JP5109932B2 - におい測定装置 - Google Patents

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Description

本発明は、飲食品類の製造、各種工業製品の製造、環境測定などの各種分野に利用される、におい(香気、臭気など全て含む)を測定するにおい測定装置に関する。
近年、におい物質に対して応答するにおいセンサを利用したにおい測定装置が開発されている(例えば特許文献1、2など参照)。このようなにおい測定装置では、複数のにおいセンサで取得された検出信号を基に、例えばニューラルネットワークなどの多変量解析演算処理を実行することにより、においの質やにおいの強度を数値化して表現することができるようになっている。
ところで、従来、においの識別や評価は、実際に人間の嗅覚を用いて行われる官能試験が一般的である。そこで、人間が実際ににおいを嗅いだときの官能的な評価結果と上記のようなにおい測定装置における測定結果とを対応付ける又は関連付けることは重要な作業である。特許文献3に記載の装置では、予め評価者による官能評価の得られた既知のサンプルを測定し、官能値と測定結果との関係を求めてこれを記憶しておき、未知のサンプルを測定したときに、上記記憶しておいた関係を参照してその測定結果から官能値を算出することができるようになっている。
しかしながら、特許文献3にも記載があるように、官能値は臭気強度やにおいの質(甘さ感、焦げ臭感、フラワー感など)についてパネラーが求めた評価値であり、結局のところ、「殆どにおわない」、「弱いにおい」、「強いにおい」といった感覚的な指標を数値化したものにすぎず、その数値自体の客観性は乏しいものである。そのため、複数のにおいを比較するような場合に、その官能値の差でもって評価することは必ずしも適当でなく、再現性にも欠ける。
また、こうした官能値を求めるための官能評価用のサンプルは単に或るにおいを希釈したり濃縮したりするだけでなく、複数のガスを適宜の割合で混合する作業が必要となる場合があり、一般的に官能値を測定するのはかなり手間が掛かり繁雑な作業である。
特開2003−315298号公報 特許第3873491号公報 特開2001−305088号公報
本発明は上記課題に鑑みて成されたものであり、その第1の目的は、においの官能的な評価を、より客観性の高い定量値をもって行うことができるにおい測定装置を提供することにある。また、本発明の第2の目的は、評価者による官能評価に関する作業を簡単に行うことができ、測定の効率化を図ることができるにおい測定装置を提供することにある。
上記課題を解決するために成された本発明は、試料ガス中の測定対象においを測定するにおい測定装置であって、
a)異なる応答特性を有する複数のにおいセンサを含む測定手段と、
b)主においガスに所定の混合割合で測定対象においガスを混合した既知サンプルガスを調製するガス調製手段と、
c)前記ガス調製手段により調製された既知サンプルガスを評価者が嗅いだときに官能的に差が生じる弁別点の混合割合を情報として取得するものであって、前記ガス調製手段により調製されたガスの少なくとも一部を評価者が嗅ぐためにガスを放出するにおい嗅ぎ手段と、評価者が弁別点を指示する指示手段と、を含み、前記ガス調製手段が前記混合割合を変化させつつガスを調製しているときに前記指示手段の指示を受けて、その時点での混合割合を情報として取得する弁別点取得手段と、
d)前記弁別点に対応した混合割合を基準単位として主においガスに対する測定対象においガスの混合割合を前記ガス調製手段により変えたときのガスを前記測定手段により測定し、その測定結果に基づいて弁別点を基準単位とした評価点を求めるための検量線を作成する検量線作成手段と、
e)未知のサンプルガスを前記測定手段により測定した結果を前記検量線に照らし、弁別点を基準単位とした評価点を算出する定量化手段と、
を備えることを特徴としている。
上記検量線は、測定手段による測定結果と弁別点を基準単位とした評価点との関係を示す関係式と言い換えることができる。
また、上記「主においガス」とは必ずしもにおいを有していない無臭のガスでもよい。「主においガス」が有臭ガスの場合には、「評価者が嗅いだときに官能的に差が生じる」とは何らかのにおいの変化を認識することをいい、「主においガス」が無臭ガスの場合には、「評価者が嗅いだときに官能的に差が生じる」とは何らかのにおいがし始めることを認識することをいう。さらにまた上記「主においガス」は、純粋な主においガスに既に適宜の割合で測定対象においガスが混合されたガスでもよい。この場合、「評価者が嗅いだときに官能的に差が生じる」とは、測定対象においの強さなどの変化を認識することをいう。
