JP5108487B2 - 押出マットシートの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、マット調(艶消し)の外観を有する押出マットシートの製造方法に関する。
マット調の外観を有するマットシートは、例えば自動車の内外装部品、家庭用電気機器の外装部品、家具の外装、壁等の表面加飾に用いられ、一般に、透明性樹脂に特定の微粒子を分散させて押出シート化する押出成形により得られる。
このとき、透明性樹脂中に分散させた微粒子をシート表面から突出させる必要があるため、通常、ダイから押出される溶融樹脂を一対のロール間に挟みこんで成形することは避けられていた。
しかしながら、溶融樹脂を一対のロール間に挟み込まないで成形した場合には、シートの厚み制御が難しく、得られるシートの厚み誤差(ムラ)が大きくなる。また、シートの表面に筋等が発生して外観に劣る傾向があった。
一方、シート表面の外観を良好にするために、溶融樹脂を一対のロール間に挟み込んでしまうと、前記微粒子が透明性樹脂中に押し込まれてしまい、マット調の外観が損なわれてしまう。
例えば特許文献1には、所定の樹脂混合物を用いて良好な艶消しフィルムを得る方法としてTダイ法、インフレーション法、カレンダー法が記載されている。
しかしながら、溶融樹脂を一対のロール間に挟み込むTダイ法およびカレンダー法には、微粒子が透明性樹脂中に押し込まれてしまい、マット調の外観が損なわれるという問題がある。また、溶融樹脂を一対のロール間に挟み込まないインフレーション法には、得られるシートに厚みムラがあり、かつ筋等が発生して表面の外観が低下するという問題がある。
特許第3307989号公報(第4頁左欄13〜15行)
本発明の課題は、厚みムラがなく、表面の外観に優れ、所望のマット性を有する押出マットシートの製造方法を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、以下の構成からなる解決手段を見出し、本発明を完成するに至った。
(1)微粒子を分散させた透明性樹脂を溶融してダイから押出し、一対のロール間に挟み込んで成形する押出マットシートの製造方法であって、前記一対のロールは、一方が高剛性の金属ロールであり、他方が外周部に金属製薄膜を備えた弾性ロールであることを特徴とする押出マットシートの製造方法。
(2)前記弾性ロールは、略円柱状の軸ロールと、この軸ロールの外周面を覆うように配置された円筒形の金属製薄膜と、前記軸ロールと金属製薄膜との間に封入された流体とを備えており、前記流体を温度制御することによって、前記弾性ロールを温度制御可能に構成した前記(1)記載の押出マットシートの製造方法。
(3)前記金属ロールおよび前記弾性ロールの表面温度(Tr)を、押出マットシートを構成する透明性樹脂の熱変形温度(Th)に対して、(Th−20℃)≦Tr≦(Th+20℃)の範囲内にする前記(1)または(2)記載の押出マットシートの製造方法。
(4)前記微粒子の重量平均粒子径が0.5〜30μmである前記(1)〜(3)のいずれかに記載の押出マットシートの製造方法。
(5)前記微粒子を透明性樹脂100重量部に対して2〜40重量部の割合で分散させる前記(1)〜(4)のいずれかに記載の押出マットシートの製造方法。
(6)厚さが30〜500μmである前記(1)〜(5)のいずれかに記載の押出マットシートの製造方法。
本発明によれば、微粒子を分散させた透明性樹脂を溶融してダイから押出し、一対のロール間に挟み込んで成形するので、得られるシートに厚みムラがなく、かつ筋等が発生して表面の外観が低下するのを抑制することができる。
一方、ダイから押出される溶融樹脂(すなわち微粒子を分散させた溶融状態の透明性樹脂)を硬い金属ロール間に挟み込んで成形すると、押しつぶされて成形されるために、前記微粒子が透明性樹脂中に押し込まれてしまい、マット調の外観が損なわれてしまう。
そこで本発明では、前記一対のロールを、高剛性の金属ロールと、外周部に金属製薄膜を備えた弾性ロールとで構成するようにした。このようなロール間に溶融樹脂を挟み込むと、前記弾性ロールが溶融樹脂を介して金属ロールの外周面に沿って凹状に弾性変形する。これにより、金属ロールおよび弾性ロールは、溶融樹脂に対して面接触で圧着するので、これらロール間に挟み込まれる溶融樹脂は面状に均一加圧されながら成形される。このようにして成形すると、前記微粒子が透明性樹脂中に押し込まれるのを抑制することができるので、マット調の外観が損なわれるのを抑制することができ、所望のマット性を有する押出マットシートを得ることができる。
本発明の押出マットシートは、透明性樹脂中に微粒子を分散させたものである。前記透明性樹脂としては、透明性を有しかつ溶融加工可能な樹脂なら特に制限はなく、例えばポリ塩化ビニル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、低密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、直鎖低密度ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン樹脂、セルロースアセテート樹脂、エチレン−ビニルアセテート樹脂、アクリル−アクリロニトリル−スチレン樹脂、アクリル−塩素化ポリエチレン樹脂、エチレン−ビニルアルコール樹脂、フッ素樹脂、メタクリル酸メチル樹脂、メタクリル酸メチル−スチレン樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、メチルペンテン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、脂環構造含有エチレン性不飽和単量体単位を含有する樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂等の汎用またはエンジニアリングプラスチックの他に、ポリ塩化ビニル系エラストマー、塩素化ポリエチレン、エチレン−アクリル酸エチル樹脂、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、熱可塑性ポリエステルエラストマー、アイオノマー樹脂、スチレン・ブタジエンブロックポリマー、エチレン−プロピレンゴム、ポリブタジエン樹脂、アクリル系ゴム等のゴム状重合体が挙げられ、これらは1種または2種以上をブレンドして用いてもよい。
