図1は、本発明に係る光走査装置10の一実施形態を模式的に示す説明図である。図2は、多面鏡式光偏向器16を説明するための説明図であり、図3は、多面鏡式光偏向器16による偏向の様子を説明するための説明図である。なお、以下の説明では、光走査装置が被走査面(感光体ドラム)上を光走査する方向を主走査方向とし、被走査面上において主走査方向と直交する方向を副走査方向とする。
光走査装置10は、本実施例では、1走査をレーザ2ビームで同時走査するマルチビーム走査光学系に適用したもので、図1に示すように、レーザ光源ユニット11と、アパーチュア12と、光路切換手段13と、2つのシリンドリカルレンズ14と、防音ガラス15と、多面鏡式光偏向器16(ポリゴンミラー)と、走査結像光学系17と、複数枚の反射ミラー18と、感光体ドラム19Aおよび感光体ドラム19Bと、同期検知フォトダイオード20等とを備える。
レーザ光源ユニット11は、2つの半導体レーザ21と、両半導体レーザ21を所定位置に保持するホルダ22と、各半導体レーザ21に対応する2つのカップリングレンズ23とを有する。2つの半導体レーザ21(以下、2つを区別する場合には半導体レーザ211と半導体レーザ212とで示す。)は、図示を略す制御部の制御下でビームを出射するものであり、出射したビームが感光体ドラム19Aおよび感光体ドラム19Bにおいて所定の位置関係でビームスポットを形成すべく略走査方向に沿う所定の配置関係で並列するようにホルダ22に保持されている。
各カップリングレンズ23は、対応する半導体レーザ21の光軸上に位置するようにホルダ22に保持されている。両カップリングレンズ23は、対応する半導体レーザ21から出射されたビームを以後の光学系に適した光束形態(平行光束あるいは弱い発散性もしくは弱い収束性の光束)に変換するものである。本実施例では、両カップリングレンズ23は、対応する半導体レーザ21から出射されたビームを平行光束に変換している。
このレーザ光源ユニット11から出射され略走査方向に沿って並列する2つのビームは、アパーチュア12によりビーム整形される。このアパーチュア12には、レーザ光源ユニット11から出射される2つのビームに対応して2つの開口部が設けられている。
このアパーチュア12を通過して整形された2つのビームは、光路切換え手段である光路切換手段13を通過することにより、入射した際の進行方向および位置を維持する上側光路(図1において実線で示す2つのビーム参照)と、入射した際の進行方向を維持しつつ副走査方向に平行移動するように位置が変更された下側光路(図1において破線で示す2つのビーム参照)と、のいずれか一方を選択的に略走査方向に沿って並列しつつ進行する。この光路切換手段13の詳細な構成については後述する。ここで、上側光路とは、2つのシリンドリカルレンズ14のうちの上側(14a)を経て、後述する多面鏡式光偏向器16の上段多面反射鏡16aの偏向反射面24(24a)に至るものであり、下側光路とは、2つのシリンドリカルレンズ14のうちの下側(14b)を経て、後述する多面鏡式光偏向器16の下段多面反射鏡16bの偏向反射面24(24b)に至るものである。
シリンドリカルレンズ14は、上述した上側光路と下側光路とのそれぞれに対応して2つ設けられており(上側を14aとし下側を14bとする)、それぞれが対応する光路を進行してきた2つのビームを多面鏡式光偏向器16の偏向反射面24近傍に主走査方向に長い線像として結像し、後述する走査結像光学系17を協働して、当該結像位置を被走査面(感光体ドラム19)とを副走査方向に共役関係とすることで面倒れ補正光学系を形成している。
多面鏡式光偏向器16は、図2に示すように、上段多面反射鏡16aと下段多面反射鏡16bとが副走査方向に2段に重ねられ、図示を略す駆動モータにより副走査方向に伸びる共通の回転軸16c回りに回転駆動可能とされている。この多面鏡式光偏向器16は、本実施例では、上段多面反射鏡16aと下段多面反射鏡16bとが共に4面の反射面を持つ同一形状のものであり、互いに回転方向へ所定角θ=45度ずれて重ねられている。この上段多面反射鏡16aと下段多面反射鏡16bとは、一体的に形成してもよく、別体として組み付けてもよい。この多面鏡式光偏向器16は、図1に示すように、シリンドリカルレンズ14を経て入射された2つのビームを走査結像光学系17へ向けて反射する。多面鏡式光偏向器16は、図示を略す防音ハウジングに収容されており、その窓に設けられた防音ガラス15を介して2つのビームの行き来がなされている。
走査結像光学系17は、fθレンズである第1走査レンズ25と、アナモフィックレンズである第2走査レンズ26とを有し、複数枚の反射ミラー18と協働して、多面鏡式光偏向器16により反射された2つのビームを感光体ドラム19Aおよび感光体ドラム19Bの被走査面上でビームスポットとする。このビームスポットは、多面鏡式光偏向器16が回転されることにより、感光体ドラム19Aおよび感光体ドラム19Bの被走査面上を等速移動することとなる。以下の説明では、上述した上側光路に対応するものを走査結像光学系17a、複数枚の反射ミラー18aとし、上述した下側光路に対応するものを走査結像光学系17b、複数枚の反射ミラー18bとする。
