JP5124109B2 - 工業用織物 - Google Patents

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本発明は、木材ピッチおよび回収ダンボール古紙原料に付着していたガムテープ粘着糊などの粘着性汚れ物(以下、ガムピッチ汚れという)が付着し難く、かつ付着したガムピッチ汚れを洗浄しやすいなどの優れた防汚性を有し、特に抄紙ワイヤー、抄紙ドライヤーカンバスや抄紙プレスフェルトなどの抄紙機用織物の構成素材として好適な防汚性モノフィラメントおよびこれを用いた各種工業用織物に関するものである。
ポリエステル、ポリフェニレンサルファイドおよびポリアミドなどの熱可塑性樹脂からなるモノフィラメントに代表される繊維は、優れた抗張力および耐熱性などを有していることから、従来から各種工業用部品、衣料用および工業用繊維材料、各種織物などに使用されてきた。
これらの織物としては、例えばポリエステルモノフィラメントでは、抄紙機用織物、フィルター用織物、サーマルボンド法不織布熱接着工程用ネットコンベア用の織物、熱処理炉内搬送ベルト用織物などが挙げられ、さらに他の用途としては、各種ブラシ、毛筆、印刷スクリーン用紗、釣り糸、ゴム補強用繊維材料などが知られている。
なかでも、抄紙業界における抄紙機用抄紙ワイヤー(紙をすき上げる織物)、抄紙ドライヤーカンバス(紙の乾燥工程用織物)および抄紙プレスフェルト(紙の搾水工程織物)などの構成素材としてモノフィラメントが広く使用されている。
しかしながら、抄紙工程においては、紙原料中に存在する各種填料、スライム、木材ピッチおよび近年資源保護の見地から、回収古紙のリサイクルの普及により回収ダンボール古紙原料に付着していたガムテープ汚れなどの汚れ物が、熱可塑性樹脂製繊維からなる抄紙用織物類に付着することにより、濾水効率の低下、搾水効率の低下および乾燥効率の低下などの工程上において汚れやすい等の問題を生じるばかりか、これらの粗大化した汚れ物が紙へ転写することによる製品紙の品位低下や紙破れによる生産性低下などが重大な問題となっていた。
このような問題を解決するために、従来から様々な提案が行われてきた。
例えば、少なくとも表層部に、溶融混練されたポリシロキサンを含有するポリエステルモノフィラメント(例えば、特許文献1参照)、フッ素系のポリマーを添加したポリエステルモノフィラメント(例えば、特許文献2参照)、少なくとも表層部に、溶融混練されたフッ素系のポリマーとシリコーンオイルを含有したポリエステルモノフィラメント(例えば、特許文献3参照、特許文献4参照)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ−4−メチルペンテン1、ポリスチレンなどのポリオレフィンを特定量添加したポリエステルモノフィラメント(例えば、特許文献5参照)が知られているが、これらのモノフィラメントは、ガムピッチなどの粘着性の汚れに対する防汚性がいまだに不十分なものであった。
また、炭素数8〜20のアルキル基を側鎖に有するポリマーを含む組成物を被覆したポリエステルモノフィラメント(例えば、特許文献6参照)、または同様のポリマーを被覆した織物(例えば、参考文献7参照)、合成樹脂モノフィラメンからなる経糸及び緯糸により製織した各構成糸の表面に親水性ポリエステル樹脂を被覆してなる織物(例えば、特許文献8参照)および二液反応型エポキシ樹脂と硬化剤としてフェノールスルホン酸の初期重合物を配合してなる樹脂組成物を被覆してなる織物(例えば、特許文献9参照)が知られている。
しかし、これらの技術では、ガムピッチ汚れに対する防汚性や防汚性の持続性がいまだに不十分なものであり、これらの方法では、木材ピッチおよび回収ダンボール古紙原料に付着していたガムピッチ汚れに対しては十分な防汚性効果が得られないため、さらなる改善が望まれていた。
特開昭60−81313号公報(第1〜4頁) 再公表国際公開番号 WO 92/07126号公報(第1〜11頁) 特開2004−292960号公報(第1〜21頁) 特開2004−308090号公報(第1〜18頁) 特開昭51−136923号公報(第1〜5頁) 特開2003−213586号公報(第1〜12頁) 特開2003−213589号公報(第1〜13頁) 特開2002−173886号公報(第1〜5頁) 特開2004−36054号公報(第1〜8頁)
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものである。
したがって、本発明の目的は、ガムピッチ汚れが付着し難く、かつ付着したガムピッチ汚れを洗浄しやすいなどの優れた防汚性を有し、特に抄紙ワイヤー、抄紙ドライヤーカンバスや抄紙プレスフェルトなどの抄紙機用織物の構成素材として好適な防汚性モノフィラメントおよびこれを用いた各種工業用織物を提供することにある。
上記の目的を達成するために本発明によれば、熱可塑性樹脂100重量部に対して、炭素原子数10〜33の高級脂肪族モノカルボン酸および/または炭素原子数34〜65の高級脂肪族モノカルボン酸エステル化合物を0.01〜10.0重量部含有せしめた熱可塑性樹脂組成物からなるモノフィラメントであり、該モノフィラメントのガムピッチ防汚性指数が90以下であることを特徴とする防汚性モノフィラメントが提供される。
なお、本発明の防汚性モノフィラメントにおいては、
前記炭素原子数34〜65の高級脂肪族モノカルボン酸エステル化合物が天然性植物由来のワックスであること、
前記炭素原子数10〜33の高級脂肪族モノカルボン酸および/または炭素原子数34〜65の高級脂肪族モノカルボン酸エステル化合物が、モノフィラメントの軸方向に垂直な断面において10μm以下の分散径で分散していること、
