まず、本実施例に係る内燃機関始動制御装置を備えるハイブリッド車両の構成について、図1及び図2を用いて説明する。図1は、ハイブリッド車両及び駆動装置の概略構成を示す模式図である。図2は、駆動装置に設けられたデュアルクラッチ機構の構造を示す模式図である。
ハイブリッド車両1は、原動機となる内燃機関5及びモータジェネレータ(以下、単に「モータ」とも言う。)50と、内燃機関5で発生した機械的動力を伝達する機関出力軸8と、機関出力軸8を介して伝達された機械的動力を変速しトルクを変化させて伝達する駆動装置10と、駆動装置10から伝達された動力により回転する駆動輪88と、各部の動作を制御するハイブリッド車両用電子制御装置(以下「ECU」とも言う。ECU:Electronic Control Unit)100と、を有する。なお、モータ50は、機関出力軸8を介することなく、駆動装置10に機械的動力を伝達する。また、ハイブリッド車両1は、図1に示す以外にもハンドル、アクセル等の操作手段や、車両本体等、従来のハイブリッド車両と同様の車両を構成する種々の構成要素を有している。
内燃機関5は、燃料の化学的エネルギを燃焼により機械的エネルギに変換して出力する熱機関であり、ピストン往復動機関である。内燃機関5は、燃料噴射装置、点火装置、及びスロットル弁装置を備えている。この内燃機関5の各装置は、ECU100により制御される。次に、機関出力軸(クランク軸、出力軸)8は、一方の端部が内燃機関5と結合されており、他方の端部が後述する駆動装置10のデュアルクラッチ機構20の入力側に結合される。機関出力軸8は、内燃機関5で発生した機械的動力を駆動装置10に伝達する。また、機関出力軸8には、機関出力軸8の回転角位置(以下「クランク角」とも言う。)を検出するクランク角センサが設けられており、クランク角に係る信号をECU100に送出している。また、ECU100は、各部入力信号や、制御条件や、クランク角の検出結果に基づいて、内燃機関5の動作を制御することで、機関出力軸8から出力される機械的動力を調整する。
駆動装置10は、内燃機関5及びモータ50からの機械的動力を駆動輪88に伝達する動力伝達装置であり、機関出力軸8及びモータ50からの機械的動力を変速しトルクを変化させて、駆動軸80に向けて出力する。駆動装置10は、第1クラッチ21及び第2クラッチ22のいずれかを用いて内燃機関5の機関出力軸8からの機械的動力を後述する変速機構に伝達するデュアルクラッチ機構20と、内燃機関5から第1クラッチ21を介して伝達される機械的動力を、第1入力軸27で受けて、第1群の変速段(以下「ギヤ段」とも言う。)31,33,35,39のうちいずれか1つにより変速して、第1出力軸37から第1駆動ギヤ37c及び後述する動力統合ギヤ58を介して推進軸66に伝達可能な第1変速機構30と、内燃機関5から第2クラッチ22を介して伝達される機械的動力を、第2入力軸28で受けて、第2群の変速段42,44のうちいずれか1つにより変速して、第2出力軸48から第2駆動ギヤ48c及び後述する動力統合ギヤ58を介して推進軸66に伝達可能な第2変速機構40と、第1変速機構30及び/または第2変速機構40から伝達された機械的動力を伝達する動力統合ギヤ58及び推進軸66と、推進軸66に伝達された機械的動力を、減速すると共に駆動輪88に係合する左右の駆動軸80に分配する終減速装置70とを有している。
デュアルクラッチ機構20は、機関出力軸8と第1変速機構30との係合/解放状態、及び、機関出力軸8と第2変速機構40との係合/解放状態を切り替え、内燃機関5から出力され機関出力軸8に伝達された機械的動力を第1変速機構30及び/または第2変速機構40に伝達させる動力伝達装置である。また、後ほど詳述するが、デュアルクラッチ機構20は、第1変速機構30及び/または第2変速機構40から伝達された機械的動力を機関出力軸8及び内燃機関5にも伝達する。デュアルクラッチ機構20は、機関出力軸8と第1変速機構30の第1入力軸27とを係合させることが可能な摩擦クラッチ装置である第1クラッチ21と、機関出力軸8と第2変速機構40の第2入力軸28とを係合させることが可能な摩擦クラッチ装置である第2クラッチ22とを有している。なお、第1クラッチ21及び第2クラッチ22には、湿式多板クラッチや、乾式単板クラッチを用いることができる。
第1クラッチ21は、円板状の摩擦板を有し、摩擦板の摩擦力により機械的動力を伝達する摩擦式ディスククラッチ等で構成されている。第1クラッチ21は、内燃機関5の機関出力軸8と第1変速機構30の第1入力軸27との係合/解放状態を切り替える。第1クラッチ21は、機関出力軸8と第1入力軸27とを係合させることで、機関出力軸8と第1入力軸27とを一体に回転させ、内燃機関5から機関出力軸8を介して伝達された機械的動力を、第1変速機構30に伝達させることができる。また、第1クラッチ21は、機関出力軸8と第1入力軸27とを解放状態、つまり機関出力軸8と第1入力軸27とが係合していない状態とすることで、機関出力軸8から第1入力軸27に、機械的動力が伝達しないようにすることもできる。または、同様に第1クラッチ21により、係合/解放状態を切り替えることで、第1入力軸27から機関出力軸8への機械的動力の伝達の可否も切り替えることができる。
一方、第2クラッチ22は、第1クラッチ21と同様に、摩擦式ディスククラッチ等で構成されている。第2クラッチ22は、内燃機関5の機関出力軸8と第2変速機構40の第2入力軸28との係合/解放状態を切り替える。第2クラッチ22は、機関出力軸8と第2入力軸28とを係合させることで、機関出力軸8と第2入力軸28を一体に回転させ、内燃機関5から機関出力軸8を介して伝達された機械的動力を、第2変速機構40に伝達することができる。また、第2クラッチ28は、機関出力軸8と第2入力軸22とを解放状態、つまり機関出力軸8と第2入力軸28とが係合していない状態とすることで、機関出力軸8から第2入力軸28に、機械的動力が伝達しないようにすることもできる。または、同様に第2クラッチ22により、係合/解放状態を切り替えることで、第2入力軸28から機関出力軸8への機械的動力の伝達の可否も切り替えることができる。
なお、このような、第1クラッチ21及び第2クラッチ22の係合状態と解放状態(非係合状態)との切替えは、アクチュエータを介してECU100により制御される。ECU100は、デュアルクラッチ機構20において、第1クラッチ21又は第2クラッチ22のうちいずれか一方を係合状態にして、他方を解放状態にすることで、内燃機関5からの機械的動力を、第1変速機構30及び第2変速機構40のうちいずれか一方に伝達させることができる。
ここで、図2を用いてデュアルクラッチ機構20の詳細な構造について説明する。図2に示すように、デュアルクラッチ機構20は、駆動ギヤ14cと、第1ギヤ16と第2ギヤ18とを有する。ここで、第1変速機構30の第1入力軸27と第2変速機構40の第2入力軸28とは、所定の間隔を空けて平行に延びるよう配置されている。駆動ギヤ14cは、機関出力軸8の端に結合されており、第1ギヤ16及び第2ギヤ18と噛み合っている。また、第1ギヤ16は、第1クラッチ21に結合されており、第2ギヤ18は、第2クラッチ22に結合されている。内燃機関5から機関出力軸8に伝達された機械的動力は、駆動ギヤ14cから第1ギヤ16を介して第1クラッチ21に伝達され、駆動ギヤ14cから第2ギヤ18を介して第2クラッチ22に伝達される。
第1変速機構30及び第2変速機構40は、前進に第1速ギヤ段31から第5速ギヤ段35までの5つの変速段を有しており、後進に1つの変速段、後進ギヤ段39を有している。前進の変速段である第1速〜第5速ギヤ段31〜35の減速比は、第1速ギヤ段31、第2速ギヤ段42、第3速ギヤ段33、第4速ギヤ段44、第5速ギヤ段35の順に小さくなるよう設定されている。
