JP3949810B2 - ワックスの微細分散組成物および毛髪化粧料ならびにつや出し剤 - Google Patents

ワックスの微細分散組成物および毛髪化粧料ならびにつや出し剤 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はワックスの微細分散組成物、特に安定性に優れ、かつ皮膚刺激の少ない安全性の良好なワックスの微細分散組成物およびそれを含有する毛髪化粧料ならびにつや出し剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
ワックスは常温で固体ないし半固体の油分であり、その皮膜は撥水性を有するため、化粧品、塗料などの分野に広く用いられている。
たとえば化粧品に用いる場合、ワックス自体をベースとして用いる場合もあるが、塗布部分のべたつきが著しくなり、またギラツキ等を生じることもあるため、各種エマルションとして用いることが多い。
ワックスを微細分散させる技術として、従来はたとえば特開平3−2112、特開平4−230616、特開平5−220383、特開平7−173025号などに示されるものがあった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらに示されているものは、非イオン系又はアニオン系、あるいはカチオン系界面活性剤を用いて微細分散物を調製するものであり、非イオン界面活性剤単独では、皮膚刺激等安全性は良好なものの、温度により、系のHLBが変化し、経時安定性が損なわれる欠点がある。
【0004】
また、非イオン界面活性剤とアニオン界面活性剤との組合せやアニオン界面活性剤単独、あるいはカチオン界面活性剤単独で微細分散物を調製する場合においては、温度安定性は向上するものの、皮膚刺激等の安全性に対して問題が生じることが考えられる。
本発明は前記従来技術の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、広い温度範囲で安定であり、かつ皮膚刺激等、安全性の良好なワックスの微細分散組成物およびそれを含有する毛髪化粧料ならびにつや出し剤を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために本発明者らが鋭意検討を行ったところ、HLBが12〜15の非イオン界面活性剤と両性界面活性剤を併用することにより、ワックスの微細分散組成物を調製することが可能であることを見出し、さらに本微細分散組成物は、安全性が高く、特に毛髪化粧料として利用すると調整力、毛髪の滑らかさ等に関し優れた特徴を持つことを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明にかかるワックスの微細分散組成物は、両性界面活性剤および/又は半極性界面活性剤と、HLBが12〜15の非イオン界面活性剤と、常温で固体ないし半固体の油分であるワックスと水系分散媒とを含み、かつ水系分散媒中にワックスが固体ないし半固体状で微細分散していることを特徴とする。
【0006】
また、前記ワックス微細分散物においては、配合される全非イオン界面活性剤の加重平均したHLBが12〜15であることが好適である。また、本発明にかかる組成物においては、両性界面活性剤/(両性界面活性剤+非イオン界面活性剤)の重量比が0.04〜0.2であることが好適である。また、本発明にかかる組成物においては、両性界面活性剤/(両性界面活性剤+非イオン界面活性剤)の重量比が0.04〜0.17であることがとくに好適である。また、本発明にかかる組成物において、ワックスは常温で固体ないし半固体の油分であることを特徴とする。また、本発明にかかるワックスの微細分散組成物においては、水系分散媒を含み、かつ前記ワックスが水系分散媒中に固体ないし半固体の状態で微細分散していることを特徴とする。また、本発明にかかるワックスの微細分散組成物においては、非イオン界面活性剤としてポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルを含むことが好適である。また、前記ワックスの微細分散組成物においては、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルが下記一般式(1):
【化3】
Figure 0003949810
および/または、下記一般式(2):
【化4】
Figure 0003949810
