JP5123600B2 - マット調金属缶 - Google Patents

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Description

この発明は、艶消し感を有する外面塗装がなされたマット調金属缶に関する。
ビールやソフトドリンクの飲料用金属缶の缶胴塗装は、缶の外面に金属地を隠蔽するために下地塗装(ベースコート層)を行い、所要意匠の印刷を行った後に仕上げニスを塗装(トップコート層)するのが一般的である。かかる缶胴塗装においては、製品を差別化するために常に新たな意匠性が求められ、従来の光沢のある仕上げニス塗装に加えて、微細な凹凸が形成された塗装やマット調の塗装が提案されている(特許文献1、2参照)。
特許文献1に記載された飲料用金属缶は、ベースコート層として樹脂ビーズを含有する熱硬化型塗料を塗布して焼付けによって凹凸を形成し、この凹凸が形成されたベースコート層上に印刷し、さらにトップコート層として表面ニス塗装を行ったものである。
特許文献2に記載された金属缶は印刷層として発泡性マイクロカプセルを含有する光遮蔽膜を形成し、トップコート層として光透過性膜を積層した後、加熱してマイクロカプセルを発泡させることにより表面に凹凸を形成したものである。
特開2005−112377号公報 特開平10−250209号公報
しかしながら、ベースコート層や印刷層に凹凸を形成しても、光沢性を有するトップコート層を上塗りすることによって艶消し感が減じられ、十分な艶消し感を得ることは困難である。さらに、マイクロカプセルを発泡させて艶消し感を出した缶は、振動に弱く発泡部が割れて塗装が剥がれ易いという問題もある。
凹凸を大きくすることによって艶消し感を高めることは可能であるが、トップコート層を上塗りしてもなお表面粗さが大きく、消費者が缶を手に取る場面において持ちにくいという報告がある。また、製造時においても、缶同士の接触時に滑りが悪く搬送ラインで缶が流れにくくなったり、缶同士が衝突すると塗装が剥がれやすいという問題がある。
また、飲料用の金属缶には、円筒状の缶胴の開口部にネックイン加工およびフランジ加工を施し、フランジにプレート状の缶蓋の周縁部をかしめて取り付けるもの(例えばステイオンタブ缶)と、ネックイン加工で径の小さい口頸部を成形しさらにねじ加工によりキャップ被着用の雄ねじ部を形成し、ねじ付キャップで閉塞する所謂ボトル缶と称されるものがある。いずれの缶種においても、開口部の加工は上述した缶胴の塗装後に行われる。
そして、ボトル缶では、表面粗さの大きい塗装がなされた缶胴素材に口頸部成形やねじ付けのような加工度の高い成形を行うと塗膜が割れやすいという問題がある。また、塗膜割れに至らない場合もキャップとの螺合構造において密閉性が低下するおそれがある。
本発明は、上述した背景技術に鑑み、持ちやすさに影響を及ぼす表面粗さを過度に悪化させることなく艶消し感が得られるマット調金属缶の提供を目的とする。
即ち、本発明のマット調ボトル缶は、下記[1]〜[10]に記載の構成を有する。
[1] 金属製缶基体の外面が塗装された金属缶であって、
塗膜の最外層として、樹脂成分中に粒子状の艶消し剤を分散させてなるマット調トップコート層を有することを特徴とするマット調金属缶。
[2] 前記マット調トップコート層は艶消し剤の粒子が層表面から突出することにより微細凹凸が形成され、前記艶消し剤の平均粒径が最小層厚以上かつ最小層厚との差が2μm以下であり、粒子の累積分布におけるD90が最小膜厚の2倍以下である前項1に記載のマット調金属缶。
[3] 前記マット調トップコート層の表面粗さ(Ra)が0.3〜1.0μmである前項1または2に記載のマット調金属缶。
[4] 前記マット調トップコート層の60°鏡面光沢度が、艶消し剤を除く塗膜成分で形成された塗膜の75%以下である前項1〜3のいずれかに記載のマット調金属缶。
[5] 前記マット調トップコート層中の艶消し剤は、艶消し剤を除く塗膜成分100質量部に対し2〜10質量部の割合で配合されている前項1〜4のいずれかに記載のマット調金属缶。
[6] 前記缶基体とマット調トップコート層との間に、ベースコート層および印刷層のうちの少なくとも1層を有する前項1〜5のいずれかに記載のマット調金属缶。
[7] 前記缶基体は、円筒状の胴部の上部が縮径されて口頸部が形成され、該口頸部にキャップ被着用の雄ねじ部が形成されたボトル缶用の缶基体であって、前記胴部における塗膜の最外層が前記マット調トップコート層であり、前記口頸部の少なくとも雄ねじ部における塗膜の最外層が樹脂を主成分として艶消し剤を含まない非マット調トップコート層である前項1〜6のいずれかに記載のマット調金属缶。
[8] 前記非マット調トップコート層が、ワックスを配合したポリエステルを主成分としガラス転移温度(Tg)が60〜100℃となされた樹脂組成物からなる口頸部用トップコート層である前項7に記載のマット調金属缶。
[9] 口頸部の塗膜は前記口頸部用トップコート層の単層からなる前項8に記載のマット調金属缶。
[10] 前記胴部のマット調トップコート層と前記口頸部の非マット調トップコート層とが、継ぎ目部分において重なり部を形成している前項7〜9のいずれかに記載のマット調金属缶。
