JP5104729B2 - 交通信号制御システム、信号制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、緊急車両の走行を支援する交通信号制御システムに関する。
従来の交通信号制御システムでは、緊急車両の走行を支援する目的で、交差点に接続する道路の上流側に光ビーコンを設置して緊急車両との間で路車間通信を行えるようにしておき、当該光ビーコンが緊急車両からアップリンク情報を受信したら、緊急車両が前記交差点に接近してきたと認識して、当該緊急車両の通行する方向の信号灯器を制御する(現在の表示が青信号なら緊急車両が通過し終えるまでその青信号をずっと延長し続け、赤信号ならできるだけ速やかに赤信号を青信号に切り替えて当該青信号を延長し続ける交通信号制御方法であり、以下「FAST制御」という。)という方法が用いられてきた。
これにより、緊急車両が交差点で信号待ちをしなくても済むようにすることができる、あるいは、信号待ちする時間を短縮することができるため、緊急車両の走行をスムーズなものにすることができる。
このFAST制御は、緊急車両が通過できるまで青信号を表示し続けるという通常とは異なる動作をするため、緊急車両の通行する方向と交差する側の交通流において渋滞が発生する確率が高くなってしまうが、交差側の交通流をある程度犠牲にしてでも、緊急車両の社会的使命に配慮して、その走行を優先することを狙った交通信号制御方法である(特許文献1参照)。
特開2008−158837号公報
この緊急車両の走行を支援する交通信号制御システムでは、緊急車両が幹線道路上を走行している場合、当該幹線上において互いに隣接する複数の交差点では、緊急車両が近づいた交差点から順次FAST制御を実行していく。ある交差点に近づいたらその交差点でFAST制御を行い、その交差点を通過後に、隣接する次の交差点に近づいたら、今度は当該次の交差点でFAST制御を実行する、といった順序で行われる。この場合、接近してきた交差点よりも遠方にある下流側の交差点では、原則として、緊急車両が近くまで来ないとFAST制御を始めることはない。
前述のように、FAST制御を実行すると交差点の交差側道路で渋滞が発生しやすくなるというデメリットがあるため、周辺の交通流に対する影響に配慮して、緊急車両が通過するかどうか不確定な交差点(緊急車両が接近した交差点よりも以遠の交差点)では、FAST制御を実行しないのが一般的である。このように、FAST制御の実行対象を緊急車両が接近した交差点のみとすることで、緊急車両走行エリアにおける交通流全体への影響を限定的なものにすることができるのである。
しかし、もし緊急車両の走行する幹線道路の進行方向前方において渋滞が発生していた場合には、たとえ緊急車両の接近してきた交差点の信号機を青信号にし続けたとしても、先詰まりの状態になっているため、緊急車両が前に進めないケースがある。
すなわち、単に緊急車両が接近してきた交差点でFAST制御を行うだけでは、緊急車両がスムーズに走行できないケースがありうる、という問題がある。
そこで、本出願人は、緊急車両が接近してきた交差点でのFAST制御に加えて、緊急車両の進行先と予想される他の交差点において緊急車両の進行方向の青信号の表示期間(スプリット)を増加させて、緊急車両の進行先での渋滞が発生しにくくなるようにし、緊急車両が先詰まりにより進行を阻まれる、というケースを少なくすることが可能な交通信号制御システムを提案した(特願2008−263328)。
前記提案済みの交通信号制御システムにおいて青信号の表示時間を増加させる場合、緊急車両の進行先において、どの程度青信号時間を増加させると良いか、については、周囲の交通状況を勘案して決定することが好ましい。
本発明は、上記のような点に鑑みてなされたものであり、緊急車両がより一層スムーズに走行できるように支援する交通信号制御システムを提供することを目的とする。