このため、上述した上側光路を経て上段多面反射鏡16aにより反射された2つのビームは、走査結像光学系17a(第1走査レンズ25aおよび第2走査レンズ26a)、および複数枚の反射ミラー18aを経て、感光体ドラム19A上で副走査方向に分離した2つの光スポットとされる。また、上述した下側光路を経て下段多面反射鏡16bにより反射された2つのビームは、走査結像光学系17b(第1走査レンズ25bおよび第2走査レンズ26b)、および複数枚の反射ミラー18bを経て、感光体ドラム19B下で副走査方向に分離した2つの光スポットとされる。
また、レーザ光源ユニット11の2つの半導体レーザ21(211、212)から出射された2つのビームは、多面鏡式光偏向器16の回転軸16c方向(副走査方向)から見ると、偏向反射面24(24a、24b)の近傍において主光線が交差するように光学配置が定められている。このため、多面鏡式光偏向器16の偏向反射面24(24a、24b)に入射する2つのビームは、互いに開き角(偏向反射面24の側から光源の側を見たとき、2つのビームの回転軸16cに直交する面への射影が為す角)を有する。この開き角により、レーザ光源ユニット11から出射された2つのビームにより感光体ドラム19A上または感光体ドラム19B上に形成される2つのビームスポットは、主走査方向にも互いに分離している。これにより、感光体ドラム19Aまたは感光体ドラム19Bを走査する2つのビームを個別的に検出して光走査開始の同期をビーム毎に(出射する半導体レーザ211、半導体レーザ212毎に)取ることができる。この2つのビームの検出は、感光体ドラム19Aまたは感光体ドラム19Bにおける有効露光領域外に配置された同期検知フォトダイオード20(感光体ドラム19B側は図示せず)により行われる。
このように、回転する多面鏡式光偏向器16の上段多面反射鏡16aにより偏向される2つのビームにより、感光体ドラム19Aがマルチビーム走査(1度の走査で2ライン分を走査する)され、回転する多面鏡式光偏向器16の下段多面反射鏡16bにより偏向される2つのビームにより、感光体ドラム19Bがマルチビーム走査される。
ここで、図2および図3に示すように、光走査装置10では、上述したように多面鏡式光偏向器16の上段多面反射鏡16aと下段多面反射鏡16bとが互いに回転方向に45度ずれており、副走査方向から見て互いに重なる個所が正八角形を描くこととなる。光走査装置10では、多面鏡式光偏向器16に入射されるビームの光軸(主走査方向に長い線像の中心位置)から見ると、正八角形の各面すなわち上段多面反射鏡16aの4つの側面において副走査方向に下段多面反射鏡16bが重なった個所と、下段多面反射鏡16bの4つの側面において副走査方向に上段多面反射鏡16aが重なった個所とが、レーザ光源ユニット11から出射された2つのビームに対する偏向反射面24として利用されるように設定されている(図2のハッチングで示す個所参照)。入射されるビームの光軸が偏向反射面24上に位置している場合には、当該ビームとしての主走査方向に長い線像全体が当該偏向反射面24を構成する上段多面反射鏡16a(下段多面反射鏡16b)の同一の側面に入射していることとなるので、当該ビームは、その主走査方向に長い線像を欠けさせることなく反射(偏向)されることとなる(図2(b)の下段多面反射鏡16bに示す副走査方向に並列された主走査方向に長い2つ線像および矢印および図3(a)(b)参照)。このため、多面鏡式光偏向器16では、その回転方向で見ると、上段多面反射鏡16aの側面と下段多面反射鏡16bの側面とにより交互に連続するように偏向反射面24が形成されることとなり、多面鏡式光偏向器16の回転角度位置に拘らず上段多面反射鏡16aおよび下段多面反射鏡16bのいずれか一方のみの側面により偏向反射面24が形成されることとなる。このため、光走査装置10では、多面鏡式光偏向器16の回転角度位置に拘らずレーザ光源ユニット11から出射された2つのビームが常に偏向反射面24に入射するように当該2つのビームの光路を光路切換手段13により切り換える、すなわち上段多面反射鏡16aの側面により偏向反射面24が形成されている際には上述した上側光路を通るように(図3(a)参照)、かつ下段多面反射鏡16bの側面により偏向反射面24が形成されている際には上述した下側光路を通るように(図3(b)参照)、当該2つのビームの光路を光路切換手段13により切り換える。この光路切換手段13について詳細に説明する。
光路切換手段13は、図4に示すように、光束切換部28に電気信号印加部29が接続されて構成されており、レーザ光源ユニット11から出射された2つのビームが光束切換部28に入射するように配置されている。この光路切換手段13では、電気信号印加部29が走査同期信号から電気信号である光路切換駆動信号を生成し、電気信号印加部29からの光路切換駆動信号により光束切換部28の特性を切り換える。この光束切換部28では、特性が切り換えられることにより、入射された2つのビームを上側光路または下側光路に選択的に出射することができる。このため、光路切換手段13では、電気信号印加部29から出力させる光路切換駆動信号を制御することで、レーザ光源ユニット11から出射された2つのビームが上側光路を通過している場面では下側光路をビームが通過することを略防止することができ、レーザ光源ユニット11から出射された2つのビームが下側光路を通過している場面では上側光路をビームが通過することを略防止することができる。このため、光走査装置10では、レーザ光源ユニット11から出射されたビームの略総てを感光体ドラム19Aまたは感光体ドラム19Bの走査面上に導光することができるので、レーザ光源ユニット11からのビームを効率的に利用できる。これにより、レーザ光源ユニット11からのビームが走査面上に所望の強度でビームスポットを形成した場合、光源から出射されたビームを分割する方式に比較して、光源(半導体レーザ21)の出射パワーが少なくて済み、ビームスポットの光学的特性の劣化を防止することができることから高速記録を可能とするとともに、半導体レーザ21(レーザ光源ユニット11)の寿命の低下を防止することができる。このことは、高密度化に有効な面発光レーザを光源(レーザ光源ユニット11)として用いる場合、効果が大きくなる。
