JP5114856B2 - アノードの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、製造が容易であり、白金合金触媒の有効利用率が高く一酸化炭素耐被毒性を有するアノード、その製造方法、これを使用した燃料電池用高分子電解質膜・電極接合体及び燃料電池に関する。
水素と酸素を使用する燃料電池は、その反応生成物が原理的に水のみであり環境への悪影響がほとんどない発電システムとして注目されている。近年、燃料電池のなかでも、水素イオン伝導性を有するイオン交換膜を電解質として使用する固体高分子型燃料電池は、作動温度が低く、出力密度が高く、かつ、小型化が容易に可能なため、車載用電源や家庭据置用電源などへの使用が有望視されている。
固体高分子型燃料電池は多数の単セルが積層されて構成されている。単セルは、図2に示すように、アノード側のセパレータ1、アノード側触媒電極2、水素イオン伝導性高分子電解質膜3、カソード側の触媒電極4及びカソード側のセパレータ5を、この順に積層して構成されている。アノード側触媒電極2は、電極基材21とこの表面に積層された触媒層22とで構成されており、カソード側の触媒電極4は電極基材41とこの表面に積層された触媒層42とで構成されている。アノード側電極基材21とカソード側電極基材41とは、いずれも、ガス拡散性と導電性とを有する材質から構成されており、例えば、カーボンペーパーあるいはカーボンクロス等が利用されている。また、アノード側電極触媒層22とカソード側触媒層42とは、いずれも、カーボン粒子に白金触媒を担持させて粒子状とし、これを水素イオン伝導性高分子電解質で電極基材21,41に固定して構成されている。
そして、アノード側のセパレータ1には反応ガス流路が設けられており水素ガスを供給する。他方、カソード側のセパレータ5にも反応ガス流路が設けられており酸素ガスを供給する。これら水素ガスと酸素ガスとを、白金触媒の存在下で反応させることにより、両電極2,4の間に起電力を生じる。
アノードに送られる燃料ガスとしては、メタンやメタノール等を水蒸気改質して得られる水素ガス(改質ガス)を使用することが検討されている。例えば、メタノールを使用する場合、250〜300℃の温度でCu-Zn系等の触媒を使用して、以下のようにメタノールを段階的に反応させる。
CH3OH=2H2+CO−90kJ/mol
CO+H2O=H2+CO2+40kJ/mol
すなわち、改質装置でメタノールを水蒸気と反応させ、水素と一酸化炭素(CO)に転化させた後、シフトコンバータでさらにCOを水蒸気とシフト反応させて、水素ガスが主成分となる改質ガスを得る。そして、この改質ガスをアノードに燃料として供給する。
しかし、通常上記のシフト反応を行っても、得られる水素ガス中に1容量%程度のCOが含まれ、COは、アノード中の白金系触媒の触媒毒となる。特に100℃以下の低温で作動させる固体高分子型燃料電池では、COの白金触媒への触媒毒作用が著しく、電池特性を大きく低下させることが知られている。
改質ガス中のCOの影響を回避する方法としては、CO耐被毒性に優れる触媒をアノードに使用する方法、改質装置にCOを低減させるための機能を組込む方法、改質装置から排出されるガスをCO酸化除去装置などを用いてCO濃度数百ppm以下まで低減する方法などが挙げられる。
また、アノードの白金触媒表面に吸着するCOを酸化除去するために燃料ガス中に直接空気又は酸素を導入する方法も提案されている。しかし、空気又は酸素の流量制御機構が必要となり、燃料電池システム全体を軽量化、小型化ができない。
一方、触媒として使用される白金単体を含む白金合金の使用量低減化も重要な課題のひとつである。その理由としては、地球全体における白金の埋蔵量が限られていることと、白金の価格が高いためにコストの増加を招くことが挙げられる。
