以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1は、この発明の第1実施形態として、加熱調理器の概略的な全体の構成を示す図である。
図1に示すように、本発明の加熱調理器1は、本体100と、水400を収容するための容器として蒸発カップ200と、蒸発カップ200内に配置されて蒸発カップ200内の水400を加熱して水蒸気を発生させるための発熱体230と、蒸発カップ200に配置されて、蒸発カップ200から本体100に水蒸気を供給するための水蒸気供給手段として水蒸気供給管221と、本体100に配置されて発熱体230を誘導加熱するための誘導加熱コイル171と、制御部(図示しない)を備える。蒸発カップ200は本体100と着脱可能である。
加熱調理器1の本体100は、直方体形状のキャビネット(図示しない)を備えている。キャビネットの内部には、被調理物として食品300を収容し加熱調理するための加熱室120や、誘導加熱コイル171、配管、制御部等が配置されている。
加熱室120は、1つの面(正面側)が開口部となっている直方体形状をしており、その開口部には、食品300の出し入れに使用する開閉ドア(図示しない)が設置されている。開閉ドアの上部にはハンドル(図示しない)が配置されている。使用者は、ハンドルを支持して、開閉ドアを、開閉ドアの下端を中心に回動させて開閉することができる。開閉ドアの中央部には、開閉ドアを閉めたときに加熱室120の内部を視認するために、耐熱ガラスがはめ込まれている。耐熱ガラスの右側には、操作パネル(図示しない)が配置されている。加熱室120の残りの面はステンレス鋼板で形成されている。加熱室120の床面にステンレス鋼板製の受皿121が配置され、受皿121の上には食品300を載置するためのステンレス鋼線製の支持具122が配置されている。使用者は、開閉ドアを開けて、食品300を加熱室120内部の支持具122上に載置する。
加熱室120の天面には、過熱水蒸気を噴き出すための噴出カバー161が取り付けられる。噴出カバー161は、ステンレス鋼製である。噴出カバー161には、複数の噴気孔165,167が形成されている。噴出カバー161の右側部の手前側には、加熱室120内を照明するための照明装置(図示しない)が配置される。
加熱室120の奥側の背壁には、左右方向の略中央部に吸気口128が設けられ、左方下部に排気口132aが設けられる。
加熱室120の外壁には、背面から上面に亘って循環ダクト135が設けられている。循環ダクト135は加熱室120の背壁に形成された吸気口128において開口し、加熱室120の上方に配置された過熱水蒸気生成装置140に接続される。過熱水蒸気生成装置140の下面は噴出カバー161で覆われ、上面は上カバー147で覆われている。
循環ダクト135の上部には電動式のダンパ148を介して分岐する排気ダクト133が設けられている。排気ダクト133は外部に臨む開放端を有し、ダンパ148を開いて送風装置126を駆動することによって加熱室120内の水蒸気を強制的に排気することができる。また、加熱室120の下部には、排気口132aを介して連通する排気ダクト132が導出される。排気ダクト132は、ステンレス鋼等の金属から形成され、外部に臨む開放端を有して、加熱室120内の水蒸気を自然排気する。なお、加熱調理器1にマグネトロンを搭載してマイクロ波による調理を行う場合には、排気ダクト132を介して外気が吸気される。
循環ダクト135は、加熱室120の背面側において、蒸発カップ200で発生した水蒸気を循環ダクト135に導くための給気管136と接続されている。給気管136は、蒸発カップ200の水蒸気供給管221と接続されている。蒸発カップ200のジョイント部222を介して水蒸気供給管221と給気管136とを接続すると、蒸発カップ200は本体100のキャビネット内に収められる。
図2は、この発明の第1実施形態として、蒸発カップの全体を概略的に示す正面図(A)と側面図(B)である。
図2に示すように、蒸発カップ200は、上部に開口部が形成されて水400を収容することができるカップ部210と、カップ部210の開口部を覆うための蓋部220とから形成されている。蓋部220は、カップ部210と着脱可能である。蓋部220には、蒸発カップ200の外部とカップ部210の内部とを連通し、カップ部210の内部で発生した水蒸気を流通させるための水蒸気供給管221が取り付けられている。水蒸気供給管221の端部の吐出口223にはジョイント部222が設けられている。ジョイント部222は、本体100の給気管136(図1)の端部と接続される。
図3は、この発明の第1実施形態として、蒸発カップの側断面を概略的に示す図である。
図3に示すように、蒸発カップ200のカップ部210の内部には、水400を収容することができる。カップ部210内の下部には、板状の発熱体230が配置されている。発熱体230は、例えば、ステンレス鋼等の磁性材料によって形成されている。発熱体230は、カップ部210の内部において底面から上向きに突出している固定用リブ252上にほぼ水平になるように載せられて、発熱体230の上面から下面までを貫通する固定用ねじ251によって固定用リブ252にねじ止めされている。固定用ねじ251を外すことによって、発熱体230は、カップ部210から取り外して洗浄されることができる。
図1と図3に示すように、蒸発カップ200の水蒸気供給管221を本体100の給気管136と接続して、蒸発カップ200を本体100に取り付けると、蒸発カップ200内に配置されている発熱体230が、本体100のキャビネット内に配置されている誘導加熱コイル171と対向する。制御部がIH回路172を制御して誘導加熱コイル171を駆動させると、誘導加熱コイル171の電磁誘導によって発熱体230に誘導電流が流れ、この誘導電流の抵抗熱によって発熱体230が発熱する。このようにして、発熱体230が発熱することによって、カップ部210の内部に収容されている水400が加熱され、蒸発カップ200内において水蒸気が発生する。
蒸発カップ200において発生した水蒸気は、蒸発カップ200の水蒸気供給管221を通って本体100の給気管136に流入し、循環ダクト135を通って、加熱室120の天井部に設置されている過熱水蒸気生成装置140内に導かれる。
過熱水蒸気生成装置140は加熱ヒータ141を内蔵している。加熱ヒータ141はシーズヒータによって形成されている。加熱ヒータ141により加熱された水蒸気は、過熱水蒸気となる。水蒸気を加熱して過熱水蒸気を生成するための熱源は、特にシーズヒータに限られるものではない。過熱水蒸気は、飽和水蒸気の温度を100℃とすると、通常、101℃から300℃以上にまで昇温される。過熱水蒸気は、過熱水蒸気生成装置140の底面に二次元的または三次元的に分散配置された複数の噴気孔165と、過熱水蒸気生成装置140の側面に配置された複数の噴気孔167とから噴出して、支持具122上に配置された食品300に供給される。複数の噴気孔165は、加熱室120の天井の中央部に配置され、過熱水蒸気を加熱室120の中央部に吹き降ろす構造である。このようにして、食品300の上面が過熱水蒸気と接触する。また、過熱水蒸気の一部は、噴気孔167から斜め下方向に向けて噴き出され、加熱室120の内壁で反射して、食品300の下方に導かれる。このようにして、食品300の下面が過熱水蒸気と接触する。