第1変速機構30は、複数の歯車対を備えた平行軸歯車装置として構成されており、基本的に、第1入力軸27と、第1群の変速段と、第1出力軸37と、第1駆動ギヤ37cとを有する。ここで、第1群の変速段は、奇数段すなわち第1速ギヤ段31と、第3速ギヤ段33と、第5速ギヤ段35と、後進ギヤ段39とを有する。また、第1変速機構30は、さらに、第1速ギヤ段31と第1出力軸37との係合/解放状態を切り替える第1速カップリング機構31eと、第3速ギヤ段33と第1出力軸37との係合/解放状態を切り替える第3速カップリング機構33eと、第5速ギヤ段35と第1出力軸37との係合/解放状態を切り替える第5速カップリング機構35eと、後進ギヤ段39と第1出力軸37との係合/解放状態を切り替える後進カップリング機構39eと、を有する。また、第1変速機構30は、前進の変速段31,33,35のうち、第1速ギヤ段31が最も低速側の変速段となっている。
第1速ギヤ段31は、歯車対で構成されており、第1入力軸27に結合されている第1速メインギヤ31aと、第1出力軸37を中心に回転可能に設けられ、第1速メインギヤ31aと噛み合う第1速カウンタギヤ31cとを有する。また、第1速カップリング機構31eは、第1速カウンタギヤ31cと第1出力軸37との係合/解放状態を切り替える。
ECU100は、運転条件に基づいて、機械的動力を伝達するギヤ段として、第1速ギヤ段31を選択したら、第1速カップリング機構31eにより第1速カウンタギヤ31cと第1出力軸37とを係合させる。これにより、機械的動力は、第1入力軸27から第1速メインギヤ31a及び第1速カウンタギヤ31cを介して第1出力軸37に伝達される。第1変速機構30は、このようにして、第1入力軸27から受けた機械的動力を、第1速ギヤ段31により変速し、トルクを変化させて第1出力軸37に伝達する。
第3速ギヤ段33は、歯車対で構成されており、第1入力軸27に結合されている第3速メインギヤ33aと、第1出力軸37を中心に回転可能に設けられ、第3速メインギヤ33aと噛み合う第3速カウンタギヤ33cとを有する。また、第3速カップリング機構33eは、第3速カウンタギヤ33cと第1出力軸37との係合/解放状態を切り替える。
ECU100は、運転条件に基づいて、機械的動力を伝達するギヤ段として、第3速ギヤ段33を選択したら、第3速カップリング機構33eにより第3速カウンタギヤ33cと第1出力軸37とを係合させる。これにより、機械的動力は、第1入力軸27から第3速メインギヤ33a及び第3速カウンタギヤ33cを介して第1出力軸37に伝達される。第1変速機構30は、このようにして、第1入力軸27から受けた機械的動力を、第3速ギヤ段33により変速し、トルクを変化させて第1出力軸37に伝達する。
第5速ギヤ段35は、歯車対で構成されており、第1入力軸27に結合されている第5速メインギヤ35aと、第1出力軸37を中心に回転可能に設けられ、第5速メインギヤ35aと噛み合う第5速カウンタギヤ35cとを有する。また、第5速カップリング機構35eは、第5速カウンタギヤ35cと第1出力軸37との係合/解放状態を切り替える。
ECU100は、運転条件に基づいて、機械的動力を伝達するギヤ段として、第5速ギヤ段35を選択したら、第5速カップリング機構35eにより第5速カウンタギヤ35cと第1出力軸37とを係合させる。これにより、機械的動力は、第1入力軸27から第5速メインギヤ35a及び第5速カウンタギヤ35cを介して第1出力軸37に伝達される。第1変速機構30は、このようにして、第1入力軸27から受けた機械的動力を、第5速ギヤ段35により変速し、トルクを変化させて第1出力軸37に伝達する。
また、後進ギヤ段39は、第1入力軸27に結合されている後進メインギヤ39aと、後進メインギヤ39aと噛み合う後進中間ギヤ39bと、後進中間ギヤ39bと噛み合い、第1出力軸37を中心に回転可能に設けられたルーズ歯車である後進カウンタギヤ39cとを有している。また、後進カップリング機構39eは、後進カウンタギヤ39cと第1出力軸37との係合/解放状態を切り替える。
ECU100は、運転条件に基づいて、機械的動力を伝達するギヤ段として、後進ギヤ段39を選択したら、後進カップリング機構39eにより後進カウンタギヤ39cと第1出力軸37とを係合させる。これにより、機械的動力は、第1入力軸27から後進メインギヤ39a、後進中間ギヤ39b及び後進カウンタギヤ39cを介して第1出力軸37に伝達される。第1変速機構30は、このようにして、第1入力軸27から受けた機械的動力を、後進ギヤ段39により、回転方向を逆方向に変えると共に変速し、トルクを変化させて第1出力軸37に伝達する。
ここで、第1変速機構30の第1出力軸37には、第1駆動ギヤ37cが結合されており、第1駆動ギヤ37cは、動力統合ギヤ58と噛み合っている。また、動力統合ギヤ58には、推進軸66が結合されている。推進軸66は、後述する終減速装置70を介して、駆動輪88が結合された駆動軸80と係合している。つまり、第1変速機構30の第1出力軸37は、第1駆動ギヤ37c及び動力統合ギヤ58を介して駆動軸80と係合している。したがって、第1出力軸37に伝達された機械的動力は、第1駆動ギヤ37c及び動力統合ギヤ58を介して駆動軸80に伝達され、駆動軸80に結合された駆動輪88に伝達される。
なお、ECU100は、第1変速機構30の変速段31,33,35,39のうちいずれか1つの変速段を選択する場合、選択する変速段に対応するカップリング機構を係合状態にすると共に、第1変速機構30において選択していない変速段に対応するカップリング機構を解放状態にする。これにより、第1変速機構30は、第1入力軸27で受けた機械的動力を、選択された変速段で変速して、第1出力軸37に伝達し、駆動軸80に向けて出力することができる。
また、ECU100が、第1変速機構30の変速段31,33,35,39をいずれも選択しない場合、第1変速機構30のカップリング機構31e,33e,35e,39eを全て解放状態にする。これにより、第1変速機構30は、第1入力軸27と第1出力軸37との間における機械的動力の伝達を遮断することができる。
一方、第2変速機構40は、第1変速機構30と同様に、複数の歯車対を備えた平行軸歯車装置として構成されており、基本的に、第2入力軸28と、第2群変速段と、第2出力軸48と、第2駆動ギヤ48cとを有する。また、第2群の変速段は、偶数段、すなわち第2速ギヤ段42と、第4速ギヤ段44とを有する。また、第2変速機構40は、さらに、第2速ギヤ段42と第2出力軸48との係合/解放状態を切り替える第2速カップリング機構42eと、第4速ギヤ段44と第2出力軸48との係合/解放状態を切り替える第4速カップリング機構44eとを有する。また、第2変速機構40の第2入力軸28には、後述するモータ50のロータ52が結合されている。第2変速機構40の変速段42,44のうち、第2速ギヤ段42が最も低速側の変速段となっている。
第2速ギヤ段42は、歯車対で構成されており、第2入力軸28に結合されている第2速メインギヤ42aと、第2出力軸48を中心に回転可能に設けられ、第2速メインギヤ42aと噛み合う第2速カウンタギヤ42cとを有している。また、第2速カップリング機構42eは、第2速カウンタギヤ42cと第2出力軸48との係合/解放状態を切り替える。