本発明に係るにおい測定装置では、ガス調製手段において、主においガスへの測定対象においガスの混合割合が徐々に(連続的又は段階的に)変化するように調製されたガスを評価者が嗅ぎながら、においの変化を認識すると指示手段により指示を行う。すると、そのときの混合割合が基準単位とされ、例えばこの基準単位を整数倍する混合割合のガスがガス調製手段で調製される。検量線作成手段はこのように調製された各ガスを測定手段により測定し、その測定結果に基づいて弁別点、つまり上記混合割合を基準単位とした評価点を求めるための検量線を作成する。即ち、この評価点は評価者の官能的な評価ではあるものの、その数値は、弁別点を基準単位、例えば評価点「1」として、その整数倍で表した客観的な値である。したがって、この検量線に基づいて算出された評価点をもって、2つのサンプルのにおいの比較を客観的に行うことができる。
本発明に係るにおい測定装置によれば、評価者の官能的な評価に基づくにおいの弁別点を基準単位としたスケール軸に則って、任意のサンプルの官能評価を定量的に行うことができる。また、本発明に係るにおい測定装置によれば、当該装置により複数のにおいガスの混合による調製と弁別点の測定とが行えるので、予め別の装置等を用いて官能評価を行う必要もなく、効率的な測定が可能となる。さらにまた、実際に評価者が弁別点を判断した同じガスを用いて、評価点を求めるための検量線の取得作業が行える。そのため、検量線の正確性が向上し、未知のサンプルの評価点の算出精度も向上する。
本発明の一実施例であるにおい測定装置について、添付図面を参照して説明する。図1は本実施例のにおい測定装置の概略ブロック構成図である。
このにおい測定装置は、弁別点測定機能を有するガス調製部1と、測定部2と、中央制御部31と、を備える。ガス調製部1は、サンプルバッグ11A、サンプルボンベ11B、液体サンプル容器11Cなど、各種の形態で用意された既知のサンプルガスをそれぞれ適宜の流量で供給するとともにこれを混合し、さらには必要に応じて希釈等するための調製部12と、各サンプルガスの流量を制御する調製制御部13と、評価担当者100が調製されたサンプルガスのにおいを嗅ぐためのスニッフィングポート15と、調製されたガスの一部をスニッフィングポート15から放出するためのバルブ14と、バルブ14の開閉を制御する弁別制御部16と、評価担当者100が弁別点(においの変化の識別点)を指示するための弁別点指示部17と、を含む。
測定部2は、測定対象である未知のサンプルガスを吸引して採り込む吸引口21と、吸引したサンプルガスに対し水分除去などの各種の前処理を施す前処理部22と、未知のサンプルガスとガス調製部1において調製されたガスとを切り替える流路切替バルブ23と、応答特性が互いに異なる複数のにおいセンサ25を内装するセンサセル24と、流路切替バルブ23で選択されたガスをセンサセル24に引き込むためのポンプ26と、においセンサ25による検出信号をデジタル信号に変換するA/D変換(ADC)27と、デジタル化された検出データを解析処理するデータ処理部28と、後述する弁別点基準単位スケールの下で作成された検量線(又はそれを表現した計算式等)を記憶しておく検量線記憶部29と、ガスのにおい測定のために各部を制御する測定制御部30と、を含む。
中央制御部31には、上記弁別点指示部17のほか、入力部32や表示部33が接続されており、調製制御部13、弁別制御部16、測定制御部30などを統括的に制御する。なお、中央制御部31や測定部2に含まれるデータ処理部28などは、汎用のパーソナルコンピュータ(PC)をハードウエア資源とし、このPCに予めインストールされた専用の制御/処理ソフトウエアをPC上で動作させることでその機能を達成するものとすることができる。また、図1では、説明を分かり易くするために弁別点指示部17を入力部32と分けて記載しているが、実際には、操作キーやポインティングデバイスである入力部32において特定の操作(例えばポインティングデバイスで表示部33の画面上の特定のボタンをクリックする等)が行われたときに弁別点の指示であると認識する構成とすることができる。
においセンサ25は、各種のガス成分に応じて抵抗値が変化する酸化物半導体センサなどのほか、導電性高分子センサや、水晶振動子やSAWデバイスの表面にガス吸着膜を形成したセンサなどを用いることができる。
次に、本実施例のにおい測定装置を利用した典型的な測定動作について、図2のフローチャートに従って説明する。
