ところで、上記特許文献1のストロークエンド検出方法では、ストロークエンドを誤検出するおそれが高いという問題があった。具体的に、特許文献1のような油圧回路によっては、シリンダからタンクへ戻る配管の配管長が長かったり配管径が小さかったり、またその戻り配管に絞り弁等の種々の弁が設けられるものがある。そのような油圧回路では、戻り配管における流通抵抗が大きくなるため、シリンダの移動中においても油の供給圧力が高くなる。つまり、シリンダの移動時においても、油圧ポンプにとって大きな負荷圧が作用し、シリンダの供給側圧力が高くなる。図6を用いて説明すると、シリンダはt0で移動し始めてt1でストロークエンドに達する。ところが、このシリンダの移動中(t0〜t1)において、油圧ポンプのポンプ圧力が軸設定圧力以上となり、次いでシリンダの供給側圧力(軸圧力)も軸設定圧力以上となってしまう。ここで、軸設定圧力はシリンダのワークに対する必要保持圧力に設定される。このように、シリンダがストロークエンドに達していないにも拘わらず、供給側圧力が所定値以上となって目標のストロークエンドに達したと誤検出してしまうという問題があった。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、シリンダのストロークエンドを確実に且つ簡易に検出することにある。
第1の発明は、流体を吐出する流体圧ポンプ(11)を備え、該流体圧ポンプ(11)の吐出流体を流体圧シリンダ(13)に供給して該シリンダロッドを進退させる流体圧ユニットを前提としている。そして、本発明の流体圧ユニットは、上記流体圧シリンダ(13)の流体供給側であるロッド室(13b)またはヘッド室(13a)の圧力が第1設定値以上になり、且つ、上記流体圧シリンダ(13)の背圧側であるヘッド室(13a)またはロッド室(13b)の圧力が第2設定値以下になる条件を満たすと、上記流体圧シリンダ(13)のシリンダロッドがストロークエンドに達したと判定して上記流体圧ポンプ(11)から上記流体圧シリンダ(13)への流体の供給を停止させるストロークエンド検出手段(20)を備えているものである。
上記第1の発明において、流体圧シリンダ(13)の背圧側流路の流通抵抗が大きい場合、流体圧シリンダ(13)の動作中に流体圧ポンプ(11)にとって比較的大きな負荷圧が発生する。この場合、流体圧シリンダ(13)の動作中(移動中)は、流体供給側であるヘッド室(13a)またはロッド室(13b)の圧力は第1設定値以上となり、背圧側であるロッド室(13b)またはヘッド室(13a)も同じ圧力で推移する。そして、流体圧シリンダ(13)がストロークエンドに達すると、流体供給側の圧力は第1設定値以上の値のままであり、背圧側の圧力は第2設定値以下まで低下する。これにより、ストロークエンドが検出される。
また、流体圧シリンダ(13)の背圧側流路の流通抵抗が非常に小さい場合、流体圧シリンダ(13)の動作中に流体圧ポンプ(11)にとって負荷圧は殆ど生じない。この場合、流体圧シリンダ(13)の動作中(移動中)は、流体供給側であるヘッド室(13a)またはロッド室(13b)の圧力および背圧側であるロッド室(13b)またはヘッド室(13a)の圧力は殆どゼロの状態で推移する。そして、流体圧シリンダ(13)がストロークエンドに達すると、流体供給側の圧力は第1設定値以上の値となり、背圧側の圧力は殆どゼロ(第2設定値以下の値)のままである。これにより、ストロークエンドが検出される。
第2の発明は、上記第1の発明において、上記ストロークエンド検出手段(20)は、上記条件に加え、上記流体圧ポンプ(11)の吐出圧力が第3設定値以上になる条件を満たすと、上記流体圧シリンダ(13)のシリンダロッドがストロークエンドに達したと判定して上記流体圧ポンプ(11)から上記流体圧シリンダ(13)への流体の供給を停止させるように構成されているものである。
