JP5127951B2 - ポリ乳酸系延伸フィルム - Google Patents
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しかしながら、PLLAとPDLAを単に溶融混練して得た組成物をフィルムに成形しても容易にはステレオコンプレックスは形成されず、また、形成されたフィルムは、耐熱性は改良されるものの、脆く、包装用フィルム等としては使い難い。
本発明に係わるポリ乳酸系組成物の1成分であるポリ−L−乳酸(PLLA)は、L−乳酸を主たる構成成分、好ましくは95モル%以上を含む重合体である。L−乳酸の含有量が95モル%未満の重合体は、後述のポリ−D−乳酸(PDLA)と溶融混練して得られるポリ乳酸系組成物を延伸して得られる延伸フィルムの耐熱性が劣る虞がある。
<ポリ−D−乳酸>
本発明に係わるポリ乳酸系組成物層の1成分であるポリ−D−乳酸(PDLA)は、D−乳酸を主たる構成成分、好ましくは95モル%以上を含む重合体である。D−乳酸の含有量が95モル%未満の重合体は、前述のポリ−L−乳酸と溶融混練して得られるポリ乳酸系組成物を延伸して得られる延伸フィルムの耐熱性が劣る虞がある。
多価カルボン酸エステルとしては、具体的には、例えば、コハク酸ジメチル、コハク酸ジエチル、グルタル酸ジメチル、グルタル酸ジエチル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、ピメリン酸ジメチル、アゼライン酸ジメチル、スベリン酸ジメチル、スベリン酸ジエチル、セバシン酸ジメチル、セバシン酸ジエチル、デカンジカルボン酸ジメチル、ドデカンジカルボン酸ジメチル、ジグリコール酸ジメチル、ケトピメリン酸ジメチル、マロン酸ジメチル及びメチルマロン酸ジメチル等の脂肪族ジカルボン酸ジエステル並びにテレフタル酸ジメチル及びイソフタル酸ジメチル等の芳香族ジカルボン酸ジエステルが挙げられる。
多価アルコールとしては、具体的には、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタメチレングリコール、へキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、デカメチレングリコール、ドデカメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール及び分子量1000以下のポリエチレングリコール等が挙げられる。
ヒドロキシカルボン酸としては、具体的には、例えば、グリコール酸、2−メチル乳酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−2−メチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、ヒドロキシピバリン酸、ヒドロキシイソカプロン酸及びヒドロキシカプロン酸等が挙げられる。ラクトン類としては、具体的には、例えば、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、β又はγ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、δ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、4−メチルカプロラクトン、3,5,5−トリメチルカプロラクトン、3,3,5−トリメチルカプロラクトン等の各種メチル化カプロラクトン;β−メチル−δ−バレロラクトン、エナントラクトン、ラウロラクトン等のヒドロキシカルボン酸の環状1量体エステル;グリコリド、L−ラクチド、D−ラクチド等の上記ヒドロキシカルボン酸の環状2量体エステル等が挙げられる。
また、本発明に係わるPLLA及びPDLAには、それぞれD−乳酸若しくはL−乳酸を前記範囲以下であれば少量含まれていてもよい。
本発明のポリ乳酸系延伸フィルムは、前記ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を含むポリ乳酸系組成物からなり、DSC測定における150〜200℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピークのピーク高さ(ピーク1)と205〜240℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピークのピーク高さ(ピーク2)とのピーク比(ピーク1/ピーク2)が0.2以下、好ましくは0.1以下であることを特徴とするポリ乳酸系延伸フィルムである。
