JP5114724B2 - ポリプロピレン系樹脂フィルム - Google Patents

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Description

本発明は、ポリプロピレン系樹脂フィルムに関するものであり、詳しくは、フィッシュアイの混入が高度に抑制されたポリプロピレン系樹脂フィルムに関するものである。
ポリプロピレン系無延伸フィルムは、透明性が良好であり、かつ安価であるので、食品包装など種々の包装材料および各種物品の表面保護を目的とした表面保護フィルムの基材として広く使用されている。中でもポリプロピレン系ブロック共重合樹脂を主成分とした
ポリプロピレン系樹脂フィルムは、耐衝撃性に優れており上記分野において好適に使用されている。
上記のポリプロピレン系樹脂フィルムにはフィッシュアイと称される微小異物が含まれる。例えば、ポリマー編集委員会著、ポリマー辞典、大成社、平成12年、増刷6版、P337等に、フィッシュアイについての定義が書かれている。フィッシュアイとは、フィルムの製品中に生じる小さな球状形状等の塊をいう。魚の眼のような透明性をもつものが多いことからこのような名前が付けられた。成形材料の混練不足から来る未溶融の塊り、原料の一部がゲル化したための塊り、成形中の材料の部分的劣化による塊り、異物を核としたものなどいろいろなものがある。ここでいうフィッシュアイとは、異物を核にしたものは除外する。異物とは、例えは、セルロース、塵、金属片、樹脂の炭化物、種類の異なるプラスチック、糸くず、紙切れ等がある。例えば、フィッシュアイを多く含むフィルムで包装した場合に該フィッシュアイが肉眼で見えるので包装体の商品イメージを低下させるので好ましくない。該フィッシュアイに関しては、近年、消費者の安全指向の強まり共に市場要求が厳しくなってきている。例えば、紙パックの内層材として用いられた場合のように消費者に通常状態では目に触れないものであっても、回収のために紙パックが切り引きさかれることにより消費者の目に触れて、安全性に対する不安を呼び起こす等の現象も出始めている。また、透明包装袋として使用した場合は、内容物の色や形態によりフィッシュアイが異物として目立つことがある。これらの市場要求により厳しい管理が必要となってきている。また、前記した保護フィルム用途においても、上記外観不良は保護されている商品の商品イメージを低下させるので混入抑制の強い要望がある。特に、例えば、メッキ用の保護フィルムの場合は、該フィッシュアイが存在するとフィルムのフィッシュアイが存在する部分に突起が生じ、該突起により保護すべき対象物との間に粘着不良を起こし粘着層と対象物の間に空間が生じ、該空間部にメッキ液が浸入し保護効果が低下するので極力低下させる必要がある。液晶板保護用のプロテクトフイルムなどの場合、プロテクトフィルム表面のフィッシュアイが液晶板と接する面で貼り付け時に押さえることにより、フィッシュアイによる凹凸や擦れにより損傷を受けるなど問題があり、フィッシュアイの存在そのものが問題となっている。最近は、さらに液晶板保護用プロテクトフィルムを貼り付けた状態で液晶板の検査が実施されており、フィッシュアイがあると液晶板そのものの欠点だと判定されてしまう可能性があり、ノンフィッシュアイグレード、低フィッシュアイグレードなどのフィルム開発が求められている。
ポリプロピレン系樹脂フィルムのフィッシュアイの混入抑制に関しては多くの技術が開示されている。
例えば、原料樹脂中のフィッシュアイ含有量を低減する方法が開示されている(例えば、
特許文献1〜3等参照)。該方法はフィッシュアイの低減方法として有効であるが、フィッシュアイは溶融押し出し工程等でも生成するので、該方法のみで市場要求に応えることが困難な場合がある。
特開平6−93061号公報 特開平7−233291号公報 特開2003−62954号公報
また、本発明者等は、低温で溶融押し出しすることによりフィッシュアイを低減する技術を開示している(特許文献4および5参照)。本発明の方法はフィッシュアイの低減方法としては有効な方法であるが、低温押し出しによる得られるフィルムの厚み斑の悪化を抑制するために限定された製膜機を使用する必要があるという課題を有する。
特開2005−178250号公報 特開2005−179452号公報
また、酸化防止剤としてフェノール系酸化防止剤および硫黄系酸化防止剤を使用することによりフィッシュアイを低減することができるポリプロピレン系樹脂組成物が開示されている(特許文献6参照)。本発明方法もフィッシュアイの低減方法として有効な方法であるが、実施例において示されているごとく0.2mm以上の大きさのフィッシュアイを対象としており、かつ15〜20個/mの個数のフィッシュアイが含まれており、近年の市場の高度な要求を満たすにはさらなる改善が必要である。例えば、メッキ用の保護フィルムにおいては、0.2mm以上のフィッシュアイについては上記面積当りの個数としては実質的に0個であることが求められており、さらに小さなフィッシュアイの低減が必要である。
特開2003−268172号公報
一方、フィッシュアイの抑制効果に関しては何らの言及もされていなが、種類の異なる酸化防止剤を二種以上併用することにより酸化防止効果を高める技術が多く開示されている。
例えば、フェノール系酸化防止剤とリン系酸化防止剤を併用する方法が開示されている(例えば、特許文献7〜10等参照)。特許文献7においては着色防止が、特許文献8においてはリサイクル性や経時安定性が、特許文献9においては電子線照射時の着色防止が、特許文献10においては耐熱安定性が向上している。
特開平7−23290号公報 特開平10−202720号公報 特開2001−40113号公報 特開2002−69248号公報
また、ビタミンE系酸化防止剤とリン系酸化防止剤とを併用する方法(特許文献11参照)、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤および硫黄系酸化防止剤の3種を併用する方法(特許文献12参照)、フェノール系酸化防止剤と2種類のリン系酸化防止剤の3種を併用する方法(特許文献13参照)およびスピロクマロン化合物、多価アルコール、リン系酸化防止剤およびフェノール系酸化防止剤の4種を併用する方法(特許文献14参照)が開示されている。特許文献11においては添加量低減の効果が、特許文献12においては熱黄変性が、特許文献13においては塗膜の黄変性が、特許文献14においてはリサイクル性や加工安定性が向上している。
WO00/00540号公報 特開平10−316808号公報 特開2003−292720号公報 特開2002−60638号公報