従来技術であるダイコーターやスクリーン印刷などの一般的な湿式法による塗工方法で白金合金の触媒層22,42を形成した場合には、その溶媒を徐々に乾燥するため、この乾燥工程中で白金合金触媒担持カーボンの凝集が進行する。このため、白金合金の触媒層22,42における空孔度が低下して燃料ガスの経路が遮断されやすくなり、白金合金の触媒層22,42における触媒と水素イオン伝導性高分子電解質から形成される三相界面を十分に形成させることが困難となってしまう。結果として、白金合金触媒の有効利用率を高めることが困難となり、単位白金合金量あたりで得られる電池性能が低下してしまうという欠点があった。特に、車載用で用いる場合では瞬時に大電流の発生を必要とするためにコジェネレーション用として用いる場合と比べて燃料ガスの拡散性が不足し電池性能が低下する傾向がある。
そこで一般的な高圧スプレーを用いて触媒層を形成することが提案されている(特許文献1)。高圧スプレーを用いた場合では、触媒インクの乾燥速度を高めることができ触媒の凝集を防止し、より多くの三相界面が形成されることが可能となり電池性能を改善する傾向を示す。しかしながら、高圧スプレーを用いて形成された触媒層の空孔度は、おおよそ30%程度の値であり、低白金量では十分な電池性能を発揮できない。また、高圧スプレーでは圧力をかけて噴霧するために吹きつけが強くなってしまいオーバースプレーおよび二次飛散が起こりやすい。そのために吹きつけたインクの回収サイクルを確立するなどの工夫をしない限り、触媒インクの塗着効率が15〜20%前後と低く、堆積した触媒層における白金触媒の有効利用率も5〜50%前後と低くなってしまう欠点がある。さらに、オーバースプレーおよび二次飛散によって膜厚のムラも起こりやすい欠点もある。
上記のとおり、白金合金触媒のCO耐被毒性向上及び使用量低減化が同時に求められている。
CO耐被毒性に優れるアノード触媒としては、白金-ルテニウム合金系触媒が知られている。しかし、白金触媒をルテニウムと合金化させることによりCO被毒耐性は高まるものの、水素酸化活性は低下し、燃料電池の出力特性が低下する原因となる。そのため、アノード触媒層を2層構成とし、水素イオン伝導性電解質膜側にルテニウム含有量が少ない白金-ルテニウム触媒からなる層を形成し、その外側にルテニウム含有量が多い白金-ルテニウム触媒からなる層を形成した燃料電池が提案されている(特許文献2)。また、カソードから電解質膜を透過する酸素ガスによってCOを酸化しCOとすることによってCO被毒を防ぎルテニウム含有量を低減した白金-ルテニウム触媒を含む多層な触媒層を有するアノードも提案されている(特許文献3)。しかしながら、いずれの方法でも、触媒層の形成を一般的な噴霧、塗布、濾過等で行っており、白金-ルテニウム触媒の有効利用率を高めることはできない。
特開平8-115726号公報 特開平10-270050号公報 特開2001―76742号公報
上記のような問題から、白金合金触媒の有効利用率が高く使用量を少なく抑えることができ、且つCO被毒耐性に優れるアノードを開発することにより、メタノール等からの改質ガスを燃料ガスとして使用しても効率よく発電できる軽量で小型の固体高分子型燃料電池の開発が求められている。
本発明は、上記課題を解決し、白金合金触媒の有効利用率が高く使用量を少なく抑えることができ、且つCO被毒耐性に優れるアノード、その製造方法、これを使用した燃料電池用高分子電解質膜・電極接合体及び燃料電池を提供することを目的とする。
