以下、この発明の実施例について図面を参照して説明する。なお、以下の説明における前後左右等の向きは、特に記載が無ければ車両における向きと同一とする。また、図中矢印FRは車両前方を、矢印LHは車両左方を、矢印UPは車両上方をそれぞれ示す。
図1は、自動二輪車等の鞍乗り型車両の原動機であるエンジン(内燃機関)1の左側面図である。エンジン1は、クランクシャフト10の回転中心軸線(クランク軸線)C1を車幅方向(左右方向)に沿わせた並列四気筒エンジンであり、そのクランクケース20上には、シリンダ30が前傾姿勢(上部が前側に位置するように傾斜した姿勢)で立設される。
シリンダ30内にはクランク軸線C1に沿って並んだ各気筒に対応するピストン40が往復動可能に嵌装され、該各ピストン40の往復動がコンロッド40aを介してクランクシャフト10の回転動に変換される。シリンダ30の後部にはスロットルボディ48が接続され、シリンダ30の前部には排気管49が接続される。なお、図中線C2はシリンダ30の起立方向に沿うシリンダ中心軸線(シリンダ軸線)を示す。
クランクケース20後方にはミッションケース20aが一体に連なり、該ミッションケース20a内にはトランスミッション29が収容されると共に、ミッションケース20aの右側部内にはクラッチ28が収容され、これらクラッチ28及びトランスミッション29を介して、クランクシャフト10の回転動力がエンジン外部に出力される。
シリンダ30は、クランクケース20上に一体形成される(又は別体として取り付けられる)シリンダ本体30aと、該シリンダ本体30a上に取り付けられるシリンダヘッド2と、該シリンダヘッド2上に取り付けられるヘッドカバー3とを有してなる。シリンダヘッド2及びヘッドカバー3が形成する動弁室4内には、吸排気バルブ6,7駆動用の動弁装置(動弁系)5が収容される。
シリンダヘッド2の前後には各気筒に対応する吸排気ポート8,9が形成され、該吸排気ポート8,9がそれぞれ形成する一対の燃焼室側開口が、それぞれ吸排気バルブ6,7により開閉される。ここで、エンジン1は四バルブ式であり、気筒毎にそれぞれ左右一対の吸排気バルブ6,7を有する。
図2を参照し、吸排気バルブ6,7は、それぞれ前記燃焼室側開口に整合する傘状の弁体6a,7aから棒状のステム6b,7bを動弁室4側に延出してなる。吸排気バルブ6,7のステム6b,7bは、バルブガイド6c,7cを介してシリンダヘッド2に往復動可能に保持される。各ステム6b,7bの動弁室4側の先端部にはリテーナ6d,7dが取り付けられ、該リテーナ6d,7dとシリンダヘッド2に形成した座面との間にはバルブスプリング6e,7eが縮設され、該バルブスプリング6e,7eのバネ力により、吸排気バルブ6,7が上方に付勢されてその弁体6a,7aで前記燃焼室側開口を閉塞する。一方、前記バルブスプリング6e,7eの付勢力に抗して吸排気バルブ6,7を下方にストロークさせることで、該吸排気バルブ6,7の弁体6a,7aが燃焼室側開口から離間してこれを開放する。
吸排気バルブ6,7のステム6b,7bは、側面視V字状をなすようにシリンダ軸線C2に対して傾斜して設けられる。各ステム6b,7bの上方には、左右方向に沿う吸気側カムシャフト11及び排気側カムシャフト12がそれぞれ配設される。各カムシャフト11,12は、その軸回りに回転可能となるようにシリンダヘッド2に支持され、エンジン1の運転時にはチェーン式伝動機構を介して前記クランクシャフト10と連係して回転駆動する。なお、図中符号C3,C4は各カムシャフト11,12の中心軸線(カム軸線)を示す。
一気筒分の左右一対の吸気バルブ6は、気筒毎に設けられた吸気側ロッカーアーム13を介して吸気側カムシャフト11のカム11Aに押圧されて開閉作動する。同様に、一気筒分の左右一対の排気バルブ7は、気筒毎に設けられた排気側ロッカーアーム17を介して排気側カムシャフト12のカム12Aに押圧されて開閉作動する。
吸気側ロッカーアーム13は、吸気バルブ6のステム6b先端部の後方において吸気側カムシャフト11と平行に配設された吸気側ロッカーアームシャフト14に、その軸回りに揺動可能かつ軸方向にスライド移動可能に支持される。また、排気側ロッカーアーム17は、排気バルブ7のステム7b先端部の前方において排気側カムシャフト12と平行に配設された排気側ロッカーアームシャフト18に、その軸回りに揺動可能かつ軸方向にスライド移動可能に支持される。なお、図中符号C5,C6は各ロッカーアームシャフト14,18の中心軸線(ロッカー軸線)を示す。
図3,5を併せて参照し、吸気側ロッカーアーム13における吸気側ロッカーアームシャフト14を挿通する円筒状の基部(シャフト挿通ボス)13aからは、吸気バルブ6のステム6b先端部に向けてアーム部13bが延出し、該アーム部13bの先端部上側には、吸気側カムシャフト11のカム11Aを摺接させるカム摺接部13cが設けられ、アーム部13bの先端部下側には、ステム6b先端部に当接してこれを下方に押圧するバルブ押圧部13dが設けられる。
なお、排気側ロッカーアーム17の詳細な図示は略すが、該排気側ロッカーアーム17も吸気側ロッカーアーム13と同様、排気側ロッカーアームシャフトを挿通する円筒状の基部(シャフト挿通ボス)と、該シャフト挿通ボスから排気バルブ7のステム7b先端部に向けて延出するアーム部と、該アーム部の先端部上側に設けられて排気側カムシャフト12のカム12Aを摺接させるカム摺接部と、前記アーム部の先端部下側に設けられてステム7b先端部に当接してこれを下方に押圧するバルブ押圧部とを有してなる。
そして、エンジン1の運転時には、各カムシャフト11,12がクランクシャフト10と連係して回転駆動し、各カム11A,12Aの外周パターンに応じて各ロッカーアーム13,17を適宜揺動させることで、該各ロッカーアーム13,17が吸排気バルブ6,7をそれぞれ押圧し、該吸排気バルブ6,7を適宜往復動させて吸排気ポート8,9の燃焼室側開口を開閉させる。
図17,18を参照し、各カムシャフト11,12の左端部には、比較的大径のカムドリブンスプロケット51が同軸かつ一体回転可能に取り付けられる。一方、クランクシャフト10の左側部には、比較的小径のカムドライブスプロケット52が同軸かつ一体回転可能に設けられる。各スプロケット51,52には無端状のカムチェーン53が巻き掛けられ、これら各スプロケット51,52及びカムチェーン53を介して、各カムシャフト11,12がクランクシャフト10と連係して回転駆動する。シリンダ30の左側部内には、カムチェーン53等を収容するカムチェーン室54が設けられる。
カムチェーン53におけるシリンダ前側に位置する部位は、カムドライブスプロケット52による引き込み側(張り側)とされ、カムチェーン53におけるシリンダ後側に位置する部位は、カムドライブスプロケット52からの送り出し側(弛み側)とされる。カムチェーン53は、左右方向と直交する平面に沿って各スプロケット51,52に渡って巻き掛けられる。
カムチェーン室54の前側には、カムチェーン53の張り側に前方(外周側)から摺接してその進行方向を案内するカムチェーンガイド55が固定的に設けられる。一方、カムチェーン室54の後側には、カムチェーン53の弛み側に後方(外周側)から摺接してその進行方向を案内すると共に適正な張力を付与する(弛みを除去する)テンショナアーム(カムチェーンテンショナ)56が設けられる。テンショナアーム56は、不図示のリフターによりカムチェーン53側に押圧されている。
ここで、前記動弁装置5は、各バルブ6,7のバルブ開閉タイミングやリフト量を変化可能な可変動弁装置として構成されている。動弁装置5は、例えばエンジン回転数が6000rpm(Revolutions Per Minute)未満の低速回転域では各カムシャフト11,12における低速回転用のカムを用いて各バルブ6,7を開閉作動させると共に、エンジン回転数が6000rpm以上の高速回転域では各カムシャフト11,12における高速回転用のカムを用いて各バルブ6,7を開閉作動させる。