(ただし、Rは炭素数12〜24のアルキル基またはアルケニル基を表し、mは5≦m≦30、nは0<n≦5の範囲にある)で表されることが好適である。また、本発明にかかるワックスの微細分散組成物は、系をワックスの融点以上、可溶化温度範囲に加温した後、常温に冷却して得ることができる。また、本発明にかかるワックスの微細分散組成物は、ワックスの融点以上で高剪断力の乳化機を用いて調製することもできる。また、本発明にかかる毛髪化粧料は、前記ワックスの微細分散組成物を含むことを特徴とする。また、本発明にかかるつや出し剤は、前記ワックスの微細分散組成物を含むことを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態をさらに詳細に説明する。
固形ワックス
本発明においてワックスとは常温にて固形の油分を意味し、具体的にはミツロウ、キャンデリラロウ、綿ロウ、カルナウバロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、鯨ロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、ラノリン、カポックロウ、モクロウ、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、還元ラノリン、ジョジョバロウ、硬質ラノリン、セラックロウ、ビースワックス、マイクロクリスリンワックス、パラフィンワックス、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、POEコレステロールエーテル、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、脂肪酸クリセリド、硬化ヒマシ油、ワセリン、POE水素添加ラノリンアルコールエーテル等がある。
なお、これらのワックスは混合して用いることが可能であり、他の固形状あるいは液状油分などを混合しても常温において固形である範囲で使用可能である。
【0008】
このような油性成分としては、次のようなものが挙げられる。
液体油脂としては、アボガド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリン、テトラオクタン酸ペンタエリスリット、トリイソパルミチン酸グリセリン等がある。
【0009】
固体油脂としては、カカオ脂、ヤシ油、硬化ヤシ油、パーム油、パーム核油、モクロウ核油、硬化油等がある。
炭化水素油としては、流動パラフィン、オゾケライト、スクワレン、プリスタン、パラフィン、スクワラン等がある。
【0010】
非イオン界面活性剤
本発明において非イオン界面活性剤が必須であり、好適な非イオン界面活性剤のHLBは12〜15、特に好適なHLBは12〜13である。
このような非イオン界面活性剤としては、POEソルビタンモノオレエート、POEソルビタンモノステアレート、POEソルビタンテトラオレエート等のPOEソルビタン脂肪酸エステル類、POEソルビットモノラウレート、POEソルビットモノオレエート、POEソルビットペンタオレエート、POEソルビットモノステアレートなどのPOEソルビット脂肪酸エステル類、POEグリセリンモノステアレート、POEグリセリンモノイソステアレート、POEグリセリントリイソステアレートなどのPOEグリセリン脂肪酸エステル類、POEモノオレエート、POEジステアレート、POEジオレエート、ジステアリン酸エチレングリコールなどのPOE脂肪酸エステル類、POEラウリルエーテル、POEオレイルエーテル、POEステアリルエーテル、POEベヘニルエーテル、POE2−オクチルドデシルエーテル、POEコレスタノールエーテル等のPOEアルキルエーテル類、POEオクチルフェニルエーテル、POEノニルフェニルエーテル、POEジノニルフェニルエーテル等のPOEアルキルフェニルエーテル類、プルロックなどのプルロニック類、テトロニック等のテトラPOE・テトラPOPエチレンジアミン縮合物類、POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油、POE硬化ヒマシ油モノイソステアレート、POE硬化ヒマシ油トリイソステアレート、POE硬化ヒマシ油モノピログルタミン酸モノイソステアリン酸ジエステル、POE硬化ヒマシ油マレイン酸などのPOEヒマシ油硬化ヒマシ油誘導体、POEソルビットミツロウ等のPOEミツロウ・ラノリン誘導体、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸モノエタノールアミド、脂肪酸イソプロパノールアミドなどのアルカノールアミド、POEプロピレングリコール脂肪酸エステル、POEアルキルアミン、POE脂肪酸アミド、ショ糖脂肪酸エステル、POEノニルフェニルホルムアルデヒド縮合物、アルキルエトキシジメチルアミンオキシド、トリオレイルリン酸などが挙げられる。
【0011】