これらの樹脂の中で、光学特性の良好なメタクリル酸メチル単位を50質量%以上含むメタクリル酸メチル系樹脂、上述のメタクリル酸メチル系樹脂100重量部にゴム状重合体を100重量部以下添加した樹脂組成物、スチレン単位を50質量%以上含むスチレン系樹脂、上述のスチレン系樹脂100重量部にゴム状重合体を100重量部以下添加した樹脂組成物、芳香族ポリカーボネート樹脂、脂環構造含有エチレン性不飽和単量体単位を含有する樹脂から選ばれたものが好ましい。
メタクリル酸メチル単位を50質量%以上含むメタクリル酸メチル系樹脂は、単量体単位としてメタクリル酸メチル単位を含む重合体であり、メタクリル酸メチル単位の含有量は50質量%以上、好ましくは70質量%以上であり、100質量%であってもよい。メタクリル酸メチル単位が100質量%の重合体は、メタクリル酸メチルを単独で重合させて得られるメタクリル酸メチル単独重合体である。
また、かかるメタクリル酸メチル重合体は、メタクリル酸メチルと共重合し得る単量体との共重合体であってもよい。メタクリル酸メチルと共重合し得る単量体としては、メタクリル酸メチル以外のメタクリル酸エステル類も挙げられる。かかるメタクリル酸エステル類としては、例えばメタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル等が挙げられる。また、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸、アクリル酸等の不飽和酸類、クロロスチレン、ブロモスチレン等のハロゲン化スチレン類、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等のアルキルスチレン類等の置換スチレン類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、無水マレイン酸、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等も挙げられる。かかる単量体は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明におけるゴム状重合体とは、アクリル系多層構造重合体もしくは5〜80重量部のゴム状重合体にエチレン性不飽和単量体、なかでもアクリル系不飽和単量体95〜20重量部をグラフト重合したグラフト共重合体等がある。
アクリル系多層構造重合体は、ゴム弾性の層またはエラストマーの層を20〜60重量部を内在させるものであって、最外には硬質層を有するもので、最内層として硬質層をさらに含む構造のものでも良い。
ゴム弾性の層またはエラストマーの層とは、ガラス転移点(Tg)が25℃未満のアクリル系重合体の層であり、低級アルキルアクリレートおよびメタクリレート、低級アルコキシアクリレート、シアノエチルアクリレート、アクリルアミド、ヒドロキシ低級アルキルアクリレート、ヒドロキシ低級メタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸等のモノエチレン性不飽和単量体の1種以上をアリルメタクリレートや前述の多官能単量体で架橋させた重合体からなる。
硬質層とは、Tgが25℃以上のアクリル系重合体の層であり、炭素数1〜4個のアルキル基を有するアルキルメタクリレートを単独または主成分とし、他のアルキルメタクリレートやアルキルアクリレート、スチレン、置換スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の共重合可能な単官能単量体の重合体からなり、さらに多官能単量体を加えて重合させた架橋重合体でも構わない。
このようなゴム状重合体としては、例えば特公昭55−27576号公報または特開平6−80739号公報や特開昭49−23292号公報等に記載のものが該当する。
5〜80重量部のゴム状重合体にエチレン性不飽和単量体を95〜20重量部グラフト重合したグラフト共重合体は、ゴム状重合体として例えばポリブタジエンゴム、アクリロニトリル/ブタジエン共重合体ゴム、スチレン/ブタジエン共重合体ゴム等のジエン系ゴム、ポリブチルアクリレート、ポリプロピルアクリレート、ポリ−2−エチルヘキシルアクリレート等のアクリル系ゴム、およびエチレン/プロピレン/非共役ジエン系ゴム等を用いることができる。このゴム状重合体にグラフト共重合するのに用いられるエチレン性単量体およびそれらの混合物としては、例えばスチレン、アクリロニトリル、アルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのグラフト共重合体としては、例えば特開昭55−147514号公報や特公昭47−9740号公報等に記載のものを用いることができる。
ゴム状重合体の分散割合は、メタクリル酸メチル系またはスチレン系樹脂100重量部に対して、0〜100重量部、好ましくは3〜50重量部である。100重量部を超えると、シートの剛性が低下するので好ましくない。
スチレン単位を50質量%以上含むスチレン系樹脂は、スチレン系単官能単量体単位を主成分とする重合体、例えば50質量%以上含む重合体であって、スチレン系単官能単量体の単独重合体であってもよいし、スチレン系単官能単量体およびこれと共重合可能な単官能単量体の共重合体であってもよい。
