JP5122709B2 - 精神集中向上用組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、精神集中向上用組成物、ならびに精神集中の向上方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
作業時や学習時等において精神機能が果たす役割は非常に重要である。環境や体調、心理が変化する過程の中で最も適切な対応動作または判断を行なうためには集中し、瞬時に選択、判断し、行動に移すことが必要であり、また、作業を効率よく持続するためには、精神を集中して作業を続ける必要がある。しかし、いずれの場合においても、疲労、連続作業、時間の経過、飽き、加齢、身体的障害、情緒障害、緊張、振動、騒音等の環境、動機の欠如、甘え、妥協、依頼心等の理由により、作業効率が低下したり、判断力が鈍ることは避けられない。
【0003】
これまでに、作業時や学習時等の集中維持のためにグルコースを摂取することが知られているが、一時的に血糖値が上がるだけで.持続性は低い。また、運動時の精神集中を高める、カフェインや塩酸コカイン等の興奮剤、アテノロール等のβ遮断剤等が知られているが、それらの薬物には副作用があり、国際オリンピック委員会医事委員会でも禁止されている。また、クレアチニン製剤も用いられているが、効果は顕著ではないことが報告されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、作業時や学習時等における種々の要因からくる心理的影響および/または身体的影響を抑制して、作業効率や学習効率等を効果的かつ安全に向上させることができる精神集中向上用組成物、ならびに精神集中の向上方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、お茶に含まれるテアニンにより所望の効果が発現されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、
〔1〕 テアニンを含有することを特徴とする、達成すべき課題が明確にされている場合の連続作業に対し、作業時の疲労度を軽減して作業の正確性を向上させる作業の正確性向上剤であって、該作業を行うに際し、前記作業の正確性の向上のために投与する、正確性向上剤、
〔2〕 作業が、一定時間内に一定の業務の遂行を責務として負うものである、前記〔1〕記載の向上剤、ならびに
〔3〕 作業の5〜90分前に投与される、前記〔1〕又は〔2〕記載の向上剤
に関する。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の精神集中向上用組成物(以下、組成物という)はテアニンを含有することを特徴とするものである。当該組成物によれば、主として、作業時や学習時等においてマイナスに働く、種々の要因からくる心理的影響および/または身体的影響を抑制して、作業効率や学習効率等を効果的かつ安全に向上させることができる。本発明の組成物の所望の効果の発現は、かかる組成物に含有されるテアニンについて初めて見出された精神集中向上作用に基づくものである。
【0008】
なお、本明細書において、「精神集中」とは「集中」と同義であり、知覚されるものの中から特定の1つの事柄や行動を選択し、当該事柄や行動に対し精神を集める働きをいう。「向上」とは、所望の働き・作用等の低下を抑制し現状に維持すること、および/または現状に比し当該働き・作用等を高めることをいう。「種々の要因」とは、作業等を行う個体に対し何らかの心理的影響および/または身体的影響を生起させる原因となり得るものであれば特に限定されるものでないが、たとえば、疲労、連続作業、時間の経過、飽き、加齢、身体的障害、情緒障害、緊張、振動、騒音等の環境、動機の欠如、甘え、妥協、依頼心等を挙げることができる。また、「心理的影響」および「身体的影響」とは前記要因となんらかの因果関係が認められる、それぞれ精神的および身体的な影響であれば特に限定されるものではない。「抑制」とは、特定の働き・作用等の発現を抑えることに加え、特定の働き・作用等を相殺することを含む。
【0009】