ECU100は、運転条件に基づいて、機械的動力を伝達するギヤ段として、第2速ギヤ段42を選択したら、第2速カップリング機構42eにより第2カウンタギヤ42cと第2出力軸48とを係合させる。これにより、機械的動力は、第2入力軸28から第2速メインギヤ42a及び第2速カウンタギヤ42cを介して第2出力軸48に伝達される。第2変速機構40は、このようにして、第2入力軸28から受けた機械的動力を、第2速ギヤ段42により変速し、トルクを変化させて、第2出力軸48に伝達する。
第4速ギヤ段44は、歯車対で構成されており、第2入力軸28に結合されている第4速メインギヤ44aと、第2出力軸48を中心に回転可能に設けられ、第4速メインギヤ44aと噛み合う第4速カウンタギヤ44cとを有している。また、第4速カップリング機構44eは、第4速カウンタギヤ44cと第2出力軸48との係合/解放状態を切り替える。
ECU100は、運転条件に基づいて、機械的動力を伝達するギヤ段として、第4速ギヤ段44を選択したら、第4速カップリング機構44eにより第4カウンタギヤ44cと第2出力軸48とを係合させる。これにより、機械的動力は、第2入力軸28から第4速メインギヤ44a及び第4速カウンタギヤ44cを介して第2出力軸48に伝達される。第2変速機構40は、このようにして、第2入力軸28から受けた機械的動力を、第4速ギヤ段44により変速し、トルクを変化させて、第2出力軸48に伝達する。
ここで、第2変速機構40の第2出力軸48には、第2駆動ギヤ48cが結合されており、第2駆動ギヤ48cは、動力統合ギヤ58と噛み合っている。また、動力統合ギヤ58には、推進軸66が結合されており、推進軸66は、後述する終減速装置70を介して、駆動輪88に結合された駆動軸80と係合している。つまり、第2変速機構40の第2出力軸48は、第2駆動ギヤ48c及び動力統合ギヤ58を介して駆動軸80と係合している。したがって、第2出力軸48に伝達された機械的動力は、第2駆動ギヤ48c及び動力統合ギヤ58を介して駆動軸80に伝達され、駆動軸80に結合された駆動輪88に伝達される。
なお、ECU100は、第2変速機構40の変速段42,44のうちいずれか1つの変速段を選択する場合、選択する変速段に対応するカップリング機構を係合状態にすると共に、第2変速機構40において選択しない変速段に対応するカップリング機構を解放状態にする。これにより、第2変速機構40は、第2入力軸28で受けた機械的動力を、選択された変速段で変速して、第2出力軸48に伝達し駆動軸80に向けて出力することができる。
また、ECU100が、第2変速機構40の変速段42,44をいずれも選択しない場合には、第2変速機構40のカップリング機構42e,44eを全て解放状態にする。これにより、第2変速機構40は、第2入力軸28と第2出力軸48との間における機械的動力の伝達を遮断することができる。
モータ50は、供給された電力を機械的動力に変換して出力する電動機としての機能と、入力された機械的動力を電力に変換して回収する発電機としての機能とを兼ね備えた回転電機、いわゆるモータジェネレータである。モータ50は、永久磁石式交流同期電動機で構成されており、後述するインバータ110から三相の交流電力の供給を受けて回転磁界を形成するステータ54と、回転磁界に引き付けられて回転する回転子であるロータ52とを有している。モータ50には、ロータ52の回転角位置を検出するレゾルバが設けられており、ロータ52の回転角位置に係る信号をECU100に送出している。
モータ50のロータ52は、第2変速機構40の第2入力軸28に結合されており、ロータ52は、第2入力軸28とともに回転する。これにより、モータ50から出力された機械的動力(トルク)は、ロータ52から第2変速機構40の第2入力軸28に伝達される。また、モータ50は、駆動輪88から第2出力軸48を介してロータ52に伝達された機械的動力(トルク)を電力に変換して二次電池120に回収する。
なお、第2入力軸28とロータ52との間には、ロータ52の回転速度を減速して第2入力軸28に伝達する減速機構や、ロータ52の回転速度を変速して第2入力軸28に伝達する変速機構を設けるものとしても良い。
ここで、以下の説明において、モータ50を電動機として機能させて、モータ50がロータ52から機械的動力を出力することを「力行」と記す。これに対して、モータ50を発電機として機能させて、駆動輪88からモータ50のロータ52に伝達された機械的動力を電力に変換して回収すると共に、このときロータ52に生じる回転抵抗により、ロータ52及びこれに係合する部材(例えば、駆動輪88)の回転を制動することを「回生制動」と記す。ハイブリッド車両1は、駆動輪88の回転をロータ52に伝達させると共にモータ50を発電機として機能させて駆動輪88を制動する回生制動を行うことが可能となっている。
また、回生制動を行うことにより、モータ50のロータ52に係合する駆動軸80及び駆動輪88に作用するトルクを「回生制動トルク」と記す。また、回生制動を行うことにより、ハイブリッド車両1を制動し減速させるよう駆動輪88に作用する機械的動力[kW]を「回生制動動力」と記す。つまり、回生制動動力は、回生制動トルクに駆動軸80及び駆動輪88の回転速度(車輪速)を乗じた値となっている。なお、モータ50による力行と回生制動、すなわちモータ50の電動機/発電機としての機能の切替えと、回生制動トルク及び回生制動動力は、ECU100により制御される。
インバータ110は、モータ50に交流電力を供給する電力供給装置であり、二次電池120から供給される直流電力を交流電力に変換してモータ50に供給する。また、インバータ110は、モータ50からの交流電力を直流電力に変換して二次電池120に回収する。なお、インバータ110からモータ50への電力供給、及びモータ50からの電力回収は、ECU100により制御される。
終減速装置70は、原動機から推進軸66に伝達された機械的動力を、減速すると共に、駆動輪88に係合する左右の駆動軸80に分配する。終減速装置70は、推進軸66に結合された駆動ピニオン68と、駆動ピニオン68とリングギヤ72が直交して噛み合う差動機構74とを有している。終減速装置70は、原動機すなわち内燃機関5及びモータ50のうち少なくとも一方から推進軸66に伝達された機械的動力を、駆動ピニオン68及びリングギヤ72により減速し、差動機構74により左右の駆動軸80に分配して、駆動軸80に結合されている駆動輪88を回転駆動することが可能となっている。
また、ハイブリッド車両1には、駆動輪88の回転速度を検出する車輪速センサが設けられており、検出した駆動輪88の回転速度に係る信号をECU100に送出している。また、ハイブリッド車両1には、二次電池120の蓄電状態(state-of-charge、SOC)を検出する電池監視ユニットが設けられており、検出した二次電池120の蓄電状態に係る信号を、ECU100に送出している。
また、ハイブリッド車両1には、運転者により操作されるアクセルペダルの操作量を検出するアクセルペダルポジションセンサも設けられており、検出したアクセルペダルの操作量に係る信号をECU100に送出している。また、ハイブリッド車両1には、運転者によりブレーキペダルの操作量を検出するブレーキペダルストロークセンサも設けられており、検出されたブレーキペダルの操作量に係る信号をECU100に送出している。
ECU100は、第1変速機構30及び第2変速機構40において選択されている変速段、すなわちカップリング機構31e,42e,33e,42e,35e、39e(以下単に「31e〜39e」ともいう。)の係合/解放状態と、第1及び第2クラッチ21,22の係合/解放状態とを検出し、検出結果に基づいて、内燃機関5及びモータ50と、第1及び第2クラッチ21,22と、第1及び第2変速機構30,40とを協調して制御する制御機能も有する。
