JP5218660B2 - ループ型ヒートパイプ及びその起動方法 - Google Patents

ループ型ヒートパイプ及びその起動方法 Download PDF

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Description

本発明は、ループ型ヒートパイプ及びその起動方法に関する。
従来、電子装置の冷却にヒートパイプが用いられている。ヒートパイプは、内部に封入された作動流体の相変化を利用して熱を輸送する伝熱装置である。
そして、電子装置の冷却能力を向上するために、熱の輸送量を増加し、且つ熱の輸送距離を増加したヒートパイプとして、ループ型ヒートパイプが開発されている。
ループ型ヒートパイプは、発熱体から受熱して液相の作動流体を蒸発させる蒸発部と、気相の作動流体を放熱により凝縮させる凝縮部とを備えている。また、ループ型ヒートパイプは、蒸発部で気相に変化した作動流体を凝縮部へ流通させる蒸気管と、凝縮部で液相に変化した作動流体を蒸発部へ流通させる液管とを備えている。そして、ループ型ヒートパイプは、蒸発部と、蒸気管と、凝縮部と、液管とが直列に接続されたループ構造を有しており、内部に作動流体が封入されている。
ところで、近年のブレード型サーバでは、処理能力を向上するために一枚のブレード上に2つのCPUを搭載したものが開発されている。
ループ型ヒートパイプを用いて、稼働中の2つのCPUを冷却するためには、それぞれのCPUから受熱するために2つの蒸発部が必要となるので、2つのループ型ヒートパイプをブレード型サーバに組み込む必要がある。
ブレード型サーバに2組のループ型ヒートパイプを組み込むためには、2組のループ型ヒートパイプを配置するための領域が基板上に必要となる。
しかし、ブレード型サーバは、もともと、従来のサーバよりもコンパクトな容積を有するサーバとして開発されたものであり、CPU等の電子装置が高密度に基板上に配置されている。
そのため、基板上に2組のループ型ヒートパイプを配置する領域を確保することが難しい場合がある。
また、2つの蒸発部を備えたループ型ヒートパイプが提案されている。このループ型ヒートパイプ110を図1に示す。
ループ型ヒートパイプ110は、第1蒸発部111Aと凝縮部112とを備える。また、ループ型ヒートパイプ110は、凝縮部112で液相に変化した作動流体を第1蒸発部111Aに流通させる第1液管114Aと、第1蒸発部111Aで気相に変化した作動流体を凝縮部112に流通させる蒸気管113とを備える。
また、図1に示すように、ループ型ヒートパイプ110は、起動する際に、第1蒸発部111A内に液相の作動流体を流通させることを補助するための第2蒸発部111Bを備えている。第2蒸発部111Bには、第1液管114Aに流通した液相の差動流体の一部が、第2液管114B及び凝縮部112を介して流通する。第2蒸発部111Bで気相に変化した作動流体は、蒸気管113に合流した後、凝縮部112へ流通する。第2液管114B内を流通する作動流体は、第1液管114内を流通する作動流体と合流することなく、凝縮部112を通って、第2蒸発部111Bへ流通する。
凝縮部112の近傍に配置される第2蒸発部111Bは、ループ型ヒートパイプ110の起動時には、液相の差動流体がすぐに供給されて、ループ内における差動流体の流通を開始させ、第1蒸発部111Aに液相の作動流体を流通させる。第2蒸発部111Bは、ループ型ヒートパイプ110を起動するために設けられた補助の蒸発部である。そのため、第2蒸発部111Bは、第1蒸発部111Aと比べて寸法が小さく冷却能力が低い。
このような、2つの蒸発部111A、111Bを備えるループ型ヒートパイプ110を、同等の発熱量を有する2つのCPUそれぞれを冷却させるために用いた場合には、2つの蒸発部111A、111Bの冷却能力が異なっていること、及びその配管の構造に起因して、ループ内の作動流体の流通は不安定になり易い。
特開2008−8512号公報 米国特許出願公開第2004/0182550号明細書
本明細書は、小さな寸法を有し、且つ2つの発熱体を冷却することができるループ型ヒートパイプを提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本明細書で開示するループ型ヒートパイプの一形態によれば、発熱体から受熱して、液相の作動流体を蒸発させて気相の作動流体に相変化させる第1蒸発部及び第2蒸発部と、気相の作動流体を放熱により凝縮させて、液相の作動流体に相変化させる第1凝縮部及び第2凝縮部と、上記第1蒸発部で気相に変化した作動流体を、上記第1凝縮部へ流通させる第1蒸気管と、上記第1凝縮部で液相に変化した作動流体を、上記第2蒸発部へ流通させる第1液管と、上記第2蒸発部で気相に変化した作動流体を、上記第2凝縮部へ流通させる第2蒸気管と、上記第2凝縮部で液相に変化した作動流体を、上記第1蒸発部へ流通させる第2液管と、を備える。
上述した本明細書で開示するループ型ヒートパイプの一形態によれば、小さな寸法を有し、且つ2つの発熱体を冷却することができる。
本発明の目的及び効果は、特に請求項において指摘される構成要素及び組み合わせを用いることによって認識され且つ得られるだろう。
前述の一般的な説明及び後述の詳細な説明の両方は、例示的及び説明的なものであり、クレームされている本発明を制限するものではない。
関係する例によるループ型ヒートパイプを示す図である。 本明細書に開示するループ型ヒートパイプの第1実施形態を示す図である。 図2のループ型ヒートパイプが組み込まれたブレード型サーバを示す図である。 図2のループ型ヒートパイプの蒸発部の長手方向の拡大断面図である。 図2のループ型ヒートパイプの蒸発部の幅方向の拡大断面図である。 (A)〜(D)は、図2のループ型ヒートパイプの動作を説明する図である。 図2のループ型ヒートパイプにおいて、受熱量のバランスが崩れた状態を説明する図である。 本明細書に開示するループ型ヒートパイプの第2実施形態を示す図である。 (A)〜(D)は、図8のループ型ヒートパイプの動作を説明する図である。 本明細書に開示するループ型ヒートパイプの第3実施形態を示す図である。 本明細書に開示するループ型ヒートパイプの第4実施形態が組み込まれたブレード型サーバを示す図である。 本明細書に開示するループ型ヒートパイプの実施例1〜14を説明する図である。 本明細書に開示するループ型ヒートパイプの実施例15を説明する図である。 本明細書に開示するループ型ヒートパイプの実施例16を説明する図である。 本明細書に開示するループ型ヒートパイプの実施例17を説明する図である。 本明細書に開示するループ型ヒートパイプの実施例18を説明する図である。
