JP5132248B2 - 香料含有ワックス可溶化組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、香料を内包したワックスが固体〜半固体状で水系分散媒中に微細分散してなる香料含有ワックス可溶化組成物に関する。本発明は特に、香料の放出速度を制御して徐放性効果を高めることで、香りの持続性を向上させ、また、皮膚刺激を抑え、安全で、かつ安定性に優れる香料含有ワックス可溶化組成物に関する。
一般に香料組成物は、香料成分0.1〜20質量%を低級アルコール中に可溶化することで調製していた(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、アルコールに可溶化した基剤はアルコール臭が強い、あるいは匂い立ちが早く香りの持続性に欠ける等の問題があった。
一方、化粧品において、ワックス配合によるべたつき、ぎらつき等の欠点を解消するために、ワックスを溶媒中に微細分散させてワックスエマルジョンとして用いることで、上記欠点の解消に加え、安定性、安全性にも優れるワックス微細分散組成物を得るという技術が本出願人により提案されている(例えば、特許文献2〜4参照)。
特許第3713626号公報 特開平10-324617号公報 特開平11-286418号公報 特開平11-263915号公報
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的はアルコール臭を抑えるとともに、香料を徐放することによって、香りの持続性を高め、また、皮膚刺激を低減し、安全性に優れ、かつ、安定性にも優れる香料組成物を提供することにある。
上記課題を解決するために本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、微細ワックス中に香料を内包させ、これを水系分散媒中に分散させることで、いわば香料を微細ワックスで被覆し、このような構造の微細ワックスにより内包された香料のワックス外部への浸透速度を制御し、香料を徐放させることで、香りの持続性を高め、皮膚への刺激性もなく、安全で、しかも安定性に優れ、さらに、特定範囲のHLBの非イオン界面活性剤を用いることで透明な液相の組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、常温で固体〜半固体のワックスと、非イオン界面活性剤と、水系分散媒と、香料を含有し、ワックスが香料を内包して固体〜半固体状で水系分散媒中に微細分散してなる、香料含有ワックス可溶化組成物を提供する。
また本発明は、全非イオン界面活性剤の加重平均したHLBが11〜14である、上記香料含有ワックス可溶化組成物を提供する。
また本発明は、非イオン界面活性剤として、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンヒマシ油またはポリオキシエチレン硬化ヒマシ油およびその誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類の中から選ばれる1種または2種以上を含む、上記香料含有ワックス可溶化組成物を提供する。
また本発明は、常温で固体〜半固体のワックスと、非イオン界面活性剤と、水系分散媒と、香料を含有する系を、ワックスの融点以上、可溶化温度範囲に加温した後、常温に冷却して得られたものである、上記香料含有ワックス可溶化組成物を提供する。
また本発明は、さらに両性界面活性剤、半極性界面活性剤の中から選ばれる1種または2種以上を含有する、上記香料含有ワックス可溶化組成物を提供する。
また本発明は、上記いずれかの香料含有ワックス可溶化組成物を含む皮膚外用剤を提供する。
本発明により、香料の放出速度を制御して徐放性効果を高めることで、香りの持続性を向上させ、また、皮膚刺激を抑え、安全で、かつ安定性に優れる香料含有ワックス可溶化組成物、および該組成物を配合した皮膚外用剤が提供される。
以下、本発明について詳述する。
なお以下の記載において、「POE」はポリオキシエチレンを、「POP」はポリオキシプロピレンを、それぞれ意味する。