請求項1に記載の発明は、水素イオン伝導性高分子電解質膜及びその両面にそれぞれ配置されたアノード及びカソードを有し、前記アノードには水素を主体とし一酸化炭素を含むガスが供給され、前記カソードには酸化剤ガスが供給される燃料電池における、前記アノードの製造方法であって、白金合金触媒粒子と水素イオン伝導性高分子電解質とを固形分として含む懸濁液を、60〜120℃に加熱した電極基材表面へ超音波振動を利用して、振動周波数10kHz〜500kHzの範囲でスプレーノズルを共振させながら霧化させて噴霧し、前記電極基材表面に前記懸濁液を付着させ、白金合金触媒層を形成する工程を有することを特徴とするアノードの製造方法である。
本発明においては、超音波振動を利用してスプレーノズルを共振させながら懸濁液を噴霧するため、懸濁液に超音波エネルギーを付与して固形分をその凝集エネルギーから開放する。このため、噴霧される微粒子の粒度分布がシャープとなり、また、平均粒子径も小さくなる。そして、このため、形成されるアノードの白金合金触媒層の空孔度が大きくなり、燃料ガスの拡散性が向上し、三相界面を十二分に形成することが可能となる。なお、空孔度とは、電極面積と白金合金触媒層の厚みとの積に対する空孔自体の体積の割合で、細孔分布測定装置ポアサイザー9320((株)島津製作所製)などにて測定が可能である。
また、超音波振動を利用してスプレーノズルを共振させながら噴霧して白金合金触媒層を形成させることによって、白金合金触媒層に傾斜構造を付与させることができる。特に、超音波振動を利用したスプレー方式ではオーバースプレーおよび二次飛散を抑制しその塗着効率を向上させ、白金合金触媒の使用量を低減することができ、且つ水素イオン伝導性高分子電解質膜からガス拡散電極に向かって、白金合金触媒粒子における合金含有量を増加するような傾斜構造を形成させることができる。その結果、よりいっそう三相界面を増加させて電池性能を向上させ、且つCO耐被毒性に優れたアノードの製造が可能となる。
本発明は、白金合金触媒粒子と水素イオン伝導性高分子電解質とを固形分として含む懸濁液(触媒インク)を、超音波振動を利用してスプレーノズルを共振させながら噴霧して、白金合金触媒の周囲を水素イオン伝導性高分子電解質で被覆した微粒子を電極基材表面に付着させてアノードとするものである。
本発明で用いる白金合金触媒粒子としては、白金合金単体もしくは白金合金が担持されたカーボン粒子などが使用できる。白金合金において、白金以外の金属としては(本発明では、このような金属を合金成分と呼ぶことにする)、パラジウム、ルテニウム、モリブデンなどが挙げられるが、特にルテニウムが望ましい。白金合金触媒粒子におけるルテニウム含有量は10質量%〜40質量%が望ましい。10質量%未満ではCO耐被毒性が十分ではなくなり、40質量%を超えると触媒能が十分ではなくなってしまうためである。
また、タングステン、スズ、レニウムなどが白金合金に添加物として含まれていてもよい。上記添加物が含まれているとCO耐被毒性が高まる。上記添加金属は、白金合金の金属間化合物として存在してもよいし、合金を形成してもよい。
水素イオン伝導性高分子電解質は、ナフィオン(デュポン社製;登録商標)等のフッ素系陽イオン交換樹脂であることが好ましい。白金合金触媒粒子と水素イオン伝導性高分子電解質は混合後に分散処理を行うことが必要である。触媒インクの分散は、ボールミルや超音波ホモジナイザーなどで行うことが可能である。この水素イオン伝導性高分子電解質は、分散処理や噴霧処理の際に白金合金触媒粒子の周囲に付着して、全体として微粒子を形成する。
また、触媒インクで使用する溶媒は特に限定されず、触媒粒子や水素イオン伝導性高分子電解質が反応することがない揮発性の液体有機溶媒が含まれることが望ましく、特にイソプロパノールなどのアルコールが望ましい。水素イオン伝導性高分子電解質と親和性が高い水が含まれていてもよい。