前記熱可塑性樹脂が、ポリエステル、ポリフェニレンサルファイドおよびポリアミドから選ばれた少なくとも1種からなること、
前記ポリエステルがポリエチレンテレフタレートであること、および
モノフィラメント軸方向に垂直な断面が円もしくは扁平であること
が、いずれも好ましい条件として挙げられ、これらの条件の少なくとも一つの条件を満たすことによって一層優れた効果の取得を期待することができる。
また、本発明の工業用織物は、上記の防汚性モノフィラメントを緯糸および/または経糸の少なくとも一部に用いたことを特徴とし、特に抄紙機用織物、フィルター用織物もしくはサーマルボンド法不織布の熱接着工程用ネットコンベアの織物、熱処理炉内搬送ベルト用織物として用いることが望ましい。
本発明の工業用織物は、中でも抄紙ワイヤーまたは抄紙ドライヤーカンバスであることが望ましく、特に抄紙ワイヤーの場合には、次に示す方法で測定した平均直径が0.05〜0.50mmで、この平均直径に対する線径斑率が5%以下の円形断面モノフィラメントからなることが望ましい。
[モノフィラメントの直径(線径斑率)の測定方法]
(1)レーザー外形測定器(アンリツ(株)製SLB DIA MEASURING SYSTEM KL151Aまたは他社同等品)を使用してモノフィラメントの長さ方向に、30カ所の直径(mm)を小数点以下3桁まで測定する。
(2)測定値30点の平均直径(X)を算出する(小数点以下4桁目を四捨五入し小数点以下3桁まで求める)。
(3)線径斑率は、各測定値の最大直径値(A)と最小直径値(B)の差を線径斑とし、測定値30点の平均直径(X)から下式によって求める。
{(A)―(B)}/(X)×100=線径斑率(%)
本発明によれば、以下に説明するとおり、従来のものより一層ガムピッチ汚れが付着し難く、かつ付着したガムピッチ汚れを洗浄しやすいなどの優れた防汚性を有し、特に抄紙ワイヤー、抄紙ドライヤーカンバスや抄紙プレスフェルトなどの抄紙機用織物の構成素材として好適な防汚性モノフィラメントおよびこれを用いた各種工業用織物を得ることができる。
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明における防汚性モノフィラメントは、熱可塑性樹脂からなるモノフィラメントであって、熱可塑性樹脂としては、熱可塑性を有する繊維形成性樹脂であればいかなるものでもよく、例えば、各種の芳香族、脂肪族または脂環族のジカルボン酸とグリコールとからなる各種ポリエステル類、ポリフェニレンサルファイド類、ナイロン6、ナイロン66を代表とする各種ポリアミド類、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネートおよびポリブチレン(サクシネート/アジペート)共重合体などの各種生分解性ポリマー類、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテンなどの各種ポリオレフィン類、各種ポリスチレン類、ポリメチルメタクリレートなどのポリアクリレート類、各種ポリエーテル類、熱可塑性ポリウレタンなどの各種熱可塑性エラストマー類、およびエチレン・テトラフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデンなどの各種フッ素樹脂類などを挙げることができる。これらの熱可塑性樹脂ポリマーから選ばれた1種または2種以上を、目的に応じて溶融混合または複合するなど適宜組み合わせて使用することができる。
これらの熱可塑性樹脂の中でも、ポリエステル、ポリフェニレンサルファイド(以下、PPSという)およびポリアミドから選ばれた一種を50重量%以上含有することが好ましい。
ここで、ポリエステルモノフィラメントを構成するポリエステルとは、ジカルボン酸とグリコールからなるポリエステルである。ジカルボン酸成分としてはテレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられる。また、グリコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。これらのジカルボン酸成分とグリコール成分とを適宜組み合わせて使用することができる。また、上記ジカルボン酸成分の一部を、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸や、スルホン酸金属塩置換イソフタル酸などで置き換えてもよく、また、上記のグリコール成分の一部を、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、ポリアルキレングリコールなど置き換えてもよい。更に、ペンタエスリトール、トリメチロールプロパン、トリメリット酸、トリメシン酸、硼酸などの鎖分岐剤を少量併用することもできる。
これらの内でも、ジカルボン酸成分の90モル%以上がテレフタル酸からなり、グリコール成分の90モル%以上がエチレングリコールからなるポリエチレンテレフタレート(以下、PETという)が力学特性や熱特性の点で好適である。
本発明の効果を効率よく発現させるためには、PET中にリン化合物を、リン原子として50ppm以下で、かつ下記の一般式1の範囲内の量を含有させることができる。
5×10−3≦P≦M+8×10−3 式1
(式中のPは、PETを構成する二塩基酸に対するリン原子のモル%であり、MはPET樹脂中の金属で、周期律表II族、VII族、VIII族でかつ、第3,4周期の内より選択された1種もしくは2種以上の金属原子のポリエステルを構成する二塩基酸に対するモル%である。M=0であってもよい。)