以下、動弁装置5における一気筒分の吸気側を例に説明するが、他の気筒の吸気側及び各気筒の排気側も同様の構成を有するものとしてその説明は省略する。
図3を参照し、前記カムシャフト11のカム11Aは、前記低速回転域用の左右第一カム15a,16a、及び高速回転域用の左右第二カム15b,16bからなる。すなわち、カムシャフト11は、一気筒当たりに左右第一カム15a,16a及び左右第二カム15b,16bの計四つのカムを有する。
左右第一カム15a,16aは互いに同一形状とされ、左右第二カム15b,16bは互いに同一形状とされる。左第一カム15aと左第二カム15bとは気筒左側において互いに左右方向(カム軸方向)で隣接し、右第一カム16aと右第二カム16bとは気筒右側において互いに左右方向(カム軸方向)で隣接する。
ロッカーアーム13は、ロッカーアームシャフト14にその軸回り(ロッカー軸線C5中心、以下、軸C5回りということがある)に揺動可能かつ軸方向(ロッカー軸線C5に沿う方向、以下、軸C5方向ということがある)に移動可能に支持される。ロッカーアーム13は、左右吸気バルブ6に渡るように左右方向で幅広かつ一体に設けられる。ロッカーアーム13のカム摺接部13c及びバルブ押圧部13dは、それぞれ左右に離間して一対に設けられる。
ロッカーアーム13は、エンジン1の運転停止時及び低速回転域での運転時には軸C5方向で左方への移動限界位置にあり(図3(a)参照)、この状態において、ロッカーアーム13の左右カム摺接部13cは、それぞれ左右第一カム15a,16aの下方においてその外周面(カム面)に摺接可能な位置に配置される。
ロッカーアーム13の左右バルブ押圧部13dは、左右カム摺接部13cよりも左右方向(軸C5方向)で幅広に設けられ、ロッカーアーム13が前記左方への移動限界位置にある場合には、左右バルブ押圧部13dの右側部が左右吸気バルブ6のステム6b先端部を押圧可能な位置に配置される。このときのロッカーアーム13の軸C5方向での位置を第一作動位置とする。
一方、ロッカーアーム13は、エンジン1の高速回転域での運転時には軸C5方向で右方への移動限界位置にあり(図3(b)参照)、この状態において、ロッカーアーム13の左右カム摺接部13cは、それぞれ左右第二カム15b,16bの下方においてその外周面(カム面)に摺接可能な位置に配置される。
ロッカーアーム13の左右バルブ押圧部13dは、ロッカーアーム13が前記右方への移動限界位置にある場合には、左右バルブ押圧部13dの左側部が左右吸気バルブ6のステム6b先端部を押圧可能な位置に配置される。このときのロッカーアーム13の軸C5方向での位置を第二作動位置とする。
そして、ロッカーアーム13が第一作動位置にある場合には、該ロッカーアーム13が左右第一カム15a,16aの外周パターンに応じて揺動して吸気バルブ6を開閉作動させる。一方、ロッカーアーム13が第二作動位置にある場合には、該ロッカーアーム13が左右第二カム15b,16bの外周パターンに応じて揺動して吸気バルブ6を開閉作動させる。
図2を併せて参照し、第一及び第二カム15a,16a,15b,16bは、それぞれカム軸線C3を中心とした円筒状のベース面F1と、所定の回転方向位置においてベース面F1よりも外周側に山形に突出するリフト面F2とを有する。左右第一カム15a,16aのリフト面F2の突出量(リフト量)は、左右第二カム15b,16bのそれよりも小さくされる。これら各カム15a,16a,15b,16bのベース面F1がロッカーアーム13のカム摺接部13cに対向、摺接する場合には、吸気バルブ6が全閉とされた(リフト量が0とされた)バルブ閉状態となり、リフト面F2がカム摺接部13cに対向、摺接する場合には、吸気バルブ6がバルブスプリング6eの付勢力に抗して所定量開いた(所定量リフトした)バルブ開状態となる。なお、第一カム15a,16aのリフト量を0としてもよい(すなわち休止カムとしてもよい)。
図3,4を参照し、動弁装置5は、エンジン回転数に応じて後に詳述する第一及び第二ロッカーアーム移動機構21,22にロッカーアーム13を前記軸C5方向に移動させる力を蓄え、該力によってロッカーアーム13を前記第一作動位置及び第二作動位置の何れかに移動させることで、吸気バルブ6の開閉作動に左右第一カム15a,16a及び左右第二カム15b,16bの何れかを選択的に用いることを可能とする。
第一ロッカーアーム移動機構21は、ロッカーアーム13のシャフト挿通ボス13aの左方に位置して該シャフト挿通ボス13aの左端部に前記第一作動位置側(低速回転側)から第二作動位置側(高速回転側)への力を付与する第一スプリング23と、該第一スプリング23の左方に位置してロッカーアームシャフト14の外周に固定的に支持される第一スプリング受けカラー25とを有する。
同様に、第二ロッカーアーム移動機構22は、ロッカーアーム13のシャフト挿通ボス13aの右方に位置して該シャフト挿通ボス13aの右端部に前記第二作動位置側から第一作動位置側への力を付与する第二スプリング24と、該第二スプリング24の右方に位置してロッカーアームシャフト14の外周に固定的に支持される第二スプリング受けカラー26とを有する。
各スプリング23,24は圧縮コイルスプリングであり、ロッカーアームシャフト14の外周を巻回するように該ロッカーアームシャフト14を挿通させる。第一スプリング23の右端部はロッカーアーム13のシャフト挿通ボス13aの左端部外周に嵌合し、第一スプリング23の左端部は第一スプリング受けカラー25の右内周に嵌合する。一方、第二スプリング24の左端部はロッカーアーム13のシャフト挿通ボス13aの右端部外周に嵌合し、第二スプリング24の右端部は第二スプリング受けカラー26の左内周に嵌合する。
ここで、ロッカーアームシャフト14は、その軸方向で移動可能にシリンダヘッド2に支持されている。
ロッカーアームシャフト14及び各スプリング受けカラー25,26は、エンジン1における運転停止時及び低速回転域を維持しての運転時(低速運転時)には、その軸方向で左方への移動限界位置にある。このとき、ロッカーアーム13は前記第一作動位置にあり(図3(a)参照)、このロッカーアーム13のシャフト挿通ボス13aと前記各スプリング受けカラー25,26との間には、それぞれ各スプリング23,24が所定の初期圧縮がなされた状態で縮設される。
一方、ロッカーアームシャフト14及び各スプリング受けカラー25,26は、エンジン1における高速回転域を維持しての運転時(高速運転時)には、その軸方向で右方への移動限界位置にある。このとき、ロッカーアーム13は前記第二作動位置にあり(図3(b)参照)、このロッカーアーム13のシャフト挿通ボス13aと前記各スプリング受けカラー25,26との間にも、前記同様に各スプリング23,24が前記同様の初期圧縮がなされた状態で縮設される。
そして、ロッカーアーム13を各作動位置の一方から他方へ移動させるときには、後に詳述する移動規制機構31によりロッカーアーム13の前記軸C5方向での移動を規制した状態で、ロッカーアームシャフト14及び各スプリング受けカラー25,26をシリンダヘッド2に対して軸C5方向で一体的に移動させることで、各スプリング23,24間に所定の弾性力差を生じさせる。
具体的には、ロッカーアームシャフト14及び各スプリング受けカラー25,26をシリンダヘッド2に対して前記左方への移動限界位置から右方への移動限界位置に移動させることで(図7(a)参照)、その移動分だけ第一スプリング23を圧縮して弾性力を増加させると共に、第二スプリング24を伸長させて弾性力を減少させる。一方、ロッカーアームシャフト14及び各スプリング受けカラー25,26をシリンダヘッド2に対して前記右方への移動限界位置から左方への移動限界位置に移動させることで(図12参照)、その移動分だけ第二スプリング24を圧縮して弾性力を増加させると共に、第一スプリング23を伸長させて弾性力を減少させる。
