ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、金属製部品の点数を削減して更なる軽量化を実現することが出来ると共に、硬質の合成樹脂と金属とを接着することによる接着不良を回避することが出来る、新規な構造の流体封入式防振装置を提供することにある。
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載するが、以下に記載の各構成は、可能な限り任意な組み合わせで採用可能である。
すなわち、本発明の特徴とするところは、第一の取付部材と筒状部を有する第二の取付部材を本体ゴム弾性体で連結して、壁部の一部が該本体ゴム弾性体で構成された流体室を形成すると共に、該流体室に非圧縮性流体を封入した流体封入式防振装置において、前記第一の取付部材と環状の中間部材を前記本体ゴム弾性体で連結した第一の構成部品と、前記筒状部が合成樹脂材料で形成された前記第二の取付部材を備える第二の構成部品とを別体形成して、該中間部材を該第二の取付部材における該筒状部の軸方向一方の端部に固定することでそれら第一の構成部品と第二の構成部品を相互に連結すると共に、該第二の取付部材と該中間部材の間にシール部材を介在させてそれら第一の構成部品と第二の構成部品の間に外部空間から密閉された前記流体室を形成したことにある。
本発明の流体封入式防振装置では、第二の取付部材の筒状部が合成樹脂材料で形成されている。それ故、金属製の筒状部を採用する場合に比して、流体封入式防振装置の軽量化を実現することが出来る。
特に、別体とされた第一の構成部品と第二の構成部品が、第一の構成部品側である中間部材を第二の構成部品側である筒状部の軸方向一方の端部に固定することにより、相互に連結されている。それ故、中間部材と筒状部の内外挿状態での不必要な重なりを少なくして、重量の軽減を図ることが出来る。加えて、別体形成されて後固定される中間部材と筒状部の間には、熱膨張差等に起因して隙間が発生する問題もない。
しかも、第二の取付部材と中間部材の間でシール部が挟み込まれて、第一,第二の構成部品が流体密に組み付けられることにより、非圧縮性流体が封入される流体室が、それら第一,第二の構成部品の間に容易に形成される。
また、本発明の流体封入式防振装置においては、前記第二の取付部材によって支持される仕切部材を前記流体室内に配設して、該仕切部材を挟んだ一方の側に壁部の一部が前記本体ゴム弾性体で構成された受圧室を形成すると共に、他方の側に壁部の一部が可撓性膜で構成された平衡室を形成し、更にそれら受圧室と平衡室を相互に連通するオリフィス通路を形成することが望ましい。
このように、仕切部材によって流体室を仕切って、振動入力時に圧力変動が及ぼされる受圧室と、容積変化が容易に許容される平衡室を形成して、それらをオリフィス通路で相互に連通することにより、振動入力時における受圧室と平衡室の相対的な圧力差に基づいて、それら両室間でオリフィス通路を通じての流体流動が惹起される。これにより、オリフィス通路を通じて流動する流体の共振作用等に基づく優れた防振効果が発揮される。
さらに、上記の如き可撓性膜を備えた流体封入式防振装置においては、前記可撓性膜を前記第二の取付部材の前記筒状部に固着すると共に、該可撓性膜と一体形成された被覆層によって該筒状部の内周面を被覆しても良く、筒状部が非圧縮性流体との接触によって劣化するのを防ぐことが出来る。
更にまた、上記の如き被覆層を備えた流体封入式防振装置において、より好適には、前記シール部材が前記被覆層に一体形成されて、シール部材を別体で形成することによる部品点数の増加や構造の複雑化が回避される。
また、本発明の流体封入式防振装置においては、前記第二の取付部材と前記中間部材を締結部材によって締結することが望ましい。
すなわち、ボルトやリベット等の締結部品を用いて第一の構成部品と第二の構成部品とを連結することにより、合成樹脂製の筒状部を採用した本発明構造において、第一の構成部品と第二の構成部品を一層大きな力で安定して連結することが出来る。しかも、中間部材と筒状部の連結が一層大きな力で実現されることにより、シール部材が中間部材と筒状部の間で充分に圧縮されて、第一の構成部品と第二の構成部品の連結部分における流体密性の更なる向上が図られる。
また、本発明の流体封入式防振装置では、前記第二の取付部材の前記筒状部に注入口が貫通形成されており、前記第一の構成部品と前記第二の構成部品との組付け後に該注入口を通じてそれら第一の構成部品と第二の構成部品の間に非圧縮性流体が注入されてから該注入口が閉塞されることにより前記流体室に非圧縮性流体が封入されていても良い。