本発明にかかる交通信号制御システムは、第一の交差点において交通信号制御を行う第一の交通信号制御機と、当該第一の交通信号制御機に対する指示である第一の指令情報を送信する送信手段を備える信号制御装置と、前記第一の交差点に接続される道路上に設置された第一の路上通信装置とを備え、前記第一の路上通信装置が緊急車両からアップリンク情報を受信したことに応じて送信される前記第一の指令情報には、当該緊急車両の進行方向の青信号をその緊急車両が前記第一の交差点を通過し終えたと認識するまで延長し続ける制御方法であるFAST制御を実行するように指示する情報が含まれているシステムである。そして、このシステムは、前記緊急車両が前記第一の交差点通過後に通過すると予想される第二の交差点と前記第一の交差点との間の道路における交通状況を取得する交通状況取得手段をさらに備えており、前記送信手段は、前記アップリンク情報の受信に応じて、前記第二の交差点に設置された第二の交通信号制御機に対して第二の指令情報を送信可能であり、前記送信手段はさらに、前記交通状況取得手段によって取得される交通状況に基づいて、前記第二の指令情報に、前記緊急車両が進行すると予想される方向の青信号の表示期間を所定時間分増加させるように指示する情報を含ませるか否か決定することを特徴としている(請求項1)。
この発明によれば、緊急車両が接近してきた交差点でのFAST制御に加えて、緊急車両の進行先と予想される他の交差点において緊急車両の進行方向の青信号の表示期間(スプリット)を増加させることが可能であるため、緊急車両の進行する先で渋滞が発生しにくくなり、FAST制御を行っているにも関わらず緊急車両が先詰まりにより進行を阻まれる、というケースを少なくすることができる。加えて、緊急車両の予想走行経路における交通状況に応じて青信号の時間を増加するかどうか決定するため、先詰まりが発生する可能性の高いところを狙って青信号の時間を長く設定することができる。
この場合、前記交通状況取得手段は、前記第一の交差点と前記第二の交差点との間の道路区間のうちの全部又は一部において渋滞が発生している場合に、前記第二の指令情報に対して、前記緊急車両が進行すると予想される方向の青信号の表示期間を所定時間分増加させるように指示する情報を含ませると良い(請求項2)。
緊急車両の現在地点と各交差点との間のいずれかで渋滞が起きている場合には、たとえ交差点近傍で渋滞が起きていなくても、暫くすると渋滞する可能性が高いので、できるだけ多くの車両を通過させておくことが好ましいためである。
なお、前記信号制御装置が、制御の対象である複数の交通信号制御機が複数のサブエリアにグループ化されており、一のサブエリアに属する交通信号制御機が複数の場合にこれらの交通信号制御機の所定の方向の青信号の開始時刻に適切なオフセットを与えて系統的に動作するように指示するものである場合は、前記アップリンク情報の受信に応じて前記第二の交通信号制御機と同一のサブエリアに属する第三の交通信号制御機に対して送信される第三の指令情報には、前記第二の交通信号制御機において青信号の表示時間が増加する方路に対応した方路の青信号時間を前記所定時間分増加させるように指示する情報が含まれていることが望ましい(請求項3)。
第二の交通信号制御機において青信号時間を増加させると、その分だけ各サイクルの第二の交通信号制御機の青信号の開始時刻が遅れることになる。第二の交通信号制御機の属するサブエリアにおいて適切なオフセットを与えて系統制御を実施していたのであれば、第二の交通信号制御機の青信号時間の増加に応じて、当該サブエリアに属する他の交通信号制御機の青信号時間も増加させてオフセットの値が適切に保たれるようにした方が良い。そうすることで、サブエリア内の系統制御が維持され、サブエリア内の交通流の円滑が担保される。
ここにいう「前記第二の交通信号制御機において青信号の表示時間が増加する方路に対応した方路」とは、緊急車両が通過すると予想される交差点においては緊急車両の進行方向の方路を指し、緊急車両が通過しないと予想される交差点においては、通常は、緊急車両の進行方向と同一の方角の方路を指す。というのも、同一サブエリア内の複数の交通信号制御機に適切なオフセットを与える場合、一の交通信号制御機のある方路の青信号時間を増加させた場合には、他の交通信号制御機についても、その方路と同じ方角の方路の青信号を増加させなければサブエリア内のオフセットが適切に保たれないためである。
