近年、インクジェット記録方式は簡便・安価に画像を作成出来るため、写真、各種印刷、マーキング、カラーフィルター等の特殊印刷など、様々な印刷分野に応用されてきている。特に、微細なドットを出射、制御するインクジェット記録装置や、色再現域、耐久性、出射適性等を改善したインク及びインクの吸収性、色材の発色性、表面光沢などを飛躍的に向上させた専用紙を用い、銀塩写真に匹敵する画質を得ることも可能となっている。
しかしながら、専用紙を必要とするインクジェット画像記録システムでは、用いることのできる記録媒体が制限されること、記録媒体のコストアップ等が問題となる。
一方、オフィスにおいては、記録媒体(例えば、普通紙、コート紙、アート紙等)の制約を受けずに高速でフルカラー印字が行えるシステムのニーズが益々高まりつつある。
たとえば、普通紙に関するインクジェット記録方法に関し、高速で印字でき、文字再現性がよく、印字の際の裏抜け(印字したインクが記録媒体を通過し、裏面にその画像が映る現象)、フェザリング、画像滲みの発生がない等の観点で種々の検討が行われてきた。
その一つの方法として、インクジェット用インクとして、水性インクジェット用インクが広く用いられているが、この様な水性インクジェット用インクを用いて、電子写真用コピー紙や上質紙、中質紙といった普通紙に画像記録を行った場合、画像記録した普通紙にカールやコックリング(紙面が濡れて波打つ現象)が起こるという問題がある。
一方、通常オフセット印刷によって作成される、チラシ、パンフレット、フライヤーなどの印刷物の作成をインクジェット記録方式で行った場合、無版印刷であることから、コストや工数の削減を可能とし、小ロットからの印刷をオンデマンドに行うことができる。このことから、小ロットやオンデマンドの印刷を行うことのできる印刷機としてインクジェットシステムによるオフセット印刷の代変機が求められている。
通常、オフセット印刷に用いられる印刷用塗工紙は、白色顔料と澱粉などのつなぎからなる塗工層が表裏に設けられ、平滑さと光沢感を高めている。
このような紙に水性インクジェット用インクを用いて画像を形成した場合、印刷用塗工紙がインクを吸収するのが遅く、インクジェットインクと塗工層表面の濡れ性の悪さから、印刷用塗工紙の表面でインク同士が寄り集まり、斑模様の印字ムラを呈するという問題があった。
インクの打ち込み過多による斑の問題を解決するために、スキャン回数を増やす方法(特開平6−115100号公報、特開2001−38888号公報)、スキャンごとのパターンを改良する方法(特開平7−60969号公報)、UV光によってUV硬化型インクを硬化する方法(特開2001−220526号公報)、画像処理によりインク付き量を減らす方法(特開2001−260331号公報)、二液処理によるインクの増粘による定着を利用する方法(特開2004−90596号公報)、中間転写体を用いる方法(特開2004−90595号公報)などさまざまな事例が過去に提案されている。
また、単純に表面張力を落として濡れ性を改善する方法も有効であり、特にこの方法の場合他の方法と容易に併用できることから、インクの表面張力を低く設計しておくことは極めて好ましい形態といえる。
さらに、小ロットやオンデマンドの印刷を行うことのできる印刷機として、高速度の印刷が必要とされる。
これを達成する一つの方法としてワンパス型ラインヘッドインクジェットシステムが挙げられる。印刷範囲の幅以上の長さを持つインクジェットヘッドをラインヘッドと呼び、紙送りに同期してラインヘッド下を紙が一度通過することで全てのドットが形成されることをワンパス型ラインヘッドインクジェットシステムと呼ぶ。
これに対し、従来の方法は、プリントヘッドをメディアの搬送方向と垂直に移動させてスキャンし、そのスキャン幅に応じた複数のパスを繰り返すことでドットを形成し画像を作成する。この方法をスキャン型と呼ぶ。
スキャン型のインクジェット記録方式が、スキャン幅分の紙送りとスキャン動作を繰返すことで印刷するのに対し、前記ライン方式インクジェット記録装置は、スキャン動作が不要で紙送りに同期して印刷することから、高速印刷の用途に向いている。
ただし、ワンパス型のインクジェットシステムの場合、単位時間当たりのインク付与量が多くなるため、上記問題点である印字ムラが起こりやすいという傾向がある。
その対策として、ラインヘッドを備えていても、多パス化することで付き量を減らす方法も考えられる。しかし、ラインヘッド下を紙が何度も通過しなくてはならないという構成上、装置の拡大や印刷速度の減少を招いてしまう。
上記課題に加え、印刷用塗工紙においても普通紙同様、カールやコックリングが発生することが大きな課題となる。
特に、印字ムラを改善する目的で表面張力を下げた場合、塗工層を抜けて内部のパルプ紙の部分にインクが浸透しやすくなるため、コックリングが起こりやすくなるという課題があった。
さらに、スキャン方式などの多パスでの印刷方法とパス毎に乾燥を行うことでコックリングを多少軽減することができたが、ワンパス型のシステムを採用した場合、装置の構成上インクは一度に塗布されるため、そのような手段を取ることができない。
上記のような課題に関し、普通紙のカールを防止する方法として、特定のアミド化合物、ピリジン誘導体、イミダゾリン化合物または尿素化合物をカール防止剤として含有するインクジェット用インクが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、水性インクジェット用インクを用いて普通紙に画像形成する際、カールを完全に抑止するためには、カール防止剤を多量に含有させることが必要となるため、この結果、インクジェット用インク中の固形分濃度が増え、分散安定性、インク粘度の上昇、ノズルの目詰まりなどの問題を引き起こし易いという問題があった。