以下、本明細書で開示するループ型ヒートパイプの好ましい第1実施形態を、図面を参照して説明する。但し、本発明の技術範囲はそれらの実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
図2は、本明細書に開示するループ型ヒートパイプの第1実施形態を示す図である。図3は、図2のループ型ヒートパイプが組み込まれたブレード型サーバを示す図である。図4は、図2のループ型ヒートパイプの蒸発部の長手方向の拡大断面図である。図5は、図2のループ型ヒートパイプの蒸発部の幅方向の拡大断面図である。
本実施形態のループ型ヒートパイプ10は、図2に示すように、発熱体から受熱して、液相の作動流体16を蒸発させて気相の作動流体16に相変化させる第1蒸発部11A及び第2蒸発部11B備える。また、ループ型ヒートパイプ10は、気相の作動流体16を放熱により凝縮させて、液相の作動流体16に相変化させる第1凝縮部12A及び第2凝縮部12Bを備える。また、ループ型ヒートパイプ10は、第1蒸発部11Aで気相に変化した作動流体16を、第1凝縮部12Aへ流通させる第1蒸気管13Aと、第1凝縮部12Aで液相に変化した作動流体16を、第2蒸発部11Bへ流通させる第1液管14Aと、を備える。更に、ループ型ヒートパイプ10は、第2蒸発部11Bで気相に変化した作動流体16を、第2凝縮部12Bへ流通させる第2蒸気管13Bと、第2凝縮部12Bで液相に変化した作動流体16を、第1蒸発部11Aへ流通させる第2液管14Bと、を備える。
ループ型ヒートパイプ10では、第1蒸発部11Aと、第1蒸気管13Aと、第1凝縮部12Aと、第1液管14Aと、第2蒸発部11Bと、第2蒸気管13Bと、第2凝縮部12Bと、第2液管14Bとが、直列に接続されてループ状の流路が形成されている。
作動流体は、上記ループ状の流路内に密封されている。作動流体16は、ループ型ヒートパイプ10内において、液相及び気相との間で相変化を行いながら、熱の移動を担う。作動流体16は、飽和蒸気圧でループ型ヒートパイプ10内に封入される。
作動流体16としては、例えば、水、アルコール、アンモニア、又はフロン等を用いることができる。
ループ型ヒートパイプ10は、例えば、図3に示すように、ブレード型サーバ20に組み込まれて用いられる。
ブレード型サーバ20は、2つのCPU21A及び21Bを備えている。ループ型ヒートパイプ10の第1蒸発部11Aは、CPU21Aと熱的に接触するように配置される。また、第2蒸発部11Bは、CPU21Bと熱的に接触するように配置される。
ブレード型サーバ20は、図3に示すように、縦長の矩形形状を有する場合が多い。ブレード型サーバ20は、通常はその長手方向と直交する幅方向を鉛直方向と一致させて配置される。CPU21Aは、典型的には鉛直方向においてCPU21Bよりも上側に配置される。
従って、ループ型ヒートパイプ10では、CPU21Aから受熱する第1蒸発部11Aは、鉛直方向において、CPU21Bから受熱する第2蒸発部11Bよりも上側に配置される。
第1凝縮部12A及び第2凝縮部12Bには、メインファン22によって風が送られて、放熱が促進される。
なお、図3では、ループ型ヒートパイプ10がブレード型サーバに組み込まれる例を示したが、ループ型ヒートパイプ10は、冷却されるべき発熱体を有する他の電子機器に組み込まれても良い。
次に、第1蒸発部11Aについて、図4及び図5を用いて、更に以下に説明する。第2蒸発部11Bは、第1蒸発部11Aと同じ構造を有しているので、第1蒸発部11Aに対して行った説明は、第2蒸発部11Bにも適宜適用される。
第1蒸発部11Aは、図4に示すように、縦長の形状を有する。第1蒸発部11Aの長手方向は、作動流体16がループ型ヒートパイプ10の流路を流れる方向と一致している。図4には、作動流体16の流れる方向が矢印で示されている。
また、第1蒸発部11Aは、図4及び図5に示すように、縦長の筐体30と、筐体30内の中央部に配置された金属ブロック31と、金属ブロック31内の空洞に配置された金属管32と、金属管32内に配置されたウィック33と、を有する。
筐体30と、金属ブロック31と、金属管32は、銅等の熱伝導性の高い金属を用いて形成される。
筐体30の長手方向は、第1蒸発部11Aの長手方向と一致している。筐体30における長手方向の一方の端部には、第2液管14Bが接続される。また、筐体30における長手方向の他方の端部には第1蒸気管13Aが接続される。
筐体30には、CPU21A等の発熱体が、サーマルグリース等の熱接合材(図示せず)を介して、熱的に接続される。
金属ブロック31は、筐体30の内面と密接して配置されており、筐体30と熱的に接続される。金属ブロック31は、内部に円柱形状の空洞を有している。この空洞の長手方向は、第1蒸発部11Aの長手方向と一致している。金属ブロック31は、発熱体21Aから筐体30を介して受け取った熱を、内部の空洞に配置された金属管32に速やかに伝導する。
金属管32は、縦長の円筒形状を有している。金属管32は、金属ブロック31の空洞内に配置される。金属管32の長手方向は、第1蒸発部11Aの長手方向と一致している。金属管32の外面は金属ブロック31の空洞の内面と密接しており、金属管32は金属ブロック31と熱的に接続している。
図5に示すように、金属管32の内面には、その周方向に、複数の凸部34aと凹部34bとが、所定のピッチで形成されている。凸部34a及び凹部34bは、金属管32における長手方向の全体に亘って形成されている。この凹部34bとウイック33との間に形成される溝状の空間は、作動流体16の通路となる。
ウィック33は、図4に示すように、縦長の筒形状を有する。ウィック33は、第2液管14B側の端部が開口しており、第1蒸気管13A側の端部が閉塞している。
ウィック33は、その閉塞している端部を、第1蒸気管13A側に向けて、金属管32の内側に挿入されている。ウィック33の外面は、図5に示すように、金属管32の内面に形成された複数の凸部34aの先端と接しており、ウィック33は金属管32と熱的に接続している。
ウィック33は、多孔質の材料を用いて形成される。ウィック33は、例えば、銅粉末を焼結した多孔質体を用いて形成される。ウィック33の内側の空洞部と外側とは、径が10μm〜50μm程度の微細な多数の細孔によって連通されることが好ましい。
