JP5120857B2 - 高熱伝導・低誘電損失の高周波用緻密質誘電体材料、その製造方法及び部材 - Google Patents

高熱伝導・低誘電損失の高周波用緻密質誘電体材料、その製造方法及び部材 Download PDF

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Description

本発明は、高周波用低損失誘電体材料及びその用途などに関するものであり、更に詳しくは、低い誘電損失と高い熱伝導率、及び高い平滑性の3者の要求を満たすことを実現した、新規高周波用低損失誘電体材料、その製造方法及びその部材に関するものである。本発明は、プラズマ処理装置部材、例えば、半導体製造装置、液晶製造装置などにおいて、主にマイクロ波などの高周波を使用してプラズマを発生させる装置に用いられる高周波用低損失誘電体材料、その製造方法及びその部材に関する新技術・新製品を提供するものである。
近年、主に、半導体、液晶薄膜製造におけるCVD、エッチング、及びレジストの工程で、マイクロ波プラズマ処理装置が多用されている。マイクロ波などの高周波を用いてプラズマを発生させるこれらの装置には、高周波透過性の良い材料で構成された部材が使用されている。
これらの部材には、高周波透過性(すなわち、低い誘電率、低い誘電損失)とともに、部材内の温度分布をなくして、反応の均一性を高めるために、高い熱伝導率が必要とされている。一方、これらの製造装置においては、製品の歩留まり向上のために、構成部材が低発塵性であることが強く要求されており、材料表面の高い緻密性と平滑性が、塵(すなわち、パーティクル)の低減のために必須と考えられている。
高周波透過性については、例えば、シリカガラスが、低誘電率で、誘電損失も低くて優れるが、熱伝導率は、〜2W・m−1・K−1と低く、部材としての要求を満たさない。また、高純度のアルミナセラミックスも、低誘電損失であるが、熱伝導率が、〜30W・m−1・K−1と低く、要求を満たさない。反対に、窒化アルミニウムは、熱伝導率が、〜160W・m−1・K−1と非常に高いが、誘電損失が、10−3以上あるので、要求を満たすことができない。
一方、耐熱性、耐熱衝撃性、機械的強度が、上記セラミックスに比べて格段に優れているセラミックスとして、窒化ケイ素(Si)が知られており、100W・m−1・K−1以上の高い熱伝導率を有するSiも開発されている。また、Siの誘電損失に関しては、高周波導入窓材の信頼性を付与するために、機械的強度に優れた窒化ケイ素の誘電損失を低下させることを目的とした研究が行われている。
従来、例えば、窒化ケイ素を用いた低誘電損失の高周波導入窓材については、10GHzにおいて、10−4以下の低い誘電損失が達成されている。しかしながら、前述の要求を満たすために、低い誘電損失とともに、高い熱伝導率を兼ね備えた緻密質窒化ケイ素質焼結体材料に関しては、これまで、ほとんど検討されてこなかったのが実情である。
これまでは、先行技術として、例えば、機械的信頼性が優れる窒化ケイ素の高周波領域での誘電損失を低減させるために、添加助剤に、希土類元素とシリカを用いて、特定の組成に調整し、焼結した後、粒界相を熱処理により結晶化させ、誘電損失を10−4以下にした例として、周期律表第3a族化合物(RE)とSiOのモル比(RE/SiO)が0.1〜0.67の組成が、低誘電損失窒化ケイ素材料として、有望であることが報告されている(特許文献1参照)。
また、先行技術として、周期律表第3a族化合物を添加した窒化ケイ素質焼結体の熱伝導率に関して、RE/SiO比が約0.3の窒化ケイ素の熱伝導率は、60W・m−1・K−1であるが、この比が1.3まで上昇するに従って、窒化ケイ素粒内の固溶酸素が低減され、熱伝導率が、100W・m−1・K−1程度まで向上することが報告されている(非特許文献1参照)。
これらの知見からすると、特許文献1によって報告されている、RE/SiO比が0.1〜0.67の範囲にある組成の低誘電損失窒化ケイ素においては、熱伝導率を100W・m−1・K−1以上に向上させることは困難であると考えられ、実際に、市販されている低誘電損失窒化ケイ素質材料の熱伝導率は、60W・m−1・K−1程度にとどまっている。
一方、窒化ケイ素の高熱伝導化は、例えば、高熱伝導化を促すための希土類酸化物と、緻密化を促進する焼結助剤としてのMg元素化合物の添加により行われている(非特許文献2参照)。しかしながら、MgOを6.6mol%添加して焼結した窒化ケイ素の9.1GHzにおける誘電損失は、2×10−3と大きいことが報告されており(非特許文献3参照)、誘電損失の観点からは、MgやCaなどのアルカリ土類金属や、NaやKなどのアルカリ金属は、窒化ケイ素の誘電損失に悪影響を及ぼすものと考えられてきた。
また、例えば、先に示した先行技術(特許文献1)などでは、低誘電損失化するためには、これらのアルカリ金属化合物やアルカリ土類金属化合物は、好ましくなく、できる限り存在しないことが必要とされてきた。すなわち、アルカリ土類金属を焼結助剤に用いた窒化ケイ素においては、緻密で、かつ高熱伝導となるが、誘電損失を低減することは、困難であると考えられてきた。
