以下、図1〜8を参照して、本発明による多層配線基板の製造方法の一実施態様を説明する。但し、本発明は下記の実施態様により制限されるものではない。
図1には、本発明の多層配線基板の製造方法によって製造された、多層配線基板1の模式構成断面図が示されている。この実施態様における多層配線基板1は、内層絶縁基板11の表裏両面に内層配線パターン15,15を形成してなる内層回路基板10と、該内層回路基板10の表裏両面に設けられた接着層25,25と、該接着層25,25を介して前記内層回路基板10の表裏両側にそれぞれ積層された外層絶縁層30,30と、該外層絶縁層30,30の表面上にそれぞれ形成された外層配線パターン40,40とからなっている。
図1及び図6を参照して、多層配線基板1の各層の構成を更に詳細に説明する。まず、内層回路基板10について説明すると、内層絶縁基板11の表裏両面には、それぞれ導体配線13,13が形成されていて、これらにより所定の内層配線パターン15が設けられている。また、内層絶縁基板11の所定箇所には、丸孔状のビア17(図6参照)が貫通して形成されており、このビア17内に設けた接続部18を介して、内層絶縁基板11の表裏両面に形成された内層配線パターン15,15が電気的に接続されている。
上記内層回路基板10は、代表的には、後述する樹脂フィルム等の絶縁材料からなる内層絶縁基板11に、銅箔等の導体材料を貼り合わせて積層させた銅貼り積層板、いわゆるCCL(copper clad laminate)をコア基材として、これにサブトラクティブ法等によって、銅箔等の導体材料の不要な部分をエッチング処理して、必要な導体配線13を残して、所定の内層配線パターン15が形成された形状をなしている。なお、この内層回路基板10は、前述したように、代表的にはエッチング処理を利用したサブトラクティブ法で形成されるが、電解めっきを利用したセミアディティブ法等で形成してもよく、特に限定されるものではない。なお、内層回路基板10は、内層絶縁基板11の片面だけに複数の導体配線13からなる内層配線パターン15を形成してもよいが、本実施態様のように、内層絶縁基板11の表裏両面に複数の導体配線13をそれぞれ設けて、これをビア17内の接続部18を介して、電気的に接続したものであると、高密度化
の点から特に有利である。なお、丸孔状のビア17の内径は目的に応じて適宜設定されるが、10〜100μmであることが高密度化の面から好ましく、20〜100μmであることが安定したビア接続の面からより好ましい。また、丸穴状であることが応力分散の面から望ましいが設計に応じて丸以外の形状例えば角穴であっても良い。
上記の内層絶縁基板11は、その材質は特に限定はしないが、合成樹脂を含んだ成分で形成されていて、その表裏面上に形成される内層配線パターン15を構成する複数の導体配線13は、金属材料から構成されるのが一般的である。内層絶縁基板11としては、例えばポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム、液晶フィルム、アラミド、ガラスエポキシ材等を用いる事ができ、特に絶縁層にポリイミドフィルムを用いたものは、耐熱性や寸法安定性に優れ、薄くて強度があり高密度化に適しているだけでなくフレキシビリティーもあるため適用範囲が広く好適である。また、内層絶縁基板11にポリイミドを用いたCCLとしては、ポリイミドフィルムに融着性ポリイミド層を介して銅箔を加熱圧着したものや、銅箔にポリイミド前駆体をキャストして加熱したもの、ポリイミドフィルムに表面処理を施した後に、シード層としてニクロムなどのシード層をスパッタした後、銅をスパッタしたもの、更にその上に電解銅めっきを行って銅箔層を形成したものなどが挙げられる。
一方、内層配線パターン15を形成する導体配線13の導体材料としては、銅、アルミニウム、金、銀、ニッケル、ステンレスなどの金属箔、金属めっき層(好適には蒸着金属下地層−金属めっき層あるいは化学金属めっき層等の多くの公知技術が適用できる)などを用いることができ、箔の形状で前記内層絶縁基板11上に積層しているもの、或いは、前記内層絶縁基板11の表面にスパッタリングなどの方法により積層しているもの、更に電解めっき層を積層したものなどがあげられるが、いずれの場合も銅を主成分とした金属を用いるのが最も一般的である。なお、内層絶縁基板11上に積層される上記導体材料が、5〜35μmと比較的厚手の箔の場合は、サブトラクティブ法に用いられ、同導体材料が、0.5〜5μmの極薄箔の場合は、セミアディティブ法、或いは、両面の導体配線13,13を、ビア17を介して接続する場合など電解金属めっきを積み上げて用いる場合に適している。また、除去可能なキャリア層を有する極薄銅箔をポリイミドフィルムに融着層を介して加熱圧着したものも用いることも可能であり、特に0.5〜3μmの極薄銅箔の場合には電解銅めっきを積み上げても導体の総厚を抑える事が出来る為、40μmピッチ以下の微細配線の形成に適している。
内層絶縁基板11又はそれに導体層や配線パターンを形成した内層回路基板10としては、本製造方法に問題なく使用できるものであればどのような形態でも用いることができるが、テープ形状、ロール状のテープ形状、フィルム状、シート状などのものを用いることが好ましい。特に、後述する直径250mm程度のロール101,107(図8参照)に巻き取り可能である長尺状の基板が好ましく採用される。更に詳しくは、内層回路基板10を構成する内層絶縁基板11の厚みが5〜150μmであって、後述する外層絶縁層30の厚みが5〜50μmである、フレキシブル性を有する基板を用いて、図8に示すロールツーロール法による連続処理を行うことが生産性を高め、かつ安定した品質を保つために好ましい。
図1に示すように、上記内層回路基板10の表裏両面には、外層絶縁層30,30が接着層25,25を介して接続されるようになっている。この接着層25は、液状の接着樹脂を前記内層回路基板10上に塗布や、印刷、コーティング等の方法で形成したり、或いは、予め接着樹脂をフィルム状に形成したボンディングシートを、ラミネートやプレス等で内層回路基板10上に形成してもよく、特に限定されるものではない。なお、この実施態様における外層基板55’では、接着層25は、外層絶縁層30の表面側に導体層45が貼り合わされてなる、いわゆる片面CCLの裏面側に、ボンディングシートとして貼り合わされている(図2(b)参照)。また、接着樹脂としては、エポキシ系、アクリル系、ウレタン系、シロキサン系等が用いられ、熱可塑性により充填接着するものや熱可塑性と熱硬化性とを併用するものが採用される。ここで熱硬化性とは必ずしも熱架橋成分などを有していなくとも、加熱によるゲル化や自然架橋により実質的に熱可塑性を失う物も効果は同等であり含まれる。熱可塑性と熱硬化性とを併用するものは、熱可塑性を利用して真空中で短時間加熱プレスして内層配線間の充填を確実に行い、その後まとめて所定時間オーブンで加熱硬化するとプレス装置の占有時間が短く十分な密着強度を得られ有利である。また、この接着層25の厚さとしては、前記内層回路基板10と後述する外層絶縁層30とを貼り合せることができるものであれば、どのような厚みでもよいが、5〜150μmのものが好ましく用いられる。