このように各スプリング23,24間に生じさせた弾性力差(各スプリング23,24の何れかに蓄力した弾性力)を用いて、ロッカーアーム13を各作動位置の一方から他方へ移動させることが可能となる。
図3〜6を参照し、移動規制機構31は、各スプリング23,24の何れかに所定の弾性力を蓄力するまでロッカーアーム13の前記軸C5方向での移動を規制するもので、シリンダヘッド2にロッカーアームシャフト14と平行な支持軸32を介してその軸回りに揺動可能かつ軸方向で移動不能に支持されるトリガーアーム33と、該トリガーアーム33の左右一対の係合爪を選択的に係合させるべく前記ロッカーアーム13のシャフト挿通ボス13aに形成される左右に並ぶ三つの係合溝36a,36b,36cと、該各係合溝36a,36b,36c間に形成される左右一対の棚部38,39と、ロッカーアーム13のシャフト挿通ボス13a及びロッカーアームシャフト14を前記軸C5方向と直交する方向(軸C5直交方向)で上下に貫通するトリガーピン37とを有してなる。
図2,5を参照し、トリガーアーム33の支持軸32は、ロッカーアームシャフト14の上方かつシリンダ外側(シリンダ軸線C2から離間する側)にオフセットして設けられる。
図6を参照し、トリガーアーム33は、支持軸32を挿通する円筒状の基部33aと、該基部33aからロッカーアームシャフト14側に延びる左右係合爪34,35と、該左右係合爪34,35の基端側(基部33a近傍)の間を接続する連結壁33bとを有してなる。
左右係合爪34,35は、それぞれ支持軸32の軸方向(前記軸C5方向でもある)と直交する厚板状のもので、軸C5方向に沿う矢視(軸C5方向視)で三角形状をなしてロッカーアーム13のシャフト挿通ボス13aの上端近傍に向けて延出する(図5参照)。
トリガーアーム33は、左右係合爪34,35の下縁部34a,35aをシャフト挿通ボス13a側に上方から押し付ける側(図5中左回り)に付勢されており、ロッカーアーム13が各作動位置の何れかにあるときには、左右係合爪34,35が各係合溝36a,36b,36cの何れかにその底部近傍まで差し込まれる(図4参照)。このときのトリガーアーム33の状態を該トリガーアーム33の揺動前状態とする。
この状態で、ロッカーアーム13の前記軸C5方向でのスライド移動が不能とされる。一方、トリガーアーム33がロッカーアーム13と反対側(離反する側)に揺動して左右係合爪34,35の各係合溝36a,36b,36c(各棚部38,39)との係合を解除した状態では、前記軸C5方向でのスライド移動が可能とされる。
図5,6を参照し、左右係合爪34,35の下縁部34a,35aは、前記支持軸32の軸方向と平行な端面を形成するもので、前記軸C5方向視で互いに異なる形状を有する。一方、シャフト挿通ボス13aの上端近傍に位置する前記各棚部38,39の上端部38a,39aも、前記軸C5方向に平行な端面を形成するもので、前記軸C5方向視で互いに異なる形状を有する。これら各係合爪34,35同士及び各棚部38,39同士の形状の相違により、各係合爪34,35の各係合溝36a,36b,36cに対する係合解除タイミングが異なるものとされる。
ここで、図3,4を参照し、左係合爪34の前記軸C5方向での幅(厚さ)は、右係合爪35のそれよりも大きくされる。一方、各係合溝36a,36b,36cにおける前記軸C5方向での幅は、左係合爪34を係合可能な幅(左係合爪34と同等の幅)とされる。
そして、左係合爪34が中央係合溝36bに係合すると共に、右係合爪35が右係合溝36cに係合した状態(ロッカーアーム13が第一作動位置にある状態、図3(a)、図4参照)において、右係合爪35の右側面は右係合溝36cの右内側面に近接(ほぼ当接)し、右係合爪35の左側面は右係合溝36cの左内側面との間に所定の間隙Sを形成する。
一方、左係合爪34が左係合溝36aに係合すると共に、右係合爪35が中央係合溝36bに係合した状態(ロッカーアーム13が第二作動位置にある状態、図3(b)、図11参照)において、右係合爪35の左側面は中央係合溝36bの左内側面に近接(ほぼ当接)し、右係合爪35の右側面は中央係合溝36bの右内側面との間に前記間隙Sを形成する。
図7を参照し、トリガーアーム33は、ロッカーアームシャフト14の軸方向移動に伴う後述のトリガーピン37の作動により、前記揺動前状態から所定量だけロッカーアーム13と反対側に揺動した一次揺動状態となる。この一次揺動状態は、ロッカーアーム13がバルブ6を開く前に作り出される。この一次揺動状態において、各係合爪34,35の下縁部34a,35aは各棚部38,39の上端部38a,39aと前記軸C5方向視で所定量だけ重なり合い(各係合溝36a,36b,36cの何れかに軸C5方向で係合し)、ロッカーアーム13の軸C5方向での移動を規制する。
トリガーアーム33が一次揺動状態にあるときに、ロッカーアーム13が揺動してバルブ6をリフトさせると(図8、図9(a)参照)、これに伴うシャフト挿通ボス13aの回動により、左係合爪34に隣接する左棚部38の上端部38aが下降し、該上端部38aと左係合爪34の下縁部34aとの軸C5方向視での重なり代が無くなる(これらの軸C5方向での係合が解除される)。一方、右係合爪35に隣接する右棚部39の上端部39aはやや上昇する。すなわちこの時点では、右係合爪35と右棚部39との軸C5方向視での重なり代は確保される(これらの軸C5方向での係合が維持される)。
この状態で、前記各ロッカーアーム移動機構21,22の何れかからのロッカーアーム13に力が付与されると、前記右係合爪35と右係合溝36cとの間の間隙S分だけロッカーアーム13がスライド移動し、左係合爪34の下縁部34aが左棚部38の上端部38aに間隙S分だけ乗り上げる(図9(b)参照)。
さらにこの状態で、ロッカーアーム13がバルブを閉じる側に揺動すると、下降していた左棚部38の上端部38aが上昇すると共に上昇していた右棚部39の上端部39aが下降し、左係合爪34ひいてはトリガーアーム33がロッカーアーム13と反対側にさらに揺動する(図10(a)参照)。すると、右係合爪35の下縁部35aと右棚部39の上端部39aとの軸C5方向での重なり代が無くなり(これらの軸C5方向での係合が解除され)、その結果、ロッカーアーム13が各作動位置の一方から他方までスライド移動することが可能となる(図10(b)参照)。
図5,6を参照し、トリガーアーム33の左右係合爪34,35の下縁部34a,35aは、その基端側(基部33a側)では前記軸C5方向視で互いに重なるように設けられるが、右係合爪35の下縁部35aの先端側はその基端側と面一となるように直線状に設けられ、左係合爪34の下縁部34aの先端側はその基端側に対して先細りとなるように上向きに傾斜して設けられる。この傾斜面34bは、右係合爪35が右棚部39との係合を解除するタイミングになった際に、左棚部38における後述の当接面38bと略平行になってこれに当接するものである。
図4,5を参照し、ロッカーアーム13の左右棚部38,39は、シャフト挿通ボス13aから軸C5方向視で略台形状をなして概ねアーム部13bの基端側に向けて突出する。右棚部39の上端部39aは、前記軸C5方向視でシャフト挿通ボス13aの接線方向に沿うように平坦状に設けられる。
一方、左棚部38の上端部38aは、前記軸C5方向視で右棚部39の上端部39aに対して傾斜し、トリガーアーム33に近い側ほどシャフト挿通ボス13aからの突出量を減少させると共に、トリガーアーム33から遠い側ほどシャフト挿通ボス13aからの突出量を増加させるように設けられる。すなわち、左右棚部38,39の上端部38a,39aは、軸C5方向視で互いに交差するように設けられる。
さらに、左棚部38の上端部38aにおけるトリガーアーム33から遠い側の端部は、軸C5方向視で面取り状に切り欠かれ、もって当該部位がトリガーアーム33から遠い側ほどシャフト挿通ボス13aからの突出量を減少させるように傾斜し、左棚部38の上端部38a全体が軸C5方向視でヘの字状に屈曲して設けられる。