このような構造を採用すれば、第一の構成部品と第二の構成部品の組付けを非圧縮性流体中で行うことなく、流体室に非圧縮性流体を封入することが出来て、第一,第二の構成部品の組付け作業が容易になる。しかも、中間部材と筒状部との軸直角方向の投影における重なりが制限されることにより、注入口を筒状部において中間部材を外れた位置に形成可能であって、非圧縮性流体の注入後に注入口を容易に閉塞することが出来る。また、必要量の非圧縮性流体を流体室に対して確実に封入することが出来る。なお、筒状部の内周面を被覆層で被覆した構造と合わせて採用することにより、注入口の閉塞をリベット等によって容易に実現することも可能である。
また、本発明に係る流体封入式防振装置では、前記中間部材が固定された前記第二の取付部材の前記筒状部における軸方向一方の端部側に、合成樹脂材料で形成された門形のリバウンドストッパ部材を、前記第一の構成部材を跨いで配設し、該リバウンドストッパ部材の両脚部を該筒状部における軸方向一方の端部側に固定した構造も採用され得る。
これによれば、門形のリバウンドストッパ部材を、第二の取付部材の筒状部における開口端部に固定することにより、それら筒状部とリバウンドストッパ部材に相互的な補強効果を与えることが出来る。それ故、第二の取付部材の筒状部およびリバウンドストッパ部材を合成樹脂製として軽量化を図りつつ、それら筒状部およびリバウンドストッパ部材の強度を有利に確保することが出来る。
更に、上記の如きリバウンドストッパ部材を備えた本発明に係る流体封入式防振装置では、前記第二の構成部品の前記筒状部には、前記中間部材が取り付けられるのと反対の軸方向他方の端部側において、前記リバウンドストッパ部材が前記第一の構成部品を跨ぐ方向の両側に一対の取付部が設けられており、これら一対の取付部で該筒状部が防振連結される一方の部材に取り付けられるようになっていることが望ましい。
これによれば、筒状部への入力荷重の方向と、リバウンドストッパ部材への入力荷重の方向とを相互に合わせたことで、筒状部とリバウンドストッパ部材の相互的な補強効果を更に有効に発揮させることが出来る。
本発明は、第二の取付部材における筒状部の合成樹脂化と、金属製部品の削減および小型化とによって、流体封入式防振装置を軽量化できるという効果を奏する。
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
先ず、図1,2には、本発明に係る流体封入式防振装置の一実施形態として、自動車用エンジンマウント10が示されている。エンジンマウント10は、互いに別体形成された第一の構成部品12と第二の構成部品14とを組み合わせて構成されている。なお、以下の説明において、上下方向とは、原則として、図1中の上下方向を言うものとする。
より詳細には、第一の構成部品12は、第一の取付部材16と中間部材18を本体ゴム弾性体20で連結した構造を有している。第一の取付部材16は、小径の円形ブロック形状を有しており、下端部が下方に向かって小径となるテーパ形状とされている。また、第一の取付部材16の径方向中央には、上方に向かって突出する固定用ボルト22が一体形成されている。
中間部材18は、大径の略円環板形状を有しており、軸直角方向に広がる板状の当接部26と、その内周縁部から下方に突出する嵌着部28を一体的に備えている。また、中間部材18の周上の複数箇所には、外周側に突出する板状の固定部30が一体形成されており、各固定部30を厚さ方向に貫通する挿通孔32が形成されている。なお、嵌着部28の上端部分は、上方に向かって拡開するテーパ形状とされている。
そして、第一の取付部材16と中間部材18が、軸方向および径方向に所定距離を隔てて配設されており、それら第一の取付部材16と中間部材18の間に本体ゴム弾性体20が配設されている。本体ゴム弾性体20は、厚肉大径の略円錐台形状を有するゴム弾性体であって、その小径側端部に第一の取付部材16が加硫接着されていると共に、大径側端部の外周縁部に中間部材18が加硫接着されている。このように、本体ゴム弾性体20は、第一の取付部材16と中間部材18を備えた一体加硫成形品として形成されており、その一体加硫成形品が第一の構成部品12とされている。なお、本体ゴム弾性体20は、中間部材18の内周部分に加硫接着されており、中間部材18の外周部分が本体ゴム弾性体20から外周側に突出している。
