まず、本実施例に係るハイブリッド車両及び駆動装置の構成について、図1〜図3を用いて説明する。図1は、ハイブリッド車両及び駆動装置の概略構成を示す模式図である。図2は、駆動装置に設けられたデュアルクラッチ機構の構造を示す模式図である。図3は、変形例のデュアルクラッチ機構の構造を示す模式図である。
ハイブリッド車両1は、駆動輪88を回転駆動するための原動機として、内燃機関5とモータジェネレータ50(以下、単に「モータ」と記す)とを備えている。モータ50は、内燃機関5からの機械的動力を変速して車両推進軸66に伝達する駆動装置10に含まれている。内燃機関5は、モータ50を備えた駆動装置10と共に結合されて、ハイブリッド車両1に搭載される。ハイブリッド車両1には、内燃機関5及び駆動装置10を制御する制御手段として、ハイブリッド車両用電子制御装置100(以下、ECUと記す)が設けられている。
内燃機関5は、図示しない燃料噴射装置、点火装置、及びスロットル弁装置を備えている。これら装置は、ECU100により制御される。内燃機関5が発生した機械的動力は、出力軸(クランク軸)8から出力される。内燃機関5の出力軸8(以下、機関出力軸と記す)には、後述する駆動装置10のデュアルクラッチ機構20の入力側、例えば、クラッチハウジング14a(図2参照)が結合される。ECU100は、内燃機関5の機関出力軸8から出力する機械的動力を調整することが可能となっている。
また、ハイブリッド車両1には、原動機としての内燃機関5及びモータ50からの機械的動力を駆動輪88に伝達する動力伝達装置として、機関出力軸8及びモータ50からの機械的動力を変速しトルクを変化させて、駆動軸80に向けて出力可能な駆動装置10が設けられている。
駆動装置10は、第1クラッチ21及び第2クラッチ22のいずれかを用いて内燃機関5の機関出力軸8からの機械的動力を後述する変速機構に伝達するデュアルクラッチ機構20と、内燃機関5から第1クラッチ21を介して伝達される機械的動力を、第1入力軸27で受けて、第1群の変速段のうちいずれか1つにより変速して、第1出力軸37から車両推進軸66に伝達可能な第1変速機構30と、内燃機関5から第2クラッチ22を介して伝達される機械的動力を、第2入力軸28で受けて、第2群の変速段のうちいずれか1つにより変速して、第2出力軸48から車両推進軸66に伝達可能な第2変速機構40と、車両推進軸66に伝達された機械的動力を、減速すると共に駆動輪88に係合する左右の駆動軸80に分配する終減速装置70とを有している。
第1変速機構30及び第2変速機構40は、前進に第1速ギヤ段31から第6速ギヤ段46までの6つの変速段を有しており、後進に1つの変速段、後進ギヤ段39を有している。前進の変速段である第1速〜第6速ギヤ段31〜46の減速比は、第1速ギヤ段31、第2速ギヤ段42、第3速ギヤ段33、第4速ギヤ段44、第5速ギヤ段35、第6速ギヤ段46の順に小さくなるよう設定されている。
第1変速機構30は、複数の歯車対を備えた平行軸歯車装置として構成されており、第1群の変速段は、奇数段すなわち第1速ギヤ段31と、第3速ギヤ段33と、第5速ギヤ段35と、後進ギヤ段39により構成されている。第1変速機構30の前進の変速段31,33,35のうち、第5速ギヤ段35が最も高速側の変速段となっている。
第1速ギヤ段31は、歯車対で構成されており、第1入力軸27に結合されている固定歯車である第1速メインギヤ31aと、第1出力軸37を中心に回転可能に設けられ、第1速メインギヤ31aと噛み合うルーズ歯車である第1速カウンタギヤ31cとを有している。第1変速機構30には、第1速ギヤ段31に対応して、第1速カウンタギヤ31cと第1出力軸37とを係合させることが可能な第1速カップリング機構31eが設けられている。
ECU100が第1速ギヤ段31を選択する、即ち第1速カップリング機構31eを係合状態にして、第1速カウンタギヤ31cと第1出力軸37を係合させることで、第1入力軸27からの機械的動力は、第1速メインギヤ31a及び第1速カウンタギヤ31cを介して第1出力軸37に伝達される。これにより、第1変速機構30は、第1入力軸27から受けた機械的動力を、第1速ギヤ段31により変速し、トルクを変化させて第1出力軸37に伝達することが可能となっている。
第3速ギヤ段33は、歯車対で構成されており、第1入力軸27に結合されている固定歯車である第3速メインギヤ33aと、第1出力軸37を中心に回転可能に設けられ、第3速メインギヤ33aと噛み合うルーズ歯車である第3速カウンタギヤ33cとを有している。第1変速機構30には、第3速ギヤ段33に対応して、第3速カウンタギヤ33cと第1出力軸37とを係合させることが可能な第3速カップリング機構33eが設けられている。
ECU100が第3速ギヤ段33を選択する、即ち第3速カップリング機構33eを係合状態にして、第3速カウンタギヤ33cと第1出力軸37を係合させることで、第1変速機構30は、第1入力軸27から受けた機械的動力を、第3速ギヤ段33により変速し、トルクを変化させて第1出力軸37に伝達することが可能となっている。
また、第5速ギヤ段35は、歯車対で構成されており、第1入力軸27に結合されている固定歯車である第5速メインギヤ35aと、第1出力軸37を中心に回転可能に設けられ、第5速メインギヤ35aと噛み合うルーズ歯車である第5速カウンタギヤ35cとを有している。第1変速機構30には、第5速ギヤ段35に対応して、第5速カウンタギヤ35cと第1出力軸37とを係合させることが可能な第5速カップリング機構35eが設けられている。