上記第2の発明では、流体圧シリンダ(13)の流体供給側であるロッド室(13b)またはヘッド室(13a)の圧力が第1設定値以上になり、且つ、上記流体圧シリンダ(13)の背圧側であるヘッド室(13a)またはロッド室(13b)の圧力が第2設定値以下になる条件に加えて、流体圧ポンプ(11)の吐出圧力が第3設定値以上になると、ストロークエンドが検出される。
第3の発明は、上記第1または第2の発明において、上記ストロークエンド検出手段(20)は、上記条件を満たしてから所定時間経過後に、上記流体圧ポンプ(11)から上記流体圧シリンダ(13)への流体の供給を停止させるように構成されているものである。
上記第3の発明では、上記第1または第2の発明に係る圧力条件を満たしても所定時間の間は流体圧ポンプ(11)から流体圧シリンダ(13)へ流体が供給され続ける。ストロークエンドにいわゆるクッション機構を備えた流体圧シリンダ(13)の場合、ストロークエンドの手前で上記の圧力条件を満たすことがある。ところが、この時点では未だストロークエンドに達していない。そこで、本発明では、圧力条件を満たした後も所定時間の間は流体圧シリンダ(13)へ流体を供給し続けるので、流体圧シリンダ(13)は確実にストロークエンドに達する。
第4の発明は、上記第1乃至第3の何れか1の発明において、上記流体圧シリンダ(13)の背圧側であるヘッド室(13a)またはロッド室(13b)に接続される背圧側流路(14d)には、流体の流路を絞るための絞り手段(19)が設けられているものである。
上記第4の発明では、背圧側流路(14d)を流れる流体の流量が絞り手段(19)によって調整され、流体圧シリンダ(13)の動作速度が調整される。この場合、絞り手段(19)における流通抵抗が流体圧ポンプ(11)にとって大きな負荷圧となる。
第5の発明は、上記第1乃至第3の何れか1の発明において、上記流体圧シリンダ(13)は、シリンダロッドが上下方向に進退する一方、上記流体圧シリンダ(13)の背圧側であるヘッド室(13a)またはロッド室(13b)に接続される背圧側流路(14d)には、上記流体圧シリンダ(13)のシリンダロッドを下降動作させる際に上記流体圧シリンダ(13)の背圧側の圧力を一定に保持するための背圧保持手段(21)が設けられているものである。
上記第5の発明では、流体圧シリンダ(13)を下降動作させる場合、流体圧ポンプ(11)の油圧による下降に加えて自然落下(自重落下)する。このままでは、流体圧シリンダ(13)は、流体供給側の圧力が負圧となり急下降してしまう。ところが、本発明では、背圧保持手段(21)によって流体圧シリンダ(13)の背圧側の圧力が一定に保持されるため、急下降することなく下降速度が一定に保持される。この下降動作時では、背圧保持手段(21)によって保持される背圧が流体圧ポンプ(11)にとって大きな負荷圧となる。
第6の発明は、上記第1乃至第5の何れか1の発明において、上記流体圧シリンダの駆動対象は、工作機械におけるチャックまたはクランプである。
上記第6の発明では、チャックまたはクランプが流体圧シリンダ(13)の動作によって開閉動作する。これにより、ワーク(加工物)が所定圧力で固定(把持)される。
以上のように、本発明によれば、流体圧シリンダ(13)の動作時に負荷圧が発生する場合でも発生しない場合でも、ストロークエンドにおいては流体供給側の圧力が第1設定値以上となり且つ背圧側の圧力が第2設定値以下となる。したがって、この流体供給側の圧力および背圧側の圧力の条件を満たすことにより、負荷圧の発生の有無に関係なく、ワークに対する所定の固定力(把持力)を保持しつつ、流体圧シリンダ(13)のストロークエンドを確実に且つ簡易に検出することができる。