また、ECU100は、クランク角センサからの機関出力軸8の回転角位置(クランク角)に係る信号と、レゾルバからのモータ50のロータ52の回転角位置に係る信号と、車輪速センサからの駆動輪88の回転速度に係る信号とを検出している。また、ECU100は、アクセルペダルポジションセンサからのアクセルペダルの操作量に係る信号と、ブレーキペダルストロークセンサからのブレーキペダルの操作量に係る信号とを検出している。また、ECU100は、二次電池120の蓄電状態に係る信号を検出している。
ECU100は、これら信号に基づいて、各種制御変数を算出している。制御変数には、内燃機関5の機関出力軸8の回転速度(以下「機関回転速度」とも言う。)と、内燃機関5が機関出力軸8から出力するトルク(以下「機関負荷」とも言う。)と、モータ50のロータ52の回転速度(以下「モータ回転速度」とも言う。)と、回生制動を行うことにより駆動輪88及び駆動軸80に作用するトルクである「回生制動トルク」と、回生制動を行うことにより駆動輪88及び駆動軸80に作用する機械的動力である回生制動動力と、第1及び第2クラッチ21,22の係合/解放状態と、第1及び第2変速機構30,40において現在選択されている変速段と、ハイブリッド車両1の走行速度(以下「車速」とも言う。)と、二次電池120の蓄電状態(SOC)と、運転者により要求される駆動力等がある。
これら制御変数に基づいて、ECU100は、内燃機関5及びモータ50の運転状態を把握しており、第1及び第2変速機構30,40において選択される変速段及び変速動作、すなわち各カップリング機構31e〜39eによるカウンタギヤ31c〜39cと第1出力軸37または第2出力軸48との係合/解放状態と、第1クラッチ21及び第2クラッチ22の係合/解放状態とを制御することが可能となっている。また、ECU100は、モータ50の力行と回生制動、すなわち、モータ回転速度、モータ出力トルク、及び回生制動トルクと、内燃機関5の機関負荷及び機関回転速度とを制御する。
また、ECU100は、内燃機関5の始動を制御する内燃機関始動制御装置102を有する。内燃機関始動制御装置102は、内燃機関5の始動要求が発生しているかを検出する要求検出手段104と、要求検出手段104が始動要求を検出したら、内燃機関5、駆動装置10を制御し内燃機関5を始動させる始動制御手段106とで構成されている。始動時の動作については、後ほど詳細に説明する。
ハイブリッド車両1は、基本的に以上のような構成である。ハイブリッド車両1は、上述したように、ECU100が運転条件に基づいて、第1変速機構30の第1群の変速段31,33,35,39のうちいずれか1つの変速段を選択したら、選択した変速段に対応するカップリング機構によりカウンタギヤと第1出力軸37とを係合状態にして、さらに第1クラッチ21を係合状態にすると共に第2クラッチ22を解放状態にする。これにより、機関出力軸8が、第1入力軸27、第1出力軸37、動力統合ギヤ58、推進軸66、終減速装置70を介して駆動軸80と係合され、第1変速機構30は、内燃機関5の機関出力軸8から出力された機械的動力を、第1入力軸27で受けて、変速段(奇数段)31,33,35、及び後進ギヤ段39のうち選択した変速段により変速し、トルクを変化させて、駆動輪88に係合する駆動軸80に向けて出力することができる。
このとき、駆動輪88の回転は、動力統合ギヤ58を介して第2変速機構40の第2出力軸48にも伝達される。ECU100が第2変速機構40の第2群の変速段42,44のうちいずれか1つの変速段を選択して、対応するカップリング機構42e,44eにより、カウンタギヤと第2出力軸48とを係合状態とすると、動力統合ギヤ58から第2出力軸48に伝達された機械的動力は、第2変速機構40の変速段(偶数段)42,44のうち選択されている変速段により変速され、第2入力軸28に伝達されて、モータ50のロータ52を回転させる。なお、ECU100が第2変速機構40の変速段42,44をいずれも選択しない場合、すなわち第2変速機構40のカップリング機構42e,44eを全て解放状態にしている場合は、第2出力軸48と第2入力軸28との間で動力伝達が遮断されて、駆動輪88の回転が第2入力軸28に伝達されることはない。
一方、ECU100が運転条件に基づいて、第2変速機構40の第2群の変速段42,44のうちいずれか1つの変速段を選択したら、選択した変速段に対応するカップリング機構によりカウンタギヤと第2出力軸48とを係合状態にして、さらに第2クラッチ22を係合状態にすると共に第1クラッチ21を解放状態にする。これにより、機関出力軸8が、第2入力軸28、第2出力軸48、動力統合ギヤ58、推進軸66、終減速装置70を介して駆動軸80と係合され、第2変速機構40は、内燃機関5の機関出力軸8及びモータ50のロータ52から出力された機械的動力を、第2入力軸28で受けて、各変速段(偶数段)42,44のうち選択した変速段により変速し、トルクを変化させて、駆動輪88に係合する駆動軸80に向けて出力することができる。
このとき、駆動輪88の回転は、動力統合ギヤ58を介して第1変速機構30の第1出力軸37にも伝達される。ECU100が第1変速機構30の第1群の変速段31,33,35,39のうちいずれか1つの変速段を選択し、対応するカップリング機構31e,33e,35e,39eにより、カウンタギヤと第1出力軸37とを係合状態とすると、動力統合ギヤ58から第1出力軸37に伝達された機械的動力は、第1変速機構30の変速段(奇数段)31,33,35及び後進ギヤ段39のうち選択された変速段により変速され、第1入力軸27に伝達されて、当該第1入力軸27を回転させる。なお、ECU100が第1変速機構30の変速段31,33,35,39をいずれも選択しない場合、すなわち第1変速機構30のカップリング機構31e,33e,35e,39eを全て解放状態にしている場合は、第1出力軸37と第1入力軸27との間で動力伝達が遮断されて、駆動輪88の回転は、第1入力軸27に伝達されることはない。
以上のように構成されたハイブリッド車両1は、第1クラッチ21及び第2クラッチ22を交互につなぎ替えることで、変速時において、機関出力軸8と駆動輪88との間における動力伝達の途切れを抑制することが可能となっており、以下に詳細を説明する。
まず、ECU100が第1及び第2変速機構30,40の変速段31,42,33,44,35,39のうちいずれか1つの変速段を選択する。例えば、選択した変速段が第1変速機構30の変速段31,33,35,39のうち第1速ギヤ段31である場合、ECU100は、第1速ギヤ段31に対応する第1速カップリング機構31eにより、第1速カウンタギヤ31cと第1出力軸37とを係合状態にすると共に、その他のカウンタギヤ33c,35c,39cと第1出力軸37とを解放状態にする。そして、ECU100は、第1クラッチ21を係合状態にすると共に第2クラッチ22を解放状態にする。これにより、駆動装置10は、内燃機関5からの機械的動力を、第1入力軸27で受け、第1群(奇数段)の変速段31,33,35及び後進ギヤ段39のうち選択した変速段である第1速ギヤ段31により変速し、第1出力軸37から駆動軸80に伝達して、駆動輪88を回転駆動することができる。
このとき、ECU100は、第2変速機構40の変速段42,44のうち、第1変速機構30において選択している変速段である第1速ギヤ段31より、一段高速(ハイギヤ)側の変速段である第2速ギヤ段42を選択し、対応する第2速カップリング機構42eにより、第2速カウンタギヤ42cと第2出力軸48とを係合状態とする。ECU100は、第2速カウンタギヤ42cと第2出力軸48とを係合状態にすることで、第2出力軸48から第2入力軸28に機械的動力を伝達し、第2入力軸28を空転させる。このようにして、ECU100は、第1速ギヤ段31から第2速ギヤ段42への変速動作、すなわち第1クラッチ21及び第2クラッチ22の係合/解放動作に備えている。