次に、この光路切換手段13(光束切換部28)について具体的に説明する。
光路切換手段13は、図5に示すように、光束切換部28が偏光切換素子30と偏光分離素子31とを有し、この偏光切換素子30に電気信号印加部29が接続されて構成されている。この偏光切換素子30としては、例えば、表面安定化強誘電性液晶、あるいはPLZT電気光学セラミックス等を用いることができ、電気信号印加部29からの電界印加による偏光スイッチング(入射光と出射光との間で偏光方向を変化させるか否かの切り換え)により、この偏光切換素子30を通過したビームの偏光方向を切り換えることができる。また、偏光分離素子31としては、例えば、偏光選択透過/反射作用を有する多層膜偏光ビームスプリッタ(PBS:Polarization Beam Splitter)、あるいは偏光選択透過/回折作用を有する偏光ホログラムを用いることができ、偏光切換素子30を通過したビームの偏光方向に応じて光路切換えを行うことができる。
本実施例では、図6に示すように、偏光切換素子30として表面安定化強誘電性液晶を採用している。この偏光切換素子30は、一対の透明基板32と、その両透明基板32の内面側に設けられた図示を略す配向膜と、該配向膜によりホモジニアス配向をなすキラルスメクチックC相よりなり一対の透明基板32の間に設けられた強誘電性液晶層33と、透明基板32の平面に直交する方向に電界を生じさせるための一対の透明電極34とを有し、この一対の透明電極34間では、電気信号印加部29(図5参照)から電圧が印加されることにより電界が生じる構成とされている。なお、高速応答にはホモジニアス配向されたキラルスメクチックC相よりなる強誘電性液晶を用いることが好ましいが、それほど高速応答が必要ない場合には、ネマチック液晶も同様の構成で用いることができる。また、配向膜としては、TN液晶、STN液晶等に用いられるポリイミド等の通常の配向膜、また耐久性能が高いSiO、SiO2、ポリシロキサン系の無機配高膜を利用することができ、液晶ダイレクタの方向を強く規制する観点からラビング処理や光配向処理を別途施すことが好ましい。透明電極としてはITO(Indium Tin Oxide)等を用いる事ができる。
次に、この偏光切換素子30における強誘電性液晶のスイッチングについて図7および図8を用いて説明する。この図7において、Wはスメクチック相の層法線、nは液晶分子の長軸方向(ダイレクタ)、○内に●の記号と○内に+の記号とは自発分極の方向を表している。
一般に、キラルスメクチックC相よりなる強誘電性液晶層33は、螺旋構造を有しているが、その螺旋ピッチより薄いセルギャップd(図6および図8参照)間に挟持すると螺旋構造がほどけ、表面安定化強誘電性液晶層(SSFLC:Surface Stabilized Ferroelectric Liquid Crystal)となる。SSFLCは、液晶分子がスメクチック層法線に対して傾き角−θi(ここでは、θi=22.5°)だけ傾いて安定する配向状態と、逆方向にθiだけ傾いて安定する配向状態とが混在する状態を実現することができる。これに、図7の紙面に垂直な方向に電界を生じさせることにより、液晶分子とその自発分極の向きを一様に揃えることができ、その後電界を維持しなくても液晶分子とその自発分極の向きが一様に揃った状態を保持しておくことができる。そして、生じさせる電界の向きを切り換えるすなわち印加する電圧の極性を切り換えることによって、上記した2つの状態間のスイッチングを行うことができる。すなわち、−Eの電界を生じさせると、スメクチック相の層法線方向Wから−θiだけ傾いた配向状態1(図7において左側に示す)で安定化させることができ、+Eの電界を生じさせると、スメクチック相の層法線方向Wからθiだけ傾いた配向状態2(図7において右側に示す)に安定化することができる。このため、傾き角θi=22.5°とする場合、相互間で45°傾いた配向状態1と配向状態2とで安定させることができる。
図8は、図7のSSFLCを用いた偏光切換素子30の動作を説明するための模式図である。強誘電性液晶層33の厚さ(セルギャップ)dは、入射光の波長λ(一例として650nmまたは780nm)と液晶材料の波長λ(この場合650nmまたは780nm)における屈折率異方性Δnによって決まり、Δn×d=λ/2を満たすように(すなわち半波長板条件を満たすように)決定される。