加熱調理器1においては、加熱室120内に過熱水蒸気が供給されるに従って、加熱室120の内部の余剰となる気体が加熱室120の下方に設けた排気口132aから外部に排出され、加熱室120の内部は常圧に保たれる。食品300に適した加熱時間が経過したとき、水蒸気や過熱水蒸気の供給を停止して加熱調理が完了する。
なお、加熱調理器1においては、過熱水蒸気を用いる調理だけでなく、蒸発カップ200から水蒸気を供給しながら過熱水蒸気生成装置140の駆動を停止することによって、100℃の水蒸気で蒸し調理を行うことが可能である。
蒸発カップ200に水を供給したり、蒸発カップ200を洗浄したりする場合には、使用者は、蒸発カップ200を本体100から取り外して、カップ部210から蓋部220を取り外すことができる。使用者は、本体100から取り外した蒸発カップ200のカップ部210に水400を供給した後、蓋部220をカップ部210に取り付けて、水蒸気供給管221をジョイント部222において給気管136と接続して、蒸発カップ200を本体100に取り付ける。
このように、加熱調理器1は、本体100と、本体100との着脱が可能であって、水400を収容するための蒸発カップ200と、蒸発カップ200内に配置されて蒸発カップ200内の水400を加熱して水蒸気を発生させるための発熱体230と、蒸発カップ200から本体100に水蒸気を供給するための水蒸気供給管221と、本体100に配置されて発熱体230を誘導加熱するための誘導加熱コイル171とを備える。
蒸発カップ200内に配置される発熱体230においては、誘導加熱コイル171を駆動することによって誘導電流が発生し、この誘導電流の抵抗熱によって発熱体230が発熱する。従って、発熱体230と誘導加熱コイル171とは電気的に接続されずに、発熱体230を発熱させることができる。水400を加熱するための発熱体230を蒸発カップ200内に配置し、発熱体230を誘導加熱するための誘導加熱コイル171を加熱調理器1の本体100に配置することによって、水400蒸気を発生させるための蒸発カップ200を本体100と電気的に接続せずに、蒸発カップ200内の水400を加熱して水400蒸気を発生させることができる。このようにして、水400蒸気を発生させるための蒸発カップ200を加熱調理器1の本体100と着脱可能にすることができる。
水400は、加熱調理器1の本体100との着脱が可能な蒸発カップ200内において加熱されて水蒸気となり、この水蒸気は、蒸発カップ200に配置されている水蒸気供給管221を通って本体100に供給される。したがって、水400が加熱されてスケールが付着しやすい蒸発カップ200を本体100から取り外して簡単に洗浄することができるので、蒸発カップ200にスケールが付着しにくくなり、スケールが付着しても、除去が簡単である。
また、従来の加熱調理器のように、水タンク、水ポットやこれらを接続する配管、ポンプ、水漏れを防止するためのシール等を別個に備える必要がなく、加熱調理器1を構成する部品を少なくすることができる。構成部品が少ないので、部品と部品との接続部分における水漏れや水蒸気の漏れを防ぐことができる。
このようにすることにより、水蒸気により食品300の加熱調理を行う加熱調理器において、構成部品が少なく、スケール対策が簡単な加熱調理器1を提供することができる。
この発明に従った加熱調理器1においては、本体100は、蒸発カップ200内の水蒸気が蒸発カップ200外で100℃以上に加熱されて発生する過熱水蒸気を供給するための加熱室120を含む。
このようにすることにより、構成部品が少なくスケール対策が簡単な加熱調理器1において、過熱水蒸気を用いて調理を行うことができる。
また、加熱調理器1においては、蒸発カップ200を本体100に取り付けた場合に、発熱体230が誘導加熱コイル171に対向するように、発熱体230と誘導加熱コイル171が配置されている。
このようにすることにより、蒸発カップ200内の水400を効率よく加熱することができる。
また、加熱調理器1においては、発熱体230は、蒸発カップ200との着脱が可能であるように蒸発カップ200内に配置されている。
このようにすることにより、スケールが付着しやすい発熱体230を簡単に洗浄することができるので、より効果的に、発熱体230にスケールが付着することを防いだり、発熱体230に付着したスケールを除去したりすることができる。
(第2実施形態)
図4は、この発明の第2実施形態として、蒸発カップの側断面を概略的に示す図である。
図4に示すように、蒸発カップ201が第1実施形態の蒸発カップ200と異なる点としては、カップ部210の内部が仕切部材として仕切板240によって、第一の領域として加熱部211と、第二の領域として貯水部212とに区分されている。発熱体230は、加熱部211内の下部に配置されている。発熱体230は、カップ部210の内部において底面から上向きに突出している固定用リブ252上にほぼ水平になるように載せられて、発熱体230の上面から下面までを貫通する固定用ねじ251によって固定用リブ252にねじ止めされている。固定用ねじ251を外すことによって、発熱体230は、カップ部210から取り外して洗浄されることができる。蒸発カップ201を加熱調理器1の本体に取り付けると、本体100に配置されている誘導加熱コイル171が発熱体230と対向する。蓋部220をカップ部210に取り付けると、水蒸気供給管221が加熱部211の上方に配置される。蒸発カップ201のその他の構成と、蒸発カップ201を備える加熱調理器の構成は、第1実施形態と同様である。
仕切板240は板状で、カップ部210の内部においてほぼ鉛直に立てられて配置されている。仕切板240の下部には、貯水部212と加熱部211とを連通する開口241が形成されている。カップ部210内の水は、開口241を通過することができる。
蒸発カップ201に水400を収容し、誘導加熱コイル171を駆動させると、電磁誘導によって発熱体230が発熱し、発熱体230が配置されている加熱部211内の水が加熱されて水蒸気が発生する。発生した水蒸気は、水蒸気供給管221を通って、吐出口223から本体の給気管136(図1)に導かれる。
加熱部211において水400が加熱されて水蒸気が発生すると、発生した水蒸気に対応する量だけ加熱部211内の水400の量が減少する。加熱部211内の水400の量が減少すると、開口241を通って、貯水部212から加熱部211に水が流入する。
第1実施形態においては、蒸発カップ200は仕切板240を有しないので、カップ部210に収容されている水400全部が一度に、発熱体230によって加熱される。一方、第2実施形態においては、発熱体230は、カップ部210に収容されている水全部ではなく、加熱部211内の水400を加熱するので、効率よく水を加熱するため、短時間で水蒸気を発生させることができる。
