しかしながら、上記特許文献2の油圧ユニットでは、アキュムレータに圧力を蓄える時間(即ち、畜圧時間)が必要であるため、その畜圧時に油圧シリンダの圧力が低下した場合、アキュムレータから油圧シリンダに圧力を供給することができないという問題があった。したがって、常には油圧シリンダの圧力低下を防止することができず、油圧ユニットの信頼性が損なわれるという問題があった。
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、作動油漏れが生じるアクチュエータへのポンプ圧力の供給を停止し、他のアクチュエータへポンプ圧力を供給する場合、作動油漏れが生じるアクチュエータにおいて供給圧力の低下を常に防止することである。
第1の発明は、流体を吐出する流体圧ポンプ(11)と、互いに並列に接続され、上記流体圧ポンプ(11)から流体が供給されて駆動する第1流体圧アクチュエータ(13)および第2流体圧アクチュエータ(23)と、該各流体圧アクチュエータ(13,23)毎に設けられ、上記流体圧ポンプ(11)から流体圧アクチュエータ(13,23)への流体の供給を許容する第1状態と禁止する第2状態とに切り換える切換弁(15,25)とを備えた流体圧ユニットを前提としている。そして、本発明は、上記流体圧ポンプ(11)から流体が上記第1流体圧アクチュエータ(13)の切換弁(15)をバイパスして上記第1流体圧アクチュエータ(13)の流体供給側に流れるバイパス通路(31,32,33)と、上記バイパス通路(31,32,33)を連通状態と遮断状態とに切り換えるバイパス用切換弁(35)と、上記第1流体圧アクチュエータ(13)とその切換弁(15)との間の流体供給側の流体圧力を検出する圧力センサ(37)と、上記第1流体圧アクチュエータ(13)の切換弁(15)が第1状態の場合は、上記バイパス用切換弁(35)を遮断状態に切り換え、上記第1流体圧アクチュエータ(13)の切換弁(15)が第2状態且つ上記第2流体圧アクチュエータ(23)の切換弁(25)が第1状態の場合で、上記圧力センサ(37)の検出値が所定値未満に低下すると、上記バイパス用切換弁(35)を連通状態に切り換える制御手段(40)とを備えているものである。
上記の発明では、制御盤等によって第1流体圧アクチュエータ(13)の運転指示が出されると、バイパス用切換弁(35)は遮断状態のままで、第1流体圧アクチュエータ(13)の切換弁(15)が第1状態に切り換えられる。そうすると、流体圧ポンプ(11)から流体が第1流体圧アクチュエータ(13)に供給されて第1流体圧アクチュエータ(13)が駆動される。そして、第1流体圧アクチュエータ(13)の動作が完了しても、継続して流体圧ポンプ(11)から第1流体圧アクチュエータ(13)に流体が供給される。その後、第2流体圧アクチュエータ(23)の運転指示が出されると、第1流体圧アクチュエータ(13)の切換弁(15)が第2状態に切り換えられ、第2流体圧アクチュエータ(23)の切換弁(25)が第1状態に切り換えられる。なお、バイパス用切換弁(35)は遮断状態のままである。そうすると、第1流体圧アクチュエータ(13)において供給圧力が保圧される一方、第2流体圧アクチュエータ(23)が駆動される。
ここで、第1流体圧アクチュエータ(13)において、流体漏れが生じると、保圧されていた供給圧力(即ち、流体供給側の圧力)が低下していく。つまり、圧力センサ(37)の検出値が低下する。このままでは、第1流体圧アクチュエータ(13)を所定の状態に維持できなくなる。そこで、本発明では、圧力センサ(37)の検出値が低下すると、バイパス用切換弁(35)が連通状態に切り換えられる。そうすると、流体圧ポンプ(11)から吐出された流体の一部はバイパス通路(31,32,33)へ流れ、残りは第2流体圧アクチュエータ(23)に流れる。バイパス通路(31,32,33)に流れた流体は、第1流体圧アクチュエータ(13)の流体供給側に流れて第1流体圧アクチュエータ(13)の供給側の流体室に流れる。これにより、第1流体圧アクチュエータ(13)において、供給圧力が昇圧されるので、供給圧力の低下が防止される。つまり、本発明では、第1流体圧アクチュエータ(13)が保圧されているときに、その圧力(供給圧力)が低下すると、流体圧ポンプ(11)の流体圧力が第1流体圧アクチュエータ(13)の流体供給側に供給(補充)される。さらに言えば、流体圧ポンプ(11)から吐出された流体の一部が第1流体圧アクチュエータ(13)の切換弁(15)をバイパスして第1流体圧アクチュエータ(13)に供給される。