上記したポリエステルには、目的に応じて公知の有機・無機の各種添加剤を含有することができ、例えば異種の熱可塑性樹脂類、各種合成・重合触媒残渣、各種抗酸化剤、耐光剤、難燃剤、ヨウ化銅、ヨウ化カリウムなどの老化防止剤、酸化チタン、酸化珪素、炭酸カルシウム、チッ化ケイ素、炭化ケイ素、硫酸バリウム、クレイ、タルク、カオリン、カーボンブラックなどの無機粒子・顔料類、フタロシアニン金属系、コバルト青などの各種有機顔料、ステアリン酸金属塩類、エチレンビスステアリルアミド、メタ珪酸カルシウム、含水珪酸マグネシウム、アミノシラン、メラミンシアヌレート、アイオノマー類、金属イオン封鎖剤、包接化合物、着色防止剤、帯電防止剤、シリコーンオイル、各種界面活性剤、各種強化繊維類、および熱可塑性樹脂が飽和ポリエステルの場合には耐加水分解性や耐乾熱分解性を改善するための各種カルボジイミド化合物、各種エポキシ化合物および各種オキサゾリン化合物などを含有することができる。
使用するポリエステルの極限粘度は、通常0.5以上であれば良いが、好ましくは0.6以上、さらに好ましくは0.7以上であると、得られるモノフィラメントの強度に優れるため好ましい。
また、PPSモノフィラメントを構成するPPSとは、ポリマーの繰り返し単位の90%以上がp−フェニレンサルファイドからなるポリマーであり、工業的には、p−ジクロルベンゼンに硫化ナトリウムを重縮合反応させて得ることができる。また、p−ジクロルベンゼン10モル%未満のトリクロルベンゼンを分岐成分として共重縮合させたポリマーであってもよい。
なお、原料PPSとしては、メルトフローレイト(MFR)が180g/10分以下、特に150g/10分以下で、実質的に直鎖分子構造のものが好ましく使用される。
ここで、MFRとは、ASTM D1238−86に準拠して、316℃、オリフィス径2.095mm、オリフィス長さ8.00mm、荷重5kgの条件で測定した値であり、10分あたりの流出ポリマー量(g)で表される。
PPSは、重縮合後のPPSを水洗いしただけのものの場合は、末端に主としてカルボン酸ナトリウム末端基を有している。また、重縮合後のPPSを酢酸水溶液で洗浄した後に水洗いしたものは、末端にカボン酸末端基を有している。さらに、重縮合後のPPSを酢酸カルシウム水溶液で洗浄した後に水洗いしたものは、末端にカルボン酸カルシウム末端基を有している。ただし、カルボン酸末端基を有するPPSが少量のカルボン酸金属末端基を有していてもよく、カルボン酸金属末端基を有するPPSが少量のカルボン酸末端基を有していてもよい。
本発明の防汚性モノフィラメントを構成するPPSは、市販品を入手してこれを使用することができる。PPSの市販品としては、例えば、カルボン酸金属末端基を有するPPSである東レ社製品のE1880(MFR:70g/10分)、E2080(MFR:100g/10分)、E2280(MFR:170g/10分)、および E2588(MFR:300g/10分)などを挙げることができる。
PPSは通常、粉末で得られるポリマーであるが、溶融紡糸に供する前にエクストルダーなどで粉末PPSを融点以上の温度に加熱して溶融・混錬した後に、必要に応じてフィルター類で濾過して異物を取り除き、ガット状に押し出して冷却後カッティングするなどの方法により、ペレット状に加工して用いることができる。
また、PPS粉体あるいはPPSペレットからオリゴマー類を除去する目的で、溶融紡糸などの成形に供する前に、PPS粉体あるいはPPSペレットを概ね100〜180℃で1〜24時間、減圧下で乾燥して用いることが好ましい。
本発明で使用する原料PPSは、酸化チタン、酸化ケイ素、炭酸カルシウム、チッ化ケイ素、クレー、タルク、カオリン、ジルコニウム酸などの各種無機粒子や架橋高分子粒子などの粒子類のほか、従来公知の抗酸化剤、金属イオン封鎖剤、イオン交換剤、着色防止剤、耐光剤、包接化合物、各種着色剤、シリコーンオイル、各種界面活性剤類、フッ素樹脂類、ポリエステル類、ポリアミド類、ポリオレフィン類およびポリスチレンなどが添加されたものであってもよい。
また、ポリアミドとは、各種ラクタム類の開環重合、各種ジアミン類と各種ジカルボン酸類との重縮合および各種アミノカルボン酸類の重縮合によって得られる各種ポリアミド類、およびこれらの重縮合と開環重合とを組み合わせた共重合ポリアミド類であり、具体的には、ポリカプラミド、ポリヘキサメチレンアジパミド、ナイロン610、ナイロン46、ナイロンMDX6、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12およびポリカプラミドとポリヘキサメチレンアジパミドとの共重合体などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
これらのポリアミドの中でも、ポリカプラミド(以下、ナイロン6という)、ポリヘキサメチレンアジパミド(以下、ナイロン66という)およびポリカプラミドとポリヘキサメチレンアジパミドとの共重合体(以下、ナイロン6/66という)から選ばれた少なくとも1種が好適であり、とりわけナイロン6が好ましく使用される。
なお、ポリアミドは、目的に応じて、酸化防止剤、酸化チタン、酸化ケイ素、炭酸カルシウム、カーボンブラックなどの各種無機粒子、各種金属粒子などの粒子類のほか、従来公知の金属イオン封鎖剤、イオン交換剤、着色防止剤、耐光剤、帯電防止剤、各種着色剤、シリコーンオイルなどが添加されていてもよい。
本発明の防汚性モノフィラメントは、熱可塑性樹脂からなるモノフィラメントに炭素原子数10〜33の高級脂肪族モノカルボン酸を含有させることにより、ガムピッチ防汚性に優れたモノフィラメントを得ることができる。好ましくは、炭素原子数18〜33、更に好ましくは炭素原子数20〜32を有する高級脂肪族モノカルボン酸が有効である。
