JP5102549B2 - X線分析装置及びx線分析方法 - Google Patents

X線分析装置及びx線分析方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5102549B2
JP5102549B2 JP2007182827A JP2007182827A JP5102549B2 JP 5102549 B2 JP5102549 B2 JP 5102549B2 JP 2007182827 A JP2007182827 A JP 2007182827A JP 2007182827 A JP2007182827 A JP 2007182827A JP 5102549 B2 JP5102549 B2 JP 5102549B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
ray
sample
rays
conduit
tip
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2007182827A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2008039772A (ja
Inventor
幸一 辻
晃典 松田
薫 堤本
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Japan Science and Technology Agency
National Institute of Japan Science and Technology Agency
Original Assignee
Japan Science and Technology Agency
National Institute of Japan Science and Technology Agency
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Japan Science and Technology Agency, National Institute of Japan Science and Technology Agency filed Critical Japan Science and Technology Agency
Priority to JP2007182827A priority Critical patent/JP5102549B2/ja
Publication of JP2008039772A publication Critical patent/JP2008039772A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5102549B2 publication Critical patent/JP5102549B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Description

本発明は、生体試料や固体試料、液体試料、液体中の固体試料などに対し、元素分析や定性分析、定量分析、化学結合状態の測定などを行なうX線分析方法とそれに用いる装置に関する。
試料表面の元素分析や定性分析、定量分析を行なう方法として、固体試料の表面に電子線を照射し、生じた二次電子によって表面から深さ数nmの領域の元素分析を行なうFE−AES(電界放射型オージェ電子分光分析)、固体試料に高速のイオンビームを照射し、スパッタリング現象によって試料最表面の元素分析を行なうTOF−SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析)、試料に電子線を照射し、生じた特性X線によって試料表面の元素分析を行なうEPMA(X線マイクロアナリシス)などが知られている。
測定対象物にX線ビームを照射し、それによって対象物から生じた蛍光X線を検出して試料を構成する元素を同定する蛍光X線分析も表面分析手法の1種である。
蛍光X線分析法により試料内部の元素分析を行なう場合、一般には試料の断面を切り出してその表面を測定対象とする方法がとられているが、切り出す際に試料を破壊してしまう。
非破壊的に試料内部の微小空間の元素分析を行なう方法としては、励起側と検出器側に2つのX線集光レンズを配置し、試料内部に共焦点が来るように調節することにより、試料内の3次元蛍光X線分析を行なう方法が提案されている(非特許文献1参照。)。
その方法は、試料の外部からX線ビームを照射し、そのX線により励起されて試料から大気(又は真空)側に放射された蛍光X線のみを検出するものである。しかし、この方法ではX線強度は大幅に減衰してしまい、試料からのX線の侵入深さや蛍光X線の検出深さは、X線のエネルギーや試料の種類にもよるが、数μmから数mm程度と浅くなってしまう。