また、近年、アクリレート系酸化防止剤が少量添加で良好な酸化防止効果を示すことで注目されている(例えば、15〜18等参照)。
特開昭58−84835号公報 特開平1−168643号公報 特開2001−114953号公報 特開2002−302579号公報
上記の特許文献17において、ホモポリプロピレン樹脂を用いた二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムに関してではあるが、アクリレート系酸化防止剤とフェノール系酸化防止剤の2種の酸化防止剤あるいはアクリレート系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤およびリン系酸化防止剤の3種の酸化防止剤を併用する実施例が開示されている。アクリレート系酸化防止剤単独使用に比べて特段の効果は示されていない。
本発明は、耐衝撃性に優れ、フィッシュアイ混入が高度に抑制され、かつフィルムの取り扱い性の良好なポリプロピレン系樹脂フィルムを提供することにある。
本発明者等は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、本発明の完成に到った。
すなわち、本発明は、ゴム成分を3.0質量%以上、30質量%以下含有し、滑剤及びアンチブロッキング剤を実質的に含有しないポリプロピレン系樹脂組成物100質量部に対して、2,4−ジ−t−アミル−6−[1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル]フェニルアクリレート、2,4−ジ−t−アミル−6−[1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ブチル]フェニルアクリレート、2,4−ジ−t−アミル−6−[1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)プロピル]フェニルアクリレート、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレートのうち少なくとも1種を0.0〜0.1質量部、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(3,5−ジ−t―ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチル−6−メチルフェニル)・エチルフォスファイトのうち少なくとも1種のリン系酸化防止剤を0.05〜0.3質量部、およびβ−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリルエステル、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス[(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル]イソシアヌレートのうち少なくとも1種のフェノール系酸化防止剤を0.05〜0.3質量部配合した組成物よりなり、フィルムの摩擦係数が0.4〜0.9であることを特徴とするポリプロピレン系樹脂フィルムである。
本発明のポリプロピレン系樹脂フィルムは耐衝撃性に優れており、かつフィッシュアイの混入が高度に抑制され、かつフィルムの取り扱い性が良好であるので、例えば、食品や医薬品等の各種物品の包装袋材料や各種物品の加工、組み立て、輸送あるいは保存における該物品の表面等を保護する表面保護フィルム等の材料として好適に用いることができる。
本発明においては、ゴム成分を3.0質量%以上を含有するポリプロピレン系樹脂組成物100質量部に対して、アクリレート系酸化防止剤0.01〜0.1質量部、リン系酸化防止剤およびフェノール系酸化防止剤の中から選ばれた少なくとも1種を0.05〜1.0質量部配合した組成物よりなることが好ましい。
本発明において用いられるゴム成分を3.0質量%以上含有するポリプロピレン系樹脂組成物は、ゴム成分を3.0質量%以上含有すればその組成は限定されない。例えば、ホモポリプロピレン樹脂またはランダム共重合ポリプロピレン系樹脂の少なくとも1種と熱可塑性エラストマーとの配合物やポリプロピレン系ブロック共重合樹脂およびこれらの混合物が挙げられる。ゴム成分量は4.0質量%以上がより好ましく、5.0%以上がさらに好ましい。ゴム成分が3.0質量%未満では耐衝撃性、滑り性および耐ブロッキング性が悪化するので好ましくない。一方、ゴム成分の上限は耐衝撃性の向上の点より高い方が好ましいが、透明性が悪化し被包装物や被保護体の視認性が低下することより30質量%以下が好ましい。28%以下がより好ましく、25質量%がさらに好ましい。ゴム成分量が30質量%を超えた場合は製膜性の低下にも繋がる。融点は、155℃〜166℃のものが好ましく、特に160〜165℃までのものがより好ましい。
上記ホモポリプロピレン樹脂は限定されない。例えば、下記のようなものが挙げられる。
MFRが1〜20のホモポリプロピレンで、融点の高いものが好ましい。融点は、160〜166℃のものが好ましい。
上記共重合ポリプロピレン系樹脂は限定されない。例えば、下記のようなものが挙げられる。
ランダム共重合ポリプロピレン系樹脂としては、MFRが1〜20で、エチレン量は、0.1〜20%以内のものが好ましく、特にMFRが0.1〜3のものが好ましい。
また、融点は、150〜163℃のものが好ましく、特に153℃〜161℃のものが好ましい。
上記のポリプロピレン系ブロック共重合樹脂は限定されないが、
多量のプロピレンと少量のエチレンとの共重合体成分と、少量のプロピレンと多量のエチレンとの共重合体成分とが、ブロック的に共重合したものであり、それぞれの共重合体ブロックの分子量等は、重合段階で制御される。一般的には、特開昭59−115312号公報で示されるように、2段以上の重合方法によって得ることができるが、特に本発明では限定されるものではない。該ポリプロピレン系ブロック共重合樹脂の場合は、エチレン含有量が1.5〜20質量%が好ましく、2.0〜15質量%がより好ましい
上記のポリプロピレン系ブロック共重合樹脂は、上記要件を満たせば限定されないが、以下の特性を有するものを用いるのが好ましい。
20℃キシレン可溶部量が3〜50%、樹脂全体の極限粘度が1.5〜4.0、20℃キシレン可溶部の極限粘度が1.0〜4.0、20℃キシレン不溶部の極限粘度が1.0〜4.0であるものが好ましい。また、メルトフローレートが230℃において、2〜20g/10分であるものが好ましい。