一方、炭素原子数が10未満の高級脂肪族モノカルボン酸では成形表面へのブリードアウトが激しく、また炭素原子数が33を越える高級脂肪族モノカルボン酸を使用する場合はガムピッチ防汚性が得られない。
高級脂肪族モノカルボン酸の具体例としては、カプリン酸、ラウリル酸、パルチミン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メシリン酸、ヘントリアコンタン酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、エルカ酸、リノール酸およびこれらを含む酸混合物などが挙げられる。ただし、これに何ら制限されるものではない。
さらに、本発明の防汚性モノフィラメントは、炭素原子数34〜65の高級脂肪族モノカルボン酸エステル化合物を含有させることにより、優れたガムピッチ防汚性を有するモノフィラメントを得ることができる。特に、炭素原子数16〜33の高級脂肪族モノカルボン酸、さらには炭素原子数20〜32の高級脂肪族モノカルボン酸をエステル化して得られる炭素原子数40〜62の高級脂肪族モノカルボン酸エステル化合物が好ましい。
高級脂肪族モノカルボン酸エステル化合物の炭素原子数が34未満の場合には、エステル化合物が飛散し、紡糸時の口金汚れが激しくなり、その結果モノフィラメントの強度の低下、線径斑が大きくなるばかりか、飛散によりエステル化合物が減少し、ガムピッチ防汚性が悪化する。さらにはポリエステルモノフィラメントの着色が大きくなるという不具合も招かれることになる。また、高級脂肪族モノカルボン酸エステル化合物の炭素原子数65を越えると、ポリエステルなどの熱可塑性樹脂との相溶性が悪くなり、モノフィラメント強度が低くなるばかりか、線径斑が激しくガムピッチ防汚性が悪化する。
炭素原子数34〜65の高級脂肪族モノカルボン酸エステル化合物の具体例としては、工業的に製造されたものであっても、天然に得られるものであっても良い。例えば、工業的に製造されたものとしては、モンタン酸ヘキシルエステル、モンタン酸セリル、リグノセリン酸オクタコシル、リグノセリン酸メリシル、リグノセリン酸セリル、セロチン酸メリシル、セロチン酸セリルなどが挙げられる。ただし、これに何ら制限されるものではない。また、天然に得られる動物由来のワックス、植物由来のワックス、石油由来のワックス、鉱物由来のワックスを挙げることができ、中でもモンタンワックス、カルナウバワックス、ビーズワックス、カンデリラワックス、ヌカロウ、イボタロウなどが挙げられる。ただし、これに何ら制限されるものではない。
特には、天然に得られるモンタンワックス(主成分:炭素原子数28のモノカルボン酸からなる炭素原子数52のエステル)、カルナウバワックス(主成分:炭素原子数26のモノカルボン酸からなる炭素原子数56のエステル)、ビーズワックス(主成分:炭素原子数16のモノカルボン酸からなる炭素原子数46のエステル)などが好ましく用いられる。なかでも、天然植物由来のワックスであるカルナウバワックスが特に好ましい。
さらには、炭素原子数34〜65の高級脂肪族モノカルボン酸エステル化合物の酸価が5以下であるとガムピッチ防汚性効果が向上する傾向にある。酸価が5を越えるものは、ガムピッチ防汚性が得られにくい傾向にある。
炭素原子数10〜33の高級脂肪族モノカルボン酸および/または炭素原子数34〜65の高級脂肪族モノカルボン酸エステル化合物の添加量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して0.01〜10.0重量部含有させることが必要であり、好ましくは0.05〜7.0重量部含有させる。さらに、好ましくは0.2〜5.0重量部である。含有量が0.01重量部未満では、ガムピッチ防汚性が不十分であり、また10.0重量部を越えると、得られるモノフィラメントの着色が激しくなり、さらにはモノフィラメントの物性を損なうことになるため好ましくない。
また、本発明の防汚性モノフィラメントを抄紙ドライヤーカンバス用織物用として用いる場合には、特に、1分子中に1個または2個以上のカルボジイミド基を有するモノカルボジイミドやポリカルボジイミド等のカルボジイミド化合物、モノまたはジエポキシ化合物、あるいはモノまたはビスオキサゾリン化合物、さらには各種ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂などを配合させることもできる。
本発明の防汚性モノフィラメント中における炭素原子数の10〜33の高級脂肪族モノカルボン酸および/または炭素原子数34〜65の高級脂肪族モノカルボン酸エステル化合物は、粒子状に分散して存在しており、分散径が10μm以下であることが好ましく、より好ましくは8μm以下であり、更に好ましくは5μ以下である。分散径が10μmを越えると、モノフィラメントのガムピッチ防汚性が不十分となったり、強度物性などを損なう可能性がある。
また、本発明における防汚性モノフィラメントは、ガムピッチが付着しにくく、かつガムピッチが剥がれやすくなるよう、モノフィラメント表面の水接触角を78°以上とすることが好ましく、80°以上であることがより好ましく、82°以上であることが更に好ましい。一方、水接触角が78°未満では、モノフィラメント表面にガムピッチが付着しやすく剥離しにくくなるため、目標のガムピッチ防汚性能が得られない傾向にある。