かかる広角X線測定における2θが17度および19度近辺のピークはPLLA及びPDLAの結晶に基づくピーク(PPL)であり、12度、21度および24度近辺のピークはPLLAとPDLAとが共結晶した所謂ステレオコンプレックスの結晶に基づくピーク(PSC)である。本発明における広角X線による回折ピーク(2θ)はX線回折装置(株式会社リガク製 自動X線回折装置RINT−2200またはRINT−2500)を用いて測定して検出される回折ピークの角度(度)である。記録紙の基線(強度;0cps)とX線回折強度曲線で囲まれた回折角(2θ)が10〜30度の総面積(全体の面積)を100%とし、結晶に基づく各々の回折ピーク面積は、(SPL)については17度および19度近辺の回折ピーク(2θ)、(SSC)については12度、21度および24度近辺の回折ピーク(2θ)各々の面積を記録紙から切り出し、その重量を測定することにより算出した。また非結晶部分に起因するブロードな部分は(非晶部分)とした。尚、(SPL)、(SSC)を測定する際には非晶部分に伴う回折曲線をベースラインとしてその上の部分を測定した。なお、空気散乱がある場合は、非結晶部分に起因するブロードな部分に含まれる。
本発明のポリ乳酸系延伸フィルムは、用途に応じて、他の基材を積層させてもよい。他の基材としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン及びポリメチルペンテン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート及びポリカーボネート等のポリエステル、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリメチルメタクリレート、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリ乳酸、脂肪族ポリエステル等の生分解性ポリエステル等の熱可塑性樹脂からなるフィルム、シート、カップ、トレー状物、あるいはその発泡体、若しくはガラス、金属、アルミニウム箔、紙等が挙げられる。熱可塑性樹脂からなるフィルムは無延伸であっても一軸あるいは二軸延伸フィルムであっても良い。勿論、基材は1層でも2層以上としても良い。
本発明の上記特性を有するポリ乳酸系延伸フィルムを得るには、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を含むポリ乳酸系組成物として、以下の熱融解特性を有するポリ乳酸系組成物を用意して、延伸することが好ましい。
さらに、本発明に係わるポリ乳酸系組成物は、そのDSCの第2回昇温時の測定(250℃で10分経た後に10℃/分で降温を行い、0℃から再度10℃/分で昇温)において得られたDSC曲線の150〜200℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピークのピーク高さ(ピーク10)と205〜240℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピークのピーク高さ(ピーク20)のピーク比(ピーク10/ピーク20)が好ましくは0.5以下、より好ましくは0.3以下、特に好ましくは0.2以下であるという熱特性を有することが望ましい。これは、この組成物がステレオコンプレックス晶を選択的に形成しているためと考えられる。
ピーク比(ピーク10/ピーク20)が0.5より大きいと、結晶化後にPLLA、PDLA単体結晶の形成量が大きく、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸とが十分に混練されていない虞がある。ピーク比(ピーク10/ピーク20)が0.5より大きい組成物は結晶化後のα晶(PLLAあるいはPDLAの単独結晶)の形成量が大きいため、延伸しても耐熱性に劣る虞がある。
また、本発明に係わるポリ乳酸系組成物は、DSCの第2回昇温時における205〜240℃の吸熱ピークの吸熱量(ΔHm)が35J/g以上であることが好ましい。
本発明に係わるポリ乳酸系組成物の熱融解特性は、前記ポリ乳酸系延伸フィルムの熱融解特性を求めた方法と同様な方法で、DSC(示差走査熱量計)として、ティー・エイ・インスツルメント社製 Q100を用い、試料約5mgを精秤し、JIS K 7121及びJIS K 7122に準拠して求めた。なお、ポリ乳酸系組成物の熱融解特性は、降温時と第2回昇温時における特性を求めた。
PLLAの量が上記範囲外の組成物は上述の方法で混練しても、得られる組成物を延伸してなるフィルムはα晶の結晶体を含み、耐熱性が不十分となる虞がある。