アルカリ土類金属を用いずに、周期律表第3a族化合物の単独添加の場合、先に示したように、先行技術文献(非特許文献1)において、RE/SiOが、〜1まで増加するに従って、熱伝導率が向上することが報告されている。しかし、この組成では、ガス圧焼結のみでは、十分に緻密化させることが、これまでは困難であり、難焼結性を示す。
これは、RE/SiO比が、〜1の場合には、REとSiOの反応よる液相の生成温度が高く、この比が小さい組成のものに比べて、焼結温度近傍での液相の生成量が少ないためである。このため、製造コストのかさむ熱間静水圧焼結法(ホットプレス焼結)などによらなければ、緻密な焼結体を得ることが難しく、低損失誘電体材料の工業的な生産には不向きであるとして、この組成領域の誘電特性は、調査されてこなかった。
これに対し、周期律表第3a族化合物の存在量が、酸化物換算(RE)で少なくとも7モル%であり、酸化ケイ素(SiO)とのモル比(RE/SiO)が1.0〜1.5の範囲にある出発原料を用いて、400MPa以上の静水圧プレス成形により、52%以上の相対密度を有する成形体を作製し、これを焼成することで、誘電損失が2×10−4以下で、熱伝導率が90W・m−1・K−1以上の低誘電損失な緻密質セラミックス誘電体材料を作製できることが報告されている(特許文献2参照)。
しかしながら、400MPa以上の静水圧プレス成形装置では、大型部材の作製が一般に困難であり、この方法は、工業的な生産方法としては、不向きとされ、当技術分野では、120MPa程度の低いプレス圧を有する汎用の装置による成形体の作製技術を開発することが強く要請されていた。
特開平10−134956号公報 特開2009−012994号公報
Journal of American Ceramics Society,第83巻(2000),pp.1985−1992 日本セラミックス協会学術論文誌、第109巻、第12号(2001)、pp.1046−1050 Journal of Nuclear Materials,第155−157巻(1988),pp.372−377
このような状況の中で、本発明者は、上記従来技術に鑑みて、低い誘電損失と高い熱伝導率の両者の要求を満たすことを可能とする新しい高周波用低損失緻密質誘電体材料を開発することを目標として鋭意研究を積み重ねた結果、窒化ケイ素焼結体に含まれるアルカリ土類金属元素化合物、及び、第3a族元素化合物の含有量を特定量に制御し、焼結体の緻密化を促進し、更に、粒界相を結晶化させることにより、2GHzと3GHzにおける誘電損失を5×10−4以下に、熱伝導率を50W・m−1・K−1以上にすることができ、これが、高熱伝導で、低誘電損失な緻密質セラミックス誘電体材料として好適な材料となることを見出し、本発明に至った。
本発明は、窒化ケイ素を主体とし、アルカリ土類金属元素化合物と周期律表第3a族元素化合物と、不可避的に含まれる又は添加された不純物的酸素を含有する窒化ケイ素質焼結体からなり、アルカリ土類金属元素化合物(AE)の含有量が酸化物換算(AEO)で0.06重量%以上1.0重量%未満であり、周期律表第3a族元素化合物(RE)の割合が、酸化物換算(RE)で2.5重量%から20重量%の範囲にあり、該焼結体中の結晶粒界が結晶化され、2GHzと3GHzにおける誘電損失が5×10−4以下で、熱伝導率が50W・m−1・K−1以上であり、そして、鏡面研磨した焼結体表面を光学顕微鏡で観察することで得られる気孔率が3%未満である高周波用低損失緻密質誘電体材料を提供することを目的とするものである。
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)低誘電損失で高熱伝導率の高周波用緻密質誘電体材料であって、窒化ケイ素を主体とし、アルカリ土類金属元素化合物(AE)、周期律表第3a族元素化合物(RE)、及び不可避的に含まれる又は添加された不純物的酸素を含有する窒化ケイ素質焼結体からなり、焼結体中に含有されるアルカリ土類金属元素化合物(AE)の割合が、酸化物換算(AEO)で0.06重量%から1.0重量%の範囲にあり、周期律表第3a族元素化合物(RE)の割合が、酸化物換算(RE )で2.5重量%から20重量%の範囲にあり、酸化ケイ素化合物結晶相、又は酸窒化ケイ素化合物結晶相を含有し、鏡面研磨した焼結体表面の光学顕微鏡写真から求めた気孔率が、3%より低い気孔率を有し、2GHzと3GHzにおける誘電損失が5×10−4より低く、かつ熱伝導率が50W・m−1・K−1より高いことを特徴とする高周波用低損失誘電体材料。
)酸化ケイ素化合物が、RESi、又はRESiOで示される化合物である、前記()に記載の高周波用低損失誘電体材料。
)酸窒化ケイ素化合物が、RE・AESiN、RESi、RESi、又はRESi12で示される化合物である、前記()に記載の高周波用低損失誘電体材料。