上記[1]に記載の発明によれば、持ちやすさを維持しつつ艶消し感を得ることができる。
上記[2]〜[5]に記載の各発明によれば、特に持ちやすさと艶消し感のバランスのとれたマット調金属缶とすることができる。
上記[6]に記載の発明によれば、層構成に応じて様々な外観のマット調金属缶とすることができる。
上記[7]に記載の発明によれば、マット調のボトル缶において加工度の大きい口頸部の塗膜剥がれを防止できるとともにキャップの開栓トルクを低減できる。
上記[8]に記載の発明によれば、開栓トルクの低減について大きな効果を得ることができる。
上記[9]に記載の発明によれば、単層の口頸部塗膜で開栓トルクの小さいボトル缶を得られる。
上記[10]に記載の発明によれば、胴部のマット調トップコート層と口頸部の非マット調トップコート層の継ぎ目部分に未塗装部分が生じることがない。
図1は、キャップ(11)を装着したボトル缶(S)を示すものであり、アルミニウム製缶基体(1)に外面塗装したものである。
缶基体(1)は、DI加工によって成形された缶であり、底壁(3)を有する円筒状の胴部(2)の上部側が順次縮径されて肩部(4)および首部(5)が形成され、さらに細径の口頸部(6)が形成されている。前記口頸部(6)には、首部(5)側から順にスカート部(7)、雄ねじ部(8)、カール部(9)が連続して形成されている。
前記ボトル缶(S)は次の工程を経て製作される。即ち、カッピングプレスによりアルミニウム板を円形に打ち抜くとともに、浅いカップ形素材に成形する。このカップ形素材に対してDI加工を施して缶底形状を付けるとともに周壁を形成し、さらにトリマーにより所定高さに縁切りして有底円筒形の缶体に成形する。次いで、缶体を洗浄したのち、外周塗装と焼付けを行い、さらに内面塗装と焼付けを行う。その後、ネックイン加工により縮径して肩部(4)、首部(5)、口頸部(6)を形成した後、ねじ加工により雄ねじ部(8)を形成し、さらにカール部(9)を形成する。
一方、キャップ(11)は、ロールオンピルファープルーフタイプのものであり、カップ状のアルミニウム製キャップシェルをボトル缶(S)の口頸部(6)に被せたのち、キャッピング装置により口頸部(6)に巻き締めて装着される。即ち、口頸部(6)に被せたキャップシェルの天面を上から所定の圧力で押圧しながら、円盤状のねじ賦形用のローラをキャップシェルの外周面に押しつけた状態で相対的に周回駆動することにより、口頸部(6)の雄ねじ部(8)の谷部に沿ってキャップシェルの周壁を塑性変形させることで雄ねじ部(8)に対応した雌ねじ部(12)を賦形すると共に、キャップシェルの下端裾部、即ち、ブリッジ部(13)を介して周方向に列設された複数個のスリット(14)で区画されたピルファープルーフ部(15)の下端部を、スカート部(7)の下方に巻き込んで装着されるものである。(16)はキャップ(11)の天板の下面側に設けられた密封用ライナーである。
本発明のボトル缶用の缶基体において、口頸部と胴部とはキャップに覆われる部分と覆われない部分とで区分する。図示例の缶基体(1)においては、キャップ(11)に覆われるスカート部(7)、雄ねじ部(8)およびカール部(9)が口頸部(6)を構成する。一方、首部(5)および肩部(4)は、縮径加工がなされているがキャップ(11)に覆われない部分であるので、胴部(2)の一部を構成する。なお、口頸部および胴部の形状も図示例のものに限定されない。 図2に示すように、上述したボトル缶(S)は、缶基体(1)の口頸部(6)のスカート部(7)の下端を境界として上下で異なる外面塗装が施されている。(20)は胴部塗膜、(30)は口頸部塗膜、(31)は口頸部塗膜(20)と胴部塗膜(30)との重なり部である。
胴部塗膜(20)は、胴部(2)、肩部(4)、首部(5)を覆って口頸部(5)のスカート部(7)の下端に達し、ベースコート層(21)、印刷層(22)、マット調トップコート層(23)の3層が積層されている。
前記ベースコート層(21)は、缶基体(1)の金属色を隠蔽して印刷層(22)の色彩を鮮明に見せるための層である。ベースコート層(21)を構成する樹脂や添加剤は限定されないが、ポリエステル/エポキシ/アミノ系樹脂及びポリエステル/アクリル/アミノ系樹脂を、紫外線硬化型塗料の場合は光重合開始剤を含有させたエポキシ/ポリエチレン系樹脂を推奨できる。また、缶基体(1)の金属色を打ち消すために、添加剤として白色顔料を添加するこも好ましい。ベースコート層(21)の好ましい厚さは5〜20μmであり、特に5〜15μmが好ましい。
前記印刷層(22)は缶の装飾性を高めるための層であり、全域を単一色で形成することも、単一色または複数色で模様や文字を描くこともできる。またベースコート層(21)上の全域に形成することも一部のみに形成することも任意である。印刷層(22)の材料として、缶体印刷に用いられるインク等を用いることができ、アルキッド樹脂を主成分とし、顔料(有機、無機、金属粉等)及び/または添加剤を含んだ溶剤系のインク等を例示できる。印刷層(22)は色が視認できれば良いので層の厚さは限定されず、0.5μm以上あれば良い。