また、加熱部211の容積は、カップ部210の全体の容積よりも小さいが、水蒸気が発生してカップ部210に収容されている水の量が減少すると、貯水部212の水が開口241を通って加熱部211に流入するので、第2実施形態の蒸発カップ201を用いて一度の給水で生成することができる水蒸気の量は、第1実施形態の蒸発カップ200を用いてカップ部210全体を加熱する場合に生成する水蒸気の量と同等である。
このように、加熱調理器1は、本体100と、本体100との着脱が可能であって、水400を収容するための蒸発カップ201と、蒸発カップ201内に配置されて蒸発カップ201内の水400を加熱して水蒸気を発生させるための発熱体230と、蒸発カップ201の内部を、発熱体230が配置される加熱部211と、発熱体230が配置されない貯水部212とに区分するための仕切板240と、本体100に配置されて発熱体230を誘導加熱するための誘導加熱コイル171とを備える。
水400は、加熱調理器1の本体100との着脱が可能な蒸発カップ201内において加熱されて水蒸気となる。したがって、蒸発カップ201を本体100から取り外して簡単に洗浄することができるので、蒸発カップ201にスケールが付着しにくくなり、スケールが付着しても、除去が簡単である。また、従来の加熱調理器のように、水タンク、水ポットやこれらを接続する配管、ポンプ、水漏れを防止するためのシール等を別個に備える必要がなく、加熱調理器1を構成する部品を少なくすることができる。構成部品が少ないので、部品と部品との接続部分における水漏れや水蒸気の漏れを防ぐことができる。
このようにすることにより、水蒸気により食品300の加熱調理を行う加熱調理器において、構成部品が少なく、スケール対策が簡単な加熱調理器1を提供することができる。
また、蒸発カップ201の内部を仕切板240によって区分することによって、発熱体230が配置される加熱部211の水が加熱されれば水蒸気が発生するので、蒸発カップ201の水全部を加熱して水蒸気を発生させる場合よりもより早く効率よく水蒸気を発生させることができる。
第2実施形態の蒸発カップ201を備える加熱調理器1のその他の構成と効果は、第1実施形態の加熱調理器1と同様である。
(第3実施形態)
第3実施形態の加熱調理器は、第1実施形態の加熱調理器とは蒸発カップの内部において異なる。
図5は、この発明の第3実施形態として、蒸発カップの側断面を概略的に示す図(A)と、図5(A)に示すB−B線の方向から見た断面を示す図(B)である。
図5に示すように、蒸発カップ202が第1実施形態の加熱調理器が備える蒸発カップ200と異なる点としては、カップ部210の内部が仕切部材として2枚の仕切板240aと仕切板240bによって、第一の領域として加熱部211と、第二の領域として貯水部212とに区分されている。仕切板240aと仕切板240bは、カップ部210の内部においてほぼ鉛直に立てられて、ほぼ平行に並べられて配置されている。
カップ部210と仕切板240aと仕切板240bは、樹脂材料によって形成されている。樹脂材料としては、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)などが用いられる。これらの樹脂材料は、耐熱性に優れている。仕切板240aと仕切板240bは板状であり、厚みは、この実施形態においては、1mmとする。また、仕切板240aと仕切板240bは、1〜5mmの間隔を開けて配置されている。
仕切板240a,仕切板240bの下部には、それぞれ、貯水部212と加熱部211とを連通する開口部241a,開口部241bが形成されている。図5の(B)に示すように、開口部241aと開口部241bは、仕切板240aと仕切板240bの下部において、カップ部210の全幅、すなわち、仕切板240aと仕切板240bの全幅にわたって形成されている。カップ部210内の水は、開口部241a,開口部241bを通過することができる。水は、開口部241a,開口部241bを通過しなければ、貯水部212と加熱部211との間を流通することができない。
発熱体230は、加熱部211内の下部に配置されている。発熱体230は、カップ部210の内部において底面から上向きに突出している固定用リブ252上にほぼ水平になるように載せられて、発熱体230の上面から下面までを貫通する固定用ねじ251によって固定用リブ252にねじ止めされている。固定用ねじ251を外すことによって、発熱体230は、カップ部210から取り外して洗浄されることができる。固定用ねじ251は、樹脂によって形成されてもよい。固定用ねじ251が樹脂によって形成されている場合には、固定用ねじ251は誘導加熱されず自己発熱しない。そこで、固定用ねじ251が樹脂によって形成されることによって、蒸発カップ202が空焚きされても、蒸発カップ210や固定用リブ252への熱の影響を抑えることができる。蒸発カップ202を加熱調理器1の本体100に取り付けると、本体100に配置されている誘導加熱コイル171が発熱体230と対向する。蓋部220をカップ部210に取り付けると、水蒸気供給管221が加熱部211の上方に配置される。蒸発カップ202のその他の構成と、蒸発カップ202を備える加熱調理器の構成は、第1実施形態と同様である。
蒸発カップ202に水400を収容し、誘導加熱コイル171を駆動させると、電磁誘導によって発熱体230が発熱し、発熱体230が配置されている加熱部211内の水が加熱されて水蒸気が発生する。発生した水蒸気は、水蒸気供給管221を通って、吐出口223から本体100の給気管136(図1)に導かれる。
加熱部211において水400が加熱されて水蒸気が発生すると、発生した水蒸気に対応する量だけ加熱部211内の水400の量が減少する。加熱部211内の水400の量が減少すると、開口部241a,開口部241bを通って、貯水部212から加熱部211に水が流入する。
第1実施形態においては、蒸発カップ200は仕切板240a,仕切板240bを有しないので、カップ部210に収容されている水400全部が一度に、発熱体230によって加熱される。一方、第3実施形態においては、発熱体230は、カップ部210に収容されている水400全部ではなく、加熱部211内の水400を加熱するので、効率よく水400を加熱するため、短時間で水蒸気を発生させることができる。
また、加熱部211の容積は、カップ部210の全体の容積よりも小さいが、水蒸気が発生してカップ部210に収容されている水の量が減少すると、貯水部212の水が開口部241a,開口部241bを通って加熱部211に流入するので、第3実施形態の蒸発カップ202を用いて一度の給水で生成することができる水蒸気の量は、第1実施形態の蒸発カップ200を用いてカップ部210全体を加熱する場合に生成する水蒸気の量と同等である。
また、第2実施形態においては、カップ部210には1枚の仕切板240が配置されて加熱部211と貯水部212とを区分しているが、2枚の仕切板240aと仕切板240bとを備えることによって、加熱部211の熱が貯水部212に奪われにくくなる。
第3実施形態においては、2枚の仕切板240aと仕切板240bは、水平方向に平行に並べられて配置されているが、鉛直方向に並べて配置されてもよい。
以上のように、第3実施形態の加熱調理器においては、仕切部材は、樹脂材料によって形成される複数の仕切板240a,仕切板240bを含み、複数の仕切板240a,仕切板240bには、水400が貯水部212から加熱部211に流入するための開口部241a,開口部241bが形成され、複数の仕切板240a,仕切板240bは、互いにほぼ平行に配置されている。