同じく、普通紙を用いたインクジェット記録方法においてであるが、ポリオール類をカール防止剤として含有させるインクジェット方法が開示されている(例えば、特許文献2、3参照。)が、カール防止能としては不十分であった。また、いずれの方法においても、コックリングについては十分な改善はみられなかった。
普通紙の場合ではあるが、コックリング防止の技術として印刷付き量を減らす方法(特許開2003−39562号公報)が開示されている。印刷用塗工紙の場合もこの方法は有用であるが、この方法ではコックリングを完全に治そうとすると、インク付き量が減るため、画質を犠牲にするところが大きい。
特に、印刷用塗工紙を用いる印刷物については、文字印刷がメインである普通紙オフィス用途に比べ印字率も高く、きわめて高い平滑性を必要足される。このため、上記のコックリングの問題は大きな課題であり、解決が望まれている。
特開平9−176538号公報
特開平6−157955号公報
特開平6−240189号公報
以下本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明者らは上記課題に対し、装置、インク組成などについて鋭意検討を進めた結果、印刷塗工紙におけるコックリングは普通紙の場合と異なり、コックリングの発生が印字から若干のタイムラグの後に発生することを発見した。
この現象は、印刷用塗工紙上の塗工層がインクの吸収を妨げるためコックリングが起こるのに時間が必要となることによるものであった。
本発明者らは以上の点に着眼した結果、印刷用塗工紙による印刷の場合、インクが紙中に吸収される前に、コックリングを起こさないインク量にまで乾燥によりインクを低減してしまえば、必要以上にインク量を減らすことなく平滑な印刷物を作成することが可能であることを見出した。
この方法は、ワンパス型印字の場合でも実施可能であるだけでなく、ワンパス型高速印字ではメディアが乾燥部に搬送される時間が短いという利点がもたらされる。
<乾燥方法について>
乾燥方法の説明の前に、本発明における乾燥という言葉について定義を行う。印刷における乾燥という言葉に関は、表面の流動性を無くす行為全般を指す広義の意味において使われる場合がある。本発明における乾燥は広義の意味ではなく、「紙からのインク溶媒の減少」もしくは「紙からのインク溶媒の減少を促進する行為」のことを指すものとする。このため、例えば、紙中部にインクが染み込むことでブロッキングが起こらなくなるような場合や、UVインクがUVの照射により流動性を失うといった場合については、本明細中における乾燥の定義には含まれない。
乾燥方法としては、たとえば、風乾燥、熱風乾燥、赤外線照射、裏面よりの加熱、電離放射線の照射などの公知の方法を使用することが可能である。
風乾燥、熱風乾燥はその装置の構成上の簡素さと、乾燥表面における空気の層を乱すため蒸発が加速されることから好ましい。このとき、熱風乾燥を行うと同時に紙面に熱を加えられることから乾燥の速さの観点から好ましいが、一方で、紙に熱によるダメージを与え返ってコックリングを促進する場合があるので注意が必要である。熱風を使用して乾燥を行う場合、以上のことを鑑みて熱風の温度は35℃よりおおきく80℃未満の間が好ましく、40℃より大きく55℃未満がより好ましい。
風、熱風乾燥の場合、乾燥ゾーンとヘッドが近い場合、風のヘッド下への流れ込みによる着弾のブレを招く恐れがあることから、乾燥風がヘッドの側へ流れ込まないようにする工夫がなされていることが好ましい。例えば、風防の設置、乾燥風の向きが搬送下流側に流れるようにする、紙の搬送経路の工夫などにより乾燥風がヘッドの側へ流れ込まないようにすることができる。
赤外線やUV線、熱量を与えることのできる光線の照射による乾燥をおこなうことも、紙の表面から乾燥を行うことができ、紙にダメージを与えにくいという点で好ましい。特に赤外線の照射が紙にダメージを与えにくく、熱効率がよく安全なため好ましい。赤外線は遠赤外線、近赤外線どちらでもかまわないが、OHの吸収が近いことから波長3μm程度の赤外線を利用することが好ましい。
その他の電離放射線の照射として、例えばマイクロ波の照射を行うことも可能である。マイクロ波は水の分子間吸収に対応していることから、インクの蒸発を促進しかつ、紙にほとんどダメージを与えないという点で特に好ましい。一方、装置負荷が大きく、安全性への対策がいるなどの点も挙げられる。
紙の背面からの熱量を加えることにより、着滴したインクを乾燥させることも可能である。特に印字以前から紙に熱量を加えておくことが好ましい。この場合、着滴直後から乾燥を開始することが可能である。ただし、裏面より加熱していることから紙にダメージを与えやすいため強い加熱は好ましくない。裏面からの加熱においては紙の表面温度が35℃より大きく60℃未満に収まるようにすることが好ましい。
ヒートローラーによる加熱や、吸収体などの押当てによる乾燥によることも可能であるが、この場合、本発明の構成上インクが乾燥しないうちに印字表面に接触を行うこととなるため、印字表面を乱さないようにする工夫との併用が必要である。
乾燥の強さや乾燥開始の速さなどの点から、これらの方法を併用して行うことも好ましい。併用の仕方としては、二つの乾燥機構を同時に紙に与えても良いし、順次乾燥機構が切り替わる仕組みとなっていても良い。後者の場合、本発明のかかる請求の範囲としては、最初の乾燥機構が媒体に与えられた瞬間を乾燥開始とし、且つ、最初の乾燥機構による乾燥の強さがそれ以降の乾燥機構による乾燥の強さと同じかほぼ同等であることが好ましい。同一の乾燥機構で乾燥の強度を変化させるような場合も初期の乾燥の強さがそれ以降の乾燥の強さと同じかほぼ同等であることが好ましい。