そして、第1変速機構30の第1速ギヤ段31から、第2変速機構40の第2速ギヤ段42への変速(アップシフト)を行う場合、ECU100は、第1クラッチ21を解放状態にしながら第2クラッチ22を係合状態にすることで、駆動装置10は、第1クラッチ21と第2クラッチ22とを掴み替える動作、いわゆる「クラッチ・トゥ・クラッチ」を行う。この動作により、駆動装置10は、機関出力軸8からの動力伝達経路を、徐々に第1変速機構30の第1入力軸27から第2変速機構40の第2入力軸28に移していき、第2速ギヤ段42への変速が完了することとなる。なお、このとき、第2クラッチ22は、解放状態から、半係合状態、いわゆる半クラッチ状態となり、その後、係合状態とされ、第1クラッチ21は、係合状態から、半係合状態とされ、その後、解放状態とされる。
このようにして、駆動装置10は、第1変速機構30の変速段、すなわち奇数段である第1速ギヤ段31から、第2変速機構40の変速段、すなわち偶数段である第2速ギヤ段42への変速時において、機関出力軸8から駆動軸80への動力伝達に途切れを生じさせることなく変速することができる。
また、ハイブリッド車両1は、原動機として内燃機関5とモータ50とを併用又は選択使用することで、様々な車両走行(走行モード)を実現することができる。例えば、原動機として内燃機関5のみを選択使用する「エンジン走行」、原動機として内燃機関5及びモータ50を併用する「ハイブリッド走行」、原動機としてモータ50のみを選択使用する「モータ走行」等がある。
これら走行モードは、運転者が要求する車両駆動力や、モータ50に供給する電力を貯蔵する二次電池120の蓄電状態に応じて、ECU100により、逐次、自動的に切替えられる。以下に、各走行モードにおけるECU100の制御と、内燃機関5、第1クラッチ21及び第2クラッチ22、第1変速機構30及び第2変速機構40、及びモータ50の動作を併せて説明する。
まず、原動機として内燃機関5のみを選択使用するエンジン走行は、以下のようにして原動機の動力を使用する。まず、変速段として第1変速機構30の変速段31,33,35,39のいずれか1つを選択した場合は、ECU100により、第1クラッチ21を係合状態にすると共に第2クラッチ22を解放状態にして、内燃機関5の機関出力軸8からの機械的動力を、第1入力軸27に伝達し、伝達した機械的動力を第1変速機構30の変速段31,33,35,39のいずれか1つにより変速し、第1出力軸37から動力統合ギヤ58を介して駆動軸80に伝達することで、駆動輪88を回転駆動する。また、変速段として、第2変速機構40の変速段42,44のいずれか1つを選択した場合は、ECU100により、第1クラッチ21を解放状態にすると共に第2クラッチ22を係合状態にして、内燃機関5の機関出力軸8からの機械的動力を、第2入力軸28に伝達し、伝達した機械的動力を第2変速機構40の変速段42,44のいずれか1つにより変速し、第2出力軸48から動力統合ギヤ58を介して駆動軸80に伝達し、駆動輪88を回転駆動する。
次に、原動機として内燃機関5とモータ50とを併用するハイブリッド走行は、以下のようにして原動機の動力を使用する。まず、変速段として第1変速機構30の変速段31,33,35,39のいずれか1つを選択して内燃機関5の機械的動力を使用している場合は、さらに、ECU100によりモータ50を力行させて、ロータ52から第2入力軸28に出力トルクを伝達する。具体的には、第2クラッチ22を解放した状態で、第2変速機構40の変速段42,44のいずれか1つを選択し、モータ50から第2入力軸28に伝達された動力を選択した変速段により第2出力軸48に伝達する。これにより、駆動装置10は、内燃機関5の機関出力軸8からの機械的動力と、モータ50のロータ52からの機械的動力とを、それぞれ第1変速機構30、第2変速機構40で変速し、動力統合ギヤ58で統合して駆動軸80に伝達することができる。
また、変速段として第2変速機構40の変速段42,44のいずれか1つを選択して内燃機関5の機械的動力を使用している場合は、さらに、ECU100によりモータ50を力行させて、ロータ52から第2入力軸28に出力トルクを伝達する。これにより、駆動装置10は、モータ50のロータ52からの機械的動力と内燃機関5の機関出力軸8からの機械的動力とを、第2入力軸28で統合し、第2変速機構40により変速して、動力統合ギヤ58を介して駆動軸80に伝達することができる。
また、ハイブリッド車両1に原動機としてモータ50のみを選択使用するモータ走行は、以下のようにして、原動機の動力を使用する。この場合は、上述のエンジン走行及びハイブリッド走行の制御とは異なり、まず、ECU100は、第1クラッチ21及び第2クラッチ22を双方共に解放状態にして、モータ50を力行させる。また、ECU100は、第2変速機構40の変速段42,44のうち、いずれか1つの変速段を選択し、対応するカップリング機構を係合状態にする。駆動装置10は、モータ50のロータ52からの機械的動力を、第2入力軸28で受け、第2変速機構40の変速段42,44のうち選択した変速段で変速して、動力統合ギヤ58から駆動軸80に伝達して駆動輪88を回転駆動する。
また、ハイブリッド車両1は、アクセルペダルとブレーキペダルが双方共に操作されていない場合において、原動機による駆動力や摩擦ブレーキによる制動力を生じさせることなくハイブリッド車両1を走行させる、いわゆる「コーストダウン走行」を行う場合がある。この場合、ハイブリッド車両1は、ECU100による制御で、モータ50を発電機として機能させて回生制動を行うことにより、ハイブリッド車両1を、摩擦ブレーキにより制動する場合に比べて、緩やかに減速させることができる。ハイブリッド車両1は、通常、駆動輪88の回転を、第2変速機構40の変速段42,44のいずれか1つにより変速し、第2入力軸28からロータ52に伝達させることで回生制動を行うことができる。また、ECU100は、ブレーキペダルが操作され、駆動力や摩擦ブレーキにより制動力を生じさせる際に、モータ50も発電機として機能させて回生制動を行うことにより、さらに減速させるようにしてもよい。このように回生制動を行い、モータ50を発電機として機能させることで、二次電池120に蓄電することができる。
次に、内燃機関5の始動時の動作について説明する。まず、ECU100の内燃機関始動制御装置102には、予め算出したハイブリッド車両1の運転条件、例えば、車速、アクセル開度等と、選択する変速段との関係を示すマップを記憶させておく。以下、運転条件と変速段との関係を示すマップの作成方法について説明する。図3は、運転条件と変速段との関係を示すマップの作成方法の一例を示すフロー図であり、図4は、運転条件と変速段との関係を示すグラフである。
図3に示すように、まず、ステップS10として、入力回転数と車速と変速段との関係を算出する。具体的には、まず、ハイブリッド車両1のタイヤ半径と、最終減速比i_diffと、各変速段の変速比i_T/Mとを計測及び/または算出する。その後、算出したタイヤ半径と車速から、各車速におけるタイヤ回転速度ω_tを算出する。その後、変速段ごとに、算出したタイヤ回転速度ω_tに最終減速比i_diffと、変速段の変速比i_T/Mとをかけて、車速と入力回転数Ncとの関係を算出する。つまり、Nc=(ω_t×i_diff×i_T/M)により、車速と入力回転数Ncとの関係を算出する。