本発明に係わるポリ乳酸系組成物が耐熱性に優れるのは、当該組成物がステレオコンプレックス構造を形成しており、ステレオコンプレックス構造はPLLAとPDLAの等量から構成されるためであると考えられる。
本発明に係わるポリ乳酸系組成物を得るために、PLLAとPDLAを溶融混練するときの温度は、好ましくは230〜260℃であり、より好ましくは235〜255℃である。溶融混練する温度が230℃より低いとステレオコンプレックス構造物が未溶融で存在する虞があり、260℃より高いとポリ乳酸が分解する虞がある。
本発明のポリ乳酸系延伸フィルムは、前記ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を含むポリ乳酸系組成物を用いて、押出成形して得られるフィルムあるいはシートを、好ましくは一方向に2倍以上、より好ましくは2〜12倍、さらに好ましくは3〜6倍延伸することにより、耐熱性、透明性に優れる延伸フィルムが得られる。延伸倍率の上限は延伸し得る限り、とくに限定はされないが、通常、12倍を超えるとフィルムが破断したりして、安定して延伸できない虞がある。
また良好に延伸できる範囲では延伸倍率が高いほど、強く配向するため得られるフィルムの剛性及び耐熱性が上がる傾向にある。
更に2軸延伸はMD→TD→MDと2段階に行うことで特にMD方向の配向度を上げ、MD方向の剛性、耐熱性を高めても良い。当然その逆にTD方向に2段階に延伸しても良い。
(イ)ポリ−L−乳酸(PLLA―1):
D体量:1.9% Mw:22.2万(g/モル)、Tm:163℃
(ロ)ポリ−L−乳酸(PURAC社製:PLLA―2):
D体量:0.0% Mw:39.5万(g/モル)、Tm:184℃、
Inherent viscosity(クロロホルム、25℃、0.1g/dl):3.10(dl/g)
(ハ)ポリ−L−乳酸(PURAC社製:PLLA―3):
D体量:0.0% Mw:143万(g/モル)、Tm:186℃、
Inherent viscosity(クロロホルム、25℃、0.1g/dl):7.11(dl/g)
(二)ポリ−D−乳酸(PURAC社製:PDLA―1):
D体量:100.0% Mw:29.8万(g/モル)、Tm:176℃、
Inherent viscosity(クロロホルム、25℃、0.1g/dl):2.46(dl/g)
(ホ)ポリ−D−乳酸(PURAC社製:PDLA―2):
D体量:100.0% Mw:135万(g/モル)、Tm:180℃、
Inherent viscosity(クロロホルム、25℃、0.1g/dl):7.04(dl/g)
(イ)〜(ホ)のポリ−L−乳酸およびポリ−D−乳酸は以下の方法で測定した。
試料20mgに、GPC溶離液10mlを加え、一晩静置後、手で緩やかに攪拌した。この溶液を、両親媒性0.45μm―PTFEフィルター(ADVANTEC DISMIC―25HP045AN)でろ過し、GPC試料溶液とした。
測定装置;Shodex GPC SYSTEM−21
解析装置;データ解析プログラム:SIC480データステーションII
検出器;示差屈折検出器(RI)
カラム;Shodex GPC K−G + K−806L + K−806L
カラム温度;40℃溶離液;クロロホルム流速;1.0ml/分
注入量;200μL分子量校正;単分散ポリスチレン
ポリ−L−乳酸およびポリ−D−乳酸を溶融混練してなるポリ乳酸系組成物は以下の方法で測定した。
試料20mgを移動相に溶解し(濃度0.5%)、0.45μmの親水性PTFEフィルター(Millex−LH;日本ミリポア)でろ過し、GPC試料溶液とした。
カラム;PL HFIPgel(300×7.5mm) 2本(Polymer laboratories)
カラム温度;40℃移動相;HFIP+5mM TFANa流量;1.0ml/分
検出;RI
注入量;50μL
測定装置;510高圧ポンプ、U6K
注水装置、410示差屈折計(日本ウオーターズ)
分子量校正;単分散PMMA(Easi Cal PM−1;Polymer laboratories)
(2)DSC測定
前記記載の方法で測定した。
(3)透明性
日本電色工業社製 ヘイズメーター300Aを用いてフィルムのヘイズ(HZ)及び平行光光線透過率(PT)を測定した。
(4)表面粗さ
株式会社小坂研究所製三次元表面粗さ測定器SE−30Kを用いてフィルム表面の中心面平均粗さ(SRa)を測定した。
(5)引張り試験
フィルムからMD方向及びTD方向に、夫々短冊状の試験片(長さ:50あるいは150mm、幅:15mm)を採取して、引張り試験機(オリエンテック社製テンシロン万能試験機RTC−1225)を使用し、チャック間距離:20mmあるいは100mm、クロスヘッドスピード:300mm/分(但し、ヤング率の測定は5mm/分で測定)で、引張り試験を行い、引張強さ(MPa)、伸び(%)及びヤング率(MPa)を求めた。