樹脂材料は、水と比較して熱伝導率が低い。樹脂材料によって形成される複数の仕切板240a,仕切板240bを用いて、発熱体230が配置されて水が加熱される加熱部211と、発熱体230が配置されない貯水部212とに区分することによって、加熱部211内の加熱された水の熱が貯水部212内の比較的温度が低い水に奪われにくくなる。
また、複数の仕切板240a,仕切板240bをほぼ平行に配置することによって、仕切板240a,仕切板240bによる断熱性を高めることができる。
さらに、水が開口部241a,開口部241bを通って貯水部212から加熱部211に流入することにより、比較的温度が低い水が加熱部211に流入しにくくなるので、効率よく水を加熱して水蒸気を発生させることができる。
第3実施形態の蒸発カップ202を備える加熱調理器のその他の構成と効果は、第1実施形態の加熱調理器と同様である。
(第4実施形態)
第4実施形態の加熱調理器は、第3実施形態の加熱調理器とは蒸発カップ内部の仕切板の形状において異なる。
図6は、この発明の第4実施形態として、蒸発カップの側断面を概略的に示す図(A)と、図6(A)に示すB−B線の方向から見た断面を示す図(B)である。
図7は、第4実施形態の蒸発カップの上面図である。
図6に示すように、仕切部材の2枚の仕切板240cと仕切板240dは、カップ部210の内部を加熱部211と貯水部212とに区分する。仕切部材の2枚の仕切板240cと仕切板240dの開口部241cと開口部241dは、仕切板240cと仕切板240dの下部に形成されている。図6の(B)と図7に示すように、仕切板240cと仕切板240dは、カップ部210の内部においてほぼ鉛直に立てられて、ほぼ平行に並べられて配置されている。図6の(B)に示すように、開口部241cは、仕切板240cの右側下部に形成され、開口部241dは、仕切板240dの左側下部に形成されている。開口部241cと開口部241dは、仕切板240cと仕切板240dの角部を切り取って形成され、仕切板240cとカップ部210の内壁、または、仕切板240dとカップ部210の内壁によって、三角形状に形成されている。開口部241cと開口部241dは、一辺が5mm程度の三角形状である。開口部241cは、カップ部210の一方の内壁面に接するように形成され、開口部241dは、開口部241cが接する一方の内壁面に対向する他方の内壁面に接するように形成されている。開口部241cと開口部241dとの距離は、ほぼカップ部210の幅に等しい。
カップ部210と仕切板240cと仕切板240dは、樹脂材料によって形成されている。樹脂材料としては、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)などが用いられる。これらの樹脂材料は、耐熱性に優れている。仕切板240cと仕切板240dは板状であり、厚みは、この実施形態においては、1mmとする。
第4実施形態では、仕切板240cと仕切板240dとの距離Dは、1〜5mmとする。水の熱伝導率は0.57W/mKであり、樹脂の熱伝導率は約0.2W/mKである。したがって、仕切板240cと仕切板240dとの距離は短い方が、貯水部212と加熱部211との間で熱が流通しにくくなる。しかしながら、仕切板240cと仕切板240dとの間隔が1mmよりも小さい場合には、開口部241dと開口部241cの間において水が流れにくくなり、加熱部211において蒸発する水の量よりも、貯水部212から加熱部211に流入する水の量の方が少なくなる。加熱部211において蒸発する水の量よりも、貯水部212から加熱部211に流入する水の量の方が少なくなると、蒸発カップ203が空焚きされてしまう。そこで、仕切板240cと仕切板240dとの距離Dは、断熱性と水の流通性とを考慮して、1〜5mmとしている。
加熱部211において水400が加熱されて水蒸気が発生すると、発生した水蒸気に対応する量だけ加熱部211内の水400の量が減少する。加熱部211内の水400の量が減少すると、図7に二点鎖線の矢印で示すように、貯水部212の水は、仕切板240dの開口部241dを通って、仕切板240dと仕切板240cとの間に流れ込み、カップ部210の幅だけ水平方向に移動して、開口部241cに到達し、開口部241cを通って、加熱部211に流入する。
以上のように、第4実施形態の加熱調理器においては、隣り合う二枚の仕切板240cと仕切板240dに形成されている2つの開口部241cと開口部241dは、開口部間の距離が最大になる位置に形成されている。
このようにすることにより、貯水部212の比較的温度の低い水が加熱部211に流入しにくくなる。例えば、加熱部211において加熱されて蒸発した水の量にほぼ等しい量の水だけを貯水部212から加熱部211に流入させることができるので、効率よく水を加熱して水蒸気を発生させることができる。
なお、仕切板240cと仕切板240dに形成される2つの開口部は、仕切板に沿った方向に互いに所定の距離隔てた位置でそれぞれ仕切板240c、仕切板240dに形成されていてもよい。
第4実施形態の加熱調理器のその他の構成と効果は、第3実施形態の加熱調理器と同様である。
(第5実施形態)
第5実施形態の加熱調理器は、第3実施形態の加熱調理器とは発熱体の形状において異なる。
図8は、この発明の第5実施形態として、蒸発カップのカップ部の側断面を概略的に示す図である。図9は、この発明の第5実施形態として、蒸発カップのカップ部の上面図である。図10は、発熱体の全体を示す斜視図である。
図8〜図10に示すように、発熱体230aは、カップ部210の底面に対向する、長方形状に形成された対向面231と、対向面231の周囲において上方に向かって延びる立ち上がり部234とふち部235を、それぞれ2枚ずつ有する。2枚の立ち上がり部234は、互いに対向している。また、2枚のふち部235は、互いに対向している。ふち部235は、発熱体230の変形を防ぐために対向面231から上方向に延びている。ふち部235の高さは、立ち上がり部234の高さよりも、低い。立ち上がり部234は、上部において、カップ部210の壁の上端面と仕切板240の上端面に平行になるように折り曲げられて、発熱体固定部233aを形成している。
発熱体固定部233aには、発熱体固定部233aをカップ部210の上端面と仕切板240の上端面に係止するための固定用ビス253を通す固定用穴236が形成されている。カップ部210内に収容される水の水面は、カップ部210の上端面と仕切板240の上端面よりも下方であるとする。発熱体230aは、発熱体固定部233aの固定用穴236に固定用ビス253を通してカップ部210に固定される。固定用ビス253を外すことによって、発熱体230aをカップ部210から取り外すことができる。
固定用ビス253によって固定される発熱体230aは、簡易に生産、加工することができる。
発熱体230をカップ部210と仕切板240に係止し、カップ部210を加熱調理器1(図1)に取り付けると、発熱体230aの対向面231は、加熱調理器1(図1)の本体100(図1)に配置されている誘導加熱コイル171と対向する。発熱体230aの対向面231には、複数の孔232が形成されている。