ECU100が第5速ギヤ段35を選択する、即ち第5速カップリング機構35eを係合状態にして、第5速カウンタギヤ35cと第1出力軸37とを係合させることで、第1変速機構30は、第1入力軸27から受けた機械的動力を、第5速ギヤ段35により変速し、トルクを変化させて、第1出力軸37に伝達することが可能となっている。
また、後進ギヤ段39は、第1入力軸27に結合されている固定歯車である後進メインギヤ39aと、後進メインギヤ39aと噛み合う後進中間ギヤ39bと、後進中間ギヤ39bと噛み合い、第1出力軸37を中心に回転可能に設けられたルーズ歯車である後進カウンタギヤ39cとを有している。第1変速機構30には、後進ギヤ段39に対応して、後進カウンタギヤ39cと第1出力軸37とを係合させることが可能な後進カップリング機構39eが設けられている。
ECU100が後進ギヤ段39を選択する、即ち後進カップリング機構39eを係合状態にして、後進カウンタギヤ39cと第1出力軸37とを係合させることで、第1変速機構30は、第1入力軸27から受けた機械的動力を、後進ギヤ段39により、回転方向を逆方向に変えると共に変速し、トルクを変化させて第1出力軸37に伝達することが可能となっている。
第1変速機構30の第1出力軸37には、第1駆動ギヤ37cが結合されており、当該第1駆動ギヤ37cは、動力統合ギヤ58と噛み合っている。動力統合ギヤ58には、車両推進軸66が結合されている。車両推進軸66は、後述する終減速装置70を介して、駆動輪88が結合された駆動軸80と係合している。つまり、第1変速機構30の第1出力軸37と、駆動軸80及び駆動輪88は係合している。
以上のように、第1変速機構30における各カップリング機構31e,33e,35e,39eの係合状態と解放状態(非係合状態)との切替えは、図示しないアクチュエータを介してECU100により制御される。ECU100は、第1変速機構30の変速段31,33,35,39のうちいずれか1つの変速段を選択する場合、選択する変速段に対応するカップリング機構を係合状態にすると共に、第1変速機構30において選択していない変速段に対応するカップリング機構を解放状態にする。これにより、第1変速機構30は、第1入力軸27で受けた機械的動力を、選択された変速段で変速して、第1出力軸37に伝達し、駆動軸80に向けて出力することが可能となっている。
また、ECU100が、第1変速機構30の変速段31,33,35,39をいずれも選択しない場合、第1変速機構30のカップリング機構31e,33e,35e,39eを全て解放状態にする。これにより、第1変速機構30は、第1入力軸27と第1出力軸37との間における機械的動力の伝達を遮断することが可能となっている。
一方、第2変速機構40は、第1変速機構30と同様に、複数の歯車対を備えた平行軸歯車装置として構成されており、第2群の変速段は、偶数段、すなわち第2速ギヤ段42と、第4速ギヤ段44と、第6速ギヤ段46から構成されている。第2変速機構40の入力軸28(以下、第2入力軸と記す)には、後述するモータ50のロータ52が結合されている。
第2速ギヤ段42は、歯車対で構成されており、第2入力軸28に結合されている固定歯車である第2速メインギヤ42aと、第2出力軸48を中心に回転可能に設けられ、第2速メインギヤ42aと噛み合うルーズ歯車である第2速カウンタギヤ42cとを有している。第2変速機構40には、第2速ギヤ段42に対応して、第2速カウンタギヤ42cと第2出力軸48とを係合させることが可能な第2速カップリング機構42eが設けられている。
ECU100が第2速ギヤ段42を選択する、即ち第2速カップリング機構42eを係合状態にして、第2速カウンタギヤ42cと第2出力軸48とを係合させることで、第2入力軸28からの機械的動力は、第2速メインギヤ42a及び第2速カウンタギヤ42cを介して第2出力軸48に伝達される。これにより、第2変速機構40は、第2入力軸28から受けた機械的動力を、第2速ギヤ段42により変速し、トルクを変化させて、第2出力軸48に伝達させることが可能となっている。
第4速ギヤ段44は、歯車対で構成されており、第2入力軸28に結合されている固定歯車である第4速メインギヤ44aと、第2出力軸48を中心に回転可能に設けられ、第4速メインギヤ44aと噛み合うルーズ歯車である第4速カウンタギヤ44cとを有している。第2変速機構40には、第4速ギヤ段44に対応して、第4速カウンタギヤ44cと第2出力軸48とを係合させることが可能な第4速カップリング機構44eが設けられている。
ECU100が第4速ギヤ段44を選択する、即ち第4速カップリング機構44eを係合状態にして、第4速カウンタギヤ44cと第2出力軸48とを係合させることで、第2変速機構40は、第2入力軸28から受けた機械的動力を、第4速ギヤ段44により変速し、トルクを変化させて、第2出力軸48に伝達することが可能となっている。
第6速ギヤ段46は、歯車対で構成されており、第2入力軸28に結合されている固定歯車である第6速メインギヤ46aと、第2出力軸48を中心に回転可能に設けられ、第6速メインギヤ46aと噛み合うルーズ歯車である第6速カウンタギヤ46cとを有している。第2変速機構40には、第6速ギヤ段46に対応して、第6速カウンタギヤ46cと第2出力軸48とを係合可能な第6速カップリング機構46eが設けられている。
ECU100が第6速ギヤ段46を選択する、即ち第6速カップリング機構46eを係合状態にして、第6速カウンタギヤ46cと第2出力軸48とを係合させることで、第2変速機構40は、第2入力軸28から受けた機械的動力を、第6速ギヤ段46により変速し、トルクを変化させて、第2出力軸48に伝達することが可能となっている。