このような左棚部38の上端部38aは、左係合爪34の下縁部34aが乗り上げ、この後のロッカーアーム13の揺動により左係合爪34(トリガーアーム33)がロッカーアーム13と反対側に揺動し、右係合爪35が右棚部39との係合を解除するタイミングになるまで、左係合爪34の下縁部34aを連続的に当接させる載置面を形成する。
左棚部38の上端部38aにおけるトリガーアーム33に近い側の比較的大きな平坦部分(一般部分)は、左係合爪34の下縁部34aが乗り上げる際、及びその後に該左係合爪34(トリガーアーム33)がロッカーアーム13と反対側に揺動して右係合爪35が右棚部39との係合を解除するタイミングになるまでの間に、左係合爪34の下縁部34aを連続的に当接させる。
一方、左棚部38の上端部38aにおけるトリガーアーム33から遠い側の比較的小さな平坦部分は、前記右係合爪35が右棚部39との係合を解除するタイミングになった際に、左係合爪34の下縁部34aの先端側(前記傾斜面34b)と軸C5方向視で略平行となってこれに当接する当接面38bとされる。すなわち、比較的小さな当接面38bの高さ等を変更するのみで、右係合爪35が右棚部39との係合を完全に解除するタイミング(ひいてはカム切り替えタイミング)の微調整が可能である。
図3,4,5を参照し、ロッカーアーム13のシャフト挿通ボス13aの左右両側には、トリガーアーム33の係合が解除された際に前記スライド移動を所定量に規制するべくトリガーアーム33に当接する左右位置規制部41,42がそれぞれ設けられる。
左右位置規制部41,42は、軸C5方向と直交する厚板状のもので、シャフト挿通ボス13aの周方向で左右棚部38,39よりもややトリガーアーム33側にずれた位置において、シャフト挿通ボス13aから軸C5方向視で方形状をなして上方に突出する。左右位置規制部41,42は軸C5方向視で互いに同一形状をなし、かつ軸C5方向視で左右棚部38,39よりも大きく設けられる。左位置規制部41は左係合溝36aの左内側面を上方に面一に延長するように設けられ、右位置規制部42は右係合溝36cの右内側面を上方に面一に延長するように設けられる。
図4を参照し、ロッカーアーム13が第一作動位置にある状態において、右係合溝36cの右内側面(及び右位置規制部42の右側面)には、トリガーアーム33(右係合爪35)の右側面がほぼ当接する。このとき、右係合溝36cの左内側面と右係合爪35の左側面との間には前記間隙Sが形成される。またこのとき、トリガーアーム33の左係合爪34の両側面は、中央係合溝36bの両内側面にほぼ当接する。
一方、図11を参照し、ロッカーアーム13が第二作動位置にある状態において、左係合溝36aの左内側面(及び左位置規制部41の左側面)には、トリガーアーム33(左係合爪34)の左側面がほぼ当接する。このとき、左係合溝36aの右内側面には左係合爪34の右側面がほぼ当接する。またこのとき、トリガーアーム33(右係合爪35)の右側面と中央係合溝36bの右内側面との間には前記間隙Sが形成され、右係合爪35の左側面は中央係合溝36bの左内側面にほぼ当接する。
図5,6を参照し、トリガーアーム33には、左右係合爪34,35と共に左右位置規制部41,42に当接する左右突片部43,44が左右係合爪34,35とは別に設けられる。
左右突片部43,44は、左右係合爪34,35の下方において該左右係合爪34,35と軸C5方向視でV字状をなすように前記基部33aからロッカーアームシャフト14側に延びるもので、左右係合爪34,35とそれぞれ面一をなす厚板状に設けられ、かつ前記軸C5方向視で左右係合爪34,35よりも延出量の小さい三角形状に形成される。左右突片部43,44は軸C5方向視で互いに同一形状とされる。
左突片部43及び左係合爪34、並びに右突片部44及び右係合爪35は、それぞれの基端側(基部33a近傍)において互いに一体に連なり、これらの間には、軸C5方向視で山形(V字状)をなしてロッカーアームシャフト14側に開放する凹状の切り欠き部45,46がそれぞれ形成される。換言すれば、左突片部43及び左係合爪34、並びに右突片部44及び右係合爪35は、それぞれ一板状部材の中間部に前記切り欠き部45,46を形成することで、該切り欠き部45,46を挟んだ両側にそれぞれ形成されるといえる。
各突片部43,44及び各切り欠き部45,46は、軸C5方向視で互いに同一形状とされる。また、各切り欠き部45,46の軸C5方向視形状の頂角θ1,θ2は鈍角とされ、該頂角θ1,θ2近傍において、左右係合爪34,35及び左右突片部43,44を相互に接続するように、前記軸C5方向と平行な厚板状をなす前記連結壁33bが設けられる。なお、連結壁33bの中央部に形成される孔33cは、トリガーアーム33の成形加工時に無駄肉として残った部分を削除してできたものであり、このようにすることでトリガーアーム33の軽量化が図られる。
図4,15を参照し、ロッカーアームシャフト14におけるロッカーアーム13のシャフト挿通ボス13a内に挿通される部位の上部外周には、その軸C5方向で所定長さに渡る切り欠き凹部61が設けられる。切り欠き凹部61は、前記軸C5方向と平行かつ平坦な底面61aと、該底面61aの軸C5方向両側に連なり該底面61aに対して上向きに傾斜して延びる左右斜面61b,61cとを有してなる。前記底面61aの軸C5方向での幅(長さ)は、左右斜面61b,61cのそれぞれの軸C5方向での幅よりも広くされる。
また、ロッカーアームシャフト14には、該ロッカーアームシャフト14を前記軸C5直交方向で上下に貫通する軸C5方向に沿って長いスリット状の貫通孔62が形成される。貫通孔62は、前記切り欠き凹部61における軸C5直交方向での幅の略中央部において、該切り欠き凹部61の軸C5方向での全長よりも広い範囲に渡って形成される。貫通孔62の軸C5方向両側における切り欠き凹部61よりも外側に位置する部位の周囲には、左右斜面61b,61cに連なる軸C5方向と平行な左右平坦面62b,62cがそれぞれ形成される。
そして、貫通孔62には、前記トリガーピン37が挿通、保持される。
図4,5を参照し、トリガーピン37は、前記軸C5方向と直交しかつ各係合溝36a,36b,36c(及び左係合爪34)と同等の軸C5方向幅(厚さ)を有する厚板状のもので、貫通孔62に上方から挿通されて軸C5方向に移動可能かつ軸C5回りに相対回転不能に保持される帯状の挿通部37aと、該挿通部37aの上端側に形成されて挿通部37a及び貫通孔62よりも前記軸C5直交方向での前後幅を広げた拡幅部37bとを有してなる。
拡幅部37bは、その頂部が軸C5方向視で円弧状に湾曲して設けられる一方、挿通部37aを挟んだ両側に形成される前後一対の下辺部が前記軸C5直交方向に沿う直線状に形成される。拡幅部37bの両下辺部は、切り欠き凹部61の底面61a及び左右斜面61b,61c並びに左右平坦面62b,62cに上方から当接する被支持部37cとされ、この両被支持部37cにより、トリガーピン37が貫通孔62の下方に脱落することなく、かつ上方には移動可能な状態でロッカーアームシャフト14に支持される。
トリガーピン37は、エンジン1の前記低速運転時又は高速運転時には、前後被支持部37cが切り欠き凹部61の底面61aにおける前記軸C5方向での略中央部上に支持される(図4,11参照)。このとき、拡幅部37bの上部及び挿通部37aの下部は、ロッカーアームシャフト14の外周側に突出する。
ロッカーアーム13のシャフト挿通ボス13aにおける中央係合溝36bの底部には、拡幅部37bの上部を挿通、嵌合可能な上嵌合孔19aが形成される(図3参照)。一方、上嵌合孔19aとシャフト挿通ボス13aの径方向で反対側となる部位には、挿通部37aの下部を挿通、嵌合可能な下嵌合孔19bが形成される(図4参照)。