また、本発明において、超音波振動を利用して共振させながら噴霧させるスプレーは、ピエゾセラミックなどによって発生させた超音波をスプレーノズル部に伝え共振させることによって、そこを通過する触媒インクに超音波エネルギーを付与させて、インク自体が寄り集まろうとする凝集エネルギーから解き放させることにより霧化させて噴霧させるもの(超音波スプレー)である。
このような超音波スプレーの振動周波数は10kHz〜500kHzが望ましい。振動周波数が10kHz未満の場合では、超音波エネルギーが足りなくて触媒インクの凝集エネルギーによる束縛を開放しきれずに液体を霧状態とすることができない。また、振動周波数が500kHzを超える場合では、与えられた超音波振動に対して追随できず共振できなくなってしまう触媒インクの割合が増加してしまい、霧微粒子のシャープな粒子分布が損なわれてしまう。
超音波スプレーを用いて形成された白金合金触媒層の空孔度は30%〜90%であるが、30%未満であると反応ガスの供給が不十分となり電池性能が低下する。また、空孔度が90%を超えると導電性が低下し直流抵抗が増加すること及び触媒層としての機械的強度が低下して不十分となる。
本発明における白金合金触媒層は傾斜構造を有することが望ましい。例えば傾斜構造とは、白金合金触媒層における合金成分の含有量が、前記白金合金触媒層の厚さ方向に変化する傾斜構造であり、とくに、水素イオン伝導性高分子電解質膜からガス拡散電極に向かって、白金合金触媒粒子の合金成分含有量が増加するような傾斜構造である。触媒層にそのような傾斜構造を与えることにより、均一な単一層である場合と比較して、アノードのCO耐被毒性を向上させ且つ白金合金の使用量低減化ができ、発電性能を向上させることができる。
傾斜構造は2層以上の複数層であればよい。多層構造とするほど反応が円滑に進行し、発電性能は向上しやすい。傾斜構造を複数層にするためには、組成の異なる触媒インクを満たした複数本のノズルを用意して噴霧すればよい。噴霧をオンラインで行いたい場合は、ノズルをライン上に連続的に設置して噴霧することができる。超音波スプレーの場合ではオーバースプレーおよび二次飛散が起きにくいために生産性も飛躍的に向上させることができる。
次に、本発明において、噴霧する電極基材は、固体高分子型燃料電池の電極基材であって、一般にガス拡散性と導電性とを有する材質から成り、ガス拡散電極(ガス拡散層)としての機能を有するものであって、例えば、カーボンペーパー又はカーボンクロス等が使用できる。噴霧する前に予め電極基材上に目処め層を形成させてもよい。目処め層は、触媒インクが電極の中へ染み込むことを防止する層であり、その噴霧量が少ない場合でも電極の中へ染み込むことがなく、電極上に堆積して皮膜を形成して三相界面を形成する。このような目処め層は、例えば、カーボンとフッ素系樹脂を混練してフッ素系樹脂の融点以上の温度で焼結させることにより形成することができる。フッ素系樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等が利用できる。
また、この電極基材の表面を60〜120℃に加熱した状態で噴霧することが望ましい。60〜120℃に加熱した電極基材の表面に噴霧することによって、触媒インク中の溶媒を瞬時に乾燥させて、着滴後の白金合金触媒粒子の凝集を防止して、白金合金触媒層の空孔度を向上させることができる。電極基材表面が60℃未満では溶媒を瞬時に乾燥させる効果が低い。また、電極基材表面が120℃を超えると乾燥ムラを発生することがある。超音波スプレーする際の雰囲気ガスの温度を管理・制御することによって、この効果を更に顕著にできる。
次に、超音波スプレーにおける噴霧速度は、0.01ml/分〜10ml/分程度の割合で触媒インクが通過するように行えばよい。この噴霧速度において、触媒インクはおおむね自然落下となり、形成される白金合金触媒層は空孔が生じやすくなる。超音波スプレーのノズル径は噴霧圧力と噴霧速度に応じて選択することができ、一般に数mm程度でよい。