次に、上記接着層25,25を介して内層回路基板10の表裏両面に外層絶縁層30,30、及び、この外層絶縁層30,30の表面上にそれぞれ積層されて形成された外層配線パターン40について説明する。外層絶縁層30としては、前述した内層回路基板10を構成する内層絶縁基板11と同様に、例えば、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム、液晶フィルム、アラミド、ガラスエポキシ材等が用いられる。この外層絶縁層30の厚さとしては、前述したように、図8に示すロールツーロール法を採用する観点から、5〜50μmであることが好ましい。
一方、各外層絶縁層30,30上に形成される外層配線パターン40は、この実施態様の場合、外層絶縁層30,30の表面上に所定パターンでそれぞれ形成された導体層45,45と、この導体層45,45上に形成されためっき導体層50,50とから構成されている。また、各外層絶縁層30の所定箇所には、丸孔状のビア47が貫通するようにしてそれぞれ設けられており、更にこのビア47は、接着層25,25を貫通して、内層回路基板10の表裏両面に設けた内層配線パターン15,15にそれぞれ至る深さで形成されている。そして、ビア47の内周には導通層52が形成されるとともに、ビア47内には導体層45上から連続しためっき導体層50が形成されていて、その一端部が前記内層配線パターン15に当接し、外層配線パターン40と内層配線パターン15とが電気的に接続されている。なお、丸孔状のビア47の内径は適宜設定され、10〜100μmであることが高密度化の面から好ましく、20〜100μmであることが安定したビア接続の面からより好ましい。また、丸穴状であることが応力分散の面から望ましいが設計に応じて丸以外の形状例えば角穴であっても良い。また、この実施態様においては、ビア47は各外層絶縁層30に対して高密度化のため複数形成されており、外層配線パターン40は、内層回路基板10の内層配線パターン15に対して、複数箇所で電気的に接続されている。
各導体層45は、前記内層回路基板10の導体配線13の導電材料と同様、例えば、銅、アルミニウム、金、銀、ニッケル、ステンレスなどの金属箔などが用いられ、好ましくは0.5〜35μmの厚さとされており、後述するめっき導体層50の厚さと合わせて3〜35μmが高配線密度が形成しやすく、電気的、機械的特性を確保する面から好ましい。なお、この実施態様では、図2(b)に示すように、外層絶縁層30の表面側に導体層45を貼着してなる、いわゆる片面CCLが用いられている。また、同外層絶縁層30の裏面側には、前述したように、ボンディングシートとして接着層25が貼着されている。
なお、ここでは外層絶縁層30,30と接着層25,25を個別に準備する方法について記載したが、内層基板に積層した状態で基板の設計上の必要特性を保つ事が出来れば接着層25が外層絶縁層30を兼ねても良い。銅箔に接着樹脂層を形成したいわゆる樹脂付銅箔(RCC)などを用いる事も可能である。
また、上記導体層45の表面に積層されためっき導体層50は、金、銀、銅、ニッケル等の各種めっきが施されるが、この実施態様では、銅めっきが施されるようになっている。この銅めっきからなるめっき導体層50は、1〜25μmの厚さに施されており、前述した導体層45の厚さと合わせて概ね3〜35μmとなるように施されている。
次に上記構成からなる多層配線基板1を、本発明の多層配線基板の製造方法によって製造する工程について説明する。図2〜5には、本発明の製造方法の一実施例を工程順に表わす模式構成断面図が示されている。
この製造方法では、図8に示す製造装置100が用いられる(給電ローラ部は簡略化して露出導体部と接する部分のみ示してある)。この製造装置100は、所定のテープ材料(この実施態様では、テープ状の内層回路基板10に後述する積層体55を積層した基材)が巻回される巻き出しロール101と、電解めっきを施すためのめっき浴槽103と、該めっき浴槽103のテープ材料搬送方向の前後に複数配設され、テープ材料に電気を供給するための上下一対の給電ローラ105,105と、テープ材料を巻き取るための巻き取りロール107とを備えている。すなわち、内層回路基板10上に接着層25、外層絶縁層30及び導体層45からなる外層基板55’が形成されてビア47の加工が施され、導通層52(給電用導通層52Aを含む)が形成された状態の、巻き出しロール101に巻回されたテープ材料を、連続的に搬送しながら電解めっきを施して、巻き取りロール107にて巻き取って目的のめっき導体層50を形成する、いわゆるロールツーロール方式が採用される。なお、特に図示しないが、めっき浴槽103の上流及び/又は下流側では洗浄や乾燥など必要に応じた副次的処理が搬送しながら施される。
図7には、製造装置100の要部断面図の詳細が示されているが、上下一対の給電ローラ105,105は、搬送されるテープ材料(この実施態様では、内層回路基板10上に外層基板55’が形成されたもの)の幅方向の左右両側に配設されていると共に、更に内層回路基板10に積層された外層基板55’の周縁部から突出した露出導体部20,20(後述する)を挟み込むように配置されている。すなわち、各給電ローラ105は、導体層45,45には接触せずに、内層回路基板10の左右両側に突出した位置に設けた、各露出導体部20にそれぞれ接触するようになっている。
また、各給電ローラ105は、回動自在に支持されていると共に、その内の一つ又は複数が図示しない搬送手段によって回動するようになっており、テープ材料を所定搬送速度で所定量ずつ送り出すことが可能となっている。更に、図7に示すように、下方の給電ローラ105にカソード電極が接続されていると共に、上方の給電ローラ105には後述するガイド106を介して同じくカソード電極が接続されていて、前記露出導体部20がカソード側(陰極側)となるように印加されるようになっている。また、テープ材料の左右に位置する給電ローラ105のうち、上方に位置する給電ローラ105,105の外側には、ガイド106,106がそれぞれ配設されている。このガイド106は、その下端部が、内層回路基板10の両側面を通って、下方に位置する給電ローラ105,105に至る長さで延設されており、テープ材料を搬送する際に、テープ材料の横ずれが防止されて、搬送径路からテープ材料が外れることなく、搬送されるようになっている。