乾燥はコックリングが起こり始める前に達成することが望ましく、印字開始から0.5秒以内に行うことが必要である。これよりも開始が遅いとインクの紙面中への染み込みが多くなり、乾燥が間に合わない。これは、紙中に染み込んだ液体は減率乾燥となり乾燥効率が落ちることに由来すると考えられえる。印字開始直後に乾燥が行われることが好ましく、0.5秒以上の時間をおいて乾燥を開始すると、コックリングを防止する本研究の効果が発揮されない。
このとき、印字開始から0.5秒以内に乾燥を行うとは、最初のインク液滴が着滴した瞬間から乾燥が開始されるまでの時間を言うものとする。
さらに、乾燥開始3秒後の紙面におけるインクの残留量が最大でも6ml/m2以下となるように乾燥の強度とインク付き量を調整することが好ましい。
このときインクの残留量が最大でも6ml/m2とは、印刷面において最も付き量の多い部分でのインク付き量が6ml/m2を超えている場合、その場所がコックリングを呈するため、部分的に見た場合でもこの値を超えないことが好ましいということを意味している。ただし、このとき、6ml/m2を越える印字部分については、印字部分の形状や紙の種類によっても多少異なるが、その広さがおおよそ10mm2以下であった場合はコックリングを呈するだけの広さが無いため、コックリングが起こらず、このような印字部分については本発明の効果の範囲には含まない。
3秒を過ぎた段階でインクの残留量が6ml/m2以下の場合、坪量が75g/m2以上のほとんどの印刷用塗工紙において、コックリングを起こすのに必要な時間が経過した時点で、コックリングが起こるために十分なインク付き量が紙面上に存在しないため、コックリングが起こらない。また、坪量75g/m2以下の紙でもコックリングを起こさないか、起こしても、搬送の問題が起こらない程度のコックリングに抑えることが可能である。
必要に応じて、乾燥能力に対応してインク付き量を減らし、本発明の構成要件を満たすことが好ましい。
さらに好ましくは、乾燥開始後1.5秒後の紙面におけるインクの残留量が2.5ml/m2以下となる様に乾燥の強度とインク付き量を調整する機構が選択できることが好ましい。特にチラシなどに使用される坪量75g/m2以下の薄い印刷用塗工紙については、コックリングの発生が早く少ないインク付き量で強いコックリングが起こりやすいことから、乾燥開始後1.5秒後の紙面におけるインクの残留量が最大でも2.5ml/m2以下となるように乾燥の強度とインク付き量を調整することによって、坪量75g/m2以下のほとんどの印刷用塗工紙においてコックリングを問題の無いレベルまで低減することが可能である。
このときインクの残留量が最大でも2.5ml/m2以下とは、印刷面において最も付き量の多い部分でのインク付き量が2.5ml/m2を超えていないということを示す。
乾燥開始後1.5秒後の紙面におけるインクの残留量が2.5ml/m2以下とするためには、乾燥能力に応じてインク付き量の低減を行うことが好ましい。また、坪量75g/m2を越える紙については乾燥開始後1.5秒後の紙面におけるインクの残留量が2.5ml/m2以下の条件での印字を行う必要は無く、装置や画質設計上の負荷を考えると、坪量75g/m2以下の印刷用塗工紙に対してのみ、この条件を選択的に活用することが好ましい。
インク付き量については、本発明の構成を損なわない範囲での設計を行うことが可能である。画像設計の観点からは、乾燥能力が本発明の条件を満たす範囲内で、インク付き量を多く設計することが好ましい。例えば、熱風乾燥や送風および加熱を組み合わせて行う乾燥の場合、印字面中での最大のインク付き量は7ml/m2以上15ml/m2以下が好ましく、坪量75g/m2以下の印刷塗工紙を平滑に印字する印刷方法として、インク付き量が3ml/m2以上9ml/m2以下の印刷機構を備えていることが好ましい。ただし、乾燥装置の組み合わせや乾燥機構の選択、電力消費の増加による乾燥能力の増強により、インク付き量の上限値は上記好ましい範囲に限定されるものではない。
<インクについて>
本発明は水系のインクを用いたインクジェットシステムに関する発明である。水系のインクジェットインクとは、混入や吸湿などによらない意図的に添加された水を少なくともインク溶媒に含んでいるインクのことをさす。具体的には10%以上の水を含むインクであると定義する。さらに、インクジェットにより吐出可能である点からインクの粘度が0.5cP以上60cP以下であることを特徴とする。
水系インクを使用するメリットとしては、環境安全性に加え、印刷物に残留したインク溶媒が滲みブロッキングなどの悪さをしにくいこと、画像の風合いや彩度を出しやすいこと、一般的な油系インクに比べ乾燥にかかる負荷が小さいこと、などが上げられる。
本発明におけるインクは特にインクの表面張力が35mN/m以下に調整されたものを扱う。インクの表面張力が35mN/m以下とすると印刷用塗工紙上での濡れ性が上がり、印刷用塗工紙表面での液よりによる印字ムラを防止することができる。さらに印字ムラを防止するという点から、特に好ましくはインクの表面張力が27mN/m以下であることが好ましい。
表面張力を下げる方法としては、一種あるいは複数の低表面張力の溶剤や界面活性剤を添加する方法が好ましい。使用される溶剤の具体例としては、特に限定するものではないが、例えば、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテル、トリプロピレングリコールジブチルエーテル、3−メチル−2,4−ペンタンジオール、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、1,2ヘキサンジオール、1,2ペンタンジオール、1,2ブタンジオール、等を挙げることができる。