なお、ここで第三の交通信号制御機において増加させる青信号時間は、第二の交通信号制御機において増加させる前記所定時間と全く同一の時間でなくてもよい。例えば第二の交通信号制御機において増加させる時間が20秒なら、第三の交通信号制御機において増加させる時間は16秒(あるいは22秒)等という風に多少相違していても良く、動作するサイクル長等に応じて道路R2に与えるオフセット値が適切なものであれば良い。
なお、本発明の交通信号制御システムでは、青信号の増加時間(前記所定時間)は前記第一の交差点と前記第二の交差点の間の道路区間における渋滞の度合いに応じて決定することが望ましい(請求項4)。
渋滞の度合いが大きいのであれば、それに応じて増加時間も大きく設定する方が先詰まり解消の効果が高まるためである。
なお、本発明の交通信号制御システムに用いられる信号制御装置も大変有用である(請求項5)。
以上のように、本発明の交通信号制御システムや信号制御装置によれば、FAST制御の実行効果をより一層高くし、緊急車両の走行を強力に支援することができる。
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明に係る交通信号制御システムにおけるシステム構成の概要を示す模式図である。
〔システムの全体構成〕
図1のように、道路R1上には連続して4つの交差点A乃至Dが配置されている。
そして、この4つの交差点には、道路R1上を下り方向(交差点Aから交差点Dに向かう方向を下り方向という。)に進行する車両に対して通行権を表示する信号灯器が設置されており、さらにその信号灯器を制御する交通信号制御機1A乃至1Dが設置されている。
また、下り方向の車線には、下り方向に進行する車両との間で路車間通信を行うために、光ビーコン2A乃至2Dが設置されており、それぞれ交差点A乃至Dに流入する車線の上流側に配置されている。
なお、これらの光ビーコン2A乃至2Dは、光ビーコンヘッドの直下を通過する車両を近赤外線式のセンサで感知する車両感知機能を備えており、道路R1の各地点における交通量や占有時間等を計測することが可能なように構成されている。
この近赤外線式のセンサは、短い周期でヘッドの直下の路面方向に近赤外光を照射し、その反射光を受光できる構成を有するものであり、センサの受光レベルに基づいて反射光が路面からのものであるか、車両からのものであるかを区別して認識することで車両を感知するという機能を備えている。
これら交通信号制御機1A乃至1Dや光ビーコン2A乃至2Dは、通信回線等を通じて交通管制センターに設置された信号制御装置5との間で情報をやりとりすることができるようになっており、交通信号制御機1A乃至1Dは、信号制御装置5に対して制御履歴に関する情報等を送信する機能を備えている。また、光ビーコン2A乃至2Dは、路車間通信により車両から受信したアップリンク情報や交通量等の感知器情報を信号制御装置5宛に送信する機能を備える。このアップリンク情報には車両の車両IDが含まれており、この車両IDによって当該車両の車種等を判別することが可能である。
なお、光ビーコン2A乃至2Dからアップリンク情報を受信するのは、信号制御装置5でなくてもよく、信号制御装置5と同一のネットワークに接続されている情報提供装置等(図示せず)であっても良い。この場合、アップリンク情報を受信した前記情報提供装置等が信号制御装置5に当該アップリンク情報を転送等すれば良い。
信号制御装置5は、各交通信号制御機に対して、信号灯器の制御についての信号制御指令情報を送信しており、その信号制御指令情報を受信した交通信号制御機は、当該信号制御指令情報に基づいて青信号の時間配分等を決定し、信号灯器の各信号灯色を点灯等する。
通常、この信号制御指令情報には1サイクル分の信号表示についての指示が含まれており、具体的には、1サイクルのサイクル長、各方路に割り当てる青信号の時間であるスプリット、1サイクルの開始時刻と基準時刻とのズレであるオフセット、右折感応制御やジレンマ感応制御等の地点感応制御実行可否についての指示等が含まれている。この信号制御指令情報を受信した交通信号制御機は、1サイクルの開始直前の時点で到着している最新の信号制御指令情報に基づいて、当該1サイクルにおける信号制御プランを決定し、当該信号制御プランに含まれる各信号灯色の表示時間に従って各信号灯器を制御する。