スチレン系単官能単量体とは、例えばスチレンのほか、クロロスチレン、ブロモスチレン等のハロゲン化スチレン類、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等アルキルスチレン類等の置換スチレン等のような、スチレン骨格を有し、ラジカル重合可能な二重結合を分子内に1個有する化合物である。
かかるスチレン系単官能単量体と共重合可能な単官能単量体とは、ラジカル重合可能な二重結合を分子内に1個有し、この二重結合でスチレン系単官能単量体と共重合可能な化合物であって、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル等のメタクリル酸エステル類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル等のアクリル酸エステル類、アクリロニトリル等が挙げられ、メタクリル酸メチル等のメタクリル酸エステル類が好ましく用いられ、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いられる。
芳香族ポリカーボネート樹脂は、通常二価フェノールとカーボネート前駆体とを界面重縮合法、溶融エステル交換法で反応させて得られたものの他、カーボネートプレポリマーを固相エステル交換法により重合させたもの、または環状カーボネート化合物の開環重合法により重合させて得られるものである。
ここで使用される二価フェノールの代表的な例としては、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(3−イソプロピル−4−ヒドロキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−フェニル)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}フルオレン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−o−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−5,7−ジメチルアダマンタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルおよび4,4’−ジヒドロキシジフェニルエステル等が挙げられ、これらは単独または2種以上を混合して使用できる。
なかでもビスフェノールA、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンおよびα,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼンからなる群より選ばれた少なくとも1種のビスフェノールより得られる単独重合体または共重合体が好ましく、特に、ビスフェノールAの単独重合体および1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンとビスフェノールA、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパンおよびα,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼンから選択される少なくとも1種の二価フェノールとの共重合体が好ましく使用される。
カーボネート前駆体としては、例えばカルボニルハライド、カーボネートエステルまたはハロホルメート等が使用され、具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネートまたは二価フェノールのジハロホルメート等が挙げられる。
脂環構造含有エチレン性不飽和単量体単位を含有する樹脂とは、例えばノルボルネン系重合体やビニル脂環式炭化水素系重合体等が挙げられる。重合体の繰り返し単位中に脂環式構造を含有するのが特徴であり、脂環式構造は、主鎖および/または側鎖のいずれに有していても良い。光透過性の観点から、主鎖に脂環式構造を含有するものが好ましい。
こうした脂環式構造を含有する重合体樹脂の具体例としては、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体、ビニル脂環式炭化水素系重合体、およびこれらの水素添加物等が挙げられる。これらの中でも、光透過性の観点から、ノルボルネン系重合体水素添加物、ビニル脂環式炭化水素系重合体またはその水素化物等が好ましく、ノルボルネン系重合体水素添加物がより好ましい。
なお、本発明に使用される透明性樹脂には、目的に応じて、例えば紫外線吸収剤、界面活性剤、耐衝撃剤、高分子型帯電防止剤、酸化防止剤、難燃剤、滑剤、染料、顔料等を加えても何ら問題はない。
上記で例示した透明性樹脂中に分散させる微粒子としては、無機系または有機系の透明微粒子が挙げられ、具体例としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム、シリカ、硝子、タルク、マイカ、ホワイトカーボン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛等の無機粒子およびこれら無機粒子に脂肪酸等で表面処理を施したものや、架橋または高分子量スチレン系樹脂粒子、架橋または高分子量アクリル系樹脂粒子、架橋シロキサン系樹脂粒子等の樹脂粒子等が挙げられる。
なお、本発明において架橋樹脂粒子とは、アセトン中に溶解させた時のゲル分率が10%以上である粒子のことを意味する。また、高分子量樹脂粒子とは、重量平均分子量(Mw)が50万〜500万の粒子のことを意味する。