また、このような超音波スプレーで噴霧する場合、噴霧した微粒子の自然落下噴霧を妨げることがない程度の低い圧力の範囲で、この微粒子を搬送させるガスを送り流してもよい。搬送用ガスの圧力は、0.005〜0.02MPa程度が望ましい。また、搬送用ガスを送ることによって噴きつけ角度がわずかに影響を受ける場合があるが、触媒層を形成するにあたり特に問題とはならない。ガスの種類は圧縮空気や窒素などでよく、安価で安全であれば特に問わない。
こうして電極基材の表面に白金合金触媒層を形成して得られたものは、固体高分子型燃料電池のアノードとして利用できる。すなわち、まず、図1に示すように、電極基材21,41に触媒層22,42を形成して、それぞれ、アノード側触媒電極、カソード側触媒電極とする。次に、これら触媒電極の間に、水素イオン伝導性高分子電解質膜3を挟み、熱プレスなどで接合することでMEAを製造することができる。
そして、このMEAを、反応ガス流路を有する2枚のセパレータで挟持させることにより、燃料電池セルを形成することができる。燃料電池セルは単体でも燃料電池として機能するが、この燃料電池セルを多数積層することによって、大きい起電力を得ることができる。
以下、実施例によって本発明をさらに説明する。
(実施例1)
白金―ルテニウム触媒(ルテニウム30質量%)の担持量が30質量%である市販の白金―ルテニウム担持カーボン触媒2.0g及び市販の水素イオン伝導性高分子電解質20質量%溶液(ナフィオン溶液)5.0gを、水20.0gとイソプロパノール23.0gの混合溶媒中で超音波ホモジナイザーを使用して30分間攪拌して触媒インク1を調製した。
白金―ルテニウム触媒(ルテニウム20質量%)の担持量が30質量%である市販の白金―ルテニウム担持カーボン触媒2.0g及び市販の水素イオン伝導性高分子電解質20質量%溶液(ナフィオン溶液)5.0gを、水20.0gとイソプロパノール23.0gの混合溶媒中で超音波ホモジナイザーを使用して30分間攪拌して触媒インク2を調製した。
白金―ルテニウム触媒(ルテニウム10質量%)の担持量が30質量%である市販の白金―ルテニウム担持カーボン触媒2.0g及び市販の水素イオン伝導性高分子電解質20質量%溶液(ナフィオン溶液)5.0gを、水20.0gとイソプロパノール23.0gの混合溶媒中で超音波ホモジナイザーを使用して30分間攪拌して触媒インク3を調製した。
白金担持量が30質量%である市販の白金担持カーボン触媒2.0g及び市販の水素イオン伝導性高分子電解質20質量%溶液(ナフィオン溶液)5.0gを、水20.0gとイソプロパノール23.0gの混合溶媒中で超音波ホモジナイザーを使用して30分間攪拌して触媒インク4を調製した。
調整した触媒インク1をシリンジに入れて、ノズルの内径が約2mmであり振動周波数が100kHzである超音波スプレーにて、噴霧圧0.01MPa、送液速度0.15ml/分で、目処め層付きカーボンペーパー(E―Tek社製)上に、超音波噴霧した。ついでその上へ、触媒インク2を、同じようにノズルの内径が約2mmである超音波スプレーにて、噴霧圧0.01MPa、送液速度0.15ml/分で超音波噴霧を行った。さらにその上へ、触媒インク3を、ノズルの内径が約2mmである超音波スプレーにて、噴霧圧0.01MPa、送液速度0.15ml/分で超音波噴霧を行い、アノードを作製した。アノード触媒層の白金担持量は0.10mg/cm2となるように作製した。空孔度は55%であった。
調整した触媒インク4をシリンジに入れて、ノズルの内径が約2mmであり振動周波数が100kHzである超音波スプレーにて、噴霧圧0.01MPa 、送液速度0.15ml/分で、目処め層付きカーボンペーパー(E―Tek社製)上に、超音波噴霧を行い、カソードを作製した。カソード触媒層の白金担持量は0.15mg/cm2となるように作製した。空孔度は55%であった。