液相の作動流体16が、第2液管14Bから第1蒸発部11A内に流入すると、作動流体16は毛細管現象によってウィック33内に浸み込み、ウィック33は、作動流体16で濡れた状態になる。ウィック33に浸み込んだ液相の作動流体16は、CPU21A等の発熱体から供給される熱で加熱されて蒸発(気化)する。
また、ウィック33自体やその表面、ウィック33内側の空洞部に存在する気相の作動流体16は、ウィック33の細孔を通じて、内側の空洞部から外側へ流通する。
上記のような構造を有する第1蒸発部11Aは、例えば、縦30mm×横30mmの寸法を有する発熱体であるCPUに対して、筐体30の寸法を、縦50mm×横50mm×高さ20mmとすることができる。また、金属ブロック31の寸法を、縦40mm×横40mm×高さ20mmとすることができる。また、金属管32の寸法は、外径14mm、内径10mm(管壁厚さ2mm)とすることができる。そして、金属管32の内面には、例えば、深さ1mmの凹部34bが2mmピッチで形成される。更に、ウィック33の寸法は、外径10mm、内径4mmとすることができる。
次に、第1凝縮部12Aについて、図2及び図3を用いて、更に以下に説明する。第2凝縮部12Bは、第1凝縮部12Aと同じ構造を有しているので、第1凝縮部12Aに対して行った説明は、第2凝縮部12Bにも適宜適用される。
図2に示すように、第1凝縮部12Aは、第1凝縮管40Aと、第1凝縮管40Aに接続された複数の第1放熱板41Aとを有する。
第1凝縮管40Aの一方の端部には、第1蒸気管13Aが接続される。第1凝縮管40Aの他方の端部には、第1液管14Aが接続される。
複数の第1放熱板41Aは、第1凝縮管40Aと熱的に接続されており、第1凝縮管40A内を流通する作動流体16の熱が、複数の第1放熱板41Aを介して放熱される。
第1凝縮部12Aにおける複数の第1放熱板41Aは、図3に示すように、メインファン22等によって、送風されることが、放熱を促進させて、気相の作動流体16を液相へ相変化させる上で好ましい。
次に、第1蒸気管13Aについて、図2及び図3を用いて、更に以下に説明する。第2蒸気管13Bは、第1蒸気管13Aと同じ構造を有しているので、第1蒸気管13Aに対して行った説明は、第2蒸気管13Bにも適宜適用される。
第1蒸気管13Aの一方の端部は、第1蒸発部11Aと接続される。また、第1蒸気管13Aの他方の端部は、第1凝縮部12Aと接続される。
第1蒸気管13A内には、必ずしも気相の作動流体16のみが流通するとは限らない。ループ型ヒートパイプ10の作動状態や設置環境によっては、第1蒸発部11Aと第1凝縮12部Aとの間において作動流体16が液相となる場合もあるので、第1蒸気管13A内に気液混合の作動流体16が流通する場合もある。
第1蒸気管13Aは、銅等の熱伝導性の高い金属を用いて形成される。
次に、第1液管14Aについて、図2及び図3を用いて、更に以下に説明する。第2液管14Bは、第1液管14Aと同じ構造を有しているので、第1液管14Aに対して行った説明は、第2液管14Bにも適宜適用される。
第1液管14Aの一方の端部は、第1凝縮部12Aと接続される。また、第1液管14Aの他方の端部は、第2蒸発部11Bと接続される。
第1液管14A内には、必ずしも液相の作動流体16のみが流通するとは限らない。ループ型ヒートパイプ10の作動状態や設置環境によっては、第1凝縮部12Aと第2蒸発部11Bとの間において作動流体16が気相となる場合もあるので、第1液管14A内に気液混合の作動流体16が流通する場合もある。
第1液管14Aは、銅等の熱伝導性の高い金属を用いて形成される。
ループ型ヒートパイプ10内に封入される作動流体16の量は、液相の作動流体16が、第1蒸発部11A及び第2液管14Bと、第2蒸発部11B及び第1液管14Aとを満たす分量であることが好ましい。また、この作動流体16の分量は、ループ型ヒートパイプ10の流路の容積の半分よりやや多い程度であることも好ましい。作動流体16の量が、この分量よりも多いと流動抵抗が増して熱抵抗が増加する。一方、作動流体16の量が、この分量よりも少ないと、ループ型ヒートパイプ10の動作が不安定になる。
次に、ループ型ヒートパイプ10の動作を、図6(A)〜図6(D)を用いて、以下に説明する。図6(A)〜図6(D)は、ループ型ヒートパイプの動作を説明する図である。
まず、図6(A)に示すように、ループ型ヒートパイプ10では、第1蒸発部11Aが、鉛直方向において第2蒸発部11Bよりも上側に配置されている。従って、起動前の状態において、液相の作動流体16は、ループ型ヒートパイプ10の下側に溜まっており、第2蒸発部11Bの内部は、液相の作動流体16によって満たされている。第2蒸発部11B内部のウィック33の細孔内には、液相の作動流体16が浸み込んでいる。
ループ型ヒートパイプ10の上側の部分は、気相の作動流体16によって満たされている。従って、第1蒸発部11Aの内部は、気相の作動流体16によって満たされている。即ち、第1蒸発部11A内のウィック33は乾いた状態にあり、第1蒸発部11Aはいわゆるドライアウトの状態にある。
そして、ループ型ヒートパイプ10を起動するにあたって、まず、第2蒸発部11Bが受熱を開始する。例えば、図3に示す例では、CPU21Bのみを稼働して、第2蒸発部11Bは発熱体であるCPU21Bから受熱する。
第1蒸発部11Aには、第2蒸発部11Bが受熱を開始してから所定の時間が経過した後に、受熱を開始させる。この所定の時間は、液相の作動流体16が第1蒸発部11Aへ流通し始めるのに要する時間に基づいて定められる。
発熱体から受熱した第2蒸発部11Bでは、まず筐体30が発熱体によって加熱されて、筐体30に加わった熱が金属ブロック31に伝わる。金属ブロック31に伝わった熱は金属管32に伝わって、金属管32に伝わった熱は、金属管32の凸部34aを介してウィック33に伝わり、ウィック33が加熱される。
加熱されたウィック33の温度が上昇すると、ウィック33の細孔内にある液相の作動流体16が沸騰して気化する。作動流体16が、ウィック33の細孔内で気相に相変化することに伴って細孔内の圧力が増加するので、気相の作動流体16は、ウィック33の外面に押し出される。
ウィック33の外面に押し出された気相の作動流体16は、例えば、金属管32の凹部34bを通って、第2蒸気管13B側の筐体30の内部へ流通する。そして、気相の作動流体16は、第2蒸気管13B内へ流れ込んでいく。
