JP5110845B2 - 歯科貴金属接着性オペークペースト - Google Patents

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Description

本発明は、前装冠やフルカバレッジクラウン等の貴金属フレームによる裏装を伴うレジン製の歯科用補綴物の作製において使用される貴金属接着性オペークペーストに関する。
歯冠用硬質レジンの理工学的性質の向上、さらに技工操作が簡単な光重合型硬質レジンの登場により、審美性に優れた硬質レジンジャケット冠が臨床に多く用いられるようになった。しかし、硬質レジンの理工学的性質が向上したとはいえ、その機械的強度は未だ充分とはいえず、特に高強度が要求される症例、例えばインプラントの上部構造体やブリッジの症例への適用においては、機械的強度に優れる貴金属を用いてフレームを作製し、硬質レジンをそのフレームに接着させて強度を補強する方法が採られている。
しかしながら、実際の口腔内では、硬質レジンと貴金属フレームとの接着性に起因すると考えられる硬質レジンの破折や貴金属フレームからの剥離、着色による外観不良といった問題が依然として発生している。これまで、種々の高性能な貴金属接着性プライマーが開発され、貴金属とレジンとの接着性は満足のいくレベルにまで達している(特許文献1〜3)にも関わらず、このような問題が依然として残っている背景には、貴金属と硬質レジンを接着させる際の工程数の多さに伴う操作性の低下があると考えられる。
一般的な前装冠用補綴物の作製手順の概略を示すと、まず貴金属の鋳造物にサンドブラストなどの適切な前処理を施し、処理面に貴金属接着性プライマーを筆などで塗布し、その後金属色の隠蔽のために、高いコントラスト比を有する硬化性組成物からなるオペークペーストを塗布、硬化させる。必要に応じて、該オペークペーストの塗布と硬化を繰り返す。十分な金属遮蔽性が得られた後、歯冠形成用硬質レジンペーストを上に少しずつ築盛し、必要に応じて重合を繰り返しながら、最終的には歯牙形態を作製する(非特許文献1、2)。
特開平11−092461号公報 特開2000−198966号公報 特開2003−238326号公報 高橋英登ら著、月刊歯科技工別冊 セラミックス・高分子複合型歯冠修復材料の臨床/技工、医歯薬出版株式会社発行、1999年、第68〜140ページ 新谷明喜ら著、別冊2003/実践・新素材による歯冠色修復とその技法、株式会社ヒョーロン・パブリッシャーズ発行、2003年、第65〜119ページ
上記したような貴金属フレームによる裏装を伴う硬質レジン製の歯科用補綴物の作製において、貴金属フレームに対する貴金属接着性プライマーの塗布量が多すぎる場合および少なすぎる場合のいずれにおいても、オペークの該貴金属フレームに対する接着性が低下することが知られている。そして、この貴金属接着性プライマーの塗布量は使用する筆の種類や塗布回数、塗布厚みなどで容易に変わるものであり、制御するのが困難であったため、操作の影響を受けやすい原因の一つになっていた。
したがって、こうした硬質レジン製の歯科用補綴物の作製において、貴金属接着性プライマーの塗布量の変動に影響されずに、オペークと貴金属フレームとを強固に接着し、ひいては該オペークを介しての硬質レジン製歯冠の該貴金属フレームへの接着の確実性を高めることが求められており、そのためには、このような貴金属接着性プライマーを用いずとも、歯科貴金属に優れた接着強度で接着するオペークペーストを開発することが必要であった。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を行ってきた。その結果、オペークペーストに、硫黄原子を含有する重合性単量体を配合することによって、簡便な操作でありながら金属色を遮蔽しつつ安定な金属接着性を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、(A)下記一般式A1、A4、A5及びA9で示される化合物から選ばれる少なくとも一種の硫黄原子を含有する重合性単量体を含有する重合性単量体成分、
Figure 0005110845
{式中、R は水素原子またはメチル基であり、R は炭素数1〜12の2価の飽和炭化水素基であり、Zは−OC(=O)−基であり(但し、右端の炭素原子は不飽和炭素に結合し、左端の酸素原子は基R に結合している。)、Z’は−OC(=O)−基(但し、右端の炭素原子が不飽和炭素に結合し、左端の酸素原子が基R に結合している。)又は結合手であり(ここで、基Z’が結合手の場合とは基R と不飽和炭素が直接結合した状態をいう。)、Yは−N(R’)−である(R’は水素原子、又は炭素数1〜5のアルキル基である。)。}
(B)光重合開始剤、
(C)フィラー、および
(D)顔料
を含有する重合性組成物からなり、0.5mm厚さの硬化体のコントラスト比Yb/Ywが0.8以上であることを特徴とする、歯科貴金属接着性オペークペーストである。