この強誘電性液晶層33は、上述したように、生じさせる電界の向きにより配向状態1と配向状態2とを切り換えることができるが、この2つの配向状態のうちのどちらか一方の配向状態における液晶分子の短軸方向または長軸方向と、強誘電性液晶層33(偏光切換素子30)に入射するビームの偏光方向とが一致するように、レーザ光源ユニット11と偏光切換素子30とを調整配置する必要がある。本実施例では、図8に示すように、−Eの電界を生じさせた時の配向状態1の短軸方向と、強誘電性液晶層33(偏光切換素子30)に入射するビームの偏光方向とを一致させている。この調整の方法としては、位相板の配置により偏光方向を調整すること、ラビング等の配向処理により液晶分子の初期配向を設定すること、液晶素子自体を回転調整すること等があげられる。
この強誘電性液晶層33(偏光切換素子30)では、透明電極間に−Eの電界を生じさせた場合、液晶分子はスメクチック相の層法線方向Wから−θだけ傾いた配向状態(配向状態1)となり、入射されたビームは偏光方向を変えることなく出射されることとなる(図8において左側に示す)。他方、透明電極に+Eの電界を生じさせた場合、液晶分子はスメクチック相の層法線方向Wから+θだけ傾いた配向状態(配向状態2)となり、本実施例ではθ=22.5°であるから入射されたビームは偏光方向に対して、液晶分子長軸方向(ダイレクタ)が2θ=45°傾いて配向することとなる。このため、半波長板条件が成立するので、入射されたビームでは偏光方向が略90°回転されることとなる(図8において右側に示す)。このように、強誘電性液晶層33(偏光切換素子30)では、生じさせる電界の向きを制御するすなわち印加する電圧を制御することによって偏光方向の切り換えをすることができる。また、強誘電性液晶であることから、偏光切り換えに有する応答速度は数十μsec以下と高速である。
このため、光走査装置10では、レーザ光源ユニット11から出射された2つのビームが光路切換手段13を通過することにより、上側光路と下側光路とのいずれか一方を略走査方向に沿って並列しつつ進行するように選択的に切り換えられ、感光体ドラム19Aと感光体ドラム19Bとの光走査を時間的にずれて交互に行うことができる。このため、光走査装置10では、上側光路を選択したときすなわち感光体ドラム19Aを走査するときは感光体ドラム19Aに対応する色(例えばブラック)の画像情報に基づいてレーザ光源ユニット11の両半導体レーザ21の変調駆動を行い、下側光路を選択したときすなわち感光体ドラム19Bを走査するときは感光体ドラム19Bに対応する色(例えばマゼンタ)の画像情報に基づいてレーザ光源ユニット11の両半導体レーザ21の変調駆動を行う。この変調駆動の様子を図9のグラフに示す。
図9は、レーザ光源ユニット11の両半導体レーザ21の変調駆動の様子に、多面鏡式光偏向器16において偏向反射面24を構成している多面反射鏡を対応させて説明するためのグラフであり、縦軸が両半導体レーザ21の光量を示しかつ横軸が時間を示している。この図9では、理解容易のため、感光体ドラム19Aにおける有効走査領域を走査している間で全点灯(実線で示しており上記した例ではブラックに相当する)させ、感光体ドラム19Bにおける有効走査領域を走査している間で全点灯(破線で示しており上記した例ではマゼンタに相当する)させている場合を示している。ここでいう有効走査領域とは、走査方向で見て感光体ドラム19A(感光体ドラム19B)における有効露光領域(感光体ドラム上における実質的な走査領域)に同期検知領域(図1の同期検知フォトダイオード20参照)を加えたものであり、被走査側から見て所望の強度のビームスポットで照射されることが求められる領域である。この図9に示すように、感光体ドラム19Aの有効走査領域を走査している期間と、感光体ドラム19Bの有効走査領域を走査している期間とは連続してはいないが、上段多面反射鏡16aの側面と下段多面反射鏡16bの側面とを交互に利用する偏向反射面24は時間的に途切れることはない。これは、上段多面反射鏡16a(下段多面反射鏡16b)の側面を偏向反射面24として利用している期間(感光体ドラム19A(感光体ドラム19B)側へ向けて導光可能な期間)全体と、感光体ドラム19A(感光体ドラム19B)の有効走査領域を走査するのに要する期間とを一致させてしまうと、光学系の配置誤差等により正確な走査をすることができなくなってしまう虞があることから、感光体ドラム19A(感光体ドラム19B)の有効走査領域を走査するのに要する期間に対し、上段多面反射鏡16a(下段多面反射鏡16b)の側面を偏向反射面24として利用している期間(感光体ドラム19A(感光体ドラム19B)側へ向けて導光可能な期間)を短く設定していることによる。本発明では、この感光体ドラム19Aにおける有効走査領域を走査している期間(以下、有効走査期間Eaとする)と、感光体ドラム19Bにおける有効走査領域(以下、有効走査期間Ebとする)を走査している期間との間の期間(以下、無効走査期間Iとする)を有効的に利用する。このことについて以下で詳細に説明する。
上述したように、光走査装置10では、光路切換手段13において電気信号印加部29からの電圧の印加により偏光切換素子30の特性を切り換えることにより、レーザ光源ユニット11から出射された2つのビームの進行位置が上側光路であるか下側光路であるかを選択的に切り換えるものであるが、この偏光切換素子30の特性の切り換わりは駆動電圧が印加される(電界が生じる)と瞬時に為されるものではない。この強誘電性液晶による偏光切換素子30の応答波形を図10に示す。