第2変速機構40の第2出力軸48には、第2駆動ギヤ48cが結合されており、当該第2駆動ギヤ48cは、動力統合ギヤ58と噛み合っている。動力統合ギヤ58には、車両推進軸66が結合されており、車両推進軸66は、後述する終減速装置70を介して、駆動輪88に結合された駆動軸80と係合している。つまり、第2変速機構40の第2出力軸48と、駆動軸80及び駆動輪88は係合している。
以上のように、第2変速機構40における各カップリング機構42e,44e,46eの係合状態と解放状態(非係合状態)との切替えは、図示しないアクチュエータを介してECU100により制御される。ECU100は、第2変速機構40の変速段42,44,46のうちいずれか1つの変速段を選択する場合、選択する変速段に対応するカップリング機構を係合状態にすると共に、第2変速機構40において選択しない変速段に対応するカップリング機構を解放状態にする。これにより、第2変速機構40は、第2入力軸28で受けた機械的動力を、選択された変速段で変速して、第2出力軸48に伝達し駆動軸80に向けて出力することが可能となっている。
また、ECU100が、第2変速機構40の変速段42,44,46をいずれも選択しない場合には、第2変速機構40のカップリング機構42e,44e,46eを全て解放状態にする。これにより、第2変速機構40は、第2入力軸28と第2出力軸48との間における機械的動力の伝達を遮断することが可能となっている。
また、ハイブリッド車両1の駆動装置10には、内燃機関5が機関出力軸8から出力する機械的動力を、第1変速機構30及び第2変速機構40のうちいずれか一方に伝達させる動力伝達装置として、デュアルクラッチ機構20が設けられている。デュアルクラッチ機構20は、機関出力軸8と第1変速機構30の第1入力軸27とを係合させることが可能な摩擦クラッチ装置である第1クラッチ21と、機関出力軸8と第2変速機構40の第2入力軸28とを係合させることが可能な摩擦クラッチ装置である第2クラッチ22とを有している。なお、第1クラッチ21及び第2クラッチ22には、湿式多板クラッチや、乾式単板クラッチを用いることができる。
第1クラッチ21は、円板状の摩擦板を有し、摩擦板の摩擦力により機械的動力を伝達する摩擦式ディスククラッチ等で構成されている。第1クラッチ21は、内燃機関5の機関出力軸8と第1変速機構30の第1入力軸27とを係合させることが可能に構成されている。第1クラッチ21が係合状態となることで、機関出力軸8と第1入力軸27が係合して一体に回転することが可能となる。
第1クラッチ21は、油圧式のアクチュエータ(図示せず)等により係合/解放動作が操作される。アクチュエータによる第1クラッチ21の係合/解放動作を操作する操作力が作用していないとき、第1クラッチ21は、解放状態となるよう構成されており、いわゆるノーマルオープン(normally open)式のクラッチとなっている。
第2クラッチ22は、第1クラッチ21と同様に、摩擦式ディスククラッチ等で構成されており、内燃機関5の機関出力軸8と第2変速機構40の第2入力軸28とを係合させることが可能に構成されている。第2クラッチ22を係合状態にすることで、機関出力軸8と第2入力軸28が係合して一体に回転することが可能となる。
第2クラッチ22は、油圧式のアクチュエータ(図示せず)等により係合/解放動作が操作される。アクチュエータによる第2クラッチ22の係合/解放動作を操作する操作力が作用していないとき、第2クラッチ22は、係合状態となるよう構成されており、いわゆるノーマルクローズ(normally closed)式のクラッチとなっている。
第1クラッチ21及び第2クラッチ22の係合状態と解放状態(非係合状態)との切替えは、図示しないアクチュエータを介してECU100により制御される。ECU100は、デュアルクラッチ機構20において、第1クラッチ21又は第2クラッチ22のうちいずれか一方を係合状態にして、他方を解放状態にすることで、内燃機関5からの機械的動力を、第1変速機構30及び第2変速機構40のうちいずれか一方に伝達させることが可能となっている。
ここで、第1クラッチ21及び第2クラッチ22から構成されるデュアルクラッチ機構20の詳細な構造の一例について図2を用いて説明する。図2に示すように、デュアルクラッチ機構20において、機関出力軸8には、デュアルクラッチ機構20のクラッチハウジング14aが結合されている。すなわち、クラッチハウジング14aは、機関出力軸8と一体に回転する。クラッチハウジング14aは、後述する摩擦板27a,28aを収容可能に構成されている。
これに対して、第1変速機構30の第1入力軸27と、第2変速機構40の第2入力軸28は、同軸に配置されており、2重軸構造となっている。具体的には、第1入力軸27は、中空シャフトとして構成されており、第1入力軸27内には、第2入力軸28が延びている。内側の軸である第2入力軸28は、外側の軸である第1入力軸27に比べて軸方向に長く構成されている。機関出力軸8側から駆動輪88側に向かうに従って、まず、第1変速機構30の各変速段のメインギヤ31a,33a,35a,39aが配設されており、次に、第2変速機構40の各変速段のメインギヤ42a,44a,46aが配設されている。
第1入力軸27の端には、円板状の摩擦板27aが結合されており、一方、第2入力軸28の端にも、同様に摩擦板28aが結合されている。これら摩擦板27a,28aは、上述のクラッチハウジング14a内に収容されており、第1クラッチ21及び第2クラッチ22を構成している。
第1クラッチ21は、摩擦板27aと対向するようにクラッチハウジング14aに設けられた摩擦相手板(図示せず)と、摩擦相手板を操作するアクチュエータ(図示せず)とを有している。アクチュエータは、第1クラッチ21の係合/解放動作を操作する。