本発明の香料含有ワックス可溶化組成物は、常温で固体〜半固体のワックスと、非イオン界面活性剤と、水系分散媒と、香料を含有し、ワックスが香料を内包して固体〜半固体状で水系分散媒中に微細分散してなるものである。
〈ワックス〉
本発明で用いられるワックスは、常温で固体〜半固体の性状をなし、具体例として、ミツロウ、キャンデリラロウ、綿ロウ、カルナウバロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、鯨ロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、ラノリン、カポックロウ、モウロウ、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、還元ラノリン、ジョショバロウ、硬質ラノリン、セラックロウ、ビーズワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、POEコレステロールエーテル、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、脂肪酸グリセリド、硬化ヒマシ油、ワセリン、POE水素添加ラノリンアルコールエーテル等が挙げられる。ただしこれら例示に限定されるものでない。
なお、これらのワックスは混合して用いることが可能であり、他の固形状あるいは液状油分などを混合しても常温において固体〜半固体状である範囲で使用可能である。
このような油分としては、次のようなものが挙げられる。ただしこれら例示に限定されるものでない。
液体油脂としては、アボガド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリン、テトラオクタン酸ペンタエリスリット、トリイソパルミチン酸グリセリン等がある。
固体油脂としては、カカオ脂、ヤシ油、硬化ヤシ油、パーム油、パーム核油、モクロウ核油、硬化油等がある。炭化水素油としては、流動パラフィン、オゾケライト、スクワレン、プリスタン、パラフィン、スクワラン等がある。
本発明におけるワックスの配合量は、組成物全量中に0.01〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜15質量%、特には0.1〜10質量%である。0.01質量%未満では香りの徐放性の低下につながり、一方、20質量%を超えて配合した場合、系の安定性の低下につながる可能性がある。
〈非イオン界面活性剤〉
非イオン界面活性剤としては、一般に化粧料に用いられ得るものであれば特に限定されるものでないが、本発明では全非イオン界面活性剤の加重平均したHLBが11〜14であることが好ましく、特に好ましくはHLBが12〜13である。HLBが上記範囲の非イオン界面活性剤を用いることで、可溶化された透明な組成物が得られる。HLBは下記数1
Figure 0005132248
(ただし、MWは親水基部の分子量を表し、MOは親油基部の分子量を表す)
で表される川上式により算出される。
本発明で用いられる非イオン界面活性剤の具体例としては、例えば、POEソルビタンモノオレエート、POEソルビタンテトラオレエート等のPOEソルビタン脂肪酸エステル類;POEソルビットPOEソルビットモノラウレート、POEソルビットモノオレエート、POEソルビットペンタオレエート、POEソルビットモノステアレート等のPOEソルビット脂肪酸エステル類;POEグリセリンモノステアレート、POEグリセリンモノイソステアレート、POEグリセリントリイソステアレート等のPOEグリセリン脂肪酸エステル類;POEモノオレエート、ジステアリン酸エチレングリコール等のPOE脂肪酸エステル類;POEラウリルエーテル、POEオレイルエーテル、POEステアリルエーテル、POEベヘニルエーテル、POE2−オクチルドデシルエーテル、POEコレスタノールエーテル等のPOEアルキルエーテル類;POEオクチルフェニルエーテル、POEノニルフェニルエーテル、POEジノニルフェニルエーテル等のPOEアルキルフェニルエーテル類;POE・POPセチルエーテル、POE・POPベヘニルエーテル、POE・POP2−デシルテトラデシルエーテル、POE・POPモノブチルエーテル、POE・POP水添ラノリン、POE・POPグリセリンエーテル等のPOE・POPアルキルエーテル類;プルロニック等のプルロニック類;テトロニック等のテトラPOE・テトラPOPエチレンジアミン縮合物類;POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油、POE硬化ヒマシ油モノイソステアレート、POE硬化ヒマシ油トリイソステアレート、POE硬化ヒマシ油モノピログルタミン酸モノイソステアリン酸ジエステル、POE硬化ヒマシ油マレイン酸等のPOEヒマシ油またはPOE硬化ヒマシ油およびその誘導体;POEソルビットミツロウ等のPOEミツロウ・ラノリン誘導体;ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸モノエタノールアミド、脂肪酸イソプロパノールアミド等のアルカノールアミド;POEプロピレングリコール脂肪酸エステル、POEアルキルアミン、POE脂肪酸アミド、ショ糖脂肪酸エステル、POEノニルフェニルホルムアルデヒド縮合物、アルキルエトキシジメチルアミンオキシド、トリオレイルリン酸などが挙げられる。
中でもPOEアルキルエーテル類、POEヒマシ油またはPOE硬化ヒマシ油およびその誘導体、POE・POPアルキルエーテル類等が好ましい。
本発明における非イオン界面活性剤の配合量は、組成物全量中に0.01〜40質量%が好ましく、特に好ましくは0.1〜30質量%である。0.01質量%未満では、油分の可溶化が困難となりがちであり、一方、40質量%を超えて配合した場合、使用感の低下につながる。
〈水系分散媒〉
本発明において、上記ワックスは微粒子として水系分散媒中に微細分散される。この水系分散媒としては、水単独で、あるいは水とエタノール、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、ムコイチン硫酸、カロニン酸、アテロコラーゲン、コレステリル−12−ヒドロキシステアレート、乳酸ナトリウム、胆汁酸塩、短鎖可溶性コラーゲン、ジグリセリン(EO)PO付加物、イザヨイバラ抽出液、セイヨウノコギリソウ抽出液、メリロート抽出液等との混合液などが挙げられる。なおワックス微粒子(=微細ワックス)の粒径は500nm以下の微細ワックスで分散されるのが好ましい。
〈香料〉
本発明において微細ワックスに内包される香料は、特に限定されるものでなく、香水、コロン、浴用剤、各種クリーナー、衛生用品、線香、芳香剤など、主に食品以外で芳香を付与するために通常用いられている香料を広く使用することができ、動物系、植物系、鉱物系の天然香料および合成香料とも使用可能である。具体的には、天然香料としては、例えば、アニス油、バジル油、ベルガモット油、ボアドローズ油、カナンガ油、セダーウッド油、カモミール油、シナモン油、クローブ油、エレミ油、ユーカリ油、ゼラニウム油、グレープフルーツ油、ヒノキ油、ジャスミン油、ローレル油、ラバンジン油、ラベンダー油、レモン油、ライム油、マンダリン油、シトラス油、マジョラム油、ペパーミント油、スペアミント油、オレンジ油、パチュリ油、ペッパー油、ネロリ油、ローズ油、ローズマリー油、セージ油、ハッカ油、サンダルウッド油、タジェット油、バレリアン油、ベチバー油、イランイラン油、ユズ油等が挙げられ、合成香料としては、例えば、リモネン、β−カリオフィレン、シス−3−ヘキセノール、リナロール、ファルネソール、β−フェニルエチルアルコール、シトラール、リラール、リリアール、L−カルボン、イロン、シクロペンタデカノン、リナリルアセテート、ベンジルベンゾエート、オイゲノール、ローズオキサイド、メントール、ベンジルアセテート、メチルジャスモネート、ジャスミンラクトン等が挙げられるが、これら例示に限定されるものでない。香料は1種または2種以上を用いることができる。
本発明における香料の配合量は、組成物全量中に0.001〜30質量%が好ましく、特に好ましくは0.01〜20質量%である。0.001質量%未満では、香料の効果が十分に発揮され難く、一方、30質量%を超えて配合しても、配合量の増加に見合ったさらなる効果の向上は期待できない。
