JP5135693B2 - 回転電機 - Google Patents
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このため、ロータの高回転時には永久磁石の磁束を短絡して誘起電圧を抑制する発明としては従来、例えば特許文献1に記載のごときものが知られている。
特許文献1に記載の永久磁石式回転電機は、永久磁石の近傍に可動磁性体を設置しておき、ロータの高回転時には、永久磁石に可動磁性体を密着させることにより、永久磁石の磁束を短絡させて、誘起電圧を抑制するようにしたものである。
さらに可動磁性体等を進退動させるために必要な力が、何ら他の用途を為し得ず、有効利用されていない。
遠心力は、質量と速度の自乗とを乗算したものを半径で除算したものである。
しかしながら、この構成によれば、何らかの原因で可動磁性体が常態位置でスティック(固着)した場合、可動磁性体の質量が小さいことから、遠心力のみではスティックを解消することができず、永久磁石の磁束を短絡することができなくなるといった懸念もある。
可動磁性体を動かすための制御システムを不要とすることができ、
可動磁性体を進退動させるための力を、そのまま回転電機のトルクとして活用することができる回転電機を提案するものである。
ロータに複数の永久磁石を設け、ステータにコイルを設け、これらロータおよびステータ間で該ロータを駆動するためのロータトルクを発生する回転電機において、
該ロータトルクを用いて前記複数の永久磁石同士の磁束を短絡する磁束短絡機構を設けたことを特徴としたものである。
あるいは、ロータトルクが小さい時に回転数が大きい特性をもった回転電機では、小ロータトルクで永久磁石短絡機構を作動するよう設定しておくことにより、永久磁石同士の磁束を短絡することができる。
したがって、可動磁性体を動かすための制御システムが不要となり、構成の簡易化およびコスト低減を図ることができる。
また本発明の構成によれば、特許文献1に記載された可動磁性体の遠心力よりも大きなロータトルクによって、永久磁石短絡機構を作動させることが可能となる。したがって、磁性体がスティックしても確実に永久磁石の磁束を短絡させることができ、永久磁石短絡機能付き回転電機の作動信頼性を向上させることができる。
図1は本発明の回転電機が有する磁束短絡機構の一例につき、その概要を示す斜視図であり、(a)は永久磁石同士の磁束を短絡しない状態を示し、(b)は永久磁石同士の磁束を短絡した状態を示す。
本発明の回転電機は、ロータとして円筒形状のロータ1を具える。ロータ1は回転電機のトルク(ロータトルク)を発生する主要部品である。
(a)状態および(b)状態の双方で本発明の回転電機は、ロータ1のロータトルクを、図1に示しないロータ回転軸から出力する。
ロータ1の近傍には磁性体で形成した磁性ヨーク部材4を配置する。磁性ヨーク部材4は円環形状であって、その中心がロータ軸線と共通する。磁性ヨーク部材4は同一永久磁石3同士の磁束を短絡する磁束短絡機構の一部である。
磁性ヨーク部材4がロータ1に当接する間、図1(b)の二点鎖線(仮想線)で示すように磁性ヨーク部材4は永久磁石3、3同士の磁束を短絡する。そうすると、ロータ1が図示しないステータとの間で形成する磁気回路の磁束が減少し、ステータコイルに発生する誘起電圧を低減することができる。
図10中、横軸はロータ回転数を表し、縦軸はロータトルクを表す。図10に示すようにこの回転電機では、ロータ回転数が高いほどロータトルクが低くなることから、ロータトルクが所定の閾値以下の場合に磁束短絡機構が磁束を短絡するよう設定しておく。
磁性体突出部4tの先端はロータ1の軸線に対し直角な平面に形成されている。
永久磁石3,3同士の磁束を短絡する場合には、後述する磁性体移動手段が図2(a)の紙の上で、下向き矢で示すように、磁性ヨーク部材4をロータ1側へ移動し、図2(b)に示すように、磁性体突出部4tの先端をロータ1に設けた複数の永久磁石3に当接する。
上記のように磁性体突出部4tの先端は平面に形成されていることから、磁性体突出部4tは永久磁石3に確実に当接して、複数の永久磁石3,3同士の磁束を短絡する。
しかし、短絡しない状態では図3(a)に示すように、磁性体突出部4tの先端を永久磁石3から遠ざかるよう配置する構成において異なる。つまり短絡しない状態では磁性体突出部4tからロータ軸線方向に延長すると永久磁石3,3間を通過するよう、磁性ヨーク部材4tの周方向位置を規定する。