)焼結体中に含有される、アルカリ土類金属元素化合物が、Mg、Ca、Sr、又はBaの酸化物であり、周期律表第3a族元素が、Yb、Y、Dy、Er、Tm、Lu又はScである、前記(1)に記載の高周波用低損失誘電体材料。
)焼結体中の粒界相が、主に、RE−Si−O化合物、RE−Si−O−N化合物、又は、RE−AE−Si−O−N化合物からなり、結晶化している、前記(1)に記載の高周波用低損失誘電体材料。
)Al含有量が、酸化物換算(Al)で多くても0.1重量%である、前記(1)に記載の高周波用低損失誘電体材料。
)前記(1)から()のいずれかに記載の材料を製造する方法であって、窒化ケイ素を主体とし、アルカリ土類金属元素化合物の存在量が、酸化物換算で0.1モル%から5モル%の範囲にあり、かつ、周期律表第3a族元素化合物の存在量が、酸化物換算で1モル%から7モル%の範囲にある出発原料を用いて、該出発原料を成形・焼成した後に、熱処理することにより、2GHzと3GHzにおける誘電損失が5×10−4より低く、かつ熱伝導率が50W・m−1・K−1より高い窒化ケイ素室焼結体とすることを特徴とする高周波用低損失誘電体材料の製造方法。
)アルカリ土類金属元素化合物が、Mg、Ca、Sr、又はBaの酸化物であり、周期律表第3a族元素が、Yb、Y、Dy、Er、Tm、Lu又はScである、前記()に記載の高周波用低損失誘電体材料の製造方法
)前記(1)から()のいずれかに記載の高周波用低損失誘電体材料を構成要素として含む部材であって、電気部品の製造装置に適用される高周波透過用の部材であることを特徴とする高周波透過用部材。
10)部材が、半導体製造装置、又は液晶製造装置に適用される高周波用透過用部材である、前記()に記載の高周波透過用部材。
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、低誘電損失と高熱伝導率の両者を満たす高周波用低損失誘電体材料であって、窒化ケイ素を主体とし、アルカリ土類金属元素と、周期律表第3a族元素と、不可避的に含まれる又は添加された不純物的酸素を含有する窒化ケイ素質焼結体からなり、2GHzと3GHzにおける誘電損失が5×10−4より低く、かつ熱伝導率が50W・m−1・K−1より高いことを特徴とするものである。
本発明では、鏡面研磨した焼結体表面の光学顕微鏡写真から求めた気孔率が、3%未満より低い気孔率を有すること、焼結体中に含有されるアルカリ土類金属元素化合物(AE)の割合が、酸化物換算(AEO)で0.06重量%から1.0重量%の範囲にあり、周期律表第3a族元素化合物(RE)の割合が、酸化物換算(RE)で2.5重量%から20重量%の範囲にあり、酸化ケイ素化合物結晶相、又は酸窒化ケイ素化合物結晶相を含有すること、を好ましい実施の態様としている。
また、本発明では、酸化ケイ素化合物が、RESi、又はRESiOで示される化合物であること、酸窒化ケイ素化合物が、RESi、RE・AESiN、RESi、又はRESi12で示される化合物であること、焼結体中に含有される、アルカリ土類金属元素化合物が、Mg、Ca、Sr、又はBaの酸化物であり、周期律表第3a族元素が、Yb、Y、Dy、Er、Tm、Lu又はScであること、焼結体中の粒界相が、主に、RE−Si−O化合物、又はRE−Si−O−N化合物、又はRE−AE−Si−O−N化合物からなり、結晶化していること、Al含有量が、酸化物換算(Al)で0.1重量%以下であること、を好ましい実施の態様としている。
また、本発明は、上記高周波用低損失誘電体材料を製造する方法であって、窒化ケイ素を主体とし、アルカリ土類金属元素化合物の存在量が、酸化物換算で0.1モル%から5モル%の範囲にあり、かつ、周期律表第3a族元素化合物の存在量が、酸化物換算で1モル%から7モル%の範囲にある出発原料を用いて、該出発原料を成形・焼成した後に、熱処理することにより、2GHzと3GHzにおける誘電損失が5×10−4より低く、かつ熱伝導率が50W・m−1−1より高い窒化ケイ素室焼結体とすることを特徴とするものである。
更に、本発明は、上記高周波用低損失誘電体材料を構成要素として含む部材であって、電気部品の製造装置に適用される高周波透過用の部材であることを特徴とするものであり、部材が、半導体製造装置、又は液晶製造装置に適用される高周波用透過用部材であることを好ましい実施の態様としている。
本発明に係る高周波用低損失緻密質誘電体材料は、窒化ケイ素を主成分とするものであり、窒化ケイ素以外の成分として、不純物的酸素とアルカリ土類金属元素と周期律表第3a族元素を含有するものである。ここで、不純物的酸素とは、窒化ケイ素原料中に不可避的に含まれる不純物酸素、及び/又は意図的に添加された酸化ケイ素(SiO)を意味する。
また、アルカリ土類金属元素は、焼結助剤として添加される成分であり、Mg、Ca、Sr、Baが例示される。これらのアルカリ土類金属元素は、酸化物換算で0.06重量%から1.0重量%の範囲が適当である。