また、本体ゴム弾性体20の大径側端部には、下方に向かって開口する逆向き略すり鉢状の大径凹所34が形成されている。なお、大径凹所34の底壁部には、環状のすぐりが形成されている。更に、大径凹所34の底壁部において上記すぐりよりも内周側に位置する部位は、下方に向かって僅かに凹となっており、後述する振動入力時に大径凹所34の底壁面に作用する引張応力が低減されるようになっている。
一方、第二の構成部品14は、第二の取付部材36に可撓性膜としてのダイヤフラム38を固着させた構造を有している。第二の取付部材36は、筒状部40と、筒状部40から下方に突出する一対の取付部42,42を、合成樹脂で一体形成した硬質の部材とされている。
筒状部40は、大径の略円筒形状を有しており、その周上の4箇所が中間部材18の固定部30に対応する形状で外周側に突出させられて、該突出部分にそれぞれ締結用ボルト44が立設されている。更に、筒状部40の周上において該突出部分を外れた一部には、外周縁部から上方に突出するバウンドストッパ部46が周方向に所定の長さで一体形成されており、軸方向に延びる複数の支持リブ48によって補強されている。なお、締結用ボルト48は、第二の取付部材36の射出成形時にインサートされる。
取付部42は、筒状部40の周上において軸直角方向一方向で対向する部位から下方に向かって突出するように一体形成されている。また、取付部42の下端部には、軸直角方向で一対の取付部42,42の対向方向外側に突出する板状の取付片50が一体形成されており、各取付片50に取付用ナット52が配設されている。また、各取付部42の幅方向(周方向)両端部に一対の第一の補強リブ54,54が一体形成されていると共に、各取付部42の幅方向中央に第二の補強リブ56が一体形成されている。第一の補強リブ54,54と第二の補強リブ56は、何れも軸方向に延びる板状とされており、一対の取付部42,42の対向方向外側に向かって突出している。そして、各補強リブ54,54,56の下端部が取付片50と一体とされている。なお、取付用ナット52は、締結用ボルト44と同様に、第二の取付部材36の射出成形時にインサートされる。
また、ダイヤフラム38は、薄肉のゴム膜であって、軸方向に充分な緩みを有する略円形ドーム形状を有している。なお、ダイヤフラム38は、後述する被覆ゴム層58およびシールゴム60と共に第二の取付部材36を備えた一体加硫成形品として形成されており、この一体加硫成形品が第二の構成部品14とされている。
さらに、ダイヤフラム38は、被覆層としての被覆ゴム層58と一体形成されている。被覆ゴム層58は、薄肉大径の略円筒形状を有するゴム弾性体であって、下側開口部がダイヤフラム38によって閉塞されている。そして、被覆ゴム層58が第二の取付部材36における筒状部40の内周面に加硫接着されることにより、筒状部40の下側開口部がダイヤフラム38によって閉塞されていると共に、筒状部40の内周面が被覆ゴム層58によって被覆されている。
更にまた、被覆ゴム層58の上端部には、シール部材としてのシールゴム60が一体形成されている。シールゴム60は、略円環形状であって、筒状部40の上端内周縁部上に延び出して加硫接着されている。なお、筒状部40の上端内周縁部には、環状の切欠きが形成されており、該切欠き上にシールゴム60が固着されている。
そして、図3に示されているように、第一の構成部品12が第二の構成部品14に対して上方から重ね合わされて、中間部材18の当接部26が第二の取付部材36の筒状部40の上端面に当接されると共に、筒状部40に設けられた各締結用ボルト44が固定部30に設けられた各挿通孔32に対して挿通される。これにより、第一の構成部品12と第二の構成部品14が相互に位置決めされて組み合わされて、第一の取付部材16と第二の取付部材36が本体ゴム弾性体20によって連結される。なお、中間部材18の嵌着部28が第二の取付部材36の筒状部40に対して嵌め込まれる。
さらに、第二の取付部材36の筒状部40には、合成樹脂製のリバウンドストッパ部材62が取り付けられる。リバウンドストッパ部材62は、図2に示されているように、第一の取付部材16およびブラケット金具98の上方を、一対の取付部42,42の対向方向に跨ぐ門形とされている。また、リバウンドストッパ部材62の長手方向両端部が、幅方向(リバウンドストッパ部材62の跨ぐ方向に対して直交する軸直角方向)両側に突出しており、該突出部分を軸方向には挿通孔64が貫通形成されている。また、門形とされたリバウンドストッパ部材62の長手方向中央部分には、幅方向両端部および幅方向中央部を連続的に延びる板状とされた第三の補強リブ66,66,66が形成されており、リバウンドストッパ部材62の変形が防止されている。なお、リバウンドストッパ部材62の上底壁部には、円形の貫通孔68が形成されている。