なお、ループ型ヒートパイプ10が起動した後の稼働状態では、第2蒸発部11Bの金属管32の内側に気相の作動流体16が存在する場合もある。この気相の作動流体16も、作動流体16の気化に伴う圧力増加に伴って、ウィック33の外面に押し出される。
次に、図6(B)に示すように、第2蒸発部11Bの筐体30内の圧力上昇に伴って、第2蒸気管13B内の液相の作動流体16が第2凝縮部12B内へ押し出される。液相の作動流体16は、第2凝縮部12Bから更に第2液管14B内へ押し出されて、第2液管14B内の液面が上昇する。
そして、液相の作動流体16に押された気相の作動流体16は、第1蒸発部11Aを流通し、更に第1蒸気管13Aを流通した後、第1凝縮部12A内に流れ込む。第1凝縮部12Aに到達した気相の作動流体16は、放熱により凝縮して液相に変化する。作動流体16が有する熱は、第1凝縮管40Aを介して第1放熱板41Aに伝わり、第1放熱板41Aに伝わった熱は、第1放熱板41Aから放熱される。
このようにして、第1凝縮部12Aでは、気相の作動流体16が冷却されて、その全部又は一部が液相に変化する。その結果、第1凝縮部12A及び第1蒸気管13A内には、液相の作動流体16が溜まって液面が上昇する。
次に、図6(C)に示すように、第2凝縮部12B側から押された第2液管14B内の液相の作動流体16が、第1蒸発部11A内へ流通し始める。
この時点で、初めて第1蒸発部11Aへの受熱を開始する。例えば、図3に示すように、CPU21Aの稼働を開始して、第1蒸発部11Aは、発熱体であるCPU21Aから受熱する。
第1蒸発部11A内に流通した液相の作動流体16は気相に変化して、気相の作動流体16が第1蒸気管13A内に流れ込む。
次に、図6(D)に示すように、液相の作動流体16が第1蒸発部11Aのウィック33の内部をほぼ満たすようになり、ループ型ヒートパイプ10の動作が安定する。ループ型ヒートパイプ10の動作が安定した状態では、液相の作動流体16が、第1蒸発部11Aと、第2蒸発部11Bと、第1液管14Aと、第2液管14Bとをほぼ満たした状態となる。ループ型ヒートパイプ10の他の部分は、気相の作動流体16によって満たされる。
このようにして、ループ型ヒートパイプ10によって、2つの発熱体の冷却が安定して行われる。
上述したループ型ヒートパイプ10によれば、ループ型ヒートパイプが1つのループ状の流路によって形成されるので、小さな寸法を有している。また、ループ型ヒートパイプ10は、2つの蒸発部を有しているので、2つの発熱体を冷却することができる。
また、上述したループ型ヒートパイプ10の起動方法によれば、液相の作動流体16によって満たされる蒸発部に対して受熱を開始するので、ループ型ヒートパイプ10を確実に起動することができる。
例えば、2つのCPUを有するブレード型サーバでは、2つのCPUを共に基板の下側(鉛直方向の下側)に配置できれば、ループ型ヒートパイプの起動時に2つの蒸発部を共に液相の作動流体で満たすことが可能となる。しかし、このような配置を行うことは、ブレード型サーバの構造に大きな制約を与えるので困難な場合が多い。
そして、2つのCPUを有するブレード型サーバでは、2つのCPUが鉛直方向において異なる位置に配置される場合が多い。この場合、2つのCPUそれぞれに対して、別個のループ型ヒートパイプを設けた場合には、鉛直方向の上側に配置されたCPUに熱的に接続された蒸発部内には、起動時に液相の作動流体を満たすことができないこともあり得る。蒸発部内に液相の作動流体が存在しない状態で、ループ型ヒートパイプを起動しようとしても、蒸発部内はドライアウトの状態なので、液相の作動流体を気相へ変化させることができないため、ループ型ヒートパイプは起動されない。
一方、上述したループ型ヒートパイプ10によれば、1つのループ内に2つの蒸発部を備えているので、起動時に、鉛直方向の下側に配置された蒸発部内に液相の作動流体を満たしておくことが容易となる。また、上述したループ型ヒートパイプの起動方法によれば、鉛直方向の下側に配置された蒸発部の受熱を先に開始し、液相の作動流体が鉛直方向の上側に配置された蒸発部へ流通し始めた後、この上側に配置された蒸発部への受熱を開始させる。従って、ループ型ヒートパイプを確実に起動させることができる。
上述したループ型ヒートパイプ10は、第1蒸発部11A及び第2蒸発部11Bにおける受熱量が等しい場合には、安定して動作する。しかし、第1蒸発部11A及び第2蒸発部11Bにおける受熱量が等しくない場合には、第1蒸発部11A及び第2蒸発部11Bにおける作動流体16の液相から気相への変化量が異なるので、流路内における作動流体16の分布に偏りが生じて、作動流体16の循環が不安定になるか又は停止するおそれがある。
この場合の例を、図7を用いて以下に説明する。図7は、ループ型ヒートパイプ10において、受熱量のバランスが崩れた状態を説明する図である。
図7に示すループ型ヒートパイプ10では、第1蒸発部11Aの受熱量が増加し、一方第2蒸発部11Bの受熱量が減少して、受熱量のバランスが崩れた状態にある。例えば、図3に示すブレード型サーバの例で説明すると、CPU21Aの稼働率が上昇して発熱量が増加する一方で、CPU21Bの稼働率が低下して発熱量が減少した場合に相当する。
ループ型ヒートパイプ10では、受熱量の多い第1蒸発部11Aにおける作動流体16の気化速度が、受熱量の少ない第2蒸発部11Bにおける作動流体16の気化速度よりも大きくなる。
そして、第2液管14B内の液相の作動流体16が減少し、一方第1液管14A内の液相の作動流体16が増加する。図7では、液相の作動流体16の液面が第1蒸気管13A内にまで上昇した状態が示されている。
この状態が更に続くと、第1蒸発部11A内には液相の作動流体16が無くなって、第1蒸発部11Aはドライアウトの状態となり、作動流体16の循環が停止する。
このような現象は、特に、蒸発部と凝縮部との間の距離が離れている場合や、蒸発部が凝縮部よりも低い位置にある場合等、作動流体16の流通抵抗が比較的大きい場合に、起こり易い。
従って、ループ型ヒートパイプは、2つの蒸発部における受熱量のバランスが崩れた場合でも、安定して動作できることが好ましい。
そこで、次に、2つの蒸発部における受熱量のバランスが崩れた場合でも、安定して動作できるループ型ヒートパイプとして、第2から第4実施形態のループ型ヒートパイプを、図面を参照しながら以下に説明する。第2から第4実施形態について特に説明しない点については、上述の第1実施形態に関して詳述した説明が適宜適用される。また、図8〜図11において、図2〜図7と同じ構成要素に同じ符号を付してある。
図8は、本明細書に開示する第2実施形態のループ型ヒートパイプ50を示す。