同様に、周期律表第3a族化合物は、焼結助剤として添加される成分であり、Yb、Y、Dy、Er、Tm、Lu又はScが例示される。これらの周期律表第3a族化合物は、酸化物換算で、2.5重量%から20重量%の範囲が好適である。
更に、本発明の低誘電損失材料においては、窒化ケイ素質焼結体中の粒界相が結晶化していることも重要である。粒界相が影響する原因として、粒界相がガラス化した場合、粒界相の誘電損失が増大する可能性がある。
ここで、粒界相とは、窒化ケイ素結晶相以外の部分で、主に、珪素(Si)とアルカリ土類金属元素(AE)と前記周期律表第3a族元素(RE)、酸素及び窒素を含み、主に、RE−Si−O化合物、又はRE−Si−O−N化合物、又はRE−AE−Si−O−N化合物からなる。結晶相としては、RESi、RESiO、RESi相、もしくは、RE・AESiN、RESi、又はRESi12を析出させることが望ましい。
また、誘電損失に大きな影響を与える焼結体中の陽イオン不純物としては、焼結体中のAlが酸化物換算量で2重量%以下であることが好ましい。一方、熱伝導率の観点からは、Al含有量がごく微量であっても、熱伝導率は著しく低下することが知られており、焼結体中のAlが、更に低減されることが望ましい。先行技術文献によれば、わずか1モル%のAlの添加により、熱伝導率が、約35%低下することが報告されている。
Alの存在量が、0から1モル%の範囲では、熱伝導率が存在量に対して直線的に減少すると仮定して、熱伝導率の減少率が、5%以内までを許容範囲と考えるならば、Alの存在量は、0.1重量%以下であることが望ましい(文献:Journal of Materials Research,第13巻(1998),pp.3473−3477)。
本発明の低損失緻密質誘電体材料を製造する方法としては、窒化ケイ素原料に、アルカリ土類金属元素化合物と周期律表第3a族元素の酸化物などの化合物を添加し、これを混合した後、所望の成形手段、例えば、金型プレス、冷間静水圧プレス、押出成形、テープ成形などで成形した後、Al元素の汚染がない黒鉛抵抗炉などを用いて、焼成する。
焼成は、窒素中で、窒化ケイ素の分解を抑制できる条件下で、焼成することが必要であり、窒素ガス圧焼結や熱間静水圧焼結法などの周知の焼成方法を使用することができる。焼結温度としては、その組成によるが、1600〜2000℃の温度範囲で、相対密度97%以上が達成されるように焼成する。その後、粒界相を結晶化するために、焼結体に、1000〜1500℃で、10〜100時間程度、熱処理を施す。本発明では、この熱処理を行うことで、粒界相を結晶化することが重要である。
以上のようにして作製される誘電体材料は、2GHzと3GHzでの高周波での誘電損失が5×10−4以下で、熱伝導率が50W・m−1・K−1以上であり、気孔率が3%未満の緻密な焼結体である。したがって、本発明の誘電体材料は、半導体製造工程などにおいて、2.45GHzでの高周波を用いて、プラズマを発生させて処理を行う装置内での使用に適した材料であり、このような本発明の材料を用いることで、高周波を十分に透過できるのみならず、処理材の温度分布が平坦化されて、均一な反応が促進され、かつパーティクルの発生が少ないことから、製品の歩留まりの向上を図ることが可能となる。
近年、高周波用構造部材には、低誘電損失だけでなく、高熱伝導であることが要求されるようになってきたが、従来の低誘電損失の窒化ケイ素は、焼結助剤に、シリカを含むため、熱伝導率を高くすることは困難であった。また、シリカ成分を添加せずに、低誘電損失で高熱伝導な窒化ケイ素を焼結するには、高い静水圧プレス圧力による成形体の作製が必要であり、市販の汎用プレス装置では、大型部材の作製が困難であった。
これに対して、本発明では、焼結助剤に、MgOなどのアルカリ土類金属元素化合物を追加することで、シリカを添加しなくても、比較的低いプレス圧力による成形体で、緻密化が可能となり、高熱伝導の緻密質窒化ケイ素焼結体を得ることが可能である。従来、MgOを助剤に用いた焼結体の低誘電損失化は、困難と考えられてきたが、本発明により、例えば、1300℃で、24時間以上熱処理することにより、Mgなどを含む粒界ガラス相を結晶化させることで、誘電損失を5×10−4以下の小さい値に低減でき、しかも、50W/mK以上の高熱伝導率を同時に達成でき、更に、焼結体の気孔率を、従来材と比べて、半減させることが可能となった。
これらのことから、本発明の窒化ケイ素は、例えば、高い平滑性が要求される半導体や液晶薄膜の製造工程での高周波プラズマ処理装置の構成部材として、好適であり、市販の汎用プレス装置による大型部材の生産が可能であることから、例えば、高周波プラズマ処理装置などで使われる高周波用構造部材、加速器などで用いられるジャイロトロン、クライストロンなどの出力窓、フィルター、電子回路基板などの高周波用部品として、工業的な応用ができ、従来材に対して、熱伝導率が高いために、加速器などの出力窓で使われる場合には、耐熱衝撃に優れること、高周波用部材としては、部材表面に温度分布が生じにくいこと、緻密なために、低発塵性であること、などの利点を有する。