本発明のオペークペーストは、0.5mm厚さの硬化体のコントラスト比Yb/Ywが0.8以上であり、金属遮蔽性に優れる。そして、歯科貴金属に対して優れた接着性を有しており、硬質レジン製の歯科用補綴物の作製において、貴金属接着性プライマーを用いずに貴金属フレームに直接塗布して使用したとしても、該貴金属フレームに強固に接着する。したがって、操作が簡便であり、また、それだけでなく、該貴金属接着性プライマーの塗布量の変動による該オペークの貴金属フレームへの接着の不安定さが解消される。したがって、該オペークを介しての、硬質レジン製歯冠の貴金属フレームへの接着の確実性を大きく向上させることができる。
本発明において歯科貴金属接着性オペークペーストとは、硬質レジン製の歯科用補綴物の作製において、貴金属フレームの金属色の隠蔽のために、歯冠形成用硬質レジンペーストを築盛する前に、該貴金属フレーム上に設けられる高いコントラスト比を有するレジン層を形成するためのペーストを言う(以下、単に「ペースト」、または「オペークペースト」とも略す)。
本発明の歯科貴金属接着性オペークペーストの最大の特徴は、その重合性単量体成分に、硫黄原子を含有する重合性単量体(以下、「含硫黄重合性単量体」とも略する)を含有させた点にある。こうした含硫黄重合性単量体は、貴金属接着性に優れるものであるが、これを、オペークペーストの重合性単量体として含有させたことはこれまでなかった。しかして、このように貴金属接着性に優れる、含硫黄重合性単量体をオペークペーストに配合させることにより、得られるオペークペーストは、貴金属に塗布して硬化させた場合、その接着強度が著しく向上し、従来前処理として実施されていた上記貴金属接着性プライマーの塗布処理も省略可能なほどになる。
この含硫黄重合性単量体としては、下記一般式A1、A4、A5及びA9で示される化合物から選ばれる少なくとも一種の硫黄原子を含有する重合性単量体であれば公知のものが制限なく使用できる。

Figure 0005110845

{式中、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは炭素数1〜12の2価の飽和炭化水素基であり、Zは−OC(=O)−基であり(但し、右端の炭素原子は不飽和炭素に結合し、左端の酸素原子は基Rに結合している。)、Z’は−OC(=O)−基(但し、右端の炭素原子が不飽和炭素に結合し、左端の酸素原子が基Rに結合している。)又は結合手であり(ここで、基Z’が結合手の場合とは基Rと不飽和炭素が直接結合した状態をいう。)、Yは−N(R’)−である(R’は水素原子、又は炭素数1〜5のアルキル基である。)。}
これら化合物A1、A4、A5及びA9において、Rの炭素数1〜12の2価の炭化水素基としては、−(CH−、−(CH10−、−CHCHCH(CHCH)CHCH−等の炭素数1〜12の2価の飽和炭化水素基や、−CH−C−CH−基、−CHCH−C−CHCH−基等の芳香族炭化水素基が挙げられる。

これらA1、A4、A5及びA9で示される化合物を具体的に例示すれば、前記一般式A1、A4、A5に示される互変異性によりメルカプト基を生じ得る化合物としては、次に示す化合物が挙げられる。

Figure 0005110845

Figure 0005110845
また、前記一般式A9に示されるジスルフィド化合物としては、次に示す化合物等が挙げられる。
Figure 0005110845

これら含硫黄重合性単量体は、単独でまたは二種以上を混合して用いることもできる。
本発明において、含硫黄重合性単量体として、これら一般式A1、A4、A5及びA9で示されるものを用いた場合、オペークペーストの貴金属に対する接着性がより顕著に向上し、また、この接着性向上効果以上の別の効果が発揮される。すなわち、オペークペーストには、これに金属遮蔽性を付与するために、硬化体0.5mm厚さのコントラスト比Yb/Ywが0.8以上になるように、後述する(D)成分である顔料が配合されている。しかしながら、上記コントラスト比の値を達成させるようにその配合量を多くすると(通常、重合性単量体成分100質量部に対して2〜25質量部)、その分散性が低下してくる。しかし、この顔料の分散性が不良であると、ペーストを塗布した際に塗布面に班やムラが確認されるようになり、金属遮蔽性の効果も低下する。また、顔料の凝集によって接着性の向上効果が安定的に発揮され難くなる。したがって、このような問題を解消するために、顔料の使用量を多くしたり、分散性の向上のために混合時間を長くしたりしなければならなくなる。

これに対して、上記含硫黄重合性単量体として、前記一般式A1、A4、A5及びA9で示されるものを用いた場合には、顔料の分散性が大きく改善され、該オペークペーストの製造時において、各組成の配合物の混合時間を過度に長くしなくても、均一性の高いペーストとすることができ、上記の金属遮蔽性の効果を安定的に発揮させることができるようになる。また、接着性の向上効果も安定的に発揮させることができるようになる。