使用される界面活性剤としては陽イオン性、陰イオン性、両性、非イオン性のいずれも用いることができる。使用される界面活性剤の具体例としては、特に限定するものではないが、例えば、陽イオン性界面活性剤としては、脂肪族アミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩等、陰イオン性界面活性剤としては、脂肪酸石鹸、N−アシル−N−メチルグリシン塩、N−アシル−N−メチル−β−アラニン塩、N−アシルグルタミン酸塩、アシル化ペプチド、アルキルスルフォン酸塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルナフタレンスルフォン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、アルキルスルホ酢酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、N−アシルメチルタウリン、硫酸化油、高級アルコール硫酸エステル塩、第2級高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸塩、第2級高級アルコールエトキシサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、モノグリサルフェート、脂肪酸アルキロールアミド硫酸エステル塩、アルキルエーテルリン酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩等、両性界面活性剤としては、カルボキシベタイン型、スルホベタイン型、アミノカルボン酸塩、イミダゾリニウムベタイン等、非イオン活性剤としては、ポリオキシエチレン2級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステロールエーテル、ポリオキシエチレンラノリン誘導体ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアミンオキサイド、アセチレングリコール、アセチレンアルコール等が挙げられる。さらに低表面張力化の観点から、これらの界面活性剤の一部がフッ素原子あるいは珪素原子に置換されていることが好ましい。
これらの界面活性剤や溶剤を単独で用いても良いし複数を併用しても良い。
本発明の係る水系インクについて、上記溶媒や界面活性剤のほかに、吐出性を高める等の目的でさらにその他の溶媒や活性剤を添加しても構わない。この時使用できる溶媒としては、水に可溶な溶媒であればどのようなものを添加しても構わない。溶媒としては、上記の低表面張力の溶剤と同様のものに加えさらに以下のような溶媒を加えることが可能である。例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、デカグリセリル、1,4ブタンジオール、1,3ブタンジオール、1,2,6ヘキサントリオール、2ピロリジノン、ジメチルイミダゾリジノンなどが挙げられる。
界面活性剤としては、上記の表面張力を下げる目的で使用される界面活性剤と同様のものが挙げられる。
本発明のインクには、上記説明した各溶媒の他に、各種機能性添加剤を含有する。
本発明のインクは、前記の溶媒中に着色剤、更に、後述するような各添加剤を必要に応じ含有するものであり、本発明に用いられる着色剤の色相としては、例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック、ブルー、グリーン、レッドが好ましく用いられ、特に好ましくはイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各着色剤である。
本発明のインクは、着色剤が染料である染料インク、あるいは着色剤がインクジェットインクを構成する溶媒に不溶で、微細な顔料粒子を含む分散系を形成する顔料インク、あるいは着色剤が着色した高分子ポリマーの分散体からなる分散インク等の種々のインクジェット用インクに適用できる。
本発明で用いることのできる染料としては、アゾ染料、メチン染料、アゾメチン染料、キサンテン染料、キノン染料、フタロシアニン染料、トリフェニルメタン染料、ジフェニルメタン染料等を挙げることができ、その具体的化合物としては、例えば、特開2002−264490号公報に例示した染料を挙げることができる。
また、前記ポリマー等と共に着色微粒子を形成し着色剤となる油溶性染料については、通常カルボン酸やスルホン酸等の水溶性基を有さない有機溶剤に可溶で水に不溶な染料、例えば分散染料等が選ばれる。また、水溶性染料を長鎖の塩基と造塩することにより油溶性を示す染料も含まれ、例えば、酸性染料、直接染料、反応性染料と長鎖アミンとの造塩染料が知られている。
本発明において使用できる顔料としては、従来公知のものを特に制限なく使用でき、水分散性顔料、溶剤分散性顔料等何れも使用可能であり、例えば、不溶性顔料、レーキ顔料等の有機顔料及び、カーボンブラック等の無機顔料を好ましく用いることができる。
不溶性顔料としては、特に限定するものではないが、例えば、アゾ、アゾメチン、メチン、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、キナクリドン、アントラキノン、ペリレン、インジゴ、キノフタロン、イソインドリノン、イソインドリン、アジン、オキサジン、チアジン、ジオキサジン、チアゾール、フタロシアニン、ジケトピロロピロール等が好ましい。
好ましく用いることのできる具体的顔料としては、以下の顔料が挙げられる。