第1クラッチ21において、摩擦相手板は、図示しない「ばね」(付勢部材)により摩擦板27aと接する方向とは逆方向に付勢されている。すなわち、第1クラッチ21は、アクチュエータによる操作力が作用していないとき、摩擦板27aとクラッチハウジング14aは係合しておらず、第1入力軸27と機関出力軸8との間における動力伝達が遮断された「解放状態」となっている。なお、このような付勢部材としての「ばね」には、ダイヤフラム式のばねやコイル式のばね等、様々な形式のばねを用いることができる。
第1クラッチ21は、アクチュエータにより摩擦相手板が操作されると、摩擦相手板が摩擦板27aに押し付けられて、当該摩擦板27aとクラッチハウジング14aが係合する。つまり、第1クラッチ21は、アクチュエータによる第1クラッチ21の係合/解放動作を操作する操作力が作用すると、摩擦板27aに結合された第1入力軸27と、クラッチハウジング14aに結合された機関出力軸8が係合する係合状態となる。
一方、第1クラッチ21は、アクチュエータにより摩擦相手板が操作されない場合、すなわち第1クラッチ21の係合/解放動作を操作する操作力が作用していない場合においては、摩擦相手板は、ばねにより摩擦板27aと接しないよう付勢されて、摩擦板27aに結合された第1入力軸27と、クラッチハウジング14aに結合された機関出力軸8との間における動力伝達が遮断される解放状態となる。このようにして、第1クラッチ21は、アクチュエータによる第1クラッチ21の係合/解放動作を操作する操作力が作用していないときに解放状態となるように構成されている。
第2クラッチ22は、第1クラッチ21と同様に、摩擦板28aと対向するようにクラッチハウジング14aに設けられた摩擦相手板(図示せず)と、摩擦相手板を操作するアクチュエータ(図示せず)とを有している。アクチュエータは、第2クラッチ22の係合/解放動作を操作する。
第2クラッチ22において、摩擦相手板は、図示しない「ばね」(付勢部材)により摩擦板28aと接するように付勢されている。すなわち第2クラッチ22は、アクチュエータによる操作力が作用していないとき、摩擦板28aとクラッチハウジング14aは係合しており、第2入力軸28と機関出力軸8が係合する「係合状態」となっている。なお、このような付勢部材としての「ばね」には、ダイヤフラム式のばねやコイル式のばね等、様々な形式のばねを用いることができる。
第2クラッチ22は、アクチュエータにより摩擦相手板が操作されると、摩擦相手板が摩擦板28aから引き離されて、当該摩擦板28aとクラッチハウジング14aとの間における動力伝達が遮断される。つまり、第2クラッチ22は、アクチュエータによる第2クラッチ22の係合/解放動作を操作する操作力が作用すると、摩擦板28aに結合された第2入力軸28と、クラッチハウジング14aに結合された機関出力軸8との間における動力伝達が遮断される状態である解放状態となる。
一方、第2クラッチ22は、アクチュエータにより摩擦相手板が操作されない場合、すなわち第2クラッチ22の係合/解放動作を操作する操作力が作用していない場合においては、摩擦相手板は、ばねにより摩擦板28aと接するように付勢されて、摩擦板28aに結合された第2入力軸28と、クラッチハウジング14aに結合された機関出力軸8が係合する係合状態となる。このようにして、第2クラッチ22は、アクチュエータによる第2クラッチ22の係合/解放動作を操作する操作力が作用していないときに係合状態となるよう構成されている。
なお、上述のデュアルクラッチ機構20の詳細な構造において、第1変速機構30の第1入力軸27と第2変速機構40の第2入力軸28は同軸に配置されるものとしたが、デュアルクラッチ機構20の詳細な構造は、これに限定されるものではない。例えば、図3に示すように、第1入力軸27と第2入力軸28は、所定の間隔を空けて平行に延びるよう配置されるものとしても良い。この変形例のデュアルクラッチ機構20においては、機関出力軸8の端に、駆動ギヤ14cが結合されている。駆動ギヤ14cには、第1ギヤ16と、第2ギヤ18が噛み合っており、第1ギヤ16は、第1クラッチ21に結合されており、第2ギヤ18は、第2クラッチ22に結合されている。第1クラッチ21は、第1変速機構30の第1入力軸27と、機関出力軸8に係合する第1ギヤ16とを係合可能に構成されている。一方、第2クラッチ22は、第2変速機構40の第2入力軸28と、機関出力軸8に係合する第2ギヤ18とを係合可能に構成されている。
第1及び第2クラッチ21,22は、それぞれ摩擦式クラッチ等の任意のクラッチ機構で構成することができ、第1クラッチ21は、係合/解放動作を操作する操作力が作用していないときに解放状態となるよう構成されており、これに対して第2クラッチ22は、操作力が作用していないときに係合状態となるよう構成されている。第1クラッチ21及び第2クラッチ22において交互に係合状態と解放状態を切替ることで、機関出力軸8から出力される内燃機関5の機械的動力は、駆動ギヤ14cから、第1変速機構30の第1入力軸27又は第2変速機構40の第2入力軸28のいずれかに伝達されることとなる。
なお、第1及び第2クラッチ21,22の係合/解放状態、すなわちアクチュエータによる第1及び第2クラッチ21,22の係合/解放動作を操作する操作力は、ECU100により制御される。