本発明に用いられるテアニンとは、グルタミン酸の誘導体(γ−グルタミルエチルアミド)であり、天然には茶葉に多く含まれるアミノ酸成分である。本発明において見出されたテアニンによる精神集中向上作用の作用メカニズムは未だ不明であるが、テアニンが、脳内における▲1▼神経細胞内の情報の伝達、▲2▼神経伝達物質又はその前駆体の生合成又は分解、▲3▼神経伝達物質の放出と取り込み、▲4▼前記▲1▼〜▲3▼に関係する酵素または補酵素、以上▲1▼〜▲4▼のいずれかに何らかの作用を及ぼし、その精神集中向上作用が発現されるものと考えられる。なお、本発明の組成物は、従来の薬物に見られるような副作用の発生の心配がなく、安全に使用することができる。
【0010】
本発明の組成物によれば作業時や学習時等に精神集中を向上させることができるので、主として前記心理的影響および/または身体的影響が効果的に抑制され、作業効率や学習効率等を効果的かつ安全に向上させることができる。また、かかる効果には持続性が認められる。特に、本発明の組成物は、達成すべき課題が明確であるような場面における精神集中の向上に適している。かかる観点から、本発明の組成物は、作業時または学習時における精神集中向上のために好適である。なお、「作業」とは、一般に肉体や頭脳を働かせて仕事をすることと定義されるが、かかる定義に含まれ得るものであれば特に限定されるものではない。また、「学習」とは、一般に学び習うこと、新しい知識や技術を習得することと定義されるが、かかる定義に含まれ得るものであれば特に限定されるものではない。
【0011】
なお、本発明に用いるテアニンの精神集中向上作用の発現は、たとえば、後述の試験例1(▲1▼注意力計による注意の集中状態の測定、ならびに▲2▼フリッカーテストによる疲労度の測定)に従って評価することができる。また、回転盤追従動作(竹井機器(株)製)、内田クレペリン精神検査((株)日本精神技術研究所製)、キーボード連打試験によっても同様に評価することができる。すなわち、テアニン摂取後における、テアニン摂取前と比較した作業の正確性の向上等を、前記方法等によって確認することにより、テアニンの精神集中向上作用の発現を評価することができる。
【0012】
本発明に用いられるテアニンの製造法としては、たとえば、有機合成法〔Chem.Pharm.Bull.,19(7)1301−1307(1971)〕、発酵法(特開平5−68578号公報、特開平5−328986号公報)または当該方法においてエチルアミンをエチルアミン塩酸塩等のエチルアミン誘導体に置き換える変法、ピログルタミン酸をエチルアミン塩酸塩と反応させる方法(特開平9−263573号公報)、植物細胞培養法(特開平5−123166号公報)、茶葉より抽出する方法等が挙げられるが、製造工程の簡易化およびコストの観点から、大量かつ安価にテアニンを得ることができる発酵法の利用が好ましい。なお、ここでいう茶葉としては、緑茶葉、ウーロン茶葉、紅茶葉等が挙げられる。また、市販品〔サンテアニン(登録商標)太陽化学(株)製〕を用いてもよい。
【0013】
テアニンは、L−テアニン、D−テアニン、DL−テアニンのいずれも使用可能であるが、中でもL−体は食品添加物にも認められており、経済的にも利用しやすいため、本発明においてはL−体が好ましい。また、使用されるテアニンの形態としては、精製品、粗精製品、抽出エキス等、いずれの形態でも良い。
【0014】
本発明の組成物におけるテアニンの含有量は特に限定されるものではなく、所望により適宜調整すればよい。たとえば、組成物中における好適なテアニン含有量は、好ましくは0.00025〜100重量%、より好ましくは0.005〜100重量%、さらに好ましくは0.05〜100重量%である。
【0015】
本発明の組成物中のテアニンの検出方法は特に限定されるものではないが、オルトフタルアルデヒド(OPA)によるプレカラムでの誘導体化後、ODSカラムを用いての高速クロマトグラフィー(HPLC)で分離し、蛍光検出器で検出定量する方法やODSカラムを用いてHPLCで分離し、波長210nmで検出定量する方法が好ましい。
【0016】