ただし、実施例1、比較例1は、チャック間距離100mmとしたが、実施例2〜6、比較例2〜6はチャック間距離20mmとした。
(6)耐熱性
熱分析装置(セイコーインスツルメンツ株式会社製 熱・応用・歪測定装置 TMA/SS120)を用いてフィルムから幅4mmの試験片を切り出し、チャック間5mmで試験片に荷重0.25MPaを掛け、100℃(開始温度)から5℃/分で昇温し、各温度における試験片の変形(伸びまたは収縮)を測定した。
(7)広角X線測定
実施例1及び比較例1の測定
測定装置:X線回折装置(株式会社リガク製自動X線回折装置RINT−2200)
反射法X線ターゲット;Cu
K―α出力;40kV×40mA
回転角;4.0度/分
ステップ;0.02度
走査範囲;10〜30度
実施例2〜6、実施例10〜14及び比較例2〜5の測定
測定装置:X線回折装置(株式会社リガク製自動X線回折装置RINT−2500)
透過法X線ターゲット:Cu
K―α出力:50kV×300mA
回転角;2.0度/分
ステップ:0.01度
走査範囲:5〜30度
(8)透湿度(水蒸気透過度)
JIS Z0208 に準拠して求めた。フィルムを採取して、表面積が約100cm2の袋を作り、塩化カルシウムを適量入れた後、密封した。これを40℃、90%RH(相対湿度)の雰囲気中に3日間放置し、重量増加から透湿度(水蒸気透過度)を求めた。
(9)酸素透過度
JIS K7126に基づいて20℃湿度0%RH(相対湿度)の条件で、酸素透過測定器(MOCON社製、OXTRAN2/21 ML)を使用して測定した。
(10)フィルムの面配向度
アッベ屈折計 DR−M2型 (株)アタゴ社製 を用いて23℃で測定した。
実施例1
PLLA―1:PDLA―2を50:50(重量部)の比で計量し、二軸混練押出機を用い、溶融温度;250℃、混練時間;1分で、溶融混練してポリ乳酸系組成物を得た後、T−ダイシート成形機で、厚さ約300μmのポリ乳酸系組成物からなるシートを得た。
本二軸混練押出機は40kg/hの能力を有するが、その押出量では数十秒程度である。それでは混練が不十分なために押出量を7kg/hまで落とすことによって混練時間を6分まで上げて行った。
かかるポリ乳酸系組成物の熱融解特性を前記記載の方法で測定した。
次に、当該シートをブルックナー社製二軸延伸機で、縦方向に延伸温度;65℃で3倍に、横方向に延伸温度;70℃で3倍に延伸し、テンター内で180℃で約40秒間のヒートセットを行い、ポリ乳酸系延伸フィルムを得た。得られたポリ乳酸系延伸フィルムの物性を前記記載の方法で測定した。
測定結果を表1に、熱融解特性を図1及び図2に示す。
比較例1
実施例1で用いたPLLA―1及びPDLA―1に代えて、PLLA―1を単独で用い、二軸延伸フィルムのヒートセットを150℃で約40秒間行う以外は実施例1と同様に行い、PLLA―1のシート及び二軸延伸フィルムを得た。
測定結果を表1に、熱融解特性を図3及び図4に示す。
また、二軸延伸フィルムの素材となるポリ乳酸系組成物(シート)の熱融解特性は、第1回降温時の発熱量(ΔHc)が20.3J/g、第2回昇温時には、150〜200℃の範囲には吸熱ピークはみられず、205〜240℃の範囲の吸熱ピークの吸熱量(ΔHm)は51.0J/gである。
さらに、実施例1で得られたポリ乳酸系組成物からなる二軸延伸フィルムは、透明性、耐熱性に優れ、透湿度及び酸素透過度も低く、バリア性能を有し、広角X線測定における12度、21度、24度近辺のピーク面積(SSC)が全体の面積に対して50.9%と20%以上であり、かつ2θが17度、19度近辺のピーク面積(SPL)が全体の面積に対して0.0%と5%以下である。そのため結晶化した部分はステレオコンプレックス構造物となっており、その比率が大きいことが分かる。
また、二軸延伸フィルムの素材となるPLLA―1(シート)の熱融解特性は、第1回降温時の発熱量(ΔHc)は0であり、第2回昇温時には、205〜240℃の範囲には吸熱ピークはみられず、150〜200℃の範囲のピークのみであり、その吸熱量(ΔHm)は32.1J/gである。
さらに、比較例1で得られたPLLA―1からなる二軸延伸フィルムは、透明性は優れるものの、耐熱性、バリア性能に劣るとともに、広角X線測定における回折ピークは12度、21度、24度近辺のピーク面積(SSC)が全体の面積に対して0.0%であり、かつ2θが17度、19度近辺のピーク面積(SPL)が全体の面積に対して57.3%である。そのため結晶化した部分はステレオコンプレックス構造物を含まないことが分かる。