次に、ステップS12として、入力回転数Ncと内燃機関始動トルクの最大値Tから始動必要出力Pを算出する。具体的には、P=T×Ncにより、算出する。次に、ステップS14として、ハイブリッド車両1のダンパやマウント等の構成から入力回転数の共振周波数帯(N_共振)を算出する。次に、ステップS16として算出した共振周波数帯に基づいて、入力回転数の下限値N_minを算出する。具体的には、共振周波数帯の上限値(N_共振max)に所定の余裕分(α)を持たせた値である。つまり、N_min=N_共振max+αを満たす値である。ここで、入力回転数の下限値よりも回転数を高くすることで、内燃機関の回転により共振が発生することを防止できる。
以上のようにしてそれぞれの関係を算出することで、図4に示すような関係を算出することができる。ここで、図4は、縦軸を入力回転数[rpm]及び、始動必要出力[kW]とし、横軸を車速[km/h]とした。図4中1st〜5thは、それぞれ第1速〜第5速における車速と入力回転数及び始動必要出力との関係を示す線である。図4に示すように、同一入力回転数の場合は、1速から5速へと変速段が高くなるに従って車速が速くなる。また、同一車速の場合は、1速から5速へと変速段が高くなるに従って入力回転数が低くなる。内燃機関始動制御装置102には、図4に示す関係が記憶されている。なお、記憶する形式は、特に限定されず、車速ごと、変速段ごとに入力回転数、始動トルクが対応づけられたマップを記憶させても、変速段ごとに車速と入力回転数、始動トルクとの関係を示す式を作成し、それを記憶させてもよい。
次に、図5とともに、モータ走行(EV走行)中に内燃機関の始動要求が発生した場合の内燃機関始動制御装置102の動作について説明する。図5は、内燃機関始動制御装置102の動作を示すフロー図である。
まず、ステップST20として、モータ走行中に運転条件の変化により内燃機関始動要求が発生する。ここで、内燃機関始動要求は、アクセルペダルがより強く踏まれ、モータ走行では、アクセルペダルの開度に対応する動力を得ることができない場合や、二次電池120の残量が所定量以下となった場合等がある。その後、内燃機関始動要求が発生したことを要求検出手段104が検出したら、始動制御手段106は、ステップS22として、ギヤ段の中から使用可能ギヤ段を確認する。ここで、使用可能ギヤ段とは、モータ走行に使用しているギヤ段と、モータ走行に使用しているギヤ段が配置された変速機構とは異なる変速機構のギヤ段である。本実施例において、使用可能なギヤ段は、第2速ギヤ段と第4速ギヤ段のうちモータ走行に使用しているギヤ段と、第1速ギヤ段と、第3速ギヤ段と、第5速ギヤ段との4つのギヤ段となる。
次に、始動制御手段106は、ステップS24として、モータ50の最大出力P_maxとモータ走行中のモータ50の出力P_evとから、内燃機関5の始動に使用可能な出力P_stを算出する。具体的には、P_maxから使用しているP_evを引いた値が使用可能な出力P_stとなる。つまり、P_st=P_max−P_evとなるP_stを算出する。
次に、始動制御手段106は、ステップS26として、始動ギヤ段を算出する。ここで、始動ギヤ段とは、ステップS22で確認した使用可能なギヤ段の中で、現状の車速から求めた入力軸の回転速度がN_min以上の回転速度となるギヤ段のうち最もハイギヤなギヤ段である。ここで、この条件を満たすギヤ段は、現状の車速を予め記憶したマップ(図4参照)に当てはめて算出すればよい。ここで、始動ギヤ段は、使用可能なギヤ段で、かつ、現在の車速で使用した場合に回転速度(つまり、回転数)がN_min以上となる中で、回転数が最も低くなるギヤである。始動制御手段106は、始動ギヤ段を算出したら、ステップS28として、アシストギヤ段を算出する。ここで、アシストギヤ段は、始動ギヤ段を備える変速機構ではない変速機構が備えるギヤ段であり、始動ギヤ段よりもハイギヤなギヤ段である。例えば、始動ギヤ段が第4速ギヤ段44の場合、アシストギヤ段は、第5速ギヤ段35となり、始動ギヤ段が第3速ギヤ段33の場合、アシストギヤ段は、第4速ギヤ段44となり、始動ギヤ段が第2速ギヤ段42の場合、アシストギヤ段は、第3速ギヤ段33または第5速ギヤ段35となる。
始動制御手段106は、アシストギヤ段を算出したら、ステップS30として、アシストギヤ段が使用可能ギヤ段であるかを判定する。つまり、アシストギヤ段がモータ走行に使用しているギヤ段と、モータ走行に使用しているギヤ段が配置された変速機構とは異なる変速機構のギヤ段のいずれかであるか、及び、モータ50にアシストギヤ段から動力を伝達する分の出力の余裕があるかを判定する。ここで、モータ50にアシストギヤ段から動力を伝達する分の出力の余裕があるか否かは、モータ50が使用可能な出力P_stが始動用出力の基準値P_egよりも大きいか、つまり、P_st>P_egであるか否かを判定する。ここで、始動用出力の基準値P_egは、アシストギヤ段側のクラッチから動力を一定以上の動力を伝達することができる出力である。始動制御手段106は、ステップS30にて、アシストギヤ段が使用可能なギヤ段であると判定したらステップS32に進み、アシストギヤ段が使用不可能なギヤ段であると判定したらステップS42に進む。ここで、アシストギヤ段が選択可能な場合は、始動ギヤ段とアシストギヤ段の一方がモータ走行に使用しているギヤ段となる場合である。
次に、始動制御手段106は、ステップS32として、アシスト終了回転速度を算出する。ここで、アシスト終了回転速度とは、係合しているクラッチを、アシストギヤ段を有する変速機構側のクラッチから始動ギヤ段を有する変速機構側のクラッチに切り替える動作を開始する内燃機関5の回転速度である。
アシスト終了回転速度は、以下のようにして算出される。図6は、内燃機関5の回転速度とトルクの伝達時間との関係を示すグラフである。なお、図6は、縦軸を内燃機関の回転速度(回転数)とし、横軸をトルクの伝達を開始してからの時間とした。また、図6に示すグラフは、一定のトルクが内燃機関に伝達された場合の例である。まず、始動ギヤ段及びアシストギヤ段の選択された状態で2つのクラッチが半係合されると、駆動軸80の動力が出力軸から始動ギヤ段、入力軸、クラッチと、出力軸からアシストギヤ段、入力軸、クラッチとの2つの経路を介して、機関出力軸8に伝達され、内燃機関5が回転される。なお、このとき内燃機関5では、燃料の燃焼は行われていない。このとき、機関出力軸8に一定トルクの力が伝達されると、図6に示すように、内燃機関回転速度Neは、時間に比例して上昇する。ここで、アシストギヤ段は、始動ギヤ段よりもハイギヤ側のギヤ段であるため、内燃機関回転速度Neの最終的な回転速度は、アシストギヤ段側の入力軸の回転速度よりも速くなる。そのため、内燃機関回転速度Neがアシストギヤ段側入力軸回転速度以上となる前に、アシストギヤ段側のクラッチを解放する必要がある。また、図6に示すように、アシストギヤ段側のクラッチの解放には、一定の時間が必要となる。そこで、アシストギヤ段側のクラッチの解放を開始してから実際に解放を完了するまでにかかる時間を算出する。そして、始動制御手段106は、図6に示すように予め算出している回転速度とトルクを伝達している時間との関係、つまり、算出した回転速度の上昇速度を用いて、内燃機関の回転速度がアシストギヤ側の入力軸の回転速度となる時よりもアシストギヤ段側のクラッチの解放にかかる時間分前の時の回転速度を算出し、この算出した回転速度を変速開始速度として設定する。つまり、アシストギヤ段側のクラッチの解放が完了したときに、内燃機関の回転速度がアシストギヤ段側の入力軸の回転速度となる、切り替え開始の回転速度を算出する。