なお、本発明における防汚性モノフィラメントのガムピッチ防汚性は、布粘着ガムテープ貼付剥離法による布粘着ガムテープ剥離応力測定試験方法において、ガムピッチ防汚性指数(炭素原子数10〜33の高級脂肪族モノカルボン酸および/または炭素原子数34〜65の高級脂肪族モノカルボン酸エステル化合物を添加しないモノフィラメントを100とした時の値)を求め、このガムピッチ防汚性指数が小さいほど優れていることを表す。また、ガムピッチ防汚性はガムピッチ防汚性指数が90を越える値では効果が得られない傾向にある。
本発明の防汚性モノフィラメントを製造するに際し、まず本発明の熱可塑性樹脂と炭素原子数10〜33の高級脂肪族モノカルボン酸および/または炭素原子数34〜65の高級脂肪族モノカルボン酸エステル化合物との混合組成物を得る方法としては、A.熱可塑性樹脂の重合反応前、反応中、反応終了直後にいずれかの時期において添加・混練させ熱可塑性樹脂ペレットを得る方法、B.1軸もしくは2軸エクストルダーにおいて添加・混合させ熱可塑性樹脂ペレットを得る方法、また、C.前記AおよびB法により、炭素原子数34〜65の高級脂肪族モノカルボン酸エステル化合物の高濃度熱可塑性樹脂マスターペレットを得る方法などがある。
上記に続き、例えば、AまたはBにおいて混練した熱可塑性樹脂ペレットを用いる方法、Cの高濃度熱可塑性樹脂マスターペレットを所定量同種の熱可塑性樹脂ペレットにブレンド、または紡糸時に添加する方法、あるいは熱可塑性樹脂ペレットと炭素原子数34〜65の高級脂肪族モノカルボン酸エステル化合物とをブレンドする方法、さらには紡糸機内に直接炭素原子数34〜65の高級脂肪族モノカルボン酸エステル化合物を添加する方法などを採用し、公知の方法で紡糸・延伸・熱セット等を行う方法などにより本発明の防汚性モノフィラメントを製造することができる。また、“スタティックミキサー”や“ハイミキサー”等の静止混練子(流線入替器)を組み合わせ使用することもできる。
本発明における防汚性モノフィラメントとは、1本の単糸からなる連続糸であり、断面形状は、モノフィラメント軸方向に垂直な断面形状(以下、断面形状もしくは断面)が、円、扁平、半月状、3角形、五角以上の多角形、多葉形状、ドックボーン状、繭型および馬蹄型などいかなる断面形状を有するものでもよく、中でも円もしくは扁平の断面形状であることが好ましい。本発明における扁平とは、楕円、正方形もしくは長方形のことであるが、数学的に定義される正確な楕円、正方形もしくは長方形以外に、概ね楕円、正方形もしくは長方形に類似した形状、例えば正方形および長方形の角を丸くした形状を含むものである。また、楕円の場合は、この楕円の中心で直角に交わる長軸の長さ(LD)と短軸の長さ(SD)とが次式に満足する関係にあり、正方形もしくは長方形の場合は、長方形の長辺の長さ(LD)と短辺の長さ(SD)とが次式を満足する関係にあることが好ましい。
1.0≦LD/SD≦10.0
モノフィラメント断面の重心を通る線分の長さは、用途によって適宜選択できるが、0.01〜3.0mmが好ましい。また必要強度は用途によって異なるが、概ね1.0cN/dtex以上であることが好ましい。強度が、1.0cN/dtex未満では工業用織物の必要最低限の強力を維持できない可能性が高く、工業用織物への展開が難しい傾向となる。
本発明の工業用織物とは、上述した本発明の防汚性モノフィラメントを緯糸および/または経糸の少なくとも一部に用いたものであるが、本発明の防汚性モノフィラメントは、一本の単糸からなる連続糸であり一本で使用される他に、この一本の単糸からなる連続糸を複数本組合せたもの、さらには複数本組合せた単糸を撚り合わせたものなどを織物を構成する経糸および/または緯糸の少なくとも一部として使用すればよい。これら工業用織物の具体例としては、抄紙機用織物、フィルター用織物もしくはサーマルボンド法不織布の熱接着工程用ベルト織物、熱処理炉内搬送ベルト用織物などが挙げられる。
さらには、抄紙機用織物が抄紙ワイヤーまたは抄紙ドライヤーカンバスの構成素材用モノフィラメントとして好適に使用することができ、従来にない卓越したガムピッチ防汚性を有するものであり、産業上の利用価値が高いものである。
ここで、抄紙ワイヤーとは、平織、二重織および三重織など様々な織物として、紙の漉き上げ工程で使用される織物であって長網あるいは丸網などとして用いられるものであり、この抄紙ワイヤーを構成するモノフィラメントには均一性に優れることが要求される。
また、抄紙ドライヤーカンバスとは、平織り、二重織および三重織など様々な織物(相前後する緯糸と緯糸とがスパイラル状の経糸用モノフィラメントによって織継がれたスパイラル状織物を含む)として、抄紙機のドライヤー内で紙を乾燥させるために使用される織物のことである。
また、フィルター用織物とは、高温の液体、気体、粉体等を濾過する織物のことである。
また、サーマルボンド法不織布の熱接着工程用ネットコンベア用の織物とは、不織布を構成する低融点のポリエチレンのような熱接着性繊維を融着させるために、不織布を炉中に通過させるための織物であり、平織り、二重織、などの織物である。
また、熱処理炉内搬送用ベルト織物とは、各種半製品の乾燥、熱硬化、殺菌、加熱調理などのために、高温ゾーン内において半製品を搬送する織物のことである。
抄紙ドライヤーカンバス織物、サーマルボンド法不織布の熱接着工程用ベルト織物および熱処理炉内搬送用ベルト織物には、高温・高湿雰囲気でも長期間使用可能な耐加水分解性と耐熱性に優れることが要求される。
本発明の防汚性モノフィラメントを抄紙ワイヤーの構成素材として用いる場合には、平均直径に対する線径斑率が5%以下の円形断面を有するモノフィラメントであることが好ましい。線径斑率が3%以下であると更に好ましい。抄紙ワイヤーは、パルプを主成分とする分散液からパルプを漉き揚げ、水を吸引して紙の基本的な表面状態や均一性が形成される工程で使用されるものであるために、モノフィラメントの線径均一性が最も必要とされる用途である。モノフィラメントの平均直径が0.05〜0.50mmで、上記線径斑率が5%以下であると、表面と織り構造が均一な抄紙ワイヤーとなり、漉き揚げた高含水パルプからの搾水を均一に行うことができるため、厚みが均一で表面特性に優れた紙の製造が可能になるという好ましい効果が得られるのである。