また、非イオン界面活性剤として、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルを用いると、同じオキシエチレン鎖長のポリオキシエチレンアルキルエーテルと比較して、調製されたワックス微細分散物の経時安定性がよく、経時で微細粒子の凝集等による外観の変化(透明性の低下)や分散粒子のクリーミングが改善されるのでより好適である。
上記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルとしては、
【化5】
Figure 0003949810
および/または
【化6】
Figure 0003949810
(ただし、Rは炭素数12〜24のアルキル基またはアルケニル基を表し、mは5≦m≦30、nは0<n≦5の範囲にある)で表されるものが好適である。そして、このようなポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルとしては、例えば、m、nの値が前記範囲にあるPOE・POPセチルエーテル、POE・POPベヘニルエーテル、POE・POP2−デシルテトラデシルエーテル、POE・POPモノブチルエーテル、POE・POP水添ラノリン、POE・POPグリセリンエーテルなどが挙げられる。
【0012】
両性界面活性剤および半極性界面活性剤
本発明において両性界面活性剤としては、下記一般式(3)〜(7)で示したものが、半極性界面活性剤としては、下記一般式(8)で示したものが例示される。
一般式(3):
【化7】
Figure 0003949810
で表されるアミドベタイン型両性界面活性剤(市販品としてレボン2000(三洋化成株式会社製)、アノンBDF(日本油脂株式会社製)などが挙げられる)。
一般式(4):
【化8】
Figure 0003949810
で表されるアミドスルホベタイン型両性界面活性剤(市販品としてロンザイン−CS(ロンザ社製)、ミラタインCBS(ミラノール社製)などが挙げられる)。
【0013】
一般式(5):
【化9】
Figure 0003949810
で表されるベタイン型両性界面活性剤(市販品としてアノンBL(日本油脂株式会社製)、デハイントンAB−30(ヘンケル社製)などが挙げられる)。
一般式(6):
【化10】
Figure 0003949810
で表されるスルホベタイン型両性界面活性剤(市販品としてロンザイン12CS(ロンザ社製)などが挙げられる)。
【0014】
一般式(7):
【化11】
Figure 0003949810
で表されるイミダゾリニウム型両性界面活性剤(市販品としてオバゾリン662−N(東邦化学株式会社製)、アノンGLM(日本油脂株式会社製)などが挙げられる)。
一般式(8):
【化12】
Figure 0003949810
で表される第三級アミンオキサイド型半極性界面活性剤(市販品としてユニセーフA−LM(日本油脂株式会社製)、ワンダミンOX−100(新日本株式会社製)などが挙げられる)。
【0015】
ただし、一般式(3)〜(8)で、R1は平均炭素原子数9〜21のアルキル基またはアルケニル基が好ましく、より好ましくは平均炭素原子数11〜17のアルキル基またはアルケニル基、さらに好ましくは平均炭素原子数11ないし13のアルキル基またはアルケニル基である。平均炭素原子数が9未満では親水性が強すぎ、一方21を越えると水への溶解性が悪くなる。
2及びR3は平均炭素原子数10ないし18のアルキル基またはアルケニル基を表す。
pは2〜4の整数、qは0〜3の整数、sは1または2の整数を表す。
本発明においては、これらの両性界面活性剤及び/または半極性界面活性剤のうち任意の一種または二種以上が選ばれて用いられる。
【0016】
水系分散媒
本発明において、微細ワックス粒は水系分散媒中に分散されることが好ましく、この水系分散媒としては、水を単独で、或いは、水とエタノール、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、キシリトール、ソルビトール、マルチト−ル、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、ムコイチン硫酸、カロニン酸、アテロコラーゲン、コレステリル−12−ヒドロキシステアレート、乳酸ナトリウム、胆汁酸塩、dl−ピロリドンカルボン酸塩、短鎖可溶性コラーゲン、ジグリセリン(EO)PO付加物、イザヨイバラ抽出液、セイヨウノコギリソウ抽出液、メリロート抽出液等が挙げられる。
【0017】
微細分散物の調製
まず、本発明者らは下記のような試験を行い、ワックスの微細分散組成物の調製を試みた。
【表1】
────────────────────────────────────
試験例 1 2 3 4 5 6 7 8 9