図3に示すように、前記マット調トップコート層(23)は艶消し剤以外の、樹脂を主たる成分とする塗膜成分(24)中に粒子状の艶消し剤(25)を分散させたマット調樹脂組成物からなる。一部の艶消し剤粒子(25)がその一部分を層表面から覗かせて突出することで微細凹凸が形成されている。また、層表面から粒子が突出していない部分の層厚がマット調トップコート層(23)の最小層厚(Tmin)となる。前記最小膜厚(Tmin)の好ましい範囲は、2〜6μmである。最小層厚(Tmin)が2μ未満では塗膜ムラにより未塗布部分が発生する可能性があり、6μmを超えると耐剥離性が低下する恐れがある。特に好ましい最小層厚(Tmin)は3〜5μmである。
前記マット調樹脂組成物において、艶消し剤以外の塗膜成分は主として樹脂であり、樹脂の種類は透明であれば特に限定されるものではなく、エポキシ/フェノール樹脂、ポリエステル/アミノ系樹脂、エポキシ/ポリエステル/アクリル/アミノ系樹脂等を例示できる。エポキシ/ポリエステル/アクリル/アミノ系樹脂は水性塗料であるので、焼付け乾燥時に揮発する有機溶剤量が少ない。また、パラフィンワックス、マイクロクリスタンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、低分子ポリエステル樹脂、天然油脂、蝋等の添加剤も任意に配合される。さらに、塗装時にはシクロヘキサン、ソルベッソ(エクソン化学の商品名)等の溶剤や添加剤を加えて所要粘度の液状塗料に調製されるが、塗布後の焼付けによって塗料中の不揮発成分のみが残留する。従って、成形された缶基体(1)上のマット調トップコート層(23)におけるマット調樹脂組成物は、艶消し剤と、上述した塗布用に調製した塗料中の不揮発性成分(即ち艶消し剤を除く塗膜成分)とによって構成されている。
前記艶消し剤について、缶の持ちやすさを維持しつつ艶消し感を出すために、好ましい条件は以下のとおりである。
前記艶消し剤(25)の材質は、樹脂中に均一に分散させるとともに、塗布用ローラから缶基体(1)に転移させ易くするために、樹脂に近い比重を持つものが好ましい。また、下の層を見せるために透明であり、かつ艶消し感を出すために光を散乱させるものが好ましい。これらの観点から、ガラス、シリカ、樹脂等のビーズを推奨できる。さらに、表面に凹凸を有する多孔質ビーズが好ましい。多孔質ビーズは光を吸収または分散させることにより一定方向の光を弱める効果があり、艶消し感を増大させる効果がある。このため、表面に凹凸のないビーズよりも少量で同等の艶消し感が得られ、艶消し剤の添加量を減らすことで塗膜の耐剥離性を高めることができる。
また、艶消し感を出すためには、艶消し剤粒子(25)の一部分が層の表面から突出して層表面に微細凹凸が形成されている状態が好ましい。このため、艶消し剤の平均粒径(D)が最小層厚(Tmin)以上かつ最小層厚(Tmin)との差が2μm以下であり、粒子の累積分布におけるD90が最小膜厚(Tmin)の2倍以下であることが好ましい。平均粒径(D)が最小層厚(Tmin)に満たない場合は、層表面の微細凹凸が小さくなって十分な艶消し感が得られない。一方、平均粒径が最小層厚(Tmin)との差が2μmを超える場合は、表面粗さが大きくなって缶の持ちやすさが低下するおそれがある。D90が最小膜厚(Tmin)の2倍を超える場合も、表面粗さが大きくなって缶の持ちやすさが低下するおそれがある。特に好ましい艶消し剤の平均粒径(D)は最小膜厚(Tmin)+0.5〜1μmであり、特に好ましいD90は最小膜厚(Tmin)の1.3〜1.5倍である。
従って、上述した最小膜厚(Tmin)の好適範囲が2〜6μmであることから、艶消し剤の好ましい平均粒径(D)は2〜8μmであり、特に好ましい平均粒径(D)は2.5〜7μmである。同様に、好ましいD90は12μm以下であり、特に好ましいD90は2.6〜9μmである。
また、前記マット調トップコート層(23)において、缶の持ちやすさを維持しつつ艶消し感を得られる表面粗さ(Ra)の好ましい範囲は0.3〜1.0μmである。0.3μm未満では艶消し感が不足し、1.0μmを超えると持ちやすさが不足する。
また、缶の持ちやすさには個人差があるが、艶消し感は鏡面光沢度として数値で表すことができる。本発明においては、マット調トップコート層(23)の鏡面光沢度を艶消し剤を配合しない塗膜に対する相対値として表す。比較用塗膜は、マット調トップコート層(23)を構成するマット調樹脂組成物から艶消し剤をのみを除いたものを同じ条件で塗布し焼き付けたものとする。JIS Z8471「鏡面光沢度測定方法」により両者の60°鏡面光沢度を測定し、比較塗膜の鏡面光沢度を100としたときのマット調トップコート層(23)の鏡面光沢度を百分率で表す。そして、十分な艶消し感を視認できるマット調トップコート層(23)として、60°鏡面光沢度が比較用塗膜の75%以下であることが好ましく、特に70%以下を推奨できる。なお、過度に艶消し感を増大させると印刷層(22)が不鮮明になり却って意匠性が損なわれるおそれがあるため、60°鏡面光沢度は比較用塗膜の45%以上が好ましく、特に50%以上が好ましい。