トリガーピン37は、その上部及び下部が上下嵌合孔19a,19bにそれぞれ挿通、嵌合することで、ロッカーアーム13と共にロッカーアームシャフト14に対して前記軸C5方向で移動可能となり、かつ前記軸C5方向で上部及び下部を変位させる倒れや自身の上下軸線回りの回転が防止される。なお、上下嵌合孔19a,19bの前後幅を広げることで、トリガーピン37及びロッカーアームシャフト14の軸C5回りの相対回転を所定量だけ許容可能である。
トリガーアーム33は、ロッカーアーム13が前記各作動位置の何れかにあり両被支持部37cが前記底面61aの略中央部上に支持された状態から、移動規制機構31によりロッカーアーム13の前記軸C5方向での移動を規制した上で後述する油圧アクチュエータ65の作動によりロッカーアームシャフト14が軸C5方向で移動した際には、両被支持部37cが底面61a両側の左右斜面61b,61cの何れかに乗り上げることで、前記軸C5直交方向で上方へ移動する。
前記中央係合溝36bには、トリガーアーム33の左右係合爪34,35の何れかが上方から入り込むように係合し、その下縁部34a,35aをトリガーピン37の拡幅部37bの頂部に当接させる。この状態でトリガーピン37が上昇することで、トリガーアーム33が中央係合溝36bひいてはロッカーアーム13との係合を解除する側に所定量揺動する。
図17,18を参照し、シリンダヘッド2における各ロッカーアームシャフト14,18の右端部が臨む右側部には、該各ロッカーアームシャフト14,18を軸C5方向で移動させる油圧アクチュエータ65が配設される。
油圧アクチュエータ65は、各ロッカーアームシャフト14,18と軸方向を平行にする油圧シリンダ66を、各ロッカーアームシャフト14,18の間においてシリンダヘッド2右側内のカムチェーン室54を左右に横断させるように配置し、該油圧シリンダ66内のプランジャ67の両側面からは前後一対の操作子68を出し、これら各操作子68を各ロッカーアームシャフト14,18の右端部にそれぞれ係合させることで、前記プランジャ67のストロークに伴い各ロッカーアームシャフト14,18を同時に軸C5方向で移動させる。
図15を参照し、各ロッカーアームシャフト14,18の右端部には、有底筒状のエンドカラー69が前記軸C5方向と直交するピン69aを介して固定的に取り付けられる。
エンドカラー69の底部外側の突部69bには、前記操作子68先端のリング部68aが相対回転可能に嵌合する。リング部68aは、突部69b外側から締結されるフランジ付きボルト69cにより、エンドカラー69(ロッカーアームシャフト14,18)に対して前記軸C5方向で移動不能に取り付けられる。なお、操作子68はエンドカラー69に固定されていればよく、同様に締結部材を用いる場合には、エンドカラー69に設けた雄ネジ部にリング部68aを嵌合させてナットで固定してもよく、さらにはこれらをリベット等で固定してもよい。
エンドカラー69は、前記第二スプリング受けカラー26と同様、左側内周に第二スプリング24の右端部を嵌合させる。すなわち、エンドカラー69は、エンジン1の右外側の気筒における第二スプリング受けカラー26としても機能する。
図20を参照し、エンジン下部には、オイルパン71内に貯留されたエンジンオイルを圧送するオイルポンプ72が配設される。オイルポンプ72からの油圧は、リリーフバルブ73及びオイルフィルタ74を介してオイルギャラリー75に供給される。
オイルギャラリー75は、クランクシャフト10のほぼ真下において気筒配列方向(車幅方向)に沿って延び(すなわちクランクシャフト10と平行に延び)、クランク軸受け等に適宜エンジンオイルを供給する。オイルポンプ72からオイルギャラリー75に至る油路には、油圧センサ76及び油温センサ77がそれぞれ配設され、該各センサ76,77からの検出信号がエンジン1全体の運転を制御するECU78に入力される。油圧センサ76の検出情報は、油圧供給装置の異常検知に用いられる。
オイルギャラリー75の右端部にはオイル供給孔75aが設けられ、該オイル供給孔75aから油圧アクチュエータ65のスプールバルブ81に向けてオイル通路79が延びる。スプールバルブ81はECU78により作動制御され、エンジン回転数(Ne)やギヤポジション等に応じて各バルブ6,7の開閉作動に用いるカムを切り替えるべく油圧経路を切り替える。
スプールバルブ81は、オイル通路79からの油圧を二つの連結油路82を介して油圧シリンダ66両側の各油室83a,83bに選択的に供給可能とする。このスプールバルブ81を介して油圧シリンダ66両側の各油室83a,83bにオイルポンプ72からの油圧を選択的に供給することで、プランジャ67がストロークして各ロッカーアームシャフト14,18を同時に軸方向移動させる。
これにより、各ロッカーアームシャフト14,18が前記左右の移動限界位置の一方から他方へ移動し、第一及び第二ロッカーアーム移動機構21,22の何れかにロッカーアーム13を前記各作動位置の一方から他方へスライド移動させるだけの力を生じさせる。
なお、符号84はオイル通路79に設けたアキュムレータを、符号85はスプールバルブ81からの油圧戻し通路をそれぞれ示す。また、ECU78には、フェール検知用に気筒毎の吸気管内負圧(PB)の検出情報が入力される。
図16〜19を参照し、油圧アクチュエータ65は、有底円筒状の前記油圧シリンダ66と、該油圧シリンダ66内に同軸かつストローク可能に収容される前記プランジャ67と、油圧シリンダ66の開口側を閉塞する板状のカバー66aと、該カバー66aの一側に一体的に設けられる前記スプールバルブ81とを有してなる。
カバー66aの外周部は、油圧シリンダ66の開口側に形成されたフランジと共にシリンダヘッド2の右側部にボルト締結等により固定される。これにより、油圧シリンダ66の大部分がシリンダヘッド2内に入り込み、油圧シリンダ66のシリンダヘッド2外側(エンジン外側)への突出が抑えられる。
油圧シリンダ66は、その軸中心(軸線C7)がエンジン側面視でシリンダ軸線C2に近接するように配置される。一方、スプールバルブ81は上下に延びる円筒状の外観をなし、その軸中心(軸線C8)が油圧シリンダ66の軸線C7と直交すると共にシリンダ軸線C2と略平行となるように配置される。
スプールバルブ81の下部を構成するケーシング81aは、カバー66aの一側に一体形成され、このケーシング81a内には、油圧経路を切り替え可能なプランジャがストローク可能に収容される。スプールバルブ81の上部は、前記プランジャをストロークさせて油圧経路を切り替えるソレノイド81bで構成される。
スプールバルブ81は、エンジン側面視(油圧シリンダ66の軸方向視)で油圧シリンダ66の前方かつ該油圧シリンダ66を避けた位置に配置される。これにより、スプールバルブ81のシリンダヘッド2外側(エンジン外側)への突出が抑えられる。
図21を参照し、プランジャ67は、その軸方向両側(カバー66a側及び底部66b側)にシリンダ内壁に摺接する円盤状のシール部67a,67bを有し、該各シール部67a,67bと油圧シリンダ66のカバー66a及び底部66bとの間に前記各油室83a,83bがそれぞれ形成される。
油圧シリンダ66及びプランジャ67の軸方向中間部には油室が形成されず、当該部位における油圧シリンダ66の径方向両側には楕円状の挿通孔66cが形成され、該各挿通孔66cを通じて前記各操作子68の基部68bがシリンダ外側からプランジャ67の径方向両側に取り付けられる。
各操作子68はプランジャ67の径方向両側に差し込まれる円軸状の前記基部68bと、該基部68bの外側端から油圧シリンダ66の底部66b側に屈曲して延びた後に上方かつ油圧シリンダ66から離間する側へ斜めに延びるアーム部68cと、該アーム部68cの先端に設けられる前記リング部68aとを有してなる。
ここで、油圧シリンダ66及びプランジャ67は、その軸方向がエンジン搭載状態において略水平となるように配置される。このときのプランジャ67の各シール部67a,67bの上部外周には、該プランジャ67がストローク途中にあるときに各油室83a,83b内のエアを抜くエア抜き溝86a,86bが形成される。