ループ型ヒートパイプ50は、第1蒸気管13Aと第2蒸気管13Bとを接続するバイパス管15を備える。バイパス管15は、2つの蒸発部における受熱量のバランスが崩れる等して、流路内における作動流体16の分布に偏りが生じた場合に、作動流体16を流通させて、ループ型ヒートパイプ50を安定した稼働状態へ戻す働きを有する。
バイパス管15は、第1凝縮部12A近傍の第1蒸気管13Aの部分と、第2凝縮部12B近傍の第2蒸気管13Bの部分と、を接続することが好ましい。例えば、バイパス管15は、第1凝縮部12Aから1〜3cmの範囲の第1蒸気管13Aの部分と、第2凝縮部12Bから1〜3cmの範囲の第2蒸気管13Bの部分とを接続することが好ましい。
また、バイパス管15における作動流体16の流通部分の断面積は、第1蒸気管13A及び第2蒸気管13Bにおける作動流体16の流通部分の断面積以下であることが好ましい。バイパス管15における作動流体16の圧力損失は、液管や蒸気管よりも大きいことが好ましい。
これは、ループ型ヒートパイプ50が安定動作している状態では、作動流体16に対するバイパス管15の流通抵抗を高めて、作動流体16がバイパス管15へ容易に流通すること防止するためである。
次に、バイパス管15の上記断面積と第1蒸気管13A及び第2蒸気管13Bの上記断面積との間の好ましい関係を以下に説明する。
即ち、バイパス管15の流通部分の断面積と、第1蒸気管13A及び第2蒸気管13Bの流通部分の断面積との比は、0.1〜1の範囲、特に0.4〜0.6の範囲にあることが好ましい。
上記断面積の比が、0.1以上であることが、流路内における作動流体16の分布に偏りが生じた場合に、作動流体16を速やかに流通させて、ループ型ヒートパイプの動作を安定状態へ戻す上で好ましい。上記断面積の比が、0.1よりも小さいと、バイパス管15における圧力損失が大きくなって、作動流体16のバイパス管15における流通が阻害される。
また、上記断面積の比が、1以下であることが、ループ型ヒートパイプ50が安定して動作している際に、作動流体16がバイパス管15の方へ優先して流通することを防止する上で好ましい。また、上記断面積の比が、1以下であることにより、液相の作動流体16を、毛細管力を利用して、バイパス管15内に流通させることができる。
バイパス管15の長さは、ループ型ヒートパイプ50の配置される構造によって、適宜設定される。
また、バイパス管15には、作動流体16に対する圧力損失を高めるために、ループ部、屈曲部等を設けても良い。
ループ型ヒートパイプ50の他の部分の構造は、上述した第1実施形態と同様である。
次に、ループ型ヒートパイプ50の動作を、図9(A)〜図9(D)を用いて、以下に説明する。図9(A)〜図9(D)は、ループ型ヒートパイプ50の動作を説明する図である。
まず、図9(A)に示す状態のループ型ヒートパイプ50は、安定した状態で動作している。ループ型ヒートパイプ50が起動してから安定した動作へ至る過程は、上述した第1実施形態と同様である。
次に、図9(B)に示すように、ループ型ヒートパイプ50は、第1蒸発部11Aの受熱量が増加し、一方第2蒸発部11Bの受熱量が減少して、受熱量のバランスが崩れた状態に変化したとする。
ループ型ヒートパイプ50では、受熱量の多い第1蒸発部11Aにおける作動流体16の気化速度が、受熱量の少ない第2蒸発部11Bにおける作動流体16の気化速度よりも大きくなる。
そして、第2液管14B内の液相の作動流体16が減少する。流路内の作動流体16の量は一定なので、第1液管14A内の液相の作動流体16が増加する。図9(B)に示す状態では、液相の作動流体16の液面が第1凝縮部12Aの内部にまで上昇している。
その結果、第2液管14Bにおける作動流体16の気相部分の圧力が減少し、一方第1蒸気管13A内の圧力が増加する。第2液管14B内の圧力の減少に伴って、第2凝縮部12B及び第2蒸気管13B内部の圧力も減少する。
すると、第1蒸気管13A内の気相の作動流体16が、バイパス管15を流通して、第2蒸気管13Bへ流れ込む。第2蒸気管13Bへ流れ込んだ作動流体16は、第2凝縮部12Bで液相に変化した後、第2液管14Bへ流れ込む。なお、第1蒸気管13A内に液相の作動流体16が存在する場合には、液相の作動流体16がバイパス管15内を流通することもある。
その結果、第2液管14B内の液相の作動流体16が増加し、一方第1液管14A内の液相の作動流体16が減少する。このように、ループ型ヒートパイプ50内の作動流体16の分布が図9(A)に示す状態へと自動的に戻される。その結果、ループ型ヒートパイプ50は、安定した動作状態を回復する。
しかし、第1蒸発部11Aの受熱量の増加量と、第2蒸発部11Bの受熱量の減少量とが大きい場合には、受熱量のバランスが大きく崩れた状態に更に変化して、ループ型ヒートパイプ50における作動流体16の分布が、図9(C)に示す状態へと変化する。
図9(C)に示す状態では、第2液管14B内の液相の作動流体16が更に減少し、一方第1液管14A内の液相の作動流体16が更に増加する。図9(C)に示す状態では、液相の作動流体16の液面が第1蒸気管13Aの内部にまで上昇している。
そして、作動流体16の液面がバイパス管15の接続箇所の高さに達すると、図9(D)に示すように、第1蒸気管13A内の液相の作動流体16が、圧力差及び毛細管力によって、バイパス管15内を流通して、第2蒸気管13B内に流れ込む。
第2蒸気管13B内に流れ込んだ作動流体16は、第2凝縮部12B内を流通して、第2液管14B内に流れ込む。
その結果、第2液管14B内の液相の作動流体16が増加し、一方第1液管14A内の液相の作動流体16が減少する。このように、ループ型ヒートパイプ50内の作動流体16の分布が図9(A)に示す状態へと自動的に戻される。従って、ループ型ヒートパイプ50は、安定した動作状態を回復する。
なお、上述したループ型ヒートパイプ50の動作の説明では、第1蒸発部11Aの受熱量が増加し、一方第2蒸発部11Bの受熱量が減少する場合を例にした。しかし、第1蒸発部11Aのみの受熱量が増加し、第2蒸発部11Bの受熱量は変化しない場合、又は、第1蒸発部11Aの受熱量は変化せず、第2蒸発部11Bのみの受熱量が減少する場合も、ループ型ヒートパイプ50は同様に安定した動作状態に回復する。
このように、ループ型ヒートパイプ50は、第1蒸発部11Aと第2蒸発部11Bとの間で受熱量に相対的な変化が生じた場合には、作動流体16の流路内の分布を正常な状態に戻して、安定した動作状態を回復する。