なお、この場合におけるモノフィラメントの直径(線径斑率)の測定方法は上述したとおりである。
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
なお、以下の実施例における特性値は各実施例の中で特に記さない限り、次に示す方法によって測定したものである。
1.極限粘度の測定方法
ポリエステルの極限粘度は、0.1g/10mlのオルソクロロフェノール溶液を調整し、25℃で測定した粘度より求めた極限粘度であり、〔η〕で表される値である。
2.ポリエステルのカルボキシル末端基濃度(以下、COOH末端基濃度という)の測定方法
ポリエステル試料0.5gをo−クレゾール10mlに溶解し、完全溶解後冷却してからクロロホルム3mlを加え、NaOHのメタノール溶液にて電位差滴定を行ない求めた値である。
3.モノフィラメントの強度測定方法
モノフィラメントの引張試験 JIS L1013―1992に準処して、引張試験器((株)オリエンテック製テンシロン/UTM−III−100)を使用して行った。
強度の判定として、高級脂肪族モノカルボン酸および/または高級脂肪族モノカルボ酸エステル化合物を添加していないものを強度100%として、85%以上を○、85未満〜75%以上△、75%未満を×とし基準とした。
4.モノフィラメントの直径(線径斑率)の測定方法
(1)レーザー外形測定器(アンリツ(株)製SLB DIA MEASURING SYSTEM KL151Aまたは他社同等品)を使用してモノフィラメントの長さ方向に、30カ所の直径(mm)を小数点以下3桁まで測定する。
(2)測定値30点の平均直径(X)を算出する(小数点以下4桁目を四捨五入し小数点以下3桁まで求める)。
(3)線径斑率は、各測定値の最大直径値(A)と最小直径値(B)の差を線径斑とし、測定値30点の平均直径(X)から下式によって求める。
{(A)―(B)}/(X)×100=線径斑率(%)
5.色調の測定方法
モノフィラメントを5mm程度にカットしたサンプルをカラーコンピューター(スガ試験機(株)製:タッチパネル式SMカラーコンピューター SM−T)専用ガラスセルに約13g入れ、カラーコンピューターで5回測定し、平均値を色調(b値)をとした。b値が、大きいほど黄味を帯びた傾向となる。
6.防汚性モノフィラメント中の炭素原糸数10〜33の高級脂肪族モノカルボン酸および/または炭素原子数34〜65の高級脂肪族モノカルボン酸エステル化合物の分散径評価方法
モノフィラメント軸方向に片刃カミソリにて垂直に切断したモノフィラメント試料(2mm程度)を、SEM試料台に貼った導電テープに試料断面がSEM試料台上部と平行になるように貼り、白金−パラジウム合金を1分30秒蒸着(蒸着機:HITACHI社製のE101 ION SPUTTER)し、走査型電子顕微鏡(ニコン社製のE(Environmetal)SEM)でモノフィラメントの1断面全体を観察し(カミソリ跡のない所)、最大分散径のものを選択し分散面の重心を通る最大径を円の直径としてμm単位で、小数点以下1桁まで求める。この作業を10回繰り返し、10データー中の平均分散径を求め、添加剤の分散径とした。
7.モノフィラメント表面の水接触角の測定方法
モノフィラメント1本を両面接着テープを貼った長さ20mm、巾5mmのガラス板表面に固定して測定試料とし、20℃の雰囲気下において、エルマ光学(株)製ゴニオメーターの試料台上にセットし、該測定試料のモノフィラメント表面にマイクロシリンジで2マイクロリットルを付着させ、水滴の付着角度(°)を測定した。この測定作業を10回繰返し、測定の最大値、最小値を除き、その平均値をモノフィラメント表面の水接触角とした。
8.ポリエステルモノフィラメントのガムピッチ防汚性指数評価
(布粘着ガムテープ貼付剥離法による布粘着ガムテープ剥離応力測定試験方法(以下、布粘着ガムテープ剥離試験という))
(1)厚さ150〜250μm、横巾30mm、縦長さ120mmのポリエチレンテレフタレート製2軸延伸フィルムを2枚用意する。
(2)一枚のフィルムの長さ方向の中央部に横巾10mm、縦長さ120mmの両面粘着テープ(日東電工(株)製品、No.523または同等品)を貼り、長さ約200mmに切断したポリエステルモノフィラメント試料をフィルム上の両面粘着テープ上に、両面粘着テープの長手方向と平行に隙間無く貼付し、両面粘着テープの長手方向の両端からはみ出しているモノフィラメントの余端を鋏で切除し、モノフィラメント試料貼付フィルムを得る。
(3)モノフィラメント試料貼付面を上にしモノフィラメント試料貼付フィルムの30mm巾ともう一方のフィルム30mm巾の一端同士を重ならないように合わせて、この合わせ面の下部に、片面に粘着剤の塗布された25mm×25mmサイズの布粘着テープを、前記2枚のフィルムの両端に渡るように貼付することにより、接合部で縦方向に繋ぎ合わされた見かけの縦長さ約240mm、横巾30mmのフィルムを作成する。
(4)上記モノフィラメント試料貼付面を上にし、かつモノフィラメント面が左側になるようにしてから、繋ぎ合わされた見かけの縦長さ約240mm、横巾30mmのフィルムを硝子板(厚さ約8mm、縦約300mm、横約80mm)中央部にセットする。