マゼンタまたはレッド用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222等が挙げられる。
オレンジまたはイエロー用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー15:3、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138等が挙げられる。
グリーンまたはシアン用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
以上の他にレッド、グリーン、ブルー、中間色が必要とされる場合には以下の顔料を単独あるいは併用して用いることが好ましく、例えば
C.I.Pigment Red;209、224、177、194、C.I.Pigment Orange;43、C.I.Vat Violet;3、C.I.Pigment Violet;19、23、37、C.I.Pigment Green;36、7、C.I.Pigment Blue;15:6、等が用いられる。
また、ブラック用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブラック1、C.I.ピグメントブラック6、C.I.ピグメントブラック7等が挙げられる。
本発明で用いられる顔料は、分散剤及びその他所望する諸目的に応じて必要な添加物と共に分散機により分散して用いることが好ましい。分散機としては従来公知のボールミル、サンドミル、ラインミル、高圧ホモジナイザー等が使用できる。
本発明のインクに使用する顔料分散体の平均粒径は、10nm以上200nm以下であることが好ましく、10nm以上100nm以下がより好ましく、10nm以上50nm以下がさらに好ましい。顔料分散体の平均粒径が100nmを越えると、分散が不安定となり。また、顔料分散体の平均粒径が10nm未満になっても顔料分散体の安定性が悪くなりやすく、インクの保存安定性が劣化しやすくなる。
顔料分散体の粒径測定は、光散乱法、電気泳動法、レーザードップラー法等を用いた市販の粒径測定機器により求めることが出来る。また、透過型電子顕微鏡による粒子像撮影を少なくとも100粒子以上に対して行い、この像をImage−Pro(メディアサイバネティクス製)等の画像解析ソフトを用いて統計的処理を行うことによっても求めることが可能である。
本発明のインクは印刷塗工紙上に塗布される点から、色材の定着性を上げるなどの目的で高分子ポリマーを含有することが好ましい。
高分子ポリマーは水に分散、あるいは溶解可能であれば、特に限定されるものではない。エマルジョン状態で分散されていてもかまわず、ただし、その場合インクジェットによる射出性を損なわないという観点から、300nm以下の粒径であることが好ましい。溶解性ポリマーの場合、組成や分子量は特に限定は無いが、重合度の高いポリマーほど射出性が悪化する傾向があるため、ポリマーの組成にもよるが好ましい分子量50000以下であることが好ましい。
印刷物の経時でのカールを防止するためカール防止剤を添加することが好ましい。本発明に使用できるカール防止剤に関しては特に限定されるものではないが、例えば、特開平9−176538号公報、特開平6−157955号公報、特開平6−240189号公報などで例示されている化合物を使用することが可能である。
また、本発明のインク中には、インクの多価金属イオンであるカルシウムイオン、マグネシウムイオン及び鉄イオンの総含有量が、10ppm以下であることが好ましく、より好ましくは0.1〜5ppm、特に好ましくは0.1〜1ppmである。
インクジェットインク中の多価金属イオンの含有量を、上記で規定した量とすることにより、高い分散安定性を有するインクを得ることができる。本発明に係る多価金属イオンは、硫酸塩、塩化物、硝酸塩、酢酸塩、有機アンモニウム塩、EDTA塩等に含有されている。
本発明のインクでは、上記説明した以外に、必要に応じて、出射安定性、プリントヘッドやインクカートリッジ適合性、保存安定性、画像保存性、その他の諸性能向上の目的に応じて、公知の各種添加剤、例えば、多糖類、粘度調整剤、比抵抗調整剤、皮膜形成剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、防ばい剤、防錆剤等を適宜選択して用いることができ、例えば、流動パラフィン、ジオクチルフタレート、トリクレジルホスフェート、シリコンオイル等の油滴微粒子、特開昭57−74193号、同57−87988号及び同62−261476号に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号、同57−87989号、同60−72785号、同61−146591号、特開平1−95091号及び同3−13376号等に記載されている退色防止剤、特開昭59−42993号、同59−52689号、同62−280069号、同61−242871号及び特開平4−219266号等に記載されている蛍光増白剤等を挙げることができる。
印字ムラを改善するために、本発明の構成を損なわない範囲で公知の技術と組み合わせても良い。
例えば、水系のUV硬化型インクをインクとして使用する方法(特開2007−31469号公報)や、画像処理によりインクを低減する方法(特開2001−260331号公報)、などの技術は本発明の構成を損なうことなく使用できる。
本発明において、印刷に使用されるメディアとしてはインクの吸収速度が0.05ml/m2ms1/2以上1ml/m2ms1/2以下である印刷用塗工紙である。