更に、ループ型ヒートパイプ50は、第1凝縮部12Aと第2凝縮部12Bとの間で冷却能力に相対的な変化が生じた場合でも、作動流体16の流路内の分布を正常な状態に戻して、安定した動作状態を回復する。
上述したループ型ヒートパイプ50によれば、流路内における作動流体16の分布に偏りが生じた場合には、作動流体16がバイパス管15を通って、第1蒸気管13Aから第2蒸気管13Bへと流通するので、ループ型ヒートパイプ50は安定した動作状態を回復できる。
従って、ループ型ヒートパイプ50によれば、2つの蒸発部における受熱量のバランスが崩れた場合でも、安定して動作できる。
また、ループ型ヒートパイプ50は、流路内に生じた作動流体16の分布の偏りを、電力等の外部エネルギーを使用することなく解消できるので、省エネルギーである。
次に、第3実施形態のループ型ヒートパイプについて、図10を用いて以下に説明する。図10は、本明細書に開示する第3実施形態のループ型ヒートパイプ60を示す図である。
ループ型ヒートパイプ60では、第1蒸発部11A及び第2蒸発部11Bの寸法が異なっている。例えば、第2蒸発部11Bの長さを、第1蒸発部11Aの2倍にしても良い。
ループ型ヒートパイプ60は、発熱量が異なる2つの発熱体を冷却するために用いることができる。また、ループ型ヒートパイプ60は、寸法が異なる2つの発熱体を冷却するために用いることができる。
例えば、ループ型ヒートパイプ60は、サーバに搭載されるCPUとチップコントローラとを冷却するために用いられる。一般に、CPUは、チップコントローラよりも寸法及び発熱量が大きい。
第1蒸発部11Aは、例えば、縦20mm×横20mmの寸法を有する発熱体であるチップコントローラに対して、金属ブロック31の寸法を、縦30mm×横30mm×高さ20mmとすることができる。また、第2蒸発部11Bは、例えば、縦30mm×横30mmの寸法を有する発熱体であるCPUに対して、金属ブロック31の寸法を、縦50mm×横50mm×高さ20mmとすることができる。
ループ型ヒートパイプ60の他の部分の構造は、上述した第2実施形態と同様である。
上述したループ型ヒートパイプ60によれば、発熱体の寸法及び発熱量に対応した蒸発部を用いて、発熱体を効率良く冷却することができる。
次に、第4実施形態のループ型ヒートパイプについて、図11を用いて以下に説明する。図11は、本明細書に開示する第4実施形態のループ型ヒートパイプ70が組み込まれたブレード型サーバ80を示す図である。
図11に示すように、ループ型ヒートパイプ70では、第1凝縮部と第2凝縮部とが一体に形成される。
具体的には、第1凝縮部の第1凝縮管40A及び第2凝縮部の第2凝縮管40Bには共通の複数の放熱板41が接合されている。
ループ型ヒートパイプ70の他の部分の構造は、上述した第2実施形態と同様である。
上述したループ型ヒートパイプ70によれば、第1凝縮部と第2凝縮部とが一体に形成されているので、更に小さな寸法を有する。
本発明では、上述した各実施形態のループ型ヒートパイプ及びその起動方法は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更が可能である。
例えば、上述した実施形態では、第1蒸発部11Aが鉛直方向において第2蒸発部11Bよりも上側に配置されていたが、第2蒸発部11Bが鉛直方向において第1蒸発部11Aよりも上側に配置されても良い。
この際に、ループ型ヒートパイプ10が使用される時の鉛直方向がループ型ヒートパイプの製造時に特定できない場合には、例えば、以下のような構成要素を設けても良い。1.ループ型ヒートパイプ10に加速度センサを設置して鉛直方向を判断できるようにする。2.ループ型ヒートパイプ10の起動直後にCPU等の2つの発熱体の温度をモニタして、温度上昇の大きい方の発熱体を特定する。そして、温度上昇の大きい方の発熱体への電力供給を所定の時間の間スローダウンさせて、2つの発熱体の起動に時差を設ける。このような構成要素を設けることによって、鉛直方向の下側に位置する蒸発部への受熱だけを先に開始することができる。
また、上述した各実施形態では、第1蒸気管13Aと、第2蒸気管13Bと、第1液管14Aと、第2液管14Bとが、同じ径の管によって形成されていたが、各管の径は異なっていても良い。
なお、上述した各実施形態では、模式的に示したループ型ヒートパイプを用いて説明を行っており、各構成要素の構造、又は配置、又は形状等は、図示した形態に限定されるものではない。例えば、蒸発部又は凝縮部の配置や、それらを接続する蒸気管及び液管の形状(配管レイアウト)は、ループ型ヒートパイプが組み込まれる電子機器等の内部構成等に応じて任意に設定可能である。また、蒸発部、凝縮部、蒸気管又は液管の配置や形状に応じて、起動用放熱フィン及び起動用ファン等、その他の要素の配置も任意に設定可能である。
以下、本明細書に開示するループ型ヒートパイプの作用効果について、実施例を用いて更に説明する。ただし、本発明はかかる実施例に制限されるものではない。
[実施例1]
まず、図8に示す構造のループ型ヒートパイプを形成した。そして、このループ型ヒートパイプを図3に示すようなブレード型サーバに組み込んだ。そして、ブレード型サーバの基板面を、鉛直方向に対して垂直な向きにして、2つの蒸発部が水平配置された状態とした。第1蒸発部に受熱させるCPU Aの発熱量を0Wとし、第2蒸発部に受熱させるCPU Bの発熱量を60Wとして、実施例1とした。
[実施例2]
第1蒸発部に受熱させるCPU Aの発熱量を20Wとし、第2蒸発部に受熱させるCPU Bの発熱量を60Wとする以外は実施例1と同様にして実施例2とした。
[実施例3]
第1蒸発部に受熱させるCPU Aの発熱量を40Wとし、第2蒸発部に受熱させるCPU Bの発熱量を60Wとする以外は実施例1と同様にして実施例3とした。
[実施例4]
第1蒸発部に受熱させるCPU Aの発熱量を60Wとし、第2蒸発部に受熱させるCPU Bの発熱量を60Wとする以外は実施例1と同様にして実施例4とした。
[実施例5]
第1蒸発部に受熱させるCPU Aの発熱量を60Wとし、第2蒸発部に受熱させるCPU Bの発熱量を40Wとする以外は実施例1と同様にして実施例5とした。
[実施例6]
第1蒸発部に受熱させるCPU Aの発熱量を60Wとし、第2蒸発部に受熱させるCPU Bの発熱量を20Wとする以外は実施例1と同様にして実施例6とした。
[実施例7]
第1蒸発部に受熱させるCPU Aの発熱量を60Wとし、第2蒸発部に受熱させるCPU Bの発熱量を0Wとする以外は実施例1と同様にして実施例7とした。