本発明の組成物には、さらに各種ミネラルを含有させてもよい。ミネラルを含有してなる組成物は、生体内に不足しがちな必須元素、微量必須元素を補うことができるというさらなる効果が奏されるため、より好ましいものである。組成物におけるミネラルの含有量は、たとえば、0.0001〜99.9重量%が好ましく、0.01〜99.9重量%がより好ましい。かかるミネラルとしては、鉄、マグネシウム、銅、亜鉛、セレン、カルシウム、カリウム、マンガン、クロム、ヨウ素、モリブデン、ニッケル、バナジウム等、生体の恒常性の維持、調節のために必須の金属類またはこれらの金属塩類を挙げることができる。これらは単独でもしくは2種以上混合して用いることができる。
【0017】
また、生薬、ハーブ、アミノ酸、ビタミン、その他食品に許容される素材・原料を共に含有させてもよい。それらは単独でもしくは2種以上混合して用いることができる。
【0018】
生薬としては特に限定されるものではないが、たとえば、ギムネマ、ガルシニア、カノコソウ、杜仲、当帰、芍薬、牡丹、高麗人参、霊芝、地黄茎、ナツメ等が挙げられ、精神安定に有効な霊芝、地黄茎、ナツメ等が好ましい。その形態としては特に限定はなく、抽出物、乾燥品等いずれでもよい。また、ハーブは特に限定されるものではないが、たとえば、アニス、キャロットシード、クローブ、コリアンダー、サイプレス、シナモン、ジュニパー、ジンジャー、スイートオレンジ、パインニードル、バジル、パチュリ、ビターオレンジ、フェンネル、ブラックペッパー、ベイ、ペパーミント、ベルガモット、マンダリン、ミルラ、レモングラス、ローズマリー、グレープフルーツ、シダーウッド、シトロネラ、セージ、タイム、ティートゥリー、バイオレットリーフ、バニラ、ヒソップ、ユーカリ、ライム、レモン、イランイラン、カルダモン、クラリセージ、ジャスミン、ゼラニウム、カモミール、ブルガリアローズ、ローズ、オリバナム、ラベンダー、カミツレ、ゼラニウム、サンダルウッドネロリ、バーベナ、プチグレン、ベチバー、マージョラム、メリッサ、ローズウッド、オトギリソウ、セイントジョーンズワート、カワカワ等が挙げられる。中でも、鎮静効果、リラックス効果を有するペパーミント、ベルガモット、イランイラン、ゼラニウム、カモミール、ラベンダー、セイントジョーンズワート、カワカワが好ましい。その形態としては、たとえば、抽出エキス、精油、ハーブティ等が挙げられ、特に限定されるものではない。アミノ酸も特に限定されるものではない。たとえば、L型アミノ酸では、アラニン、アルギニン、アルギニン酢酸塩、塩酸アルギニン、アスパラギン、チトルリン、システイン、シスチン、グルタミン、グルタミン酸およびその塩類、グリシン、ヒスチジンおよびその塩類、ハイドロキシプロリン、イソロイシン、ロイシン、リジンおよびその塩類、メチオニン、オルニチン酢酸塩および塩酸塩、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシンおよびバリン等、DL型では、アラニン、システインおよびその塩類、メチオニン、フェニルアラニン、トレオニン、トリプトファンおよびバリン等、D型では、アラニン、システイン塩酸塩水和物およびフェニルアラニン等が挙げられる。また、L−アルギニンとL−アスパラギン等のL−アミノ酸複合塩および混合物、アスパラギン酸カリウム等のアミノ酸金属塩、塩酸L−エチルシステイン等のアミノ酸エステル、アセチルシステイン等のアセチルアミノ酸、アデニン、アデノシン等の核酸関連物質、ベータ−アラニン等のオメガアミノ酸およびヒスタミン二塩酸塩等のアミノ酸代謝物、γ−アミノ酪酸、タウリン、チオタウリン、ヒポタウリン等が挙げられる。ビタミンとしては、たとえば、ビタミンA、ビタミンB1 、ビタミンB2 、ビタミンB6 、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、葉酸、ニコチン酸、リポ酸、パントテン酸、ビオチン、ユビキノン等が挙げられ、これらのビタミンの誘導体も含まれるがこれらのみに限定されるものではない。