Proceeding of SPIE 4144 (2000)174-182
また、上述の方法では2つのX線集光レンズを共焦点が目的部位で交わるように配置することが必要になるが、目的部位に共焦点を合わせることは困難であるとともに、その位置を調節するのは煩雑である。
そこで本発明は、煩雑な操作を行なうことなしに試料の元素分析を行なうことができるX線分析装置を提供することを目的とする。
本発明のX線分析装置は、X線ビームを先端から試料に照射するX線照射機構と、試料から放出された蛍光X線を検出するX線検出器と、基端部にX線検出器を備え、試料に対してX線照射機構と同じ側に配置され、先端から入射した蛍光X線を内部通路を通ってX線検出器に導くX線検出用導管とを備えている。そして、X線照射機構の先端部とX線検出用導管の先端部は試料にX線ビームを照射し、試料からの蛍光X線が入射するように一つに合体されている。
「同じ側に配置」とは、X線照射機構とX線検出用導管を試料表面の例えば上面側のみに配置することを意味する。
バックグラウンドを低下させた二次X線ビームを照射するため、X線照射機構の基端部は一次X線源に結合され、X線照射機構内には一次X線源からの一次X線ビームを受けて二次X線ビームを発生し、先端部を経て試料に照射する二次ターゲットが備えられていることが好ましい。
二次X線ビームを効率よく試料に照射するためには、X線照射機構で試料にX線を照射する部分とX線検出用導管は同軸上に一体化されて、二次ターゲットに穴が設けられ、試料からの蛍光X線はその穴を通ってX線検出器へ導かれるようにすればよい。その穴があけられている位置は例えば、二次ターゲットの中心部であるが、それに限られない。
ここでの「同軸上」とは、試料に照射されるX線ビームの光軸と試料から発せられる蛍光X線の光軸がほぼ一致していることを言うが、完全に一致していなくてもよい。
また、装置を小さくするために、X線照射機構で試料にX線を照射する部分はX線検出用導管内に配置されているようにしてもよい。
微細部位を測定する場合、導管の外径は小さく、かつ、導管が占める容積は小さい方が好ましいので、X線照射機構で試料にX線を照射する部分はX線検出用導管内にその導管とほぼ平行に配置されたX線照射用導管をなし、二次ターゲットはそのX線照射用導管内に配置してもよい。
X線源などの装置を配置するためには充分なスペースが必要になるので、X線照射機構で試料にX線を照射する部分とX線検出用導管を、一つに合体した先端部から両基端部に向かって広がるように角度をもって配置してもよい。
導管内に試料等が侵入するとX線が減衰するので、合体した先端部には開口を閉じるX線透過性保護膜が設けられていることが好ましい。
また、X線透過性保護膜としてはX線を透過できるものであればよいが、一例として高分子膜を挙げることができる。
導管の好ましい一例は先端部が尖端となっているコリメータ、又は医療分野で薬液注入や血液採取などに使用されている注射針である。導管の材質としては、二次ターゲットと同じ材質である方が、余分な不純物蛍光X線ピークが抑えられるため、好ましい。例えば、二次ターゲットをCuで作成した場合、導管もCuで作成すると良い。
また、固体試料に挿入して測定する場合、先端にテーパー(傾斜)のついている針を用いることが好ましい。
試料表面から測定対象部位までの深さは導管の挿入深さにより定まるので、試料表面から数mmから数cm程度、又はそれよりも深い位置にすることもできる。
また、測定対象部位の大きさは試料内に挿入された両導管の先端間の距離により定まるので、直径数mm、又は1mm以下の微小部位とすることもできる。
試料表面の数十μm〜数百μmといった微小部分の元素分析を行いたいという要請もある。そのような要請に応えるための本発明の好ましい形態は、合体した先端部には、X線ビームを試料の微小部分に集光するポリキャピラリーハーフレンズ、及び試料の前記微小部分からの蛍光X線を受光するポリキャピラリーハーフレンズのうちの少なくとも一方を備えているX線分析装置である。
X線照射機構で試料にX線を照射する部分とX線検出用導管が同軸上に一体化されており、二次ターゲットに穴が設けられ、試料からの蛍光X線がその穴を通ってX線検出器へ導かれるようになっている形態においては、ポリキャピラリーハーフレンズは1つのみが設けられ、X線ビームを試料の微小部分に集光するポリキャピラリーハーフレンズと試料の前記微小部分からの蛍光X線を受光するポリキャピラリーハーフレンズを兼ねていることになる。
X線照射機構で試料にX線を照射する部分とX線検出用導管が一つに合体した先端部から両基端部に向かって広がるように角度をもって配置されている形態においては、ポリキャピラリーハーフレンズは、X線照射機構の先端部でX線ビームを試料の微小部分に集光するポリキャピラリーハーフレンズであるか、X線検出用導管の先端部で試料の前記微小部分からの蛍光X線を受光するポリキャピラリーハーフレンズであるか、又はそれらの両方のポリキャピラリーハーフレンズをともに備えたものとなる。