スチレン系樹脂粒子とは、(1)スチレン系単量体を重合して得られる高分子量の樹脂粒子、またはスチレン系単量体単位を50重量%以上含み、ラジカル重合可能な二重結合を分子内に1個有する単量体を重合して得られる高分子量の樹脂粒子、(2)スチレン系単量体とラジカル重合可能な二重結合を分子内に少なくとも2個有する単量体を重合して得られる架橋樹脂粒子、またはスチレン系単量体単位を50重量%以上含み、ラジカル重合可能な二重結合を分子内に1個有する単量体とラジカル重合可能な二重結合を分子内に少なくとも2個有する単量体を重合して得られる架橋樹脂粒子のことである。
スチレン系単量体とは、スチレンおよびその誘導体である。スチレン誘導体としては、例えばクロロスチレン、ブロムスチレンのようなハロゲン化スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレンのようなアルキル置換スチレン等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。上記スチレン系単量体は、2種類以上を併用して用いてもよい。
ラジカル重合可能な二重結合を分子内に1個有する単量体としては、前記のスチレン系単量体成分以外であれば特に制限はないが、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル等のメタクリル酸エステル類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル等のアクリル酸エステル類、アクリロニトリル等が挙げられる。これらの中でも、特に、メタクリル酸メチルのようなアルキルメタアクリレート類が好ましい。なお、上記単量体も、2種類以上を併用して用いてもよい。
ラジカル重合可能な二重結合を分子内に少なくとも2個有する単量体とは、前述の単量体と共重合可能で共役ジエンを除くものである。例えば、1、4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートのようなアルキルジオールジ(メタ)アクリレート類;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートのようなアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類;ジビニルベンゼン、ジアリルフタレートのような芳香族多官能化合物;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートのような多価アルコールの(メタ)アクリレート類等が挙げられる。これらの単量体も、2種類以上を併用して用いてもよい。
アクリル系樹脂粒子とは、(1)アクリル系単量体を重合して得られる高分子量の樹脂粒子、またはアクリル系単量体単位を50重量%以上含み、ラジカル重合可能な二重結合を分子内に1個有する単量体を重合して得られる高分子量の樹脂粒子、(2)アクリル系単量体とラジカル重合可能な二重結合を分子内に少なくとも2個有する単量体を重合して得られる架橋樹脂粒子、またはアクリル系単量体単位を50重量%以上含み、ラジカル重合可能な二重結合を分子内に1個有する単量体とラジカル重合可能な二重結合を分子内に少なくとも2個有する単量体を重合して得られる架橋樹脂粒子のことである。
アクリル系単量体としては、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸、アクリル酸等が挙げられる。これらの単量体は、2種以上を併用して用いてもよい。
ラジカル重合可能な二重結合を分子内に1個有する単量体としては、前記のアクリル系単量体成分以外であれば特に制限はないが、例えばスチレンおよびその誘導体等が挙げられる。スチレン誘導体としては、例えばクロロスチレン、ブロムスチレンのようなハロゲン化スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレンのようなアルキル置換スチレン等が挙げられる。これらの中でも、特にスチレンが好ましい。なお、上記単量体も、2種類以上を併用して用いてもよい。
ラジカル重合可能な二重結合を分子内に少なくとも2個有する単量体とは、前述の単量体と共重合可能で共役ジエンを除くものであり、先に述べた単量体の中から選べばよい。特に、エチレングリコールジ(メタ)アクリレートが好ましい。
スチレン系樹脂粒子、アクリル系樹脂粒子共に、これらの構成成分を懸濁重合法、ミクロ懸濁重合法、乳化重合法、分散重合法等の方法により重合し、目的の粒子を得る。
架橋シロキサン系樹脂とは、一般にシリコーンゴム、シリコーンレジンと呼称されるものであり、常温で固体状のものを指す。シロキサン系の重合体は、主にクロロシランの加水分解と縮合によって製造される。例えば、ジメチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、フェニルメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシランに代表されるクロロシラン類を加水分解と縮合することにより、(架橋)シロキサン系重合体を得ることができる。さらに、これらの(架橋)シロキサン系重合体を過酸化ベンゾイル、過酸化−2、4−ジクロルベンゾイル、過酸化−p−クロルベンゾイル、過酸化ジキュミル、過酸化ジ−t−ブチル、2、5−ジメチル−2、5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンのような過酸化物により架橋させたり、ポリシロキサン化合物の末端にシラノール基を導入し、アルコキシシラン類と縮合架橋させたりすることによっても製造することができる。
例示したこれらの中でも、珪素原子1個あたりに有機基が2〜3個結合した架橋シロキサン系重合体が好ましい。