より具体的に、上記の発明では、流体圧ポンプ(11)から第1流体圧アクチュエータ(13)にその切換弁(15)を通じて供給されている場合、制御手段(40)によってバイパス用切換弁(35)が遮断状態に切り換えられる。これにより、第1流体圧アクチュエータ(13)が駆動される。また、流体圧ポンプ(11)から流体が第1流体圧アクチュエータ(13)には供給されず、第2流体圧アクチュエータ(23)へ供給されている状態において、第1流体圧アクチュエータ(13)において保圧されている圧力(供給圧力)が低下すると、制御手段(40)によってバイパス用切換弁(35)が連通状態に切り換えられる。これにより、第1流体圧アクチュエータ(13)の流体供給側に圧力が供給されるので、その供給圧力の低下が防止される。
第2の発明は、上記第1の発明において、上記第1流体圧アクチュエータ(13)の切換弁(15)は、上記流体圧ポンプ(11)から流体が上記第1流体圧アクチュエータ(13)の2つの流体室(13a,13b)の一方に供給される状態と他方の流体室(13b,13a)に供給される状態とに切換可能に構成されている。そして、上記バイパス通路(31,32,33)は、上記流体圧ポンプ(11)の吐出側と上記バイパス用切換弁(35)とに繋がる第1通路(31)、上記バイパス用切換弁(35)と上記第1流体圧アクチュエータ(13)の各流体室(13a,13b)側とに繋がる第2通路(32)および第3通路(33)を備える一方、上記バイパス用切換弁(35)は、遮断状態として上記第1通路(31)と上記第2通路(32)および上記第3通路(33)とを遮断する状態と、連通状態として上記第1通路(31)と上記第2通路(32)とを連通させる状態および上記第1通路(31)と上記第3通路(33)とを連通させる状態の何れかの状態とに切換可能に構成されている。
上記の発明では、第1流体圧アクチュエータ(13)が例えば油圧シリンダである場合、第1流体圧アクチュエータ(13)の切換弁(15)の切換により、流体圧ポンプ(11)から流体が油圧シリンダのヘッド側の流体室(13a)に供給される状態と、ロッド側の流体室(13b)に供給される状態とに切り換わる。そして、例えば、第2通路(32)は油圧シリンダのヘッド側に繋がり、第3通路(33)は油圧シリンダのロッド側に繋がっている。つまり、油圧シリンダにおいて、ヘッド側が流体供給側になる場合と、ロッド側が流体供給側になる場合とに切り換わる。
ここで、第1流体圧アクチュエータ(13)への流体の供給が禁止されて保圧されているときに、例えば流体供給側であるヘッド側の圧力(供給圧力)が低下すると、第1通路(31)と第2通路(32)とが連通するようにバイパス用切換弁(35)が切り換えられる。逆に、流体供給側であるロッド側の圧力(供給圧力)が低下すると、第1通路(31)と第3通路(33)とが連通するようにバイパス用切換弁(35)が切り換えられる。これにより、確実に第1流体圧アクチュエータ(13)の供給圧力の低下が防止される。
第3の発明は、上記第1の発明において、上記バイパス通路(31,32,33)には、流体の流量を絞るための絞り手段(34)が設けられているものである。
上記の発明では、流体圧ポンプ(11)からバイパス通路(31,32,33)に流れた流体が絞り手段(34)によって絞られる。そうすると、第1流体圧アクチュエータ(13)の流体供給側に供給される流体流量が減少する。これにより、第1流体圧アクチュエータ(13)の流体供給側における圧力の急激な上昇が抑制される。したがって、第1流体圧アクチュエータ(13)を駆動する場合の流体圧ポンプ(11)の吐出圧力が第2流体圧アクチュエータ(23)を駆動する場合の流体圧ポンプ(11)の吐出圧力よりも低く設定されている場合、第2流体圧アクチュエータ(23)の駆動用の高圧の流体がバイパス通路(31,32,33)に流れることになるが、第1流体圧アクチュエータ(13)における急激な昇圧を抑制することができる。
第4の発明は、上記第2の発明において、2つの入口と共通の出口とを有し、該各入口が上記第2通路(32)および第3通路(33)にそれぞれ接続されるシャトル弁(36)を備えているものである。そして、上記圧力センサ(37)は、上記シャトル弁(36)の出口に設けられているものである。