また、前記めっき浴槽103中には、この実施態様の場合、硫酸中に硫酸銅、塩素イオンならびに表面を平滑にする為の添加剤を溶解した電解銅めっき液が貯留されており、更に、めっき浴槽103中には、前記給電ローラ105をカソード側に印加した電源の、アノード側(陽極側)の電極が配置されており、めっき液をアノード側に印加するようになっている。
再び、図2に戻って説明すると、図2(a)に示すように、内層回路基板10は、前述したように、内層絶縁基板11の表裏両面に複数の導体配線13からなる内層配線パターン15がそれぞれ形成されており、これがビア17を介して電気的に接続された形状をなしている。また、本発明において、この内層回路基板10は、図2(b)に示すように、接着層25、外層絶縁層30及び導体層45を積層してなる積層体55よりも大きくなるように形成され(すなわち、外層絶縁層30及び導体層45よりも大きい)、外層基板55’すなわち外層絶縁層30及び導体層45の左右両側の周縁部から、所定長さだけ突出した形状をなしている。そして、この突出した部分には、図1に示す製品完成状態においては、切断されて除去される露出導体部20が、内層絶縁基板11の左右両側位置であって、その表裏両面に各々設けられている。また、内層回路基板10の左右両端には、外層絶縁層30にビア47や外層配線パターン40を形成する際に基準として用いることができる、アライメントマーク22,22が形成されている。また、前記ロールツーロール方式においては、一般的に内層基板の左右両端にアライメントマークと共に搬送や位置決めなどの目的でいわゆるスプロゲットホール14(図6参照)が形成されており、この領域を露出導体部とすれば新たに領域を必要とせず好ましい。
次に、図2(b)に示すように、外層絶縁層30の表面側に所定パターンを形成する前の導体層45が積層されていると共に、その裏面側にボンディングシートとして接着層25が貼着された積層体55を、内層回路基板10の表裏両側の所定位置に配置する。このとき、各積層体55は、内層回路基板10のアライメントマーク22,22を覆うことなく、内層配線パターン15,15の少なくとも一部を覆うように配置する。ここでは、外層基板55’の外周面の一部が露出導体部に接する様に、露出導体部20,20の一部を覆って積層体55を積層する。
なお、本明細書において積層体55は内層回路基板10に積層され一体化した状態を表す場合は外層基板55’と称し、外層基板55’は導体層を有する場合も有しない場合も含み、外層配線パターンを形成した場合も含むが、外層配線パターンが完成した状態のものは特に外層回路基板と呼ぶ。
上記状態で、図2(c)に示すように、積層体55,55によって内層回路基板10を挟み込んで、内層回路基板10の表裏両面に接着層25,25を介して、外層絶縁層30及び導体層45が積層される。なお、図2(c)では、内層回路基板10両面の内層配線パターン15,15の全部を覆うように、積層体55,55を積層しているが、内層配線パターン15の一部を覆うように積層体55,55を積層してもよく、内層回路基板10の片面は、その内層配線パターン15の一部を覆い、同内層回路基板10の残る片面は全部覆ってもよい。
また、図2(b),(c)に示すように、積層体55は、接着層25、外層絶縁層30及び導体層45とから構成されていればよく、例えば、
1)接着層25、外層絶縁層30及び導体層45とを予め積層した基材、
2)接着層25と、片面に導体層45を有する外層絶縁層30とを別々のフィルムとしたもの、
3)接着層25を予め内層回路基板10に設けて、片面に導体層45を有する外層絶縁層30を上記接着層25に積層したもの、
4)導体層45の内側に接着層25と外層絶縁層30とを兼ねた接着性樹脂層を形成したもの、
などを用いることができる。
なお、この実施態様においては、外層絶縁層30の表面側に導体層45を貼着してなる、いわゆる片面CCLが用いられて、これが接着層25を介して内層回路基板10に積層されるようになっている。ここで内層回路基板10への積層は、内層回路基板10の少なくとも一方の内層配線パターン15形成面上に、接着層25、外層絶縁層30、導体層45の順に重なるように積層すればよく特に制限はないが、例えば、内層回路基板10の内層配線パターン15形成面上に液状の接着剤を塗布し、外層絶縁層30側が接するように、前記CCLを重ねてプレス硬化すればよい。又は、ボンディングシートをCCLの外層絶縁層30と内層絶縁基板11との間に、内層配線パターン15の一部或いは全部を覆うように重ね合わせ、真空中で加熱プレスしても良い。特に、予めCCLの外層絶縁層30側にボンディングシートを、例えば、ロールラミネーターで積層しておき、必要に応じて外形加工したものを内層回路基板10に仮貼りして、真空中にて加熱プレスすると、正確かつ効率的で多様な積層体55を積層する事ができる。また、内層回路基板10及び積層体55ともに、ロールツーロール搬送の場合は真空中で、内層回路基板10にロールラミネーターで連続的に積層してもよい。逆に、真空中で内層回路基板10にロールラミネーターでボンディングシートを積層したものに、CCLの外層絶縁層30側がボンディングシートに接するようにロールラミネーターやプレス装置で積層してもよい。なお、内層回路基板10の表裏両面に積層体55,55を積層する場合は、上記方法を繰り返しても良いし、途中まで例えば仮貼りまであるいは真空中での加熱プレスまでを表裏個々に行い、以降の工程は同時に行っても良い。また、内層回路基板10及び積層体55ともに、ロールツーロール搬送の場合は、両面同時に真空中でロールラミネーターにて連続積層してもよい。なお、接着層の追加加熱硬化を必要に応じてオーブン中などで行うことができる。
以上説明した工程が、本発明における、内層絶縁基板の回路パターン形成面に回路パターンの一部又は全部を覆うように、絶縁層及び導体層を積層する、第1の工程をなしている。
次に、上記工程により内層回路基板10に積層体55を積層させたら、内層回路基板10の左右両端に設けたアライメントマーク22,22を基準として、図3(a)に示すように、外層基板55’(接着層25、外層絶縁層30、及び導体層45)の所定箇所に、丸孔状のビア47,47をそれぞれ形成する。また、この実施態様においては、各外層基板55’に、内層回路基板10のアライメントマーク22とは別のアライメントマーク57を形成する。このとき、ビア47の形成と同時にアライメントマーク57を形成すると、後述する導体パターン40を形成する際に、導体パターン40の位置精度を高める事が出来るため好ましい。なお、上記ビア47を形成する場合は、導体層45に先に穴を開け、次に外層絶縁層30及び接着層25に穴を開ける2ステップでも良いし、導体層45、外層絶縁層30及び接着層25に一度に穴を開けるワンステップでもよい。
また、上記のビア47やアライメントマーク57の形成は、公知の方法で形成することができ、特にレーザー光を用いて加工することが好ましい。ここで用いるレーザー光は炭酸ガスレーザー(波長9.3〜10.6μm)、YAGレーザー(波長1064nm)、YAGレーザーの高調波(3倍波:波長355nm、4倍波:波長266nm)に代表される紫外線レーザーなどが上げられ、また各種ガスによるエキシマレーザー(波長はガス種で異なる)を用いてもよい。