[実施例8]
ブレード型サーバの基板面を、鉛直方向に対して平行な向きにして、2つの蒸発部が垂直に配置された状態とした。また、鉛直方向の上側に配置される第1蒸発部に受熱させるCPU Aの発熱量を0Wとし、鉛直方向の下側に配置される第2蒸発部に受熱させるCPU Bの発熱量を60Wとした。それ以外は、実施例1と同様にして、実施例8とした。
[実施例9]
鉛直方向の上側に配置される第1蒸発部に受熱させるCPU Aの発熱量を20Wとし、鉛直方向の下側に配置される第2蒸発部に受熱させるCPU Bの発熱量を60Wとした。それ以外は、実施例8と同様にして、実施例9とした。
[実施例10]
鉛直方向の上側に配置される第1蒸発部に受熱させるCPU Aの発熱量を40Wとし、鉛直方向の下側に配置される第2蒸発部に受熱させるCPU Bの発熱量を60Wとした。それ以外は、実施例8と同様にして、実施例10とした。
[実施例11]
鉛直方向の上側に配置される第1蒸発部に受熱させるCPU Aの発熱量を60Wとし、鉛直方向の下側に配置される第2蒸発部に受熱させるCPU Bの発熱量を60Wとした。それ以外は、実施例8と同様にして、実施例11とした。
[実施例12]
鉛直方向の上側に配置される第1蒸発部に受熱させるCPU Aの発熱量を60Wとし、鉛直方向の下側に配置される第2蒸発部に受熱させるCPU Bの発熱量を40Wとした。それ以外は、実施例8と同様にして、実施例12とした。
[実施例13]
鉛直方向の上側に配置される第1蒸発部に受熱させるCPU Aの発熱量を60Wとし、鉛直方向の下側に配置される第2蒸発部に受熱させるCPU Bの発熱量を20Wとした。それ以外は、実施例8と同様にして、実施例13とした。
[実施例14]
鉛直方向の上側に配置される第1蒸発部に受熱させるCPU Aの発熱量を60Wとし、鉛直方向の下側に配置される第2蒸発部に受熱させるCPU Bの発熱量を0Wとした。それ以外は、実施例8と同様にして、実施例14とした。
実施例1〜実施例14を以下のように動作させて、CPU A及びCPU Bの温度を測定した。
まず、ブレード型サーバへの電力の供給を停止し、十分に時間が経過した後、CPU及びループ型ヒートパイプを含むブレード型サーバ全体が均一に室温に保たれた状態とした。次に、ブレード型サーバへの電力の供給を開始して、CPU A及びCPU Bの温度が上昇した際の到達温度を測定した。
測定結果を図12に示す。
実施例14では、ブレード型サーバへの電力の供給を開始して約1分後にCPU Aの温度が80℃に達した。蒸発部が垂直配置の場合であって、鉛直方向の下側に配置された第2蒸発部が受熱をしない場合には、ループ型ヒートパイプが稼働しないことが分かった。
一方、実施例1〜13は、CPU A及びCPU Bの到達温度は、すべて60℃未満であった。即ち、2つの蒸発部が垂直配置の場合でも、鉛直方向の下側に配置された第2蒸発部が受熱すれば、ループ型ヒートパイプが稼働して、CPU A及びCPU Bが冷却されることが分かった。また、蒸発部が水平配置の場合には、どちらか一方の蒸発部が受熱をしなくても、ループ型ヒートパイプが稼働して、CPU A及びCPU Bが冷却されることが分かった。
また、図11に示す構造のループ型ヒートパイプを用いて、実施例1〜実施例14と同様の測定を行って、同様の結果が得られた。
次に、2相流体シミュレータを用いて、図2及び図8に示す構造のループ型ヒートパイプの動作の計算機実験を行って、実施例15〜実施例18とした。2相流体シミュレータとしては、SINDA/FLUINT(C&R TECHNOLOGIES社製)が用いられた。
[実施例15]
図2に示す構造のループ型ヒートパイプを用いた。冷媒として、特定フロンHCFC(hydrochlorofluorocarbon)のR141bを用いた。第1液管及び第2液管、並びに第1蒸気管及び第2蒸気管の内径は、4.5mmであった。第1液管及び第2液管の長さは、1.0mであり、第1蒸気管及び第2蒸気管の長さは、1.0mであった。第1凝縮部及び第2凝縮部の長さは、1.0mであった。第1蒸発部及び第2蒸発部それぞれは、150Wの出力を有する加熱体によって加熱された。第1蒸発部及び第2蒸発部は、鉛直方向に対して水平に配置された。ループ型ヒートパイプは、第2凝縮部と第2液管と第1蒸発部と第1蒸気管とで形成される第1セットと、第1凝縮部と第1液管と第2蒸発部と第2蒸気管とで形成される第2セットとを有する。各セットは、液管が8グリッド、蒸発部が2グリッド、蒸気管が12グリッド、凝縮部が8グリッドに分けられた。そして、ループ型ヒートパイプの定常状態において、各セットのグリッドそれぞれにおける作動流体の気相の割合が求められた。計算結果を図13に示す。
[実施例16]
図8に示す構造のループ型ヒートパイプが用いられたことを除いては、実施例15と同様にして、実施例16とした。バイパス管の内径は、4.5mmであり、バイパス管の長さは、1.4mであった。計算結果を図14に示す。
[実施例17]
第1セットの第1蒸発部が50Wの出力を有する加熱体によって加熱され、第2セットの第2蒸発部が150Wの出力を有する加熱体によって加熱されたことを除いては、実施例15と同様にして、実施例17とした。計算結果を図15に示す。
[実施例18]
図8に示す構造のループ型ヒートパイプが用いられ、且つ第1セットの第1蒸発部が50Wの出力を有する加熱体によって加熱され、第2セットの第2蒸発部が150Wの出力を有する加熱体によって加熱されたことを除いては、実施例16と同様にして、実施例18とした。計算結果を図16に示す。
図13及び図14に示すように、2つの蒸発部が同じように加熱された実施例15及び実施例16は、蒸気管では全ての作動流体が気相となり、液管では全ての作動流体が液相となっている。
図15に示すように、実施例17は、ループ型ヒートパイプ内に作動流体の流通は生じているが、第1セットの第1蒸気管では作動流体の約4割が気相であり、約6割は液相となっている。一方、第2セットでは、第2蒸気管の作動流体は全て気相となっている。
図16に示すように、実施例18は、蒸気管では全ての作動流体が気相であり、液管では全ての作動流体が液相となっている。従って、実施例17のループ型ヒートパイプの構造に、バイパス管を設けることにより、第1セットの蒸気管でも、差動流体が全て気相となることが分かった。