本発明により、次のような効果が奏される。
(1)低い誘電損失と高い熱伝導率を有し、高い平滑性の3者の要求を満たした高周波用低損失誘電体材料を提供することができる。
(2)2GHzと3GHzでの高周波での誘電損失が5×10−4以下で、かつ熱伝導率が50W・m−1・K−1以上である高熱伝導率・低誘電損失の高周波用低損失緻密質誘電体材料を提供することができる。
(3)本発明の誘電体材料は、例えば、半導体製造工程などにおいて、2.45GHzでの高周波を用いて、プラズマを発生させて処理を行う装置内で、好適に使用される。
(4)本発明の誘電体材料を用いることで、高周波を十分に透過できるのみならず、処理材の温度分布が平坦化されて、均一な反応が促進され、製品の歩留まりの向上が図れる。
(5)本発明の誘電体材料では、熱伝導率が高く、耐熱衝撃性に優れており、本発明の誘電体材料を用いることで、耐熱衝撃性が改善され、部材の長寿命化や、急速な昇温や降温といった、より苛酷な条件下での利用が可能となる。
(6)本発明の誘電体材料は、機械的特性に優れる窒化ケイ素を主成分とすることから、本発明の誘電体材料を用いることで、機械特性が改善され,薄肉の部材でも強度を維持できるようになり、それにより、部材の軽量化を図ることができる。
(7)本発明の製造方法によれば、製造コストのかさむホットプレス焼結を使わないで、ガス圧焼結のみで、誘電体を製造でき、また、冷間静水圧成形時のプレス圧力も低くできることから、汎用の冷間静水圧成形装置が利用でき、そのために、大型部材の製造が可能となり、更に、製造コストの低減も図ることが可能となる。
(8)本発明の誘電体材料の気孔率は小さいことから、材料表面の高い緻密性と平滑性が保障され、半導体製造装置内の部材として用いると、パーティクルの低減に有効に働き、製品の歩留まりの向上が図れる。
Ybを1モル%とMgOを同時に添加して焼結した試料の気孔率を、MgO添加量に対してプロットした図である。 Ybを2モル%とMgOを同時に添加して焼結した試料の気孔率を、MgO添加量に対してプロットした図である。 Ybを7モル%とMgOを同時に添加して焼結した試料の気孔率を、MgO添加量に対してプロットした図である。 表1に示した、各試料の熱伝導率と誘電損失をグラフにプロットした図である。 表2に示した、各種周期律表第3a族酸化物とMgOを同時に添加した際の熱伝導率と誘電損失をグラフにプロットした図である。
次に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によってなんら限定されるものではない。
原料として、イミド分解法によって製造されたα率95%以上の高純度窒化ケイ素原料(遷移金属不純物総量100ppm以下)と、アルカリ土類金属元素化合物として、純度99.9%以上の微粉のMgOと、周期律表第3a族酸化物として、純度99.9%以上の微粉のYbを使用した。Yb粉末の添加量は、表1に示すように、1,2,7モル%の3水準とした。
また、MgO粉末の添加量は、表1に示すように、Yb粉末の各添加量に対して、0〜5モル%の範囲で変化させた。これらの組成となるように、これらの粉末を秤量した後、窒化ケイ素製ポットに入れ、窒化ケイ素製のボールとメタノール溶媒を用いて、回転数280rpmの遊星ボールミルにて1時間湿式混合した。
得られたスラリーを、なすフラスコに移し替え、ロータリーエバポレーターで、約30分乾燥させ、その後、110℃の真空乾燥器内で24時間乾燥させた。次いで、メッシュ#60の篩がけを行った。得られた粉末をゴム袋に充填して、118MPa(1.2ton/cm)の静水圧プレスにより、直径13mmで、長さ約100mmの円柱形状に成形し、焼成用試料とした。
上記焼成用試料を、BNの詰め粉を敷き詰めたBN製の焼成るつぼに埋没させ、このるつぼを、黒鉛抵抗炉にセットした。焼成は、9気圧窒素中で、1900℃、3時間行って、焼結体を作製した。更に、粒界相の結晶化のために、同じ黒鉛炉を用いて、1300℃で、24時間熱処理を施した。また、比較試料として、焼成後に熱処理を施さない焼結体を作製した。
なお、Yb粉末の添加量が7モル%で、MgOを添加しなかった試料においては、118MPaの静水圧プレスによる成形体を焼成しても、十分に緻密化しなかったために、静水圧プレス圧力を441MPa(4.5ton/cm)として、成形体を作製し、前述の条件によって、焼成と熱処理を施した。
得られた焼結体を切断し、平面研削により、誘電特性測定用試料として、1.5mm×1.5mm×75mmの細長い角柱に加工した。また、円筒研削などを用いて、熱伝導率測定用試料として、直径9mmで、厚さ3mmのペレット試料を作製した。各試料から、2〜3個の測定試料をそれぞれ作製した。
誘電損失は、試料を十分に乾燥させた後に、円筒空洞共振器を用いた摂動法により、2GHzと3GHzの共振周波数にて測定した。熱伝導率は、ペレット試料表面をイオンスパッタ装置で金コーティングした後に、カーボンスプレーで、カーボンを被覆して、レーザーフラッシュ法により測定した。いずれの測定においても、ひとつのサンプルについて、3回測定を繰り返し、3回の測定値の平均を求めた。そして、各試料の測定値は2〜3サンプルの平均値を用いた。