前記炭酸ガスレーザーは、現状大きなパワーを得る事が容易であるが、金属の吸収する波長帯とは異なる光である。そのため、金属を直接加工する場合には黒化処理などの表面処理を行う。すなわち、外層基板55’の導体層45表面を黒化処理し、その後、ビア47を形成する部位に、ビーム径を絞り込んだパルスレーザー光を照射して、導体層45と外層絶縁層30並びに接着層25を除去して、ビア47を順次形成する。或いは、ビア47を形成する部位を選択的に黒化処理して、レーザー光をスキャンして導体層45と外層絶縁層30並びに接着層25を除去してもよい。ここで導体層45、外層絶縁層30、接着層25は一度に除去してもよいが、熱ダメージを軽減する必要がある場合には、まず導体層45を主体として除去し、次にレーザー光のパワー密度を下げて外層絶縁層30と接着層25を除去することができる。また別の方法としては、ビア47を形成する部位の導体層45をエッチングなどで選択的に除去し、レーザー光をスキャンして接着層25と外層絶縁層30を除去してもよい。
YAGレーザーの高調波に代表される紫外線レーザー光は、金属が吸収する波長帯に属するため、金属の直接加工が可能である。また、主に有機物からなる外層絶縁層30や接着層25の分子結合を直接切断する効果が寄与すると考えられ、主に熱的に除去している炭酸ガスレーザーに比べて加工形状が良い。また、YAGに代表される固体励起レーザーはビーム形状が良く、更に高調波は紫外光と波長が短いためビームを絞り込む事が可能で、内径50μm以下の小径のビア47を形成するのに適している。ビア47を形成する方法としては、外層基板55’の導体層45表面からビア47を加工する部位に、小径に絞り込んだレーザー光のパルスを照射し、導体層45、外層絶縁層30及び接着層25を除去し、ビア47を形成する。このとき、パルスは複数ショット照射してもよいし、ビーム径に比べて大きな穴の場合には、ショット毎に例えばスパイラル状に走査しても良い。また、導体層45、外層絶縁層30、接着層25は一度に除去してもよいが、ダメージを軽減する必要がある場合には、まず導体層45を主体として除去し、次にレーザー光のパワー密度を下げて接着層25と外層絶縁層30を除去してもよく、導体層45除去後に残った導体をマスクにして、焦点を外したレーザー光を照射して、外層絶縁層30と接着層25を除去すると、特に良好な穴形状を得る事ができる。この操作を穴毎に位置を変えて順次繰返し加工する。
エキシマレーザーはガスレーザーであり、ガス種により発振波長は異なるものの深紫外光を出し、マスクを用いて照射することで、導体層45、外層絶縁層30、接着層25を除去して微小径の穴加工が可能であるが、ランニングコストがかかる為高価な製品用となる。
また、内層回路基板10の表裏両面に、積層体55,55を形成した場合は、上記のビア47の穴加工を、表裏毎に繰り返せばよい。
更に、ここでは外層基板55’の導体層45、外層絶縁層30、接着層25を除去して、内層回路基板10の内層配線パターン15の表面までの加工、すなわち標準的ブラインドビアの形成について記載したが、内層回路基板10の裏面側までのビア、或いは内層回路基板10の裏面側の外層基板55’の導体層45裏面までのビア、更には貫通孔としてもよく、レーザー光のパワーやショット数で適切に調整すればよい。
また、積層体55の導体層45がキャリア層を伴った極薄金属箔の場合、キャリア層を剥離してからビア47を形成してもよいし、剥離する前に形成してもよい。前者の場合、比較的弱いレーザーパワーで金属箔の加工が可能なため、良好な穴形状を得やすく、後者はキャリアごと除去するためレーザーパワーは必要であるが、金属箔表面が保護されている為、レーザー加工による表面の汚染を防止できる。
以上説明した工程が、本発明における、絶縁層及び導体層に回路パターンに連通する孔状のビアを一個又は複数個形成する、第2の工程をなしている。
上述のようにして、図3(a)に示すように、外層基板55’にビア47を形成した後は、各アライメントマーク57内、及び、各ビア47内を、過マンガン酸塩溶液などの化学的な洗浄や、ウェットブラスト法などの物理的洗浄により洗浄する。これは、いわゆるデスミア工程と呼ばれるもので、内層回路基板10の内層配線パターン15と、積層体55の導体層45とを電気的に接続するための、めっき導体層50及び導通層52の密着性を上げるためになされ、レーザー加工によって生じた特にビア47内の汚染を除去するものである。前記汚染は主としてレーザーで溶融した接着層25の樹脂成分、外層絶縁層30の樹脂成分並びにこれらの変質物、更には溶融した導体層45のかすが付着してなり、特にビア47の形成により、内層配線パターン15が露出した部分における樹脂成分による汚染は、導通層52やめっき導体層50の密着性を低下させて、電気的接続不良の原因となる。また、外層絶縁層30と接着層25は異なる成分を有する場合、化学的デスミア工程においては、いずれか一方が過剰に侵食されると密着不良や後工程での気泡残りなどにより導通不良の原因となる。これらの不具合防止のため、この実施態様では、ビア47の穴内の洗浄は物理的に行う。物理的洗浄では化学的な作用が無いために、一方が過剰に侵食される事を防止する事ができる。もちろん、硬度などの違いによる微小な差はあるが、物理的な除去量も微小であるため実質的に問題ない。
具体的な物理洗浄の方法としては、エキシマ光に代表される250nm以下の深紫外光の照射、プラズマ処理、ドライブラスト処理、ウェットブラスト処理があげられる。プラズマ処理は、低圧下でガスを放電させて発生したプラズマにより樹脂をエッチングするものであり、煩雑な真空工程が必要であり、また樹脂のエッチング速度が遅いため激しい汚染には対応できない。ドライブラスト処理は、高圧の空気と共に研磨粉を吹付けて研磨する方法であり、細かな穴内も処理可能であるが噴射後の失速があり研磨力がやや弱く、また粉塵が大量に発生する為に、クリーンルームでの使用に難がある。ウェットブラスト処理は、砥粒と水を混合したスラリーを高圧のエアーでスプレーする方法であり、細かな穴内も処理され、また水に不溶のアルミナ粒子、ジルコニア粒子など硬度が高く研磨力の高い砥粒を用いて、微細な水滴とともに吹付けられ失速も少ない。このため十分な研磨力を発生する事ができ、物理的洗浄方法として特に望ましい。