図11は、発熱体の対向面の一つの形状を示す平面図である。図12は、発熱体の対向面の別の形状を示す平面図である。
図11と図12に示すように、発熱体230aの対向面231には、対向面231を貫通する孔232が形成されている。孔232は、発熱体230aが配置された蒸発カップが加熱調理器に取り付けられたときに対向面231に対向する誘導加熱コイル171の形状に沿って、複数、形成されている。誘導加熱コイル171は、上方向から見るとドーナツ形状であるので、孔232は、円周状に並べられ形成されている。それぞれの孔232の径は、3mm以上であることが好ましい。孔232の径が5mmであれば、図11に示すように、4箇所に孔232を形成するだけでよい。孔232の径は、隣り合う孔232どうしがつながらない程度に大きくされてもよい。
以上のように、第5実施形態の加熱調理器においては、発熱体230aは、カップ部210を本体に取り付けた場合に誘導加熱コイル171に対向する対向面231を有し、発熱体230aには、発熱体230aの対向面231を貫通する孔232が形成されている。
カップ部210内の水の加熱効率を上げるためには、発熱体230aと誘導加熱コイル171との距離を近付ける必要がある。発熱体230aはカップ部210内に配置され、誘導加熱コイル171は本体に配置されているので、発熱体230aと誘導加熱コイル171との距離を近付けると、発熱体230aがカップ部210の底面に近付く。発熱体230aとカップ部210とが近付くと、発熱体230aとカップ部210の底面との間の水が加熱されて発生した気泡が、発熱体230aとカップ部210の底面との間に留まったままで抜けにくくなる。液体の水は100℃までしか加熱されないので、発熱体230aとカップ部210との間が液体の水で満たされていれば、発熱体230aが100℃以上に加熱されていても、発熱体230aの熱がそのままカップ部210に伝わることはない。一方、発熱体230aとカップ部210の底面の間に気泡が留まって、発熱体230aとカップ部210との間が水蒸気で満たされている場合には、水蒸気は容易に100℃以上に加熱されるので、発熱体230aの熱がカップ部210に伝わり、カップ部210が熱劣化することがある。
そこで、発熱体230aにおいて最も加熱されやすい、誘導加熱コイル171と対向する対向面231に発熱体230aを貫通する孔232を形成することによって、発熱体230aとカップ部210の底面との間に発生した気泡が孔232を通って水中に拡散し、発熱体230aとカップ部210とが気泡を介して接することを防いで、カップ部210の熱劣化を防ぐことができる。
また、以上のように、加熱調理器においては、発熱体230aは、発熱体230aを固定するための発熱体固定部233aを含み、発熱体230aは、カップ部210の上部に発熱体固定部233aが係止されることによって固定される。
発熱体230aが誘導加熱されるときには、水の昇温によって生じる気泡や、誘導加熱コイル171との共振によって、発熱体230aが静止せず、動くことがある。発熱体230aが動くと、安定した入力が得られない。
そこで、発熱体230aの発熱体固定部233aをカップ部210に係止して発熱体230aを固定することによって、誘導加熱中に発熱体230aを静止させることができ、また、カップ部210の上部において固定することによって、発熱体230aの着脱が容易になる。
また、以上のように、加熱調理器においては、発熱体固定部233aは、カップ部210の内部に収容される水の水面よりも上方に配置される。
このようにすることにより、加熱された水がカップ部210内に収容されていても、安全に発熱体230aの着脱を行なうことができる。
第5実施形態の加熱調理器のその他の構成と効果は、第2実施形態の加熱調理器と同様である。
(第6実施形態)
第6実施形態の加熱調理器は、第5実施形態の加熱調理器とは発熱体の形状と発熱体固定部の係止の方法において異なる。
図13は、この発明の第6実施形態として、蒸発カップのカップ部の側断面を概略的に示す図である。図14は、発熱体とカップ部の壁の一部を示す斜視図である。
図13と図14に示すように、発熱体230bの全体の形状は、第5実施形態の発熱体230aと同様である。発熱体230bが第5実施形態の発熱体230aと異なる点としては、発熱体固定部233bには固定用穴が形成されていない。また、カップ部210の壁の上端面と仕切板240の上端面には、発熱体固定部233bを係止するためのツメ254が形成されている。発熱体固定部233bは、ツメ254の下面とカップ部210の壁の上端面との間、ツメ254と仕切板240の上端面との間に挟まれて、カップ部210に固定される。
発熱体230bの発熱体固定部233bをカップ部210または仕切板240のツメ254で挟んで固定するので、第5実施形態のようにビスで固定する場合よりも、発熱体230bを容易に着脱することができる。
以上のように、第6実施形態の加熱調理器においては、発熱体230bは、発熱体230bを固定するための発熱体固定部233bを含み、発熱体230bは、カップ部210の上部に発熱体固定部233bが係止されることによって固定される。
発熱体230bが誘導加熱されるときには、水の昇温によって生じる気泡や、誘導加熱コイル171との共振によって、発熱体230bが静止せず、動くことがある。発熱体230bが動くと、安定した入力が得られない。
そこで、発熱体230bの発熱体固定部233bをカップ部210に係止して発熱体230bを固定することによって、誘導加熱中に発熱体230bを静止させることができ、また、カップ部210の上部において固定することによって、発熱体230bの着脱が容易になる。
また、以上のように、加熱調理器においては、発熱体固定部233bは、カップ部210の内部に収容される水の水面よりも上方に配置される。
このようにすることにより、加熱された水がカップ部210内に収容されていても、安全に発熱体230bの着脱を行なうことができる。
第6実施形態の加熱調理器のその他の構成と効果は、第5実施形態の加熱調理器と同様である。
(第7実施形態)
第7実施形態の加熱調理器は、第5実施形態の加熱調理器とは発熱体の形状と発熱体固定部の係止の方法において異なる。
図15は、この発明の第7実施形態として、蒸発カップのカップ部の側断面を概略的に示す図である。図16は、発熱体の全体を示す斜視図である。図17は、発熱体とカップ部の壁の一部を示す断面図(A)と、(A)に示すカップ部を右方向から見たときの図(B)である。
図15〜図17に示すように、発熱体230cは、第5実施形態の発熱体230aとは、発熱体固定部233cの形状が異なる。発熱体固定部233cは、発熱体230cの立ち上がり部234は、上部において、カップ部210の壁の上端面と仕切板240の上端面に平行になるように折り曲げられて、さらに、下向きに折り曲げられて、コの字型の発熱体固定部233cを形成している。また、カップ部210には、発熱体230cの発熱体固定部233cを係止するための固定用フタ255が接続される。固定用フタ255は、非金属材料によって形成されている。