各エア抜き溝86a,86bは、プランジャ67の上面視でY字状に形成されるもので、油圧シリンダ66上部のカバー66a側及び底部66b側にそれぞれ穿設された一対のエア抜き孔87a,87bに対応して設けられる。
すなわち、例えばプランジャ67が油圧シリンダ66の底部66b側にストロークしきった状態(図21(a)参照)において、底部66b側のエア抜き孔87bは同じく底部66b側のエア抜き溝86bの一本の脚部よりもカバー66a側にずれて配置され、カバー66a側のエア抜き孔87aは同じくカバー66a側のエア抜き溝86aの二股の腕部間に配置されることで、各油室83a,83bが油密状態に保たれる。
同様に、プランジャ67が油圧シリンダ66のカバー66a側にストロークしきった状態(図21(c)参照)においては、底部66b側のエア抜き孔87bは同じく底部66b側のエア抜き溝86bの二股の腕部間に配置され、カバー66a側のエア抜き孔87aは同じくカバー66a側のエア抜き溝86aの一本の脚部よりも底部66b側にずれて配置されることで、各油室83a,83bが油密状態に保たれる。
そして、プランジャ67が底部66b側及びカバー66a側の一方にストロークしきった状態から他方に向かってストロークを開始すると、その途中で各エア抜き孔87a,87bと各エア抜き溝86a,86bの一本の脚部とが互いに重なることとなる(図21(b)参照)。各エア抜き溝86a,86bの二股の腕部は、その先端が各油室83a,83b内に開放しており、各油室83a,83b内に侵入してその上端部に溜まったエアは、プランジャ67のストローク時に各エア抜き溝86a,86b及び各エア抜き孔87a,87bを通じて、油圧シリンダ66外に排出されることとなる。
またここで、油圧シリンダ66は、その軸方向で底部66b側の部位が各ロッカーアームシャフト14,18の右端部と重なるように配置される。換言すれば、油圧シリンダ66は、その軸方向で底部66b側の部位が各ロッカーアームシャフト14,18の右端部と重なるまでシリンダヘッド2内に入り込んでおり、この点からも油圧アクチュエータ65のシリンダヘッド2外側への突出が抑えられる。
図17,18を参照し、オイルギャラリー75右側の前記オイル供給孔75aは、クランクシャフト10右側におけるカムドライブスプロケット52の真下に所定量離間して配置され、上方すなわちカムドライブスプロケット52(クランクシャフト10)に向けて開口する。
オイル供給孔75aは、上下方向に沿う矢視でクランクシャフト10の投影面積内(径方向幅内)に配置される。このオイル供給孔75aから油圧アクチュエータ65に至るオイル通路79は、クランクシャフト10及びカムチェーン53等を避けつつカムチェーン室54内を延びる断面円形のパイプ79Aで構成される。なお、図示都合上、図18ではクランクシャフト10周辺は下面視を示し、シリンダ30側はシリンダ軸線C2に直交する前面視を示す。
パイプ79A(オイル通路79)は、オイル供給孔から一旦上方に延びた後、斜め上後方かつエンジン内側(クランク軸方向内側)に屈曲し、カムドライブスプロケット52(カムチェーン53)とその左方に隣接する右最外側のクランク軸受け10aとの間に変位した後、左右方向と直交する平面に沿ってクランクシャフト10を迂回するように斜め上前方に向けて湾曲する。
その後、パイプ79Aはカムチェーン53よりもエンジン内側をシリンダヘッド2側に向けて斜めに延び、シリンダ30の基端近傍においてカムチェーン53内周の空間を通じてエンジン外側(クランク軸方向外側)に変位する。このとき、シリンダ軸線C2と直交する前面視でカムチェーン53周辺をその外周側から見ると、前記パイプ79Aがカムチェーン53内周を通過する際に該カムチェーン53と斜めに交差する(図18参照)。
カムチェーン53内周を通過してエンジン外側に変位したパイプ79Aは、カムチェーン53よりもエンジン外側をシリンダ軸線C2と略平行をなしてシリンダヘッド2側に延び、その上端部を油圧アクチュエータ65の下端部に接続する。パイプ79Aは、カムチェーン53よりもエンジン外側を上方に延びる際には、エンジン側面視でカムチェーン53の張り側と概ね重なるように配置されている(図17参照)。
図22は、当該エンジン1を搭載した自動二輪車101の右側面図であり、前輪102は左右フロントフォーク103の下端部に軸支され、該左右フロントフォーク103を主とする前輪懸架系104が車体フレーム105のヘッドパイプ106に操向可能に枢支される。一方、後輪107はリヤスイングアーム108の後端部に軸支され、該スイングアーム108の前端部が車体前後中間部で車体フレーム105の左右ピボットプレート109に上下揺動可能に枢支される。
ヘッドパイプ106からは左右メインチューブ111が後下がりに後方へ延び、該左右メインチューブ111の後端部が車体前後中間部において左右ピボットプレート109の上端部に連なる。左右メインチューブ111の下方には当該エンジン1が搭載される。
左右メインチューブ111の前部下側からは左右エンジンハンガー112が下方に向けて延び、該左右エンジンハンガー112の下端部にエンジン1の前端部が支持される。なお、エンジン1の後端部は、左右ピボットプレート109の上下に適宜支持される。
左右エンジンハンガー112は、それぞれシリンダヘッド2の左右側面に沿うように配置される。
図23を併せて参照し、右エンジンハンガー112は、油圧アクチュエータ65の右側方に配置されており、この右エンジンハンガー112とシリンダヘッド2の右側面との間の比較的左右幅の狭い間隙内に、油圧アクチュエータ65のシリンダヘッド2外側への突出部分(スプールバルブ81含む)が配置されることとなる。
以下、動弁装置5の作用について説明する。
いま、ロッカーアーム13が前記第一作動位置にあり(図4参照)、これを第二作動位置に移動させるべく第一ロッカーアーム移動機構21に所定の力を蓄える際には、まず、ロッカーアーム13がバルブ6を開く前において、前記油圧アクチュエータ65を作動させ、前記左方への移動限界位置にあるロッカーアームシャフト14を各スプリング受けカラー25,26と共に右方へ移動させる(図7(a)参照)。
このロッカーアームシャフト14の軸方向移動に伴いトリガーピン37の被支持部37cが切り欠き凹部61の左斜面61bに乗り上げることで、該トリガーピン37が前記軸C5直交方向へ移動し、トリガーピン37の頂部が前記揺動前状態にあるトリガーアーム33の左係合爪34を上方に押し上げて中央係合溝36bから所定量押し出し、該トリガーアーム33を図7(b)の右回り(ロッカーアーム13と反対側)に揺動させる。
このとき、ロッカーアーム13の左棚部38の上端部38aとトリガーアーム33の左係合爪34の下縁部34aとが前記軸C5方向視で所定量重なっていることから、これら左棚部38の上端部38aと左係合爪34の下縁部34aとが前記軸C5方向で互いに当接し、当該部位においてロッカーアーム13のトリガーアーム33(シリンダヘッド2)に対する右方への移動が規制される。
またこのとき、ロッカーアーム13の右棚部39の上端部39aとトリガーアーム33の右係合爪35の下縁部35aとも前記軸C5方向視で所定量重なっているが、これら右棚部39の上端部39aと右係合爪35の下縁部35aとの間には、前記軸C5方向で間隙Sが確保される。
前述の如くロッカーアームシャフト14及び各スプリング受けカラー25,26が前記左方への移動限界位置から右方への移動限界位置に移動した時点で、第一スプリング受けカラー25と移動規制がなされたロッカーアーム13のシャフト挿通ボス13aとの間に位置する第一スプリング23が所定量圧縮され、該第一スプリング23がロッカーアーム13を第一作動位置から第二作動位置に移動させるだけの弾性力を蓄力した状態となる。