前記のウェットブラスト装置としては、例えば、ビア47、アライメントマーク57を形成した図3(a)に示す被処理体を、載置するために磁石で形成された載置部と、前記被処理体上に載置されると共に、砥粒を混入した液体を通過させる所望形状の窓孔を有し、前記載置部に着磁される材料で形成されたマスクとを備えた、装置が挙げられる。そして、前記のウェットブラスト装置において、マスクとして、前記磁石に着磁される金属部材の下側に被処理体の上面に当接するウレタンゴムなどのゴム部材を設け、この金属部材及びゴム部材には前記砥粒を混入した液体を通過させる所望形状の窓孔が形成されているマスクを備えたものが好ましい。このようなウェットブラスト装置は、例えば特開平9−295266号公報に記載されている。
ウェットブラスト法においては、穴あけ加工で生じたバリの除去と、ビア47、アライメントマーク57内のクリーニング処理とを同時に行うことが好ましく、例えば、砥粒を混入した液(好ましくは砥粒を5〜20容量%を含むもの)、好適にはアルミナ粒子、ジルコニア粒子など硬度が高く研磨力の高い直径が1〜10μm程度の砥粒を用いて、砥粒と水などの液体とを被処理体の孔に向けて加工エアーとともに約10m〜約300m/秒程度、好ましくは約20〜約100m/秒、さらに好ましくは約30〜約70m/秒の流速で高圧噴射して被処理体を処理することができる。なお、内層回路基板10の表裏両面に、外層基板55’を形成した場合は、空中に担持して両面同時に上記物理洗浄を行うか表裏繰り返せばよい。
上記のようにして、アライメントマーク57内及びビア47内の清掃を行ったら、後述する電気めっきに先立って、導体層45と内層回路基板10の内層配線パターン15とを導通させるための、導通化処理を行う。すなわち、図3(b)に示すように、少なくとも各ビア47の内周面と、代表的には内層回路基板10の表裏両面に積層された外層基板55’の外周面の一部または全体に、無電解金属めっきやダイレクトプレーティング等により、導通層52を生成させることにより、導体層45と内層回路基板10の内層配線パターン15を導通させると同時に、導体層45と露出導体部20を導通させる給電用導通層52Aを形成し、電解めっきの好ましい給電経路を形成する。ここでは内層回路基板10の表裏両面に積層された外層基板55’の外周面に給電用導通層52Aを形成して外層基板55’表面の導体層45と露出導体部20を電気的に接続して電解めっき時の給電経路を形成している。なお、ここでは導通層52のうち専ら露出導体部20から外層基板55’表面への給電経路を確保する為に用いられる導通層を区別して特に給電用導通層52Aと表している。図14(a)に給電部の拡大図を示す。このとき露出導体部20上に外層基板55’の外周面のすべてが接しても良いが、図6に示すように露出導体部20上に外層基板55’の外周面の一部が接しており、少なくとも接した部分の外周面に給電用導通層52Aを形成してもよい。ロールツーロール搬送の場合は剛性を抑え搬送をスムーズに行えるため特に後者が好ましい。更に、電解めっき(後述)後の剛性も抑える為に、露出導体部と接しない外層基板外周面や内層絶縁基板露出部は予め保護処理をしたり不活性化処理をするなどの方法で給電用導通層52Aの形成を制限し電解めっきの析出を抑制しても良い。あるいは、露出導体部と接しない外周面と露出導体部との間(即ち内層絶縁基板表面が露出した部位)の距離を、外層基板55’の厚みやビアの深さに比べて十分広く取り(例えば10倍以上に)、給電用導通層の導電性を適切に抑制すれば、外層基板の外周面及びビア内周面といった給電経路の必要な部位は経路が短距離であるために十分低抵抗が得られる一方、内層絶縁基板表面が露出した部位は距離が長いため導通層が形成されても高抵抗となって電解めっきの析出が抑制され同様の効果が得られる。この場合、ダイレクトプレーティングにより導通層を形成すると適度な抵抗を得やすく特に適している。
給電用導通層52Aを形成する別の形態としては、露出導体部に電気的に接続された導体配線と外層表面とを通じるビアを形成し、ビア内側面に給電用導通層52Aを形成して外層表面の導体層に給電経路を形成しても良い。図14(b)は内層基板の片面に形成された露出導体部より引き回された導体配線に外層表面と連通するビアを形成し、ビア内側面に給電用導通層52Aを形成するとともに、内層基板に予め形成されたビアにより裏面配線を露出導体部に電気的に接続させ、該裏面配線と裏面外層表面とを連通させるビアを形成し該ビア内周面に給電用導通層52Aを形成する事によって表裏外層表面の導体層に電解めっき用の給電を可能にするものである。図14(c)は内層基板の片面の露出導体部より引き回された導体配線に表裏の外層表面と連通するビアを形成し、両方のビア内周面に給電用導通層52Aを形成する事によって表裏外層表面の導体層に電解めっき用の給電を可能にするものである。
なお、図3(b)においては、給電用導通層52Aを含めた導通層52が、各アライメントマーク57の内周面、外層基板55’の外周面及び各ビア47の内周面だけに形成されているが、導体層との密着性やパターン形成時のエッチング性等の特性に問題がなければ導体層45上に施されても良い。
上記導通化工程は、前述したように、一般的な無電解金属めっき工程やダイレクトプレーティング工程によって行い、これらは両面同時処理が可能である。
無電解金属めっきにはニッケル、銅など既知の各種プロセスが適用可能であるが、導体層45の厚付けに多用される電解銅めっきとの密着性が優れる事から、配線基板のビアめっきは主に無電解銅めっきが適している。
ダイレクトプレーティング法に用いられる材料としては、グラファイト系やパラジウム系などがあり、工程が短く薬液管理が比較的容易であり、特に望ましいプロセスである。特に外層絶縁層30にポリイミドを用いた場合は、パラジウム−スズコロイド触媒を用いてパラジウム−スズの皮膜を得られる、ダイレクトプレーティング法を採用することにより、密着性に優れ環境に対する悪影響も少なくて好適である。
パラジウム−スズコロイド系のダイレクトプレーティング法では、モノエタノールアミン、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤等を用いて、穴内の金属及びポリイミドフィルム及び接着層表面を脱脂すると共に、表面状態をコロイドが吸着しやすい状態に整えて、次いで過硫酸ソ−ダ等を用いてソフトエッチングを行った後、塩化ナトリウム、塩酸等にプレディップする。これらの工程の後、パラジウム−スズコロイドの液に浸漬するアクチベーティング工程でパラジウム−スズ被膜を形成し、最後に炭酸ソーダ、炭酸カリ及び銅イオンを含む、アルカリアクセラレーター浴及び酸性アクセラレーター浴で活性化する際に、活性化に用いるアルカリ性アクセラレーター浴に還元剤を添加すれば良い。上記工程によりパラジウムを主成分とする導電皮膜が形成される。なお、本工程は液中で基材を処理する事により両面同時に処理されるようになっている。