一般式A1〜12で示される含硫黄重合性単量体を用いることにより、このような優れた効果が発揮される理由は、必ずしも定かではないが、係る化合物は、硫黄原子を含有する官能基からなる親水性の高い部分と、Rの炭化水素基を介してエチレン性不飽和基が結合してなる疎水性の高い部分が存在しており、界面活性剤的な構造をしている。したがって、オペークペーストの製造時において、各組成の配合物の中に、該含硫黄重合性単量体が配合されていると、これが界面活性剤としての機能を発揮して、多量に含まれる顔料の分散性を向上させるため、上記効果が発揮されるものと推察される。
上記顔料の分散性を向上させ、金属遮蔽性を高め、その接着性の向上効果を安定的に発揮させる観点からは、含硫黄重合性単量体は、一般式A1、A4、A5及びA9で示される含硫黄重合性単量体において、Rで示される基がより長鎖のものほど好ましく、具体的にはRは炭素数5〜12のもの、より好ましくは炭素数6〜11のものが好ましい。また、上記一般式の中でも、A1、A4、A5に示される互変異性によりメルカプト基を生じ得る化合物が、接着強度の観点から特に好ましい。

このような、Rが長鎖であり、本発明において最も好適に使用されるる含硫黄重合性単量体を示せば、下記に示す化合物が挙げられる。
Figure 0005110845

本発明のオペークペーストにおいて、上記含硫黄重合性単量体は、特に制限されるものではないが、貴金属に対する接着性の良好さと硬質レジンに対する接着性の良好さをバランスさせるためには、重合性単量体成分中において0.01〜10質量%、より好適には0.05〜5質量%含有させることが好ましい。すなわち、この重合性単量体成分中における含有量が0.01質量%より少ない場合、貴金属に対する接着性が満足できなくなるおそれがある。また、含硫黄重合性単量体が前記した一般式A1、A4、A5及びA9で示される化合物の場合、顔料の分散性を高める効果も小さくなり、こうした貴金属に対する接着性や金属遮蔽性に関する優れた効果が発揮されなくなる。

本発明のオペークペーストにおいて、(A)重合性単量体成分は、こうした含硫黄重合性単量体の含有量が、前記重合性単量体成分中において10質量%を超えるほどに多くなると、前記したように硫黄原子を含有する官能基は貴金属に対する親和性が良好である反面、連鎖移動剤としての働きを持つことが知られているため、重合の進行を阻害し、硬化性を低下させる懸念がある。このため、こうした分子内に硫黄原子を有しない他の重合性単量体と併用して、前記使用量の範囲内にすることが好ましい。
こうした他の重合性単量体としては、歯科用として公知のものが何ら制限なく使用できる。好適に使用できる重合性単量体としては、ラジカル重合性単量体として、アクリロイル基またはメタクリロイル基を有する(メタ)アクリレート系重合性単量体が好ましく、カチオン重合性単量体として、オキセタン基、エポキシ基を有する重合性単量体が、重合性、接着性及び取り扱い易さの点で好適である。
また、他の重合性単量体は、単官能性あるいは多官能性のいずれであってもよい。一般に好適に使用される単官能ラジカル重合性単量体を具体的に例示すると、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリレート系単量体:N−メチロール(メタ)アクリルアミド等の単官能(メタ)アクリルアミド系単量体:スチレン、α−メチルスチレン等の単官能スチレン系単量体が挙げられる。
一般に好適に使用される多官能ラジカル重合性単量体を具体的に例示すると、2,2−ビス(4−(3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2'−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシテトラエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)プロパン、2−(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)−2−(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2−(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)−2−(4−(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2−(4−(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)−2−(4−(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシイソプロポキシフェニル)プロパン、1−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチル ハイドロジェンマレート等の芳香族二官能(メタ)アクリレート系単量体:エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ジ−2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジカルバメート、N,N'−メチレンビス(メタ)アクリルアミド等の脂肪族二官能(メタ)アクリレート系単量体:N,N'−メチレン(ビス)アクリルアミド等の二官能(メタ)アクリル酸アミド系単量体:ジビニルベンゼン、α−メチルスチレンダイマー等の二官能スチレン系単量体:ジアリルフタレート、ジアリルフタレート、ジアリルカーボネートなどの二官能アリル系単量体:トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート等の三官能(メタ)アクリレート系単量体:ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の四官能(メタ)アクリレート系単量体等が挙げられる。
上述のラジカル重合性単量体は単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
また、一般に好適に使用されるカチオン重合性単量体を例示すると、オキセタン基、エポキシ基を有する重合性単量体が挙げられる。オキセタン基を有する重合性単量体としては、公知のオキセタン化合物が何等制限なく使用できるが、好適なオキセタン化合物としては、特に以下に示す化合物が挙げられる。
Figure 0005110845

また、エポキシ基を有する重合性単量体としては、公知のエポキシ化合物が何等制限なく使用できるが、好適な例としては以下に示す化合物が挙げられる。
Figure 0005110845