本発明における印刷用塗工紙とは、木材のパルプなどの植物の繊維などを原料に作成された紙上にカオリンなどの無機顔料と高分子などの接着剤からなる塗工層を設けたものである。具体的にはアート紙、コート紙、軽量コート紙、マットコート紙など、紙の風合いや価格から一般的なフライヤー、チラシなどでもっとも良く使われる印刷用塗工紙が挙げられる。表面にエンボス処理等の加工が行われていてもかまわない。
インクジェット専用の塗工紙もあるが、通常インクジェット専用紙では印刷用塗工紙の風合いは出ず、価格も印刷用塗工紙に比べて高価であり、また、インクジェットのインクを吸収することを目的に塗工層が設けられていることからも、インク吸収速度が本発明に係る条件に合致しないことから、本発明における印刷用塗工紙の条件には含まれない。
塗工層がRC紙やユポといった紙以外の媒体に設けられているような特殊な用紙については、本発明の係る課題であるコックリングが発生しないため、本発明の扱う範囲ではない。
上記インクの吸収速度はブリストウ法によって測定することができる。接触時間の平方根に対してインクの転移量をプロットし、その傾きよりインクの吸収速度の指標[ml/m2ms1/2]を求めることが好ましい。測定されたインク吸収量については、印刷塗工紙の表面粗さや塗工層の濡れを拾う場合や印刷塗工紙の吸収容量が小さい場合を踏まえ、また、測定上の簡便さと正確性より接触時間が0.5s〜2s程度のところのインク吸収速度を用いることが好ましい。
印刷塗工紙のインク吸収量が1ml/m2ms1/2より大きいと、インクの吸収速度が速すぎ、乾燥が起こる以前にコックリングが発生する。このような印刷用塗工紙はあまり見受けられず、一部の微塗工紙、あるいは上質紙、中質紙といった普通紙の類の紙である場合が多い。
インク吸収が全く無い紙ではそもそも本発明に係るコックリングの課題が発生しないため、本発明の方法を用いる必要は無い。具体的にはインク吸収速度0.05ml/m2ms1/2より小さい印刷塗工紙は、本発明の効果を用いずともコックリングの無い平滑な印刷物を作成することができる。印刷塗工紙の中ではキャストコート紙がこのような条件にあてはまる。キャストコート紙はアート紙やコート紙の風合いとは異なる風合いの光沢感の高い印刷用塗工紙である。
印刷塗工紙の坪量としては40g/m2以上150g/m2以下程度が好ましい。40g/m2を以下の坪量の場合、搬送が困難なほか、本発明の効果を以ってしても満足なプリント物が得られない。また、150g/m2以上の厚い印刷用塗工紙の場合、特に本発明の方法を用いなくともコックリングの無い印刷物を得られる場合がある。
印刷用塗工紙の形状は枚葉型でもRoll−to−Roll方式でもかまわない。
<インクジェットヘッドについて>
本発明のインクジェットインク記録方法においては、インクジェットインクを装填したプリンター等により、デジタル信号に基づきインクジェットヘッドよりインクを液滴として吐出させることで印刷用塗工紙に印字を行う。
本発明のインクを吐出して画像形成を行う際に、使用するインクジェットヘッドはオンデマンド方式でもコンティニュアス方式でも構わない。又吐出方式としては、電気−機械変換方式(例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)、電気−熱変換方式(例えば、サーマルインクジェット型、バブルジェット(登録商標)型等)等など何れの吐出方式を用いても構わない。
その中でも、本発明のインクジェット記録方法においては、30μm以下のノズル径を有するピエゾ型インクジェット記録ヘッドを使用することが好ましい。
<ワンパスと複数パスについて>
本発明のインクジェット記録方法はワンパス型のインクジェット記録方法である。ワンパス型のインクジェット記録方法とは、メディアが一つのインクジェットヘッドユニットの下を通過した際に、一度の通過でドットの形成されるべきすべての画素にインク滴が打たれるインクジェット記録方法である。
ワンパス型のインクジェット記録方法を達成する手段として、ラインヘッド型のインクジェットヘッドを使用することが好ましい。
ラインヘッド型のインクジェットヘッドとは、印刷範囲の幅以上の長さを持つインクジェットヘッドのことを指す。ラインヘッド型のインクジェットヘッドとしては、一つのヘッドで印刷範囲の幅以上であっても良いし、特開2007−320278号公報に開示のように複数のヘッドを組み合わせて印刷範囲の幅を超えるよう構成してもよい。
図1に本発明の記録方法を実施できる装置の具体例を示す。
図1に構成される装置はプレート搬送で搬送し、熱風乾燥およびプレートからの加熱による乾燥が行なえる枚葉機型のラインヘッドインクジェットプリンターの構成となっているが、本発明のインクジェット記録方法を達成することのできる機械がこの方式に限定されるものではない。
搬送装置1に移動可能なプレート21が設置されている。プレート21は任意の速度で移動が可能であることが好ましい。搬送速度は速いほど印刷速度が上がり、乾燥が開始される時間が短くなることから好ましいが、搬送速度が速すぎると振動による着弾の誤差を誘発したり、インクジェットの吐出が追随できないといった問題が起こる。このため、搬送速度は20mm/s以上1000mm/s以下が好ましい。
プレート21の裏面にヒーター22を設置することで、プレートを暖め印刷塗工紙の裏面から熱量を加え乾燥を行うことができる。この場合プレート21は金属のプレートであることが好ましい。ヒーター22はスライダックにより電圧などを制御することにより、温度を可変で制御できることが好ましい。このとき、印刷塗工紙の表面温度が35℃より高く80℃より低い範囲で加熱が行なわれることが好ましい。
プレート21への印刷用塗工紙の吸着は吸引によって行なう。吸引口23より外部のポンプを使用し減圧を行うことでプレート21表面に設けられた吸着口により印刷塗工紙を吸着することが好ましい。