上記熱可塑性エラストマーとしては、エチレン・プロピレン共重合体(EPR)、エチレン・ブテン共重合体(EBR)、エチレン・酢酸ビニル(EVA)、水添ブロック共重合体等が挙げられる。水添ブロック共重合体とは、少なくとも1個のビニール芳香族化合物を主成分とする重合体ブロックAと少なくとも1個の水素添加された共役ジエン化合物を主成分とする共重合体ブロックBとからなる構造を有しており、例えばA−B−A、B−A−B−A、B−A−B−A−Bおよびこれらの混合物等からなる水添ブロック共重合体である。そして、該水添ブロック共重合体としては、ビニル芳香族化合物を10〜40質量%含むものを用いることができる。
該水添ブロック共重合体を構成するビニル芳香族化合物としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン等を用いることができ、特にスチレンが好ましい。また、水素添加された共役ジエン化合物を構成する水添前の共役ジエン化合物としては、例えばブタジエン、イソプレン、1−3ペンタジエンを用いることができ、特にブタジエンが好ましい。ビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体の共役ジエン化合物に基づく脂肪族2重結合の80%、好ましくは90%以上水素添加し、オレフィン系化合物重合体ブロックBとしたものが好ましい。代表的な共重合体例としてスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体を挙げることができ、スチレンの共重合量としては、10〜30重量%のものが好ましい。透明性の点からは、10〜20重量%のものが好ましい。
上記熱可塑性エラストマー(c)のメルトフローインデックス(MI)は、低温での耐衝撃性の点で5g/10分以下が好ましく、好適には0.2〜5g/10分である。
コストパフォーマンスの点よりEPR、EBRの利用が好ましい。
本発明のポリプロピレン系樹脂フィルムは、フィルム中の滑剤の含有量が50ppm以下であることが好ましい。滑剤の含有量は10ppm以下がより好ましく、特に好ましくは、元素分析や抽出法等の通常の定量方法で検出限界以下であることが好ましい。すなわち、滑剤を実質的に含有しないことが好ましい。ここで、滑剤を実質的に含有しないとは、滑剤を積極的に添加せず製膜することを意味している。上記範囲は積極的に滑剤を添加しなくても、原料ポリマーやフィルム製造時に銘柄切り替え等により微量に混入する場合があることを含めるためであり、滑剤を実質的に含有しないこと好ましい実施態様である。該対応により該滑剤を配合しフィルムの滑り性を向上させる方法において起こる該滑剤のフィルム表面へのマイグレーションおよび引き続き起こる被包装物や被保護体への移行による被包装物や被保護体の汚染が阻止され被包装物や被保護体の清澄度が保持される。
また、本発明のポリプロピレン系樹脂フィルムは、フィルム中のアンチブロッキング剤の含有量が50ppm以下であることが好ましい。アンチブロッキング剤の含有量は10ppm以下がより好ましく、特に好ましくは、灰分や元素分析等の通常の定量方法で検出限界以下であることが好ましい。すなわち、アンチブロッキング剤を実質的に含有しないことが好ましい。ここで、アンチブロッキング剤を実質的に含有しないとは、上記の滑剤の場合と同じ意味である。該対応によりフィルムの製造および二次加工工程におけるフィルムの磨耗によるアンチブロッキング剤の脱落が抑制されるので、該脱落物による汚染や障害発生等が抑制される。
本発明においては、前記した全樹脂組成物100質量部に対して、酸化防止剤としてアクリレート系酸化防止剤0.01〜0.1質量部、リン系酸化防止剤およびフェノール系酸化防止剤の中から選ばれた少なくとも1種を0.05〜1.0質量部とを配合した組成物を用いることが重要である。
本発明においては、前述のごとくアクリレート系酸化防止剤とリン系酸化防止剤およびフェノール系酸化防止剤の中から選ばれた少なくとも1種より選ばれた少なくとも2種の酸化防止剤を含んでなることが好ましいが、アクリレート系酸化防止剤、リン系酸化防止剤およびフェノール系酸化防止剤の3種を併用するのがより好ましい実施態様である。
上記3種の酸化防止剤はそれぞれ1種づつの併用には限定されない。各種類の中の2種以上を併用してもいし、上記3種の酸化防止剤に加えて、例えば、硫黄系酸化防止剤等の他の構造の酸化防止剤をさらに併用してもよい。
上記の複数の酸化防止剤を併用することにより従来公知の酸化防止剤の組み合わせでは得られない高度なフィッシュアイの混入抑制の効果が発現される。
前述したごとく、特許文献6において酸化防止剤としてフェノール系酸化防止剤および硫黄系酸化防止剤を使用することによりフィッシュアイを低減することができるポリプロピレン系樹脂組成物が開示されているが、本発明における複数の酸化防止剤を併用することにより上記特許文献6の方法を含めて、従来公知の酸化防止剤の組み合わせでは得られない高度なフィッシュアイの混入抑制の効果が発現されるという予期しえない効果を見出し本発明を完成した。該フィッシュアイの大幅な混入抑制効果は、ゴム成分の劣化抑制により引き起こされたものと推察している。従って、本発明と近似した酸化防止剤の併用が開示されている特許文献17におけるホモポリプロピレン樹脂を用いた製膜では発現しない効果が発現されたものと推察される。
上記の複数の酸化防止剤を併用することにより従来公知の酸化防止剤の組み合わせでは得られない高度なフィッシュアイの混入抑制の効果が発現される。該理由は明確でないが下記のごとく推察している。
フェノール系酸化防止剤およびリン系酸化防止剤は前記した原料樹脂組成物の各成分に対する酸化防止効果の選択性は少ないが、アクリレート系酸化防止剤は、ポリプロピレン系ブロック共重合体のゴム部との親和性が強くゴム部の劣化を優先的に抑制する傾向が知られている。一方、フィッシュアイの生成に関してはゴム部の劣化の寄与が大きい。そのために、上記の複数の酸化防止剤を併用することによりフィッシュアイの大幅な低減につながったものと推察している。
上記のアクリレート系酸化防止剤とは、分子内にアクリレート残基を含むフェノール誘導体を有する酸化防止剤であり、下記(II)式で示される構造よりなるものが好ましい。
Figure 0005114724
式(II)において、Rは炭素原子数1〜5個からなるアルキル基であり、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、t−ブチル基、2,2−ジメチルプロピル基等が挙げられる。好ましくはメチル基又はエチル基であり、より好ましくはエチル基である。