まずオペレータは、入力部32より、ガス調製部1において測定(評価)対象であるにおいガスが用意されたポートと、この測定対象においガスが混合される中心となるにおい(以下「中心におい」と称す)ガスが用意されたポートとを指示した上で、弁別作業の開始を指示する。すると、中央制御部31を通して指示を受け取った調製制御部13は、まず指示された中心においガスのみを選択して流すように調製部12を制御する。また弁別制御部16はバルブ14を開き、スニッフィングポート15から調製されたガスを流出させる(ステップS1)。このとき、中央制御部31は表示部33又は図示しないブザーなどにより、中心となるにおいであることを評価担当者100に報知する。評価担当者100はスニッフィングポート15でガスのにおいを嗅ぎ、このにおいを基準(混じりなし)においとして記憶に留める。
その後、調製制御部13は、中心においガスと測定対象においガスとを選択し、中心においガスに測定対象においガスを所定の割合で混合させたガスを調製するように調製部12を制御する。初めは予め決められた最小の割合だけ測定対象においガスを混合するようにし、時間経過に従って徐々にその混合割合を増加させてゆく(ステップS2)。評価担当者100は、調製されたガスのにおいをスニッフィングポート15で継続的に嗅ぎ、上記基準においからのにおいの変化を認識した時点で弁別点指示部17を操作する(ステップS3でYes)。この操作による弁別点指示があるまで、ステップS2により測定対象においガスの混合割合が増やされる。
ステップS3で弁別点指示があると、調製制御部13はその時点での中心においガスと測定対象においガスと混合比を内部に記憶する(ステップS4)。さらに、このときの混合比を基準単位(例えば「1」)としたときのスケール軸と中心においガス/測定対象においガスの混合比との関係を示す対照表を作成する(ステップS5)。
いま一例として、中心においが香料無添加のアイスクリームのにおいであり、測定対象においが例えばバニリン等の香料である甘い香りであるとする。この場合、調製部12のガス採取ポートには上記アイスクリームから発したサンプルガスと甘い香りのサンプルガスとの2種類が用意される。上記ステップS1では香料無添加のアイスクリームのにおいがスニッフィングポート15から放出され、評価担当者100はこれを嗅いでこれが基準においであることを認識する。次に、アイスクリーム由来のサンプルガスに甘い香りガスが少しずつ混合されて調製されたガスを評価担当者100が嗅ぎ、基準ガスからのにおいの変化を認識した時点で弁別点指示部17を操作する。このときの弁別点における、甘い香りガスとアイスクリーム由来のにおい(中心におい)ガスとの混合比が1:99であったとする。すると、ステップS5では、これを甘い香りガスの基準単位とし、この基準単位に対し等間隔のスケール軸を持つ図3に示すような対照表を作成する。即ち、甘い香りガスの基準単位を整数倍したスケールでは、混合ガス中の甘い香りガスの混合割合が同じ整数倍になっている。また、甘い香りスケール上の評価値は混合ガス中の甘い香りガスの混合割合(%)を示している。
なお、弁別点をより正確に求めるために、複数名の評価担当者がそれぞれ複数回弁別点の識別作業を繰り返し、平均を計算するようにするとよい。
次に、調製制御部13は上記対照表に載っているにおいスケールの評価値に対応した混合比のガスを調製する(ステップS6)。例えば、図3の例では、甘い香りスケール上の評価値が「1」である混合比1:99のガスを調製する。測定制御部30はポンプ26を作動させ、調製されたガスを流路切替バルブ23を介してセンサセル24に引き込む。複数のにおいセンサ25はセンサセル24に充満したガスに対してそれぞれ応答し、各においセンサ25の検出信号はA/D変換器27によりデジタル化され、データ処理部28に入力される。データ処理部28は、複数のにおいセンサ25による検出データを一旦記憶する(ステップS7)。
それから、対照表に載っているにおいスケールの評価値に対応した混合比のガス測定を全て終了したか否かを判定し(ステップS8)、未終了であればステップS6へと戻る。したがって、評価値「1」→「2」→…と順番に、つまり、混合比が1:99、2:98、…のガスに対するにおい測定が順次実行され、検出データが蓄積される。全ての測定が終了すると、データ処理部28は、例えば重回帰分析、主成分分析、ニューラルネットワークなどの多変量解析処理を実行し、におい検出データと甘い香りスケールで表現される評価値との相関を求め、甘い香りスケールで表現される評価値と複数の検出データとの関係を表す検量線を作成する(ステップS9)。この検量線は、実際には、複数のにおいセンサ25による検出データをパラメータとし評価値を求める関係式Fで表され、この関係式Fを検量線記憶部29に格納しておけばよい。