カチオン重合性単量体は単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
本発明における(B)光重合開始剤としては、歯科用として公知のものが何ら制限なく使用できる。代表的な光重合開始剤としては、α−ジケトン類及び第三級アミン類の組み合わせ,アシルホスフィンオキサイド及び第三級アミン類の組み合わせ,チオキサントン類及び第三級アミン類の組み合わせ,α−アミノアセトフェノン類及び第三級アミン類の組み合わせ、アリールボレート類及び光酸発生剤類の組み合わせ等の光重合開始剤が挙げられる。
上記各種光重合開始剤に好適に使用される各種化合物を例示すると、α−ジケトン類としては、カンファーキノン、ベンジル、α−ナフチル、アセトナフテン、ナフトキノン、p,p'−ジメトキシベンジル、p,p'−ジクロロベンジルアセチル、1,2−フェナントレンキノン、1,4−フェナントレンキノン、3,4−フェナントレンキノン、9,10−フェナントレンキノン等が挙げられる。
三級アミンとしてはN,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジ−n−ブチルアニリン、N,N−ジベンジルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−m−トルイジン、p−ブロモ−N,N−ジメチルアニリン、m−クロロ−N,N−ジメチルアニリン、p−ジメチルアミノベンズアルデヒド、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸アミルエステル、N,N−ジメチルアンスラニリックアシッドメチルエステル、N,N−ジヒドロキシエチルアニリン、N,N−ジヒドロキシエチル−p−トルイジン、p−ジメチルアミノフェネチルアルコール、p−ジメチルアミノスチルベン、N,N−ジメチル−3,5−キシリジン、4−ジメチルアミノピリジン、N,N−ジメチル−α−ナフチルアミン、N,N−ジメチル−β−ナフチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリエチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルヘキシルアミン、N,N−ジメチルドデシルアミン、N,N−ジメチルステアリルアミン、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、2,2'−(n−ブチルイミノ)ジエタノール等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を配合して使用することができる。
アシルホスフィンオキサイド類としては、ベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,3,5,6−テトラメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。
チオキサントン類として2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等が挙げられる。
α−アミノアセトフェノン類として2−ベンジル−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ベンジル−ジエチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ベンジル−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−プロパノン−1、2−ベンジル−ジエチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−プロパノン−1、2−ベンジル−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ペンタノン−1、2−ベンジル−ジエチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ペンタノン−1等が挙げられる。
アリールボレート類としては、アリールボレート類としてはテトラフェニルホウ素、テトラ(p−フルオロフェニル)ホウ素、テトラ(p−クロロフェニル)ホウ素、トリアルキル(p−フルオロフェニル)ホウ素、トリアルキル(3、5−ビストリフルオロメチル)フェニルホウ素、ジアルキルジフェニルホウ素、ジアルキルジ(p−クロロフェニル)ホウ素、ジアルキルジ(p−フルオロフェニル)ホウ素、ジアルキルジ(3、5−ビストリフルオロメチル)フェニルホウ素、モノアルキルトリフェニルホウ素、モノアルキルトリ(p−クロロフェニル)ホウ素、モノアルキルトリ(p−フルオロフェニル)ホウ素、モノアルキルトリ(3、5−ビストリフルオロメチル)フェニルホウ素(アルキル基はn−ブチル基、n−オクチル基、n−ドデシル基等)のナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩等が挙げられる。
光酸発生剤としては、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メチルチオフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2,4−ジクロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−ブロモフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−n−プロピル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(α,α,β−トリクロロエチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−スチリル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(o−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−ブトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3,4−ジメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3,4,5−トリメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等のハロメチル基置換−s−トリアジン誘導体類や、ジフェニルヨードニウム、ビス(p−クロロフェニル)ヨードニウム、ジトリルヨードニウム、ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム、ビス(m−ニトロフェニル)ヨードニウム、p−tert−ブチルフェニルフェニルヨードニウム、メトキシフェニルフェニルヨードニウム、p−オクチルオキシフェニルフェニルヨードニウム等のクロリド、ブロミド、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロフォスフェート、ヘキサフルオロアルセネート、ヘキサフルオロアンチモネート、トリフルオロメタンスルホネート等のジフェニルヨードニウム塩化合物類が挙げられる。