さらに、第2の発明によれば、流体圧ポンプ(11)の吐出圧力が第3設定値以上であることもストロークエンドの判定条件に付加するようにした。したがって、ストロークエンドの誤検出を一層防止することができる。例えば、ワークに外力が作用することにより軸圧力が上昇すると、背圧側の圧力は降圧レベル以下に低下しているためストロークエンドであると誤検出するおそれがある。ところが、流体圧ポンプ(11)の吐出圧力が第3設定値以上であることを条件として付加することにより、上記のように少なくとも外力の作用によるストロークエンドの誤検出を確実に防止することができる。つまり、本発明は、流体圧ポンプ(11)の吐出圧力を条件に加えることで、流体圧シリンダ(13)の動作中におけるストロークエンドを確実に検出することができる。
さらに、第3の発明によれば、第1または第2の発明に係る圧力条件を満たした後も所定時間の間は流体圧シリンダ(13)への流体の供給を継続させるようにした。したがって、ストロークエンドにクッション機構を備えた流体圧シリンダ(13)においても確実にストロークエンドまで動作させることができる。よって、ストロークエンド検出について信頼性を向上させることができる。
また、第4の発明によれば、背圧側流路(14d)に絞り手段(19)を設けているため、作動油の流量を調整して流体圧シリンダ(13)の動作速度を調整することができる。そして、このように背圧側流路(14d)に流量調整弁を設けると、流通抵抗が大きくなり流体圧ポンプ(11)にとって大きな負荷圧が発生するが、この場合でもストロークエンドを確実に検出することができる。
また、第5の発明によれば、シリンダロッドが上下方向に進退する流体圧シリンダ(13)を対象とし、その流体圧シリンダ(13)の下降動作時に背圧側の圧力を一定保持する背圧保持手段(21)を背圧側流路(14d)に設けるようにした。したがって、流体圧シリンダ(13)の下降速度を一定に保持することができる。そして、この場合、背圧保持手段(21)で保持される背圧が流体圧ポンプ(11)にとって大きな負荷圧となるが、この場合でもストロークエンドを確実に検出することができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態の油圧ユニット(10)は、本発明に係る流体圧ユニットを構成している。この油圧ユニット(10)は、例えば旋盤、研磨盤、表面仕上げ機械、削り盤、マシニングセンタ等の工作機械に用いられる。工作機械は、図示しないが、例えば心押台クランプや刃物台クランプ、チャック等のように、ワークや工具を固定する複数の固定装置(駆動対象)を有し、これら固定装置が油圧ユニット(10)によって駆動される。ここでは、クランプを駆動するものとして説明する。
上記油圧ユニット(10)は、油圧ポンプ(11)と、該油圧ポンプ(11)を駆動するモータ(12)と、油圧ポンプ(11)に対して並列に接続された2つの駆動系統(10A,10B)とを備えている。この2つの駆動系統(10A,10B)は、第1クランプ駆動系統(10A)と第2クランプ駆動系統(10B)である。
上記油圧ポンプ(11)は、流体としての作動油を油タンク(16)から吸入して吐出する流体圧ポンプを構成している。この油圧ポンプ(11)は、例えばギアポンプ、トロコイドポンプ、ベーンポンプ、ピストンポンプ等の固定容量型ポンプで構成されている。
上記モータ(12)は、油圧ポンプ(11)を駆動する可変速モータである。このモータ(12)は、自身に内蔵されている回転速度制御用エンコーダ(図示せず)により油圧ポンプ(11)の吐出流量に相当する回転速度を検出している。
上記各駆動系統(10A,10B)は、それぞれ、方向切換弁(15)と、2つのチェック弁(17,18)と、可変絞り弁(19)とを備えている。そして、各駆動系統(10A,10B)は、工作機械側の油圧シリンダ(13)に接続されている。
上記油圧シリンダ(13)は、ピストンによって区画されたヘッド室(13a)およびロッド室(13b)を有し、油圧ポンプ(11)から作動油が供給されて駆動する。油圧シリンダ(13)は、ヘッド室(13a)に作動油が供給されるとシリンダロッド(13c)が伸長(前進)し、ロッド室(13b)に作動油が供給されるとシリンダロッド(13c)が収縮(後退)する。また、この油圧シリンダ(13)は、ストロークエンドにクッション機構(図示省略)を備えたものである。このクッション機構は、シリンダロッド(13c)がストロークエンドに達するときの衝撃を緩和するものである。