その他食品に許容される素材・原料としては、たとえば、アロエ、ローヤルゼリー、メラトニン、プラセンタ、プロポリス、イソフラボン、大豆レシチン、卵黄レシチン、卵黄油、コンドロイチン、カカオマス、コラーゲン、酢、クロレラ、スピルリナ、イチョウ葉、緑茶、杜仲茶、黄妃茶、ウーロン茶、桑の葉、甜茶、バナバ茶、不飽和脂肪酸、オリゴ糖等の糖類、ダイエット甘味料、食物繊維、大豆ペプチド等の機能性素材、ビフィズス菌、紅麹等の菌類、アガリクス茸、姫マツタケ、マイタケ等のキノコ類、ブルーベリー、プルーン、ブドウ、オリーブ、うめ、柑橘類等の果実類、落花生、アーモンド、ゴマ、胡椒等の種実類、ピーマン、唐辛子、ネギ、カボチャ、ウリ、人参、ゴボウ、モロヘイヤ、ニンニク、シソ、ワサビ、トマト、らっきょ、葉菜、芋、豆等の野菜類、ワカメ等の海草類、魚介類、獣鳥鯨肉類、穀類等、あるいはそれらの抽出物、乾燥品、粗精製品、精製品、加工品、醸造品等が挙げられる。中でも、卵黄油、ゴマ、イチョウ葉、大豆ペプチド等の機能性素材が好ましい。
【0019】
また、本発明の組成物としては、日常の使用に適するという観点から、食品組成物または医薬組成物が好ましい。
【0020】
本発明における食品組成物としては、テアニンを含有してなる食品のみならず、テアニンを含有してなる食品添加物も含まれる。
【0021】
本発明に包含される前記食品としては、乾燥食品、サプリメント等の固形食品、また、清涼飲料やミネラルウォーター、嗜好飲料、アルコール飲料等の液状食品を挙げることができる。固形食品としては特に限定されるものではないが、詳しくは、たとえば、練り製品、大豆加工品、ムース、ゼリー、ヨーグルト、冷菓、飴、チョコレート、ガム、クラッカー、ビスケット、クッキー、ケーキ、パン等が挙げられる。また、液状食品としては特に限定されるものではないが、詳しくは、たとえば、緑茶、ウーロン茶、紅茶、ハーブティー等の茶類、濃縮果汁、濃縮還元ジュース、ストレートジュース、果実ミックスジュース、果肉入り果実ジュース、果汁入り飲料、果実・野菜ミックスジュース、野菜ジュース、ミネラルウォーター、炭酸飲料、清涼飲料、牛乳、乳飲料、日本酒、ビール、ワイン、カクテル、焼酎、ウイスキー等が挙げられる。
【0022】
また、本発明の医薬組成物としては、テアニンを含有してなるものであれば特に限定されるものではない。たとえば、その形態としては、溶液、懸濁物、粉末、固体成型物等のいずれでもよく、その剤型としては、錠剤、カプセル、粉末剤、顆粒剤、ドリンク剤等があげられる。また、他の医薬品とも併用することができる。
【0023】
本発明の組成物の製法は特に限定されるものではなく、たとえば、テアニンと他の原材料を粉体混合する製法、溶媒中にテアニンと他の原材料を溶かし混合溶液とする製法、またその混合溶液を凍結乾燥する製法、噴霧乾燥する製法等、一般的な食品または医薬品の製法を適用することができる。本発明の組成物を製造する際に用いることができるテアニン以外の成分は、テアニンによる所望の効果の発現が阻害されないかぎり、適宜所望の用途に合わせて選択することができる。
【0024】
たとえば、既存の食品に対し、製造後の本発明の食品組成物におけるテアニンの含有量が、好ましくは、前記組成物中における好適なテアニンの含有量範囲内となるように、テアニンを常法により配合することにより本発明の食品組成物を製造することができる。また、テアニンを、たとえば、公知の経口投与に適した有機または無機の担体、賦形剤、結合剤、安定剤等と、食品組成物の製造の場合と同様、好ましくは前記好適なテアニンの含有量範囲内となるように、テアニンを常法により配合することにより医薬組成物を製造することができる。
【0025】
さらに本発明の一態様として、テアニンを個体に投与する精神集中の向上方法を提供する。かかる方法によれば、副作用の発生の心配なく安全に、しかも効果的に当該個体の精神集中を向上させることができるので、作業効率や学習効率等の向上に有効である。なお、「個体」とは、たとえば、哺乳動物が挙げられ、具体的には、ヒト、ウマ、イヌ等を挙げることができるが、中でも本方法はヒトに対し好適に用いられる。また、達成すべき課題が明確であるような場面における精神集中の向上に適しており、かかる観点から、特に作業時または学習時における精神集中向上のために好適である。
【0026】