以上のようにして、内層配線パターン15と導体層45とを導通化させると共に露出導体部20からの導体層45への給電経路を形成した後、内層回路基板10の導体が露出した部分及び表裏両面に積層された外層基板55’の導体層ならびに導通層形成部に対して電気めっきを施す。すなわち、図3(b)、図7及び図8に示すように、外層基板55’の左右両側の周縁部から突出した、内層回路基板10両側の突出部分に設けた各露出導体部20を、上下一対ずつ左右に設けた給電ローラ105,105によりそれぞれ挟み込んで、各給電ローラ105を各露出導体部20に接触させる。すると、カソード電極に接続された給電ローラ105を介して、内層回路基板10の露出導体部20がカソード側に印加され、同露出導体部20に外層基板55’外周面の給電用導通層52Aを介して導通する外層基板55’表面の導体層45、さらにはこの導体層に導通するビア47内の導通層52及びビア底がカソード側に印加される。
その状態で、アノード電極が配設されてイオン化した電解銅めっき液が貯留された図8の103に示すめっき浴槽中に、内層回路基板10及びその両面に積層された外層基板55’からなるテープを導入すると、前記給電ローラ105によりカソード側に印加された、内層回路基板10の導体が露出した部分及び外層基板55’の導通層52や導体層45表面に、銅イオンが付着してめっき導体層50が形成される。その結果、内層配線パターン15が、ビア47の内周面に形成されためっき導体層50を介して、外層基板55’の導体層45及び導体層上に形成されためっき導体層50に導通する。そして、このめっき導体層50及びその下地となっている導体層45をパターン化することによって、後述する外層配線パターン40が形成される。
このように、本発明の多層配線基板の製造方法によれば、内層回路基板10を外層基板55’よりも大きく形成して外層基板55’の周縁部から少なくとも一部を突出させて、この突出した部分に露出導体部20を設けて、露出導体部20または露出導体部に電気的に接続された導体配線と外層基板55’表面の導体層45を接続する給電用導通層52Aを形成し、この露出導体部20に給電ローラ105からなる給電手段を接続して、これから電気を供給し、少なくとも導体層45の外表面、及びビア47の内周面に電解めっきを施すことにより、内層配線パターン15と外層配線パターン40とを電気的に接続するようになっている(図3(c)参照)。すなわち、導体層45や上のめっき導体層50に直接的に給電ローラ105を接触させるのではなく、露出導体部20を介して導体層45に給電するようになっているので、導体層45や上に形成されためっき導体層50を損傷させたり汚染させたりすることを防止することができ、内層配線パターン15と外層配線パターン40とを電気的に確実に接続することができるとともに、パターン形成時の欠陥発生を抑えることが出来る。
さらに、本発明の製造方法によれば、前記ビア47内面及び前記外層基板55’の表面に電解めっきを施す工程はロールツーロール方式により行われ、基材は巻き出しロール101から連続的に引き出されたテープからなり、その両側部に形成された前記露出導体部20に当接する給電ローラ105を介して通電し、電解めっきを施す。すなわち、移動するテープに対して外層表面に接する事無く給電ローラによって通電することができるので、生産性がよく処理品質が安定したロールツーロール工程においても外層基板55’表面の汚染や傷の発生を抑えて高精細な配線パターン形成に適しためっき導体層50を形成することが出来る。
なお、上記電気めっき工程においては、給電する際の電流密度は0.1〜50A/dm2に設定され、特に0.5〜10A/dm2に設定されることが所謂ブツやざらつきを防止して良好なめっき仕上がりを得られる。このとき、導体層45とめっき導体層50の合計の厚みを概ね20μm以下にすると、後述するエッチングに際してサイドエッチングの影響を抑えることが出来るため、60μmピッチ以下のファインピッチパターンが容易に形成することができる。特に導体層45に0.5〜3μmの極薄銅箔を用いて導体層45とめっき導体層50の合計の厚みを概ね10μm以下にすると40μmピッチ以下の微細配線の形成が容易である。なお、前記電解めっき液中に、含リン銅からなるアノードボールを両面の対向する位置に設置して、アノード電流とともに銅イオンを供給してもよい。また、本工程も、内層回路基板10の表裏両面に積層された外層基板55’が、両面同時に処理される(図8参照)。
次に図4(a)に示すように、内層回路基板10の表裏両面の外層基板55’の、前記電解めっき工程により形成されためっき導体層50,50の外表面に対して、アライメントマーク57,57を覆うことなく、レジスト層60,60をそれぞれ積層する。このレジスト層60は、外層配線パターン40を形成するために必要なもので、一般的にはフォトレジストを使用する。フォトレジストは、代表的には液状のものを塗布乾燥させる場合と、ドライフィルムタイプのものをラミネートする場合があり、一般的に前者はポジ型が多く、後者はネガ型が多い。ドライフィルムタイプのレジストの方が、形成工程が容易で、ビア47の保護も確実であるので、特に適している。ドライフィルムレジストは一方の面が保護フィルム、他方の面がキャリア保護フィルムで覆われた状態でロール状に巻かれているのが一般的である。そして、ロールラミネーターのロール部で保護フィルムを剥がしつつ、その剥がした側を、各めっき導体層50,50の表面に重ね合わせて、適切な温度と圧力を印加しつつ貼り付ける。ここで、ビア47内部は、ビア47周辺を覆ういわゆるテンティングによって保護される。
上記のようにしてレジスト層60を積層した後、外層基板55’に形成したアライメントマーク57,57を基準として、目的とする導体パターンが描かれたフォトマスクを位置合わせして、例えば、高圧水銀ランプを光源とした投影露光機や密着露光機によって露光することにより、導体パターンがレジスト層60に転写される。例えばネガ型のドライフィルムレジストを用いる場合には、導体パターンを形成する部位のフォトマスクが、光が透過するように描かれており、適切な露光量を照射することにより、レジスト層60に導体パターンが感光される。そして、フォトレジストの保護キャリアフィルムを剥離して、例えば炭酸ソーダ水溶液をスプレーで噴射して現像することにより、不用なレジスト層60が除去されて、図4(b)に示すように、目的とする導体パターンとされたレジスト層60のみを残存させる。ネガ型のフォトレジストの場合は、未露光部の即ちパターンを形成しない部位の、レジスト層60が除去され、目的のレジスト層60を得る。
このとき、内層回路基板10に設けたアライメントマーク22を基準として、フォトマスクを用いて露光し現像してもよいが、外層基板55’に設けたアライメントマーク57を基準として露光現像することにより、アライメントマーク22を利用するよりも、途中工程や保管環境による外層基板55’がある部分と無い部分での基材の伸縮の違いの影響を受けにくくなり、外層配線パターン40の位置精度を向上させることができるため好ましい。