図4は、本発明の第1実施例になる回転電機を、ロータ軸線を含む平面で断面にして示す縦断面図である。
この実施例は、ステータ5とロータ1とをロータ径方向に配置したラジアルギャップ構造の回転電機である。ステータ5は、ロータ1のロータ外径側に配置される。つまり第1実施例の回転電機はインナーロータ型の回転電機である。
前述したように円筒形状のロータ1内部には、複数の永久磁石3を周方向に複数配列する。ステータコア8のコイル9に適宜通電するとステータコア8に磁束が発生し、ステータコア8の磁束が近傍の永久磁石3の磁束と磁気回路を形成する。これによりロータ1およびステータ5間で、ロータ1を駆動するためのロータトルク(ロータトルク)を発生する。ロータ回転軸10は、このロータトルクを車輪等図示しない負荷側に出力する。
コイル9は図示しないインバータおよびバッテリと電気的に接続し、図示しないインバータがコイル9に適宜通電するための制御を実行する。ロータトルクの大小の調整は、コイル9の通電制御により行う。
このカム機構はボールを用いて伝達トルクに応じたスラストを与える公知のものでよい。ロータ1はカム機構のカムディスクを兼用する。ロータ1の軸方向近傍にはカム機構のフォロワーディスクとなる軸方向可動部材16を配置する。これらロータ1と軸方向可動部材16との間にはカム機構のボール15を配置する。
図4に示す第1実施例の磁性ヨーク部材4は、前述した図3に示す形状である。ロータ1と向かい合う磁性ヨーク部材4の表面には磁性体突起4tを立設し、磁性体突起4tの先端をロータ1に向けて指向させる。なお、磁性ヨーク部材4は前述した図1〜図3に示すような円環形状であればよい。
ロータ回転軸10上であって、軸方向可動部材16から見てロータ1とは反対側になる部位には抜け止め用ナット18を結合する。ロータ1の孔1hのうち、軸方向可動部材16から遠い部位にはアンギュラー軸受2を設ける。そして、軸方向可動部材16およびロータ1間の距離が長くなりすぎないよう、抜け止め用ナット18はアンギュラー軸受2と相俟って、これら部材2,18間にあるロータ1および軸方向可動部材16がロータ回転軸10から抜け出ることを防止する。
別な言い方をすれば短絡しないことにより、磁気回路の磁束を大きくして、高トルク運転の実現を容易にする。
そこで、ロータトルクが上記閾値よりも小さいときは、前述した図3に示すように、磁性ヨーク部材4をロータ1に近づけて永久磁石3に当接させて磁気回路の磁束を小さくすることにより、誘起電圧を低減する。
具体的にはロータ回転軸10のロータトルクが所定の閾値未満である場合では、図5に示すように、皿バネ21に付勢された磁性ヨーク部材4がロータ1に押し付けられて永久磁石3の磁束を短絡する。これにより、誘起電圧の低減を実現して、高回転領域における運転を可能にする。
この場合、周方向溝19と20との間に挟圧されたボール15に、ロータトルクが作用すると、ロータ1が軸方向可動部材16に対して相対回動し、ボール15がロータトルクの大きさに応じて上記の波形上を移動して、これら周方向溝19と20との距離を変化させる。そして、ロータ1から見た軸方向可動部材16の軸方向位置が変化する。
このときボール15は伝達するトルクの大きさに応じて、軸方向可動部材16にロータ1から遠ざかるようスラストを与える。これに対し皿バネ21は、軸方向可動部材16にロータ1へ近づくよう付勢する。
図10中、破線で示す従来例では、誘起電圧を低減する制御を具えていないため、ロータの高回転領域がN1に制限される。
これに対し、実線で示す第1実施例では、磁性ヨーク部材4をロータ1に当接させるため、ロータの高回転領域をN2まで広げることができ(N1<N2)、運転性能を向上させることができる。
ロータトルクの大小に応じて永久磁石3の短絡状態と非短絡状態とを簡明直截に切り替えることが可能となり、磁性ヨーク部材4を動かすための制御システムが不要となって、構成の簡易化およびコスト低減を図ることができる。
図6は、本発明の第2実施例になる回転電機を、ロータ軸線を含む平面で断面にして示す縦断面図である。
この第2実施例はステータの外径側にロータを配置したアウターロータ型の回転電機であるが、ステータとロータとをロータ径方向に配置したラジアルギャップ構造の回転電機であるため基本構造は上述した第1実施例と共通する。そこで共通する部材には、同一符号を付し、部材毎の説明を省略する。