────────────────────────────────────
カチオン性界面活性剤
塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム 15 - - - 1.5 - - 13.5 -
アニオン性界面活性剤
ラウリル硫酸ナトリウム - 15 - - - 1.5 - - 13.5
非イオン界面活性剤
POE(20)ベヘニルエーテル - - 15 - 13.5 13.5 13.5 - -
両性界面活性剤
ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン - - - 15 - - 1.5 1.5 1.5
────────────────────────────────────
ワックス
キャンデリラワックス 10 10 10 10 10 10 10 10 10
イオン交換水 75 75 75 75 75 75 75 75 75
────────────────────────────────────
外観 白濁 白濁 白濁 白濁 白濁 白濁 透明 白濁 白濁
────────────────────────────────────
【0018】
<製法>
イオン交換水に前記非イオン界面活性剤及び両性界面活性剤を水に溶解し、80〜90℃に加熱してキャンデリラワックスを添加し、1時間プロペラ撹拌する。その後、氷冷し、組成物を得る。
【0019】
<結果>
上記表1より明らかなように、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤ともに、各単独では乳化組成物が白濁する傾向にあり、安定性も好ましくない(試験例1〜4)。また、カチオン乃至アニオン界面活性剤と非イオン界面活性剤を組み合わせた場合(試験例5,6)、あるいはカチオン乃至アニオン界面活性剤と両性界面活性剤を組み合わせた場合(試験例8,9)にも同様である。
しかしながら、非イオン界面活性剤と両性界面活性剤を組み合わせた場合(試験例7)には、乳化組成物の外観が透明となり、ワックスの微細分散組成物が得られたことが示唆される。
動的光散乱法による測定の結果、この微細分散物の粒子径は約30nmであった。
【0020】
非イオン界面活性剤の検討
次に本発明者らは非イオン界面活性剤の至適HLBについて検討を進めた。
すなわち、下記組成を基本処方に、非イオン界面活性剤のHLBを変化させてその乳化状態を検討した。
Figure 0003949810
結果を次の表2に示す。
【0021】
【表2】
─────────────────────────────
界面活性剤組成 HLB 乳化状態
─────────────────────────────
POE(10)ベヘニルエーテル 13.5% 9 分離
─────────────────────────────
POE(10)ベヘニルエーテル 12.49% 10 クリーム状
POE(50)ラウリルエーテル 1.01%
─────────────────────────────
POE(10)ベヘニルエーテル 11.14% 11 半透明な一液相
POE(50)ラウリルエーテル 2.36%
─────────────────────────────
POE(15)ベヘニルエーテル 13.5% 12 透明な一液相
─────────────────────────────
POE(20)ベヘニルエーテル 13.5% 13 透明な一液相
─────────────────────────────
POE(20)ベヘニルエーテル 6.75% 14 半透明な一液相
POE(30)ベヘニルエーテル 6.75%
─────────────────────────────
POE(30)ベヘニルエーテル 13.5% 15 クリーム状
─────────────────────────────
【0022】
前記表より明らかなように、非イオン界面活性剤のHLBが12以上で透明な一液相を形成し、HLB15まで均一な乳化系の形成が可能であることがわかる。
従って、非イオン界面活性剤のHLBは12〜15、特に透明系を得るためには12〜13であることが理解される。
次に、本発明者らは非イオン界面活性剤の種類と分散状態について検討を進めた。
【0023】
【表3】
Figure 0003949810
【0024】
なお、前記表において、○は透明な一液相を形成した状態を意味し、△は半透明乃至均一なクリーム状を、×は分離をそれぞれ表す。
上記表より、各非イオン界面活性剤を単独で用いた場合には、概ねHLBが12〜13で透明な一液相を形成し得ることが理解される。
また、前記表2を参酌すると、複数の非イオン界面活性剤を組み合わせて用いることも可能である。
【0025】