そして、ロッカーアーム13が第一作動位置にあり、ロッカーアームシャフト14が右方への移動限界位置にあり、トリガーアーム33が前記一次揺動状態にある場合において、吸気側カムシャフト11の回転駆動によりその左右第一カム15a,16aがロッカーアーム13をバルブ閉側からバルブ開側に揺動させると(吸気バルブ6をリフトさせるべく押圧すると、図8参照)、これに伴うシャフト挿通ボス13aの回動により、左棚部38の上端部38aは下降し、右棚部39の上端部39aはやや上昇する(図9(a)参照)。
そして、例えば吸気バルブ6の最大リフト時を跨ぐ所定のバルブ作動期間において、左棚部38の上端部38aと左係合爪34の下縁部34aとの前記軸C5方向視での重なり代が0になると(軸C5方向での当接代が無くなると)、当該部位におけるロッカーアーム13のシリンダヘッド2に対する右方への移動規制が解除される。
このとき、右棚部39の上端部39aと右係合爪35の下縁部35aとは、前記軸C5方向視での重なり代を確保した状態にあり、前述の如く左棚部38と左係合爪34との間におけるロッカーアーム13の右方への移動規制が解除されると、右棚部39と右係合爪35との間の前記間隙S分だけロッカーアーム13が右方へ移動することとなる(図9(b)参照)。
このとき、右棚部39の上端部39aと右係合爪35の下縁部35aとが前記軸C5方向で互いに当接することで、ロッカーアーム13のシリンダヘッド2に対する右方への移動が規制される。またこのとき、左棚部38の上端部38aと左係合爪34の下縁部34aとは、前記軸C5方向で前記間隙S分だけ重なり合う。
そして、前述の如く左棚部38と左係合爪34とが前記軸C5方向で所定量重なり合った状態で、吸気側カムシャフト11が継続的に回転駆動し、ロッカーアーム13をバルブ開側からバルブ閉側へ揺動させると、左棚部38の上端部38aが左係合爪34の下縁部34aに摺接し、トリガーアーム33を前記一次揺動状態からさらに図8の右回りに回動させる。
そして、吸気バルブ6のリフト量が0になる状態(バルブ全閉状態)までロッカーアーム13が揺動した時点で、右棚部39の上端部39aと右係合爪35の下縁部35aとの軸C5方向視での重なり代が0になり(軸C5方向での当接代が無くなり)、当該部位におけるロッカーアーム13のシリンダヘッド2に対する右方への移動規制が解除される(図10(a)参照)。
このとき、左棚部38と左係合爪34との間におけるロッカーアーム13の移動規制も解除されていることから、ロッカーアーム13が第一スプリング23に蓄力された弾性力により第二作動位置まで移動する(図10(b)参照)。このとき、左係合爪34と左突片部43とは左位置規制部41と軸C5方向視で所定量重なり、これらが軸C5方向で互いに当接することで、ロッカーアーム13の第二作動位置での位置規制がなされる。
ロッカーアーム13の第二作動位置への移動が完了すると、左右係合爪34,35が左及び中央係合溝36bの直上にそれぞれ配置され、この状態でトリガーアーム33が図8の左回り(ロッカーアーム13側)に回動することで、左右係合爪34,35が左及び中央係合溝36bにそれぞれ入り込む。このとき、トリガーピン37の被支持部37cが切り欠き凹部61の底面61a上に移動することで、該トリガーピン37が中央溝内において下降し、もってトリガーアーム33が前記揺動前状態に戻り、第二作動位置にあるロッカーアーム13の軸C5方向でのスライド移動が規制される。
なお、トリガーアーム33が前記揺動前状態にある場合にロッカーアーム13が揺動しても、左棚部38と左係合爪34との重なり代は0にならず、したがって、トリガーアーム33が前記一次揺動状態になるまでは(すなわち、第一スプリング23が所定の蓄力状態となるまでは)、ロッカーアーム13の右方への移動が規制されたままとなる。
次に、ロッカーアーム13が前記第二作動位置にあり(図11参照)、これを第一作動位置に移動させるべく第二ロッカーアーム移動機構22に所定の力を蓄える際には、まず、ロッカーアーム13がバルブ6を開く前において、前記油圧アクチュエータ65を作動させ、前記右方への移動限界位置にあるロッカーアームシャフト14を各スプリング受けカラー25,26と共に左方へ移動させる(図12参照)。
このロッカーアームシャフト14の軸方向移動に伴いトリガーピン37の被支持部37cが切り欠き凹部61の右斜面61cに乗り上げることで、該トリガーピン37が前記軸C5直交方向へ移動し、トリガーピン37の頂部が前記揺動前状態にあるトリガーアーム33の右係合爪35を上方に押し上げて中央係合溝36bから所定量押し出し、該トリガーアーム33を図7(b)の右回り(ロッカーアーム13と反対側)に揺動させる。
このとき、ロッカーアーム13の左棚部38の上端部38aとトリガーアーム33の左係合爪34の下縁部34aとが前記軸C5方向視で所定量重なっていることから、これら左棚部38の上端部38aと左係合爪34の下縁部34aとが前記軸C5方向で互いに当接し、当該部位においてロッカーアーム13のトリガーアーム33(シリンダヘッド2)に対する左方への移動が規制される。
またこのとき、ロッカーアーム13の右棚部39の上端部39aとトリガーアーム33の右係合爪35の下縁部35aとも前記軸C5方向視で所定量重なっているが、これら右棚部39の上端部39aと右係合爪35の下縁部35aとの間には、前記軸C5方向で間隙Sが確保される。
前述の如くロッカーアームシャフト14及び各スプリング受けカラー25,26が前記右方への移動限界位置から左方への移動限界位置に移動した時点で、第二スプリング受けカラー26と移動規制がなされたロッカーアーム13のシャフト挿通ボス13aとの間に位置する第二スプリング24が所定量圧縮され、該第二スプリング24がロッカーアーム13を第二作動位置から第一作動位置に移動させるだけの弾性力を蓄力した状態となる。
そして、ロッカーアーム13が第二作動位置にあり、ロッカーアームシャフト14が左方への移動限界位置にあり、トリガーアーム33が前記一次揺動状態にある場合において、吸気側カムシャフト11の回転駆動によりその左右第二カム15b,16bがロッカーアーム13をバルブ閉側からバルブ開側に揺動させると(吸気バルブ6をリフトさせるべく押圧すると、図8参照)、これに伴うシャフト挿通ボス13aの回動により、左棚部38の上端部38aは下降し、右棚部39の上端部39aはやや上昇する(図13(a)参照)。
そして、例えば吸気バルブ6の最大リフト時を跨ぐ所定のバルブ作動期間において、左棚部38の上端部38aと左係合爪34の下縁部34aとの前記軸C5方向視での重なり代が0になると(軸C5方向での当接代が無くなると)、当該部位におけるロッカーアーム13のシリンダヘッド2に対する左方への移動規制が解除される。
このとき、右棚部39の上端部39aと右係合爪35の下縁部35aとは、前記軸C5方向視での重なり代を確保した状態にあり、前述の如く左棚部38と左係合爪34との間におけるロッカーアーム13の左方への移動規制が解除されると、右棚部39と右係合爪35との間の前記間隙S分だけロッカーアーム13が左方へ移動することとなる(図13(b)参照)。
このとき、右棚部39の上端部39aと右係合爪35の下縁部35aとが前記軸C5方向で互いに当接することで、ロッカーアーム13のシリンダヘッド2に対する左方への移動が規制される。またこのとき、左棚部38の上端部38aと左係合爪34の下縁部34aとは、前記軸C5方向で前記間隙S分だけ重なり合う。
そして、前述の如く左棚部38と左係合爪34とが前記軸C5方向で所定量重なり合った状態で、吸気側カムシャフト11が継続的に回転駆動し、ロッカーアーム13をバルブ開側からバルブ閉側へ揺動させると、左棚部38の上端部38aが左係合爪34の下縁部34aに摺接し、トリガーアーム33を前記一次揺動状態からさらに図8の右回りに回動させる。