なお、光酸発生剤を使用する場合には、該光酸発生剤を増感分解させることができるクマリン系色素類を添加するのも好ましい。好適に使用されるクマリン系色素類を具体的に例示すると、3−チエノイルクマリン、3−(4−メトキシベンゾイル)クマリン、3−ベンゾイルクマリン、3−(4−シアノベンゾイル)クマリン、3−チエノイル−7−メトキシクマリン、7−メトキシ−3−(4−メトキシベンゾイル)クマリン、3−ベンゾイル−7−メトキシクマリン、3−(4−シアノベンゾイル)−7−メトキシクマリン、5,7−ジメトキシ−3−(4−メトシキベンゾイル)クマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジメトキシクマリン、3−(4−シアノベンゾイル)−5,7−ジメトキシクマリン、3−アセチル−7−ジメチルアミノクマリン、7−ジエチルアミノ−3−チエノイルクマリン、7−ジエチルアミノ−3−(4−メトキシベンゾイル)クマリン、3−ベンゾイル−7−ジエチルアミノクマリン、7−ジエチルアミノ−3−(4−シアノベンゾイル)クマリン、7−ジエチルアミノ−3−(4−ジメチルアミノベンゾイル)クマリン、3−シンナモイル−7−ジエチルアミノクマリン、3−(p−ジエチルアミノシンナモイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−アセチル−7−ジエチルアミノクマリン、3−カルボキシ−7−ジエチルアミノクマリン、3−(4−カルボキシベンゾイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3,3'−カルボニルビスクマリン、3,3'−カルボニルビス(7−ジエチルアミノ)クマリン、2,3,6,7−テトラヒドロ−1,1,7,7−テトラメチル−10−(ベンゾチアゾイル)−11−オキソ−1H,5H,11H−[1]ベンゾピラノ[6,7,8−ij]キノリジン、3,3'−カルボニルビス(5,7−ジメトキシ)−3,3'−ビスクマリン、3−(2'−ベンズイミダゾイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(2'−ベンズオキサゾイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(5'−フェニルチアジアゾイル−2')−7−ジエチルアミノクマリン、3−(2'−ベンズチアゾイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3,3'カルボニルビス(4−シアノ−7−ジエチルアミノ)クマリン等を挙げることができる。
上記重合開始剤の中でも、重合性単量体成分と分割包装する必要がない光重合開始剤を使用するのが好適である。特に、生体に対して為害性の少ない、α−ジケトン類又はアシルホスフィンオキサイドと第3級アミン類の組み合わせ等の可視光線重合開始剤を使用するのが好ましく、カンファーキノンと第3級アミン類の組み合わせを使用するのが最も好適である。
また、カチオン重合開始剤としては、ルイス酸或いはブレンステッド酸、又は加熱や光照射によりルイス酸或いはブレンステッド酸を生じる化合物などが知られているが、光照射によりルイス酸或いはブレンステッド酸を生じる、光酸発生剤を採用することが特に好適である。
上記光重合開始剤は単独で用いても、2種類以上のものを混合して用いても良い。
上記光重合開始剤の配合量は、公知の添加範囲が特に制限なく採用される。本発明のペーストにおける一般的な光重合開始剤の配合量は、(A)重合性単量体成分100質量部に対して0.003〜5質量部の割合、より好適には0.01〜3質量部の割合である。光重合開始剤の上記配合量が0.003質量部より少ないと十分な硬化深度を得るのが難しくなる傾向があり、5質量部より多いとペーストの環境光安定性が短いため操作性が低下する虞がある。
本発明における(C)フィラーとしては、歯科用として公知のものが何ら制限なく使用できる。フィラーを添加することによって、機械的強度、耐水性を向上させることができるほか、本発明のオペークペーストの粘度や流動性を調節することが容易となる。このフィラーとしては、公知の有機物粉体、無機物粉体、有機無機複合物粉体、もしくはこれらの混合物等、公知のものがなんら制限なく使用することができる。
有機フィラーを具体的に例示すると、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、メチルメタクリレート−エチルメタクリレート共重合体、エチルメタクリレート−ブチルメタクリレート共重合体、メチルメタクリレート−トリメチロールプロパントリメタクリレート共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、塩素化ポリエチレン、ナイロン、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリカーボネート等が挙げられる。
無機フィラーを具体的に例示すると、石英、無定形シリカ、シリカジルコニア、シリカチタニア、フルオロアルミノシリケート、クレー、酸化アルミニウム、タルク、雲母、カオリン、ガラス、硫酸バリウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化チタン、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、リン酸カルシウム等が挙げられる。
上記フィラーのうち、機械的強度や分散性の良好さを勘案すると、無定形シリカ、シリカジルコニア、シリカチタニア等のシリカを主成分として含有するシリカ系フィラーが特に好ましい。
さらに、上記無機フィラーは、シランカップリング剤に代表される表面処理剤で処理することが、重合性単量体とのなじみをよくし、機械的強度や耐水性を向上させる上で望ましい。表面処理の方法は公知の方法で行えばよく、シランカップリング剤としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等が好適に用いられる。
また、上記種々の無機フィラーを分散、含有したラジカル重合性単量体混合物を重合硬化させて得られる無機酸化物とポリマーの複合体を粉砕して得られる無機有機複合フィラーも好適に使用される。
これらフィラーの形状は特に限定されず、通常の粉砕により得られる様な粉砕形フィラー、あるいは球状フィラーでもよい。フィラーの粒子径は、特に限定されるものではないが、操作性の点で100μm以下のものが好適に使用される。
特に、機械的強度、表面滑沢性、操作性、レジン硬化体上への塗布性が良好であることから、サブミクロンの球状フィラーが好適に使用できる。好適なフィラーの例としては、一次粒子の平均粒子径が0.1〜1ミクロンの範囲にある略球形状無機粒子、一次粒子の平均粒子径が0.01〜0.1ミクロンの範囲にある無機微粒子の混合物が挙げられる。
また、フィラーの配合量は、(A)重合性単量体成分100質量部に対し、該フィラーを10〜900質量部添加するのが好ましく、さらには100〜400質量部添加するのがより好ましい。10質量部以下だとオペークペースト自体の強度が低下するおそれがあり、900質量部以上だとオペークペーストの操作性が低下するおそれがあるため好ましくない。
本発明における(D)顔料としては、歯科用として公知のものが何ら制限なく使用できる。顔料の配合によって、本発明のペーストには、0.5mm厚さの硬化体のコントラスト比Yb/Ywが0.8以上の性状が備わり、オペークペーストとして金属色の遮蔽性が付与される。また、顔料の配合の調整により、歯牙に類似した色調を調整することが可能になる。