式(II)において、Rは炭素原子数1〜8個からなるアルキル基であり、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、t−ブチル基、t−ペンチル基、t−オクチル基等が挙げられる。好ましくはメチル基、t−ブチル基又はt−ペンチル基であり、より好ましくはt−ペンチル基である。
式(II)において、Rは水素原子または炭素原子数1〜8個のアルキル基であり、例えば水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、オクチル基等が挙げられる。好ましくは水素原子又はメチル基であり、より好ましくはメチル基である。
また、式(II)において、Rは水素原子又はメチル基である。好ましくは水素原子である。
上記アクリレート化合物としては、例えば、2,4−ジ−t−アミル−6−[1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル]フェニルアクリレート、2,4−ジ−t−アミル−6−[1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ブチル]フェニルアクリレート、2,4−ジ−t−アミル−6−[1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)プロピル]フェニルアクリレート、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート等が挙げられる。
好ましくは、2,4−ジ−t−アミル−6−[1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル]フェニルアクリレート及び2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレートである。
上記アクリレート化合物としては、市販のものから適宜選択して使用することができる。例えば、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレートである住友化学(株)製スミライザーGM(登録商標)、2,4−ジ−t−アミル−6−[1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル]フェニルアクリレートである住友化学(株)製スミライザーGS(登録商標)等を挙げることができる。特に、スミライザーGS(登録商標)の使用が好ましい。
本発明における上記アクリレート系酸化防止剤の配合量は限定されないが、前記した全ポリプロピレン系樹脂組成物100質量部に対して0.01〜0.1質量部の範囲が好ましい。0.02〜0.08質量部がより好ましく、0.03〜0.07質量部がさらに好ましい。該配合量が0.1質量部を超えた場合は、製膜工程において、冷却ロールの汚染が増大するので好ましくない。また、フィルムも酸化防止剤特有の薄い黄色に染まるので好ましくない。逆に、0.01質量部未満では前述の併用効果が減少するので好ましくない。上記アクリレート系酸化防止剤のみ前記した2種の酸化防止剤よりも配合量の上限を低くすることが好ましいのは、該アクリレート系酸化防止剤は他の酸化防止剤に比べてポリプロピレン系樹脂のゴム成分に対する溶解性が高いために、フィルム中のゴム成分へより多く分配され、かつ該ゴム成分部分はベース樹脂よりも冷却ロールによる結晶化速度が遅いために、冷却ロールと接触した場合に該ゴム成分に分配された上記のアクリレート系酸化防止剤が冷却ロールへ移行し易いために冷却ロールの汚染度を高めことに起因しているものと推察される。例えば、前述の特許文献25等で開示されているホモポリプロピレン樹脂を用いた製膜においては発生しない本発明において発生する特有の現象である。
上記のリン系酸化防止剤の具体例としては、例えば、分子中に3価のリン原子を含有し、そのリン原子が少なくとも1つのP−O−C結合を有する熱安定剤が挙げられる。例えば、トリブチルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリステアリルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリクレジルホスファイト、トリシクロヘキシルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリラウリルチオホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリス(イソデシル)ホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(ブトキシエチル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(3,5−ジ−t―ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ホスファイト、トリス[4,4’−イソプロピリデンビス(2−t−ブチルフェノール)]ホスファイト、トリス(1,3−ジ−ステアロイルオキシイソプロピル)ホスファイト、2−エチルヘキシルジフェニルホスファイト、デシルジフェニルホスファイト、フェニルジ−2−エチルヘキシルホスファイト、フェニルジデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、フェニルジ(トリデシル)ホスファイト、ジフェニルノニルホスファイト、ジフェニルイソオクチルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、ジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイト、ジブチルハイドロゲンホスファイト、4,4’−イソプロピリデンジフェノールアルキル(C12〜C15)ホスファイト、4,4’―ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル)ジ−トリデシルホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェノール)フルオロホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチル−6−メチルフェニル)・エチルフォスファイト、4,4’−イソプロピリデンビス(2−t−ブチルフェノール)・ジ(ノニルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジフェニルペンタエリスリトールジホスファイト、フェニル・4,4’−イソプロピリデンジフェノール・ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニル−ビスフェノールAペンタエリスリトールジホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト、テトラ(トリデシル)−1,1,3−トリス(2−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフエニル)ブタンジホスファイト、テトラ(C12〜C15混合アルキル)―4,4’−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)ジホスファイト、テトラキス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスフォナイト、テトラキス(2−メチル−4,6−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスフォナイト、ビス(オクチルフェニル)・ビス[4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)]・1,6−ヘキサンジオールジホスファイト、水素化−4,4’−イソプロピリデンジフェノールポリホスファイト、9、10−ジ−ヒドロ−9−オキサ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2−[{2,4,8,10−テトラキス(1,1−ジメチルエチル)ジベンゾ(D,F)(1,3,2)−ジオキサホスフェフィン−6−イル}オキシ]−N,N−ビス〔2−[{2,4,8,10−テトラキス(1,1−ジメチルエチル)ジベンゾ(D,F)(1,3,2)−ジオキサホスフェフィン−6−イル}オキシ]エチル〕エタンアミン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジ−トリデシルホスファイト−5−t−ブチルフェニル)ブタン、3,4,5,6−テトラベンゾ−1,2−オキサホスファン−2−オキシド等が挙げられる。
好ましくは、ペンタエリスリトール骨格を有さないものであり、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(3,5−ジ−t―ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチル−6−メチルフェニル)・エチルフォスファイト、テトラキス(2−メチル−4,6−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスフォナイトである。
本発明で用いられるリン系酸化防止剤としては、市販品を使用することもでき、例えば、イルガフォス168(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、イルガフォス38(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、GSY−P101(吉富ファインケミカル社製)、ウルトラノックス641(ジーイー・スペシャルティ・ケミカルズ社製)等が挙げられる。
本発明における上記リン系酸化防止剤の配合量は限定されないが、前記した全ポリプロピレン系樹脂組成物100質量部に対して0.05〜0.5質量部の範囲が好ましい。0.1〜0.4質量部がより好ましく、0.15〜0.3質量部がさらに好ましい。該配合量が0.05質量部未満では前述の酸化防止剤を併用する効果が減少するので好ましくない。逆に、0.5質量部を超えた場合は、前述した酸化防止剤を併用する効果が飽和し、該酸化防止剤のフィルム表面への移行によるフィルム白化や製膜工程における冷却ロールの汚染等が引き起こされるので好ましくない。
本発明で用いられるフェノール系酸化防止剤とは、分子内にフェノール誘導体を有する酸化防止剤であり、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,6−ジシクロヘキシル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−アミル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−オクチル−4−n−プロピルフェノール、2,6−ジシクロヘキシル−4−n−オクチルフェノール、2−イソプロピル−4−メチル−6−t−ブチルフェノール、2−t−ブチル−2−エチル−6−t−オクチルフェノール、2−イソブチル−4−エチル−6−t−ヘキシルフェノール、2−シクロヘキシル−4−n−ブチル−6−イソプロピルフェノール、dl−α−トコフェロール、t−ブチルヒドロキノン、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス[6−(1−メチルシクロヘキシル)−p−クレゾール]、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2’−ブチリデンビス(2−t−ブチル−4−メチルフェノール)、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレート、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2−チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート−ジエチルエステル、トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−t−ブチルベンジル)イソシアヌレート、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、トリス[(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル]イソシアヌレート、トリス(4−t−ブチル−2,6−ジメチル−3−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、2,4−ビス(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)テレフタレート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−{β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、2,2−ビス[4−(2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナモイルオキシ))エトキシフェニル]プロパン、β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリルエステル等が挙げられる。