ここで述べられた全ての例及び条件付きの言葉は、読者が、発明者によって寄与された発明及び概念を技術を深めて理解することを助けるための教育的な目的を意図する。ここで述べられた全ての例及び条件付きの言葉は、そのような具体的に述べられた例及び条件に限定されることなく解釈されるべきである。また、明細書のそのような例示の機構は、本発明の優越性及び劣等性を示すこととは関係しない。本発明の実施形態は詳細に説明されているが、その様々な変更、置き換え又は修正が本発明の精神及び範囲を逸脱しない限り行われ得ることが理解されるべきである。
(付記1)発熱体から受熱して、液相の作動流体を蒸発させて気相の作動流体に相変化させる第1蒸発部及び第2蒸発部と、気相の作動流体を放熱により凝縮させて、液相の作動流体に相変化させる第1凝縮部及び第2凝縮部と、前記第1蒸発部で気相に変化した作動流体を、前記第1凝縮部へ流通させる第1蒸気管と、前記第1凝縮部で液相に変化した作動流体を、前記第2蒸発部へ流通させる第1液管と、前記第2蒸発部で気相に変化した作動流体を、前記第2凝縮部へ流通させる第2蒸気管と、前記第2凝縮部で液相に変化した作動流体を、前記第1蒸発部へ流通させる第2液管と、を備えるループ型ヒートパイプ。(付記2)前記第1蒸気管と前記第2蒸気管とを接続するバイパス管を備える付記1に記載のループ型ヒートパイプ。(付記3)前記バイパス管は、前記第1凝縮部近傍の前記第1蒸気管の部分と、前記第2凝縮部近傍の前記第2蒸気管の部分と、を接続する付記2に記載のループ型ヒートパイプ。(付記4)前記バイパス管における作動流体の流通部分の断面積は、前記第1蒸気管及び第2蒸気管における作動流体の流通部分の断面積以下である付記2又は3に記載のループ型ヒートパイプ。(付記5)前記バイパス管の前記断面積と、前記第1蒸気管及び第2蒸気管の前記断面積との比が、0.1〜1の範囲にある付記4に記載のループ型ヒートパイプ。(付記6)前記第1蒸発部は、鉛直方向において前記第2蒸発部よりも上側に配置される付記1から5の何れか一項に記載のループ型ヒートパイプ。(付記7)前記第1凝縮部と前記第2凝縮部とは一体に形成される付記1から6の何れか一項に記載のループ型ヒートパイプ。(付記8)前記第1凝縮部は、第1凝縮管を有し、前記第2凝縮部は、第2凝縮管を有し、前記第1凝縮管及び前記第2凝縮管には共通の複数の放熱板が接合されている付記7に記載のループ型ヒートパイプ。(付記9)発熱体から受熱して、液相の作動流体を蒸発させて気相の作動流体に相変化させる第1蒸発部及び第2蒸発部と、気相の作動流体を放熱により凝縮させて、液相の作動流体に相変化させる第1凝縮部及び第2凝縮部と、前記第1蒸発部で気相に変化した作動流体を、前記第1凝縮部へ流通させる第1蒸気管と、前記第1凝縮部で液相に変化した作動流体を、前記第2蒸発部へ流通させる第1液管と、前記第2蒸発部で気相に変化した作動流体を、前記第2凝縮部へ流通させる第2蒸気管と、前記第2凝縮部で液相に変化した作動流体を、前記第1蒸発部へ流通させる第2液管と、を備え、前記第1蒸発部が鉛直方向において前記第2蒸発部よりも上側に配置される、ループ型ヒートパイプの起動方法であって、前記第2蒸発部が受熱を開始してから所定の時間が経過した後、前記第1蒸発部の受熱を開始させる、ループ型ヒートパイプの起動方法。(付記10)前記所定の時間は、液相の作動流体が前記第1蒸発部へ流通し始めるのに要する時間に基づいて定められる付記9に記載のループ型ヒートパイプの起動方法。(付記11)前記ループ型ヒートパイプは、前記第1蒸気管と前記第2蒸気管とを接続するバイパス管を備える付記9又は10に記載のループ型ヒートパイプの起動方法。
10、50、60、70 ループ型ヒートパイプ
11A 第1蒸発部
11B 第2蒸発部
12A 第1凝縮部
12B 第2凝縮部
13A 第1蒸気管
13B 第2蒸気管
14A 第1液管
14B 第2液管
15 バイパス管
16 作動流体
20 ブレード型サーバ
21A CPU
21B CPU
22 メインファン
30 筐体
31 金属ブロック
32 金属管
33 ウィック
34 溝
40A、40B 凝縮管
41 放熱板
80 ブレード型サーバ
81A CPU
81B CPU

Claims (5)

  1. 発熱体から受熱して、液相の作動流体を蒸発させて気相の作動流体に相変化させる第1蒸発部及び第2蒸発部と、
    気相の作動流体を放熱により凝縮させて、液相の作動流体に相変化させる第1凝縮部及び第2凝縮部と、
    前記第1蒸発部で気相に変化した作動流体を、前記第1凝縮部へ流通させる第1蒸気管と、
    前記第1凝縮部で液相に変化した作動流体を、前記第2蒸発部へ流通させる第1液管と、
    前記第2蒸発部で気相に変化した作動流体を、前記第2凝縮部へ流通させる第2蒸気管と、
    前記第2凝縮部で液相に変化した作動流体を、前記第1蒸発部へ流通させる第2液管と、
    前記第1蒸気管と前記第2蒸気管とを接続するバイパス管と、
    を備えるループ型ヒートパイプ。
  2. 前記バイパス管は、前記第1凝縮部近傍の前記第1蒸気管の部分と、前記第2凝縮部近傍の前記第2蒸気管の部分と、を接続する請求項に記載のループ型ヒートパイプ。
  3. 前記バイパス管における作動流体の流通部分の断面積は、前記第1蒸気管及び第2蒸気管における作動流体の流通部分の断面積以下である請求項1又は2に記載のループ型ヒートパイプ。
  4. 前記バイパス管の前記断面積と、前記第1蒸気管及び第2蒸気管の前記断面積との比が、0.1〜1の範囲にある請求項に記載のループ型ヒートパイプ。
  5. 発熱体から受熱して、液相の作動流体を蒸発させて気相の作動流体に相変化させる第1蒸発部及び第2蒸発部と、気相の作動流体を放熱により凝縮させて、液相の作動流体に相変化させる第1凝縮部及び第2凝縮部と、前記第1蒸発部で気相に変化した作動流体を、前記第1凝縮部へ流通させる第1蒸気管と、前記第1凝縮部で液相に変化した作動流体を、前記第2蒸発部へ流通させる第1液管と、前記第2蒸発部で気相に変化した作動流体を、前記第2凝縮部へ流通させる第2蒸気管と、前記第2凝縮部で液相に変化した作動流体を、前記第1蒸発部へ流通させる第2液管と、前記第1蒸気管と前記第2蒸気管とを接続するバイパス管と、を備え、前記第1蒸発部が鉛直方向において前記第2蒸発部よりも上側に配置される、ループ型ヒートパイプの起動方法であって、
    前記第2蒸発部が受熱を開始してから所定の時間が経過した後、前記第1蒸発部の受熱を開始させる、ループ型ヒートパイプの起動方法。
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