そして、図3に示されているように、第二の取付部材36の締結用ボルト44がリバウンドストッパ部材62の挿通孔64に挿通されて、リバウンドストッパ部材62の両端部が中間部材18の当接部26に対して上方から重ね合わされると共に、各締結用ボルト44に対して締結用ナット70が螺着されることにより、中間部材18と第二の取付部材36とリバウンドストッパ部材62とが、軸方向に重ね合わされて締結される。なお、締結用ボルト44と締結用ナット70によって、締結部材が構成されている。
そこにおいて、締結用ボルト44と締結用ナット70の螺着によって、中間部材18が第二の取付部材36に対して軸方向で押し付けられており、シールゴム60がそれら中間部材18と第二の取付部材36の間で圧縮されている。これにより、第一の構成部品12と第二の構成部品14の連結部分が流体密にシールされて、それら第一の構成部品12と第二の構成部品14の間に外部空間から密閉された流体室72が形成されている。この流体室72には、非圧縮性流体が封入されている。封入される非圧縮性流体は、特に限定されるものではないが、例えば、水やアルキレングリコール,ポリアルキレングリコール,シリコーン油,或いはそれらの混合液等が採用される。更に、後述する流体の流動作用に基づく防振効果を有効に得るためには、粘性率が0.1Pa・s以下の低粘性流体を採用することが望ましい。
また、流体室72には、仕切部材74が配設されている。仕切部材74は、厚肉の略円板形状を有しており、仕切部材本体76と蓋金具78を含んで構成される。仕切部材本体76は、厚肉の略円板形状を有しており、外周縁部が周方向の一周弱に亘って連続的に薄肉とされている。また、仕切部材本体76の径方向中央部分には、上面に開口する円形の収容凹所80が形成されていると共に、収容凹所80の底壁面中央から上方に向かって突出する小径円柱形状の柱状突起82が一体形成されている。更に、収容凹所80の底壁部には、軸方向に貫通する複数の透孔84が形成されている。なお、仕切部材本体76において柱状突起82上および収容凹所80の周壁部上の複数箇所には、上方に向かって突出する嵌合突起が一体形成されている。
蓋金具78は、薄肉の略円板形状であって、仕切部材本体76の上面に重ね合わされる。また、蓋金具78には、厚さ方向に貫通する複数の透孔86が形成されている。なお、蓋金具78には、仕切部材本体76の嵌合突起と対応する部位に小径の円形孔が形成されており、該円形孔に嵌合突起が嵌め込まれて固着されることにより、蓋金具78が仕切部材本体76に固定される。
また、仕切部材本体76の収容凹所80の開口部を蓋金具78で覆うことにより形成されたスペースには、可動部材としての可動ゴム板88が収容配置されている。可動ゴム板88は、略円環板形状を有しており、外周側に向かって次第に薄肉となっていると共に、外周縁部には全周に亘って連続して厚さ方向両側に突出する緩衝当接部26が一体形成されている。そして、可動ゴム板88の中央孔に柱状突起82が挿入されるようにして、可動ゴム板88が収容凹所80内に配設されている。可動ゴム板88は、内周縁部が仕切部材本体76および蓋金具78によって軸方向で挟持されていると共に、外周側の部位がそれら仕切部材本体76および蓋金具78に対して軸方向で離隔させられて、軸方向への微小変位を許容されている。
さらに、仕切部材本体76の外周縁部(薄肉部分)と蓋金具78の外周縁部との間には、周方向に一周弱の所定長さで延びて、外周面に開口する周溝90が形成されている。
そして、仕切部材74は、流体室72内で軸直角方向に広がるように配設されて、その外周縁部を第二の取付部材36によって支持される。これにより、流体室72が仕切部材74を挟んで二分されており、仕切部材74を挟んだ軸方向上側には、壁部の一部を本体ゴム弾性体20で構成されて、振動入力時に圧力変動を及ぼされる受圧室92が形成される。一方、仕切部材74を挟んだ軸方向下側には、壁部の一部をダイヤフラム38で構成されて、容積変化を容易に許容される平衡室94が形成される。
また、仕切部材74の外周面がシールゴム60を介して第二の取付部材36で流体密に覆われることにより、周溝90を利用して所定長さの流路が形成されている。この流路の一方の端部が受圧室92に連通されると共に、他方の端部が平衡室94に連通されることにより、受圧室92と平衡室94を相互に連通するオリフィス通路96が形成される。なお、オリフィス通路96は、通路断面積(A)と通路長(L)の比(A/L)を適当に調節することにより、例えば、自動車のエンジンシェイクに相当する10Hz程度の低周波数にチューニングされる。