本発明において、こうした顔料は公知の有機顔料、無機顔料が使用される。代表的な顔料としては、酸化チタン、亜鉛華、酸化ジルコニウム、チタンイエロー、黒酸化鉄、黄酸化鉄等の無機顔料、クロモフタールレッド、クロモフタールイエローなどの縮合アゾ顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンなどのフタロシアニン系などが挙げられる。その中でも酸化チタン、クロモフタールイエロー、クロモフタールレッド、クロモフタールブルー等がさらに好適に使用される。このうち、顔料の分散性を良好にする効果がより顕著に発揮される観点から、無機顔料が好ましく酸化チタンが最も好ましい。
これらの顔料の平均粒子径は、一般に0.03〜3.0μmであるが、分散性が特に不良である平均粒子径が0.1〜1.0μmのものにおいて特に効果的である。
これらの顔料は、ペーストに対して、前記したとおり0.5mm厚さの硬化体のコントラスト比Yb/Ywが0.8以上になる量が配合される。ここで、本発明におけるコントラスト比とは透明性を表す尺度であり、JIS Z8701に規定されるXYZ表色系の三刺激値のうち明るさに関するY値を用いて算出するものである。具体的には、一定厚みの試料板に黒背景、もしくは白背景を接触させ、標準の光Cを照射した際の反射光におけるY値を読み取る。黒背景の場合のYをYb、白背景の場合のYをYwとすると、コントラスト比はYb/Ywから求められる。コントラスト比の値が1に近いほど不透明な材料であり、0に近いほど透明な材料であることを示す。金属色を遮蔽するためには、コントラスト比が1に近いほど良い。
オペークペーストにおいて、このコントラスト比は、0.9〜1.0であることが特に好適である。コントラスト比が0.8未満である場合、十分な金属遮蔽性を得ることができなくなる。
オペークペーストにおける上記コントラスト比の調整は、顔料の種類及び添加量に依存するところが大きい。オペークペーストのコントラスト比を前記値にする観点からは、顔料の配合は、一般的に、(A)重合性単量体100質量部に対して、2〜25質量部の範囲、より好ましくは3〜20質量部の範囲から、所望する該コントラスト比の値や、その他、硬化体の機械的強度等の物性の調整、さらには、後述するコントラスト比を変更できるその他の要件の状況を考慮して、採択されるのが普通である。前記した一般式A1〜12で示される含硫黄重合性単量体を用いて顔料の分散性の良好にする効果をより顕著に発揮させる観点からも、顔料は、(A)重合性単量体100質量部に対して2質量部以上配合されているのがより好ましく、特に、5質量部以上配合されている場合に効果が顕著に発揮される。
前記のとおりオペークペーストのコントラスト比は、上記顔料の種類、配合量に関する要件の他、フィラーの種類(屈折率、粒径)や配合量、重合性単量体の屈折率等を変更することによっても調整することができる。例えば、通常、オペークペーストの硬化体のコントラスト比は、フィラーの屈折率と重合性単量体を含むマトリックスの硬化体の屈折率の差によって決定し、差を小さくするほど透明に、差を大きくするほど不透明にすることができる。
このとき、硬化前の重合性単量体を含むマトリックスの屈折率とフィラーの屈折率との差の絶対値と、硬化後の重合性単量体を含むマトリックスの屈折率とフィラーの屈折率との差の絶対値の差は、小さくなるように調節するのが好ましい。これは、重合硬化の前後で透明性の変化が小さくし、塗布した段階で最終的な歯冠修復物の色調を確認しやすくするためである。
このように、主成分であるフィラーや重合性単量体の組成を変更することでコントラスト比を調整する方法においては、その他の物性、例えば、機械的強度や操作性に及ぼす影響が大きくなり、設計が容易でなくなる場合がある。このような場合には、上記顔料による調整を適宜に組合せて実施することにより、上記要求されるその他の物性を維持しつつ所望のコントラスト比を実現するのが好ましい。
具体的には、酸化チタン、亜鉛華、酸化ジルコニウム等の屈折率の高い顔料を添加することによって、容易にコントラスト比を高くすることができる。これらの顔料は白顔料として、本発明のペーストの色調を調整する上でも重要である。
顔料は少量の配合で大幅に色調が変わってしまうことがしばしばあるため、顔料の配合量を制御するためには、予め適当な希釈材中に分散させたものである顔料マスターを使用するのが効果的である。
なお、本発明のオペークペーストの硬化体はその上部に築盛する硬質レジンの背景色として反映されるため、これ自体も天然歯と近似した色調を有することがより好ましい。好ましい色調の範囲を例示すれば、CIELab表色系における0.1mm硬化体の白背景条件下での測色値が、L*が50〜100、a*が−10〜20、b*が0〜50の範囲にあることが好ましい。
また、本発明のオペークペーストには、必要に応じて他の成分を添加することができる。具体例を挙げれば、エタノール等の有機溶媒、ブチルヒドロキシトルエン、メトキシハイドロキノン等の重合禁止剤、4−メトキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2−(2−ベンゾトリアゾール)−p−クレゾール等の紫外線吸収剤、等の硬化時間調整剤、色素、及び香料等のその他の成分を添加することができる。
本発明のオペークペーストの製造方法は特に限定されるものではなく、公知の歯科用硬化性組成物の製造方法に準じて行えば良く、例えば、それぞれ所定量の重合性単量体、光重合開始剤、フィラー、含硫黄重合性単量体、顔料、並びに必要に応じて配合される上記各種任意成分を混合し、均一のペーストになるまで混練することにより調製することが出来る。
本発明のオペークペーストが接着対象とする貴金属は、硬質レジン製の歯科用補綴物の作製において使用する貴金属フレームの材質として知られるものが制限なく対象になる。具体的には、金、銀、パラジウム、白金、インジウム、亜鉛、スズ等の金属の中から、貴金属を主として所定の割合で合金としたものが挙げられるが、本発明のオペークペーストとの接着性の良好さを勘案すれば、金、銀、パラジウムなどを主とした合金であるのが好ましい。
一方、貴金属フレームに塗布された硬化された本発明のオペークペーストの硬化層の上に築盛されて硬化される硬質レジンとしては、歯冠形成用として知られる公知のものが制限なく対象になる。重合性単量体、光重合開始剤、フィラーを主成分とする硬化性組成物であり、具体的には、パールエステ(商品名、トクヤマデンタル社)、ソリデックス(商品名、松風社)、セラマージュ(商品名、松風社)、エステニア(商品名、クラレメディカル社)、エステニアC&B(商品名、クラレメディカル社)、グラディア(商品名、ジーシー社)、アートグラス(商品名、ヘレウスクルツァー社)等、市販されている一般的な硬質レジンが挙げられる。
本発明のオペークペーストの使用方法は、特に制限されるものではなく一般的な硬質レジン製の歯科用補綴物の作製方法に従えばよい。具体的には、鋳造された貴金属フレームの表面をサンドブラスト等で処理し、本発明のオペークペーストを筆などで塗布し、光重合で硬化する。光重合装置としては、技工用、診療用に関わらず、市販のものが使用できる。また、本発明のペーストを光重合させた上から、さらに既存のオペーク材を塗布しても良く、硬質レジンや充填用コンポジットレジンを築盛しても良い。本発明のペーストは口腔内外を問わず好適に使用できる。
また、本発明のペーストは、一般的に筆などで塗布して使用するため、適当な流動性を有する事が好ましい。好適な粘度としては3〜300ポイズ、好ましくは5〜100ポイズの範囲である。
流動性については、一般的にフィラーの配合比や重合性単量体の粘度によって調製可能である。
以下に本発明に関する実施例と比較例を示すが、本発明は該実施例に限定されるものではない。本発明中並びに実施例に示した略称・略号については次の通りである。
名称または構造
・硫黄原子を含有する重合単量体;
Figure 0005110845