上記工程にて、レジスト層60を目的とする導体パターンに形成した後、図5(a)に示すように、内層回路基板10及び表裏両面に積層された外層基板55’に形成された不要なめっき導体層50と導体層45を取り除くべく、エッチングを行う。すなわち、レジスト層60により被覆されためっき導体層50及び導体層45を除いて、それ以外のめっき導体層50及び導体層45を除去する。このエッチングは、例えば、塩化第二鉄溶液に代表されるエッチング液をスプレーにより噴射したり、或いは、エッチング液に浸漬したりして、不要なめっき導体層50及び導体層45を除去し、その結果、図5(a)に示すように、目的とするパターンで形成された、導体層45及びめっき導体層50からなる、外層配線パターン40,40が形成される。
上記工程にて、所望の外層配線パターン40を形成した後、図5(b)に示すように、エッチングマスクとして利用したレジスト層60を、例えば、水酸化ナトリウム溶液などの強アルカリ剥離液で除去し外層回路基板が完成する。このレジスト除去は、剥離液への浸漬やスプレー噴射により行う。剥離液には有機溶剤系を用いることも可能であるが、ベーパー対策や環境対策が必要であるため、無機アルカリ水溶液であることが望ましい。また、ポジ型レジストを用いる場合は剥離処理に先立ち紫外線照射を行うと確実に剥離する事が出来る。
以上説明したように、この実施態様では、サブトラクティブ法により、外層配線パターン40を形成したが、セミアディティブにより外層配線パターン40を形成してもよい。すなわち、外層配線パターン40を形成したくない部分に、レジスト層60を形成した後、このレジスト層60が形成されていない導体パターンを形成する部分に、電解めっきを施して、めっき導体層50を形成することにより、所望の外層配線パターン40を形成する方法である。この場合、前述した導通化工程した後、レジスト層形成、露光工程、現像工程の各工程を上記工程と同様に行う。その後、上記電解めっき工程同様に露出導体部20より給電用導通層52Aを介して給電し、めっき導体層50を形成して、外層配線パターン部及びビア内部のめっき導体層50を同時に形成しつつ、ビア47を介して内層回路基板10の内層配線パターン15と外層配線パターン40を電気的に接続させる。そして、上記レジスト剥離工程を行った後に、フラッシュエッチングにより、露出した不要な導体層45を除去して、外層配線パターン40を形成するものである。ここで、フラッシュエッチングは、例えば硫酸過酸化水素水や過硫酸塩、薄い塩化第二鉄水溶液に代表される弱いエッチング液をスプレー噴射や浸漬することで実施でき、これらの液は適切な添加剤を加えたものが多数市販されており適切な液を選定使用すればよい。
以上のようにして、図5(b)に示すように、目的の外層配線パターン40からレジスト層60を除去した後、内層回路基板10の外層回路基板の周縁部から突出した部分や製品に不要な部位を、適宜切断して除去することにより、図1に示す4層構造の多層配線基板1を製造することができる。
なお、上記工程としては、金型を用いて製品形状に打抜いても良いし、レーザー加工により切断してもよい。また、ここでは、4層構造形成直後に外形加工を行っているが、実際に使用する際に切断されていればよく、パターン保護層形成後やニッケル金めっきや錫めっきなどの電極めっき後、更には部品搭載後に切断してもよく、実装上都合が良い時点で切断すればよい。特に、ロールツーロール搬送においてはICチップなどの部品を搭載後、更にはチップ保護部材も搭載して部品として使用可能な状態で個片に切断することも可能である。
なお、ここでは内層基板として両面配線基板の例を記載したが、予め作製された多層配線板を内層基板として同様の工程にて更に多層化する場合も効果は同じであり、本発明の範疇である。
図9〜13には、本発明の多層配線基板の製造方法の他の実施態様が示されている。なお、前記実施形態の多層配線基板の製造方法と、実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
この実施形態によって製造される多層配線基板1aは、図9に示すように、外層絶縁層30の表面上にあらかじめ導体層45が積層されておらず、前記ビア導通の為の導通化処理において外層絶縁層30表面も同時に導通化したうえでめっき導体層50からなる導体層を形成してなり、これが外層配線パターン40をなしている点が、前記実施形態によって製造される多層配線基板1とは異なっている。
図10〜13には、その製造方法が工程順に示されているが、その工程は前述した製造方法とほぼ同一である。工程順に説明すると、まず、図10(a)に示すように、内層絶縁基板11の表裏両面にビア17を介して電気的に接続された内層配線パターン15,15が形成された内層回路基板10の表裏両面に、図10(b)に示すように、裏側にボンディングシートとして接着層25が貼着された外層絶縁層30,30からなる積層体55Aを配置する。
積層体55Aは接着層25と外層絶縁層30から構成されていればよく、例えば、
1)接着層25と、外層絶縁層30とを予め積層した基材、
2)接着層25と、外層絶縁層30とを別々のフィルムとしたもの、
3)接着層25を予め内層回路基板10に設け、接着層25に外層絶縁層30を積層したもの、
4)接着層25と外層絶縁層30とを兼ねた接着性樹脂をシート状にしたもの
などを用いることができる。
上記状態で、図10(c)に示すように、内層回路基板10の両内層配線パターン15,15を覆うようにして、外層絶縁層30,30にて挟み込んで適宜加圧することにより、内層回路基板10の表裏両面に接着層25,25を介して外層絶縁層30,30が積層され、外層基板55A’が形成される。
上記工程後、図11(a)に示すように、内層配線と外層配線の導通化のためのビア47をレーザー等により形成する。このとき、ビア47の形成と同時に、アライメントマーク57を形成すると、後述する導体パターン40の位置精度を高める事ができ好適である。
その後、少なくともビア47内を、化学的または物理的に好ましくは物理的洗浄により洗浄する。なお、この実施形態においては、前記実施形態と比べて、導体層45が予め形成されていないため、比較的弱いエネルギーでビア47を形成することができ、特に外層絶縁層30並びに接着層25に、例えばガラス繊維のような無機物による補強が無い場合は、特に弱いエネルギーで加工が可能である。この場合、ビア47内の加工残渣は少なく、また固着性も弱いため、エキシマ光に代表される250nm以下の深紫外光の照射や、プラズマ処理法による物理的洗浄が、外層絶縁層30の表面を荒らす事が少ないため好ましく採用される。