また、前記マット調樹脂組成物における好ましい艶消し剤の割合は、艶消し剤以外の塗膜成分100質量部に対し艶消し剤が2〜10質量部の割合である。艶消し剤以外の塗膜成分100質量部に対して2質量部未満であれば艶消し感が乏しく、10質量部を超えても艶消し感に大きな変化はないので増量による効果は少ない。また、艶消し剤の割合が多くなると、均一に分散しにくくなって塗布用ロールから缶基体(1)へ転移しにくくなる傾向があり、艶消し感にむらができるおそれがあるので、この点からも10質量部以下が好ましい。特に好ましい艶消し剤の割合は、艶消し剤以外の塗膜成分100質量部に対して3〜8質量部であり、さらに好ましい割合は3.5〜5質量部である。なお、ここで言う艶消し剤以外の塗膜成分とは、上述したように塗布用に調製した塗料中の不揮発成分である。従って、上記艶消し剤の割合は焼付け後の塗膜における割合である。
本発明におけるマット調金属缶は、塗膜の最外層としてマット調トップコート層(23)が塗装されていれば良く、他の層の有無は任意に設定することができ、層構成に応じて様々な外観が得られる。従って、ベースコート層(21)および印刷層(22)の有無は任意であり、どちらか一方のみが塗装されている場合やマット調トップコート層(23)の単層も本発明に含まれる。例えば、缶基体(1)上にマット調トップコート層(23)を形成すれば、缶基体(1)の金属色に艶消し感を加えた特有の視覚効果が得られる。また、缶基体(1)表面においてマット調トップコート層(23)が部分的に形成されていても良く、マット調トップコート層(23)と艶消し剤を含まない光沢のあるトップコート層とが混在している場合も本発明に含まれる。さらに、ベースコート層(21)および印刷層(22)以外の層を有する場合も本発明に含まれる。
一方、口頸部塗膜(30)は艶消し剤を含有しない非マット調樹脂組成物からなる非マット調トップコート層の単層塗膜である。
ボトル缶(S)の口頸部(6)はネックイン加工、ねじ加工といった成形度の大きい加工によって成形されるため、前記マット調トップコート層(23)のような表面粗さの粗い塗装を行うと加工時に塗膜が割れるおそれがある。また、支障なく成形できた場合でも、開栓または閉栓に塗膜が割れたり、密閉性が低下するおそれがある。このため、口頸部(6)は艶消し剤を含有せず、平滑な仕上がり表面を得られる塗料で塗装することが好ましい。その一方で、開栓・閉栓時のトルクが増加することは好ましくなく、口頸部(6)の成形性、キャップ(11)の密閉性、開栓・閉栓の容易性を満たすことが要求されている。かかる観点から、非マット調樹脂組成物としては、例えば前記マット調樹脂組成物に用いる種々の樹脂の1種または2種以上、あるいは艶消し剤以外の塗膜成分と同一成分による塗膜を例示できる。さらには、後述する他の樹脂組成物でも良い。また、口頸部塗膜(30)は単層である必要はなく、缶基体(1)との密着性を確保するためのサイズコート層を設け、その上に非マット調トップコート層を積層しても良い。
前記サイズコート層として、エポキシ/フェノール系樹脂またはポリエステル/アミノ系樹脂の塗膜が挙げられる。エポキシ樹脂としては、例えばビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。ポリエステル−アミノ系樹脂はポリエステル樹脂とアミノ樹脂とから得られる。ポリエステル樹脂としては、多塩基酸成分と多価アルコールとのエステル化合物からなるものが使用できる。ポリエステル樹脂と組み合わせるアミノ樹脂としては、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン等のアミノ成分と、アルデヒドとの反応によって得られるメチロール化アミノ樹脂が挙げられる。前記樹脂は、溶剤とともに塗布用の塗料に調製され、この塗布用塗料中の樹脂量は15〜20質量%程度が好ましい。また、溶剤としては芳香族炭化水素系溶剤やシクロヘキサノン等を推奨できる。また、サイズコート層の膜厚は10〜25μmが好ましい。
口頸部(6)の非マット調トップコート層を構成する樹脂組成物として、ワックスを配合したポリエステルを主成分とし、焼付け後の塗膜となったときのガラス転移温度(Tg)が60〜100℃となされた樹脂組成物(以下、「口頸部用樹脂組成物」と略称する)を推奨できる。キャップ(11)の開栓トルクが上昇する原因の一つに、飲料充填時のレトルト処理やホットベンダーの長時間利用による塗膜のキャップ内面への融着が挙げられる。本発明で用いる口頸部用樹脂組成物は、ガラス転移温度(Tg)を従来の口頸部塗装に用いられる塗料よりも高い温度、即ち60〜100℃とすることにより塗膜のキャップ内面への融着を防ぎ、開栓トルクの上昇を抑制することができる。ガラス転移温度(Tg)が60℃未満であると塗膜のキャップ内面への融着が起こりやすくなり、100℃を超えると溶剤に対する溶解度が低下し、粘度も上昇するので固形成分濃度が制限されたり塗布性が悪くなったりするおそれがある。ガラス転移温度(Tg)は、重合度の高いポリエステルを用いたり、ワックスを配合することによって高温側にシフトさせることができる。さらに、前記口頸部用樹脂組成物は缶基体(1)との密着性が優れているので、サイズコート層を下塗りすることなく単層で用いることができる。このため、少ない塗装工程数で開栓トルクの小さいボトル缶を製作することができる。