(5)横巾10mm、縦長さ150mmに切断した片面に粘着剤が塗布された布粘着ガムテープ(ニチバン(株)製、段ボール包装用強粘着テープ<LS>No.101Nまたは同等品)を、長手方向左端を前記モノフィラメント試料貼付フィルムのモノフィラメント面左端と合わせて、モノフィラメント上に布粘着ガムテープを仮貼付する。次いで、モノフィラメント面右端に約30mm残っている布粘着テープを、一方のフィルム面に貼付する。
(6)前記モノフィラメント貼付フィルムを裏返して、前記(3)で2枚のフィルムを繋ぎ合わせるために貼付した前記片面に粘着剤の塗布された25mm×25mmサイズの布粘着テープを取り除く。
(7)前記モノフィラメント貼付フィルムのモノフィラメント貼付面を上向きにし、かつモノフィラメント面が左側になるようにして硝子板上に完全に乗るようにセットして、前記モノフィラメントの表面に仮貼付されている前記布粘着ガムテープ上に、重量1.43Kg、巾50mm、直径86mmのゴムローラーを、前記布粘着ガムテープを重ねたフィルムの右長手方向から左はじまで約10秒/120mmの速度で片道走行させ、布粘着ガムテープ剥離応力測定用試料を作成する。
(8)前記2枚のフィルムの接合部を支点にして、前記布粘着ガムテープの貼付面が内側になるように山折りし、次いで山折りの支点部からモノフィラメント上に貼付されている前記布粘着ガムテープを長さ約15mm剥がし、露出したモノフィラメント貼付フィルム端部を引張試験器((株)オリエンテック製テンシロン/UTM−III−100)の上チャックの中央部にセットし、一方のモノフィラメントの貼付されていない前記フィルムの下端(山折りの裾部)を、前記引張試験器の下チャックの中央部にセットして、引張速度100mm/分、チャートスピード100mm/分の条件で剥離応力を測定し、剥離応力の高い山と剥離応力の低い谷とが交互に連なった剥離応力チャートを得る。
(9)得られた剥離応力チャートの最初の剥離応力の高い山から約20mm後の剥離応力の高い山を始点として、山、谷の順序に各50点の剥離応力値を読み取り、その平均値をもって剥離応力とし、この測定作業((1)から(9))を10回繰返し、その平均値を布粘着テープ剥離応力とする。
なお、上記した布粘着ガムテープ剥離試験で測定することにより、モノフィラメントを織物に加工することなく、対象とするモノフィラメントを構成素材とする抄紙機用織物などのガムピッチ汚れに対する防汚性を定量的に評価することが可能で、布粘着ガムテープ剥離応力が低いほど対ガムピッチ防汚性が優れることを表す。また、ガムピッチ防汚性は通常の比較サンプルとなる布粘着ガムテープ剥離応力値をガムピッチ防汚指数100とし、ガムピッチ防汚性指数が90を越える値では効果が得られないものとして、90未満を目標値と設定した。なお、下記式によりガムピッチ防汚指数を求めた。
試験剥離応力値/比較サンプル剥離応力値×100=ガムピッチ防汚指数
〔実施例1〕
原料として、公知の溶融重縮合と固相重縮合とによって製造した二酸化チタンを0.4重量部(PET100重量部に対して)含有した〔η〕0.87、COOH末端基濃度13当量/10gのPET乾燥チップ(以下、ポリエステル(A)と略称する)を得た。
一方、ポリエステル(A)とカルナウバワックス(セラリカNODA社製:精製カルナウバワックスNO1)(以下、C−ワックスと略称する)を窒素シールした各々のホッパーに仕込み、C−ワックスがポリエステル(A)100重量部に対して15重量部になるようフィーダーを用いて2軸エクストルダー型混練機に供給し、溶融混練し、冷水にストランド状に吐出し、直ちにカッティングしてC−ワックス混錬ポリエステルのチップ(以下、ポリエステル(B)と略称する)を得た。
ポリエステル(A)と乾燥したポリエステル(B)とを窒素シールした各々のホッパーに仕込み、ポリエステル(B)中のC−ワックスがポリエステル(A)とポリエステル(B)中のポリエステル成分100重量部に対して1重量部になるようフィーダーを用いて、1軸エクストルダー型紡糸機(Φ35、L/D=2.5)に連続供給した。1軸エクストルダー内で約288℃で約3分間溶融混練しギアポンプを経て紡糸パックに供給し、孔径 0.90mm、孔数20の紡糸口金より紡出した。紡出モノフィラメントを70℃の湯浴で冷却後、常法に従い1段目93℃倍率4.5倍、2段目120℃倍率1.356倍、総合倍率6.1倍に2段延伸し、230℃で熱セットを行い、平均直径は0.250mmの円形断面ポリエステルモノフィラメントを得た。
モノフィラメントの物性を表1に示す。さらには、モノフィラメントのガムテープ剥離応力は198.0cN/cmであり、比較実施例1のポリエステル単独モノフィラメントのガムピッチ防汚性指数を100とした時、該モノフィラメントのガムピッチ防汚性指数は72であり、ガムピッチ防汚性に優れたポリエステルモノフィラメントが得られた。これらのモノフィラメント物性は工業用織物の一種である抄紙ワイヤーの構成素材として好適である。
〔比較実施例1〕
前記ポリエステル(A)を単独で紡糸した以外は、実施例1と同様に溶融紡糸を行い、平均直径0.250mmのポリエステルモノフィラメントを得た。モノフィラメント物性を表1に示す。
〔実施例2〜6、比較実施例2〕
実施例2〜6は、実施例1のポリエステルモノフィラメントに含有されるC−ワックスの量を適宜変更したものであり、本発明の範囲内にありガムピッチ防汚性に優れた防汚性ポリエステルモノフィラメントを得た。モノフィラメント物性を表1に示す。
しかし、比較実施例2は、実施例1のポリエステルモノフィラメントに含有されるC−ワックスの量が本発明の範囲外であり、モノフィラメントの強度の低下し、着色が大きく抄紙ワイヤーの構成素材としては不適当なものであった。モノフィラメント物性を表1に示す。
〔実施例7、8〕