上記の発明では、第2通路(32)の流体圧力がシャトル弁(36)の一方の入口に作用し、第3通路(33)の流体圧力がシャトル弁(36)の他方の入口に作用する。シャトル弁(36)では、作用する2つの入口圧力のうち高い方の圧力が出口に作用する。この出口圧力が圧力センサ(37)によって検出される。したがって、第1流体圧アクチュエータ(13)の何れの流体室(13a,13b)が流体供給側に切り換わっても、常に、流体供給側の流体圧力がシャトル弁(36)の出口に作用することになり、その圧力が圧力センサ(37)によって検出される。これにより、第1流体圧アクチュエータ(13)における供給圧力の低下が確実に検出される。
第5の発明は、上記第1の発明において、上記流体圧ポンプ(11)が油圧ポンプであり、上記流体圧アクチュエータ(13,23)が油圧シリンダである。
上記の発明では、油圧ポンプ(11)から作動油が供給されることにより、油圧シリンダ(13,23)が伸長動作または収縮動作を行う。そして、本発明では、油圧シリンダ(13)において作動油漏れによる供給圧力の低下が防止される。
第6の発明は、上記第5の発明において、上記第1流体圧アクチュエータ(13)の駆動対象が工作機械におけるチャックである。
上記の発明では、チャックが油圧シリンダ(13)の動作によって開閉動作する。工作機械において、チャックは、他のクランプ等の駆動対象に比べて作動油漏れが生じやすい。本発明では、このチャック用の油圧シリンダ(13)の供給圧力の低下が防止される。したがって、チャックが所定の状態に確実に保持される。
以上のように、本発明によれば、流体圧ポンプ(11)から吐出された流体が第1流体圧アクチュエータ(13)の切換弁(15)をバイパスして第1流体圧アクチュエータ(13)の流体供給側(即ち、高圧側)に流れるバイパス通路(31,32,33)と、そのバイパス通路(31,32,33)を連通または遮断するバイパス用切換弁(35)とを設けるようにした。したがって、切換弁(15)を遮断して第1流体圧アクチュエータ(13)を保圧している場合に、その第1流体圧アクチュエータ(13)において流体漏れにより供給圧力(即ち、流体供給側の圧力)が低下すると、流体圧ポンプ(11)の流体の一部を第1流体圧アクチュエータ(13)に供給することができる。そうすると、第1流体圧アクチュエータ(13)の供給圧力が昇圧される。これにより、第1流体圧アクチュエータ(13)の供給圧力の低下を防止することができる。つまり、本発明では、流体漏れが著しく多い流体圧アクチュエータに対して本発明に係るバイパス通路(31,32,33)やバイパス用切換弁(35)を設けることにより、その流体圧アクチュエータの保圧時にその圧力が低下すると、流体圧ポンプ(11)の流体圧力がその流体圧アクチュエータに圧力供給される。その結果、第1流体圧アクチュエータ(13)の駆動対象を所定の状態に維持することができる。また、従来のアキュムレータによる圧力供給に比べて、供給圧力が低下すると直ちに圧力供給することができ。よって、流体圧ユニットの信頼性を向上させることができる。
また、第2の発明によれば、バイパス通路(31,32,33)およびバイパス用切換弁(35)を第1流体圧アクチュエータ(13)の2つの流体室(13a,13b)の何れにも流体が供給されるように構成した。したがって、第1流体圧アクチュエータ(13)において流体供給側(即ち、高圧側)が何れの流体室(13a,13b)側に切り換わっても、バイパス用切換弁(35)の切換によって流体を第1流体圧アクチュエータ(13)の流体供給側に供給することができる。よって、このように流体供給側が切り換わる流体圧アクチュエータにおいても、確実に供給圧力の低下を防止することができる。
また、第3の発明によれば、バイパス通路(31,32,33)に絞り手段(34)を設けるようにしたので、流体圧ポンプ(11)からバイパス通路(31,32,33)に供給された流体流量を減少させることができる。したがって、第1流体圧アクチュエータ(13)の供給圧力が第2流体圧アクチュエータ(23)の供給圧力よりも低く設定されている場合、バイパス通路(31,32,33)には第2流体圧アクチュエータ(23)用の高圧の流体が流体圧ポンプ(11)から供給されるが、その流体が絞り手段(34)によって絞られるため、第1流体圧アクチュエータ(13)には比較的少量の流体が供給される。これにより、第1流体圧アクチュエータ(13)における圧力の急激な上昇を抑制することができる。その結果、第1流体圧アクチュエータ(13)の駆動対象の保持力を適切にすることができ、加工物の破損等を防止することができる。