このサイクルやスプリット等は、通常、各交差点付近の交通状況に応じて決定される。この交通状況は、光ビーコン2A乃至2Dや道路R1等に設置されるその他の車両感知器(図示せず)等で計測され、信号制御装置5が収集する感知器情報(交通量や占有時間等を含む情報)に基づいて判断される。
例えば、所定期間における交通量(例えば5分間の交通量)や平均走行速度によって各道路における飽和度等の交通需要を把握し、その交通需要に応じて互いに交差する各道路に割り当てる青時間の長さ等を決定する。
なお、1サイクルとは、信号機の表示が一巡する期間のことを指し、通常は主道路側に対して青信号の表示を開始した時から、再び主道路側に対して青信号の表示を開始する直前までの期間をいう。
ここで、信号制御装置5は、各交通信号制御機に対してFAST制御を実行するように命じる実行指示情報(緊急車両の接近を通知する情報)を作成して送信することができる。このFAST制御を実行するように指示された交通信号制御機は、前記実行指示情報を受信したら、直ちにFAST制御モードに移行する。
すなわち、道路R1の車両に対して青信号を表示しているのであれば、その青信号を表示することが許される最大延長秒数(通常は100秒程度)一杯まで延長可能なように制御する。また、道路R1の車両に対して赤信号を表示しているのであれば、その赤信号を最低でも表示しなければいけない最低保証秒数(通常は10秒程度)で早急に打ち切って(既に最低保証秒数以上赤信号を表示していたのであれば直ちに打ち切って)、青信号に切り替えると共に、当該青信号を最大延長秒数一杯まで延長可能なように制御する。
なお、信号制御装置5は、緊急車両Pが交差点を通過し終えたと判断した場合には、FAST制御を実行するように命じた交通信号制御機に対して、FAST制御を停止するように指示する停止指示情報(緊急車両の通過を通知する情報)を送信する。この停止指示情報を受信した交通信号制御機は、FAST制御モードを終了し、通常の制御状態に移行する。
例えば、前記実行指示情報を受信する前に予定していた青信号の表示予定時間が30秒であったのに対し、FAST制御モードに移行したために30秒を超えて青信号を表示し続けていたのであれば、直ちに青信号の表示を打ち切る。また、青信号を表示し始めてから30秒未満の状態で前記停止指示情報を受信したのであれば、FAST制御を実行する前の予定に従って、青信号を表示し始めてから30秒間は青信号を継続するように制御する。
〔FAST制御の実行手順〕
図1の交通信号制御機1Aでは、その交差点の上流側に位置する光ビーコン2Aからのアップリンク情報に基づいて、FAST制御が実行される。そして、交差点Aを通過した後、光ビーコン2Bからのアップリンク情報に基づいてFAST制御を停止する。これらの手順を以下に説明する。
まず、光ビーコン2Aは、路車間通信によって緊急車両Pからアップリンク情報を受信するとただちに信号制御装置5に送信する。
信号制御装置5は図6に示すような構成であり、通信インタフェース521を通じて常時アップリンク情報を受信できるようになっており、受信したアップリンク情報は受信時刻と共に、メモリ511やハードディスク512等の記憶部に蓄積していく。
この場合、信号制御装置5のCPU501等の演算部は、受信したアップリンク情報の車両ID情報を参照し、当該車両ID情報の車種に関する情報を取得する。なお、車両IDは数値や文字列によって構成されており、その車両IDに含まれる数値等に基づいてその車両の車種を識別することが可能となっている。
前記取得した車両の車種が緊急車両を示すものである場合には、前記アップリンク情報に含まれている、緊急走行中かどうかを示すデータ、を参照し、当該緊急車両Pが緊急走行中であるか否かを取得する。