そして、吸気バルブ6のリフト量が0になる状態(バルブ全閉状態)までロッカーアーム13が揺動した時点で、右棚部39の上端部39aと右係合爪35の下縁部35aとの軸C5方向視での重なり代が0になり(軸C5方向での当接代が無くなり)、当該部位におけるロッカーアーム13のシリンダヘッド2に対する左方への移動規制が解除される(図14(a)参照)。
このとき、左棚部38と左係合爪34との間におけるロッカーアーム13の移動規制も解除されていることから、ロッカーアーム13が第二スプリング24に蓄力された弾性力により第一作動位置まで移動する(図14(b)参照)。このとき、右係合爪35と右突片部44とは右位置規制部42と軸C5方向視で所定量重なり、これらが軸C5方向で互いに当接することで、ロッカーアーム13の第一作動位置での位置規制がなされる。
ロッカーアーム13の第一作動位置への移動が完了すると、左右係合爪34,35が中央及び右係合溝36cの直上にそれぞれ配置され、この状態でトリガーアーム33が図8の左回り(ロッカーアーム13側)に回動することで、左右係合爪34,35が中央及び右係合溝36cにそれぞれ入り込む。このとき、トリガーピン37の被支持部37cが切り欠き凹部61の底面61a上に移動することで、該トリガーピン37が中央溝内において下降し、もってトリガーアーム33が前記揺動前状態に戻り、第一作動位置にあるロッカーアーム13の軸C5方向でのスライド移動が規制される。
なお、トリガーアーム33が前記揺動前状態にある場合にロッカーアーム13が揺動しても、左棚部38と左係合爪34との重なり代は0にならず、したがって、トリガーアーム33が前記一次揺動状態になるまでは(すなわち、第二スプリング24が所定の蓄力状態となるまでは)、ロッカーアーム13の左方への移動が規制されたままとなる。
このように、エンジン1の回転数(クランクシャフト10の回転数)が停止又は低速回転域にある場合と高速回転域にある場合とで、吸気バルブ6の開閉タイミングやバルブリフト量を適宜変化させる(可変にする)ことで、エンジン1の低速回転域ではバルブオーバーラップを少なくすると共にリフト量を抑える一方、エンジン1の高速回転域ではバルブオーバーラップを増やすと共にリフト量を増加させることが可能となる。
以上説明したように、上記実施例におけるエンジン1は、吸気バルブ6(又は排気バルブ7)と該吸気バルブ6に対する左右第一カム15a,16a及び左右第二カム15b,16bとの間に吸気側ロッカーアーム13(又は排気側ロッカーアーム17)が配置され、該ロッカーアーム13は吸気側ロッカーアームシャフト14(又は排気側ロッカーアームシャフト18)に揺動可能かつ軸方向にスライド移動可能に支持され、前記ロッカーアームシャフト14(ロッカーアームシャフト18)の動きに応じて前記ロッカーアーム13(ロッカーアーム17)が前記軸方向にスライド移動することで、該ロッカーアーム13(ロッカーアーム17)が前記第一カム15a,16a及び第二カム15b,16bの何れか一方に択一的に係合して前記吸気バルブ6(排気バルブ7)の作動を切り替える可変動弁装置を備えたものにおいて、前記ロッカーアーム13,17とは別に当該エンジン1のシリンダヘッド2に前記ロッカーアームシャフト14,18と平行な支持軸32を介して揺動可能に支持されるトリガーアーム33を備え、該トリガーアーム33が前記ロッカーアーム13,17側に揺動し該ロッカーアーム13,17に係合することで、前記スライド移動が不能とされると共に、前記トリガーアーム33が前記ロッカーアーム13,17と反対側に揺動し該ロッカーアーム13,17との係合を解除することで、前記スライド移動が可能とされ、前記ロッカーアーム13,17には、前記トリガーアーム33の係合が解除された際に前記スライド移動を所定量に規制するべく前記トリガーアーム33に当接する位置規制部41,42が設けられるものである。
この構成によれば、ロッカーアーム13,17に係合して前記スライド移動を不能にするトリガーアーム33を設け、該トリガーアーム33がロッカーアーム13,17への係合を解除して前記スライド移動を可能とした際には、該スライド移動を所定量に規制するべくロッカアーアーム13,17に設けた位置規制部41,42をさらにトリガーアーム33に当接させることで、簡単な構造でかつ部品点数を増加させることなく、前記スライド移動を所定量に規制することができる。
また、上記エンジン1は、前記ロッカーアーム13,17には、前記トリガーアーム33の係合爪34,35が係合することで前記スライド移動を不能にする係合溝36a,36b,36cが設けられ、前記位置規制部41,42は、前記係合溝36a,36cの側面を延長するように突出形成されるものであるため、係合溝36a,36cの側面と連続する側面を有する突起で前記位置規制部41,42を構成することとなり、係合爪34,35が係合溝36a,36cから外れる際にはこれを係合溝36a,36cの側面に沿ってスムーズに案内でき、係合爪34,35による前記スライド移動の規制をスムーズに解除できる共に、位置規制部41,42手段の形成を容易にすることができる。
さらに、上記エンジン1は、前記トリガーアーム33には、前記係合爪34,35とは別に前記位置規制部41,42に当接する突片部43,44が設けられるものであるため、係合爪34,35とは別に設けた突片部43,44をロッカーアームの位置規制部41,42にさらに当接させることとなり、係合爪34,35のみで前記スライド移動の規制を行う場合と比べて、該スライド移動の規制による負荷を突片部43,44でも受け止めることができ、係合爪34,35への影響を抑えて前記スライド移動の規制を精度よく確実に行うことができる。
また、上記エンジン1は、前記係合爪34,35が、前記支持軸32側から前記ロッカーアーム13,17側に延出する板状部材で構成され、この板状部材における前記ロッカーアーム13,17側に開放する切り欠き部45,46を挟んで前記係合爪34,35と反対側となる部位には、前記突片部43,44が構成されるものであるため、トリガーアーム33の支持軸32側からロッカーアーム13,17側に延出する板状部材により、係合爪34,35及び突片部43,44の両者を形成することとなり、部品点数を増加させることなく係合爪34,35及び突片部43,44を簡単に設けることができる。
また、係合爪34,35及び突片部43,44の両者を切り欠き部45,46を挟んで切り分けることで、突片部43,44が位置規制部41,42に当接した際の係合爪34,35への影響を抑えることができる。
さらに、上記エンジン1は、前記係合爪34,35及び突片部43,44がそれぞれ前記支持軸32の軸方向に並んで一対に設けられ、前記トリガーアーム33には、前記各係合爪34,35及び突片部43,44を前記支持軸32の軸方向視で山形をなす前記切り欠き部45,46の頂角θ1,θ2近傍にて接続する連結壁33bが設けられるものであるため、各係合爪34,35及び突片部43,44を互いに連結してこれらの剛性を高めると共に、軸方向視山形をなす切り欠き部45,46の頂角θ1,θ2近傍(支持軸32近傍)の部分を補強することができ、突片部43,44が位置規制部41,42に当たった際の係合爪34,35への影響をより一層軽減することができる。
また、上記エンジン1は、前記切り欠き部45,46の頂角θ1,θ2が鈍角とされるものであるため、切り欠き部45,46の頂角θ1,θ2近傍における応力集中を抑え、かつ係合爪34,35と突片部43,44とを互いに離間させることで、突片部43,44が位置規制部41,42に当たった際の係合爪34,35への影響をより一層軽減することができる。
なお、上記実施例における構成はこの発明の一例であり、当該発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることはいうまでもない。例えば、図20に示すアキュムレータ84は必ずしも本発明を実施するには必要とせず、省くことも可能である。また、ECUに取り込んでいるギヤポジションや吸気管内負圧の情報も同様に省くとも可能である。