熱処理を施さなかった比較試料においては、焼結体中心部から切出した試料をICP発光分光分析し、Mg量とYb量を定量し、MgOとYbの重量%にそれぞれ換算した。熱処理を施した試料においては、熱処理前後の重量変化がなく、熱処理による化学組成の変化はないと考えられたことから、熱処理材に含有されるMgOとYbの重量%は、未処理材と同じであるとした。
X線回折により、窒化ケイ素結晶相以外の結晶相の同定を行った。焼結体の気孔率の測定には、焼結体中央から切出した試料表面を鏡面研磨し、光学顕微鏡によって、写真撮影を行って、気孔の面積比率を、顕微鏡写真の画像処理により算出し、これを、気孔率とした。焼結後に熱処理を施さなかった試料について、本方法で、気孔率を求めた。
気孔率を算出する他の方法としては、アルキメデス法により測定した、嵩密度と調合組成から算出した理論密度比から、相対密度を求める方法がある。しかし、この方法では、焼結中に、焼結助剤成分が一部揮散して、組成が変化する可能性や、添加した焼結助剤から構成される粒界相の正確な密度が分からないことから、計算の基準となる理論密度が不正確で、得られた気孔率も正確とは限らない。
それに比べて、顕微鏡写真から気孔率を測定する方法は、より正確であり、前述した半導体製造装置内などにおいて要求されているパーティクルの発生しないような緻密、かつ平滑な焼結体表面を定量的に表すには、より直接的表現と考えられることから、顕微鏡観察による気孔率測定を採用した。
熱処理を施した試料については、熱処理による重量変化と寸法変化が全くなかったこと、及び、熱処理温度1300℃においては、焼結体の緻密化及び粒成長は生じないことから、未処理材の気孔率と同じであるとした。以上の詳細を、表1にまとめて示す。尚、表1において、*印は本発明の試料を示す。
Figure 0005120857
得られた窒化ケイ素室焼結体の気孔率、結晶相、誘電損失、熱伝導率などの評価を行った。表1から明らかなように、Ybを1モル%とMgOを添加して焼結した後に、熱処理した試料において、図1に示すように、MgO無添加試料では、気孔率が3%以上であるが、MgOを少量添加することにより、気孔率が減少した。しかし、MgOを5モル%添加した試料では、逆に気孔率が7.6%と大きくなり、過剰のMgO添加は、気孔率の増加をもたらすので、好ましくないことが分かった。
熱伝導率は、MgOの添加に従い増加する傾向が見られたが、誘電損失の観点からは、MgOの添加量の増加に伴い、誘電損失が増大し、2モル%以上のMgOの添加で、5×10−4以上となった。このことから、MgO添加量としては、0.1モル%から1.5モル%の範囲内が好適であることが分かった。
次に、Ybを2モル%添加して焼結した後に熱処理した試料において、図2に示すように、MgO無添加試料では、気孔率が3%以上であるが、MgOを少量添加することにより、気孔率が減少した。しかし、MgOを4モル%添加した試料では、逆に気孔率は、2.9%と大きくなり、これ以上のMgOの添加は、気孔率を3%以上にすることが明らかであり、好ましくないことが分かった。
熱伝導率は、MgOの添加に従って増加する傾向が見られたが、誘電損失は、MgOの添加量に対して、あまり大きな変化を示さず、いずれも1〜2×10−4の範囲にあり、十分に低い値を示した。このことから、MgO添加量としては、0.5モル%から4モル%の範囲内が好適であることが分かった。
そして、Ybを7モル%添加して焼結した後に熱処理した試料において、MgO無添加試料では、冷間静水圧成形時のプレス圧力が118MPaでは緻密化せず、成形圧力を441MPaに増大した時にのみ、緻密な成形体が得られたが、それでも、光学顕微鏡写真から求めた気孔率は6.8%以上と大きかった。
しかし、図3に示すように、MgOを少量添加することにより、気孔率が3%以下へ減少した。熱伝導率は、MgOの添加に関らず90〜100W・m−1−1と高い値を示した。しかし、誘電損失は、MgOの添加量の増加に従って増大し、4モル%のMgO添加では、5×10−4を上回る値を示した。これにより、MgO添加量としては、1モル%から4モル%未満の範囲内が好適であることが分かった。
表1に示した、焼結した後に熱処理を行わなかった比較試料においては、Ybを1モル%と2モル%添加した試料において、窒化ケイ素以外の結晶相は、X線回折で検出されず、焼結助剤として添加した化合物は、粒界において、非晶質相を形成していることが分かった。これに対応して、各試料の誘電損失と熱伝導率をプロットした図4の黒丸で示すように、誘電損失は、いずれも5×10−4以上となった。