好ましくは、β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリルエステル、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、dl−α−トコフェロール、トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−t−ブチルベンジル)イソシアヌレート、トリス[(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル]イソシアヌレート、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−{β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンである。
本発明で用いられるフェノール系酸化防止剤(D)としては、市販品を使用することもでき、例えば、イルガノックス1010(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、イルガノックス1076(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、イルガノックス1330(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、イルガノックス3114(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、イルガノックス1425WL(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)等が挙げられる。
本発明における上記フェノール系酸化防止剤の配合量は限定されないが、前記した全ポリプロピレン系樹脂組成物100質量部に対して0.05〜0.5質量部の範囲が好ましい。0.1〜0.4質量部がより好ましく、0.15〜0.3質量部がさらに好ましい。該配合量が0.05質量部未満では後述の酸化防止剤を併用する効果が減少するので好ましくない。逆に、0.5質量部を超えた場合は、前述した酸化防止剤を併用する効果が飽和し、該酸化防止剤のフィルム表面への移行によるフィルム白化や製膜工程における冷却ロールの汚染等が引き起こされるので好ましくない。
本発明で用いられる上記酸化防止剤や前記した結晶核剤を配合したポリプロピレン系樹脂組成物の調製方法は、特に制限されるものでなく、公知の方法が挙げられる。例えば、ニーダー、バンバリーミキサー、ロール等の混練機を用いて加熱溶融混練する方法、一軸又は二軸押出機等を用いて加熱溶融混練する方法等が挙げられる。また、各種の樹脂ペレットをドライブレンドしてもよい。該組成物の調製方法においては、該酸化防止剤や結晶核剤はそれぞれの粉末を直接添加してもよいし、予め前記したポリプロピレン系樹脂に混合したマスターバッチとして添加してもよい。マスターバッチとして添加する場合は添加剤別に調製しても、2種以上を混合して調製してもよい。また、上記添加剤が配合された市販樹脂をうまく組み合わせて実施してもよい。また、上記組成物は予め製膜工程に供給する組成物を調製しておき製膜用の押し出し機に供給してもよいし、該組成物を構成する成分を該製膜用の押し出し機に供給して調製して製膜してもよい
本発明の押出フィルムは、Tダイ法、またはインフレーション法等の公知の方法によって製膜された未延伸フィルムであり、フィルムの厚みは特に限定しないが、1〜500μmであるのが一般的であり、好ましい厚みのものが必要に応じ選択される。
本発明においては、本発明のポリプロピレン系樹脂フィルムは、フィルム中の最大直径が0.2mm以上のフィシュアイが0個/mであり、かつ最大直径が0.1mm以下のフィシュアイが100個/m以下であることが重要である。最大直径が0.1mm以下のフィシュアイも0個/m以下が最も好ましいが、経済性や市場の要求度等より上記範囲が好ましい。2〜80個/m以下がより好ましく、2〜60個/m以下がさらに好ましい。該対応により、外観不良や、例えば、保護フィルムの基材フィルムとして用いた場合に、前述した粘着不良によるメッキ液の保護部分への浸透による障害発生等を抑制することができる。
本発明においては、本発明のポリプロピレン系樹脂フィルムは、前述したごとく滑剤やアンチブロッキング剤を実質的に含有しない状態で、静摩擦係数が0.95以下であることが好ましい。0.9以下がより好ましく、0.8以下がさらに好ましい。静摩擦係数が0.95を越えると、フィルムの滑りが悪くなり、製膜上がりで巻き取り時に皺がはいることがある。0.95以下にすると、巻き取り時、しわが入りにくくなる。下限は、他の特性とのバランスにおいて0.4以上が好ましく、0.5以上がより好ましい。
静摩擦係数が0.95を越えると、フィルムの滑りが悪くなり、製膜上がりで巻き取り時に皺がはいることがある。0.95以下にすると、巻き取り時、しわが入りにくくなる。
また、本発明のポリプロピレン系樹脂フィルムは、耐ブロッキング性が350N/70mm以下であることが好ましい。330N/70mm以下がより好ましい。該耐ブロッキング性が350N/70mmを超えた時は、長期保管等によりフィルムのブロッキングが起こることがあるので好ましくない。
また、本発明においては、本発明のポリプロピレン系樹脂フィルムは、23℃におけるインパクト強度が0.6J以上であることが好ましい。0.7J以上がより好ましい。該インパクト強度が低下すると包装袋や保護フィルム等として用いた場合の使用時の耐衝撃性に対する信頼性が低下するので、前述した特性を付与した上で本特性を満たすことが好ましい。該特性は前述したポリプロピレン系ブロック共重合樹脂により付与することができる。上限は他の特性とのバランスより1.0J程度が好ましい。