もし、緊急走行中であれば、信号制御装置5は交差点AにおいてFAST制御を実行すべき状況であると判断する。なお、ここで述べた以外の条件(例えば時間帯や交通状況等)を考慮するとFAST制御を実行すべきではないと判断される場合には、FAST制御を実行しない場合があっても良い。例えば、信号制御装置5の記憶部に予めFAST制御を実行すべき時間帯が設定されている場合には、当該時間帯以外の時間帯であればFAST制御を実行しないことがあっても良い。
このようにして、光ビーコン2Aにおいて、緊急走行中の緊急車両Pからアップリンク情報を受信し、交通信号制御機1Aに対してFAST制御の実行を命じるべきと判断した場合、信号制御装置5は、FAST制御の実行を命じる実行指示情報を作成して、交通信号制御機1Aに対して送信する。
この情報を受信した交通信号制御機1Aは、前述の通り、実行指示情報受信時に道路R1の車両に対して青信号を表示していたのであれば、当該青信号を最大延長秒数一杯まで延長可能なように制御し、一方、赤信号を表示しているのであれば、その赤信号を最低保証秒数で打ち切って青信号に切り替えた後、当該青信号を最大延長秒数一杯まで延長可能なように制御する。そして、FAST制御の実行を開始した旨の通知情報を信号制御装置5に対して送信する。
緊急走行中の緊急車両Pは、交差点Aを通過すると、今度は光ビーコン2Bとの間で光ビーコン2Aと同様に路車間通信を行い、アップリンク情報を送信する。そして、光ビーコン2Bは、緊急車両Pから得たアップリンク情報を直ちに信号制御装置5に送信する。
交通信号制御機1AがFAST制御を実行している間に、光ビーコン2Bから緊急車両Pのアップリンク情報を受信したら、信号制御装置5は、緊急車両Pが交差点Aを通過し終えたと判断し、交通信号制御機1Aに対してFAST制御を停止するよう指示する停止指示情報を送信する。
交通信号制御機1Aは、前述の通り、停止指示情報を受信するとFAST制御を中止し、通常通りの制御を再開する。
また、光ビーコン2Bからのアップリンク情報の受信により、緊急走行中の緊急車両Pが交差点Bに接近したと判断できるため、信号制御装置5は、今度は、交通信号制御機1Bに対してFAST制御を実行するように指示する実行指示情報を送信する。
このようにして、緊急車両Pが道路R1を下り方向に進行する間に、交差点A乃至Dにおいて順次FAST制御が実行される。
〔道路R1の交通状況の把握方法〕
図1に記載の光ビーコン2A乃至2Dは既述の通り、道路R1を走行する車両を感知する車両感知機能を備えており、道路R1における交通状況をリアルタイムで把握することが可能である。
また、道路R1には、これらの光ビーコン以外にも超音波式、遠赤外線式や画像処理式の車両感知器を設置して、道路R1における交通量や占有時間等を計測し、それらを感知器情報として交通管制センターに設置された信号制御装置5等に送信することができる(図示せず)。
信号制御装置5は、これらの道路R1に設置された車両感知器等からの感知器情報を受信して道路R1における交通状況を把握する機能を備えている。
交通状況は、計測される交通量と所定の閾値とを比較したり、占有時間等より推定される平均走行速度を所定の閾値と比較したり、画像処理式の車両感知器によって直接計測される車両の待ち行列長(渋滞長)と所定の閾値とを比較したりすることによって把握されるものであり、道路上の車両の台数が多く交通が飽和した状態(渋滞した状態)か、それとも交通流がスムーズな非飽和状態かを判定することができる。
例えば、道路R1において5分間に通過可能な交通量の目安(閾値)が50台である場合に、ある地点において計測された5分間の交通量が60台であれば、その道路は混雑している(飽和状態)と判断することができる。
また、占有時間から推定される平均走行速度(速度計測機能を有する車両感知器の場合には直接計測した各車両の速度の平均値として算出できる)が30km/h以上ならスムーズに流れていると判断される場合において、平均走行速度が20km/h程度であれば、その時間帯においてその道路は混雑している(飽和状態)と判断することができる。