本発明のX線分析方法の第1の局面は、本発明のX線分析装置を用い、その先端部を試料の測定対象部位に接近させる工程と、X線照射機構の先端から試料にX線ビームを照射する工程と、X線ビームにより試料で発生した蛍光X線をX線検出器に導いて検出する工程とを含んでいる。
固体試料の表面を分析するX線分析方法に適用する場合には、X線ビームを照射する先端部を固体試料の表面に接近させればよい。
従来の蛍光X線分析では溶液試料表面、もしくは、下面照射型の装置では溶液セルのX線透過窓近傍の溶液試料しか測定できなかった。これは、溶液中でのX線の吸収・減衰による。しかし、本発明を適用するとX線導管を溶液中に挿入することにより、溶液中の任意の場所での測定が可能となる。
また、液体試料としてコロイドやゾルなども測定することができる。
本発明では液体中に載置された固体試料を分析するX線分析方法にも適用され、その場合、X線ビームを照射する先端部は液体中に載置された固体試料の表面に接近させればよい。
本発明のX線分析方法の第2の局面は、本発明のX線分析装置を用い、その先端部を試料の測定対象部位に挿入させる工程と、X線照射機構の先端から試料にX線ビームを照射する工程と、X線ビームにより試料で発生した蛍光X線を前記X線検出器に導いて検出する工程とを含んでいる。導管の先端部が尖端となっている場合には、試料として生体試料などの柔らかいものを測定することができる。
本発明のX線分析装置は、一次X線源と、X線照射機構と、X線検出器と、X線検出用導管とを備え、X線照射機構の先端部とX線検出用導管の先端部は一つに合体されているので、励起用の導管と検出用の導管は一体化され、共焦点の調整などの煩雑な操作を行なうことなしに試料の元素分析を行なうことができる。
また、合体した先端部にX線ビームを試料の微小部分に集光するポリキャピラリーハーフレンズ、及び試料の前記微小部分からの蛍光X線を受光するポリキャピラリーハーフレンズのうちの少なくとも一方を備えた場合には、試料表面の数十μm〜数百μmといった微小部分の元素分析を行うことができるようになる。
以下に本発明の一実施例を説明する。
[実施例1]
図1はX線分析装置の概略構成図である。
励起用X線を発生させる一次X線源1は、X線照射機構の一部を構成するX線入射用導管2aによってX線検出用導管5と接続されている。
X線検出用導管5の基端部にはX線検出器9が結合され、試料7から放出された蛍光X線が先端部から内部通路4を通ってX線検出器9に導かれるようになっている。
X線検出用導管5内には、X線入射用導管2aを介して入射した一次X線ビームを受け、二次X線ビームを発生し、X線検出用導管5の先端部の開口5aを経て試料に照射するための二次ターゲット3が備えられている。二次ターゲット3の中心部にはX線を通すための穴が設けられている。その穴の位置は導管5の中心のみには限定されず、その周辺も含み、試料からの蛍光X線を通すことができる位置であればよい。
二次ターゲット3はX線検出用導管5の内側、かつその導管5内の内部通路4の外周にリング状に備えられており、先端部が傾斜面(水平面から約40度)となっているため、二次X線ビームを効率よく試料に照射することができる。また、内部通路4とX線検出用導管5の間には、二次ターゲットからの散乱X線が直接検出器に入るのを防ぎ、観測視野を試料7に限定するためのコリメータ13が備えられていることが好ましい。この材質には、例えば、ポリテトラフルオロエチレンなど新たな蛍光X線を発生しない材質、もしくは、二次ターゲットと同じ材質であることが望ましい。
この実施例ではX線検出用導管5で二次ターゲット3より先端側の部分はX線照射機構を兼ねている。
X線検出用導管5の先端部には、開口5aを閉じるためのX線透過性保護膜6が設けられている。これにより、導管5を試料7やその周囲の媒体8に挿入した場合、それらが導管5内に侵入することを防ぐことができる。X線透過性保護膜6としてはポリイミドフィルムなどの高分子フィルムを用いることができ、導管5の先端傾斜面に接着剤などにより取りつけることができる。
開口5aの大きさはX線ビーム径や検出する蛍光X線の量によるものであるが、例えば、2mm程度あれば充分である。
一次X線源1としては市販のX線管を用いる。X線源1のX線出射窓にはベリリウムなどのX線透過材料が設けられている。
X線源1のX線出射窓と導管2aの基端部との間には、管球由来の連続X線や管球からの不純物ピークが蛍光X線測定に影響を与えるのを防ぐために、ジルコニウムやアルミニウムなど、測定対象元素に応じて適当なフィルタ10が設けられることがある。
二次ターゲット3はX線ビームの光路を変更する役割を果たしている。二次ターゲット3として、例えばCuを含む素材を用いることができる。これにより試料に照射される励起X線をMoKαからCuKαに変換することができる。一般にX線ビームの光路を曲げることは困難であるが、このような二次ターゲットを利用することにより、異なるエネルギーのX線ビームにはなるが、光路を変えることが可能となる。図1の場合では、X線ビームの進行方向が約90度変えられている。