上記方向切換弁(15)は、第1電磁ソレノイド(15a)および第2電磁ソレノイド(15b)を有する4ポート3位置スプリングセンタ式電磁切換弁である。各方向切換弁(15)は、4ポートのうち、Pポートが油圧ポンプ(11)の吐出側に第1配管(14a)によって接続され、Tポートが油タンク(16)に第2配管(14b)によって接続され、Aポートが油圧シリンダ(13)のヘッド室(13a)に第4配管(14d)によって接続され、Bポートが油圧シリンダ(13)のロッド室(13b)に第3配管(14c)によって接続されている。上記各配管(14a〜14d)は油圧配管を構成している。
上記方向切換弁(15)は、第1電磁ソレノイド(15a)および第2電磁ソレノイド(15b)のON/OFF動作によって、中立位置と第1位置(図1において右側の位置)と第2位置(図1において左側の位置)とに切り換わる。方向切換弁(15)は、中立位置ではAポート、BポートおよびTポートが互いに連通し且つPポートが遮断状態になり、第1位置ではPポートとBポートが連通し且つAポートとTポートが連通し、第2位置ではPポートとAポートが連通し且つBポートとTポートが連通する。
上記チェック弁(17,18)は、パイロット式のものである。2つのチェック弁(17,18)は、第3配管(14c)と第4配管(14d)にそれぞれ設けられている。
上記可変絞り弁(19)は、第4配管(14d)のチェック弁(18)よりも方向切換弁(15)側に設けられている。この可変絞り弁(19)は、流路面積が変更自在に構成された流量制御弁である。
上記各駆動系統(10A,10B)には、圧力検出手段である、ポンプ圧力センサ(S1)と、ロッド側圧力センサ(S2)と、ヘッド側圧力センサ(S3)とが設けられている。ポンプ圧力センサ(S1)は、油圧ポンプ(11)の吐出側に設けられ、油圧ポンプ(11)の吐出圧力を検出する。ロッド側圧力センサ(S2)は、第3配管(14c)のチェック弁(17)よりも油圧シリンダ(13)側に設けられ、ロッド室(13b)の圧力を検出する。ヘッド側圧力センサ(S3)は、第4配管(14d)のチェック弁(18)よりも油圧シリンダ(13)側に設けられ、ヘッド室(13a)の圧力を検出する。
上記油圧ユニット(10)には、コントローラ(20)が設けられている。コントローラ(20)は、モータ(12)の駆動制御や方向切換弁(15)の切換制御を行うものである。また、コントローラ(20)は、上記3つの圧力センサ(S1〜S3)の検出値が入力され、その検出値に基づいて油圧シリンダ(13)のストロークエンドを検出するように構成されている。このストロークエンド検出動作の詳細については後述する。
−運転動作−
次に、油圧ユニット(10)の運転動作およびストロークエンドの検出動作について図2〜図4を参照しながら説明する。
本実施形態の油圧ユニット(10)は、第1クランプの駆動と第2クランプの駆動とを単独に行う。また、本実施形態に係る工作機械のクランプは、油圧シリンダ(13)のシリンダロッド(13c)が収縮すると閉じ動作を行いワーク(加工物)を固定(把持)するものである。
コントローラ(20)は、図2に示すフローに基づいてクランプの閉じ動作制御を行う。先ず、ステップST1では、制御盤から駆動する油圧シリンダ(13)の動作指令が入力されたか否かが判定される。ここでは、第1クランプ駆動系統(10A)の油圧シリンダ(13)に対する動作指令が入力されたと仮定する。