また、ハイブリッド車両1の駆動装置10には、原動機としてモータ50が設けられている。モータ50は、供給された電力を機械的動力に変換して出力する電動機としての機能と、入力された機械的動力を電力に変換して回収する発電機としての機能とを兼ね備えた回転電機、いわゆるモータジェネレータである。モータ50は、永久磁石式交流同期電動機で構成されており、後述するインバータ110から三相の交流電力の供給を受けて回転磁界を形成するステータ54と、回転磁界に引き付けられて回転する回転子であるロータ52とを有している。モータ50には、ロータ52の回転角位置を検出するレゾルバ(図示せず)が設けられており、ロータ52の回転角位置に係る信号をECU100に送出している。
モータ50のロータ52は、第2変速機構40の第2入力軸28に結合されており、モータ50がロータ52から出力する機械的動力(トルク)は、第2変速機構40の第2入力軸28に伝達される。つまり、モータ50のロータ52と第2変速機構40の第2入力軸28は係合している。また、モータ50は、駆動輪88から第2出力軸48を介してロータ52に伝達された機械的動力(トルク)を交流電力に変換して二次電池120に回収することも可能となっている。
なお、第2入力軸28とロータ52との間には、ロータ52の回転速度を減速して第2入力軸28に伝達する減速機構や、ロータ52の回転速度を変速して第2入力軸28に伝達する変速機構を設けるものとしても良い。
なお、以下の説明において、モータ50を電動機として機能させて、モータ50がロータ52から機械的動力を出力することを「力行」と記す。これに対して、モータ50を発電機として機能させて、駆動輪88からモータ50のロータ52に伝達された機械的動力を電力に変換して回収すると共に、このときロータ52に生じる回転抵抗により、ロータ52及びこれに係合する部材(例えば、駆動輪88)の回転を制動することを「回生制動」と記す。モータ50による力行と回生制動、すなわちモータ50の電動機/発電機としての機能の切替えは、ECU100により制御される。
また、ハイブリッド車両1には、モータ50に交流電力を供給する電力供給装置として、インバータ110が設けられている。インバータ110は、二次電池120から供給される直流電力を交流電力に変換してモータ50に供給することが可能に構成されている。また、インバータ110は、モータ50からの交流電力を直流電力に変換して二次電池120に回収することも可能に構成されている。このようなインバータ110からモータ50への電力供給、及びモータ50からの電力回収は、ECU100により制御される。
また、ハイブリッド車両1の駆動装置10には、原動機から車両推進軸66に伝達された機械的動力を、減速すると共に、駆動輪88に係合する左右の駆動軸80に分配する終減速装置70が設けられている。終減速装置70は、車両推進軸66に結合された駆動ピニオン68と、駆動ピニオン68とリングギヤ72が直交して噛み合う差動機構74とを有している。終減速装置70は、原動機すなわち内燃機関5及びモータ50のうち少なくとも一方から車両推進軸66に伝達された機械的動力を、駆動ピニオン68及びリングギヤ72により減速し、差動機構74により左右の駆動軸80に分配して、駆動軸80に結合されている駆動輪88を回転駆動することが可能となっている。
また、ハイブリッド車両1には、内燃機関5及びモータ50と、第1及び第2変速機構30,40における変速動作と、第1及び第2クラッチ21,22の係合/解放状態とを協調して制御する制御手段として、ECU100が設けられている。ECU100は、機関出力軸8の回転角位置(以下、クランク角と記す)に係る信号と、二次電池120の蓄電状態(SOC)に係る信号と、モータ50のロータ52の回転角位置に係る信号等を検出している。また、ECU100は、第1変速機構30及び第2変速機構40において選択されている変速段、すなわちカップリング機構31e〜46eの係合/解放状態と、第1及び第2クラッチ21,22の係合/解放状態とを検出している。また、ECU100は、運転者により操作される、アクセルペダル(図示せず)の操作量に係る信号と、ブレーキペダル(図示せず)の操作量に係る信号とを検出している。
これら信号に基づいて、ECU100は、各種制御変数を算出している。制御変数には、内燃機関5の機関出力軸8の回転速度(以下、機関回転速度と記す)と、内燃機関5が機関出力軸8から出力するトルク(以下、機関負荷と記す)と、モータ50のロータ52の回転速度であるモータ回転速度と、モータ50がロータ52から出力するトルク(以下、モータ出力トルクと記す)と、ハイブリッド車両1の走行速度(以下、車速と記す)と、二次電池120の蓄電状態等が含まれている。
これら制御変数に基づいて、ECU100は、内燃機関5及びモータ50の運転状態を把握している。ECU100は、第1及び第2変速機構30,40における変速動作、すなわち各カップリング機構31e〜46eの係合/解放状態と、第1クラッチ21及び第2クラッチ22の係合/解放状態、すなわち第1クラッチ21及び第2クラッチ22の係合/解放動作を操作する操作力とを制御することが可能となっている。また、ECU100は、モータ出力トルク及びモータ回転速度と、内燃機関5の機関負荷及び機関回転速度とを制御することが可能となっている。
以上のように構成された車両用駆動装置10において、ECU100が第1変速機構30の第1群の変速段31,33,35,39のうちいずれか1つの変速段を選択し、対応するカップリング機構を係合状態にして、さらに第1クラッチ21を係合状態にすると共に第2クラッチ22を解放状態にすることで、機関出力軸8は、第1入力軸27、第1出力軸37、動力統合ギヤ58、車両推進軸66、終減速装置70を介して駆動軸80と係合する。これにより、第1変速機構30は、内燃機関5の機関出力軸8から出力された機械的動力を、第1入力軸27で受けて、変速段(奇数段)31,33,35、及び後進ギヤ段39のうち選択した変速段により変速し、トルクを変化させて、駆動輪88に係合する駆動軸80に向けて出力することが可能となっている。