また、画像処理式の車両感知器によって車両の待ち行列長(渋滞長)を計測することが可能であれば、当該待ち行列長が、1回の青信号で捌くことができる長さを超えている場合(例えば150mを超えている場合)に渋滞している、と判定することができる。なお、この車両の待ち行列長は、離隔して設置される複数の超音波式の車両感知器等によって計測される占有時間から推定する方法を用いることもできる。
〔青信号の増加時間の決定方法〕
ここで図2は、図1よりも道路R1を広域に図示した模式図であり、交差点によって区切られた道路区間にそれぞれリンク番号を付したものである。ここにいうリンクとは、隣接する交差点間の道路区間であって方向を有するものであり、交差点Aから交差点Bまでの道路区間をリンク1、同様に交差点Bから交差点Cまでの道路区間をリンク2等とする。
この場合、各リンクに相当する車線には、それぞれ車両感知器(光ビーコンを含む)が1つ以上設置されているものとし、それらの車両感知器から感知器情報が信号制御装置5に対して所定の周期毎(たとえば近隣に設置されている交通信号制御機のサイクル毎や5分毎等)に送信されているものとする。
信号制御装置5は、これらの感知器情報から各リンクにおける交通状況を把握することができる。そして、ある時間帯における道路R1の状況が、例えば、リンク1乃至4は非飽和状態、リンク5とリンク6は飽和状態、リンク7は非飽和状態、であったとする。この場合、青信号の増加時間は以下のような方針で決定することができる。
信号制御装置5は、交差点AにおいてFAST制御の実行を開始した場合、緊急車両Pが通過する可能性のある交差点を、青信号時間を増加させる対象交差点として選定する。なお、各交差点において青信号を増加させる方路は、緊急車両の進路に応じて予め記憶されている。
本実施の形態では、光ビーコン2Aにおいて緊急車両Pのアップリンク情報を受信した場合には、交差点B乃至Hが青時間増加対象交差点であり、各交差点において交差点Aから交差点Hに向かう方路(以下、下り方向という。)が青信号を増加させる方路であることをハードディスク512等の記憶部のテーブルに記憶している。
この場合、対象交差点毎に、青信号を増加させる時間の範囲も前記テーブルに格納しておく。例えば、交差点Bについては、30秒以上50秒以下、交差点C乃至交差点Hについては20秒以上40秒以下、といったように青信号の増加時間の範囲を予めテーブルに記憶しておく。図3はそのテーブルの一例を示す図である。
ここで、交通状況を把握した結果、リンク1乃至リンク4は非飽和状態であったので、交差点B乃至交差点Eにおいては現時点で先詰まりが発生する可能性は低く、青信号を増加させないか、増加させるとしてもその増加時間はそれほど大きくなくしなくても良い。
むしろ、交差側の交通流に配慮して、青信号の増加時間はできるだけ小さい方が望ましい。そこで、交差点Bの青信号の増加時間を0秒又は下限値の30秒、交差点C乃至交差点Eの青信号の増加時間を0秒又は下限値の20秒と決定する。
一方、リンク5とリンク6は、飽和状態であったため、交差点Fや交差点Gにおいては先詰まりが起きる可能性が高い。そこで、リンク5とリンク6の飽和状態を解消すべく交差点Fと交差点Gの下り方向の青信号の増加時間については下限値の20秒よりも大きい30秒や40秒等と決定することができる。青信号の増加時間を大きくして先詰まりとなる可能性を低くし、緊急車両Pがスムーズに走行できるようにするためである。
この場合、増加時間を何秒にするかは、リンク5や6における渋滞の度合いに応じて決定することが好ましい。
例えば、リンク5の距離が500mであったのに対して、リンク5における車両の待ち行列長が半分以上の300mであるような場合には、渋滞の度合いが大きいから、青信号の増加時間も大きく40秒等とすることが望ましく、逆に渋滞していると判断する閾値ぎりぎりの150mであるような場合には、渋滞の度合いは小さいから、青信号の増加時間を小さめの20〜30秒程度とすることが望ましい。