さらに、本発明者らはPOEコレステリル、POEグリセリル、POE硬化ヒマシ油等について検討を行ったが、これらの多鎖型非イオン界面活性剤単独では、透明な一液相を調製することは困難であった。無論、これらの多鎖型非イオン界面活性剤にあっても他の非イオン界面活性剤との組み合わせにより好適な分散系を得ることは可能であるが、特にPOE直鎖乃至POE分岐脂肪酸エーテルが好適に用いられる。
【0026】
両性界面活性剤と非イオン界面活性剤の相関
次に本発明者らは両性界面活性剤と非イオン界面活性剤との相関について検討を進めた。
すなわち、下記基本処方に基づき、アミドベタイン型両性界面活性剤(商品名レボン2000SF)、非イオン界面活性剤(POE(20)ベヘニルエーテル:HLB13)の配合比、配合量を変化させてワックス分散系を調製した。
Figure 0003949810
【0027】
結果を図1に示す。
同図より明らかなように、界面活性剤比=両性界面活性剤/(両性界面活性剤+非イオン界面活性剤)は0.1付近のところが極めて良好な比として存在するが、その比の範囲は(両性界面活性剤+非イオン界面活性剤)の量が増加するにつれ広くなる傾向にある。
なお、当然のことながら、非イオン界面活性剤のHLB値を変化させることにより好ましい界面活性剤比は異なり、前記の至適な非イオン界面活性剤のHLB範囲では、0.04〜0.17が好ましい。0.04未満では、系への非イオン界面活性剤の寄与が大きくなり、温度安定性が損なわれる。
一方、0.17を超えると、ワックスの微細分散物は得られにくくなる。
【0028】
つぎに、非イオン界面活性剤のHLBを変えて同様な試験を行った。
非イオン界面活性剤として、HLB12のPOE(15)ベヘニルエーテルを用いたときの結果を図2に示す。また、非イオン界面活性剤として、HLB15のPOE(30)ベヘニルエーテルを用いたときの結果を図3に示す。
図1〜3からわかるように、HLBが高くなるにつれ、透明乃至半透明領域が左にシフトしていることがわかる。したがって、HLB12の非イオン界面活性剤についての図2およびHLB13の非イオン界面活性剤についての図1とからいえば、至適な前記界面活性剤比(両性界面活性剤/(両性界面活性剤+非イオン界面活性剤))は、0.04〜0.2付近であることがわかる。
【0029】
次に本発明者らは、安全性および安定性について検討した。
安全性
安全性については卵白アルブミン変性率から評価した。
<試験方法>
水系高速液体クロマトグラフィを利用し、卵白アルブミンpH緩衝溶媒に、試料濃度1%になるように試料を加えた場合の、卵白アルブミン変性率220nmの吸収ピークを用いて測定した。
[(Ho−Hs)/Ho]×100
Ho:卵白アルブミンの220nm吸収ピークの高さ
Hs:卵白アルブミン緩衝溶媒に試料を加えた時の220nm吸収ピークの高さ評価は以下の4段階評価で行った。
◎・・・皮膚刺激性が非常に少ない−卵白アルブミン変性率30%未満
○・・・皮膚刺激性が少ない−卵白アルブミン変性率30%以上60%未満
△・・・皮膚刺激性が中程度−卵白アルブミン変性率60%以上80%未満 ×・・・皮膚刺激性が強い−卵白アルブミン変性率80%以上
【0030】
結果を表4に示す。
【表4】
Figure 0003949810
【0031】
上記の結果から両性界面活性剤と非イオン界面活性剤の組合せは、非イオン界面活性剤と同レベルで皮膚刺激性が少なく安全性が高い。従って、両界面活性剤を併用したワックスの微細分散物は安全性が高いことが示唆される。
【0032】
安定性
以下に示す処方でワックスの微細分散物を調製し、50℃、1週間の経時安定性を評価した。結果を表5に示す。
<基本処方3>
キャンデリラワックス 10%
界面活性剤 約15%
イオン交換水 残部
【0033】
【表5】
Figure 0003949810
ソフダゾリン LHL-SF(川研ファインケミカル社製、イミダゾリニウム型両性界面活性剤)
レボン2000SF(三洋化成社製、アミノベタイン型両性界面活性剤)
【0034】
上記表5より明らかなように、非イオン界面活性剤単独および界面活性剤比(前記規定)が0.04未満では、経時安定性は損なわれる。
一方、好ましい界面活性剤比中の両性界面活性剤と非イオン界面活性剤の組合せでは安定性は良好であった。
【0035】