また、可動ゴム板88の一方の面に透孔84を通じて受圧室92の液圧が及ぼされていると共に、他方の面に透孔86を通じて平衡室94の液圧が及ぼされており、受圧室92と平衡室94の相対的な圧力変動によって、可動ゴム板88が軸方向に微小変位せしめられるようになっている。
かくの如き構造とされたエンジンマウント10は、第一の取付部材16がブラケット金具98を介して図示しないパワーユニットに固定されると共に、第二の取付部材36の取付部42,42が図示しない車両ボデーに固定されて、それらパワーユニットと車両ボデーの間に介装される。
なお、ブラケット金具98は、軸直角方向一方向に延びる長手状とされた金属製のブロック体であって、長手方向一方の端部が固定用ボルト22と固定用ナット24によって第一の取付部材16に固定されると共に、他方の端部がパワーユニットに取り付けられるようになっている。また、ブラケット金具98には、緩衝ゴム102が取り付けられている。緩衝ゴム102は、ブラケット金具98の長手方向一方の端部に被せ付けられており、ブラケット金具98における長手方向中間部分の下面と長手方向一方の端部の上面とを覆っている。
また、ブラケット金具98は、バウンドストッパ部46およびリバウンドストッパ部材62の軸方向間に配置されて、それらバウンドストッパ部46およびリバウンドストッパ部材62に対して軸方向で所定距離だけ離隔している。そして、衝撃的な大振幅振動の入力時には、ブラケット金具98が、バウンドストッパ部46およびリバウンドストッパ部材62に対して、緩衝ゴム102を介して当接する。これにより、第一の取付部材16と第二の取付部材36の軸方向での相対変位を制限するストッパ機構が構成されており、本体ゴム弾性体20の耐久性が確保されるようになっている。
このような構造とされたエンジンマウント10の車両装着下、エンジンシェイクに相当する低周波大振幅振動が入力されると、受圧室92と平衡室94の相対的な圧力変動に基づいて、オリフィス通路96を通じてそれら両室92,94間での流体流動が生ぜしめられる。これにより、流体の共振作用等の流動作用に基づいて、目的とする防振効果(高減衰効果)が発揮される。なお、低周波大振幅振動の入力時には、可動ゴム板88が収容スペースの壁面によって実質的に拘束されて、後述する液圧吸収作用の発揮が阻止される。
また、アイドリング振動等に相当する高周波小振幅振動が入力されると、オリフィス通路96は、反共振的な作用によって実質的に遮断される一方、受圧室92と平衡室94の相対的な圧力変動に基づいて、可動ゴム板88が厚さ方向に微小変位する。そして、可動ゴム板88の微小変位によって受圧室92の液圧が平衡室94に伝達されて吸収されることにより、受圧室92の著しい高動ばね化が回避されて、目的とする防振効果(低動ばね効果)が発揮される。
また、エンジンマウント10は、第一の構成部品12と第二の構成部品14とを組み合わせた構造を有しており、第一の構成部品12の中間部材18と第二の構成部品14の第二の取付部材36の間にシールゴム60が挟み込まれている。それ故、それぞれ硬質とされた中間部材18と第二の取付部材36の間でシールゴム60が挟圧保持されることにより、第一の構成部品12と第二の構成部品14の間が安定して流体密にシールされる。しかも、第一の構成部品12と第二の構成部品14が、締結用ボルト44と締結用ナット70により固定されていることから、シールゴム60を安定して所定量だけ圧縮変形させることが出来て、シール性の確保と、シールゴム60の耐久性向上を実現することが出来る。
さらに、第一の構成部品12の中間部材18が軸方向寸法の小さい略円環形状とされており、軸直角方向の投影において中間部材18と第二の取付部材36との重なりが小さく抑えられている。このように中間部材18の軸方向寸法を充分に小さくすることにより、第一の構成部品12と第二の構成部品14の間のシールを安定して実現しつつ、中間部材18の軽量化を図ることが出来る。
加えて、第二の取付部材36が金属製に比べて軽量な合成樹脂製とされていることにより、エンジンマウント10の更なる軽量化が図られている。しかも、第二の取付部材36における筒状部40の内周面がシールゴム60で被覆されており、第二の取付部材36が封入流体との接触によって劣化するのを回避することが出来る。