この場合、駆動輪88の回転は、動力統合ギヤ58を介して第2変速機構40の第2出力軸48に伝達される。ECU100が第2変速機構40の第2群の変速段42,44,46のうちいずれか1つの変速段を選択して、対応するカップリング機構を係合状態にしているとき、動力統合ギヤ58から第2出力軸48に伝達された機械的動力は、第2変速機構40の変速段(偶数段)42,44,46のうち選択されている変速段により変速され、第2入力軸28に伝達されて、モータ50のロータ52を回転させる。なお、ECU100が第2変速機構40の変速段42,44,46をいずれも選択しないとき、すなわち第2変速機構40のカップリング機構42e,44e,46eを全て解放状態にしているときには、第2出力軸48と第2入力軸28との間で動力伝達が遮断されて、駆動輪88の回転は、第2入力軸28に伝達されることはない。
一方、ECU100が、第2変速機構40の第2群の変速段42,44,46のうちいずれか1つの変速段を選択して、対応するカップリング機構42e,44e,46eを係合状態にして、さらに第2クラッチ22を係合状態にすると共に第1クラッチ21を解放状態にすることで、機関出力軸8は、第2入力軸28、第2出力軸48、動力統合ギヤ58、車両推進軸66、終減速装置70を介して駆動軸80と係合する。これにより、第2変速機構40は、内燃機関5の機関出力軸8及びモータ50のロータ52から出力された機械的動力を、第2入力軸28で受けて、各変速段(偶数段)42,44,46のうち選択した変速段により変速し、トルクを変化させて、駆動輪88に係合する駆動軸80に向けて出力することが可能となっている。
この場合、駆動輪88の回転は、動力統合ギヤ58を介して第1変速機構30の第1出力軸37に伝達される。ECU100が第1変速機構30の第1群の変速段31,33,35,39のうちいずれか1つの変速段を選択し、対応するカップリング機構31e,33e,35e,39eを係合状態にしているとき、動力統合ギヤ58から第1出力軸37に伝達された機械的動力は、第1変速機構30の変速段(奇数段)31,33,35及び後進ギヤ段39のうち選択された変速段により変速され、第1入力軸27に伝達されて、当該第1入力軸27を回転させる。なお、ECU100が第1変速機構30の変速段31,33,35,39をいずれも選択しないとき、すなわち第1変速機構30のカップリング機構31e,33e,35e,39eを全て解放状態にしているときには、第1出力軸37と第1入力軸27との間で動力伝達が遮断されて、駆動輪88の回転は、第1入力軸27に伝達されることはない。
以上のように構成されたハイブリッド車両1は、第1クラッチ21及び第2クラッチ22を交互につなぎ替えることで、変速時において、機関出力軸8と駆動輪88との間における動力伝達の途切れを抑制することが可能となっており、以下に詳細を説明する。
まず、ECU100が第1及び第2変速機構30,40の変速段31〜46のうちいずれか1つの変速段を選択する。例えば、選択した変速段が第1変速機構30の変速段31,33,35,39のうち第1速ギヤ段31である場合、ECU100は、第1速ギヤ段31に対応する第1速カップリング機構31eを係合状態にすると共に、その他のカップリング機構33e,35e,39eを解放状態にする。そして、ECU100は、第1クラッチ21を係合状態にすると共に第2クラッチ22を解放状態にする。これにより、駆動装置10は、内燃機関5からの機械的動力を、第1入力軸27で受け、第1群(奇数段)の変速段31,33,35のうち選択した変速段である第1速ギヤ段31により変速し、第1出力軸37から駆動軸80に伝達して、駆動輪88を回転駆動することができる。
このとき、ECU100は、第2変速機構40の変速段42,44,46のうち、第1変速機構30において選択している変速段である第1速ギヤ段31より、一段高速(ハイギヤ)側の変速段である第2速ギヤ段42を選択し、対応する第2速カップリング機構42eを係合状態にすることで、第2変速機構40の第2入力軸28を空転させる。このようにして、第1速ギヤ段31から第2速ギヤ段42への変速動作、すなわち第1クラッチ21及び第2クラッチ22の係合/解放動作に備えている。
そして、第1変速機構30の第1速ギヤ段31から、第2変速機構40の第2速ギヤ段42への変速(アップシフト)を行う場合、ECU100が、第1クラッチ21を解放状態にしながら第2クラッチ22を係合状態にすることで、駆動装置10は、第1クラッチ21と第2クラッチ22とを掴み替える動作、いわゆる「クラッチ・トゥ・クラッチ」を行う。この動作により、駆動装置10は、機関出力軸8からの動力伝達経路を、徐々に第1変速機構30の第1入力軸27から第2変速機構40の第2入力軸28に移していき、第2速ギヤ段42への変速が完了することとなる。
このようにして、駆動装置10は、第1変速機構30の変速段、すなわち奇数段である第1速ギヤ段31から、第2変速機構40の変速段、すなわち偶数段である第2速ギヤ段42への変速時において、機関出力軸8から駆動軸80への動力伝達に途切れを生じさせることなく変速することができる。
次に、本実施例に係るハイブリッド車両における車両停止中の内燃機関のクランキングに係る制御処理(以下、クランキング制御と記す)について、図1を用いて説明する。
まず、車両停車中において、ECU100は、第2変速機構40において変速段42,44,46をいずれも選択しない状態、すなわち変速段42,44,46にそれぞれ対応するカップリング機構42e,44e,46eを全て解放状態にして、第2入力軸28と第2出力軸48との間における動力伝達を遮断する。