架橋シロキサン系樹脂を粒子状とするには、前記架橋重合体を機械的に微粉砕する方法や、特開昭59−68333号公報に記載のように特定の線状オルガノシロキサンブロックを含有する硬化性重合体もしくは硬化性重合体組成物を噴霧状態で硬化させて球状粒子を得る方法や、特開昭60−13813号公報に記載のように特定のアルキルトリアルコキシシランまたはその部分加水分解縮合物を、アンモニアまたはアミン類の水溶液中で、加水分解・縮合させて球状粒子とする方法等が利用できる。
微粒子の重量平均粒子径としては、0.5〜30μmであるのが好ましい。これに対し、前記重量平均粒子径が0.5μmより小さくなると、表面のマット感が弱くなり、30μmより大きくなると、フィルムが割れやすくなるので好ましくない。前記重量平均粒子径は、レーザー回折・散乱式粒径測定装置で測定して得られる値である。
透明性樹脂は、その屈折率が1.5程度のものが多いため、それよりも屈折率が大きく離れた微粒子を添加すると、強く白濁してしまい好ましくない場合がある。そこで、微粒子の屈折率としては、1.3〜1.8程度が好ましい。微粒子の屈折率の測定については、特定の屈折率を持つ屈折率測定用の各標準液に微粒子を浸漬し、透き通って見えるときの当該標準液の屈折率を、微粒子の屈折率とすればよい。
微粒子は、透明性樹脂100重量部に対して2〜40重量部の割合で分散させるのが好ましい。これに対し、微粒子の割合が2重量部よりも少ないと、所望のマット性が得られないおそれがあり、40重量部よりも多いと、表面に微粒子由来の凹凸が大きく現れて表面の外観が低下するおそれがあり、フィルムの強度も損なわれ扱いにくくなるので好ましくない。
微粒子を透明性樹脂中に分散させる方法としては、特に限定されるものではなく、例えば両者をヘンシェルミキサー、タンブラー等で機械的に混合し、バンバリーミキサーや一軸、二軸の押出機で溶融混練する方法等が挙げられる。
前記微粒子を分散させた透明性樹脂からなる本発明の押出マットシートは、次のようして製造することができる。以下、本発明にかかる押出マットシートの製造方法の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。図1は、本実施形態にかかる押出マットシートの製造方法を示す概略説明図である。図2は、本実施形態にかかるロール構成を示す概略断面説明図である。
本実施形態の押出マットシートは、通常の押出成形法により製造することができる。すなわち、図1に示すように、前記透明性樹脂および微粒子を所定の割合で混合し、押出機1および/または押出機2で加熱して溶融混練しながら、ダイ3から薄いシート状に押出しを行う。
押出マットシートを複層構造とする場合には、共押出成形法により製造することができる。すなわち、例えば押出機1から基材となる溶融樹脂を、押出機2から積層したい別の溶融樹脂をそれぞれ共押出しすればよい。共押出しするには、微粒子を分散させた各透明性樹脂をそれぞれ別個の押出機1,2で加熱して溶融混練しながら、共押出成形用のダイ3から押出し、積層一体化すればよい。
押出機1,2としては、例えば一軸押出機、二軸押出機等が挙げられる。なお、押出機の数は2台に限定されるものではなく、3台以上の複数台にしてもよい。ダイ3としては、通常、Tダイが用いられ、溶融樹脂を単層で押出す単層ダイの他、フィードブロックダイ、マルチマニホールドダイ等のように、それぞれ独立して押出機1,2から圧送された2種以上の溶融樹脂を積層して共押出しする多層ダイ等を採用することができる。
上記のようにしてダイ3から押出される溶融樹脂4を、略水平方向に対向配置された一対のロールからなる冷却ロール5に挟み込んで成形し、冷却することで押出マットシート11を得る。
冷却ロール5は、図2に示すように、高剛性の金属ロール6と、外周部に金属製薄膜9を備えた弾性ロール、すなわち金属弾性ロール7とで構成されている。金属ロール6および金属弾性ロール7は、少なくとも一方がモータ等の回転駆動手段に接続されており、両ロールが所定の周速度で回転するように構成されている。
高剛性の金属ロール6は、金属ロール6および金属弾性ロール7間に挟み込まれた後のシート状の樹脂が巻き掛けられる、巻き掛けロールである。このような金属ロール6は、特に限定されるものではなく、従来から押出成形で使用されている通常の金属ロールを採用することができる。具体例としては、ドリルドロールやスパイラルロール等が挙げられる。金属ロール6の表面状態は、例えば鏡面であってもよく、模様や凹凸等があってもよい。
金属弾性ロール7は、略円柱状の回転自在に設けられた軸ロール8と、この軸ロール8の外周面を覆うように配置され、溶融樹脂4に接触する円筒形の金属製薄膜9とを備えており、これら軸ロール8と金属製薄膜9との間には流体10が封入されており、これにより金属弾性ロール7は弾性を示すことができる。前記軸ロール8は、特に限定されるものではなく、例えばステンレス鋼等からなる。
金属製薄膜9は、例えばステンレス鋼等からなり、その厚さとしては2〜5mm程度が好ましい。この金属製薄膜9は、屈曲性や可撓性等を有しているのが好ましく、溶接継ぎ部のないシームレス構造が好ましい。このような金属製薄膜9を備えた金属弾性ロール7は、耐久性に優れると共に、金属製薄膜9を鏡面化すれば通常の鏡面ロールと同様の取り扱いができ、金属製薄膜9に模様や凹凸を付与すればその形状を転写できるロールになるので、使い勝手がよい。
この金属製薄膜9が軸ロール8の両端部で固定され、軸ロール8と金属製薄膜9との間に流体10が封入される。流体10としては、例えば水、油等が挙げられる。この流体10を温度制御することによって、金属弾性ロール7を温度制御可能にすることができる。これにより、後述する金属ロール6および金属弾性ロール7の表面温度(Tr)と、押出マットシートを構成する透明性樹脂の熱変形温度(Th)とを所定の関係に調整しやすくなり、生産能力を向上させることができる。