X線検出器9としてはエネルギー分散型X線検出器を用いる。これは、装置全体の小型化のためであるが、この制約がない場合は、波長分散型検出器を用いても良い。検出器9の信号は増幅器、多重波高分析器等を通じてエネルギー分析され、X線スペクトルを得ることができる。
導管2a,5の材質としては前述のように、二次ターゲットと同じものを用いることが望ましい。この実施例での導管2aは内径6mm、外径8mmであり、導管の内部がX線の内部通路となり、X線ビームは、ほぼ平行光となって通過する。
導管5は二次ターゲットからのX線を試料へ照射する際の照射面積を限定する役割も担っている。
試料7を含む容器はその位置を調整するために試料位置調整用ステージ12に載せられている。ステージ12は、XYZ方向(X,Y方向は面内方向、Z方向はそれらに直交する高さ方向である。)に移動し、試料7の測定対象領域を調整することができる。
以下に同実施例の動作を説明する。
ここでは、水のような媒体8中にある固体試料7の表面分析を行なう場合を例として説明する。
一次X線源1、導管2a、導管5及びX線検出器9は一体化されて固定されており、試料7の測定対象領域はステージ12の移動によって調整する。
初めにステージ12は導管5の先端部から遠ざけておき、ステージ12の上昇によって導管5が媒体8内に挿入されるように、ステージ12を導管5の方向(図面の上方向)に移動させる。
導管5を媒体8内に挿入し、試料7の表面と近接させ、X線源1からの一次X線ビームを二次ターゲット3によって二次X線ビームに変換し、試料7に照射できるようにする。
X線源1としてはモリブデンをターゲットとし、ベリリウムのX線出射窓をもつX線管を使用し、X線源1のX線出射窓と導管2aの基端部との間にジルコニウムフィルタ10を配置して励起用X線を照射する。
X線源1からの励起X線を二次ターゲット3で受け、二次X線ビームを導管5の先端方向に発生させ、先端部の開口から媒体8中の試料7に照射する。試料7の表面で発生した蛍光X線を導管5内の内部通路4を通ってX線検出器9に導き、検出器9で検出する。
このとき、導管5の先端部の開口5aは高分子フィルムで封止されているため、導管5の内部通路4に媒体8が侵入することはなく、X線の減衰を抑えることができる。
測定条件としては、例えば、X線源1を電圧40kV、電流30mAに設定してX線を発生させ、検出器9で検出された信号を増幅器や多重波高分析器を通じてエネルギー分析し、300秒間にわたって積分することで蛍光X線スペクトルを得るようにした。
本実施例では、X線の照射と検出をほぼ同軸上で行なうことができ、装置を小型化することができる。
また、二次ターゲット3を備えることで、蛍光X線という単色X線を試料に照射することができ、試料を測定する際の連続X線のバックグラウンドを低減化することができる。
この二次ターゲットはリング状をしているので、二次ターゲットからのX線を円錐状に試料7に向かって照射できる。従来の蛍光X線分析では一方向からのX線照射であるので、本発明の実施例では原理的に高い照射効率が実現できる。
さらに、二次ターゲット3をX線検出用導管の内側、かつそのX線検出用導管内の内部通路の外周にリング状に備えるようにしたので、試料から発生した蛍光X線はリング状のターゲット3の穴から内部通路4を通って検出器9に導かれ、優れた検出効率で検出されるようになる。
次に本発明の他の実施例を説明する。
[実施例2]
図2はX線分析装置の概略構成図である。
一次X線源1はX線入射用導管2aによってX線検出用導管5と接続されている。X線検出用導管5の基端部にはX線検出器9が結合され、微小部位11から放出された蛍光X線が先端部の開口から内部通路4を通ってX線検出器9に導かれるようになっている。
X線検出用導管5内にはX線照射用導管2bが備えられており、X線照射用導管2b内には、X線入射用導管2aから入射した一次X線ビームを受け、二次X線ビームを先端部に向かって照射するための二次ターゲット3が備えられている。X線入射用導管2aとX線照射用導管2bによりX線照射機構を構成している。
この実施例では、X線検出用導管5とX線照射用導管2bは二重管であり、かつ略平行に配置されている。微小部位11からの後方散乱方向の蛍光X線をX線検出用導管5に入射させることができる。
また、X線照射用導管2b内にX線検出用導管5を備える二重管にしてもよい。
X線検出用導管5の先端部には、開口を閉じるためのX線透過性保護膜6が設けられているため、導管5を微小部位11やその周囲の媒体に挿入した場合、それらが導管内に侵入することを防ぐことができる。X線透過性保護膜6としては実施例1の場合と同様のものを取りつけることができる。