実施例2
<ポリ乳酸系組成物からなるプレスシートの製造>
PLLA―1:PDLA―2を50:50(重量部)の比で80g計量し、東洋精機製ラボプラストミルCモデル(2軸混練機)を用いて250℃、120rpmの条件下で20分間溶融混練して、ポリ乳酸系組成物を得た。
ついで、当該ポリ乳酸系組成物を、プレス成形し、厚さ:500μmのポリ乳酸系組成物からなるプレスシートを得た。
<二軸延伸フィルムの製造>
前記プレスシートを、パンタグラフ式バッチ二軸延伸装置(ブルックナー社製)を用いて75℃ホットエアーで60秒予熱した後、2.1m/分の速度で、縦横方向に3.0倍延伸(同時二軸延伸)し、厚さ約50μmの二軸延伸フィルムを得た。
次いで、得られたニ軸延伸フィルムを金枠にクリップで固定し、200℃×15分の条件でヒートセット(熱処理)した後、室温で十分冷やしてポリ乳酸系ニ軸延伸フィルムを得た。
実施例3
実施例2で用いたPLLA―1に代えてPLLA―3を用いる以外は、実施例2と同様に行い、ポリ乳酸系組成物及びポリ乳酸系ニ軸延伸フィルムを得た。
測定結果を表2に示す。
実施例4
実施例2で用いたPLLA―1に代えてPLLA―3を、実施例2で用いたPDLA―2に代えてPDLA―1を用いる以外は、実施例2と同様に行い、ポリ乳酸系組成物及びポリ乳酸系ニ軸延伸フィルムを得た。
測定結果を表2に示す。
実施例5
実施例2で用いたPLLA―1に代えてPLLA―2を用いる以外は、実施例2と同様に行い、ポリ乳酸系組成物及びポリ乳酸系ニ軸延伸フィルムを得た。
測定結果を表2に示す。
実施例6
実施例2で用いたPLLA―1に代えてPLLA―2を、実施例2で用いたPDLA―2に代えてPDLA―1を用いる以外は、実施例2と同様に行い、ポリ乳酸系組成物及びポリ乳酸系ニ軸延伸フィルムを得た。
比較例2
実施例2で用いたポリ乳酸系組成物に替え、ラボプラストミルでの混練時間を3分間として得た混練物を用いる以外は、実施例2と同様に行い、組成物及びニ軸延伸フィルムを得た。
比較例3
実施例4で用いたポリ乳酸系組成物に替え、ラボプラストミルでの混練時間を3分間として得た混練物を用いる以外は、実施例2と同様に行い、組成物及びニ軸延伸フィルムを得た。
測定結果を表2に示す。
比較例4
実施例6で用いたポリ乳酸系組成物に替え、ラボプラストミルでの混練時間を3分間として得た混練物を用いる以外は、実施例2と同様に行い、組成物及びニ軸延伸フィルムを得た。
測定結果を表2に示す。
C測定における150〜200℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピーク(ピーク1)と205〜240℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピーク(ピーク2)とのピーク比(ピーク1/ピーク2)が0.06〜0.18といずれも0.2以下であり、205〜240℃の範囲にある吸熱ピークの吸熱量は45.0〜62.4J/gといずれも40J/g以上であり、降温時の発熱量は46.1〜71.4J/gといずれも40J/g以上であり、耐熱性に優れることが分かる。
また、かかる熱融解特性を有するポリ乳酸系延伸フィルムを得るには、ポリ乳酸系組成物の第1回降温時の発熱量が多く、第2回昇温時における150〜200℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピーク(ピーク10)と205〜240℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピーク(ピーク20)とのピーク比(ピーク10/ピーク20)が0.5以下のポリ乳酸系組成物を用いることが好ましいことが分かる。
また実施例2〜6は広角X線測定における12度、21度、24度近辺のピーク面積(SSC)が全体の面積に対して24〜32%と20%以上であり、かつ2θが17度、19度近辺のピーク面積(SPL)が全体の面積に対して0%と5%以下である。
そのため結晶化した部分はステレオコンプレックス構造物となっており、その比率は大きいことが分かる。
一方、実施例2、4、5、6と同じ混合比を有するポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を用いても、比較例2〜5の延伸フィルムは、DSC測定における150〜200℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピーク(ピーク1)と205〜240℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピーク(ピーク2)とのピーク比(ピーク1/ピーク2)が0.73〜1.39と0.2を超え、耐熱性に劣ることが分かる。