カップ部210の壁の上端面と、仕切板240の上端面には、凹部255cと切込部255dが形成されている。発熱体230cの発熱体固定部233cの折り曲げられた先端部分は、切込部255dに差し込まれる。凹部255cには、固定用フタ255の脚部255bが差し込まれる。固定用フタ255は、発熱体固定部233cの上面を覆う。このように、発熱体固定部233cの上面が非金属材料によって覆われるので、安全性が高くなる。また、固定用フタ255を上からはめ込むので、発熱体230cの着脱も容易である。
以上のように、加熱調理器においては、発熱体230cは、発熱体230cを固定するための発熱体固定部233cを含み、発熱体230cは、カップ部210の上部に発熱体固定部233cが係止されることによって固定される。
発熱体230cが誘導加熱されるときには、水の昇温によって生じる気泡や、誘導加熱コイル171との共振によって、発熱体230cが静止せず、動くことがある。発熱体230cが動くと、安定した入力が得られない。
そこで、発熱体230cの発熱体固定部233cをカップ部210に係止して発熱体230cを固定することによって、誘導加熱中に発熱体230cを静止させることができ、また、カップ部210の上部において固定することによって、発熱体230cの着脱が容易になる。
また、以上のように、加熱調理器においては、発熱体固定部233cは、カップ部210の内部に収容される水の水面よりも上方に配置される。
このようにすることにより、加熱された水がカップ部210内に収容されていても、安全に発熱体230cの着脱を行なうことができる。
第7実施形態の加熱調理器のその他の構成と効果は、第5実施形態の加熱調理器と同様である。
(第8実施形態)
第8実施形態の加熱調理器は、第1実施形態の加熱調理器とは蒸発カップの形状において異なる。
図18は、この発明の第8実施形態として、蒸発カップの全体を概略的に示す正面図(A)と、側面図(B)である。
図18に示すように、第8実施形態の蒸発カップ204が第1実施形態の蒸発カップ200と異なる点としては、蒸発カップ204の外周面には、水蒸気供給管221の下方、すなわち、蒸発カップ204の内部に配置されている発熱体に近く、蒸発カップ204を加熱調理器1(図1)に取り付けたときに、誘導加熱コイル171の上方に配置される部分に、凹凸面213が形成されている。凹凸面213は、多数のリブが蒸発カップ204のカップ部210の外周面上に配置されて形成されている。
蒸発カップ204は、合成樹脂やセラミック、あるいはこれらの被金属材料を組み合わせた材料によって形成されている。樹脂材料としては、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)などが用いられる。このようにすることにより、使用者が蒸発カップ204を加熱調理器の本体100(図1)から取り外すときに、蒸発カップ204が熱くなっていても、蒸発カップ204の熱が使用者に伝わりにくい。また、外周面に凹凸面213が形成されていることによって、さらに蒸発カップ204の熱が使用者に伝わりにくくなっている。
以上のように、第8実施形態の加熱調理器においては、蒸発カップ204は、外周面を有し、蒸発カップ204の外周面は、凹凸面213を含む。
このようにすることにより、使用者が蒸発カップ204に触れても蒸発カップ204の熱が使用者に伝わりにくくなる。
第8実施形態の加熱調理器のその他の構成と効果は、第1実施形態の加熱調理器と同様である。
(第9実施形態)
図19は、この発明の第9実施形態として、加熱調理器が備える蒸発カップの全体を示す側面図(A)と、蒸発カップの外容器の全体を示す側面図(B)である。
図19の(A)に示すように、蒸発カップ205の内部には、水蒸気供給管221の下方に発熱体230が配置されている。蒸発カップ205には、発熱体230の周辺において蒸発カップ205を外側から覆う被覆部材としてスライドカバー261が配置されている。スライドカバー261は、上面と、上面に隣接して互いに対向する2つの側面とが開口したコの字形状に形成されている。スライドカバー261の上方向からカップ部210が差し込まれる。蒸発カップ205の上部には、使用者が保持するための把手214が形成されている。
蒸発カップ205のカップ部210の正面、すなわち、水蒸気供給管221が配置されている側には、前方カバー263が取り付けられている。スライドカバー261は、前方カバー263を越えてカップ部210の前方に向かってスライドされない。
蒸発カップ205のカップ部210の底面においてほぼ中央には、カップ部210の底面から外側に向かって突出した半球状の半球状突起262が形成されている。スライドカバー261のふちが半球状突起262に引っかかるので、スライドカバー261は、力を掛けなければ、半球状突起262を越えてスライドされない。また、スライドカバー261には、半球状突起262よりも後方に、底面から外側に向かって突出した、直方体状の後方突起264が形成されている。
図19の(B)に示すように、外容器180には、後方側、すなわち、図の左側には蒸発カップ205を挿入するための開口が形成され、正面側、すなわち、図の右側には水蒸気を吐出するための蒸気口183が形成されている。外容器180の内部に蒸発カップ205を収容すると、蒸発カップ205の水蒸気供給管221が、外容器180の内部から蒸気口183に差し込まれる。外容器180の正面、すなわち、蒸気口183が形成されている側の側面には、サーミスタ182が配置されている。外容器180の内部に蒸発カップ205を収容すると、サーミスタ182が蒸発カップ205のカップ部210の壁面に接触し、カップ部210の温度を検知することができる。外容器180の内部底面には、底面から内部に向かって突出した半球状の突起181が形成されている。外容器180は、加熱調理器1の本体100(図1)に配置される容器である。誘導加熱コイル171とIH回路172は、外容器180の下方に配置される。
スライドカバー261は、樹脂材料によって形成されている。樹脂材料としては、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)などが用いられる。
図20は、蒸発カップを外容器の内部に収容するときの第一段階の状態を示す側面図(A)と底面図(B)である。
図20に示すように、蒸発カップ205は、使用者が把手214を保持して、外容器180の後方側から外容器180の内部に挿入される。スライドカバー261の前方のふちが外容器180の底面の突起181にひっかかり、スライドカバー261は突起181よりも前方には移動しない。一方、蒸発カップ205は、カップ部210の底面の半球状突起262がスライドカバー261のふちを乗り越えて、外容器180内をさらに前方に向かって挿入される。
図21は、蒸発カップを外容器の内部に収容するときの第二段階の状態を示す側面図(A)と底面図(B)図である。
図21に示すように、蒸発カップ205が外容器180の内部を前方向に移動し、後方突起264がスライドカバー261に接触し、さらに蒸発カップ205が前方に押し込まれると、スライドカバー261は後方突起264に引っかかり、後方突起264に押されて、突起181を乗り越えて前方に移動する。