また、第4の発明によれば、第2通路(32)と第3通路(33)の間にシャトル弁(36)を設け、そのシャトル弁(36)の出口に圧力センサ(37)を設けるようにした。したがって、常に、第1流体圧アクチュエータ(13)の流体供給側(即ち、高圧側)の圧力を検出することができる。これにより、第1流体圧アクチュエータ(13)の供給圧力が低下すると、確実に第1流体圧アクチュエータ(13)に圧力供給することができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態の油圧ユニット(10)は、本発明に係る流体圧ユニットを構成している。この油圧ユニット(10)は、例えば旋盤、研磨盤、表面仕上げ機械、削り盤、マシニングセンタ等の工作機械に用いられる。工作機械は、図示しないが、例えばチャック、心押台クランプ、刃物台クランプ等のように、ワークや工具を固定する複数の固定装置(駆動対象)を有し、これら固定装置を油圧ユニット(10)のアクチュエータで駆動する。ここでは、チャックとクランプを駆動するものとして説明する。
上記油圧ユニット(10)は、油圧ポンプ(11)およびモータ(12)と、これらによって駆動される2つの駆動系統(A,B)とを備えている。この2つの駆動系統(A,B)は、チャックを動作させるためのチャック系統(A)と、クランプを動作させるためのクランプ系統(B)である。
上記油圧ポンプ(11)は、流体としての作動油を油タンク(16)から吸入して吐出する流体圧ポンプを構成している。この油圧ポンプ(11)は、例えばギアポンプ、トロコイドポンプ、ベーンポンプ、ピストンポンプ等の固定容量型ポンプで構成されている。
上記モータ(12)は、油圧ポンプ(11)を駆動する可変速モータである。このモータ(12)は、自身に内蔵されている回転速度制御用エンコーダ(図示せず)により油圧ポンプ(11)の吐出流量に相当する回転速度を検出している。
上記チャック系統(A)は、チャック用シリンダ(13)とチャック用切換弁(15)を備えている。クランプ系統(B)は、クランプ用シリンダ(23)とクランプ用切換弁(25)を備えている。
上記チャック用シリンダ(13)は、チャックを動作させる油圧シリンダであり、本発明に係る第1流体圧アクチュエータを構成している。クランプ用シリンダ(23)は、クランプを動作させる油圧シリンダであり、本発明に係る第2流体圧アクチュエータを構成している。これらシリンダ(13,23)は、ピストンによって区画されたヘッド室(13a,23a)およびロッド室(13b,23b)を有し、油圧ポンプ(11)から作動油が供給されて駆動する。各シリンダ(13,23)は、ヘッド室(13a,23a)に作動油が供給されると伸長動作し、チャック等を開き動作させる。また、各シリンダ(13,23)は、ロッド室(13b,23b)に作動油が供給されると収縮動作し、チャック等を閉じ動作させる。
上記各シリンダ(13,23)のヘッド室(13a,23a)およびロッド室(13b,23b)と、油圧ポンプ(11)の吐出側および油タンク(16)とは、油圧配管(14,24)によって接続されている。
上記チャック用切換弁(15)およびクランプ用切換弁(25)は、上記油圧配管(14,24)の途中に設けられ、該油圧配管(14,24)を連通状態と遮断状態とに切り換える切換弁を構成している。これら切換弁(15,25)は、第1電磁ソレノイド(15a,25a)および第2電磁ソレノイド(15b,25b)を有する4ポート3位置スプリングセンタ式電磁切換弁である。各切換弁(15,25)は、4ポートのうち、Aポートがシリンダ(13,23)のヘッド室(13a,23a)に、Bポートがシリンダ(13,23)のロッド室(13b,23b)に、Pポートが油圧ポンプ(11)の吐出側に、Rポートが油タンク(16)にそれぞれ油圧配管(14,24)を介して連通している。つまり、チャック用シリンダ(13)およびチャック用切換弁(15)と、クランプ用シリンダ(23)およびクランプ用切換弁(25)とは、油圧ポンプ(11)に対して互いに並列に接続されている。
上記各切換弁(15,25)は、第1電磁ソレノイド(15a,25a)および第2電磁ソレノイド(35b)のON/OFF動作によって、中立位置と第1位置(図1において左側の位置)と第2位置(図1において右側の位置)とに切り換わる。切換弁(15,25)は、中立位置では4つのポートが互いに遮断状態になり、第1位置ではPポートとAポートが連通し且つBポートとRポートが連通し、第2位置ではPポートとBポートが連通し且つAポートとRポートが連通する。