前記口頸部用樹脂組成物に用いるポリエステルの代表的なものはポリエチレンテレフタレート(PET)であるが、ポリエチレンナフ夕レ一ト(PEN)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)等も使用可能である。これらのポリエステルの1種または2種以上を用いる他、これらのポリエステルにアミノ樹脂、エポキシ樹脂等を配合して用いることも好ましい。これらの中でアミノ樹脂は硬化性を高める効果があり、エポキシ樹脂を配合すると密着性を向上させる効果がある。アミノ樹脂はメラミン、尿素などとホルムアルデヒドとを反応させた樹脂が一般的に使用可能であり、エポキシ樹脂はビスフェノールA型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂等が使用可能である。これらのポリエステル以外の樹脂の配合量は、ポリエステル100質量部に対して90質量部以下が好ましい。特にアミノ樹脂の場合は好ましくは30〜90質量部、さらに好ましくは35〜50質量部を配合する。エポキシ樹脂では10質量部以下、好ましくは3〜7質量部配合する。
前記ワックスは、レトルト処理やホットベンダーにおいてもキャップの開栓トルクをできるだけ小さく保持するために配合される成分である。好適なワックスとしてはパラフィンワックス、マイクロクリスタンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、低分子ポリエステル樹脂、天然油脂、蝋等を例示できる。また、ワックスは、融点の異なる三種の混合物、即ち、低融点:30〜60℃、中融点:61〜100℃、高融点:101〜300℃の三種のワックスの混合物を使用することが好ましい。低融点ワックスは滑り性が優れており、高融点ワックスは耐性が優れているので、両方の特性を利用することができる。塗布用に調製した塗料中のワックスの好ましい配合量は、樹脂(塗料中の溶剤等の揮発成分を除く)100質量部に対して0.1〜3.0質量部であり、特に好ましくは0.3〜0.7質量部である。また、少量のフッ素系ポリマーを配合することも好ましい。
さらに、該塗料中にシリコンオイルを樹脂100重量部に対して0.01〜1.0質量部配合することにより、キャップの内面塗膜と口頸部塗膜とのブロッキングを防止し、開栓トルクを低減させる効果が得られる。
さらに、前記口頸部用樹脂組成物にレベリング剤及び消泡性を高めるためにシリコーン樹脂を少量配合することも好ましい。
また、前記口頸部用樹脂組成物を塗布用塗料に調製するための溶剤としては、炭化水素系、ケトン系、アルコール系、エステル系、セロソルブ系等の溶剤あるいはこれらの混合溶剤を使用する。塗布用塗料中の不揮発成分としては、約20〜50質量%、好ましくは25〜35質量%のものが、粘度的に使用しやすい。
上述した缶基体(1)への塗装および成形は例えば下記(1)〜(6)の順序で行われる。
(1)ネックイン加工前の円筒形缶基体(1)に対し、スカート部(7)の下端予定部より上側に口頸部用の非マット調トップコート層(30)用の塗料を塗装し、前記非マット調トップコート層(30)の塗料とは重ならないように間隔を設けて、前記スカート部(7)の下端予定部より下側にベースコート層(21)を塗装し、同時に焼き付ける。一般に、前記非マット調トップコート(30)は無色であり、前記ベースコート層(21)は白色であることが多いので、これら2種類の塗料は重ならない方が好ましい。
(2)ベースコート層(21)上に印刷層(22)を塗装する。
(3)前記印刷層(22)上にマット調トップコート層(23)用の塗料を塗装する。このとき、マット調トップコート層(23)用の塗料の上端縁が非マット調トップコート層(30)用塗料の下端縁上に重なるように塗装して未塗装部分が生じないようにすることが好ましい。未塗装部分が存在すると変色等の原因となる。前記重なり部が図2における重なり部(31)となる。
(4)焼付けを行う。これにより3層の胴部塗膜(20)と単層の口頸部塗膜(30)が形成される。
(5)必要に応じて内面塗装および焼付けを行う。
(6)ネックイン加工およびねじ加工を行って肩部(4)、首部(5)、口頸部(6)を成形する。これにより、ボトル缶(S)の形状となる。
本発明のマット調金属缶の形状は上記のスクリューキャップを装着するボトル缶に限定されるものではない。他の缶形状として、図4に示すような有底円筒状の缶基体(17)の上部開口端にプレート状缶蓋をかしめて取り付け、センターパネルの一部を破断させて注ぎ口を形成する缶蓋固定タイプの飲料用缶を例示できる。前記飲料用缶は前記ボトル缶と同じく、円筒状の素材に対して外面塗装を行った後、開口縁部を少し縮径するとともに缶蓋を取り付けるためのフランジ加工が施される。この缶蓋固定タイプの飲料用缶は缶蓋が缶胴に固定されるものであるから、ボトル缶のように缶蓋の装着部分と胴部とを塗り分けるには及ばず、缶基体(17)の外周面に最外層をマット調トップコート層(23)とする塗装を行えば良い。
また、ボトル缶(S)の口頸部(6)と胴部(2)とでトップコート層を塗り分ける場合、必ずしもキャップ(11)で覆われるスカート部(7)の下端で塗り分ける必要はない。少なくとも口頸部(6)の雄ねじ部(6)が非マット調トップコート層で塗装されていれば足り、スカート部(7)はマット調トップコート層で塗装されていても良い。逆に、首部(5)や肩部(4)まで非マット調トップコート層(30)で塗装することも任意に選択できる。ただし、重なり部(31)に僅かな段差が生じるため、図2に参照されるように外方に膨らむスカート部(7)の下端で塗り分けると段差が目立ちにくくなって外観上好ましい。