最後にリンク7について、このリンクは非飽和状態であったが、FAST制御実行交差点Aと交差点Hとの間に位置するリンク5やリンク6が飽和状態であるから、このリンク5やリンク6を走行する多数の車両が暫くするとリンク7に流入してくるものと考えられる。すなわち、このリンク7についても、数分あるいは十数分程度すれば飽和状態に近づく可能性が高いと考えられる。
そこで、交差点Hについても交差点F等と同様に、青信号の増加時間を大きめの30〜40秒程度にし、できる限り多くの車両をリンク7から交差点Hよりも下流側に流しておくことが望ましい。
このように、青信号を増加させる対象となる各交差点(交差点B乃至交差点H)について、FAST制御を実行する交差点(交差点A)との間のリンクの全てが非飽和状態であれば、その交差点の青信号の増加時間を小さくあるいはゼロに設定することが望ましい。
一方、FAST制御を実行する交差点(交差点A)との間のリンクのうち1つ以上のリンクが飽和状態(渋滞)であれば、その交差点の青信号の増加時間を大きく設定することが望ましい。この場合、増加時間の大きさについては、渋滞しているリンクの数や渋滞の度合い等に応じて決定することが好ましく、渋滞しているリンクの数等が多ければ多いほど、青信号の増加時間を大きくする方が望ましい。
〔サブエリアを考慮した交通信号制御方法〕
交通信号制御システムでは、信号制御装置5が制御の対象とする複数の交通信号制御機をいくつかのグループ(当該グループのことをサブエリアという。)に分けて、各サブエリアに属する交通信号制御機に対しては、同一のサイクル長で動作するように指示する信号制御指令情報を送信するという交通信号制御方法が用いられることがある。
同一のサイクル長で動作させることで、当該サブエリア内の交通信号制御機が青信号を表示している時間帯にこれらの交通信号制御機の設置された全ての交差点を、できるだけ多くの車両が通過できるように、交通信号制御機間の信号表示開始時刻に適切なオフセットを持たせる系統制御を行うことが可能になる。
図2において、例えば緊急車両Pが交差点Aに接近したことに応じて交通信号制御機1Aに対してFAST制御を指示すると共に、交差点B乃至Hの交通信号制御機1B乃至1Hに対して道路R1方向の青信号時間の増加を指示した場合を考える。
なお、図4は図2に記載の交差点のサブエリアの構成を示したものであり、図4中の楕円又は円で囲まれた交差点が1つのサブエリアを示している。例えば、図5は交差点D乃至交差点Fの交通信号制御機1D乃至1Fの道路R1方向の青信号の表示開始時間に適切なオフセットを与えて、系統制御する概念を示す図である。この図5では、交差点Dから交差点Fに向かう方向のスルーバンドを確保するように、系統制御が行われている。
本発明においては、このサブエリアの構成に配慮して制御することが好ましい。
例えば、同一のサブエリアに属する交通信号制御機に対して、異なる時間だけ青信号を増加させるように指示した場合(交差点Dには20秒、交差点Eには15秒)、赤信号時間の長さ(交差側に表示する青信号時間の長さ)を変えなければ、交差点Dと交差点Eのサイクル長が異なってしまう。そうすると、交差点Dと交差点Eは1サイクル毎にオフセットがずれていき、意図した通りの系統制御ができなくなってしまう。
そこで、同一のサブエリアに属する交差点については、増加させる青信号時間の長さを同一にしておくことが望ましい。
図4のようなサブエリア構成であれば、例えば、交差点Bで40秒、交差点Cで35秒、交差点D乃至Fで30秒、交差点Gと交差点Hで20秒、などというように青信号時間を増加させると良い。
そうすることで、系統制御によって交通流の円滑を維持しつつ、緊急車両Pの走行を支援することが可能となる。
さきほどの例のようにリンク5と6において渋滞が発生している場合、交差点Fにおいて交通信号制御機1Fの青時間を20秒増加させたのであれば、交通信号制御機1Fと同一のサブエリアに含まれる交通信号制御機1Dや1Eについても同じ20秒分増加させることが好ましい。そうすることでサブエリア内のオフセットがシステム運用者の意図した通りに維持され、道路R1における交通流の円滑が保たれやすくなる。