得られたアノードとカソードを所定の面積にカットして、水素イオン伝導性高分子電解質膜(デュポン社製ナフィオン膜)と接合してMEAを作製した。接合には熱プレスを用いて、150℃、50kg/cm2、5分の条件で行った。次に、このMEAを、反応ガス流路を有する2枚のセパレータで挟持させて図2に示すような燃料電池セルを製造した。
(実施例2)
実施例1のルテニウムがモリブデンであること以外は実施例1と同様としてアノード、カソードを作製し、燃料電池セルを製造した。空孔度は50%であった。
(比較例1)
実施例1でアノード及びカソードを作製するために用いた超音波スプレーが、高圧スプレーに変更したこと以外は実施例1と同様としてアノード、カソードを作製し、燃料電池セルを製造した。空孔度は25%であった。
(燃料電池の電池性能測定)
水素流量が400ml/分、酸素流量が200ml/分となるようにして80℃で加湿・加熱した水素ガスと、加湿していない酸素ガスを供給して反応を行わせ、電池性能を測定した。その結果を表1に示す。実施例1及び実施例2の触媒電極を用いた場合では比較例1の触媒電極を用いた場合と比べて電池性能が向上することがわかった。
Figure 0005114856
(電気化学的な白金表面積の測定)
周知の電気化学測定法に準じて、触媒電極の水素脱離電気量を測定し、この値を電極面積で割って電極単位面積あたりの水素脱離電気量を求め、次いで210μC/cm2で割り、さらにこの値を電極単位面積あたりの白金担持量で割ることによって、白金単位重量あたりの活性な表面積を測定した。なお、アノード極側には水素ガスを、カソード極側には窒素ガスを加湿状態40℃の条件でそれぞれ供給して測定した。
白金触媒のサイズを約2nmと仮定すると、白金触媒がすべて有効に利用された場合の表面積は1400cm2/mg程度となるが、この値を用いて白金触媒の有効利用率を求めた結果、実施例1では65%、実施例2では60%となり、比較例1では20%となることが分かった。
以上の測定結果より、実施例1及び実施例2の触媒電極は、比較例1の触媒電極と比べて、白金有効利用率が大幅に高くなり、且つ電池性能が優れていることが確認できた。
本発明のアノードの製造方法は、低白金合金量でも白金合金触媒の有効利用率が高くなり、優れた発電性能を有するアノードを安価で製造することを可能とし、CO耐被毒性にも優れた固体高分子型アノードを製造できることから、固体高分子型燃料電池の分野での応用が期待できる。
膜・電極接合体の製造工程の説明図である。 燃料電池の分解斜視図である。
符号の説明
1……アノード側のセパレータ、2……アノード側触媒電極、21……アノード側電極基材、22……アノード側触媒層、3……水素イオン伝導性高分子電解質膜、4……カソード側触媒電極、41……カソード側電極基材、42……カソード側触媒層、5……カソード側のセパレータ。

Claims (1)

  1. 水素イオン伝導性高分子電解質膜及びその両面にそれぞれ配置されたアノード及びカソードを有し、前記アノードには水素を主体とし一酸化炭素を含むガスが供給され、前記カソードには酸化剤ガスが供給される燃料電池における、前記アノードの製造方法であって、白金合金触媒粒子と水素イオン伝導性高分子電解質とを固形分として含む懸濁液を、60〜120℃に加熱した電極基材表面へ超音波振動を利用して、振動周波数10kHz〜500kHzの範囲でスプレーノズルを共振させながら霧化させて噴霧し、前記電極基材表面に前記懸濁液を付着させ、白金合金触媒層を形成する工程を有することを特徴とするアノードの製造方法。
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