なお、本発明の微細分散組成物を毛髪化粧料として用いる場合、通常毛髪化粧料の成分とし使用する油分(ツバキ油、ナタネ油、ゴマ油、サフラワー油、綿実油、ヒマシ油、大豆油、ヤシ油、パーム油、ミツロウ、モンタンロウ、ラノリン、炭化水素油、エステル油、シリコーン油等)、界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキル硫酸エステル、アルキル硫酸エステル、アルカンスルホン酸塩、アルキルエトキシカルボン酸塩、コハク酸誘導体、アルキルアミンオキサイド、イミダゾリン型化合物、ポリオキシエチレンアルキル又はアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、高級脂肪酸アルカノールアミド又はそのアルキレオキサイド付加物等)、高分子化合物(ヒドロキシエチレンセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、カチオン化セルロース、カチン化高分子、ポリビニルピロリドン、ピニルピロリドンと酢酸ビニルの共重合体、ビニルピロリドン−酢酸ビニル−アルキルアミノアクリレート共重合体、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体の低級アルキル−N−アルキルアクリルアミド共重合体等)、酸化防止剤、紫外線吸収剤、保湿剤、香料、染料、顔料、色素、防腐剤、ビタミン剤、ホルモン剤、消臭剤、pH調製剤、固着剤等を配合してもよい。
これら成分と本微細分散組成物と混合することにより本微細分散組成物を含有する毛髪化粧料を得ることができる。また、毛髪化粧料以外にも、つや出し剤を得ることが可能である。
【0036】
ワックスの微細分散物の調製方法
本発明のワックスの微細分散組成物は、マイクロエマルションの調製法を用いて得ることができる。マイクロエマルションの調製方法としては、例えば特公平6−61454号公報、特公平6−57316号公報が挙げられる。これらに記載される技術は、液体の油滴超微粒子を調製するものであるが、本発明のような固形ワックスの超微粒子の調製も行うことができる。
すなわち、系をワックスの融点以上、可溶化温度範囲に加温し、常温に冷却することにより、調製することができる。
【0037】
また、本発明のワックスの微細分散組成物は、強力な剪断力を与え得る乳化機、例えば高圧ホモジナイザー、あるいは超音波乳化機等の機械力を用いて調製することもできる。高圧ホモジナイザーを用いる場合には、400気圧以上の圧力下で乳化するのが好ましいが、さらに好ましくは、ワックスの融点以上の温度で600気圧以上の圧力下で乳化することが好ましい。
【0038】
【実施例】
次に、本発明の具体的な配合例を示す。
Figure 0003949810
【0039】
<製法>
(1)〜(3)と(4)の一部を約95℃で撹拌混合し、透明性を帯びた後、氷冷し、ワックスの微細分散物を得、その後、(4)の残部と(5)〜(9)の混合物をワックスの微細分散物に添加し、セットローションを得た。
【0040】
実施例2 ヘアムース
Figure 0003949810
【0041】
<製法>
(1)〜(4)と(5)の一部を約95℃で撹拌混合し、透明性を帯びた後、氷冷し、ワックスの微細分散物を得、その後、(5)の残部と(6)〜(9)の混合物をワックスの微細分散物に添加し、ヘアムース原液とし、次いで、この原液をエアゾール用缶に添加し、弁をした後、噴射剤液化石油ガスを充填し、ヘアムースを得た。
【0042】
実施例3 ヘアジェル
(1)カルバロウ 5.0
(2)キャンデリラロウ 5.0
(3)ポリオキシエチレンベヘニルエーテル(15EO) 9.0
(4)ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン(実分30%) 3.3
[商品名;アノンBL−SF、日本油脂(株)製]
(5)イオン交換水 37.8
(6)カルボキシビニルポリマー 0.7
[商品名;ハイビスワコ−104、和光純薬(株)製]
(7)ポリビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体 2.0
(8)グリセリン 5.0
(9)ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル 適 量
(11)香料 適 量
(12)キレート剤 適 量
(13)水酸化ナトリウム 適 量
【0043】
<製法>
(1)〜(4)と(5)の一部を560気圧の圧力下、85℃において高圧ホモジナイザーで乳化し、透明性を帯びた後、氷冷し、ワックスの微細分散物を得、その後、(5)の残部と(6)〜(11)の混合物にをワックスの微細分散物に添加した後、(12)を添加して、ヘアジェルを得た。
【0044】
実施例4 カーワックス
(1)カルナバロウ 8.0%
(2)パラフィンワックス 2.0
(3)ポリオキシエチレン(10)ポリオキシプロピレン(2)ベヘニルエーテル 1.0
(4)ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(1)ベヘニルエーテル 20.0