また、上記クランプ系統(B)は、パイロット式のチェック弁(26,27)を2つ備えている。これら2つのチェック弁(26,27)は、クランプシリンダ(13,23)のヘッド室(23a)およびロッド室(23b)に繋がる油圧配管(24)にそれぞれ設けられている。さらに、クランプ系統(B)には、クランプ用シリンダ(23)のヘッド室(23a)側の圧力を検出する圧力センサ(28)が設けられている。この圧力センサ(28)は、クランプ用シリンダ(23)のヘッド室(23a)とチェック弁(26)との間の油圧配管(24)に設けられている。
上記油圧ポンプ(11)の吐出側の油圧配管(14)には、油圧ポンプ(11)の吐出圧力を検出する圧力センサ(17)が設けられている。なお、クランプ系統(B)の油圧ポンプ(11)側の油圧配管(24)は、チャック系統(A)の油圧配管(14)における上記圧力センサ(17)の接続位置に接続されている。
そして、上記チャック系統(A)には、本発明の特徴として、圧力補償回路(30)が設けられている。この圧力補償回路(30)は、流量調整弁(34)と、圧力補償用切換弁(35)と、シャトル弁(36)と、圧力センサ(37)とを備えている。
上記圧力補償用切換弁(35)は、上述したチャック用切換弁(15)やクランプ用切換弁(25)と同様に、2つの電磁ソレノイド(35a,35b)を有する4ポート3位置スプリングセンタ式電磁切換弁である。圧力補償用切換弁(35)のPポートは、ポンプ側配管(31)を介して、油圧ポンプ(11)の吐出側の油圧配管(14)における圧力センサ(17)よりも下流に連通している。該切換弁(35)のAポートは、ヘッド側配管(32)を介して、チャック用シリンダ(13)のヘッド室(13a)側の油圧配管(14)に連通している。該切換弁(35)のBポートは、ロッド側配管(33)を介して、チャック用シリンダ(13)のロッド室(13b)側の油圧配管(14)に連通している。該切換弁(35)のRポートは、閉塞されている。つまり、圧力補償用切換弁(35)とチャック用切換弁(15)は、互いに並列に接続されている。
なお、上記ポンプ側配管(31)、ヘッド側配管(32)およびロッド側配管(33)は、それぞれ本発明に係る第1通路、第2通路および第3通路であり、これら3つの配管(31,32,33)がバイパス通路を構成している。また、上記圧力補償用切換弁(35)は、本発明に係るバイパス用切換弁を構成している。
上記圧力補償用切換弁(35)は、第1電磁ソレノイド(35a)および第2電磁ソレノイド(35b)のON/OFF動作によって、中立位置と第1位置(図1において左側の位置)と第2位置(図1において右側の位置)とに切り換わる。圧力補償用切換弁(35)は、中立位置では4つのポートが互いに遮断状態になり、第1位置ではPポートとAポートが連通し且つBポートとRポートが連通し、第2位置ではPポートとBポートが連通し且つAポートとRポートが連通する。
上記流量調整弁(34)は、ポンプ側配管(31)の途中に設けられている。この流量調整弁(34)は、いわゆる固定式の絞り弁であり、作動油の流量を絞るためのものである。つまり、この流量調整弁(34)は、本発明に係る絞り手段を構成している。
上記シャトル弁(36)は、2つの入口と、共通の出口とを備えている。シャトル弁(36)は、第1の入口側(図1において上側)である一端がヘッド側配管(32)に接続され、第2の入口側(図1において下側)である他端がロッド側配管(33)に接続されている。一方、シャトル弁(36)の出口側(図1において左側)には、上記圧力センサ(37)が接続されている。このシャトル弁(36)は、2つの入口のうち圧力の高い入口が出口と連通するように自動的に切り換わるものである。そして、シャトル弁(36)の出口側の圧力が圧力センサ(37)によって検出される。つまり、圧力補償回路(30)において、圧力センサ(37)は、チャック用シリンダ(13)のヘッド室(13a)側の圧力およびロッド室(13b)側の圧力のうち、常に高い方の圧力を検出するように構成されている。
上記油圧ユニット(10)は、制御手段であるコントローラ(40)を備えている。コントローラ(40)は、モータ(12)の駆動制御や各切換弁(15,25,35)の切換制御を行う。また、コントローラ(40)には、各圧力センサ(17,28,37)の検出値が入力される一方、制御盤(図示せず)から各シリンダ(13,23)の運転指令が入力される。