上記滑り性、耐ブロッキング性およびインパクト強度を付与する方法は限定されないが、ゴム量の影響を大きく受ける。該ゴム量を含めた本明細書に記述する好ましい実施態様の総合効果として達成するのが好ましい。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、もとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適宜変更を加えて実施することも可能であり、それらは、いずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
尚、本明細書中で採用した測定、評価方法は次の通りである。
[1]メルトフローレート[MFR]
JIS K7210に従い、条件−14の方法(荷重2.16kg、温度230℃)で測定した。
[2]ブロック共重合樹脂中のゴム成分含有量
(1)20℃キシレン可溶部
試料1gを沸騰キシレン100mlに完全に溶解させた後、20℃に降温し、4時間放置する。その後、これを析出物と溶液とにろ別し、ろ液を乾固して減圧下70℃で乾燥した。その重量を測定して含有%(重量)を求めた。
(2)20℃キシレン可溶部(CXS)の分子量5万以下の成分(L−CXS)
CXSの分子量分布をGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により、下記の条件で測定し、下式によりL−CXSを決定した。また、検料量線は標準ポリスチレンを用いて作成した。L−CXS=全CXS含量×W/100(ただし、WはGPCより求めたポリスチレン換算の分子量5万以下の成分の含有量(wt%)である。)
機種 150CV型(ミリポアウォーターズ社製)
カラム Shodex M/S 80
測定温度 145℃
溶媒 オルトジクロロベンゼン
サンプル濃度 5mg/8ml
上記のL−CXSをゴム成分含有量とした。
[3]三次元表面平均粗さ(SRa)
株式会社小阪研究所社製の三次元表面粗さ測定器(型式ET−30HK)を用いて、下記条件で測定して、平均表面粗さ(SRa)で表示した。
設定条件
針圧[mg]:20mg
測定長さ[mm]:1.0
測定速度[mm/S]:0.1
測定ピッチ(Xピッチ)[μm]:2.0μm
(Yピッチ)[μm]:2.0μm
測定面1mm×0.2mm
Z測定倍率:20000
カットオフ[mm](低域カット):0.08
(高域カット):R+W
レべリング:最小二乗法
全体図 (Y倍率)/(X倍率)=5
(Z倍率)/(X倍率)=50
(視点角度)=30°
[4]ヘーズ値
JIS−K−6714に準拠し、東洋精機製作所製の「ヘーズテスターJ」を用いて測定した。
[5]耐ブロッキング性
ブロッキング性をフィルム製膜時に冷却ロール面に接した面を重ね合わせ、その重ねた表面にトレーシングペーパーを重ねて温風乾燥機に入れ、50℃×30分でシーズニングを行う。その時にサンプルがずれないようにクリップ又はホッチキスで仮止めをしておく。そのサンプルを50℃のヒートプレス機にかけて、40kg/cm×15分間圧力化におく。そのサンプルを巾70mmにカットして、フイルム2枚にした状態でフイルム間の剥離にはφ6mm×巾330mmのアルミ製バーを用い、100mm/分の速度での剥離抵抗を読み取る。測定は、4回行いその平均値を求める。
[6]静摩擦係数
フィルムの表面と裏面を合わせて滑り性をJIS−K7215−1987に準拠して測定した。
[7]インパクト強度
ASTM D3420準拠し、サンプルは、縦方向に55〜60cm横方向に9〜10cmにカットする。23℃の部屋でインパクトテスターを使い打ち抜いた時の強度値を小数点以下第1位まで読み取る。その操作を10回繰り返して、その平均値を求める。
[8]フィッシュアイ
成型されたフィルムを流れ方向に33.3cm×流れ方向に対して横方向に30cm切り取り、フィルムの下から蛍光灯を照射した板の上に置き、透過光で目視により観察し、0.1mm以上のフィッシュアイを計測する。次に、カウントしたフィッシュアイを液体窒素中に浸して、硬くした状態で、剃刀で半分に切りそのフィッシュアイの断面を顕微鏡で50〜300倍で観察することにより、核となる物質が無ければ、例えば、セルロースなどを代表とする異物が無ければ、それは未溶融の塊り、原料の一部がゲル化したための塊り、成形中の材料の部分的劣化による塊り等のゲル起因のフィッシュアイと判定する。核がある場合は、異物起因のフィッシュアイと判定しカウントから除外する。
(実施例1)
リン系酸化防止剤としてイルガホス168(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製)を0.22質量%およびフェノール系酸化防止剤としてイルガノックス1010(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製)を0.28質量%を含有したゴム成分量が18.9質量%で、エチレン含有量が9.0質量%のブロック共重合ポリプロピレン樹脂(MFR=2)89質量部、エチレン含有量が0.5質量%のランダム共重合ポリプロピレン樹脂(MFR=7)10質量部およびアクリレート系酸化防止剤であるスミライザーGS(住友化学(株)社製)5質量%を含むホモポリプロピレン樹脂(MFR=7)よりなるアクリレート系酸化防止剤を含むマスターバッチ樹脂(M−2)1質量部をTダイ製膜機にて溶融押出しを行い、冷却ロール温度40℃で厚み50μmの未延伸フィルムを得た。なお、押し出し機出口とダイスとの間に平均孔径40μmのフィルターを設置し原料樹脂組成物のろ過を実施した。その結果を表1に示す。
本実施例で得られたポリプロピレン系樹脂フィルムは、表1に示したいずれの特性も良好であり高品質であった。
(実施例2および3)
実施例1の方法において、それぞれゴム成分量が6.5および28.0質量%で、エチレン含有量がそれぞれ4.0および15質量%のブロック共重合ポリプロピレン樹脂を用いる以外は、実施例1と同様の方法で実施例2および3のポリプロピレン系樹脂フィルムを得た。その結果を表1に示す。
これらの実施例で得られたポリプロピレン系樹脂フィルムは、実施例1で得られたポリプロピレン系樹脂フィルムと同等の特性を有しており高品質であった。
(実施例4)
実施例1の方法において、ブロック共重合ポリプロピレン樹脂に替えて、ホモポリプロピレン樹脂(MFR=3)81質量部とEPR系の熱可塑性エラストマー(MFR=0.7g/10分)11質量部よりなる混合樹脂を用いるように変更する以外は、実施例1と同様の方法で実施例4のポリプロピレン系樹脂フィルムを得た。その結果を表1に示す。
本実施例で得られたポリプロピレン系樹脂フィルムは、実施例1で得られたポリプロピレン系樹脂フィルムと同等の特性を有しており高品質であった。
参考例1