図10は、光路切換手段13の偏光切換素子30に入射させ偏光分離素子31を通過したビームのうち一方の偏光成分を有するビームの強度と、偏光切換素子30に印加した駆動電圧(光路切換駆動信号)とを、実際に計測した際の検出結果を示すグラフである。すなわち、図10は、偏光切換素子30からの光路切換駆動信号に対する一方の光路(上側光路と下側光路とは裏表の関係となることからいずれであっても該当する。)におけるビームの強度の推移(光路切換駆動信号応答波形)を示すものである。図10では、横軸を時間tとし、上段に光路切換駆動信号としての駆動電圧波形の推移を示し、下段に偏光切換素子30および偏光分離素子31を通過したビームの強度(図示を略すフォトダイオードの受光により計測)の推移(光強度応答波形)を示している。ここで、駆動信号応答波形は、上述したように、偏光切換素子30における配向状態を切り換えるものであることから、+Vの電圧パルスを一対の透明電極34間に印加したあとは−Vの電圧パルスを一対の透明電極34間に印加することとなる。
図10に示すように、偏光切換素子30では、+Vの電圧が一対の透明電極34間(図6参照)に印加されると、その印加の開始から一定の時間はビームの強度が0%のまま変化することない、すなわち配向状態の変更に伴う偏光方向の切り換えが為されることはない(以下、不応答時間delayという)。また、偏光切換素子30では、不応答時間delayの経過の後(+Vの電圧の印加は継続)、所定の時間を要してビームの強度が0%から100%へと立ち上がる(以下、応答時間τという)。このように、偏光切換素子30では、+Vの電圧の一対の透明電極34間への印加の開始から、不応答時間delay+応答時間τとなる時間(以下、偏光切換時間tcといい光路切換時間に相当する)を要してビームの強度が100%となる、すなわち配向状態の変更に伴う偏光方向の切り換え(光路の切り換え)が完了することとなる。この関係は、他方の光路への切り換え(図10ではビームの強度を100%から0%へとたち下げる場合に相当する)でも同様となる。
また、この偏光切換時間tcすなわち不応答時間delayおよび応答時間τは、偏光切換素子における構成により略一義的に決まるものではあるが、同一の偏光切換素子30であってもそれ自体の温度により変化してしまう。図11は、その一例として、本実施例の表面安定化強誘電性液晶素子で構成された偏光切換素子30(図5および図6参照)における温度変化に対する偏光切換時間tc、不応答時間delayおよび応答時間τの推移(応答時間の温度特性)を示す。図11では、縦軸を時間、横軸を偏光切換素子30の温度で示しており、偏光切換時間tcを実線および三角の図柄で示し、不応答時間delayを破線および丸の図柄で示し、および応答時間τを一点鎖線および四角の図柄で示している。図11に示すように、偏光切換素子30では、温度が低下するに連れて偏光切換時間tc(不応答時間delay+応答時間τ)が大きくなる、すなわち切り換えのための+Vの電圧の一対の透明電極34間への印加に対する応答が遅くなるとういう特性を有している。なお、偏光切換素子30では、入射されたビームの偏光方向の切り換え作用を確実に行うことが可能な温度が設定されており、その最低値を最低動作温度Tminとし、その最高値を最高動作温度Tmaxとする。
本発明に係る光走査装置10は、基本的には、無効捜査期間Iの間に光路切換手段13よる光路の切り換えを行うために、有効走査期間Eaまたは有効走査期間Ebの開始時点よりも特定時間tpだけ先行して電気信号印加部29から偏光切換素子30へと光路切換駆動信号を出力する、すなわち電気信号印加部29が偏光切換素子30の一対の透明電極34へと電圧の印加を開始するものとするものである(図12参照)。この光路の切り替えと有効走査期間Ea、有効走査期間Ebおよび無効走査期間Iとの関係を図12のグラフに示す。
図12では、横軸を等しい時間軸として、(a)は光路切換手段13の電気信号印加部29から出力される光路切換駆動信号を電圧の大きさとして縦軸に示す(電圧印加波形)ものであり、(b)は光路切換手段13を経て上側光路に切り換えられているすなわち感光体ドラム19A側へと導光されている際のビームの強度を縦軸に示す(光強度波形)ものであり、(c)は光路切換手段13を経て下側光路に切り換えられているすなわち感光体ドラム19B側へと導光されている際のビームの強度を縦軸に示す(光強度波形)ものである。
図12に示すように、光走査装置10では、有効走査期間Eaまたは有効走査期間Ebの開始時点よりも特定時間tpだけ先行して電気信号印加部29から偏光切換素子30へと光路切換駆動信号を出力する、すなわち電気信号印加部29が偏光切換素子30の一対の透明電極34へと電圧の印加を開始することから、無効走査期間Iを利用して電気信号印加部29(偏光切換素子30)における光路切り換えを行うことができる。このことから、有効走査期間Eaまたは有効走査期間Ebが開始される時点では、光路の切り換えが完了していることとなるため、レーザ光源ユニット11から出射された2つのビームが100%の強度として感光体ドラム19A側または感光体ドラム19B側へと導光されるので、有効走査期間Eaおよび有効走査期間Ebを均一な強度のビームで走査することができるとともに、レーザ光源ユニット11(半導体レーザ21)から出射されたビームを効率よく利用することができる。この特定時間tpは、有効走査期間Eaまたは有効走査期間Ebの開始時点で光路の切り換えが完了していればよいことから、少なくとも構成した偏光切換素子30における偏光切換時間tc(不応答時間delay+応答時間τ)以上に設定すればよい。