つまり、ロータ回転軸10の上記ロータトルクが所定の閾値以上である場合の通常の状態では、図6に示すように、このロータトルクが磁性ヨーク部材4をロータ1から離間して永久磁石3の磁束を短絡しない。
これに対し、ロータ回転軸10のロータトルクが所定の閾値未満である場合では、図7に示すように、皿バネ21に付勢された磁性ヨーク部材4がロータ1に押し付けられて永久磁石3の磁束を短絡する。
第3実施例の回転電機はステータ105を具える。ステータ105はステータブラケット107を介してケース7の内周壁に取り付けられる。ステータブラケット107を周方向に複数配置し、複数のステータコア108を周方向に配列する。
ロータ101には複数の永久磁石103を周方向に配列する。
そうすると、ステータコア108からの磁束が永久磁石103の磁束と一体になり、ロータ101およびステータ105間で磁気回路が形成され、ロータ101にロータトルクを与える。
磁性ヨーク部材104、ボール15、およびロータ101はカム機構を構成する。カムディスクを兼用するロータ101は、アンギュラー軸受2を介してロータ回転軸10に回動可能に支持される。抜け止めナット18によってロータ回転軸端部側に移動しないよう規制されたアンギュラー軸受2は、カム機構のボール15からのスラストを受け止める。
フォロワーディスクとなる磁性ヨーク部材104は、軸方向可動部材16に相当する円盤形状の部材であって、ロータ101の近傍にある。磁性ヨーク部材104をボールスプライン17でロータ回転軸10に取り付ける。ボールスプライン17は、ロータ回転軸10に対し磁性ヨーク部材104を軸方向に相対移動可能、かつ、周方向に相対回動不可とする。
磁性ヨーク部材104の外周縁をテーパとし、凹部101bを区画する永久磁石103の内周縁をテーパ孔とし、両者のテーパ角度を一致させる。
なお、凹部101bにあっては、ロータ軸方向に整列したロータ101と磁性ヨーク部材104との間に皿バネ21を設け、磁性ヨーク部材104がロータ101から離れるよう付勢する。
つまり、ロータ回転軸10の上記ロータトルクが所定の閾値以上である場合の通常の状態では、図8に示すように、このロータトルクが磁性ヨーク部材104をロータ101から離間して永久磁石103の磁束を短絡しない。
これに対し、ロータ回転軸10のロータトルクが所定の閾値未満である場合では、図9に示すように、皿バネ21に付勢された磁性ヨーク部材104がロータ101に押し付けられて永久磁石103の磁束を短絡する。
なお、テーパ形状は、図11(a)に限定されない。例えば図11(b)に示すように、磁性ヨーク部材104のテーパ形状104pを、磁性ヨーク部材104の軸方向一側部で形成して、短絡する磁束量を規定することが可能である。
あるいは、図11(c)に示すように、磁性ヨーク部材104のテーパ104pのテーパ角度と、永久磁石103のテーパ孔103pのテーパ角度とを異ならせて、短絡する磁束量を規定することが可能である。
ロータトルクに応動して選択的に短絡状態を実現することが可能となる。したがって、磁性ヨーク部材4を動かすための制御システムが不要となり、構成の簡易化およびコスト低減を図ることができる。
さらに、カム機構を作動するために用いたロータトルクで、そのままロータ回転軸10を駆動するため、永久磁石短絡機構を作動するために必要な力を有効利用することができる。
また、磁性ヨーク部材がスティックしても確実に永久磁石3の磁束を短絡させることができ、永久磁石短絡機構の作動信頼性を向上させることができる。
永久磁石3,3同士の磁束を短絡する場合には磁性体移動手段が磁性ヨーク部材4を永久磁石3に対し相対回動させて磁性体突出部4tの先端を永久磁石3に当接することから、
非短絡状態では図3(a)に示すように磁性体突出部4tを永久磁石3から確実に離間することができ、磁束の短絡を確実に遮断して、回転電機の高トルク運転に寄与することができる。
つまり図4〜図7に示すように、ロータ回転軸方向に移動するカム機構の軸方向可動部材16を、ロータ1の近傍に設け、軸方向可動部材16に磁性ヨーク部材4を取り付けた。
つまり図8〜図9に示すように、ロータ回転軸方向に移動するカム機構の軸方向可動部材16を、ロータ101の近傍に設け、軸方向可動部材16が磁性ヨーク部材104を兼用する。