実施例1の方法において、ブロック共重合ポリプロピレン樹脂へのリン系酸化防止剤であるイルガホス168(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製)の配合を取り止め、かつフェノール系酸化防止剤であるイルガノックス1010(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製)の配合量を4500ppmに変更する以外は、実施例1と同様の方法で実施例4のポリプロピレン系樹脂フィルムを得た。その結果を表1に示す。
参考例2
実施例1の方法において、ブロック共重合ポリプロピレン樹脂へのフェノール系酸化防止剤であるイルガノックス1010(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製)の
の配合を取り止め、かつリン系酸化防止剤であるイルガホス168(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製)の配合量を4500ppmに変更する以外は、実施例1と同様の方法で参考例1のポリプロピレン系樹脂フィルムを得た。その結果を表1に示す。
(比較例1)
実施例1の方法において、アクリレート系酸化防止剤を含むマスターバッチ樹脂(M−2)の供給を取り止め、替わりブロック共重合ポリプロピレン樹脂へのイルガホス168(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製)を0.28質量%に増量し、かつランダム共重合ポリプロピレン樹脂の供給を11質量%に変更する以外は、実施例1と同様の方法で比較例4のポリプロピレン系樹脂フィルムを得た。その結果を表2に示す。
本比較例で得られたポリプロピレン系樹脂フィルムは、酸化防止剤の総量の配合量は実施例1のポリプロピレン系樹脂フィルムと等しいにも拘らずフィッシュアイが多く低品質であった。
(比較例2)
実施例1の方法において、リン系酸化防止剤およびフェノール系酸化防止剤の配合を取り止めたブロック共重合ポリプロピレン樹脂を用い、その代りにアクリレート系酸化防止剤であるスミライザーGS(住友化学(株)社製)5質量%を含むホモポリプロピレン樹脂(MFR=7)よりなるアクリレート系酸化防止剤を含むマスターバッチ樹脂(M−2)の供給量を3質量部に増量し、ランダム共重合ポリプロピレン樹脂の供給量を8質量部に減量するように変更する以外は、実施例1と同様の方法で比較例2のポリプロピレン系樹脂フィルムを得た。その結果を表2に示す。
本比較例で得られたポリプロピレン系樹脂フィルムは、フィッシュアイが多く低品質であった。また、滑り性も劣っていた。さらに冷却ロールの汚染が増大した。
(比較例3)
実施例1の方法において、ブロック共重合ポリプロピレン樹脂に換えてホモポリプロピレン樹脂(MFR=3)を用いるように変更する以外は、実施例1と同様の方法で比較例3のポリプロピレン系樹脂フィルムを得た。その結果を表2に示す。
本比較例で得られたポリプロピレン系樹脂フィルムは、ヘーズ値が低く高透明であり、かつフィッシュアイが少ない点では高品質であるが、滑り性や耐ブロッキング性が劣り、フィルムの取り扱い性が悪く実用的でなかった。また、インパクト強度も低かった。
Figure 0005114724
Figure 0005114724
本発明のポリプロピレン系樹脂フィルムは耐衝撃性に優れており、かつフィッシュアイの混入が高度に抑制され、かつフィルムの滑り性が良好であるので、例えば、食品や医薬品等の各種物品の包装袋材料や各種物品の加工、組み立て、輸送あるいは保存における該物品の表面等を保護する表面保護フィルム等の材料として好適に用いることができる。
従って、産業界に寄与することが大である。

Claims (4)

  1. ゴム成分を3.0質量%以上、30質量%以下含有し、滑剤及びアンチブロッキング剤を実質的に含有しないポリプロピレン系樹脂組成物100質量部に対して、2,4−ジ−t−アミル−6−[1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル]フェニルアクリレート、2,4−ジ−t−アミル−6−[1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ブチル]フェニルアクリレート、2,4−ジ−t−アミル−6−[1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)プロピル]フェニルアクリレート、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレートのうち少なくとも1種を0.0〜0.1質量部、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(3,5−ジ−t―ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチル−6−メチルフェニル)・エチルフォスファイトのうち少なくとも1種のリン系酸化防止剤を0.05〜0.3質量部、およびβ−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリルエステル、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス[(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル]イソシアヌレートのうち少なくとも1種のフェノール系酸化防止剤を0.05〜0.3質量部配合した組成物よりなり、フィルムの摩擦係数が0.4〜0.9であることを特徴とするポリプロピレン系樹脂フィルム。
  2. フィルム中の滑剤の含有率が50ppm以下であることを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂フィルム。
  3. フィルム中のアンチブロッキング剤の含有率が50ppm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリプロピレン系樹脂フィルム。
  4. フィルム中の最大直径が0.2mm以上のフィッシュアイが0個/999cmであり、かつ最大直径が0.1mm以上のフィッシュアイが8個/999cm以下であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂フィルム。
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