さらに、本発明のマット調金属缶は飲料用金属缶に限定されない。また、缶基体の材質も限定されず、アルミニウム缶、スチール缶、その他の金属缶のいずれにも適用できる。
[試験例1:艶消し感と持ちやすさ]
図4に示す缶蓋固定タイプの飲料用缶に塗装を行った。缶基体(17)として胴径66mmのアルミニウムDI缶を用い、外周面の全域にベースコート層、印刷層、トップコート層の3層の外面塗装を行った。
ベースコート層用塗料は比較例2以外は下記組成の塗料を用いた。
〔ベースコート層用塗料〕
白色顔料(酸化チタン):40質量%
熱硬化性エポキシ樹脂:35質量%
残部:エチレングリコールモノブチルエーテル(溶剤)および添加剤
印刷層用のインキは比較例3以外は下記組成の印刷用インキを用いた。
〔印刷用インキ〕
金色顔料:30質量%
アルキッド樹脂:40質量%
残部:高沸点系石油溶剤および添加物
トップコート層用塗料は、下記組成の混合物を塗料基剤として用い、各実施例においては前記塗料基剤に艶消し剤を配合してマット調塗料を調製して用い、各比較例においては前記塗料基剤をそのまま用いた。
〔塗料基剤の組成〕
ポリエチレンテレフタレート(数平均分子量25000):60質量%
メラミン−ホルムアルデヒド(数平均分子量2000):37質量%
ビスフェノールA型樹脂(数平均分子量10000):3質量%
(実施例1〜6)
艶消し剤として、表1に示す平均粒径(D)およびD90の無色の多孔質シリカ粒を用いた。マット調トップコート層用塗料は、前記塗料基剤と、表1に記載した量のシリカ粒とを混合して調製した。
まず、缶基体(17)に前記ベースコート用塗料を塗布し、200℃で30秒焼き付けて厚さ10μmのベースコート層(21)を形成した。次いで前記ベースコート層(21)に厚さ2μmの印刷層(22)を形成し、さらにマット調トップコート用塗料を塗布して、200℃で30秒焼き付けてマット調トップコート層(23)を形成した。焼付け後のマット調トップコート層(23)の層厚は4μmとなり、焼付け後の塗膜における艶消し剤の量は、艶消し剤以外の成分(即ち不揮発成分)100質量部に対して表1に示す量となった。
(比較例1)
トップコート層用塗料として艶消し剤を含まない前記塗料基剤を用いた。
各実施例と同じく白色ベースコート層(21)上に印刷層(22)を形成し、前記塗料基剤を塗布して200℃で30秒焼き付け、層厚4μmの非マット調トップコート層を形成した。
(比較例2)
ベースコート層用塗料の基剤として、酸化チタン顔料40質量%およびポリエステル/エポキシ/アミノ樹脂系焼付型樹脂35%を含み、残部が溶剤および添加剤からなる混合物を用いた。ベースコート層用塗料は、前記基剤100質量部に対して平均粒径40μmのウレタン樹脂製ビーズを5.0質量部を配合して調製した。また、トップコート層用塗料として前記塗料基剤を用いた。
缶基体(17)に前記ベースコート用塗料を塗布し、200℃で30秒焼き付けて最小層厚が15μmのベースコート層を形成した。このベースコート層は層表面に樹脂ビーズが突出して表面に凹凸を有するものである。
次いで、比較例1と同じく、印刷層を形成し、前記塗料基剤を塗布して200℃で30秒焼き付け、層厚4μmのトップコート層を形成した。このトップコート層はベースコート層中の樹脂ビーズによって表面に凹凸が形成されている。
(比較例3)
印刷用インキの基剤として、金色顔料30質量%およびアルキッド樹脂40質量%を含み、残部が高沸点系石油溶剤および添加物からなる混合物を用いた。そして、前記基剤100質量部に対して、平均粒径10μmの発泡性マイクロカプセルを5質量部を配合して発泡性インキを調製した。前記発泡性マイクロカプセルは、樹脂からなる球形の外殻の中に低沸点の炭化水素(ブタン、プロパン等)を封入したものであり、焼付け時の加熱によって粒径が数倍に膨張するものである。また、トップコート層用塗料として前記塗料基剤を用いた。
各実施例と同じく缶基体(17)上にベースコート層を形成した。次いで前記ベースコート層上に前記印刷用インキを塗布して厚さ2μmの印刷層を形成した。さらに、トップコート層として前記塗料基剤を塗布して200℃で30秒焼き付けた。この焼付けにより、印刷層のマイクロカプセルが膨張して印刷層の層表面から大きく突出するとともに、突出した膨張マイクロカプセルがトップコート層を押し上げ、表面に凹凸が形成された。
外面塗装した各アルミニウム缶について、艶消し感、60°表面光沢度、静摩擦係数(滑りやすさ)、鉛筆硬度(傷つきにくさ)、表面粗さおよび持ちやすさを以下の方法で評価した。評価結果を表1に示す。
〔艶消し感〕
目視観察により、艶消し剤を配合していない塗料基剤で非マット調トップコート層を形成し、最も光沢のある比較例1の「1」から、最も艶消し感のあるものの「5」まで5段階で相対的に評価した。
〔60°表面光沢度〕
JIS Z8471「鏡面光沢度測定方法」により60°鏡面光沢度を測定し、塗料基剤でトップコート層を形成した比較例1の鏡面光沢度を100%とし、比較例1に対する鏡面光沢度の比率で評価した。