さらに、合成樹脂製の第二の取付部材36と、金属製の中間部材18が別体形成されて、ボルト固定されることから、成形後の冷却による変形量の差等に起因して、それら第二の取付部材36と中間部材18の間に隙間が生じるのを防いで、第一の構成部品12と第二の構成部品14の間のシール不良等を回避することが出来る。
また、門形のリバウンドストッパ部材62が、筒状部40の上側開口部を跨ぐように装着されている。これにより、合成樹脂材料で形成された筒状部40およびリバウンドストッパ部材62が相互に補強されて、それらの強度が有利に確保される。しかも、車両ボデーへの取付部分である一対の取付部42,42が、リバウンドストッパ部材62が筒状部40を跨ぐ方向の両側に設けられている。それ故、ブラケット金具98の当接によってリバウンドストッパ部材62に及ぼされる荷重の入力方向と、取付用ナット52の螺着によって筒状部40に及ぼされる締結力の作用方向とが、相互に合わせられて、それら筒状部40とリバウンドストッパ部材62がより有効に相互補強される。
また、筒状部40および取付部42が第一,第二の補強リブ54,56で補強されていると共に、リバウンドストッパ部材62が3つの第三の補強リブ66,66,66で補強されている。これにより、合成樹脂材料で形成された第二の取付部材16とリバウンドストッパ部材62の強度を、何れも効率的に確保することが可能となって、変形の防止と軽量化をより有利に実現出来る。
以上、本発明の一実施形態について説明してきたが、これはあくまでも例示であって、本発明は、かかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものではない。
例えば、前記実施形態では、シール部材と被覆層がシールゴム60によって一体形成されているが、それらシール部材と被覆層が別体とされていても良く、更にシール部材および被覆層がダイヤフラム38と別体であっても良い。
また、前記実施形態では、シールゴム60が第二の取付部材36の筒状部40に対して加硫接着されて、シールゴム60が第二の取付部材36を備えた一体加硫成形品として形成されている。しかし、例えば、シール部材および被覆層が、第二の取付部材と別体形成されて、第二の取付部材の筒状部に取り付けられる構造を採用することも出来る。
また、前記実施形態では、締結部材として、締結用ボルト44および締結用ナット70が示されているが、締結部材はボルトおよびナットに限定されるものではなく、第一の構成部品と第二の構成部品を相互に締結出来れば良い。具体的には、例えば、締結部材がリベットによって構成されても良い。
また、前記実施形態では、第一,第二の構成部品12,14および仕切部材74の組付けを非圧縮性流体中で行うことにより、非圧縮性流体が流体室72に封入される例を示したが、流体室72に対する非圧縮性流体の封入方法としては、特に限定されるものではない。具体的には、例えば、第一,第二の構成部品12,14および仕切部材74の組付け後に外部から非圧縮性流体を注入することも可能である。より詳細には、図4に示されているように、第二の取付部材36の筒状部40と筒状部40の内周面を被覆するシールゴム60とを軸直角方向に貫通する注入口104が形成されて、注入口104を通じて流体室72が外部空間に連通された状態で形成される。そして、真空中で注入口104に図示しない非圧縮性流体の注入用管路が接続されて、注入用管路を通じて非圧縮性流体が流体室72に注入される。その後、注入口104に栓部材106が差し込まれて、注入口104が閉塞されることにより、流体室72が外部空間から密閉されると共に、流体室72の内部に非圧縮性流体が封入される。これによれば、中間部材18と第二の取付部材36の筒状部40との軸直角方向の投影における重なりが制限されていることから、筒状部40において中間部材18を外れた位置に注入口104を形成することが出来て、注入口104の閉塞時におけるシール構造を簡易化することが出来る。特に、筒状部40の内周面に被覆ゴム層58が形成されていることから、被覆ゴム層58を利用して注入口104を容易にシールすることが出来る。
また、前記実施形態では、本発明の流体封入式防振装置を、自動車用のエンジンマウントに適用した例が示されている。しかし、本発明は、自動車用の流体封入式防振装置に限定されるものではなく、列車や自動二輪車等のエンジンマウントにも適用される。加えて、本発明に係る流体封入式防振装置の適用範囲は、エンジンマウントに限定されず、サブフレームマウントやボデーマウント等にも適用可能である。