次に、始動制御手段106は、ステップS34として、アシストギヤ段と始動ギヤ段とを接続する、つまり、選択する。すなわち、一方の変速機構では、アシストギヤ段を選択し、アシストギヤ段のカップリング機構によりカウンタギヤと出力軸とを係合させ、さらに、他方の変速機構では、始動ギヤ段を選択し、始動ギヤ段のカップリング機構によりカウンタギヤと出力軸とを係合させる。なお、アシストギヤ段と始動ギヤ段のうち、モータ走行に使用しているギヤ段は、既にギヤ段が選択された状態であるので、そのままの状態で、ステップS36に進む。始動制御手段106は、アシストギヤ段と始動ギヤ段とを入れたら、ステップS36として、アシストギヤ段側のクラッチと始動ギヤ段側のクラッチの両方を半係合させる。始動制御手段106によりアシストギヤ段側のクラッチと始動ギヤ段側のクラッチの両方のクラッチを半係合させること、つまり、2つのクラッチを同時期に半係合させることで、モータ50から出力された動力が出力軸からアシストギヤ段を介して入力軸に伝達され、かつ、入力軸からクラッチを介して機関出力軸8に伝達され、さらに、出力軸から始動ギヤ段を介して入力軸に伝達され、入力軸からクラッチを介して機関出力軸8に伝達される。このように、モータ50から出力された動力が、2つの経路により機関出力軸8に伝達されることで、機関出力軸8が回転される。機関出力軸8が回転することで、内燃機関5も回転される。このとき、始動制御手段106は、モータ50の出力を調整しつつ、アシストギヤ段側のクラッチと始動ギヤ側のクラッチとを半係合させる。具体的には、減速感が出ないようにしつつ、機関出力軸8に一定トルクを伝達できるように、モータ50の出力とクラッチの係合状態を調整する。このように、始動制御手段106は、モータ50の出力とクラッチの係合状態を制御することで、ハイブリッド車両1を、所定の速度で走行させつつ、機関出力軸8及び内燃機関5の回転速度を上昇させる。
始動制御手段106は、アシストギヤ段側のクラッチと始動ギヤ段側のクラッチとを半係合させつつ、機関出力軸8にトルクを伝達し始めたら、ステップS38として、内燃機関回転速度Neがアシスト終了回転速度よりも高いかを判定する。つまり、内燃機関回転速度Ne>アシスト終了回転速度であるかを判定する。始動制御手段106は、内燃機関回転速度Ne>アシスト終了回転速度の場合は、ステップS40に進み、内燃機関回転速度Ne≦アシスト終了回転速度の場合は、再びステップS38に進み、内燃機関回転速度Ne>アシスト終了回転速度であるかを判定する。なお、ステップS38を繰り返している間は、アシストギヤ段側のクラッチと始動ギヤ段側のクラッチの両方のクラッチが半係合して、機関出力軸8にトルクを伝達しているため、内燃機関回転速度が上昇していく。このように、始動制御手段106は、内燃機関回転速度Ne>アシスト終了回転速度となるまで、ステップS38とを繰り返す。
始動制御手段106は、内燃機関回転速度Ne>アシスト終了回転速度となったら、ステップS40として、アシストギヤ段側のクラッチを解放する。アシストギヤ段側のクラッチを解放されると、モータ50からの動力は、始動ギヤ段側のクラッチを介する1つの経路のみから機関出力軸8に伝達される。始動ギヤ段側のクラッチを介する1つの経路から伝達されるモータ50の動力により、内燃機関回転速度Neが上昇される。
一方、始動制御手段106は、ステップS30にて、アシストギヤ段が使用できないギヤ段だと判定されたら、ステップS42として、始動ギヤ段のみを接続する。つまり選択し、始動ギヤ段のカップリング機構により、カウンタギヤと出力軸とを係合させる。始動制御手段106は、始動ギヤ段を選択したら、ステップS44として、始動ギヤ段側のクラッチを半係合させる。始動制御手段106により始動ギヤ段側のクラッチを半係合させることで、モータ50から出力された動力が出力軸から始動ギヤ段を介して入力軸に伝達され、入力軸からクラッチを介して機関出力軸8に伝達される。このように、モータ50の動力が伝達されることで、内燃機関回転速度が上昇する。始動制御手段106は、ステップS44にて、始動ギヤ段側のクラッチを半係合させたらステップS46に進む。
始動制御手段106は、始動ギヤ段側のクラッチのみが半係合された状態で、内燃機関回転速度NeがN_min以上の回転速度でかつ所望の回転速度となったら、ステップS46として、内燃機関のファイアリング、つまり、燃料の燃焼を開始する。内燃機関のファイアリングが開始されたら、エンジン走行またはハイブリッド走行に移行し、処理を終了する。
以下、具体的一例を用いて、内燃機関始動制御装置をより詳細に説明する。ここで、図7は、運転条件と変速段と出力との関係を示すグラフであり、図8は、アシストギヤ段を介して内燃機関に伝達されるトルクと、始動ギヤ段を介して内燃機関に伝達されるトルクとの関係を示すグラフである。なお、本具体例では、ハイブリッド車両1は、4速を用いたモータ走行で、30km/hで走行している場合とする。この場合、始動制御手段106は、ステップS22で、第1速ギヤ段31、第3速ギヤ段33、第4速ギヤ段44、第5速ギヤ段35を使用可能ギヤ段として検出する。また、始動制御手段106は、ステップS24で、モータ50の最大出力P_maxから、第4速ギヤ段を使用したモータ走行に使用している出力P_evを引いた出力をP_stとして算出する。次に、始動制御手段106は、ステップS26で、始動ギヤ段として図7に示すように、30km/hで走行するときの回転数がN_minよりも高くかつ最もハイギヤ側のギヤ段である第4速ギヤ段を算出し、ステップS28で、アシストギヤ段として、第4速ギヤ段よりもハイギヤ側のギヤ段であり、かつ、異なる変速機構に備えられているギヤ段である、第5速ギヤ段を算出する。ここで、P_stには、余裕があり、かつ、始動ギヤ段と同時に使用可能なギヤ段であるので、始動制御手段106は、ステップS30で、アシストギヤ段を使用可能であると判定する。次に、始動制御手段106は、ステップS32で、アシスト終了回転速度を算出する。ここで、図7に示すように、第5速ギヤ段35を使用して、30km/hで走行した場合、入力軸の回転速度は、600rpmとなる。したがって、第5速ギヤ段35側の入力軸は、600rpmで回転することとなる。以上より、始動制御手段106は、第5速ギヤ段35側のクラッチの解放の完了時に内燃機関の回転速度が600rpmとなる第5速ギヤ段35側のクラッチの解放の開始タイミングを算出し、この開始タイミング時の内燃機関の回転速度をアシスト終了回転速度とする。
次に、始動制御手段106は、ステップS34で第4速ギヤ段44と、第5速ギヤ段35を接続する。ここで、第4速ギヤ段44は、モータ走行に使用されているので、始動制御手段106は、第5速ギヤ段35のみを接続する。次に、始動制御手段106は、第1クラッチ21と第2クラッチ22の両方を半係合、つまり半クラッチ状態とさせつつ、内燃機関5に伝達する動力分に対応してモータ50の出力をアップさせる。このようにして、モータ50からの動力が第4速ギヤ段44を介した経路と第5速ギヤ段35を介した経路の2つの経路から伝達された内燃機関5は、図8に示すように、回転速度が上昇する。始動制御手段106は、ステップS38を繰り返し、内燃機関5の回転速度がアシスト終了回転速度となったら、図8に示すように、第5速ギヤ段35側のクラッチ、つまり、第1クラッチ21を解放する。これにより、第5速ギヤ段35側の経路から伝達されるトルクは徐々に減少し、内燃機関5の回転速度が600rpmに到達したときに、0となる。その後、内燃機関5は、第4速ギヤ段44側のクラッチである第2クラッチ22を介して動力が伝達され、回転速度が上昇される。始動制御手段106は、内燃機関5の回転速度が所定の回転速度となったら、ステップS46で内燃機関5のファイアリングをスタートさせて、始動処理を終了させる。