前記温度制御には、例えばPID制御やON−OFF制御等の公知の制御方法を採用することができる。なお、流体10に代えて、空気等の気体を用いることもできる。
このような金属ロール6および金属弾性ロール7間に溶融樹脂4を挟み込むと、金属弾性ロール7が溶融樹脂4を介して金属ロール6の外周面に沿って凹状に弾性変形し、金属弾性ロール7と金属ロール6とが溶融樹脂4を介して所定の接触長さLで接触する。これにより、金属ロール6および金属弾性ロール7は、溶融樹脂4に対して面接触で圧着するようになり、これらロール間に挟み込まれた溶融樹脂4は面状に均一加圧されながら成形される。このようにして成形すると、前記微粒子が透明性樹脂中に押し込まれるのを抑制することができるので、マット調の外観が損なわれるのを抑制することができ、所望のマット性を有する押出マットシート11を得ることができる。
前記接触長さLとしては、得られる押出マットシート11のマット調の外観が損なわれない、すなわち前記微粒子が透明性樹脂中に押し込まれるのを抑制することができる長さであればよい。したがって、金属弾性ロール7は、該金属弾性ロール7が弾性変形した際にこのような接触長さLを形成することができる程度の弾性を備えていればよい。前記接触長さLとしては、1〜20mm、好ましくは1〜10mm、より好ましくは1〜7mmであるのがよい。前記接触長さLを所定の値にするには、例えば金属製薄膜9の厚み、流体10の封入量等を調整することによって任意に行うことができる。
ここで、溶融樹脂4を金属ロール6および金属弾性ロール7に挟み込んで成形する際には、溶融樹脂4を冷却固化前ないし冷却固化させる過程で両ロールに挟み込む必要がある。具体的には、金属ロール6および金属弾性ロール7の表面温度(Tr)を、透明性樹脂の熱変形温度(Th)に対して、(Th−20℃)≦Tr≦(Th+20℃)、好ましくは(Th−15℃)≦Tr≦(Th+10℃)、より好ましくは(Th−10℃)≦Tr≦(Th+5℃)の範囲とすることが望ましい。なお、透明性樹脂の熱変形温度(Th)としては、特に限定されるものではないが、通常、60〜200℃程度である。透明性樹脂の熱変形温度(Th)は、ASTM D−648に準拠して測定される温度である。
一方、表面温度(Tr)が(Th−20℃)よりも低い温度になると、フィルムの熱収縮性が大きくなる。また、表面温度(Tr)が(Th+20℃)よりも高い温度になると、ロールからの剥離マークが目立ちやすくなる。
なお、本発明では異種材料を積層した複層シートも対象としており、この場合の表面温度(Tr)については、熱変形温度(Th)が最も高い樹脂を基準とする。
金属ロール6および金属弾性ロール7間に挟み込まれた後のシート状の樹脂は、金属ロール6に巻き掛けられた後、図示しない引取りロールにより搬送ロール上を冷却されながら引取られ、これにより押出マットシート11を得る。
押出マットシート11の厚さとしては30〜500μmであるであるのがよい。厚さが30μm未満であると、前記したロール構成では、安定して押出マットシート11を得ることができず、500μmを超えると、シートとして取り扱うことが困難となる。押出マットシート11の厚みは、ダイ3から押し出される溶融樹脂4の厚み、一対の冷却ロール5の間隔等により調整することができる。
押出マットシート11の光沢度としては、50%以下、好ましくは30〜50%であるのがよい。光沢度が50%よりも大きいと、艶が出てしまいマット調の外観が損なわれる。前記光沢度の調整(すなわちマット性の調整)は、例えば微粒子の重量平均分子量、屈折率および分散量等を調整することによって任意に行うことができる。前記光沢度は、後述するように、押出マットシート11において金属ロール6に接触していない面を、JIS Z−8741の光沢度測定に準拠して光沢度計により60°反射にて測定して得られる値である。
押出マットシート11の算術平均粗さ(Ra)としては、16μm以下、好ましくは1〜3μmであるのがよい。算術平均粗さ(Ra)が16μmよりも大きいと、フィルムの強度が低下する。前記算術平均粗さ(Ra)は、後述するように、JISB0601−2001に準拠して表面粗さ形状測定機により、カットオフ値2.5mm、基準長さ2.5mm、区間数5で測定して得られる値である。
押出マットシート11は、例えば自動車の内外装部品、家庭用電気機器の外装部品、家具の外装、壁等の表面加飾の他、透過型ディスプレイの表面板、照明カバー等にも適用することができるが、本発明はこれらの用途に限定されるものではない。
次に、本発明にかかる押出マットシートの製造方法の他の実施形態について説明する。図3は、本実施形態にかかるロール構成を示す概略断面説明図である。なお、図3においては、前述した図1,図2と同一の構成部分には同一の符号を付して説明は省略する。
図3に示すように、本実施形態にかかる金属弾性ロール15は、略円柱状の回転自在に設けられた軸ロール16の外周面を、円筒形の金属製薄膜17で被覆したものである。軸ロール16は、例えばシリコンゴム等のゴムからなるゴムロールであり、これにより金属弾性ロール15は弾性を示すことができる。前記ゴムの硬度を調整することによっても、前記接触長さLを所定の値にすることができる。
金属製薄膜17は、例えばステンレス鋼等からなり、その厚さとしては0.2〜1mm程度が好ましい。
金属弾性ロール15を温度制御可能に構成するには、例えばバックアップ冷却ロールを金属弾性ロール15に取り付ければよい。その他の構成は、前記した一実施形態と同様であるので、説明を省略する。