〈他の配合成分〉
本発明では上記必須成分の他に、さらに所望により、界面活性剤として、両性界面活性剤、半極性界面活性剤の中から選ばれる1種または2種以上の界面活性剤を配合してもよい。
両性界面活性剤としては下記式(I)〜(V)で示すものが、半極性界面活性剤としては下記式(VI)で示すものが、それぞれ例示される。ただしこれら例示に限定されるものでない。
式(I):
Figure 0005132248
で表されるアミドベタイン型両性界面活性剤。市販品として「レボン2000」(三洋化成(株)製)、「アノンB DF」(日本油脂(株)製)などが挙げられる。
式(II):
Figure 0005132248
で表されるアミドスルホベタイン型両性界面活性剤。市販品として「ロンザイン−CS」(ロンザ社製)、「ミラタインCBS」(ミラノール社製)、「ソフダゾリンLHL−SF」(旭化成ケミカルズ(株)製)などが挙げられる。
式(III):
Figure 0005132248
で表されるベタイン型両性界面活性剤。市販品として「アノンBL」(日本油脂(株)製)、「デハイントンAB−30」(ヘンケル社製)などが挙げられる。
式(IV):
Figure 0005132248
で表されるスルホベタイン型両性界面活性剤。市販品として「ロンザイン12CS」(ロンザ社製)などが挙げられる。
式(V):
Figure 0005132248
で表されるイミダゾリニウム型両性界面活性剤。市販品として「オバゾリン662−N」(東邦化学(株)製)、「アノンGLM」(日本油脂(株)製)などが挙げられる。
式(VI):
Figure 0005132248
で表される第3級アミンオキサイド型半極性界面活性剤。市販品として「ユニセーフA−LM」(日本油脂(株)製)、「ワンダミンOX−100」(新日本(株)製)などが挙げられる。
ただし、上記式(I)〜(VI)において、R1は平均炭素原子数9〜21のアルキル基またはアルケニル基であり、好ましくは平均炭素原子数11〜17のアルキル基またはアルケニル基、より好ましくは平均炭素原子数11〜13のアルキル基またはアルケニル基である。平均炭素原子数が9未満では親水性が強すぎ、一方21を超えると水への溶解性が低下する。R2およびR3は平均炭素原子数10〜18のアルキル基またはアルケニル基を表す。pは2〜4の整数、qは0〜3の整数、sは1または2の整数を表す。本発明においては、これらの両性界面活性剤、半極性界面活性剤のうち任意の1種または2種以上を用いることができる。
本発明において両性界面活性剤、半極性界面活性剤の中から選ばれる1種または2種以上を配合する場合、その配合量は組成物全量中に0.01〜10質量%が好ましく、特に好ましくは0.1〜5質量%である。0.01質量%未満では、香りの徐放性の低下につながり、一方、10質量%を超えて配合した場合、使用性の低下につながる。
なお本発明では、本願発明効果をより効率よく達成するためには、カチオン界面活性剤は、実質的に配合しないのが望ましい。
本発明では任意添加成分としてさらに、通常皮膚外用剤等の化粧料に添加し得る成分を必要に応じて適宜配合することができる、このような任意添加成分としては、例えば、多価アルコール(グリセリンなど)等の保湿剤、香料、pH調整剤、防腐剤、紫外線吸収剤、油溶性薬剤(例えば、レチノール、酢酸トコフェロール等)、各種粉末、水溶性高分子(例えば、天然の水溶性高分子、半合成の水溶性高分子、合成の水溶性高分子、無機の水溶性高分子、等)、シリコーン系化合物等が挙げられるが、ただしこれら例示に限定されるものでない。
〈製造方法〉
本発明組成物では、ワックスが香料を内包して固体〜半固体状で水系分散媒中に微細分散している。このような香料組成物の製造方法は、特に限定されるものでないが、例えば以下に示す製造方法が好適例として挙げられる。