インクジェットヘッドユニット3はプレート21の搬送経路に設置される。図1の構成の場合、ヘッド311〜318はノズルピッチ360dpi(dpiとは2.54cmあたりのドットの数をいう)のピエゾ型インクジェットヘッドで7plの液滴を吐出できる512ノズルのヘッドを設置している。各ヘッドは搬送方向Xに対しノズル列が直行するように配置されている。ヘッド311とヘッド312は互いのノズル配置が互い違いとなるように配置され、二つのヘッドで720dpiの画素をワンパスで吐出出来るようになっている。シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各色ごとに二列のヘッドを配置し、311〜318計8列分のヘッドとなっている。必要に応じてY軸方向にヘッドを並べて印刷塗工紙の幅に対応させる構成とすることも好ましい。
ヘッド311〜318からはインク供給用のチューブ32が出ておりインクタンクまで続いている。インクタンクは開放型でも密閉型でもかまわないがヘッド面よりもインクタンクの液面(パック型ならパックの頭頂部)がヘッドのノズル面よりも5mm〜50mm程度下にあり、ヘッド内部が負圧となっていることが好ましい。
インクの間欠射出性を維持したり、発生したノズル欠を回復する目的で、ノズルのメンテナンス機構やキャッピング機構を有することが好ましい。図1の33はヘッドの退避位置に設置されたノズルのキャップを示す。
プレート搬送ヘッドの下流にドライヤー5を設置する。ドライヤーの風が印刷塗工紙全面にいきわたるような配置とすることが好ましい。ドライヤーの送風温度は外部より電圧変化で制御できるようになっている。ドライヤーの風がヘッド側に流れ込まないよう風防4を設置することも好ましい。
搬送後のメディアはドライヤー5の下で停止し任意の時間乾燥風にさらされることが可能である。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<インクセットの調製>
(インク1−K)
水39質量部にグリセリン15質量部とジエチレングリコールモノブチルエーテル10質量部、オルフィンE1010(日信化学社製)を3質量部加え十分に攪拌した後、顔料分散体Cab−o−jet300 Black(CABOT社製)33質量部を攪拌しながら加えた。
十分に攪拌を行った後、この混合液を#3500メッシュの金属フィルターで濾過し、中空糸膜による脱気を行い、インク1−Kを調製した。
このインクの表面張力を自動表面張力計(協和界面科学社製)を使用しプレート法により測定したところ、29.8mN/mであった。
(インク1−C)
水22質量部にグリセリン15質量部とジエチレングリコールモノブチルエーテル10質量部、オルフィンE1010(日信化学社製)を3質量部加え十分に攪拌した後、顔料分散体Cab−o−jet250C(CABOT社製)50質量部を攪拌しながら加えた。
十分に攪拌を行った後、この混合液を#3500メッシュの金属フィルターで濾過し、中空糸膜による脱気を行い、インク1−Cを調製した。
このインクの表面張力は29.8mN/mであった。
(インク1−M)
水22質量部にグリセリン15質量部とジエチレングリコールモノブチルエーテル10質量部、オルフィンE1010(日信化学社製)を3質量部加え十分に攪拌した後、顔料分散体Cab−o−jet260M(CABOT社製)50質量部を攪拌しながら加えた。
十分に攪拌を行った後、この混合液を#3500メッシュの金属フィルターで濾過し、中空糸膜による脱気を行い、インク1−Mを調製した。
このインクの表面張力は30.3mN/mであった。
(インク1−Y)
水22質量部にグリセリン15質量部とジエチレングリコールモノブチルエーテル10質量部、オルフィンE1010(日信化学社製)を3質量部加え十分に攪拌した後、顔料分散体Cab−o−jet270Y(CABOT社製)50質量部を攪拌しながら加えた。
十分に攪拌を行った後、この混合液を#3500メッシュの金属フィルターで濾過し、中空糸膜による脱気を行い、インク1−Yを調製した。
このインクの表面張力は30.0mN/mであった。
(インク2−K)
水41質量部にグリセリン15質量部とジエチレングリコールモノブチルエーテル10質量部、SF351(信越シリコーン)を1質量部加え十分に攪拌した後、顔料分散体Cab−o−jet300 Black(CABOT社製)33質量部を攪拌しながら加えた。
十分に攪拌を行った後、この混合液を#3500メッシュの金属フィルターで濾過し、中空糸膜による脱気を行い、インク1−Kを調製した。
このインクの表面張力は21.8mN/mであった。
(インク2−C)
水24質量部にグリセリン15質量部とジエチレングリコールモノブチルエーテル10質量部、SF351(信越シリコーン)を1質量部加え十分に攪拌した後、顔料分散体Cab−o−jet250C(CABOT社製)50質量部を攪拌しながら加えた。
十分に攪拌を行った後、この混合液を#3500メッシュの金属フィルターで濾過し、中空糸膜による脱気を行い、インク1−Cを調製した。
このインクの表面張力は21.7mN/mであった。
(インク2−M)
水24質量部にグリセリン15質量部とジエチレングリコールモノブチルエーテル10質量部、SF351(信越シリコーン)を1質量部加え十分に攪拌した後、顔料分散体Cab−o−jet260M(CABOT社製)50質量部を攪拌しながら加えた。
十分に攪拌を行った後、この混合液を#3500メッシュの金属フィルターで濾過し、中空糸膜による脱気を行い、インク1−Mを調製した。
このインクの表面張力は21.9mN/mであった。
(インク2−Y)