上記コントローラ(40)は、チャック用切換弁(15)が中立位置に切り換えられている場合において、圧力補償回路(30)の圧力センサ(37)の検出値が所定値未満になると、圧力補償用切換弁(35)を第1位置または第2位置に切り換えるように構成されている。つまり、圧力補償用切換弁(35)は、チャック用シリンダ(13)のヘッド室(13a)側およびロッド室(13b)側のうち高圧側(即ち、流体供給側)の圧力が所定値未満に低下すると、その高圧側の室(13a,13b)と油圧ポンプ(11)の吐出側とが連通するように切り換わる。これにより、油圧ポンプ(11)から吐出された作動油がチャック用シリンダ(13)の高圧側のヘッド室(13a)またはロッド室(13b)へ供給され、その圧力の低下が防止される。つまり、圧力補償回路(30)は、油圧ポンプ(11)の流体圧力がチャック用切換弁(15)をバイパスしてチャック用シリンダ(13)へ供給されるように構成されている。なお、コントローラ(40)の詳細な制御動作については、後述する。
−運転動作−
次に、油圧ユニット(10)の運転動作およびコントローラ(21)の制御動作について図2から図5を参照しながら説明する。
本実施形態の油圧ユニット(10)は、チャックの駆動とクランプの駆動とを単独に行う。また、本実施形態に係る工作機械のチャックは、加工物(ワーク)の形状に応じて、その加工物の固定方法が異なる。つまり、チャックは、円柱形等の加工物に対しては閉じ動作により加工物を固定し(把持し)、筒状等の加工物に対しては内側から開き動作により内張りして加工物を固定する。ここでは、チャックを閉じ動作させて加工物を固定する場合について説明する。
先ず、図2に示すように、チャックを閉じ動作させる運転が行われる。つまり、制御盤からコントローラ(40)にチャックの閉じ動作指令が入力される。この運転では、コントローラ(40)によって、チャック用切換弁(15)が第2位置に、クランプ用切換弁(25)および圧力補償用切換弁(35)が中立位置にそれぞれ切り換わる。そして、コントローラ(40)は、油圧ポンプ(11)の吐出圧力がチャック用の設定圧力(例えば、2MPa)になるように、モータ(12)を駆動制御する。モータ(12)が駆動されると、油圧ポンプ(11)から作動油がチャック用シリンダ(13)のロッド室(13b)にのみ供給される。そうすると、チャック用シリンダ(13)が収縮動作を行う。これにより、チャックが閉じて加工物が固定(把持)される。
つまり、上記の運転において、チャック用シリンダ(13)のロッド室(13b)側の圧力(以下、ロッド圧という。)は、油圧ポンプ(11)の吐出圧力と略同じであり、ヘッド室(13a)側の圧力(以下、ヘッド圧という。)よりも高圧になる。したがって、シャトル弁(36)では上側の入口圧力よりも下側の入口圧力が高くなるので、その下側の入口圧力(即ち、油圧ポンプ(11)の吐出圧力と略同じ圧力)が圧力センサ(37)によって検出される。
チャックによる加工物の固定が完了しても、継続して(即ち、図2の状態のまま)油圧ポンプ(11)からチャック用シリンダ(13)へ作動油が供給される。そして、制御盤からコントローラ(40)にクランプの開き動作指令が入力されると、図3に示すように、クランプを開き動作させる運転に切り換えられる。この運転では、コントローラ(40)によって、チャック用切換弁(15)が中立位置に、クランプ用切換弁(25)が第1位置にそれぞれ切り換えられる。なお、圧力補償用切換弁(35)は中立位置のままで保持される。そして、コントローラ(40)は、油圧ポンプ(11)の吐出圧力がクランプ用の設定圧力(例えば、4MPa)になるように、モータ(12)を駆動制御する。つまり、クランプ駆動時の方がチャック駆動時よりも油圧ポンプ(11)の吐出圧力が高く設定される。この運転では、油圧ポンプ(11)から作動油がクランプ用シリンダ(23)のヘッド室(23a)にのみ供給される。そうすると、クランプ用シリンダ(23)が伸長動作を行う。これにより、クランプが開く。
一方、上記クランプの動作中において、チャック用シリンダ(13)のロッド室(13b)側は閉塞されているため、そのロッド圧がチャック用の設定圧力(2MPa)に保圧される。これにより、チャックが加工物を固定した状態に保持される。ところが、チャック用シリンダ(13)では、作動油の漏れが比較的多く生じる。そして、作動油が漏れると、チャック用シリンダ(13)のロッド圧が低下していく。即ち、圧力補償回路(30)の圧力センサ(37)の検出値が低下していく。したがって、このままでは、チャックの閉じ力(把持力)が低下し、加工物を固定できなくなってしまう。