このとき、アクチュエータによる第2クラッチ22の係合/解放動作を操作する操作力は作用しておらず、ノーマルクローズ式クラッチである第2クラッチ22は、係合状態となっている。機関出力軸8は、第2クラッチ22及び第2入力軸28を介して、モータ50のロータ52と係合している。
一方、ノーマルオープン式クラッチである第1クラッチ21は、アクチュエータによる第1クラッチ21の係合/解放動作を操作する操作力は作用しておらず、解放状態となっている。機関出力軸8と第1入力軸27との間における動力伝達は遮断されている。
このようにして、モータ50のロータ52と機関出力軸8は、静止している駆動輪88及び、これに係合する回転部材(例えば、第1出力軸37及び第2出力軸48)とは関係なく、一体に回転することが可能となる。
そして、ECU100は、車両停止中に内燃機関5を始動する要求を受けて、モータ50を力行させる。モータ50のロータ52から第2入力軸28に出力された機械的動力は、第2クラッチ22から機関出力軸8に伝達されて、機関出力軸8を回転駆動する。このようにして、ECU100は、駆動輪88が静止した状態のまま、内燃機関5を始動するためのクランキングを行うことができる。
次に、本実施例に係るハイブリッド車両におけるモータによる発進に係る制御処理(以下、単に「モータ発進制御」と記す)について、図1を用いて説明する。
まず、車両停車中において、ECU100は、第2変速機構40において変速段42,44,46をいずれも選択しない状態にして、第2入力軸28と第2出力軸48との間における動力伝達を遮断する。このとき、第2クラッチ22は、操作力が作用しておらず係合状態となっているため、機関出力軸8とモータ50のロータ52は、係合しており一体に回転可能となっている。
加えて、ECU100は、第1変速機構30において第1速ギヤ段31を選択して、対応するカップリング機構31eを係合状態にする共に、第1クラッチ21を係合状態にする。ECU100は、アクチュエータにより第1クラッチ21に操作力を作用させて、第1クラッチ21を係合状態にして、機関出力軸8と第1入力軸27を係合する。
このように第1及び第2クラッチ21,22を共に係合状態にすると共に第1変速機構30において変速段(第1速ギヤ段)31を選択することで、モータ50のロータ52は、機関出力軸8、第1入力軸27、第1出力軸37、及び駆動輪88と係合する。なお、第2変速機構40において第2入力軸28と第2出力軸48との間における動力伝達は遮断されているので、駆動装置10においてギヤの二重噛み合いが生じることはない。なお、このとき、第1及び第2クラッチ21,22は、半係合状態にするものとしても良い。
そして、ECU100は、車両停止中にハイブリッド車両1を発進する要求を受けて、モータ50を力行させる。モータ50のロータ52から第2入力軸28に出力された機械的動力は、係合状態にある第1及び第2クラッチ21,22を介して、第1入力軸27に伝達される。モータ50のロータ52から第1入力軸27に伝達された機械的動力は、第1速ギヤ段31により変速されて、第1出力軸37から車両推進軸66に伝達され、終減速装置70により左右の駆動軸80に分配されて駆動輪88を回転駆動する。このようにして、ECU100は、モータ50のロータ52からの機械的動力を、第1変速機構30の変速段により変速し、駆動輪88に伝達してハイブリッド車両1を発進させることができる。なお、モータ50の力行を開始した後に、第1クラッチ21を係合状態又は半係合状態にすることで、ハイブリッド車両1を発進させるものとしても良い。
なお、ハイブリッド車両1を発進させる制御手法は、上述のモータによる発進だけではではなく、原動機として内燃機関を用いて発進させることもできる。上述のクランキング制御を行って内燃機関5を始動した後、ECU100が第1クラッチ21を係合状態にすることで、機関出力軸8からの機械的動力を、第1クラッチ21から第1入力軸27に伝達し、第1変速機構30により変速して、駆動輪88に伝達することでハイブリッド車両1を発進させることもできる。
以上に説明したように本実施例に係る車両用駆動装置10は、機関出力軸8からの機械的動力を第1入力軸27で受け、複数の変速段31,33,35,39のうちいずれか1つにより変速して、駆動輪88に向けて伝達可能な第1変速機構30と、機関出力軸8及びロータ52からの機械的動力を、当該ロータ52と係合する第2入力軸28で受け、複数の変速段42,44,46のうちいずれか1つにより変速して、駆動輪88に向けて伝達可能な第2変速機構40と、機関出力軸8と第1入力軸27とを係合可能な第1クラッチ21と、機関出力軸8と第2入力軸28とを係合可能な第2クラッチ22とを備えており、第2クラッチ22は、当該第2クラッチ22の係合/解放動作を操作する操作力が作用していないときに係合状態となる、いわゆるノーマルクローズ式のクラッチで構成されているものとした。
これにより、車両用駆動装置10は、第2変速機構40の変速段42,44,46をいずれも選択しない状態にすると共に第1クラッチ21を解放状態にして、モータ50を力行させれば、第2クラッチ22の係合/解放動作を行うことなく、機関出力軸8を回転駆動することができる。