〔静摩擦係数〕
新東科学社製摩擦測定機(HEIDON・10)により測定した。
〔鉛筆硬度〕
旧JIS K5400に基づいて測定した。即ち、木部のみを削ってしんを円柱状に約3mm露出させ、先端が平らで角が鋭くなるようにした鉛筆(三菱ユニ)を約45°の角度で持ち、しんが折れない程度にできる限り強く塗膜面に押し付けながら、約1cm/秒で約1cm押し出して塗膜面を引っかく。1回引っかくごとに鉛筆のしんの先端を研いで、同一の濃度記号の鉛筆で5回ずつ試験を繰り返し、2回以上試験片の素地に届く破れが認められた場合、その鉛筆記号より1段階下位の濃度記号を鉛筆硬度とした。
〔表面粗さ〕
ミツトヨ社製小型表面粗さ測定機(SJ−301)にて測定し、n=3の平均値で表面粗さ(Ra)を求めた。
〔持ちやすさ〕
各塗装済み缶に対して開口縁部を縮径するとともにフランジ加工を施して缶胴を完成させ、水を充填してプレート状の缶蓋をかしめて取り付けた。この充填済み缶を19人の被験者に持たせ、被験者19人中で持ちやすいと評価した人数で評価した。例えば、実施例1の「12/19」は19人中12人が持ちやすいと評価したものである。
Figure 0005123600
表1の結果より、各実施例の外面塗装は、持ちやすさ、滑りやすさ(静摩擦係数)、耐傷つき性(鉛筆硬度)を維持しつつ艶消し感を感じられるものであった。
[試験例2:ボトル缶とボトル缶における塗り分け]
ボトル缶用の缶基体(1)に対し、外周面の全域に試験例1と同じ塗装を行い、ネックイン加工により口径38mmに縮径し、さらにねじ加工を施して口頸部(6)を成形してボトル缶(S)を製作した(図1、図2参照)。製作したボトル缶は、比較例1を除いて口頸部(6)に塗装の剥がれが生じた。
また、図2に示すように、ボトル缶用の缶基体(1)に対して口頸部(6)のスカート部(7)の下端部(予定部)の上下で塗膜の塗り分けを行った。胴部塗膜(20)はベースコート層(21)、印刷層(21)、マット調トップコート層(23)の3層構造とし、各層の材料および厚さは実施例1と同一とした。口頸部塗膜(30)は下記実施例7〜10の非マット調トップコート層とした。
(実施例
口頸部(6)の非マット調トップコート層(30)用塗料として、下記組成の口頸部用樹脂組成物を用いた。
(口頸部用樹脂組成物)
樹脂
ポリエチレンテレフタレート(数平均分子量25000):68質量%
メラミン−ホルムアルデヒド(数平均分子量2000):29質量%
ビスフェノールA型樹脂(数平均分子量10000):3質量%
ワックス
パラフィンワックス:前記樹脂混合物100質量部に対して0.36質量部
溶剤(4種混合)
シクロヘキサノン:36質量%
ソルベッソ(エクソン化学の商品名):40質量%
エチレングリコールモノノルマルブチルエーテル:16質量%
n−ブタノール:8質量%
樹脂組成物中の不揮発成分(樹脂およびワックス)は28質量%
塗装と焼付けの順序は、ベースコート層(21)の塗装および口頸部(6)の非マット調トップコート層(30)の塗装、焼付け(200℃×30秒)、印刷層(22)の塗装、胴部(2)のマット調トップコート層(23)の塗装、焼付け(200℃×30秒)である。また、焼付け後の口頸部の非マット調トップコート層(30)の層厚は3μmである。
(実施例
口頸部(6)の非マット調トップコート層(30)用塗料として、下記組成の口頸部用樹脂組成物を用いた。
(口頸部用樹脂組成物)
樹脂
ポリエチレンテレフタレート(数平均分子量35000):58質量%
メラミン−ホルムアルデヒド(数平均分子量2000):36質量%
ビスフェノールA型樹脂(数平均分子量10000):6質量%
ワックス
パラフィンワックス:前記樹脂混合物100質量部に対して0.36質量部
溶剤(4種混合)
シクロヘキサノン:38質量%
ソルベッソ(エクソン化学の商品名):42質量%
エチレングリコールモノノルマルブチルエーテル:14質量%
n−ブタノール:6質量%
樹脂組成物中の不揮発成分(樹脂およびワックス)は25質量%
塗装と焼付けの順序は実施例と同じであり、焼付け後の口頸部(6)の非マット調トップコート層(30)の層厚は3μmである。
(実施例
口頸部(6)の非マット調トップコート層(30)用塗料として試験例1で用いたマット調樹脂組成物の塗料基剤を用いた。
塗装と焼付けの順序は、ベースコート層(21)の塗装および口頸部(6)の非マット調トップコート層の塗装、焼付け(200℃×30秒)、印刷層(22)の塗装、胴部(2)のマット調トップコート層(23)の塗装、焼付け(200℃×30秒)である。また、焼付け後の非マット調トップコート層の層厚は4μmである。
(実施例10
口頸部塗膜(30)として、下記樹脂組成物からなるサイズコート層と実施例の非マット調トップコート層を積層した。
(サイズコート層用樹脂組成物)
ポリエチレンテレフタレート(数平均分子量25000):67質量%
メラミン−ホルムアルデヒド(数平均分子量2000):30質量%
ビスフェノールA型樹脂(数平均分子量10000):3質量%