油圧シリンダ(13)の動作指令が入力されると、ステップST2において第1クランプ駆動系統(10A)の方向切換弁(15)がONされる。つまり、方向切換弁(15)が中立位置から第1位置に切り換えられる。続くステップST3では、モータ(12)が起動されて油圧ポンプ(11)が駆動される。そうすると、油圧ポンプ(11)によって油タンク(16)から吸い上げられた作動油が第1配管(14a)および第3配管(14c)を介して油圧シリンダ(13)のロッド室(13b)へ供給され、油圧シリンダ(13)のシリンダロッド(13c)が収縮動作を行う。このシリンダロッド(13c)の収縮動作に伴い、油圧シリンダ(13)のヘッド室(13a)から作動油が第4配管(14d)および第2配管(14b)を介して油タンク(16)へ流れる。このとき、第4配管(14d)のチェック弁(18)は、パイロット圧力によって開いている。また、可変絞り弁(19)によって作動油の流量が調整され、シリンダロッド(13c)の収縮速度(移動速度)が調整される。この油圧シリンダ(13)の動作により、クランプが閉じ動作を行う。
上記油圧シリンダ(13)の収縮動作時には、ヘッド室(13a)から油タンク(16)までの流路(第2配管(14b)および第4配管(14d))が油圧シリンダ(13)の背圧側流路となる。ここで、第2配管(14b)や第4配管(14d)における流通抵抗が大きいと、油圧シリンダ(13)の収縮動作に必要な圧力が大きくなる。即ち、油圧シリンダ(13)の収縮動作時に負荷圧が発生してしまう。例えば、第2配管(14b)や第4配管(14d)の配管長が長い場合や配管径が小さい場合、また可変絞り弁(19)の存在により、流通抵抗が増大し負荷圧が発生する。
このように、油圧シリンダ(13)の収縮動作時において負荷圧が発生する場合、図3に示すように各圧力が推移する。
具体的に、軸選択信号(即ち、油圧シリンダ(13)の動作指令)が入力され、油圧ポンプ(11)の運転が開始されると(図3のt0時)、油圧ポンプ(11)の吐出圧力(以下、ポンプ圧力という。)が徐々に上昇して、油圧シリンダ(13)の収縮速度が徐々に加速する。そして、ポンプ圧力は軸設定圧力以上となり、その後も軸設定圧力以上の高い値で推移する。これは、負荷圧が発生しているからである。なお、軸設定圧力は、クランプがワークを固定(把持)するのに必要な圧力(クランプ設定圧力)に設定されている。
また、油圧シリンダ(13)のロッド室(13b)の圧力(以下、軸圧力という。)は、ポンプ圧力よりも少し遅れて上昇していき、軸設定圧力以上となる。そして、この軸圧力も、ポンプ圧力と同様、負荷圧の発生により軸設定圧力以上の高い値で推移する。一方、油圧シリンダ(13)のヘッド室(13a)の圧力(以下、背圧という。)も、負荷圧の発生により、軸圧力とほぼ同じタイミングで上昇していき、その後は比較的高い一定の値で推移する。
このように、油圧シリンダ(13)の収縮動作時に負荷圧が発生する場合、その収縮動作中はポンプ圧力、軸圧力および背圧が比較的高い値で推移することとなる。なお、モータ(12)の回転速度は、ポンプ圧力とほぼ同様に推移する。
そして、油圧シリンダ(13)のシリンダロッド(13c)がストロークエンド付近(手前)になるとクッション機構によるクッション作用を受ける(図3のt1時)。この状態では、依然としてポンプ圧力および軸圧力は何れも軸設定圧力以上の値のままである。一方、背圧は、油圧シリンダ(13)のシリンダロッド(13c)がクッション作用を受けると、所定の降圧レベル以下に低下して最終的にほぼゼロとなる。つまり、油圧シリンダ(13)のヘッド室(13a)から作動油が殆ど排出され、第2配管(14b)および第4配管(14d)における作動油の圧力が油タンク(16)の圧力と均圧してほぼゼロとなる。
そして、コントローラ(20)では、ポンプ圧力および軸圧力の何れもが軸設定圧力よりも高いと判定され(図2のステップST4およびステップST5)、且つ、背圧が降圧レベルよりも低いと判定される(図2のステップST6)と、油圧シリンダ(13)がストロークエンドに達したと判定される(図3のt1時)。ところが、この時点では実際には油圧シリンダ(13)はストロークエンドに達していない。そこで、本実施形態のコントローラ(20)では、ストロークエンドに達したと判定した後、一定時間油圧ポンプ(11)の運転を継続する(図2のステップST7)。