一方、熱処理を施した本発明に係る試料においては、YbSiやYbMgSiN、YbSiOの結晶相が検出され、誘電損失は、図4の白丸で示すように、一部の試料を除き、5×10−4以下となった。熱伝導率は、熱処理によりわずかに増加し、全ての試料で、50W・m−1−1以上の高い熱伝導率を示した。このことから、熱処理による粒界相の結晶化が、低誘電損失化に必要であることが分かった。
Ybを7モル%添加した場合は、熱処理前の試料において、窒化ケイ素以外の結晶相が検出され、熱処理によっても検出相に変化が見られなかったことから、粒界に存在する第2相は、焼結した後において、既に、ほぼ結晶化していることが予想され、これに対応した形で、MgO無添加、及び1モル%添加試料において、5×10−4以下の低い誘電損失が達成されている。
MgO無添加試料の気孔率は、6.8%と大きいのに対して、1モル%のMgO添加試料は3%以下であり、熱伝導率も、94W・m−1−1と高い値を示した。これにより、Ybを7モル%とMgOを1モル%同時に添加した試料については、例外的に、熱処理を行わずとも、高熱伝導・低誘電損失緻密質誘電体材料として、有望であることが分かった。尚、他のアルカリ土類金属化合物を用いた場合についても、同様の結果が得られた。
原料として、イミド分解法によって製造されたα率95%以上の高純度窒化ケイ素原料(遷移金属不純物総量100ppm以下)と、アルカリ土類金属元素化合物として、純度99.9%以上の微粉のMgOと、周期律表第3a族酸化物として、純度99.9%以上の微粉のSc、Y、Dy、Er、Tm、Luを使用した。周期律表第3a族酸化物粉末の添加量は、表2に示すように、2モル%とし、MgO粉末の添加量は、Y以外の周期律表第3a族酸化物では2モル%とし、Yでは5モル%とした。これらの組成となるように、これらの粉末を秤量した後、窒化ケイ素製ポットに入れ、窒化ケイ素製のボールとエタノール溶媒を用いて、回転数280rpmの遊星ボールミルにて1時間湿式混合した。
得られたスラリーを、なすフラスコに移し替え、ロータリーエバポレーターで、約30分乾燥させ、その後、110℃の真空乾燥器内で、24時間乾燥させた。次いで、メッシュ#60の篩がけを行った。得られた粉末をゴム袋に充填して、118MPa(1.2ton/cm)の静水圧プレスにより、直径13mmで、長さ約100mmの円柱形状に成形し、焼成用試料とした。
上記焼成用試料を、BNの詰め粉を敷き詰めたBN製の焼成るつぼに埋没させ、このるつぼを、黒鉛抵抗炉にセットした。焼成条件は、9気圧窒素中で、周期律表第3a族酸化物がScの場合は、1900℃、3時間とし、他の周期律表第3a族酸化物の場合は、1950℃、3時間とした。更に、粒界相の結晶化のために、同じ黒鉛炉を用いて、1300℃で、24時間熱処理を施した。また、比較試料として、焼成後に熱処理を施さない焼結体を作製した。
得られた焼結体を切断し、平面研削により、誘電特性測定用試料として、1.5mm×1.5mm×75mmの細長い角柱に加工した。また、円筒研削などを用いて、熱伝導率測定用試料として、直径9mmで、厚さ3mmのペレット試料を作製した。各試料から、2〜3個の測定試料をそれぞれ作製した。
誘電損失は、試料を十分に乾燥させた後に、円筒空洞共振器を用いた摂動法により、2GHzと3GHzの共振周波数によって測定した。熱伝導率は、ペレット試料表面をイオンスパッタ装置で金コーティングした後に、カーボンスプレーで、カーボンを被覆して、レーザーフラッシュ法により測定した。いずれの測定においても、ひとつのサンプルについて、3回の測定を繰り返し、3回の測定値の平均を求めた。そして、各試料の測定値は、2〜3サンプルの平均値を用いた。
X線回折により、窒化ケイ素結晶相以外の結晶相の同定を行った。焼結体の気孔率の測定には、焼結体中央から切出した試料表面を鏡面研磨し、光学顕微鏡によって写真撮影を行って、気孔の面積比率を、顕微鏡写真の画像処理により算出し、これを、気孔率とした。焼結後に熱処理を施さなかった試料について、本方法で、気孔率を求めた。
熱処理を施した試料については、熱処理による重量変化と寸法変化が全くなかったこと、及び、熱処理温度1300℃においては、焼結体の緻密化及び粒成長は生じないことから、未処理材の気孔率と同じであるとした。以上の詳細を、表2にまとめて示す。尚、表2において、*印は本発明の試料を示す。
Figure 0005120857
得られた窒化ケイ素質焼結体試料の気孔率、結晶相、誘電損失、熱伝導率などの評価を行った。表2から明らかなように、いずれの試料においても、気孔率が1.5%以下となった。これにより、Yb以外のこれらの周期律表第3a族酸化物においても、MgOを同時に適量添加することが、気孔率の低減に有効であることが分かった。
熱伝導率は、74〜84W・m−1−1であり、いずれの試料も、比較的高い値を示した。誘電損失は、5×10−4以下となった。これにより、これらの周期律表第3a族酸化物においても、Ybと同じように、MgOを同時に適量添加することで、高い熱伝導率と低い誘電損失の両立が可能であることが分かった。