以上、本発明にかかるいくつかの実施形態について説明したが、本発明は以上の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において種々の改善や変更が可能である。例えば金属ロール6以降に複数本のロールを設け、金属ロール6に巻き掛けたシート状の樹脂を順次、次のロールとの間に挟み込み、巻き掛けるようにしてもよい。
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例で使用した押出装置の構成は、次の通りである。
押出機1:スクリュー径60mm、一軸、ベント付き(東芝機械(株)製)。
押出機2:スクリュー径45mm、一軸、ベント付き(日立造船(株)製)。
フィードブロック:2種2層分配(日立造船(株)製)。
ダイ3:Tダイ、リップ幅1400mm、リップ間隔1mm(日立造船(株)製)。
ロール:横型、面長1400mm、径300mmφの冷却ロール2本。
押出機1,2、ダイ3を図1に示すように配置し、フィードブロックを所定位置に配置した。ついで、前記2本の冷却ロールのうち、押出機1,2に最も近いロールを1番ロール、巻き掛けロールを2番ロールとし、各ロールを以下のように構成した。
<ロール構成1>
図2に示した構成をロール構成1とした。具体的には、1番ロールおよび2番ロールを以下のように構成した。
(1番ロール)
軸ロール8の外周面を覆うように金属製薄膜9を配置し、軸ロール8と金属製薄膜9との間に流体10を封入した金属弾性ロール7を1番ロールとした。軸ロール8、金属製薄膜9および流体10は、次の通りである。
軸ロール8:ステンレス鋼製
金属製薄膜9:厚さ2mmのステンレス鋼製の鏡面金属スリーブ
流体10:油であり、この油を温度制御することによって、金属弾性ロール7を温度制御可能にした。より具体的には、温度調節機のON−OFF制御により前記油を加熱、冷却して温度制御可能にし、軸ロール8と金属製薄膜9との間に循環させた。
(2番ロール)
表面状態を鏡面にしたステンレス鋼製のスパイラルロールを高剛性の金属ロール6とし、これを2番ロールとした。
なお、金属弾性ロール7と金属ロール6との接触長さLは、5mmにした。
<ロール構成2>
1番ロールおよび2番ロールを、いずれも高剛性の金属ロール(表面状態を鏡面にしたステンレス鋼製のスパイラルロール)とした。
以下の実施例および比較例で使用した透明性樹脂は、次の通りである。
樹脂1:メタクリル酸メチル/アクリル酸メチル=94/6(重量比)の共重合体。熱変形温度(Th)は100℃。
樹脂2:芳香族ポリカーボネートのみの重合体(住友ダウ(株)製の「カリバー301−10」)。熱変形温度(Th)は140℃。
樹脂3:芳香族ポリカーボネート/スチレンとメタクリル酸メチル共重合体(重量比:95/5)=90/10の混合物。熱変形温度(Th)は110℃。
樹脂4:メタクリル酸メチル/スチレン=60/40(重量比)の共重合体(日本A&L(株)製の「プラネロイKM6A」)。熱変形温度(Th)は100℃。
樹脂5:スチレンのみの重合体(東洋スチレン(株)製の「トーヨースチロールHRM−40」)。熱変形温度(Th)は100℃。
樹脂6:メタクリル酸メチル/アクリル酸メチル=96/4(重量比)の共重合体70重量%に下記参考例で得たアクリル系多層弾性体を30重量%含有させたアクリル系組成物。熱変形温度(Th)は100℃。
樹脂7:脂環構造含有エチレン性不飽和単量体単位を含有する重合体(日本ゼオン(株)製の「ゼオノア1020R」)。熱変形温度(Th)は100℃。
[参考例]
(ゴム状重合体の製造)
特公昭55−27576号の実施例に記載の方法に準拠して、三層構造からなるアクリル系多層弾性体を製造した。具体的には、まず、内容積5Lのガラス製反応容器に、イオン交換水1700g、炭酸ナトリウム0.7g、過硫酸ナトリウム0.3gを仕込み、窒素気流下で撹拌後、ペレックスOT−P((株)花王製)4.46g、イオン交換水150g、メチルメタクリレート150g、アリルメタクリレート0.3gを仕込んだ後、75℃に昇温し150分間撹拌を続けた。
続いてブチルアクリレート689g、スチレン162g、アリルメタクリレート17gの混合物と過硫酸ナトリウム0.85g、ペレックスOT−P7.4gとイオン交換水50gの混合物を別の入口から90分間にわたり添加し、さらに90分間重合を続けた。
重合を完了後、さらにメチルアクリレート326g、エチルアクリレート14gの混合物と過硫酸ナトリウム0.34gを溶解させたイオン交換水30gを別々の口から30分間にわたって添加した。
添加終了後、さらに60分間保持し重合を完了した。得られたラテックスを0.5%塩化アルミニウム水溶液に投入して重合体を凝集させた。これを温水にて5回洗浄後、乾燥してアクリル系多層弾性体を得た。
以下の実施例および比較例で使用した微粒子(光拡散剤)は、次の通りである。
微粒子1:スチレン/ジビニルベンゼン=95/5(重量比)の共重合体粒子(屈折率1.59、重量平均粒子径6μm)。
微粒子2:架橋シロキサン系重合体粒子(東芝シリコーン(株)製の「トスパール2000B」;屈折率1.42、重量平均粒子径6μm)。
微粒子3:炭酸カルシウム(丸尾カルシウム(株)製の「CUBE30AS」;屈折率1.61、重量平均粒子径5μm)。
微粒子4:メタクリル酸メチル/エチレングリコールジメタクリレート=99.5/0.5(重量比)の共重合体粒子(屈折率1.49、重量平均粒子径25μm)。
微粒子5:メタクリル酸メチル/エチレングリコールジメタクリレート=95/5(重量比)の共重合体粒子(屈折率1.49、重量平均粒子径5μm)。
[実施例1、2、4〜7および比較例1、2、4〜7]
<押出マットシートの作製>