この一定時間の間は、油圧ポンプ(11)から油圧シリンダ(13)へ作動油が供給され続けるため、油圧シリンダ(13)は収縮動作をし続ける。その結果、油圧シリンダ(13)はストロークエンドに達する。そして、一定時間が経過すると(図3のt2時)、ステップST8へ移行し、第1クランプ駆動系統(10A)の方向切換弁(15)がOFFされる。つまり、方向切換弁(15)が第1位置から中立位置へ切り換えられる。これにより、油圧ポンプ(11)から油圧シリンダ(13)への作動油の供給が停止される。このように、本実施形態のストロークエンド検出動作では、ポンプ圧力および軸圧力が軸設定圧力よりも高く且つ背圧が降圧レベルよりも低いと判定されても、直ぐには油圧シリンダ(13)への作動油の供給を停止せずに一定時間(所定時間)の間作動油の供給を継続するようにしている。
なお、本実施形態では、軸設定圧力が本発明に係る第1設定値および第3設定値として用いられ、降圧レベルが本発明に係る第2設定値として用いられている。
続くステップST9では、方向切換弁(15)が中立位置に切り換えられてから所定の待ち時間が経過したか否かが判定され、経過するとステップST10へ移行して油圧ポンプ(11)が停止される。これにより、クランプの閉じ動作制御が終了する。この待ち時間を設けることにより、方向切換弁(15)の切換完了後に油圧ポンプ(11)を停止させることができる。つまり、この待ち時間は、方向切換弁(15)が完全に切り換わるための時間である。なお、この待ち時間は、数十ミリ秒のオーダーであるため、図3および後述する図4には図示を省略している。即ち、図3および図4では、方向切換弁(15)のOFF動作(図2のステップST8)と油圧ポンプ(11)の停止動作(図2のステップST10)とが同時であるように図示している。
次に、上記油圧シリンダ(13)の収縮動作時に負荷圧がそれほど発生しない場合について説明する。この場合も上記と同様に、図2のフローチャートに従ってストロークエンドの検出動作が行われる。第2配管(14b)や第4配管(14d)の配管長が短い場合や配管径が十分大きい場合等、背圧側流路の流通抵抗が小さい場合は負荷圧は殆ど発生しない。この場合は、図4に示すように各圧力が推移する。
具体的に、油圧ポンプ(11)が駆動されると(図4のt0時)、配管抵抗によりポンプ圧力が徐々に上昇して、油圧シリンダ(13)の収縮速度が徐々に加速する。そして、油圧シリンダ(13)が所定の速度まで加速すると、ポンプ圧力は負荷圧が発生していないため軸設定圧力よりもかなり低い値まで低下する。その後、ポンプ圧力は比較的低い一定値で推移する。一方、軸圧力および背圧は、負荷圧が発生していないため、何れも油圧ポンプ(11)の駆動開始からほぼゼロの状態で推移する。
このように、油圧シリンダ(13)の収縮動作時に負荷圧が殆ど発生しない場合、その収縮動作中はポンプ圧力、軸圧力および背圧が比較的低い値またはほぼゼロで推移することとなる(図4のt0〜t1)。なお、モータ(12)の回転速度は、ポンプ圧力とは異なり、ほぼ所定の値で推移する。
その後、油圧シリンダ(13)がストロークエンド付近(手前)になるとクッション機構によるクッション作用を受ける(図4のt1時)。そうすると、ポンプ圧力および軸圧力は何れも徐々に上昇していき軸設定圧力に達する(図4のt2時)。その間、背圧は変わらずほぼゼロの状態で推移する(図4のt1〜t2)。
そして、コントローラ(20)では、ポンプ圧力および軸圧力の何れもが軸設定圧力よりも高いと判定され(図2のステップST4およびステップST5)、且つ、背圧が降圧レベルよりも低いと判定される(図2のステップST6)と、油圧シリンダ(13)がストロークエンドに達したと判定される。その後のステップST7以降は、上述した負荷圧が発生する場合と同様である。つまり、ストロークエンドに達したと判定されてから一定時間待機され(図4のt2〜t3)、その間、油圧ポンプ(11)から油圧シリンダ(13)へ作動油が供給され続ける。これにより、油圧シリンダ(13)はストロークエンドに達する。そして、一定時間待機すると(図4のt3)、方向切換弁(15)がOFFされ、待ち時間の後油圧ポンプ(11)が停止される。図4に示すように、収縮動作時に負荷圧が殆ど発生しない場合では、背圧は収縮動作開始からストロークエンドに達するまで降圧レベルよりも低いほぼゼロの状態で推移する。