(5)ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン(実分30%) 10.0
[商品名;アノンBL−SF、日本油脂(株)製]
(6)ジメチルポリシロキサン(20cs) 3.0
(7)イソステアリン酸 0.5
(8)イオン交換水 残 部
【0045】
<製法>
(1)〜(4)と(5)、(8)の一部を約95℃で攪拌混合し、透明性を帯びた後、氷冷し、ワックスの微細分散物を得、その後、(5)、(8)の残部、(6)、(7)で得られる乳化物を微細分散物に添加し、カーワックスを得た。
【0046】
実施例5 つや出し剤
(1)カルナバロウ 5.0%
(2)キャンデリラロウ 4.0
(3)マイクロクリスタリンワックス 2.0
(4)ポリオキシエチレンアラキルエーテル(10EO) 1.0
(5)ポリオキシエチレンベヘニルエーテル(20EO) 20.0
(6)ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン(実分30%) 9.0
[商品名;アノンBL−SF、日本油脂(株)製]
(7)ジメチルポリシロキサン(5cs) 2.0
(8)イソパラフィン 2.0
(9)オレイン酸 0.4
(10)イオン交換水 残 部
【0047】
<製法>
(1)〜(5)と(6)、(10)の一部を約95℃で攪拌混合し、透明性を帯びた後、氷冷し、ワックスの微細分散物を得、その後、(6)、(10)の残部、(7)、(8)、(9)で得られる乳化物を微細分散物に添加し、つや出し剤を得た。
【0048】
【発明の効果】
以上説明したように本発明にかかる分散組成物によれば、HLBが12〜15の非イオン界面活性剤及び両性界面活性剤を併用することにより、極めて微細なワックス粒を容易に調製することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明において、HLB13の非イオン界面活性剤を用いた場合における、界面活性剤の組成とその量及び分散状態の関係を示す説明図である。
【図2】本発明において、HLB12の非イオン界面活性剤を用いた場合における、界面活性剤の組成とその量及び分散状態の関係を示す説明図である。
【図3】本発明において、HLB15の非イオン界面活性剤を用いた場合における、界面活性剤の組成とその量及び分散状態の関係を示す説明図である。

Claims (8)

  1. 両性界面活性剤および/又は半極性界面活性剤と、HLBが12〜15(但し、HLB=12は除く)の非イオン界面活性剤と、常温で固体ないし半固体の油分であるワックスと、水系分散媒とを含み、両性界面活性剤/(両性界面活性剤+非イオン界面活性剤)の重量比が0.04〜0.17であり、かつ水系分散媒中にワックスが固体ないし半固体状で微細分散していることを特徴とするワックスの微細分散組成物。
  2. 請求項1記載の組成物において、配合される全非イオン界面活性剤の加重平均したHLBが12〜15(但し、HLB=12は除く)であることを特徴とするワックスの微細分散組成物。
  3. 請求項1または2に記載の組成物において、非イオン界面活性剤としてポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルを含むことを特徴とするワックスの微細分散組成物。
  4. 請求項3に記載の組成物において、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルが下記一般式(1):
    Figure 0003949810
    および/または、下記一般式(2):
    Figure 0003949810
    (ただし、Rは炭素数12〜24のアルキル基またはアルケニル基を表し、mは5≦m≦30、nは0<n≦5の範囲にある)で表されることを特徴とするワックスの微細分散組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の組成物において、系をワックスの融点以上、可溶化温度範囲に加温した後、常温に冷却して得られることを特徴とするワックスの微細分散組成物。
  6. 請求項1〜4のいずれかに記載の組成物において、ワックスの微細分散組成物において、高剪断力の乳化機を用いて調製して得られることを特徴とするワックスの微細分散組成物。
  7. 請求項1〜6に記載のいずれかのワックスの微細分散組成物を含むことを特徴とする毛髪化粧料。
  8. 請求項1〜6に記載のいずれかのワックスの微細分散組成物を含むことを特徴とするつや出し剤。
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