そこで、本実施形態では、図4に示すように、圧力補償回路(30)の圧力センサ(37)の検出値が所定値未満に低下すると、コントローラ(40)によって圧力補償用切換弁(35)が第2位置に切り換えられる。そうすると、油圧ポンプ(11)から吐出された作動油の一部は、上記の運転と同様にクランプ用シリンダ(23)のヘッド室(23a)に供給され、残りの作動油は、圧力補償回路(30)に供給される。
具体的に、圧力補償回路(30)に供給された作動油は、ポンプ側配管(31)を通って圧力補償用切換弁(35)に流入するが、その際に流量調整弁(34)にて流量が絞られる。圧力補償用切換弁(35)に流入した作動油は、ロッド側配管(33)を通ってチャック用シリンダ(13)のロッド室(13b)に供給される。そうすると、チャック用シリンダ(13)のロッド圧が昇圧される。これにより、チャック用シリンダ(13)のロッド圧の低下が防止され、チャックの所定の閉じ力(把持力)が維持される。つまり、本実施形態では、油圧ポンプ(11)の流体圧力が圧力補償回路(30)によってチャック用シリンダ(13)のロッド室(13b)に供給(補充)される。そして、そのロッド圧が所定値以上に上昇する(即ち、圧力センサ(37)の検出値が所定値以上になる)と、コントローラ(40)によって圧力補償用切換弁(35)が中立位置に切り換えられる。これにより、油圧ポンプ(11)からチャック用シリンダ(13)への圧力供給が停止される。
ここで、油圧ポンプ(11)から圧力補償回路(30)に供給される流体圧力は、クランプ用の設定圧力になっている。つまり、チャックが加工物を固定するのに必要な圧力より高い流体圧力が圧力補償回路(30)に供給される。この流体圧力がそのままチャック用シリンダ(13)へ供給されると、そのロッド圧が急激に上昇してチャックの閉じ力が過剰になってしまう。そのため、加工物が破損するおそれがある。ところが、本実施形態では、圧力補償回路(30)に供給された作動油は流量調整弁(34)で絞られるため、チャック用シリンダ(13)のロッド圧の急激な上昇が抑制される。これにより、チャックの閉じ力が適切になり、加工物が破損するおそれがなくなる。
次に、チャックが開き動作して加工物を固定する場合の圧力補償回路(30)の動作について図5を参照しながら説明する。
この場合、油圧ポンプ(11)からチャック用シリンダ(13)のヘッド室(23a)に作動油が供給されることにより、チャック用シリンダ(13)が伸長動作してチャックが開く。つまり、この場合、チャック用シリンダ(13)において、ヘッド圧がロッド圧より高圧になる。したがって、シャトル弁(36)においては、上側の入口圧力(即ち、チャック用シリンダ(13)のヘッド圧)が圧力センサ(37)によって検出される。そして、図3に示すクランプの動作時においては、チャック用シリンダ(13)のヘッド圧が設定圧力(2MPa)に保圧される。
この状態において、圧力センサ(37)の検出値が所定値未満になると、図5に示すようにコントローラ(40)が圧力補償用切換弁(35)が第1位置に切り換える。そうすると、油圧ポンプ(11)から吐出された作動油の一部が流量調整弁(34)で絞られた後、ヘッド側配管(32)を介してチャック用シリンダ(13)のヘッド室(13a)に供給される。これにより、油圧ポンプ(11)の流体圧力がチャック用シリンダ(13)に供給(補給)されるので、そのヘッド圧が昇圧される。その結果、チャック用シリンダ(13)のヘッド圧の低下が防止され、チャックの所定の開き力が確保される。
また、本実施形態では、クランプ用シリンダ(23)のヘッド側およびロッド側にそれぞれチェック弁(26,27)が設けられている。したがって、クランプ用切換弁(25)を中立位置に切り換えてクランプを所定の開いた状態に保持する場合、クランプ用シリンダ(23)において作動油の漏れは殆ど生じず、そのヘッド圧は保圧される。これにより、クランプの所定の開き力が維持される。ところが、万一作動油漏れが生じてクランプ用シリンダ(23)のヘッド圧が低下した場合には、そのクランプ用シリンダ(23)へ油圧ポンプ(11)から圧力供給される。その場合について、以下に詳細に説明する。