表1に示す種類の樹脂および微粒子を表1に示す割合でヘンシェルミキサーにて機械的に混合し、押出機1にて溶融混練し、フィードブロックおよびダイ3の順に供給した。そして、ダイ3から押出される溶融樹脂4を、表1に示すロール構成の1番ロールおよび2番ロールに挟み込んで成形し、表1に示す厚さの押出マットシートを得た。
なお、表1中の「ロール構成」の「1番,2番ロール間」の欄において、「圧着」は、溶融樹脂4を1番,2番ロール間に挟み込んで成形したことを示す。また、「解放」は、溶融樹脂4を1番,2番ロール間に挟み込まずに、2番ロールに巻き掛けて1番ロールには接触させずに成形したことを示す。表1中の「ロール表面温度」は、各ロールの表面温度を実測した値である。
[実施例3および比較例3]
樹脂層Aとして、表1に示す種類の樹脂および微粒子を表1に示す割合でヘンシェルミキサーにて機械的に混合し、押出機1にて溶融混練し、フィードブロックに供給した。一方、樹脂層Bとして、表1に示す種類の樹脂を押出機2にて溶融混練し、フィードブロックに供給した。押出機1からフィードブロックに供給される樹脂層Aが主層となり、押出機2からフィードブロックに供給される樹脂層Bが表層(片面/上側)となるように、共押出成形を行った。
そして、ダイ3から押出される溶融樹脂4を、表1に示すロール構成の1番ロールおよび2番ロールに挟み込んで成形し、表1に示す厚さの2層構造からなる押出マットシートを得た。
<評価>
得られた各押出マットシート(実施例1〜7および比較例1〜7)について、光沢度、算術平均粗さ(Ra)および外観を評価した。各評価方法を以下に示すと共に、その結果を表1に併せて示す。
(光沢度の評価方法)
得られた押出マットシートにおいて、2番ロールに接触していない面を、JIS Z−8741の光沢度測定に準拠して光沢度計(スガ試験機製の「UGV−4D」)により60°反射にて測定した。光沢度(%)は、その数値が低いほど、マット性が高いことを示す。
(算術平均粗さ(Ra)の評価方法)
JISB0601−2001に準拠して表面粗さ形状測定機((株)ミツトヨ製の「サーフテストSJ−201」)により、算術平均粗さ(Ra)をカットオフ値2.5mm、基準長さ2.5mm、区間数5で測定した。この測定結果を、表1中に「Ra」として記載した。
(外観の評価方法)
得られた押出マットシートの外観を目視で確認した。なお、判定基準は以下のものを用いた。
○:厚みムラがなく、表面に筋等の発生もなく、マット調の外観も損なわれていない
△:厚みムラがなく、表面に筋等の発生もないが、艶が出てしまいマット調の外観が損なわれている
×:マット調の外観は損なわれていないが、厚みムラがあり、表面に筋等が発生している
Figure 0005108487
表1から明らかなように、実施例1〜7では、厚みムラがなく、表面の外観に優れ、所望のマット性を有する押出マットシートが得られているのがわかる。
一方、比較例1、4、5および6では、ロール構成は実施例1〜7と同じであるものの、溶融樹脂を1番,2番ロール間に挟み込まずに、2番ロールに巻き掛けて1番ロールには接触させずに成形したため、得られたシートに厚みムラがあり、かつ筋等が発生して表面の外観が低下する結果を示した。
溶融樹脂を2本の金属ロール間に挟み込んで成形した比較例2、3および7では、外観の評価結果が△、すなわち艶が出てしまいマット調の外観が損なわれていた。比較例2と実施例2、比較例3と実施例3、比較例7と実施例7をそれぞれ対比すると、いずれも比較例の方が実施例よりも光沢度の数値が高い(すなわちマット性が低い)結果を示しているのがわかる。以上の結果から、溶融樹脂を2本の金属ロール間に挟み込んで成形すると、微粒子が透明性樹脂中に押し込まれてマット調の外観が損なわれてしまうのに対し、溶融樹脂を金属ロールおよび金属弾性ロール間に挟み込んで成形すると、微粒子が透明性樹脂中に押し込まれるのを抑制することができ、所望のマット性を有する押出マットシートを得ることができると言える。
本発明の一実施形態にかかる押出マットシートの製造方法を示す概略説明図である。 本発明の一実施形態にかかるロール構成を示す概略断面説明図である。 本発明の他の実施形態にかかるロール構成を示す概略断面説明図である。
符号の説明
1,2 押出機
3 ダイ
4 溶融樹脂
5 冷却ロール
6 金属ロール
7,15 金属弾性ロール
8,16 軸ロール
9,17 金属製薄膜
10 流体
11 押出マットシート

Claims (6)

  1. 微粒子を分散させた透明性樹脂を溶融してダイから押出し、一対のロール間に挟み込んで成形する押出マットシートの製造方法であって、
    前記一対のロールは、一方が高剛性の金属ロールであり、他方が外周部に金属製薄膜を備えた弾性ロールであることを特徴とする押出マットシートの製造方法。
  2. 前記弾性ロールは、略円柱状の軸ロールと、この軸ロールの外周面を覆うように配置された円筒形の金属製薄膜と、前記軸ロールと金属製薄膜との間に封入された流体とを備えており、
    前記流体を温度制御することによって、前記弾性ロールを温度制御可能に構成した請求項1記載の押出マットシートの製造方法。
  3. 前記金属ロールおよび前記弾性ロールの表面温度(Tr)を、押出マットシートを構成する透明性樹脂の熱変形温度(Th)に対して、(Th−20℃)≦Tr≦(Th+20℃)の範囲内にする請求項1または2記載の押出マットシートの製造方法。
  4. 前記微粒子の重量平均粒子径が0.5〜30μmである請求項1〜3のいずれかに記載の押出マットシートの製造方法。
  5. 前記微粒子を透明性樹脂100重量部に対して2〜40重量部の割合で分散させる請求項1〜4のいずれかに記載の押出マットシートの製造方法。
  6. 厚さが30〜500μmである請求項1〜5のいずれかに記載の押出マットシートの製造方法。
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