このように、ハイブリッド車両1によれば、使用可能なギヤ段の中から始動ギヤ段を選択し、始動ギヤ段を介して、内燃機関5の回転速度を上昇させた後、ファイアリングを開始することで、ファイアリング時に、内燃機関5の回転速度が共振周波数帯となることを防止でき、ハイブリッド車両1が振動することを抑制することができる。また、ファイアリング開始時の変速機構のギヤ段を始動ギヤ段とすることで、共振周波数帯となることを防止するギヤ段の中で最も高いギヤ段とすることができるため、ファイアリング開始時の内燃機関5の回転速度も低くすることができる。また、使用可能なギヤ段の中から始動ギヤ段を選択することで、モータ走行中に内燃機関5の回転速度を上昇させることができ、モータ走行からエンジン走行への切り替えも連続的に行うことができる。これにより、駆動輪に常に動力を伝達することができ、駆動力抜けが発生することを防止できる。
さらに、アシストギヤ段と始動ギヤ段の両方を使用して、内燃機関の回転速度をアシスト終了回転速度まで上昇させることで、始動ギヤ段のみを使用した場合よりも、短時間で、内燃機関の回転速度を上昇させることができる。つまり、内燃機関の回転速度を迅速に上昇させることができる。また、アシストギヤ段は、始動ギヤ段よりもハイギヤ側のギヤ段であるため、始動ギヤ段よりも動力、つまり、トルクの伝達時の内燃機関の回転速度と入力軸の回転速度との差がより小さくなる。このように内燃機関の回転速度と入力軸の回転速度との差が小さいため、トルクの伝達効率をより高くすることができ、内燃機関の回転速度を効率よく上昇させることができる。つまり、始動ギヤ段のみを使用した場合よりも、アシストギヤ段と始動ギヤ段の両方を使用することで、効率よく内燃機関の回転速度を上昇させることができる。また、内燃機関の回転速度と入力軸の回転速度との差を小さくできることで、クラッチの磨耗も抑制することができる。また、アシストギヤ段が使用できないギヤ段の場合は、始動ギヤ段のみを使用するようにすることで、駆動力抜けが発生することを防止できる。
また、ステップS42のファイアリングを開始する際には、始動ギヤ段側のクラッチを一時的に解放してよい。クラッチを解放した状態で、ファイアリングを開始させることで、開始時に内燃機関5の回転速度が急上昇した場合も、ハイブリッド車両1が急加速することを防止できる。また、始動ギヤ段側のクラッチを半係合とし、ファイアリング開始時の出力により加速するようにしてもよい。また、モータを回生制動させて負荷をかけることで、ハイブリッド車両の速度を制御するようにしてもよい。
なお、上述した実施例において、始動制御手段106は、クラッチを半係合させた状態で出力軸からの動力を機関出力軸8に伝達させたが、クラッチを係合させた状態で出力軸からの動力を機関出力軸8に伝達させるようにしてもよい。
また、本実施例において、第1変速機構30は、第1入力軸27で受けた機械的動力を、第1出力軸37から駆動輪88と係合する動力統合ギヤ58に伝達し、第2変速機構40は、第2入力軸28で受けた機械的動力を、第2出力軸48から動力統合ギヤ58に伝達するものとしたが、第1変速機構30及び第2変速機構40の態様は、これに限定されるものではない。第1変速機構30及び第2変速機構40は、それぞれ入力軸27,28で受けた機械的動力を、駆動輪88に向けて伝達可能であれば良く、例えば、第1変速機構30と第2変速機構40は、それぞれ第1入力軸27、第2入力軸28で受けた機械的動力を、駆動輪88と係合する共通の出力軸に伝達するものとしても良い。
また、本実施例において、駆動装置10は、内燃機関5の機関出力軸8及びモータ50のロータ52からの機械的動力を、第1変速機構30及び第2変速機構40のうち少なくとも一方により変速して、動力統合ギヤ58から、推進軸66、終減速装置70の差動機構74を介して駆動輪88に伝達するものとしたが、第1変速機構30及び第2変速機構40から駆動輪88に向けての動力伝達の態様は、これに限定されるものではない。駆動装置10において、第1変速機構30及び第2変速機構40は、それぞれ第1入力軸27及び第2入力軸28で受けた機械的動力を、駆動輪88に向けて伝達可能であれば良く、例えば、動力統合ギヤ58、又は当該動力統合ギヤ58と噛み合う第1及び第2駆動ギヤ37c,48cが、直接に差動機構74のリングギヤ72を駆動するものとしても良い。
ここで、図2に示す実施例では、第1入力軸27と第2入力軸28とを、所定の間隔を空けて平行に延びるよう配置したが、本発明はこれに限定されない。例えば、第1変速機構30の第1入力軸27と第2変速機構40の第2入力軸28は同軸に配置してもよい。図9は、変形例のデュアルクラッチ機構の構造を示す模式図である。以下、図9を用いてデュアルクラッチ機構20の詳細な構造の他の一例について説明する。図9に示すように、デュアルクラッチ機構20は、機関出力軸8と結合されているクラッチハウジング14aと、クラッチハウジング14aに収容された摩擦板27a,28bとを有する。クラッチハウジング14aは、機関出力軸8と結合されており、機関出力軸8と一体に回転する。クラッチハウジング14aは、後述する摩擦板27a,28aが収容されている。
ここで、本実施例においては、第1変速機構30の第1入力軸27と、第2変速機構40の第2入力軸28は、同軸に配置されており、2重軸構造となっている。具体的には、第1入力軸27は、中空シャフトであり、第1入力軸27内には、第2入力軸28が延びている。内側の軸である第2入力軸28は、外側の軸である第1入力軸27に比べて軸方向に長く構成されている。このように同軸上に配置された第1変速機構及び第2変速機構は、機関出力軸8側から駆動輪88側に向かうに従って、第1変速機構30の各変速段のメインギヤ31a,33a,35a,39aが、第1入力軸27に配設され、次に、第2変速機構40の各変速段のメインギヤ42a,44aが、第2入力軸28の第1入力軸27よりも機関出力軸8から離れた位置に配設されている。
摩擦板27aは、円盤形状であり、第1入力軸27の端部が結合されている。また、摩擦板27aの中心部には、開口が形成されており、この開口には、第2入力軸28が通されている。摩擦板28aは、円盤形状であり、第2入力軸28の端部が結合されている。摩擦板27a,28aは、上述したように、クラッチハウジング14a内に収容されている。
第1クラッチ21は、摩擦板27aと、摩擦板27aに対向してラッチハウジング14a内に設けられた摩擦相手板と、摩擦相手板を駆動するアクチュエータとで構成される。第1クラッチ21は、摩擦相手板により摩擦板27aをクラッチハウジング14aに押し付けることで、機関出力軸8と、第1変速機構30の第1入力軸27とを係合させる。
第2クラッチ22は、摩擦板28aと、摩擦板28aに対向してクラッチハウジング14a内に設けられた摩擦相手板と、摩擦相手板を駆動するアクチュエータとで構成される。第2クラッチ22は、摩擦相手板により摩擦板28aをクラッチハウジング14aに押し付けることで、機関出力軸8と、第2変速機構40の第2入力軸28とを係合させる。
このように、第1入力軸と第2入力軸とを同軸上に配置してもよい。また、上述した実施例では、変速機構に対応して、出力軸を設けたが、2つの入力軸とそれぞれの変速機構とが対応付けられていれば、出力軸は同一としてもよい。なお、ギヤ段は、変速比が高い順番または、低い順番に交互に、第1入力軸と係合するギヤ段と、第2入力軸に係合するギヤ段となるようにする。つまり、奇数のギヤ段が一方の入力軸と係合し、偶数のギヤ段が他方の入力軸と係合するようにする。