図22は、蒸発カップが外容器の内部に収容されている状態を示す側面図(A)と底面図(B)である。
図22に示すように、図21に示す状態から、さらに蒸発カップ205を外容器180内に押し込むと、スライドカバー261は後方突起264に押されて外容器180内を前方に向かって進む。蒸発カップ205の前方カバー263が外容器180の正面側の内壁に接触するまで蒸発カップ205を挿入すると、蒸発カップ205が外容器180の内部に収容された状態となる。このとき、発熱体230は誘導加熱コイル171に対向するように配置される。また、スライドカバー261の後方側のふちが突起181よりも前方になる。
蒸発カップ205がこのように外容器180内に収容された状態で、発熱体230が誘導加熱されて、蒸発カップ205内において水蒸気が発生する。発生した水蒸気は、蒸発カップ205の水蒸気供給管221と、外容器180の蒸気口183を通って、加熱調理器1(図1)の給気管136(図1)に供給される。
図23は、蒸発カップを外容器から引き出すときの第一段階の状態を示す側面図(A)と底面図(B)である。
図23に示すように、蒸発カップ205を外容器180から後方側に引き出すと、スライドカバー261は、後方側のふちが突起181にひっかかっているので、移動しない。蒸発カップ205のスライドカバー261を除く部分のみが後方に移動する。
図24は、蒸発カップを外容器から引き出すときの第二段階の状態を示す側面図(A)と底面図(B)である。
図24に示すように、蒸発カップ205をさらに後方に引き出すと、蒸発カップ205の前方カバー263がスライドカバー261の正面側に接触する。
図25は、蒸発カップを外容器から引き出すときの第三段階の状態を示す側面図(A)と底面図(B)である。
図25に示すように、蒸発カップ205をさらに後方に引き出すと、蒸発カップ205の前方カバー263がスライドカバー261を後方に向かって押し、スライドカバー261は突起181を乗り越えて、後方に移動する。
そのまま蒸発カップ205を後方に引き出すと、前方カバー263に押されるスライドカバー261とともに、蒸発カップ205が完全に外容器180から抜かれて取り外される。
このようにして外容器180から取り外された蒸発カップ205においては、図19に示すように、発熱体230の周辺部分がスライドカバー261によって覆われている。スライドカバー261は樹脂材料によって形成されているので熱が伝わりにくい。また、図22に示すように、蒸発カップ205が加熱調理器に取り付けられて加熱されているときには、スライドカバー261は発熱体230から離されているので、スライドカバー261は、発熱体230の誘導加熱中に加熱されにくい。このようにして、加熱調理器から取り外した蒸発カップ205のスライドカバー261に使用者が触れても、使用者が火傷することを防ぐことができる。
以上のように、第9実施形態の加熱調理器においては、蒸発カップ205が本体100から取り外された場合に蒸発カップ205の外周面の少なくとも一部を覆うためのスライドカバー261を備え、スライドカバー261は樹脂材料によって形成されている。
このようにすることにより、使用者が直接、蒸発カップ205に触れにくくなり、また、蒸発カップ205の熱が使用者に伝わりにくくなる。
第9実施形態の加熱調理器のその他の構成と効果は、第1実施形態の加熱調理器と同様である。
(第10実施形態)
図26は、この第10実施形態として、発熱体の全体を示す斜視図である。
図26に示すように、発熱体230dは、上面が開口している、浅い直方体形状の箱状に形成されている。長方形状の対向面231の周囲には、4枚のふち部235が形成されている。ふち部235は、発熱体230dの変形を防ぐために形成されている。
発熱体230dの対向面231上には、ドーナツ状の対向部237が形成されている。対向部237は、発熱体230dを蒸発カップに取り付けて、蒸発カップを加熱調理器に取り付けたときに、誘導加熱コイル171(図1)と対向する部分であり、発熱体230dの対向面231から突出するように、厚みをもって形成されている。誘導加熱コイル171は同心円状に巻かれたコイルであるので、複数の対向部237は、誘導加熱コイル171に対向するように、同心円状に形成されている。
発熱体230dは、ステンレス鋼によって形成され、電解研磨処理を施されている。このようにすることにより、発熱体230dの表面に平滑な研磨面が形成されて、発熱体230dを洗浄しやすく、また、発熱体230dの耐食性を向上させることができる。
発熱体230dは、Fe−Ni系感温磁性材料によって形成されている。
図27は、Fe−Ni系感温磁性材料において、ニッケル(Ni)の割合を変化させたときのキュリー温度の変化を示す図である。
ニッケルの割合を30%、35%、40%にしたときの、Fe−Ni系感温磁性材料のキュリー温度を表1に示す。
図27と表1に示すように、例えば、ニッケルの割合を30〜40%にすることによって、キュリー温度が100℃〜200℃の範囲内の温度となる発熱体230dを形成することができる。
発熱体230dが配置される蒸発カップは、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)などの樹脂材料、または、セラミックなどの非金属材料によって形成されている。これらの材料の熱変形温度は、ポリカーボネート樹脂(PC)では130℃〜140℃、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)では260℃、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)(ガラス強化品)では220℃である。
蒸発カップがポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)によって形成されているときには、発熱体230dは、ニッケルの割合が35%のFe−Ni系感温磁性材料によって形成される。このとき、発熱体230dを形成する感温磁性材料のキュリー温度は、220℃である。発熱体230dが、ニッケルの割合が35%のFe−Ni系感温磁性材料によって形成されている場合には、蒸発カップは、熱変形温度が220℃であるポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)(ガラス強化品)によって形成されていないことが望ましい。ニッケルの割合が35%のFe−Ni系感温磁性材料によって形成されている発熱体230dのキュリー温度は220℃であるから、発熱体230dは220℃までは加熱される。熱変形温度が220℃のポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)によって蒸発カップが形成されている場合に、発熱体230dが220℃まで加熱されると、材料のばらつきや蒸発カップの肉厚によって、蒸発カップが変形してしまうことがあるので、設計余裕がなくなる。
図28は、発熱体の周辺の磁力線を、温度がキュリー温度以下の温度であるとき(A)と、キュリー温度以上の温度であるとき(B)について、模式的に示す図である。