実施例7は、実施例1のポリエステルモノフィラメントに含有されるC−ワックスをモンタンワックスに変更したものであり、また、実施例8はモンタン酸に変更したものである。いずれの場合にもガムピッチ防汚性に優れたポリエステルモノフィラメントが得られ、これらは抄紙ワイヤーの構成素材として好適であった。モノフィラメント物性を表1に示す。
〔比較実施例3、4〕
比較実施例3は、実施例1のポリエステルモノフィラメントに含有されるC−ワックスを炭素原子数22のステアリン酸ブチルエステルに変更したもの、比較実施例4は炭素原子数76のヘキサテトラコンタン酸メリシルに変更したものである。本発明で規定する高級脂肪族モノカルボン酸エステル化合物の炭素原子数34〜65の範囲外であり、モノフィラメントの強度低下が大きく、またガムピッチ防汚性に劣り、抄紙ワイヤーの構成素材として不適当なものであった。モノフィラメント物性を表1に示す。
〔実施例9、比較実施例5〕
実施例9は、実施例1のポリエステルをPPS(東レ(株)社製:“E2080(MFR:100g/10分))に変更し、さらに紡糸温度300℃に変更した以外は、実施例1と同様に行いPPSモノフィラメントを得た例である。モノフィラメント物性を表1に示す。このモノフィラメントは抄紙ワイヤーの構成素材として好適であった。
一方、比較実施例5はPPSを単独で紡糸した以外は、実施例9と同様にPPSモノフィラメントを得た例である。モノフィラメント物性を表1に示す。
〔実施例10、比較実施例6〕
実施例10は、実施例1のポリエステルをナイロン6(東レ(株)社製:“アミラン”ポリアミドチップCM1021)(以下、N6と略称する)に変更し、さらに紡糸温度275℃に変更した以外は、実施例1と同様に行いナイロンモノフィラメントを得た例である。
一方、比較実施例6は、N6を単独で紡糸した以外は、実施例10と同様にナイロンモノフィラメントを得た例である。モノフィラメント物性を表1に示す。
Figure 0005124109
本発明の防汚性モノフィラメントは、卓越したガムピッチ汚れに対する防汚性を有するものであることから、パルプの漉き揚げ工程で使用される織物抄紙ワイヤー、漉き揚げたパルプを搾水する工程で使用される抄紙プレスフェルト基布および搾水した湿紙やコーティング紙などを乾燥する抄紙ドライヤーカンバスなどの各種抄紙機用織物の構成素材として有用であり、特に抄紙ワイヤーの構成素材として好適である。

Claims (8)

  1. 熱可塑性樹脂100重量部に対して、炭素原子数10〜33の高級脂肪族モノカルボン酸および/または炭素原子数34〜65の高級脂肪族モノカルボン酸エステル化合物を0.01〜10.0重量部含有せしめた熱可塑性樹脂組成物からなるモノフィラメントであり、該モノフィラメントのガムピッチ防汚性指数が90以下であることを特徴とする防汚性モノフィラメントを緯糸および/または経糸の少なくとも一部に用いたことを特徴とする工業用織物であって、抄紙機用織物、フィルター用織物もしくはサーマルボンド法不織布の熱接着工程用ネットコンベアの織物、熱処理炉内搬送ベルト用織物であることを特徴とする工業用織物。
  2. 前記防汚性モノフィラメントにおける炭素原子数34〜65の高級脂肪族モノカルボン酸エステル化合物が、天然性植物由来のワックスであることを特徴とする請求項1記載の工業用織物。
  3. 前記防汚性モノフィラメントにおける前記炭素原子数10〜33の高級脂肪族モノカルボン酸および/または炭素原子数34〜65の高級脂肪族モノカルボン酸エステル化合物が、モノフィラメントの軸方向に垂直な断面において10μm以下の分散径で分散していることを特徴とする請求項1または2に記載の工業用織物。
  4. 前記防汚性モノフィラメントにおける熱可塑性樹脂が、ポリエステル、ポリフェニレンサルファイドおよびポリアミドから選ばれた少なくとも1種からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の工業用織物。
  5. 前記ポリエステルがポリエチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項4に記載の工業用織物。
  6. 前記防汚性モノフィラメントがモノフィラメント軸方向に垂直な断面が円もしくは扁平であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の工業用織物。
  7. 抄紙機用織物であって、抄紙機用織物が抄紙ワイヤーまたは抄紙ドライヤーカンバスであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の工業用織物。
  8. 前記抄紙ワイヤーを構成する前記防汚性モノフィラメントの、次に示す方法で測定した平均直径が0.05〜0.50mmで、この平均直径に対する線径斑率が5%以下の円形断面モノフィラメントであることを特徴とする請求項項に記載の工業用織物。
    [モノフィラメントの直径(線径斑率)の測定方法]
    (1)レーザー外形測定器(アンリツ(株)製SLB DIA MEASURING SYSTEM KL151Aまたは他社同等品)を使用してモノフィラメントの長さ方向に、30カ所の直径(mm)を小数点以下3桁まで測定する。
    (2)測定値30点の平均直径(X)を算出する(小数点以下4桁目を四捨五入し小数点以下3桁まで求める)。
    (3)線径斑率は、各測定値の最大直径値(A)と最小直径値(B)の差を線径斑とし、測定値30点の平均直径(X)から下式によって求める。
    {(A)―(B)}/(X)×100=線径斑率(%)
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