なお、上記では第1クランプ駆動系統(10A)の運転について説明したが、第1クランプ駆動系統(10A)の運転中に、同様に第2クランプ駆動系統(10B)が運転される複数軸の同時動作においても可能である。
−実施形態の効果−
以上のように、油圧シリンダ(13)の動作時に負荷圧が発生する場合でも発生しない場合でも、ストロークエンドにおいては軸圧力が軸設定圧力以上となり且つ背圧が所定の降圧レベル以下となる。したがって、負荷圧の発生の有無に関係なく、ワークに対する所定のクランプ圧を保持しつつ、油圧シリンダ(13)のストロークエンドを確実に検出することができる。
ここで、軸圧力が軸設定圧力(所定の圧力)以上となったことのみをもってストロークエンドを検出しようとすると、負荷圧が発生しない場合においては検出できるが(図4参照)、負荷圧が発生する場合においては検出できなくなる(図3参照)。また、背圧が所定の降圧レベル以下となったことのみをもってストロークエンドを検出しようとすると、負荷圧が発生する場合においては検出できるが(図3参照)、負荷圧が発生しない場合においては検出できなくなる(図4参照)。そこで、本発明は、軸圧力と背圧の双方を考慮するようにしたので、負荷圧の有無に拘わらず、ストロークエンドを誤検出することなく確実に且つ簡易に検出することができる。しかも、軸圧力が軸設定圧力以上であることから、ワークを所定圧力で固定(把持)した状態でストロークエンドに達したことを検出することができる。
さらに、本実施形態では、ポンプ圧力が軸設定圧力(所定の圧力)以上であることもストロークエンドの判定条件に付加するようにした。したがって、ストロークエンドの誤検出を一層防止することができる。例えば、ワークに外力が作用することにより軸圧力が上昇すると、背圧側の圧力は降圧レベル以下に低下しているためストロークエンドであると誤検出するおそれがある。ところが、ポンプ圧力が軸設定圧力以上であることを条件として付加することにより、上記のように少なくとも外力の作用によるストロークエンドの誤検出を確実に防止することができる。つまり、本発明は、ポンプ圧力を条件に加えることで、油圧シリンダ(13)の動作中におけるストロークエンドを確実に検出することができる。
また、ストロークエンドにクッション機構を備えた油圧シリンダ(13)を対象とする本実施形態では、ポンプ圧力、軸圧力および背圧が上述した所定の圧力条件を満たしても、直ぐには方向切換弁(15)をOFFせずに一定時間(所定時間)待ってからOFFするようにした。これにより、油圧シリンダ(13)がストロークエンドまで確実に達することができる。つまり、所定の圧力条件を満たした後直ぐに方向切換弁(15)をOFFすると、油圧シリンダ(13)がストロークエンドの手前で停止してしまうが、本実施形態ではそれを防止することができる。
また、本実施形態では、第4配管(14d)に可変絞り弁(19)を設けているため、作動油の流量を調整して油圧シリンダ(13)の動作速度を調整することができる。そして、このように背圧側流路に流量調整弁を設けると、流通抵抗が大きくなり負荷圧が増大するが、この場合でもストロークエンドを確実に検出することができる。
なお、本実施形態では、油圧シリンダ(13)の収縮動作においてストロークエンドを検出するようにしたが、伸長動作においてもストロークエンドを確実に検出することができる。その場合、軸圧力はヘッド側圧力センサ(S3)の検出値が用いられ、背圧はロッド側圧力センサ(S2)の検出値が用いられる。
−実施形態の変形例−