塗装と焼付けの順序は、ベースコート層(21)の塗装および口頸部(6)のサイズコート層の塗装、焼付け(200℃×30秒)、印刷層(22)の塗装、胴部(2)のマット調トップコート層(23)の塗装、焼付け(200℃×30秒)、口頸部(6)の非マット調トップコート層の塗装、焼付け(200℃×30秒)である。また、焼付け後のサイズコート層の層厚は15μm、非マット調トップコート層の層厚は4μmである。
外面塗装がなされた各缶基体(1)をネックイン加工により口径38mmに縮径し、さらにねじ加工を施して口頸部(6)を成形してボトル缶(S)を製作した(図1、図2参照)。製作したボトル缶(S)は、実施例を除いて口頸部(6)の塗装剥がれは全く無かった。実施例もわずかに剥がれが認められた程度であった。
さらに成形したボトル缶(S)に水を充填し、カップ状のアルミニウム製キャップシェルをボトル缶(S)の口頸部(6)に被せてキャッピング装置により口頸部(6)に巻き締めて装着し、キャップシェルの天面を上から所定の圧力で押圧しながら、円盤状のねじ賦形用のローラで雄ねじ部(8)の谷部に沿って雌ねじ部(12)を賦形した。これにより、ボトル缶(S)にキャップ(11)された(図1参照)。
キャップ(11)を装着したボトル缶について、下記の試験および測定を行った。試験結果を表2に示す。
〔口頸部塗膜のガラス転移温度(Tg)の測定〕
測定器:(株)リガク製 型番:サーモプラスTMA8310
荷重:10g
測定方式:昇温ペネトレーション法
昇温速度:4℃/分
Tgの測定:試料中へピンが貫入していく過程を測定し、貫入し始めた温度をTgとする。
〔耐レトルト性〕
125℃、30分の蒸気処理(レトルト処理)を行い、処理後の白化、ブリスターを目視で判定した。
〔開栓トルク〕
充填後、20℃で開栓したときの1stトルク(キャップ内面の密封用ライナー(16)が滑り始める時の最大トルク)を測定した。
Figure 0005123600
表2の結果より、ボトル缶においてはキャップを装着する口頸部を艶消し剤を配合しない非マット調トップコート層で塗装することで、成形時の塗膜割れを防止できることを確認した。特に、ガラス転移温度(Tg)60〜100℃となされた樹脂組成物で塗装することにより、開栓トルクが低減された。そして、口頸部と胴部のトップコート層を塗り分けることでマット調のボトル缶を製作することができた。
本発明によれば持ちやすさを維持しつつ艶消し感が得られるので、様々の意匠が求められる飲料用缶として好適に用いることができる。
ボトル缶およびキャップの半截正面図である。 外面塗装されたボトル缶の部分断面図である。 胴部塗膜の拡大断面図である。 缶蓋固定タイプの飲料用缶の断面図である。
符号の説明
S…ボトル缶
1,17…缶基体
2…胴部
6…口頸部
7…スカート部
8…雄ねじ部
11…キャップ
20…胴部塗膜
21…ベースコート層
22…印刷層
23…マット調トップコート層
24…艶消し剤以外の成分(艶消し剤以外の塗膜成分)
25…艶消し剤の粒子
30…口頸部塗膜(非マット調トップコート層、口頸部トップコート層)

Claims (9)

  1. 金属製缶基体の外面が塗装された金属缶であって、
    塗膜の最外層として、樹脂成分中に粒子状の艶消し剤を分散させてなるマット調トップコート層を有し、
    前記マット調トップコート層は艶消し剤の粒子が層表面から突出することにより微細凹凸が形成され、前記艶消し剤の平均粒径が最小層厚以上かつ最小層厚との差が2μm以下であり、粒子の累積分布におけるD90が最小膜厚の2倍以下であることを特徴とするマット調金属缶。
  2. 前記マット調トップコート層の表面粗さ(Ra)が0.3〜1.0μmである請求項に記載のマット調金属缶。
  3. 前記マット調トップコート層の60°鏡面光沢度が、艶消し剤を除く塗膜成分で形成された塗膜の75%以下である請求項1または2に記載のマット調金属缶。
  4. 前記マット調トップコート層中の艶消し剤は、艶消し剤を除く塗膜成分100質量部に対し2〜10質量部の割合で配合されている請求項1〜のいずれかに記載のマット調金属缶。
  5. 前記缶基体とマット調トップコート層との間に、ベースコート層および印刷層のうちの少なくとも1層を有する請求項1〜のいずれかに記載のマット調金属缶。
  6. 前記缶基体は、円筒状の胴部の上部が縮径されて口頸部が形成され、該口頸部にキャップ被着用の雄ねじ部が形成されたボトル缶用の缶基体であって、前記胴部における塗膜の最外層が前記マット調トップコート層であり、前記口頸部の少なくとも雄ねじ部における塗膜の最外層が樹脂を主成分として艶消し剤を含まない非マット調トップコート層である請求項1〜のいずれかに記載のマット調金属缶。
  7. 前記非マット調トップコート層が、ワックスを配合したポリエステルを主成分としガラス転移温度(Tg)が60〜100℃となされた樹脂組成物からなる口頸部用トップコート層である請求項に記載のマット調金属缶。
  8. 口頸部の塗膜は前記口頸部用トップコート層の単層からなる請求項に記載のマット調金属缶。
  9. 前記胴部のマット調トップコート層と前記口頸部の非マット調トップコート層とが、継ぎ目部分において重なり部を形成している請求項6〜8のいずれかに記載のマット調金属缶。
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