上述したように、クランプ用切換弁(25)を中立位置に切り換えてクランプを所定の開いた状態に保持する一方、チャック用切換弁(15)を第2位置に切り換えて油圧ポンプ(11)からチャック用シリンダ(13)へ圧力供給している場合を考える。つまり、クランプ用シリンダ(23)の供給圧を保圧しつつ、チャック用シリンダ(13)へ油圧ポンプ(11)の圧力を供給し続けてチャックを所定の閉じ状態に維持している場合である。この状態で、クランプ用シリンダ(23)のヘッド圧が低下すると(即ち、圧力センサ(28)の検出値が所定値未満になると)、コントローラ(40)は、チャック用切換弁(15)を中立位置に切り換えると共に、クランプ用切換弁(25)を第1位置に切り換える。なお、油圧ポンプ(11)の吐出圧力はクランプ用の設定圧力(4MPa)に切り換えられる。これにより、油圧ポンプ(11)の流体圧力がクランプ用シリンダ(23)へ供給され、そのヘッド圧が昇圧される。その結果、クランプの開き力が確保されてクランプが所定の状態に維持される。
ここで、油圧ポンプ(11)からクランプ用シリンダ(23)へ圧力供給されているときに、チャック用シリンダ(13)で作動油漏れが生じてそのロッド圧が低下すると、上述したように、圧力補償用切換弁(35)が第2位置に切り換えられる。これにより、チャック用シリンダ(13)のロッド圧の低下が防止され、チャックの所定の閉じ力が確保される。つまり、このような場合でも、圧力補償回路(30)によって油圧ポンプ(11)の流体圧力がチャック用シリンダ(13)へ供給される。
−実施形態の効果−
本実施形態では、チャック系統(A)において、ポンプ側配管(31)、ヘッド側配管(32)およびロッド側配管(33)と、圧力補償用切換弁(35)と、圧力センサ(37)とを設けるようにした。つまり、本実施形態では、油圧ポンプ(11)から吐出された作動油の一部がチャック用切換弁(15)をバイパスしてチャック用シリンダ(13)の高圧側(即ち、流体供給側)に供給される圧力補償回路(30)を設けるようにした。したがって、チャック用シリンダ(13)を保圧している場合に、チャック用シリンダ(13)において作動油漏れによって供給圧力が低下すると、油圧ポンプ(11)の作動油の一部をチャック用シリンダ(13)に供給することができる。これにより、チャック用シリンダ(13)の供給圧力が昇圧されるので、供給圧力の低下を防止することができる。その結果、チャックを所定の状態に維持、即ちチャックの必要な閉じ力または開き力を保持することができる。
また、本実施形態では、ポンプ側配管(31)に流量調整弁(34)を設けるようにしたので、油圧ポンプ(11)から圧力補償回路(30)に供給された作動油量を絞る(減少させる)ことができる。したがって、油圧ポンプ(11)からクランプ用シリンダ(23)用の高い流体圧力がチャック用シリンダ(13)に供給されるのを防止することができる。これにより、チャック用シリンダ(13)における圧力の急激な上昇を抑制することができる。その結果、チャックの閉じ力または開き力を適切にすることができ、加工物の破損等を防止することができる。
また、本実施形態の圧力補償回路(30)では、ヘッド側配管(32)とロッド側配管(33)との間にシャトル弁(36)を設け、そのシャトル弁(36)の出口に圧力センサ(37)を設けるようにした。したがって、常に、チャック用シリンダ(13)の高圧側(即ち、流体供給側)の圧力を検出することができる。これにより、チャック用シリンダ(13)の供給圧力が低下すると、確実にチャック用シリンダ(13)に圧力供給することができる。
《その他の実施形態》
上述した実施形態については以下のような構成としてもよい。
例えば、上記実施形態では、チャック系統(A)が1つの場合について説明したが、複数のチャック系統を備えた油圧ユニットについても同様に適用することができる。例えば、メインチャック用とサブチャック用の2つのチャック系統が並列に設けられている場合、各チャック系統に対して圧力補償回路(30)が設けられる。
また、上記実施形態では、流体圧アクチュエータとして油圧シリンダを用いている油圧ユニット(10)について説明したが、本発明は、それ以外の油圧アクチュエータ、流体圧アクチュエータを用いた流体圧ユニットに適用してもよいことは勿論である。
また、本発明は、工作機械以外の装置や、作動油以外の流体を用いる流体圧ユニットであっても同様に適用することができる。
なお、上記実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。