また、本実施例において、第1クラッチ21は、当該第1クラッチ21の係合/解放動作を操作する操作力が作用していないときに解放状態となる、いわゆるノーマルオープン式のクラッチで構成されているものとしたので、第2変速機構40の変速段42,44,46をいずれも選択しない状態にしてモータ50を力行させるだけで、第1及び第2クラッチ21,22の係合/解放動作を行うことなく、機関出力軸8を回転駆動することができる。加えて、第1変速機構30の変速段31,33,35,39のうちいずれか1つを選択しておくだけで、モータ50から第2入力軸28に出力された機械的動力を、第1及び第2クラッチ21,22を介して第1入力軸27に伝達させ、第1変速機構30の変速段により変速して駆動輪88に伝達することができる。
また、第1クラッチ21及び第2クラッチ22の係合/解放動作を操作するアクチュエータが何らかの理由で作動しなくても、第1クラッチ21が解放状態となるため、第1及び第2変速機構30,40において、いずれかの変速段が選択されており、変速段に対応するカップリング機構が係合状態にあっても、駆動装置10においてギヤの二重噛み合いが生じてしまうことがない。
また、本実施例においては、第2変速機構40における変速段の選択と、モータ50の力行とを制御可能な制御手段としてECU100を備え、ECU100は、車両停止中において内燃機関5を始動する際に、第2変速機構40において変速段をいずれも選択しない状態にしてモータ50を力行させるものとしたので、第1及び第2クラッチ21,22の係合/解放動作を行うことなく、モータ50からの機械的動力を第2クラッチ22から機関出力軸8に伝達させて機関出力軸8を回転駆動することができる。これにより、第1及び第2クラッチ21,22の係合/解放動作を行うことなく、ハイブリッド車両1が停車した状態で内燃機関5を始動させることができる。
また、本実施例においては、第1及び第2変速機構30,40における変速段の選択と、第1クラッチ21の係合/解放状態と、モータ50の力行とを制御可能な制御手段としてECU100を備え、ECU100は、車両を発進させる際に、第2変速機構40において変速段をいずれも選択しない状態にすると共にモータ50を力行させ、第1クラッチ21を係合状態にするものとした。第1クラッチ21を係合状態にする係合動作を行うだけで、モータ50からの機械的動力を、第1及び第2クラッチ21,22を介して第1入力軸27に伝達させ、第1変速機構30により変速して、駆動輪88に伝達することができる。これにより、モータ50のみを選択使用して、ハイブリッド車両1を発進させることができる。
なお、ECU100は、車両を発進させる際に、第2変速機構40において変速段をいずれも選択しない状態にすると共に第1変速機構30の変速段のうちいずれか1つを選択し、且つ第1クラッチ21を係合状態にしてモータ50を力行させるものとすることで、モータ50からの機械的動力を、第1及び第2クラッチ21,22を介して第1入力軸27に伝達させ、第1変速機構30の変速段により変速して、駆動輪88に伝達することができる。これにより、第1クラッチ21を係合状態にする係合動作を行うだけで、モータ50の機械的動力を、第1変速機構30により変速して駆動輪88に伝達して、ハイブリッド車両1を発進させることができる。
また、本実施例においては、第1変速機構30の変速段31,33,35,39は、最も低速側の変速段である第1速ギヤ段31を含んでおり、制御手段としてのECU100は、車両を発進させる際に、第1変速機構30の変速段のうち第1速ギヤ段31を選択するものとしたので、モータ50からの機械的動力を、第1及び第2変速機構30,40のうち最も減速比の大きい変速段で減速しトルクを増大させて、駆動輪88に伝達することができる。これにより、モータ50からの機械的動力により、良好な応答性でハイブリッド車両1を発進させることができる。
また、本実施例において、原動機として設けられたモータ50は、供給された電力を機械的動力に変換して出力する電動機としての機能と、入力された機械的動力を電力に変換する発電機としての機能とを兼ね備えたモータジェネレータであるものとしたが、本発明に係るモータは、これに限定されるものではない。原動機としてのモータは、ロータから変速機構の入力軸に機械的動力を出力できれば良く、例えば、供給電力を機械的動力に変換して出力する機能のみを有する電動機で構成するものとしても良い。
また、本実施例において、第1変速機構30は、第1入力軸27で受けた機械的動力を、第1出力軸37から駆動輪88と係合する動力統合ギヤ58に伝達し、第2変速機構40は、第2入力軸28で受けた機械的動力を、第2出力軸48から動力統合ギヤ58に伝達するものとしたが、第1変速機構30及び第2変速機構40の態様は、これに限定されるものではない。第1変速機構30及び第2変速機構40は、それぞれ入力軸27,28で受けた機械的動力を、駆動輪88に向けて伝達可能であれば良く、例えば、第1変速機構30と第2変速機構40は、それぞれ第1入力軸27、第2入力軸28で受けた機械的動力を、駆動輪88と係合する共通の出力軸に伝達するものとしても良い。
また、本実施例において、車両用駆動装置10は、内燃機関5の機関出力軸8及びモータ50のロータ52からの機械的動力を、第1変速機構30及び第2変速機構40のうち少なくとも一方により変速して、動力統合ギヤ58から、車両推進軸66、終減速装置70の差動機構74を介して駆動輪88に伝達するものとしたが、第1変速機構30及び第2変速機構40から駆動輪88に向けての動力伝達の態様は、これに限定されるものではない。駆動装置10において、第1変速機構30及び第2変速機構40は、それぞれ第1入力軸27及び第2入力軸28で受けた機械的動力を、駆動輪88に向けて伝達可能であれば良く、例えば、動力統合ギヤ58、又は当該動力統合ギヤ58と噛み合う第1及び第2駆動ギヤ37c,48cが、直接に差動機構74のリングギヤ72を駆動するものとしても良い。