・その他の重合性単量体
3G:トリエチレングリコールジメタクリレート
D−2.6E:2,2−ビス(4−(メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル)プロパン
UDMA:1,6−ビス(メタクリルエチルオキシカルボニルアミノ)2,2,4−トリメチルヘキサン
・光重合開始剤
CQ:カンファーキノン
TPO:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド
DMBE:4−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル
DMPT:N,N−ジメチル−p−トルイジン
DMEM:N,N−ジメチルアミノエチル メタクリレート
・フィラー;
F−1:平均粒径0.2μm球状シリカ−ジルコニア、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン表面処理物
F−2:平均粒径;3.0μm不定形シリカ-ジルコニア、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン表面処理物
・顔料
酸化チタン:平均粒径0.25μm
黄顔料:ピグメントイエロー95
赤顔料:ピグメントレッド166
青顔料:ピグメントブルー60
なお、物性の評価は以下の方法で行った。
(1) コントラスト比
オペークペーストを使用して、歯科用可視光線照射器(デメトロンLCT カー社製)を用いて0.5mm厚さの硬化体を作製し、色差計(東京電色社製)で黒背景、白背景でXYZ表色系の三刺激値のうち明るさに関するY値をそれぞれ測定し、測定値を下式(C)に代入してコントラスト比を得た。なお、後述するペースト均一性目視試験において、×評価になるような顔料の分散性の悪い試料では、均質性の良い部分にて測定した。
Yb(黒背景のY値)/Yw(白背景のY値)=コントラスト比
(2) 接着性測定方法
歯科用貴金属合金に対する接着強さ被着体である、歯科用金−銀−パラジウム合金「金パラ12」(トクヤマデンタル社製 10×10×3mm)と純金板(10×10×3mm)をそれぞれ#1500の耐水研磨紙で磨いた後にサンドブラスト処理し、その処理面に接着面積を固定するために4mmφの穴を開けた接着テープを貼り付けた。この面に実施例または比較例のオペークペーストを直接充填し、歯科用可視光線照射器で光照射を行った。次いで、あらかじめサンドブラスト処理を行った8mmφ×18mmのSUS304製丸棒を、合成瞬間接着剤(東亞合成株式会社製「アロンアルファ」(登録商標))を滴下した接着面に押しつけて接着を行った。1時間後に接着試験片を37℃水中に浸漬し、24時間後、島津製作所製オートグラフ(クロスヘッドスピード10mm/分)を用いて引張接着強さを測定した。各々6個の試験片の測定値を平均し、測定結果とした。また、その標準偏差も求めた。
(3) 金属色遮蔽性
金属面にオペークペーストを塗布し、歯科用可視光線照射器で硬化させた。これを三回繰り返した際の、塗布表面の色調を目視で評価し、ペースト自身の色調と同等の色調を示すものについては○、ペースト自身の色調よりも暗い外観を示すものについては×とした。
(4) ペースト均一性目視試験
金属面にオペークペーストを塗布してその塗布面を目視により観察した際に、ペーストが全て均一な外観ならば◎、微小な斑が僅かに確認されるものの、ほぼ均一な外観であり、使用にあたり問題がないならば○、凝集による大きな班やムラが認められ、均一な外観でないものについては×とした。
実施例1
0.32gのMTU−6、3.68gの3G、0.04gのCQ、0.04gのDMBEからなるマトリックスモノマーをあらかじめ調製しておく。次に、F−1 6gとマトリックスモノマー4gと酸化チタン0.48gをメノウ乳鉢に入れ、暗所にて十分に混練し均一な低粘度ペーストにした後に脱泡し、オペークペーストとした。
このように調製したオペークペーストを用いて、純金、歯科用貴金属合金に対する接着強度を測定した。その結果、純金に対し13.6±4.2MPa、金パラ12に対し13.8±2.9MPaの高い接着強さを得た。また、金属に実施例1のオペークペーストを塗布した後に硬化させて目視で評価したところ、金属色を遮蔽しており、オペークペーストの性状は均一であった。その際のオペークペーストの硬化体のコントラスト比はYb/Yw=0.995であった。
実施例2〜12
実施例1と同様に、表1に示す組成のオペークペーストを調製し、純金、歯科用貴金属合金「金パラ12」に対する接着強度を測定した。その結果、表2に示したように、いずれの組成においても高い接着強さが得られた。また、その際の0.5mm厚さの硬化体のコントラスト比はいずれもYb/Yw=0.8以上であり、金属色を遮蔽していた。さらに、全ての実施例において、ペーストの性状はほとんど均一か全て均一のいずれかであった。
実施例13
実施例1と同様に表1に示す組成に、黄顔料であるピグメントイエロー95を0.004g、赤顔料であるピグメントレッド166を0.001g、青顔料であるピグメントブルー60を0.00048gを加え、歯牙に近い色調のオペークペーストを調整し、純金、歯科用貴金属合金「金パラ12」に対する接着強度を測定した。その結果、表2に示したように高い接着力が得られ、また、金属色を遮蔽していた。さらに、0.5mm厚硬化体のコントラスト比はYb/Yw=0.994であった。また、ペーストの性状は全て均一であった。
比較例1〜2
表1に示す組成のオペークペーストを調製し、純金、歯科用貴金属合金「金パラ12」に対する接着強さを測定した。その結果、表2に示したように、硫黄原子を含有する重合性単量体を添加しなかった例(比較例1)ではいずれの金属に対しても接着強さは低下した。さらに、顔料を添加しなかった例(比較例2)ではコントラスト比はYb/Yw=0.326であり、金属遮蔽性が見られなかった。
Figure 0005110845
Figure 0005110845