ここで、有効走査期間Eaまたは有効走査期間Ebの開始時点に特定時間tpだけ先行して電気信号印加部29から偏光切換素子30へと光路切換駆動信号を出力させるタイミングは、同期検知フォトダイオード20(図1参照)による走査同期信号の発生タイミングと有効走査期間Eaまたは有効走査期間Ebの開始タイミングの関係を予め光学系および同期検知フォトダイオード20の配置関係から知ることができることから、この同期検知フォトダイオード20による走査同期信号を基準として設定することができる。
また、上述したように、偏光切換素子30では、温度が低下するに連れて偏光切換時間tc、不応答時間delayおよび応答時間τが大きくなる、すなわち切り換えのための+Vの電圧の一対の透明電極34間への印加に対する応答が遅くなるとういう特性を有している(図11参照)ことから、このことを考慮して特定時間tpを設定することがより望ましい。
この温度特性を考慮した特定時間tpの設定方法としては、偏光切換素子30の動作が保証される温度範囲において最も応答が遅くなる場面、すなわち最低動作温度Tminにおける偏光切換時間tcmin(図11参照)以上とすればよい。この場合、偏光切換素子30の動作が保証される温度範囲においては、有効走査期間Eaまたは有効走査期間Ebが開始される時点において必ず光路の切り換えを完了させることができるので、均一な光強度の光走査をおこなうことができる。ここで、最低動作温度Tminは、必ずしも偏光切換素子30の動作が保証される温度範囲における最低値である必要はなく、例えば、図示は略すが偏光切換素子30が所定の温度を下回ることがないように加熱手段を用いて当該偏光切換素子30の温度制御を行う構成とした場合における所定の温度であってもよく、光走査装置が使用される状況下において偏光切換素子のなり得る温度範囲において最も応答が遅くなる温度であればよい。
以上では、有効走査期間Eaまたは有効走査期間Ebの開始時点に特定時間tpだけ先行して電気信号印加部29から偏光切換素子30へと光路切換駆動信号を出力させることについて述べてきたが、設定した特定時間tpが無効走査期間Iよりも長くなることが考えられる(図13参照)。この場合であっても、図13に示すように、特定時間tpと無効走査期間Iの時間差tdが、最も応答が早くなる場面である最高動作温度Tmaxにおける偏光切換素子30の不応答時間delaymax(図11参照)以下、すなわち最高動作温度Tmaxにおける偏光切換素子30の応答時間τmax(図11参照)が無効走査期間I以下であれば、無効走査期間Iに前後する有効走査期間Ea(または有効走査期間Eb)と有効走査期間Eb(または有効走査期間Ea)とにおいて全域に渡り100%の強度のビームで走査することが可能となる。このように、特定時間tpと無効走査期間Iの時間差tdが、最高動作温度Tmaxにおける偏光切換素子30の不応答時間delaymax以下、すなわち最高動作温度Tmaxにおける偏光切換素子30の応答時間τmaxを無効走査期間I以下とするには、感光体ドラム19A(感光体ドラム19B)における有効走査領域を勘案しつつレーザ光源ユニット11から多面鏡式光偏向器16を経て感光体ドラム19A(感光体ドラム19B)に至る光学系を適宜設定することにより、調整することができる。
本発明に係る光走査装置10では、1つの半導体レーザ211(212)で2つの感光体ドラム19A、19Bを順次走査記録する構成であって、単独の半導体レーザ211(212)(レーザ光源ユニット11)から出射されたビームの光路を切り換えることにより感光体ドラム19A、19Bを交互に走査するものであることから、光源から出射させるビームの強度の増大に起因する半導体レーザ211(212)の寿命への影響を生じさせることなく、各被走査面(感光体ドラム19A、19B)上に画像を高品質かつ高速に形成することができる。
また、光走査装置10では、光束切換部28に電気信号印加部29が接続されて構成された光路切換手段13において、特定時間tpだけ先行して電気信号印加部29から光束切換部28(偏光切換素子30)へと光路切換駆動信号を出力する構成としたものであることから、各感光体ドラム19A、19Bを走査する際の有効走査期間Eaおよび有効走査期間Ebの間に設けられた無効走査期間Iを利用して、光路切換手段13における電気信号印加部29から出力された光路切換駆動信号により光束切換部28(偏光切換素子30)の特性を切り換えることができるので、有効走査期間Eaおよび有効走査期間Ebの始期から終期に至る全期間において均一な強度のビームで走査することができる。
さらに、光走査装置10では、特定時間tpを少なくとも光束切換部28(偏光切換素子30)における偏光切換時間tc以上とするものであることから、有効走査期間Eaおよび有効走査期間Ebの始期から終期に至る全期間において均一な強度のビームで走査することをより確実なものとすることができる。