本態様において、本発明の所望の効果を得るためのテアニンの有効投与量としては一般には、たとえば、ヒトの場合、成人1回の投与当たり0.01〜200mg/kg体重が好ましく、1〜20mg/kg体重がより好ましい。ただし、各個体においては、個体差(年齢、性別等)があるため、本発明におけるテアニンの投与量はかかる範囲のみに限定されるものではない。行う作業、学習等の種類に応じ、各個体において所望の作業効率、学習効率等が得られるよう、適宜テアニンの投与量を調節すればよい。
【0027】
テアニンの投与は、テアニンそのものを用いて、または、本発明の組成物、好ましくは食品組成物または医薬組成物を用いて行えばよい。また、投与方法、投与回数、投与期間等も特に限定されるものではなく、前記個体、好ましくは、ヒトに対し、たとえば、1回でまたは複数回に分けて、好ましくは経口投与により、テアニンを前記有効投与量範囲で投与すればよい。テアニンもしくは本発明の組成物を、たとえば、作業前、好ましくは5〜90分前に投与することで作業効率を効果的に向上させることができ、また、作業の最中における投与は作業効率の維持にとって効果的である。また、用時に備え、日常的に投与することも有効である。
【0028】
本発明に用いるテアニンによる所望の効果の発現は、個々の作業・学習等によって異なる、個体に要求される各種特性、たとえば、理解力、暗記力、技能等とは無関係であり、従って、あらゆる作業・学習等においてその効率の向上がもたらされる。たとえば、作業としては、自動車等の運転、楽器等の演奏、会話、発表、計算、キーボードのタイプ、工場における製造ラインでの作業・検品等が、学習としては、各種練習、読書、技術・技能の習得等が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。
【0029】
特に、一定時間内に一定の業務の遂行を責務として負うような場合や、公の場での重要な発表、入学試験等、達成すべき課題がより明確であるような場面においては、日常の作業等に比し、個体の心理的影響および/または身体的影響がより如実に結果に影響するものと考えられ、当該作業等の前またはその最中にテアニンを摂取することは有効である。各個体は、精神集中の向上に伴い、作業時や学習時等において、たとえば、疲労度の軽減、集中力の向上や持続、ミスの低減等を実感することができる。また、作業や学習等を正確かつ迅速に行うことができる。
【0030】
本発明において用いられるテアニンの安全性は高く、たとえば、マウスを用いた急性毒性試験において5g/kg経口投与で死亡例はなく、一般状態および体重等に異常は認められない。また、特にL−テアニンは茶の旨味の主成分として知られるものであり呈味を用途とする食品添加物としても使用され、食品衛生法上、その添加量に制限はない。しかも、従来の薬物と異なり、テアニンによる副作用は全く認められないので、本発明の組成物によれば、安全かつ効果的に精神集中が図られ、作業効率、学習効率等を向上させることができる。
【0031】
【実施例】
以下、実施例および試験例により本発明をより詳細に説明するが、本発明は当該実施例および試験例のみに限定されるものではない。なお、以下における各組成物の製造には、L−テアニン〔商品名:サンテアニン、太陽化学(株)製〕を用いた。また、特段の事情がない限り、「部」は「重量部」を表す。
【0032】
実施例1 テアニン配合錠剤の製造
テアニン配合組成物の一例として、L−テアニンを以下に示すその他の原料と混合し、打錠して、テアニン配合錠剤(250mg/個)を製造した。
L−テアニン 20部
結晶セルロース 5部
還元麦芽糖 20部
乳糖 50部
アスパルテーム 1部
ショ糖脂肪酸エステル 4部
二酸化珪素 0.5部
計 100.5部
【0033】
比較例1 対照錠剤の製造
次に示す原料を混合し、打錠して、対照錠剤(250mg/個)を製造した。
結晶セルロース 5部
還元麦芽糖 20部
乳糖 70部
アスパルテーム 1部
ショ糖脂肪酸エステル 4部
二酸化珪素 0.5部
計 100.5部
【0034】
実施例2 テアニン配合キャンディの製造
テアニン配合組成物の一例として、L−テアニンを用い、以下の配合に従ってテアニン配合キャンディ(5.2g/個)を製造した。
グラニュー糖 64部
水飴 23部