Claims (3)

  1. (A)下記一般式A1、A4、A5及びA9で示される化合物から選ばれる少なくとも一種の硫黄原子を含有する重合性単量体を含有する重合性単量体成分、
    Figure 0005110845
    {式中、R は水素原子またはメチル基であり、R は炭素数1〜12の2価の飽和炭化水素基であり、Zは−OC(=O)−基であり(但し、右端の炭素原子は不飽和炭素に結合し、左端の酸素原子は基R に結合している。)、Z’は−OC(=O)−基(但し、右端の炭素原子が不飽和炭素に結合し、左端の酸素原子が基R に結合している。)又は結合手であり(ここで、基Z’が結合手の場合とは基R と不飽和炭素が直接結合した状態をいう。)、Yは−N(R’)−である(R’は水素原子、又は炭素数1〜5のアルキル基である。)。}
    (B)光重合開始剤、
    (C)フィラー、および
    (D)顔料
    を含有する重合性組成物からなり、0.5mm厚さの硬化体のコントラスト比Yb/Ywが0.8以上であることを特徴とする、歯科貴金属接着性オペークペースト。
  2. 一般式A1、A4、A5及びA9で示される化合物において、Rが夫々炭素数5〜12の2価の飽和炭化水素基である請求項1に記載の歯科貴金属接着性オペークペースト。
  3. 重合性組成物が、(A)硫黄原子を含有する重合性単量体を0.01〜10質量%含有する重合性単量体成分100質量部、
    (B)光重合開始剤0.003〜5質量部、
    (C)フィラー10〜900質量部、および
    (D)顔料2〜25質量部
    からなるものである請求項1又は2に記載の歯科貴金属接着性オペークペースト。
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