光走査装置10では、光束切換部28の偏光切換素子30が、一対の透明基板32と、その内面側に設けられた配向膜(図示せず)と、ホモジニアス配向をなすキラルスメクチックC相よりなる強誘電性液晶層33と、一対の透明基板32の平面に直交する方向に電界を生じさせるための一対の透明電極34とで構成されており、この一対の透明電極34に電気信号印加部29が光路切換駆動信号を出力する(電圧を印加する)ものであることから、駆動電圧を数十V以下に抑制することができることから当該駆動電圧が極端に高くすることを防止できるとともに、作成が容易でありかつ製造コストを抑制することができる。
したがって、本発明に係る光走査装置10では、光源数の増加を抑制しつつ高速な画像出力を可能なものとするとともに、光源(レーザ光源ユニット11(半導体レーザ21))から出射させるビームの強度の増大を招くことなく光源(レーザ光源ユニット11(半導体レーザ21))の実質効率を高めつつ均一な強度のビームで被走査面(感光体ドラム19Aおよび感光体ドラム19B)を走査することができる。
次に、本発明に係る光走査装置10が搭載されたカラー画像形成装置50の構成の概要について説明する(図14参照)。このカラー画像形成装置50は、図14に示すように、上述した光走査装置10が2組搭載されて構成されており、以下の説明では、一方が有する2つの感光体ドラム(19A、19B)を感光体ドラム19Y、19Mで示し、他方が有する2つの感光体ドラム(19A、19B)を感光体ドラム19C、19Kで示す。
カラー画像形成装置50は、中間転写体としての中間転写ベルト51を有し、その移動方向に沿って像担持体としての感光体ドラム19Y、19M、19C、19Kを備えた各画像形成ステーションが並列配置されている。
前記感光体ドラム19Yを有する画像形成ステーションでは、イエロー(Y)のトナー
画像が、前記感光体ドラム102を有する画像形成ステーションでは、マゼンタ(M)のトナー画像が、前記感光体ドラム103を有する画像形成ステーションでは、シアン(C)のトナー画像が、前記感光体ドラム104を有する画像形成ステーションでは、ブラック(K)のトナー画像が形成される。この各画像形成ステーションは、いずれも同様の構成であることから、イエローのトナー画像を形成する画像形成ステーションについて説明し、他の画像形成ステーションについては同一の符号に色を示す符号(Y、M、C、K)を付してその詳細な説明は省略する。
感光体ドラム19Yの周囲には、感光体ドラム19Yの表面を一様に帯電する帯電部材52Yと、一方の光走査装置10により形成された静電潜像に帯電したトナーを付着して顕像化する現像ローラ53Yaを備えた現像装置53Yと、中間転写ベルト51の内側に設けられ、感光体ドラム19Y上のトナー画像を中間転写ベルト51に一次転写するための転写用帯電部材54Yと、転写後感光体ドラム19Y上に残ったトナーを掻き取り備蓄するクリーニング手段55Yと、が配置されている。
このイエローのトナー画像を形成する画像形成ステーションの動作について説明する。帯電部材52Yは、感光体ドラム19Yの表面を均一に帯電するための帯電装置を構成するものである。なお、この帯電部材52Yの代わりに、コロナチャージャを用いることもできる。この帯電部材52Yと現像装置53Yとの間において、感光体ドラム19Yの表面に光走査装置10によるマルチビーム走査が所定の回数行われることにより所望の静電潜像が形成される。この静電潜像に基づき、現像装置53Yにより感光体ドラム19Yの表面上にトナー像が形成される。他の画像形成ステーションでも、それぞれに対応する色のトナー像が形成される。
中間転写ベルト51は、2つのローラ56a、56b間に掛け回されて支持されており、反時計回り方向に回転される。感光体ドラム19Y、19M、19C、19Kに形成されたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各トナー画像は、中間転写ベルト51上にタイミングを合わせて順次転写され、それらが重ね合わされることによりカラー画像が形成される。
シート状記録媒体としての記録紙57は、図示を略す給紙トレイから給紙コロにより最上のものから順に1枚ずつ給紙されてレジストローラ対により副走査方向の記録開始のタイミングに合わせて転写部位へ送り出される。
中間転写ベルト51上の重ね合わされたカラー画像は、図示を略す転写部位で2次転写手段としての2次転写ローラにより記録紙57上に一括転写される。カラー画像を転写された記録紙57は、定着ローラ58aと加圧ローラ58bを有する定着装置58へ送られ、ここでカラー画像が記録紙57に定着される。
この本発明に係る光走査装置10が搭載されたカラー画像形成装置50では、1つの光走査装置10で2つの感光体ドラム19A、19Bを順次走査記録する構成であって、両光走査装置10が単独のレーザ光源ユニット11からのビームの光路を切り換えることにより感光体ドラム19A、19Bを交互に走査するものであることから、光源から出射させるビームの強度の増大に起因する寿命への影響を生じさせることなく、4色のカラー画像を高品質かつ高速に形成することができる。
以上、本発明を実施例に基づき詳述してきたが、この具体的な構成に限らず、本発明の趣旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明の技術的範囲に含まれる。