この変形例に係る油圧ユニット(10)は、図5に示すように、上記実施形態において可変絞り弁(19)をカウンタバランス弁(21)に変更したものである。さらに、この油圧ユニット(10)は、シリンダロッド(13c)が上下方向に進退する油圧シリンダ(13)を対象とするものである。ここでは、上記実施形態と異なる点について説明する。なお、図5は、油圧ポンプ(11)から方向切換弁(15)までを省略して示しており、図中のAおよびBは方向切換弁(15)のAポートおよびBポートを示す。
具体的に、上記カウンタバランス弁(21)は、第4配管(14d)におけるチェック弁(18)よりも方向切換弁(15)側に設けられている。このカウンタバランス弁(21)は、油圧シリンダ(13)が下降動作(収縮動作)する際に、第4配管(14d)における圧力を一定に保持するためのものである。つまり、カウンタバランス弁(21)は、油圧シリンダ(13)の下降動作の際、その背圧側の圧力(背圧)を一定に保持する背圧保持手段を構成している。なお、このカウンタバランス弁(21)はチェック弁が内蔵されている。
上記油圧シリンダ(13)を下降動作させる場合、油圧ポンプ(11)からの作動油が油圧シリンダ(13)のロッド室(13b)に供給される。この下降動作では、上昇動作とは異なり、油圧ポンプ(11)による油圧以外に自然落下(自重落下)の力が加わる。そのため、このままでは、油圧シリンダ(13)は、流体供給側であるロッド室(13b)の圧力が負圧となり急下降してしまう。ところが、この変形例では、カウンタバランス弁(21)によって油圧シリンダ(13)の背圧が一定に保持される。よって、油圧シリンダ(13)は急下降することなく下降速度が一定に保持される。
そして、この変形例においても、第2配管(14b)や第4配管(14d)の配管長が長い場合や配管径が小さい場合、またカウンタバランス弁(21)による保持圧力(背圧)により、流通抵抗が増大し油圧ポンプ(11)にとって負荷圧が発生する。この場合でも、上記実施形態と同様に、油圧シリンダ(13)がストロークエンドに達したことを確実に検出することができる。なお、この変形例では、カウンタバランス弁(21)以外の背圧保持手段であっても同様の作用効果を奏する。
《その他の実施形態》
上述した実施形態については以下のような構成としてもよい。
例えば、上記実施形態では、ポンプ圧力をストロークエンドの判定条件に加えるようにしたが、省略するようにしてもよい。
また、上記実施形態ではストロークエンドにクッション機構を備えた油圧シリンダ(13)を対象としたが、そのクッション機構を具備しない油圧シリンダを対象とする場合はストロークエンド検出動作について図2のステップST7を省略することができる。即ち、油圧シリンダ(13)においてクッション作用は生じないため、ストロークエンドに達して初めて、ポンプ圧力、軸圧力および背圧が上述した所定の圧力条件(図2のステップST4〜6)を満たすこととなる。逆に言えば、ポンプ圧力等が上述した所定の圧力条件を満たすと、油圧シリンダ(13)はストロークエンドに達していることとなる(図3のt1時、図4のt2時)。したがって、コントローラ(20)では、図2のステップST4〜6においてポンプ圧力等が所定の圧力条件を満たすとストロークエンドに達したと判定して、直ぐに方向切換弁(15)をOFFに切り換える(ステップST8)こととなる。これにより、油圧ポンプ(11)から油圧シリンダ(13)への作動油の供給が停止される。それ以降の動作は、上記実施形態と同様である。
また、上記実施形態では、2つのクランプ駆動系統(10A,10B)を駆動する油圧ユニット(10)について説明したが、これに限らず、クランプとチャックが混在した駆動系統、チャック専用の駆動系統を駆動する油圧ユニットであっても同様の作用効果を得ることができる。
また、本発明は、工作機械以外の装置や、作動油以外の流体を用いる流体圧ユニットであっても同様に適用することができる。
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。