表2に示した、焼結した後に熱処理を行わなかった比較試料においては、ErとTm以外の周期律表第3a族酸化物の場合、窒化ケイ素以外の結晶相は、観察されなかった。これより、焼結助剤として添加した化合物は、粒界において、非晶質相を形成していることが分かった。
ErとTmを添加した試料においては、窒化ケイ素以外に、ErSiとTmSiの結晶相がX線回折で検出されたが、そのピーク強度は、熱処理後のそれと比べて小さいことから、焼結助剤として添加した化合物は、粒界において、完全には結晶化しておらず、非晶質相も形成していることが考えられた。これに対応して、各試料の誘電損失と熱伝導率をプロットした図5の黒三角で示すように、誘電損失は、いずれも5×10−4以上となった。
一方、熱処理を施した本発明に係る試料においては、RESiやRESi、RESiO、YSi12などの結晶相が検出され、誘電損失は、図5の白三角で示すように、5×10−4以下となった。熱伝導率は、熱処理により、わずかに増加し、全ての試料で、74W・m−1−1以上の高い熱伝導率を示した。このことから、熱処理による粒界相の結晶化が、低誘電損失化に必要であることが分かった。
以上詳述したとおり、本発明は、高周波用低損失誘電体材料、その製造方法及び部材に係るものであり、本発明により、2GHzと3GHzの高周波でも、誘電損失が5×10−4以下の優れた特性を示すと同時に、高い熱伝導を有し、気孔率が3%未満の低損失緻密質誘電体材料を提供することができる。本発明の高周波用低損失誘電体材料を用いることで、温度分布が均一で、処理反応の均一性を保障することができ、また、パーティクルの発生を小さくすることができ、ひいては、半導体などの製品の歩留まり向上に貢献することができる。本発明は、2GHzと3GHzにおける、誘電損失が5×10−4以下で、かつ熱伝導率が50W・m−1−1以上である高熱伝導・低誘電損失の高周波用低損失緻密質誘電体材料及びその部材を提供するものとして有用である。

Claims (10)

  1. 低誘電損失で高熱伝導率の高周波用緻密質誘電体材料であって、窒化ケイ素を主体とし、アルカリ土類金属元素化合物(AE)、周期律表第3a族元素化合物(RE)、及び不可避的に含まれる又は添加された不純物的酸素を含有する窒化ケイ素質焼結体からなり、焼結体中に含有されるアルカリ土類金属元素化合物(AE)の割合が、酸化物換算(AEO)で0.06重量%から1.0重量%の範囲にあり、周期律表第3a族元素化合物(RE)の割合が、酸化物換算(RE )で2.5重量%から20重量%の範囲にあり、酸化ケイ素化合物結晶相、又は酸窒化ケイ素化合物結晶相を含有し、鏡面研磨した焼結体表面の光学顕微鏡写真から求めた気孔率が、3%より低い気孔率を有し、2GHzと3GHzにおける誘電損失が5×10−4より低く、かつ熱伝導率が50W・m−1・K−1より高いことを特徴とする高周波用低損失誘電体材料。
  2. 酸化ケイ素化合物が、RESi、又はRESiOで示される化合物である、請求項に記載の高周波用低損失誘電体材料。
  3. 酸窒化ケイ素化合物が、RE・AESiN、RESi、RESi、又はRESi12で示される化合物である、請求項に記載の高周波用低損失誘電体材料。
  4. 焼結体中に含有される、アルカリ土類金属元素化合物が、Mg、Ca、Sr、又はBaの酸化物であり、周期律表第3a族元素が、Yb、Y、Dy、Er、Tm、Lu又はScである、請求項1に記載の高周波用低損失誘電体材料。
  5. 焼結体中の粒界相が、主に、RE−Si−O化合物、RE−Si−O−N化合物、又は、RE−AE−Si−O−N化合物からなり、結晶化している、請求項1に記載の高周波用低損失誘電体材料。
  6. Al含有量が、酸化物換算(Al)で多くても0.1重量%である、請求項1に記載の高周波用低損失誘電体材料。
  7. 請求項1からのいずれかに記載の材料を製造する方法であって、窒化ケイ素を主体とし、アルカリ土類金属元素化合物の存在量が、酸化物換算で0.1モル%から5モル%の範囲にあり、かつ、周期律表第3a族元素化合物の存在量が、酸化物換算で1モル%から7モル%の範囲にある出発原料を用いて、該出発原料を成形・焼成した後に、熱処理することにより、2GHzと3GHzにおける誘電損失が5×10−4より低く、かつ熱伝導率が50W・m−1・K−1より高い窒化ケイ素室焼結体とすることを特徴とする高周波用低損失誘電体材料の製造方法。
  8. アルカリ土類金属元素化合物が、Mg、Ca、Sr、又はBaの酸化物であり、周期律表第3a族元素が、Yb、Y、Dy、Er、Tm、Lu又はScである、請求項に記載の高周波用低損失誘電体材料の製造方法
  9. 請求項1からのいずれかに記載の高周波用低損失誘電体材料を構成要素として含む部材であって、電気部品の製造装置に適用される高周波透過用の部材であることを特徴とする高周波透過用部材。
  10. 部材が、半導体製造装置、又は液晶製造装置に適用される高周波用透過用部材である、請求項に記載の高周波透過用部材。
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