上記のようにビア47内の清掃を行ったら、電解めっきを施す前工程として、前述した発明に準じた導通化処理を施す。すなわち、図11(b)に示すように、外層基板55A’の表面と外周面、ならびに各ビア47の内周面を、無電解金属めっき等によって、導通層52を生成して、外層基板55A’の表面に、内層回路基板10の内層配線パターン15と導通した外層配線の土台を形成する。この時、外層基板55A’表面の導通層52は給電用導通層52Aにより露出導体部20と導通しており、電解めっきの好ましい給電経路が形成される。ここでは内層回路基板10の表裏両面に積層された外層基板55A’の外周面に形成された給電用導通層52Aにより外層基板55A’表面の導通層52と露出導体部20を電気的に接続して電解めっき時の給電経路を形成している。
給電用導通層52Aを形成する別の形態としては、前記実施形態と同様に露出導体部に電気的に接続された導体配線に外層基板55A’表面と連通したビアを形成し、ビア内側面に給電用導通層52Aを形成して外層表面の導通層52への給電経路を形成しても良い。
なお、アライメントマーク57の内周面、アライメントマーク22の内周面は導通層を形成させても、任意の保護手段により形成させなくてもよい。
上記の無電解金属めっきにはニッケル、銅など既知の各種プロセスが適用可能であるが、バリア層あるいは緩衝層としての無電解ニッケルめっきや無電解金属酸化物めっきなどを行った上に続いて無電解銅めっきを行うと、外層絶縁層30との密着性を高めて、更に密着性を保持できるので好ましい。無電解銅めっきは触媒を付与して銅イオンを還元析出させる方法などがあり、また緩衝層にニッケルなどの金属を用いた場合には金属の表面を銅に置き換える置換銅めっきを用いる事が出来る。特に、外層絶縁層30の表面にセラミック変性又は擬セラミック変性したポリイミドフィルムを用いた場合には、無電解金属酸化物めっきや無電解ニッケルめっきに続いて無電解銅めっきを行う方法が、密着性の保持と信頼性の高さから特に好ましい。
擬セラミック変性したポリイミドフィルム上に無電解金属めっきを行う方法は、例えば特開2005−225228に示された方法により行い、具体的には、
1)脱脂・表面調整工程として、例えば、表面調整剤で25〜80℃、15秒〜30分浸漬処理し、
2)触媒付与工程として、例えば、センシタイザー、例えば塩化錫等の水溶性第1錫塩の1〜50g/L、塩酸等の酸5〜100mL含有し、pH1〜5の溶液を用いてセンシタイジング、水洗、キャタリスト、例えば塩化Pd等の水溶性Pd塩0.01〜1g/L、塩酸等の酸0.01〜1mL/Lを含有し、pH1〜5のパラジウム活性化溶液に10〜50℃で5秒〜5分浸漬、あるいは/及び水溶性Ag塩(硝酸銀等)0.1〜2g/L、pH5〜8の銀活性化溶液に10〜50℃で5秒〜5分浸漬して、触媒付与し、
3)無電解めっき用下地処理層形成工程として、亜鉛イオン(硝酸亜鉛等)を0.001〜5mol/L、インジウムイオン(硝酸インジウム等)を0.00001〜0.1mol/L各々含有する処理液に50〜90℃、1分以上浸漬することによって処理して、亜鉛含有酸化インジウム下地層形成し、その後、一般的な無電解銅めっき工程により導通化層を形成し、具体的には、
4)触媒付与工程として、例えば、水溶性Pd塩(塩化Pd等)などの水溶性金属塩の濃度0.01〜1g/L、pH1〜5の水溶液に、10〜80℃で、5秒〜5分間、浸漬、スプレー、塗布法で接触し、
5)無電解金属めっき工程として、例えば、硫酸銅等の水溶性金属塩0.01〜0.5mol/L、ホルムアルデヒド等の還元剤0.1〜1mol/L、EDTA等の錯化剤0.01〜1mol/L含有し、pH9〜14の溶液に、10〜70℃で5〜60分間浸漬することにより、擬セラミック変性したポリイミドフィルム上に無電解金属めっきが施されるようになっている。
上記工程後、図11(b)に示すように、上下一対の給電ローラ105,105からなる給電手段によって、外層基板55A’の左右両側の周縁部から突出した露出導体部20,20を挟み込んで、各露出導体部20に各給電ローラ105を接触させ、この給電ローラ105を介して電気を供給する。すると、電流が露出導体部20に接した外層外周面の給電用導通層52Aを介して、外層基板55A’表面及び各ビア47の内周面に形成された導通層52、ビア底である内層導体露出部にカソード側の電圧が印加され、めっき浴槽103中の銅イオンが各面上に付着して、めっき導体層50が形成される(図11(c)参照)。
このように、この実施形態の多層配線基板の製造方法においても、内層回路基板10を外層基板55A’よりも大きく形成して、外層基板55A’の周縁部から少なくとも一部を突出させてこの突出した部分に露出導体部20を設け、外層基板55A’の表面ならびに各ビア47の内周面に導通層52を生成して、外層基板の表面に内層配線パターン15と導通した外層配線の土台を形成し、また外層基板表面の導通層52は給電用導通層52Aにより露出導体部20と導通しており、この露出導体部20に給電ローラ105からなる給電手段を接続して、これから電気を供給して、少なくとも外層基板55A’外表面、及び各ビア47の内周面にめっき導体層50からなる導体層を形成することができる。外層基板55A’表面の導通層や上に形成されためっき導体層50に直接的に給電ローラ105を接触させるのではなく、露出導体部20を介して外層基板55A’表面の導通層52に給電するようになっているので、外層基板55A’表面の導通層52や上に形成されためっき導体層50を損傷させたり汚染させたりすることを防止することができ、内層配線パターン15と外層配線パターン40とを電気的に確実に接続することができるとともに、パターン形成時の欠陥発生を抑えることが出来る。
上記工程後、図12(a)に示すように、めっき導体層50上にレジスト層60を積層させて、これをフォトマスクを用いて露光して目的のパターンとした後、現像して図12(b)に示すように不要なレジスト層60を除去する。その工程後、図13(a)に示すように、不要なめっき導体層50及び導通層52をエッチングして取り除いて、目的とする導体パターン40を形成する。更に、図13(b)に示すように、エッチングマスクとして使用したレジスト層60を、強アルカリ剥離液で除去し、内層回路基板10及び外層回路基板の不要な部分を切断して除去することにより、図9に示す多層配線基板1aを製造することができる。
ここではサブトラクティブ法により、外層配線パターン40を形成したが、もちろん前記同様にセミアディティブ法により外層配線パターン40を形成してもよい。この場合、前述した無電解金属めっき等によって、導通層52(給電用導通層52Aを含む)を形成した後、レジスト層形成、露光工程、現像工程の各工程を上記工程と同様に行う。その後、上記電解めっき工程同様に露出導体部20より給電用導通層52Aを介して給電し、めっき導体層50を形成して、外層配線パターン部及びビア内部のめっき導体層50を同時に形成しつつ、ビア47を介して内層回路基板10の内層配線パターン15と外層配線パターン40を電気的に接続させる。そして、上記レジスト剥離工程を行った後に、フラッシュエッチングにより、露出した不要な導通層52を除去して、外層配線パターン40を形成するものである。