なお、上記した実施例では、温度特性を考慮した特定時間tpの設定方法としての一例を挙げていたが、他の設定方法とすることができる。これについて以下で説明する。この他の設定方法では、図15に示すように、偏光切換素子30の近傍に温度センサ35が配置され、この温度センサ35を偏光切換素子30の駆動制御回路としての電気信号印加部29´に接続されている。電気信号印加部29´は、温度センサ35により検知された温度情報と、偏光切換素子30の動作保証温度範囲における温度とそのときの特定時間tpとの対応データDcとに基づいて、偏光切換素子30の温度に対応する特定時間tpを設定する。ここで、上記した対応データDcは、電気信号印加部29´の内部または外部に設けられた記憶部36(図15の例では外部)に格納されており、ルックアップテーブルとして格納されていることが望ましい。この設定方法の場合、偏光切換素子30の温度に応じた適切な時間(特定時間tp)だけ先行して当該偏光切換素子30に光路切換駆動信号を出力することができるので、動作が保証された温度範囲全域において有効走査期間Eaおよび有効走査期間Ebの始期から終期に至る全期間を均一な強度のビームで走査することができる。
また、上記した実施例では、光路切換手段13として、偏光切換素子30と偏光分離素子31とを有する光束切換部28と、その偏光切換素子30に接続された電気信号印加部29とを備える構成とされていたが、他の構成であってもよく上記した実施例に限定されるものではない。この光路切換手段の他の例(13´)としては、図16に示すように、光束切換部(28)として光路切換えを光の偏向により行う光偏向光路切換素子37を用いることができる。このような光偏向光路切換素子37としては、例えば、Si基板をフォトリソグラフィ手法でエッチング作成したMEMSミラー等の反射偏向手段、あるいは超音波光偏向器、あるいはホログラフィックポリマ分散液晶素子等の回折による偏向手段があり、この光偏向光路切換素子37に電気信号印加部29が光路切換駆動信号を出力することにより、入射光(レーザ光源ユニット11から出射された2つのビーム)を高速に上側光路と下側光路との間で切り換えすることができる。このものであっても、電気信号印加部29からの光路切換駆動信号が出力された時点から光偏向光路切換素子37の特性が切り換わる(光路が完全に切り換わる)までには所定の時間を要することから、上記した実施例と同様に特定時間tpだけ先行して光偏向光路切換素子37に光路切換駆動信号を出力する構成とすることによる効果が得られることとなる。
さらに、上記した実施例では、特定時間tpと無効走査期間Iの時間差tdが、最高動作温度Tmaxにおける偏光切換素子30の不応答時間delaymax以下、すなわち最高動作温度Tmaxにおける偏光切換素子30の応答時間τmaxを無効走査期間I以下となるように設定されていたが、特定時間tpと無効走査期間Iの時間差tdが、最高動作温度Tmaxにおける偏光切換素子30の不応答時間delaymax以下、すなわち最高動作温度Tmaxにおける偏光切換素子30の応答時間τmaxが無効走査期間I以下とはならない場合には、有効走査期間Eaおよび有効走査期間Ebの始期または終期のいずれか一方を優先させてもよく、適宜設定すればよい。始期を優先させる場合、特定時間tpは、最高動作温度Tmaxにおける偏光切換素子30の偏光切換時間tcとなり、終期を優先させる場合、特定時間tpは、無効走査期間Iに最高動作温度Tmaxにおける偏光切換素子30の不応答時間delayを加えたものとすればよい。始期を優先させる場合、同期検知フォトダイオード20(図1参照)の受光による同期検知を安定させることができ、終期を優先させる場合、感光体ドラム19Aおよび感光体ドラム19Bを安定して走査できる領域をより多くすることができる。
上記した実施例では、多面鏡式光偏向器16は、それぞれ4面の反射面を有する同一形状の上段多面反射鏡16aと下段多面反射鏡16bとが回転方向に45度ずらして重ねられて構成されていたが、その回転方向で見て、上段多面反射鏡が形成する偏向反射面と下段多面反射鏡が形成する偏向反射面とが連続するものであれば、反射面の面数および多面反射鏡の形状は適宜設定することができ、上記した実施例に限定されるものではない。
上記した実施例では、カラー画像形成装置の一例として、図14に示すような2組の光走査装置10が搭載されたカラー画像形成装置50を示したが、本発明に係る光走査装置が搭載された画像形成装置であれば、例えば、3組の光走査装置が搭載されたカラー画像形成装置であってもよく、上記した実施例に限定されるものではない。
上記した実施例では、単一のレーザ光源ユニット11が2つの半導体レーザ21を有する構成とされていたが、これは被走査面(感光体ドラム19Aまたは感光体ドラム19B)をマルチビーム走査(1度の走査で2ライン分を走査する)するために2つの半導体レーザ21(211、212)を有しているものであって、その半導体レーザ211および半導体レーザ212はそれぞれが1つの(共通の)光源に相当するものであり、それぞれが上側光路(感光体ドラム19A側に向かう)と下側光路(感光体ドラム19B側に向かう)とのいずれか一方に選択的に進行するものである。このことから、上記した実施例では、単一のレーザ光源ユニット11が2つの半導体レーザ21を有する構成とされていたが、レーザ光源ユニットは、単一の光源(半導体レーザ)を有する構成であってもよく、複数(例えば4つ)の光源を有する構成であってもよく、上記した実施例に限定されるものではない。