すなわち、ワックスと、非イオン界面活性剤と、水系分散媒と、香料を含有する系を、ワックスの融点以上、可溶化温度範囲に加温した後、常温に冷却して得る製造方法である。より具体的には、例えば、イオン交換水に非イオン界面活性剤を溶解し、80〜90℃に加熱してカルナバワックス、香料を添加し、10分間程度〜1時間程度プロペラ攪拌した後、氷冷し、本発明組成物を得る。これにより、水分散媒中に微細ワックス内に香料が内包された形で分散する。なおこの具体例に示す条件に限定されるものでないことはもちろんである。
上記製造方法以外にも、ワックスと、非イオン界面活性剤と、水系分散媒と、香料を含有する系を、ワックスの融点以上で高剪断力乳化機を用いて調製してもよい。強力な剪断力を与え得る乳化機、例えば高圧ホモジナイザーを用いる場合には、400気圧以上の圧力下で乳化するのが好ましいが、さらに好ましくは、ワックスの融点以上の温度で600気圧以上の圧力下で乳化することが好ましい。
本発明として、可溶化透明化粧水、アルコールフリーフレグランス等が好適例として挙げられる。ただしこれに限定されるものでない。
本発明について以下に実施例を挙げてさらに詳述するが、本発明はこれによりなんら限定されるものではない。配合量は特記しない限り、その成分が配合される系に対する質量%で示す。
[実施例1]:ワックス微細分散物の調製
下記表1に示す組成の香料組成物を調製した。すなわち、イオン交換水に界面活性剤を溶解し、80〜90℃に加熱してキャンデリラワックス、香料を添加し、10分間プロペラ攪拌した。その後、氷冷し、香料組成物を得た(表1の試験例1〜9)。
これら香料組成物を室温にて1時間静置した後に、目視で外観を観察した。また安定性については50℃で1週間放置した後の外観を目視で観察し、下記基準により評価した。結果を表1に示す。
(安定性評価基準)
○:調製直後と状態の変化なし
△:やや分離がみられた
×:分離がみられた
Figure 0005132248
表1に示す結果から明らかなように、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤のいずれも、各活性剤単独での使用では乳化組成物が白濁する傾向があり、安定性も好ましくない(試験例1、2)。また、カチオン界面活性剤と、非イオン界面活性剤を組み合せた場合(試験例5)、あるいはカチオン界面活性剤またはアニオン界面活性剤と、両性界面活性剤を組合せた場合(試験例8、9)も、同様である。しかし、非イオン界面活性剤のみ、あるいは非イオン界面活性剤と両性界面活性剤を組合せた場合には(試験例3、7)、乳化組成物の外観が透明となり、ワックスの微細分散組成物が得られた。また安定性も良好であった。動的光散乱法による測定の結果、この微細分散物の粒子径は30nmであった。
[実施例2]:非イオン界面活性剤の至適HLB
下記基本処方1において、非イオン界面活性剤のHLBを表2に示すように変化させてその乳化状態を調べ、非イオン界面活性剤の至適HLBについて検討した。
<基本処方1>
キャンデリラワックス 10質量%
香料 3質量%
アミドベタイン型両性界面活性剤 1.5質量%
非イオン界面活性剤(表2に示す各非イオン界面活性剤) 13.5質量%
イオン交換水 72質量%
(試験方法)
イオン交換水に界面活性剤を溶解し、80〜90℃に加熱してキャンデリラワックス、香料を添加し、10分間プロペラ攪拌した。その後、氷冷し、香料組成物を得た。
これら香料組成物を室温にて1時間静置した後に、目視で外観(乳化状態)を観察した。結果を表2に示す。
Figure 0005132248
表2の結果から明らかなように、非イオン界面活性剤のHLBが10以上、15まで均一な乳化系の形成が可能であることがわかる。また非イオン界面活性剤のHLBが11〜14で透明〜半透明な一液相の系が得られ、特に透明系を得るためにはHLB12〜13であることが確認された。
[実施例3]:非イオン界面活性剤の種類と分散状態
上記基本処方1において、非イオン界面活性剤としてPOE直鎖アルキルエーテル、POE分岐鎖アルキルエーテルを用い、そのPOE付加モル数を変化させることでHLBを9〜15の間で変化させて、下記評価基準により評価した。結果を表3に示す。
(試験方法)
イオン交換水に界面活性剤を溶解し、80〜90℃に加熱してキャンデリラワックス、香料を添加し、10分間プロペラ攪拌した。その後、氷冷し、香料組成物を得た。