これにより、甘い香りの弁別点を基準単位とするスケール軸で任意のサンプルガス中の甘い香りを定量的に評価するためのデータが、本におい測定装置に保持される。
上記の中心においガスと測定対象においガスとが未知の混合比で混じった未知サンプルガスを測定・評価する際には、測定制御部30は流路切替バルブ23により前処理部22を通したガスをセンサセル24に導入するように流路を切り替える。そして、ポンプ26の動作により未知サンプルガスをセンサセル24に引き込み、においセンサ25による検出データをデータ処理部28に取り込む。データ処理部28では検量線記憶部29に格納してある上記検量線(関係式)を参照して、検出データから甘い香りスケール軸上の評価値を計算し、これを表示部33より出力する(ステップS10)。
これにより、例えば図3に示した甘い香りスケール軸上で、未知サンプルガスの評価値は「3」などと求まる。これは弁別点に対して3倍の濃さの甘い香りであることを意味する。従来のにおい測定装置では、こうしたにおいの相違は、「強いにおい」、「弱いにおい」、「殆ど匂わない」といった官能的な表現でしか表すことができなかったが、本実施例のにおい測定装置によれば、弁別点を基準単位とした評価値として点数化されることになる。その結果、未知サンプルガス中の測定対象においの強さをより客観的に知ることができ、例えば複数の未知サンプルガスの比較も客観性をもって行える。
なお、上記実施例の説明では、中心においガスに測定対象においガスを混合して、中心においの変化が識別される時点を弁別点としたが、中心においガスは実質的に「におい」を有さない無臭のガスであってもよい。その場合には、中心においガスと測定対象においガスとの混合ガスは、測定対象においガスが中心においガスで希釈されたガスであると考えることができ、弁別点とは測定対象においが存在することが識別される点となる。
また、中心においガスに測定対象においガスが既に混合された状態にあるガスを元ガスとし、これにさらに測定対象においガスを追加していったときににおいの変化が認識される点を弁別点としてもよい。この場合、弁別点を求めることは弁別閾値(感覚強度の差を検知できる最小濃度差)を求めることと同じである。
また、上記実施例は本発明の一例にすぎず、本発明の趣旨の範囲で適宜変形、修正、追加等を行っても本願特許請求の範囲に包含されることは明らかである。
本発明の一実施例であるにおい測定装置の概略ブロック構成図。 本実施例のにおい測定装置を利用した典型的な測定動作のフローチャート。 弁別点を基準単位としたスケール軸とにおい混合比との関係の一例を示す図。
符号の説明
1…ガス調製部
11A…サンプルバッグ
11B…サンプルボンベ
11C…液体サンプル容器
12…調製部
13…調製制御部
14…バルブ
15…スニッフィングポート
16…弁別制御部
17…弁別点指示部
2…測定部
21…吸引口
22…前処理部
23…流路切替バルブ
24…センサセル
25…においセンサ
26…ポンプ
27…A/D変換器
28…データ処理部
29…検量線記憶部
30…測定制御部
31…中央制御部
32…入力部
33…表示部
100…評価担当者

Claims (1)

  1. 試料ガス中の測定対象においを測定するにおい測定装置であって、
    a)異なる応答特性を有する複数のにおいセンサを含む測定手段と、
    b)主においガスに所定の混合割合で測定対象においガスを混合した既知サンプルガスを調製するガス調製手段と、
    c)前記ガス調製手段により調製された既知サンプルガスを評価者が嗅いだときに官能的に差が生じる弁別点の混合割合を情報として取得するものであって、前記ガス調製手段により調製されたガスの少なくとも一部を評価者が嗅ぐためにガスを放出するにおい嗅ぎ手段と、評価者が弁別点を指示する指示手段と、を含み、前記ガス調製手段が前記混合割合を変化させつつガスを調製しているときに前記指示手段の指示を受けて、その時点での混合割合を情報として取得する弁別点取得手段と、
    d)前記弁別点に対応した混合割合を基準単位として主においガスに対する測定対象においガスの混合割合を前記ガス調製手段により変えたときのガスを前記測定手段により測定し、その測定結果に基づいて弁別点を基準単位とした評価点を求めるための検量線を作成する検量線作成手段と、
    e)未知のサンプルガスを前記測定手段により測定した結果を前記検量線に照らし、弁別点を基準単位とした評価点を算出する定量化手段と、
    を備えることを特徴とするにおい測定装置。
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