なお、本発明における信号制御装置5や交通信号制御機1A等は、1の筐体によって実現されていても良いし、複数の筐体の組み合わせによって実現されても良い。また、これらは、それぞれ1つのコンピュータによって実現されていても良いし、複数のコンピュータを組み合わせて実現されていても良い。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明に係る交通信号制御システムの機器配置の概要を示す模式図である。 本発明に係る交通信号制御システムが制御対象とする複数の交差点の広域的な配置例を示す図である。 本発明に係る交通信号制御システムにおいて青信号の増加時間に関する記憶テーブルの一例を示す図である。 本発明に係る交通信号制御システムの制御対象とする複数の交差点のサブエリア構成の一例を示す図である。 本発明に係る交通信号制御システムにおける系統制御の概念を示す図である。 信号制御装置5の構成の一例を示す図である。
符号の説明
1A乃至1D 交通信号制御機
2A乃至2D 光ビーコン
5 信号制御装置

Claims (5)

  1. 第一の交差点において交通信号制御を行う第一の交通信号制御機と、
    当該第一の交通信号制御機に対する指示である第一の指令情報を送信する送信手段を備える信号制御装置と、
    前記第一の交差点に接続される道路上に設置された第一の路上通信装置とを備え、
    前記第一の路上通信装置が緊急車両からアップリンク情報を受信したことに応じて送信される前記第一の指令情報には、当該緊急車両の進行方向の青信号をその緊急車両が前記第一の交差点を通過し終えたと認識するまで延長し続ける制御方法であるFAST制御を実行するように指示する情報が含まれている交通信号制御システムにおいて、
    前記交通信号制御システムは、前記緊急車両が前記第一の交差点通過後に通過すると予想される第二の交差点と前記第一の交差点との間の道路における交通状況を取得する交通状況取得手段をさらに備えており、
    前記送信手段は、
    前記アップリンク情報の受信に応じて、前記第二の交差点に設置された第二の交通信号制御機に対して第二の指令情報を送信可能であり、
    さらに、前記送信手段は、
    前記交通状況取得手段によって取得される交通状況に基づいて、前記第二の指令情報に、前記緊急車両が進行すると予想される方向の青信号の表示期間を所定時間分増加させるように指示する情報を含ませるか否か決定すること
    を特徴とする交通信号制御システム。
  2. 前記交通状況取得手段は、
    前記第一の交差点と前記第二の交差点との間の道路区間のうちの全部又は一部において渋滞が発生している場合に、
    前記第二の指令情報に対して、前記緊急車両が進行すると予想される方向の青信号の表示期間を所定時間分増加させるように指示する情報を含ませること
    を特徴とする請求項1に記載の交通信号制御システム。
  3. 前記送信手段は、
    前記信号制御装置が制御の対象とする複数の交通信号制御機が複数のサブエリアにグループ化されている場合に、一のサブエリアに属する交通信号制御機が複数の場合にこれらの交通信号制御機の所定の方向の青信号の開始時刻に適切なオフセットを与えて系統的に動作するように指示するものであり、
    前記アップリンク情報の受信に応じて前記第二の交通信号制御機と同一のサブエリアに属する第三の交通信号制御機に対して送信される第三の指令情報には、前記第二の交通信号制御機において青信号の表示時間が増加する方路に対応した方路の青信号時間を前記所定時間分増加させるように指示する情報が含まれること
    を特徴とする請求項2に記載の交通信号制御システム。
  4. 前記所定時間は、
    前記第一の交差点と前記第二の交差点の間の道路区間における渋滞の度合いに応じて決定されること
    を特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載の交通信号制御システム。
  5. 請求項1乃至4のいずれか1つに記載の交通信号制御システムに用いられる信号制御装置。
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