ロータトルクに比例したスラストを軸方向可動部材16に与えてこの軸方向可動部材16をロータ1から遠ざけるカム機構を具えた第1〜第3実施例において、ロータトルクが小さくなれば、磁性ヨーク部材4を速やかにロータ1に当接させることができる。
磁性ヨーク部材によって短絡される永久磁石の磁束量を規定することができる。
例えば図示はしなかったが、図11(a)〜(c)の技術は第1実施例〜第2実施例にも適用可能である。つまり、ロータ1と磁性ヨーク部材4とを、少なくとも一部においてロータ回転軸線方向に重合させて配置し、磁性ヨーク部材4のうちロータ1に当接する部分、またはロータ1のうち磁性ヨーク部材4に当接する部分の少なくとも一方を、他方に向けてテーパ形状としてもよい。
また、上述した各実施例では、ロータトルクが所定の閾値よりも大きいかあるいは小さいかによって短絡または非短絡の2段階に変化する構成であるが、その他にも磁性ヨーク部材4を複数具えて短絡の度合い3段階以上で変化する構成でもよい。
2 アンギュラー軸受
3 103 永久磁石
4 104 磁性ヨーク部材
5 105 ステータ
7 回転電機ケース
8 108 ステータコア
9 109 コイル
10 ロータ回転軸
15 カム機構のボール
16 軸方向可動部材
17 ボールスプライン
21 皿バネ
Claims (6)
- ロータに複数の永久磁石を設け、ステータにコイルを設け、これらロータおよびステータ間で該ロータを駆動するためのロータトルクを発生する回転電機において、
前記ロータは、ロータ回転軸の外周に相対回転可能に支持し、
前記ロータトルクを用いて前記複数の永久磁石同士の磁束を短絡する磁束短絡機構を設け、
該磁束短絡機構は、
前記ロータ回転軸に対してロータトルクを伝達可能であると共に軸方向に相対移動可能に支持された軸方向可動部材に設けられて、該軸方向可動部材の軸方向の移動により複数の永久磁石同士の磁束を短絡する磁性ヨーク部材と、
該磁性ヨーク部材および前記ロータ間の距離を前記ロータトルクに応じて変化させる磁性体移動手段と、を具え、
該磁性体移動手段は、
前記ロータと前記軸方向可動部材との間に介在されて、前記ロータトルクを前記軸方向可動部材に伝達すると共に、前記ロータトルクに応じて前記軸方向可動部材が前記ロータから遠ざかるようスラストを与える周方向溝とボールとを備えたカム機構と、
前記軸方向可動部材を、前記ロータに近づくよう付勢する付勢手段と、
を具えていることを特徴とする回転電機。 - 請求項1 に記載の回転電機において、
前記磁性体移動手段は、前記ロータトルクが小さくなるほど、前記軸方向可動部材を前記ロータから遠ざけるスラスト力も小さくなる構造であることを特徴とする回転電機。 - 請求項1または請求項2に記載の回転電機において、
前記磁性ヨーク部材に磁性体突出部を周方向に複数設け、
前記永久磁石同士の磁束を短絡しない場合には前記磁性体突出部の周方向位置と前記永久磁石の周方向位置とを異ならせ、
前記永久磁石同士の磁束を短絡する場合には前記磁性体移動手段が前記磁性ヨーク部材を永久磁石に対し相対回動させて前記磁性体突出部の先端を前記永久磁石に当接することを特徴とする回転電機。 - 請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の回転電機において、
前記ステータと前記ロータとを前記ロータ回転軸と直角なロータ径方向に配置してラジアルギャップ構造としたことを特徴とする回転電機。 - 請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の回転電機において、
前記ステータと前記ロータとをロータ回転軸に沿う方向に配置してアキシャルギャップ構造としたことを特徴とする回転電機。 - 請求項4または請求項5に記載の回転電機において、
前記ロータと、前記磁性ヨーク部材とを、少なくとも一部においてロータ回転軸線方向に重合させて配置し、前記磁性ヨーク部材のうち前記ロータに当接する部分、または該ロータのうち該磁性ヨーク部材に当接する部分の少なくとも一方を、他方に向けてテーパ形状としたことを特徴とする回転電機。
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