L−テアニン 3部
香料(レモンフレーバー) 0.05部
酒石酸 1部
水 30部
計 128.05部
【0035】
グラニュー糖を水20部に完全に溶解しながら110℃まで加熱し、水飴を加えて145℃まで温度を上げた。火を止め、酒石酸を添加し混合した後、テアニンを予め溶解させた残りの水を加えた。再度混合し、75〜80℃まで冷却し、成形ローラーで成形した。なお、キャンディ中のL−テアニンの含量を測定した結果、含量はキャンディ1個当たり202mg/gであった。
【0036】
実施例3 テアニン配合ブルーベリージュースの製造
テアニン配合組成物の一例として、L−テアニンを用い、以下に示す配合に従ってテアニン配合ブルーベリージュースを製造した。
果糖ブドウ糖液 12部
ブルーベリー濃縮果汁 1部
1/5透明レモン果汁 0.4部
クエン酸ナトリウム 0.05部
L−テアニン 0.1部
香料(ブルーベリーフレーバー) 0.07部
水 86.4部
計 100.02部
【0037】
香料と水以外の各成分を混合して撹拌し、溶解させた。クエン酸ナトリウム(結晶)を用いて、得られた溶液のpHを3.1に調整した。次いで、香料と水を加え、95℃まで昇温して充填後、冷却した。なお、ブルーベリージュース中のL−テアニンの含量を測定した結果、含量は98.3mg/100mlであった。
【0038】
実施例4 テアニン配合グレープフルーツジュースの製造
テアニン配合組成物の一例として、L−テアニンを用い、以下に示す配合に従ってテアニン配合グレープフルーツジュースを製造した。
果糖ブドウ糖液 6部
L−テアニン 0.1部
ピロリン酸第2鉄 0.06部
プラセンタエキス 0.01部
グレープフルーツ果汁100% 30部
水 63.92部
計 100.09部
【0039】
上記各成分を混合して撹拌し、溶解させた。クエン酸ナトリウム(結晶)を用いて、得られた溶液のpHを3.1に調整した。次いで、95℃まで昇温して充填後、冷却した。なお、グレープフルーツジュース中のL−テアニンの含量を測定した結果、含量は99.9mg/100mlであった。
【0040】
試験例1 一点集中における精神集中向上試験
実施例1で製造したテアニン配合錠剤と比較例1で製造した対照錠剤とを被検物質としてそれぞれ摂取した場合について、▲1▼注意力計による注意の集中状態の測定、ならびに▲2▼フリッカーテストによる疲労度の測定を以下の試験において行った。
【0041】
〔I〕試験方法
(1)被験者:女子大学生44名(18歳〜23歳)、平均体重:50.8kg
(2)環境条件:実験室(室温:23〜26℃、湿度:47〜65%)
(3)測定内容および測定方法:
【0042】
i)注意の集中状態の測定(一点集中テスト)
注意力計AF型(稲葉人間工学研究所製)を用いて注意の集中状態の測定を行った。この機器では、画面に1〜9のいずれかの数字が2Hzの速さでランダムに出現する。被験者は当該画面に現れる数字に注目(一点集中)し、予め指定された3種類の数字のいずれかが現れた時スイッチを押す。かかる反応の正確さにより注意の集中状態の良否について判定する。詳しくは、反応の正確さを正答率として求め、これを一点集中成績とし、かかる成績により注意の集中状態を評価する。当該成績が高い程、注意の集中状態が良好である。正答率(%)は、Signal数(発信数)をS、Pass数(数字を見落とした数)をP、Miss数(数字を押し間違えた数)をMとして、以下の式により求めた。
正答率(%)=[〔S−(P+M)〕/S]×100
【0043】
ii)疲労度の測定
一定時間、同じ作業を繰り返すと同じように作業しているつもりでも作業効率が下がってくる。この効率低下の目安となる疲労度(視覚疲労)を測定するためフリッカーテストを行った。フリッカーテストでは、デジタルフリッカー(竹井機器工業(株)製)を用い、測定により得られるちらつき値と連続光との境界値(運動項)からフリッカー値を求め、その値の大小により疲労度を判定する。すなわち、フリッカー値が小さいほど、疲労度は大きい。
【0044】
(4)実験手順
試験は予備試験と本試験の2段階で構成した。
【0045】
〔予備試験〕