図28の(A)に示すように、蒸発カップのカップ部210内に配置されている発熱体230dの温度がキュリー温度よりも低いときには、磁力線173は、発熱体230dの内部を通る。そのため、発熱体230dは誘導加熱される。
一方、図28の(B)に示すように、発熱体230dの温度がキュリー温度よりも高いときには、磁力線173は、発熱体230dの内部を通過しない。そのため、発熱体230dは誘導加熱されないので、さらに温度が上がることがなくなる。
以上のように、第10実施形態の加熱調理器においては、発熱体230dは、感温磁性材料によって形成され、感温磁性材料のキュリー温度は、100℃以上、蒸発カップを形成する材料の熱変形温度以下の範囲内の温度である。
感温磁性材料は、キュリー温度よりも低い温度であれば誘導加熱され、キュリー温度よりも高い温度であれば誘導加熱されない。そこで、キュリー温度は、100℃以上、蒸発カップを形成する材料の熱変形温度以下の範囲内の温度である感温磁性材料で発熱体230dを形成することによって、発熱体230dが蒸発カップを形成する材料の熱変形温度よりも高い温度に加熱されなくなる。このようにすることにより、蒸発カップの熱変形を防ぐことができる。また、温度検知手段や温度制御手段が不要になり、簡単な構成で安全な加熱調理器を提供することができる。
また、第10実施形態の加熱調理器においては、発熱体230dは、蒸発カップを本体に取り付けた場合に誘導加熱コイル171に対向する対向部237を有し、発熱体230dの対向部237は、他の部分に比べて相対的に厚みが大きいことが好ましい。
発熱体230dは、誘導加熱コイル171に対向する対向部237においては、最も発熱しやすい。一方、発熱体230dは、厚みが大きい部分においては、加熱されにくい。そのため、発熱体230dの対向部237を他の部分に比べて相対的に厚くすることによって、発熱体230d全体を均一に加熱して、蒸発カップに収容された水の突沸を防ぐことができる。
第10実施形態の加熱調理器のその他の構成と効果は、第1実施形態の加熱調理器と同様である。
(第11実施形態)
図29は、この発明の第11実施形態として、加熱調理器が備える蒸発カップと蒸発カップのロック機構の全体を示す図である。
図29に示すように、第11実施形態の加熱調理器が備える蒸発カップ206が、第1実施形態の蒸発カップ200と異なる点としては、蓋部220bの上面に窪み224が形成されている。
第11実施形態の加熱調理器の本体には、蒸発カップ206を収容するための外容器180が配置されている。外容器180の構成は、第9実施形態の外容器とほぼ同様であり、上面に穴が形成されている点において異なる。
蒸発カップ206は、加熱調理器1の本体100(図1)に取り付けられるときには、外容器180内に収容される。外容器180には、蒸発カップ206の温度を検知するための温度検知手段としてサーミスタ182が配置されている。サーミスタ182は、外容器180の内部に収容された蒸発カップ206のカップ部210の外壁面に接して、カップ部210の温度を検知する。
蒸発カップ206の蓋部220bの窪み224には、外容器180の上面に形成された穴を通して、外部上方から容器固定部材としてロック棒273が差し込まれる。ロック棒273は、外容器180の穴に差し込まれているので、鉛直方向にのみ移動可能である。外容器180の外部には、ロック棒273を移動させるための駆動部としてモーター271が配置されている。モーター271は、軸が水平方向に延びるように配置されている。ロック棒273は、支持部材274でモーター271に連結されているカム272に、カム272の中心から外れた位置に取り付けられている。モーター271が駆動すると、カム272が回転し、支持部材274が円直面内で円を描くように回転するので、ロック棒273が上下に移動する。
図30は、この発明の第11実施形態の加熱調理器にかかる制御関連の構成を示すブロック図である。
図30に示すように、第11実施形態の加熱調理器は制御部190を備える。サーミスタ182は温度を検知して、制御部190に信号を送信する。この実施の形態においては、サーミスタ182は、蒸発カップ206の温度が60℃以上であることを検知した場合に、制御部190に信号を送信する。制御部190は、モーター271に制御信号を送信する。
図31は、蒸発カップのロック機構について、蒸発カップのロックがされている状態を示す図(A)と、蒸発カップのロックがされていない状態(B)を示す図である。
図31の(A)に示すように、蒸発カップ206の温度が60℃以上の場合には、制御部190は、ロック棒273が蒸発カップ206の蓋部220bの窪み224にはまるように、ロック棒273を下方に移動させるように、モーター271を制御する。
ロック棒273が蒸発カップ206の蓋部220bの窪み224にはまっているときには、蒸発カップ206を外容器180から引き出そうとしても、ロック棒273が窪み224の周壁に接触してしまうので、引き出すことができない。
図31の(B)に示すように、蒸発カップ206の温度が60℃以上であることがサーミスタ182によって検知されない場合には、ロック棒273が蒸発カップ206の蓋部220bの窪み224にはまらないように、ロック棒273を上方に引き上げるように、制御部190がモーター271を制御する。
ロック棒273の下端が蒸発カップ206の蓋部220bの上方にまで引き上げられると、蒸発カップ206を外容器180の外部に引き出すことができる。
なお、ロック機構は、モーター271を用いるものに限るものではなく、例えば、形状記憶合金の回復力を用いて、所定の温度以上では蒸発カップ206をロックするようにしてもよい。
以上のように、第11実施形態の加熱調理器は、蒸発カップ206を外容器180に固定するためのロック棒273と、ロック棒273を移動させるためのモーター271とを備え、モーター271は、蒸発カップ206の温度が所定の温度以上である場合には、蒸発カップ206を本体に固定する位置にロック棒273を移動させるように構成されている。
このようにすることにより、蒸発カップ206が所定の温度以上であるときに、使用者が蒸発カップ206を外容器180から外すことを防ぐことができる。
第11実施形態の加熱調理器のその他の構成と効果は、第1実施形態の加熱調理器と同様である。
以上に開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は、以上の実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての修正や変形を含むものである。
1:加熱調理器、100:本体、120:加熱室、171:誘導加熱コイル、200,201,203,204,205,206:蒸発カップ、211:加熱部、212:貯水部、221:水蒸気供給管、230,230a,230b,230c,230d:発熱体、231:対向面、232:孔、233a,233b,233c:発熱体固定部、237:対向部、240,240a,240b,240c,240d:仕切板,241a,241b,241c,241d:開口部、261:スライドカバー、271:モーター、273:ロック棒。