また、比較例2〜4の延伸フィルムの素材として用いた混練物(プレスシート)の第2回昇温時における150〜200℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピーク(ピーク10)と205〜240℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピーク(ピーク20)とのピーク比(ピーク10/ピーク20)は、1.50〜4.00と0.5を超えている。
また比較例2〜5は広角X線測定における12度、21度、24度近辺のピーク面積(SSC)が全体の面積に対して5〜19%と20%未満であり、かつ2θが17度、19度近辺のピーク面積(SPL)が全体の面積に対して比較例2は18%と5%よりも大きく、比較例3〜5は0%である。そのため結晶化した部分が十分にステレオコンプレックス構造物化してなかったり、していてもその比率が小さいことが分かる。
実施例7
実施例2で用いたPDLA―2に代えてPDLA―1を用い、また混練時間を30分とする以外は、実施例2と同様に行い、ポリ乳酸系組成物及びポリ乳酸系ニ軸延伸フィルムを得た。
得られたポリ乳酸系組成物からなるプレスシート及びポリ乳酸ニ軸延伸フィルムを前記記載の方法で測定した。
測定結果を表3に示す。
実施例8
実施例2で用いたPDLA―2に代えてPDLA―1を用い、また混練時間を40分とする以外は、実施例2と同様に行い、ポリ乳酸系組成物及びポリ乳酸系ニ軸延伸フィルムを得た。
得られたポリ乳酸系組成物からなるプレスシート及びポリ乳酸ニ軸延伸フィルムを前記記載の方法で測定した。
測定結果を表3に示す。
実施例9
混練時間を30分とする以外は、実施例2と同様に行い、ポリ乳酸系組成物及びポリ乳酸系ニ軸延伸フィルムを得た。
得られたポリ乳酸系組成物からなるプレスシート及びポリ乳酸ニ軸延伸フィルムを前記記載の方法で測定した。
測定結果を表3に示す。
なることで、更にDSC測定における150〜200℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸
熱ピーク(ピーク1)と205〜240℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピーク(ピーク2)とのピーク比(ピーク1/ピーク2)が小さくなり、240℃の範囲にある吸熱ピークの吸熱量、降温時の発熱量が大きくなることが分かる。
また、かかる熱融解特性を有するポリ乳酸系延伸フィルムを得るには、ポリ乳酸系組成物の第1回降温時の発熱量も混練時間が長くなると大きく、第2回昇温時における150〜200℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピーク(ピーク10)と205〜240℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピーク(ピーク20)とのピーク比(ピーク10/ピーク20)が小さくなることが分かる。
また実施例7、8、9のフィルムを並べて目から30cmの場所に位置し、8m先にある蛍光灯の灯りを見たところ、混練時間が30分の実施例7はやや蛍光灯の像の輪郭がぼやけているのに対して、混練時間が40分の実施例8は蛍光灯の像の輪郭がはっきり見える。
またこの見え方は分子量が高いPDLA2を用いた混練時間30分の実施例9と同程度である。
このことから混練時間を長くすればフィルムの明澄性が向上するのは明らかである。
また分子量の高いDPLAを用いたフィルムの明澄性が向上するのも明らかである。
実施例10
実施例1で得られた厚さ約300μmのポリ乳酸系組成物からなるシートを用いて前記のパンタグラフ式バッチ二軸延伸装置(ブルックナー社製)を用い行った。
予熱:75℃×1分(ホットエアー)
延伸倍率:3×3
方法:同時2軸
延伸速度:2.1m/分
緩和率:2.5%
ヒートセット:200℃×1分
得られたニ軸延伸フィルムを前記記載の方法で測定した。測定結果を表4に示す。
実施例11
延伸方法を逐次2軸の倍率3×3(MD→TD)とした以外は、実施例10と同様に行い、ニ軸延伸フィルムを得た。
得られたニ軸延伸フィルムを前記記載の方法で測定した。測定結果を表4に示す。
実施例12
延伸方法を同時2軸の倍率4×4とした以外は、実施例10と同様に行い、ニ軸延伸フィルムを得た。
得られたニ軸延伸フィルムを前記記載の方法で測定した。測定結果を表4に示す。
