液体の作動流体が存在しない、或いは少なく、作動流体の循環が停止している可能性がある。このような場合には、制御情報生成部18cにより、第1シャッタ15aを閉状態、第2シャッタ15bを開状態とする制御情報が生成され、その制御情報に基づき、メインファン15から起動用放熱フィン16への送風が行われる(ステップS34)。これにより、液管14内に存在する気体の作動流体の凝縮を促進する。その後は、ステップS30以降の処理が行われる。
一方、ステップS33において、Tvp−Tlq>α3の条件が満たされる場合には、温度Tcpuは上限温度Tcpu(MAX)よりも高温であるが、蒸発器11手前には液体の作動流体が存在しており、作動流体は循環していると判定できる。このような場合には、CPU22の稼働率を下げる、又はCPU22を停止する処理が行われる(ステップS35)。その後は、ステップS32に進み、さらにステップS30以降の処理が行われる。
このようなループ型ヒートパイプ10Cの起動後における作動流体の循環制御を、上記第1の実施の形態と同様に、ループ型ヒートパイプ10Cを組み込んだ電子機器20Bに適用した。その際は、CPU22の出力を、10分間隔で、20W、200W、20W、200Wと変化させて発熱量を変化させた。さらに、このような発熱量の変化を、凝縮器12が蒸発器11より下方に位置する体勢、凝縮器12が蒸発器11より上方に位置する体勢、及び凝縮器12と蒸発器11が同じ水平面内にある体勢の各電子機器20Cについて行った。ループ型ヒートパイプ10Cは、CPU22の発熱量変化に対し、電子機器20Cがいずれの体勢のときにも正常に作動し、蒸発器11のドライアウトによってCPU22の温度が急激に上昇する等の異常は生じないことが確認された。
この第3の実施の形態に係るループ型ヒートパイプ10Cによっても、起動時には、その体勢によらず、作動流体の循環を安定に開始させることができる。また、起動後には、その体勢や供給熱量の変動によらず、作動流体を順調に循環させることができる。これにより、電子機器20Cの信頼性を向上させることが可能になる。
なお、ここでは、メインファン15から起動用放熱フィン16へ送風を行わないときには、第1シャッタ15aを開状態とし、第2シャッタ15bを閉状態とした。そして、メインファン15から起動用放熱フィン16への送風時には、第1シャッタ15aを閉状態とし、第2シャッタ15bを開状態とした。このほか、放熱フィン12cへの送風は常時行われるようにし、第1シャッタ15aを設けずに第2シャッタ15bのみを設け、制御装置18により、第2シャッタ15bの開閉制御を行うようにしてもよい。或いは、第1シャッタ15aを常時開状態としておき、制御装置18により、第2シャッタ15bの開閉制御のみを行うようにしてもよい。
また、蒸発器11手前の液管14に作動流体が一時的に貯留されるリザーバタンクを設け、そのリザーバタンクに起動用放熱フィン16を設けて、第2シャッタ15bの開閉制御によってメインファン15から起動用放熱フィン16への送風を制御してもよい。
以上説明したように、上記のようなループ型ヒートパイプ10A,10B,10Cでは、その環状流路の各部の温度に基づき、制御装置18による起動用ファン17から起動用放熱フィン16への送風を制御する。それにより、ループ型ヒートパイプ10A,10B,10Cの起動時には、その体勢によらず、液体の作動流体を蒸発器11に安定的に供給して、作動流体の循環を開始させることができる。また、ループ型ヒートパイプ10A,10B,10Cの起動後には、その体勢や供給熱量の変動によらず、作動流体を順調に循環させることができる。このようなループ型ヒートパイプ10A,10B,10Cを電子機器20A,20B,20Cに組み込むことにより、電子機器20A,20B,20Cの信頼性を向上させることが可能になる。また、蒸発器11、凝縮器12、蒸気管13及び液管14を、適用する電子機器内部において、高い自由度でレイアウトすることが可能になる。
なお、以上の説明では、電子機器20A,20B,20Cとしてノートブック型のコンピュータを例示したが、ループ型ヒートパイプ10A,10B,10Cを組み込むことのできる電子機器は、これに限定されるものではない。デスクトップ型のコンピュータ等のほか、CPU等の発熱体を搭載した様々な電子機器に対して広く適用可能である。
なお、ループ型ヒートパイプ10A,10B,10Cの制御装置18の処理機能は、コンピュータによって実現することができる。その場合は、制御装置18が行う処理機能の内容を記述したプラグラムが提供される。そのプログラムをコンピュータで実行することにより、上記処理機能がコンピュータ上で実現される。プログラムは、DVD−RAM(Digital Versatile Disk-Random Access Memory)、CD−R/RW(Compact Disc-Readable/ReWritable)等の可搬型記録媒体のほか、内蔵或いは外付けのHDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置に記憶しておくことができる。プログラムを実行するコンピュータは、そのような可搬型記録媒体や記憶装置からプログラムを読み取り、プログラムに従った処理を実行する。