水24質量部にグリセリン15質量部とジエチレングリコールモノブチルエーテル10質量部、SF351(信越シリコーン)を1質量部加え十分に攪拌した後、顔料分散体Cab−o−jet270Y(CABOT社製)50質量部を攪拌しながら加えた。
十分に攪拌を行った後、この混合液を#3500メッシュの金属フィルターで濾過し、中空糸膜による脱気を行い、インク1−Yを調製した。
このインクの表面張力は21.9mN/mであった。
(インク3−K)
水42質量部にグリセリン15質量部とジエチレングリコールモノエチルエーテルジ10質量部を混合し十分に攪拌した後、顔料分散体Cab−o−jet300 Black(CABOT社製)33質量部を攪拌しながら加えた。
十分に攪拌を行った後、この混合液を#3500メッシュの金属フィルターで濾過し、中空糸膜による脱気を行い、インク3−Kを調製した。
このインクの表面張力は50.8mN/mであった。
(インク3−C)
水24質量部にグリセリン15質量部とジエチレングリコールモノエチルエーテル10質量部を混合し十分に攪拌した後、顔料分散体Cab−o−jet250C(CABOT社製) 50質量部を攪拌しながら加えた。
十分に攪拌を行った後、この混合液を#3500メッシュの金属フィルターで濾過し、中空糸膜による脱気を行い、インク3−Cを調製した。
このインクの表面張力は50.1mN/mであった。
(インク3−M)
水24質量部にグリセリン15質量部とジエチレングリコールモノエチルエーテルジ10質量部を混合し十分に攪拌した後、顔料分散体Cab−o−jet260M(CABOT社製)50質量部を攪拌しながら加えた。
十分に攪拌を行った後、この混合液を#3500メッシュの金属フィルターで濾過し、中空糸膜による脱気を行い、インク3−Mを調製した。
このインクの表面張力は51.8mN/mであった。
(インク3−Y)
水24質量部にグリセリン15質量部とジエチレングリコールモノエチルエーテル10質量部を混合し十分に攪拌した後、顔料分散体Cab−o−jet270Y(CABOT社製)50質量部を攪拌しながら加えた。
十分に攪拌を行った後、この混合液を#3500メッシュの金属フィルターで濾過し、中空糸膜による脱気を行い、インク3−Yを調製した。
このインクの表面張力は51.4mN/mであった。
<印刷用塗工紙の吸水量について>
各種印刷用塗工紙について、自動走査吸液計(熊谷理機工業社製)を用い、ブリストウ法によりインク1、インク2、インク3の接触時間0.5s〜2sにおけるインク転移量より各インクの吸収速度を測定した。各印刷用塗工紙のインクに対する吸収速度を表1に示す。
<プリンターの構成>
図1の構成からなるプリンターを使用した。ステージの搬送速度は秒速1000mm/sとした。このとき、ドライヤーと風防の位置を調整可能にし、乾燥開始のタイミングを調整できるようにした。ヘッド311の直下から20cmのところに風防4を移動することで乾燥開始の時間を0.2秒に設定することが可能である。
ドライヤー5は市販のドライヤー(松下電器産業 ターボドライ)を改造し、電熱線をスライダックに接続し、熱風の温度を変更できるようにした。ドライヤーによる乾燥は10秒間行なった。
インクはパック化し、密閉された状態でシリコンチューブによりヘッド311〜318に導入された。各ヘッドのインクの色の割り当ては、ヘッド311およびヘッド312をK、ヘッド313およびヘッド314をC、ヘッド315およびヘッド316をM、ヘッド317およびヘッド318をYとした。
<ドライヤー乾燥強度について>
ドライヤーの乾燥強度を調べるため、プリンターのプレート21に重量計を設置し、実際の試行時に試料がどのような重量変化を呈しているかを調べるための測定を別途行なった。ドライヤーの送風により重量がずれるため、重量を測る際はドライヤーを停止して重量の測定を行なった。これにより目的の乾燥開始時間とドライヤー乾燥時間によるインクの蒸発を求めた。
<印刷画像について>
720dpi(3.6cm×12cm)の二次色(茶)のベタを印刷した。このとき、印字率は70%(4ml/m2)、80%(4.5ml/m2)、90%(5ml/m2)、125%(7ml/m2)、175%(10ml/m2)から選択し印刷を行なった。紙の大きさは4mm×15cmで中心にベタ画像が印字されるように設定した。また、紙の目が搬送方向に対して垂直(図1、Y軸方向)になるよう紙を裁断、設置した。
<斑の評価>
斑について以下のように評価した。
×:明らかな斑の発生が観察できた。
○:斑が発生しなかった。
各印刷物の斑を評価した結果を表2、表3に示す。表面張力が35mN/m以下であるインクはミラーコート紙以外では斑の発生が見られなかったのに対し、表面張力35mN/m以上のインクでは斑の発生が見られた。
<コックリングの評価>
コックリングについて以下のように評価した。
××:非常に大きなコックリングが残った。ヘッドと紙が擦れた。
×:目立つコックリングが残る。
△:若干のコックリングが残る。
○:コックリングは残らない。乾燥中に微小なコックリングが現れても最終印刷物が平滑な場合はここに含む。
コックリングの結果について、表2、表3に記載する。印字より0.5秒経つ前に乾燥を開始するとコックリングが低減する。さらに、ある時間における印刷用塗工紙上でのインク残存量が特定の値以下となるよう、乾燥強度とインク付き量を設定することでコックリングをさらに低減することができ、薄い印刷用塗工紙でもコックリングが無い印刷物を得ることが可能である。
以上から、本発明の構成のインクジェット記録方法によれば、(キャストコート紙や上・中質紙を除く)一般の印刷用塗工紙を使用し、高精細で且つ平滑な印刷物を作成することが可能である。