これら香料組成物を室温にて1時間静置した後に、目視で外観を観察した。結果を表3に示す。
(評価)
○: 透明な一液相を形成した
△: 半透明ないし均一なクリーム状を示した
×: 分離した。
Figure 0005132248
表3に示す結果から明らかなように、各非イオン界面活性剤を単独で用いた場合には、概ねHLBが11〜14で透明な一液相を形成し得ることがわかった。
[比較例1]
さらに、本発明者らはPOEコレステリル、POEグリセリル、POE硬化ヒマシ油等について検討を行ったが、これらの多鎖型非イオン界面活性剤単独では、透明な一液相を調整することは困難であった。
むろん、これらの多鎖型非イオン界面活性剤にあっても他の非イオン界面活性剤との組合せにより好適な分散系を得ることは可能である。特にPOE直鎖ないしPOE分岐脂肪酸エーテルが好適に用いられる。
[実施例4]: 安全性
安全性については卵白アルブミン変性率から評価した。すなわち、水系高速液体クロマトグラフィを利用し、卵白アルブミンpH緩衝溶媒に、試料濃度1質量%になるように、下記表4に示す試料(界面活性剤)を加えた場合の、卵白アルブミン変性率220nmの吸収ピークを用いて測定し、下記数2により算出して評価した。
[数2]
[(H0−Hs)/Ho]×100
Ho:卵白アルブミンの220nm吸収ピークの高さ
Hs:卵白アルブミン緩衝溶媒に試料を加えた時の220nm吸収ピークの高さ。
(評価基準)
◎:皮膚刺激性が非常に少ない(卵白アルブミン変性率30%未満)
○:皮膚刺激が少ない(卵白アルブミン変性率30%以上60%未満)
△:皮膚刺激が中程度(卵白アルブミン変性率60%以上80%未満)
×:皮膚刺激が強い(卵白アルブミン変性率80%以上)。
結果を表4に示す。なお表4中、「レボン2000SF」(*)(三洋化成(株)製)はアミドベタイン型両性界面活性剤である。
Figure 0005132248
表4の結果から明らかなように、両性界面活性剤と非イオン界面活性剤の組合せは、非イオン界面活性剤と同レベルで皮膚刺激性が少なく安全性が高い。したがって、両界面活性剤を併用したワックスの微分散物は安全性が高いことが示唆される。
[実施例5]: 経時安定性
下記基本処方2において、非イオン界面活性剤を下記表5に示すように変化させて、系の安定性について下記評価基準により評価した。
<基本処方2>
キャンデリラワックス 10質量%
界面活性剤(表5に示す各界面活性剤) 15質量%
シトラス油 3質量%
両性界面活性剤 (表5に示す配合量)
イオン交換水 残 部
合計 100質量%
(試験方法)
イオン交換水に界面活性剤を溶解し、80〜90℃に加熱してキャンデリラワックス、シトラス油を添加し、10分間プロペラ攪拌した。その後、氷冷し、透明一液相のワックスの微細分散物を調製した。このワックス微細分散物(試料1〜7)を50℃で1週間放置した後の状態を目視により観察し、下記評価基準により経時安定性を評価した。結果を表5に示す。
(評価)
○: 調製直後と変わらず、状態の変化なし
×: 分離した。
Figure 0005132248
[実施例6]: 香りの徐放性の効果
専門パネル20名により、アルコールに香料を溶解させた通常のフレグランス(処方A)と、微細ワックスに香料を内包した香料含有ワックス可溶化組成物(処方B)を、それぞれ前腕内側部に0.5μL/cm2のサンプルを塗布して、塗布直後、塗布後1時間経過後、塗布後5時間経過後での、香りの強さを比較して評価してもらった。結果を表6に示す。
<処方A(対照例)>
ローズマリー油 3質量%
エタノール 97質量%
<処方B>
キャンデリラワックス 10質量%
POE硬化ヒマシ油 15質量%
ローズマリー油 3質量%
イオン交換水 72質量%
Figure 0005132248
以下にさらに本発明の処方例を示す。
[実施例7]
(配 合 成 分) (質量%)
(1)カルナバワックス 7
(2)POE(20)ベヘニルエーテル 12
(3)ヤシ油脂肪酸アミドジメチルアミノ酢酸ベタイン(有効分30質量%)2
(商品名:「レボン2000SF」;三洋化成(株)製)