注意の集中状態の測定(一点集中テスト)を6セット行った。実験は被験者を実験室内の椅子に座らせて行った。注意力計は数字の画面と被験者の目の距離が1mの位置になるように設置した。また、フリッカーテストを5セット行った。
【0046】
〔本試験〕
各被験者を予備試験での一点集中成績に基づき、それぞれ22人からなる試験群と対照群の等質な2群に分けた。試験群には実施例1で製造したテアニン配合錠剤を1粒(L−テアニン量:50mg)、対照群には比較例1で製造した対照錠剤を1粒そのまま摂取させ、30分間安静にさせた。なお、試験中、各被験者には、いずれの被検物質を摂取させたかについては告知しなかった。
【0047】
次に注意の集中状態の測定(一点集中テスト)を行い、その後フリッカーテストを行った。予備試験および本試験の実験手順を図1に示す。
【0048】
〔II〕結果
(1)一点集中成績の比較
試験群と対照群における被検物質摂取前後の一点集中成績(各群22名の平均値)の比較を図2に示す。被検物質摂取前の両群それぞれの一点集中成績、すなわち、予備試験での両群それぞれの成績は、全被験者の一点集中成績に基づき当該成績が等質となるように両群を分けたので、実質的な差は認められなかった。その両群において、フリッカーテストにおいても実質的な差は認められなかった。一方、被検物質摂取後、すなわち、本試験では、試験群では対照群に比べ一点集中成績が向上した。また、各群において被検物質摂取前後で成績を比較した場合、試験群では1%水準で成績の有意な向上が認められたが、対照群では特に差は認められなかった。
【0049】
以上のように、対照錠剤の摂取に比し、テアニン配合錠剤の摂取により一点集中成績が向上することから、テアニンを摂取することにより注意の集中状態が向上することが分かる。
【0050】
(2)フリッカー値からみた疲労度の検討
試験群と対照群における被検物質摂取前後のフリッカー値(各群22名の平均値)の比較を図3に示す。当該フリッカー値は、被検物質摂取前の予備試験と被検物質摂取後の本試験でのフリッカーテストにより得られた値である。
【0051】
図3に示すように、被検物質摂取後において、対照群と比較して試験群では、フリッカー値が5%水準で有意に高く、従って、同様の作業を行った場合、テアニンを摂取することにより疲労度が軽減されることが分かる。
【0052】
試験例2 読書時における精神集中向上試験
実施例2で製造したテアニン配合キャンディと、当該キャンディに含まれるL−テアニンを乳糖に置き換えて別途製造した対照キャンディとを被検物質としてそれぞれ摂取した場合について、読書時の集中に関するアンケート調査を行った。
【0053】
(1)調査方法
アンケート調査は2日間で行った。被験者をA群とB群の2群に分け(各群、男女12名ずつの計24名、平均体重:男性64.2kg、女性52.8kg)、A群には調査開始1日目にテアニン配合キャンディを、2日目に対照キャンディを、一方、B群には1日目に対照キャンディを、2日目にテアニン配合キャンディを、それぞれ1日に1粒づつ、同時刻、同場所で摂取させた。なお、各被験者のL−テアニン摂取量は202mgとした。調査期間中、各被験者には、いずれの被検物質を摂取させたかについては告知しなかった。
【0054】
被検物質摂取30分後から、1時間に渡って各被験者に読書を行わせた。なお、各被験者には、2日間の調査で同一の本を用いて読書を行わせ、2日目は1日目の続きを読ませた。読書終了後、集中に関するアンケートに記入させた。アンケートは以下の2つの質問事項からなり、それぞれの質問事項において以下に併せて示す4つの選択肢の内いずれかを選択させた。
【0055】
(アンケート質問事項)
1.集中の程度について
「かなり集中できた」、「集中できた」、「変化なし」、「集中できなかった」
2.集中の持続について
「かなり持続した」、「持続した」、「変化なし」、「持続しなかった」
【0056】
(2)結果
アンケート結果は、各被検物質ごとにA群とB群で得られた全結果(n=48)に基づいて集計を行った。図4と図5に読書後のアンケート集計結果を示す。
【0057】
i)集中の程度について