実施例13
延伸方法を逐次2軸の倍率4×4(MD→TD)とした以外は、実施例10と同様に行い、ニ軸延伸フィルムを得た。
得られたニ軸延伸フィルムを前記記載の方法で測定した。測定結果を表4に示す。
実施例14
延伸方法を2段逐次2軸の倍率3×4×1.3(MD→TD→MD)とした以外は、実施例10と同様に行い、ニ軸延伸フィルムを得た。
得られたニ軸延伸フィルムを前記記載の方法で測定した。測定結果を表4に示す。
また実施例10〜14の中で比べると延伸倍率の高い実施例12〜14が実施例10〜12に比べて面配向度が大きく、フィルム剛性、破断強度が高い、またMD方向のTMA伸度も100〜160℃の実用的な使用範囲では変化率が実施例10、11に比べて小さかった。特に逐次2軸、2段階2軸で成形した実施例13、14は100〜160℃の変化量が1%以下と耐熱性に優れていることが分かる。
そのため本延伸フィルムは、従来のポリ乳酸系延伸フィルムなどの成形品に比べ、耐熱性及び靭性に優れており、更に表面平滑性、透明性、熱安定性に優れている。
Claims (9)
- ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸とを含み、該ポリ−L−乳酸65重量部から35重量部、及び該ポリ−D−乳酸35重量部から65重量部(ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の合計が100重量部)を、溶融混練時間を5分間以上に設定して、かつ、二軸混練機、二軸押出機若しくはバンバリーミキサーを使用して溶融混練するか、又は溶融混練時間を20分間以上に設定して、かつ、ラボプラストミルを使用して溶融混練し、延伸後の熱処理をすることによって得られ、DSC測定におけるΔHcが20J/g以上であり、及び該DSC測定において、第2回昇温時における205℃から240℃の範囲にある吸熱ピークの吸熱量が45J/g以上であり、かつ、150℃から200℃の範囲にある吸熱ピークの吸熱量が3.5J/g以下であるポリ乳酸系組成物からなり、DSC測定における150℃から200℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピークのピーク高さ(ピーク1)と205℃から240℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピークのピーク高さ(ピーク2)とのピーク比(ピーク1/ピーク2)が0.2以下であって、かつ、面配向度が0.006以上であることを特徴とする、ポリ乳酸系延伸フィルム。
- 前記熱処理の温度が140℃から200℃であって、かつ、前記熱処理の時間が1秒以上であることを特徴とする、請求項1に記載のポリ乳酸系延伸フィルム。
- 前記熱処理の温度が150℃から200℃であって、かつ、前記熱処理の時間が3秒から60秒であることを特徴とする、請求項1に記載のポリ乳酸系延伸フィルム。
- DSC測定における吸熱ピーク測定後に、降温した際の発熱量が40J/g以上である、請求項1から3のいずれか1項に記載のポリ乳酸系延伸フィルム。
- 広角X線測定における2θが12度、21度および24度近辺のピーク面積の総和(SSC)が全体の面積に対して20%以上であり、かつ、2θが17度および19度近辺のピーク面積の総和(SPL)が全体の面積に対して5%以下である、請求項1から4のいずれか1項に記載のポリ乳酸系延伸フィルム。
- DSC測定において、250℃で10分間経過後に降温した際の発熱量が20J/g以上のポリ乳酸系組成物を延伸してなる、請求項1から5のいずれか1項に記載のポリ乳酸系延伸フィルム。
- DSC測定において、第2回昇温時における150℃から200℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピークのピーク高さ(ピーク10)と205℃から240℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピークのピーク高さ(ピーク20)とのピーク比(ピーク10/ピーク20)が0.5以下のポリ乳酸系組成物を延伸してなる、請求項1から5のいずれか1項に記載のポリ乳酸系延伸フィルム。
- 少なくとも一方向に2倍以上延伸されてなる、請求項1から7のいずれか1項に記載のポリ乳酸系延伸フィルム。
- 縦方向に2倍以上及び横方向に2倍以上延伸されてなる、請求項1から7のいずれか1項に記載のポリ乳酸系延伸フィルム。
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