(4)イオン交換水 残部
(5)オレンジ油 3
(6)パラベン 0.2
(製法)
(1)〜(3)、(5)、(6)、および(4)の一部を約95℃で攪拌混合し、透明性を帯びた後、氷冷し、次いでここに(4)の残部を添加して香料含有ワックス可溶化組成物を得た。
[実施例8]
(配 合 成 分) (質量%)
(1)カルナバワックス 3
(2)POE(10)ベヘニルエーテル 16
(3)PPG−13デシルテトラデセス−24 3
(4)キャンデリラワックス 4
(5)イオン交換水 残部
(6)シトラス油 2
(7)ローズマリー油 2
(8)パラベン 0.2
(製法)
(1)、(2)、(6)、(8)、および(5)の一部を約95℃で攪拌混合し、透明性を帯びた後、氷冷した後、(5)の残りの一部を添加して香料含有ワックス微細分散物Aを得た。一方、(3)、(4)、(7)、および(5)の残部を攪拌混合し、透明性を帯びた後、氷冷しワックス微細分散物Bを得た。AとBを混合して、AとBの匂い立つ速度の異なる香料含有ワックス可溶化組成物を得た。
[実施例9]
(配 合 成 分) (質量%)
(1)カルナバワックス 5
(2)POE・POPセチルエーテル 18
(3)キャンデリラワックス 4
(4)イオン交換水 残部
(5)シトラス油 5
(6)ローズマリー油 1
(7)パラベン 0.5
(製法)
(1)、(2)、(5)、(7)、および(4)の一部を約95℃で攪拌混合し、透明性を帯びた後、氷冷しワックスの微細分散物を得た後に(4)の残りの一部を微細分散物に添加して香料含有ワックス微細分散物Aを得た。一方、(2)、(3)、(6)、および(4)の残りの一部を95℃で攪拌混合し、透明性を帯びた後、氷冷した後、(4)の残部を添加して香料含有ワックス微細分散物Bを得た。AとBを混合して、AとBの匂い立つ速度の異なる香料含有ワックス可溶化組成物を得た。

Claims (4)

  1. 常温で固体〜半固体のワックスと、全非イオン界面活性剤の加重平均したHLBが11〜14である非イオン界面活性剤と、水系分散媒と、アニス油、バジル油、ベルガモット油、ボアドローズ油、カナンガ油、セダーウッド油、カモミール油、シナモン油、クローブ油、エレミ油、ユーカリ油、ゼラニウム油、グレープフルーツ油、ヒノキ油、ジャスミン油、ローレル油、ラバンジン油、ラベンダー油、レモン油、ライム油、マンダリン油、シトラス油、マジョラム油、ペパーミント油、スペアミント油、オレンジ油、パチュリ油、ペッパー油、ネロリ油、ローズ油、ローズマリー油、セージ油、ハッカ油、サンダルウッド油、タジェット油、バレリアン油、ベチバー油、イランイラン油、ユズ油、リモネン、β−カリオフィレン、シス−3−ヘキセノール、リナロール、ファルネソール、β−フェニルエチルアルコール、シトラール、リラール、リリアール、L−カルボン、イロン、シクロペンタデカノン、リナリルアセテート、ベンジルベンゾエート、オイゲノール、ローズオキサイド、メントール、ベンジルアセテート、メチルジャスモネート、ジャスミンラクトンの中から選ばれる1種または2種以上の香料を含有する系を、ワックスの融点以上、可溶化温度範囲に加温した後、常温に冷却して得たものである、ワックスが香料を内包して固体〜半固体状で水系分散媒中に微細分散してなる香料含有ワックス可溶化組成物。
  2. 非イオン界面活性剤として、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンヒマシ油またはポリオキシエチレン硬化ヒマシ油およびその誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類の中から選ばれる1種または2種以上を含む、請求項1記載の香料含有ワックス可溶化組成物。
  3. さらに両性界面活性剤、半極性界面活性剤の中から選ばれる1種または2種以上を含有する、請求項1または2記載の香料含有ワックス可溶化組成物。
  4. 請求項1〜のいずれか1項に記載の香料含有ワックス可溶化組成物を含む皮膚外用剤。
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