図4に結果を示す。対照キャンディ摂取においては「かなり集中できた」、「集中できた」と答えた者が19%であったのに対し、本発明の組成物であるテアニン配合キャンディ摂取においては81%となった。
【0058】
ii)集中の持続について
図5に結果を示す。対照キャンディ摂取においては「かなり持続した」、「持続した」と答えたものが21%であったのに対し、本発明の組成物であるテアニン配合キャンディ摂取においては63%となった。
【0059】
以上より、本発明の組成物を摂取することにより、読書時において集中力が向上および持続することが分かる。
【0060】
試験例3 キーボード連打試験における精神集中向上試験
実施例4で製造したテアニン配合グレープフルーツジュースと水とを被検物質としてそれぞれ継続摂取させた場合について、普段パソコンを仕事で用いている男女成人12名(平均体重:男性63.8kg、女性51.2kg)を対象にキーボード連打試験を行った。
【0061】
試験では、被験者を2群に分け(a 群:男性2名女性4名、b群:男性2名女性4名)、試験開始1日目〜5日目においては、a 群にテアニン配合グレープフルーツジュース200ml/日を、b群に水200ml/日を摂取させた。また、7日目〜11日目においては、b群にテアニン配合グレープフルーツジュース200ml/日を、a 群に水200ml/日を摂取させた。なお、各被験者のL−テアニン摂取量は200mgとした。試験期間中、いずれの被検物質にテアニンが含まれているかについては、被験者に告知しなかった。
【0062】
キーボード連打試験は、特段の負荷がかからないように普段通りにキーボードを叩かせることにより行った。当該試験は、試験開始前日、試験開始後6日目および12日目に行った。制限時間を10分間とし、一般現代文を打ちこみ、1文字を1点、1誤字を−1点として各被験者の作業量を計算した(日本ワープロ検定3級レベル)。
【0063】
a群とb群における作業量(各群6名の平均値)の比較を図6に示す。なお、各被験者の作業量は個人差が大きいため、図6においては作業量を試験開始前日の値を1とした時の比として表す。図6に示すように、水を継続摂取させた場合(a群の12日目およびb群の6日目の結果)に比べ、テアニン配合グレープフルーツジュースを継続摂取させた場合(a群の6日目およびb群の12日目の結果)に作業量が向上した。すなわち、本発明の組成物を継続摂取することにより、作業時における集中力が向上することが分かる。
【0064】
【発明の効果】
本発明によれば、作業時や学習時等における種々の要因からくる心理的影響および/または身体的影響を抑制して作業効率や学習効率等を効果的かつ安全に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、一点集中における精神集中向上試験の予備試験及び本試験の実験手順を示す。
【図2】図2は、一点集中における被験者(各群毎)の一点集中成績(平均値)を示す棒グラフである。グラフ中、棒は一点集中成績を示す。統計処理はスチューデントの両側t検定により行った。
【図3】図3は、フリッカーテストにおける被験者(各群毎)のフリッカー値(平均値)を示す線グラフである。統計処理はスチューデントの両側t検定により行った。
【図4】図4は、読書時における被験者の集中の程度についてのアンケート集計結果を示す円グラフである。
【図5】図5は、読書時における被験者の集中の持続についてのアンケート集計結果を示す円グラフである。
【図6】図6は、キーボード連打試験における被験者(各群毎)の作業量(平均値)を示す線グラフである。横軸の数字は試験開始後の日数を示す。
Claims (3)
- テアニンを含有することを特徴とする、達成すべき課題が明確にされている場合の連続作業に対し、作業時の疲労度を軽減して作業の正確性を向上させる作業の正確性向上剤であって、該作業を行うに際し、前記作業の正確性の向上のために投与する、正確性向上剤。
- 作業が、一定時間内に一定の業務の遂行を責務として負うものである、請求項1記載の向上剤。
- 作業の5〜90分前に投与される、請求項1又は2記載の向上剤。
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