また、一次X線源1としては実施例1と同じものを用いることができ、X線源1のX線出射窓と導管2aの基端部との間には、管球由来のX線が蛍光X線測定に影響を与えるのを防ぐためのフィルタ10が設けられている。
二次ターゲット3やX線検出器9としても実施例1と同じものを用いることができる。
導管2a,2b,5としては実施例1と同様に二次ターゲットと同じ材質の導管を用いることができる。
次に同実施例の動作を説明する。ここでは、生体試料のような、針を挿入できる試料7aの内部の部位を測定する場合を説明する。
導管5の先端を試料7aに挿入して微小部位11に接近させる。
X線源1として、モリブデンをターゲットとし、ベリリウムのX線出射窓をもつX線管を使用し、X線源1のX線出射窓と導管2aの基端部との間にジルコニウムフィルタ10を配置して励起用X線を導管2aを介して二次ターゲット3に照射する。
X線源1からの励起X線を二次ターゲット3で受け、二次X線ビームを導管2bの先端方向に発生させ、先端部の開口から微小部位11に照射する。微小部位11により発生した蛍光X線を導管5内の内部通路4を通ってX線検出器9に導き、検出器9で検出する。
このとき、導管5の先端部の開口は高分子フィルムで被われているため、導管5の内部通路4に媒体8が侵入することはなく、X線の減衰を抑えることができる。
本実施例では、X線検出用導管5とX線照射用導管2bを略平行にし、かつ、一方が他方の内部に配置されている状態にしたので、例えば導管5を微小部位11に接近させることにより、試料中の微小部位11の元素濃度を測定することができる。
次に本発明のさらに他の実施例を説明する。
[実施例3]
図3はX線分析装置の概略構成図である。
一次X線源1はX線入射用導管2aによってX線照射用導管2bと接続されている。X線照射機構は、X線入射用導管2aとX線照射用導管2bにより構成されている。
X線照射用導管2bの先端部はX線検出用導管5の先端部と合体しており、両基端部は先端部から両基端部に向かって広がる角度をもって配置されている。
X線検出用導管5の基端部にはX線検出器9が結合され、試料7から放出された蛍光X線が先端部の開口から内部通路4を通ってX線検出器9に導かれるようになっている。
X線照射用導管2b内には、X線入射用導管2aから入射した一次X線ビームを受けて、二次X線ビームをX線照射用導管2bの先端部の開口に向かって照射させるための二次ターゲット3が備えられている。ただし、二次ターゲット3をはずし、X線照射用導管2bの端面にX線源1を直接配置しても良い。
この実施例では、X線検出用導管5の基端部とX線照射用導管2bの基端部は約45度広がって配置されているが、特に限定されるものではない。なお、この角度を0度に近づけた配置を実現しようとしたのが、実施例2である。
先端部には開口を閉じるためのX線透過性保護膜6が設けられているので、導管2b,5を試料7やその周囲の媒体8に挿入した場合、それらが導管内に侵入することを防ぐことができる。X線透過性保護膜6としては実施例1の場合と同様のものを取りつけることができる。
一次X線源1としては実施例1と同じものを用いることができ、X線源1のX線出射窓と導管2aの基端部との間には、管球由来のX線が蛍光X線測定に影響を与えるのを防ぐためのフィルタ10が設けられている。
二次ターゲット3やX線検出器9としても実施例1と同じものを用いることができる。
導管2a,2b,5としてはガラスで作成したが、他の材料で作成してもかまわない。
また、試料7を含む容器はその位置を調整するために試料位置調整用ステージ12に載せている。ステージ12は、XYZ方向(X,Y方向は面内方向、Z方向はそれらに直交する高さ方向である。)に移動し、媒体8中の試料7の測定対象領域を調整することができる。
次に同実施例の動作を説明する。
試料7を含む容器はX線検出用導管5の先端部から遠ざけておき、ステージ12を図面の上方向に移動させて、導管5を溶媒8内に挿入する。
X線源1として、モリブデンをターゲットとし、ベリリウムのX線出射窓をもつX線管を使用し、X線源1のX線出射窓と導管2aの基端部との間にジルコニウムフィルタ10を配置して励起用X線を照射する。
X線源1からの励起X線を二次ターゲット3で受け、二次X線ビームを導管2bの先端方向に発生させ、先端部の開口から試料7の表面に照射する。試料7により発生した蛍光X線を導管5内の内部通路4を通ってX線検出器9に導き、検出器9で検出する。
このとき、導管5の先端部の開口は高分子フィルムで被われているため、導管5の内部通路4に媒体8が侵入することはない。
本実施例では、導管2bと導管5を、それらの内部通路の軸線がそれぞれの延長線上で互いに交差するように固定して配置し、溶媒8を移動させることによりそれぞれの先端側を溶媒8内に挿入する。導管2bの先端から照射されたX線により試料7の表面で発生した蛍光X線が導管5の先端部に届く距離まで両導管2b,5の先端部を接近させて配置したので、煩雑な調節をすることなしに元素分析を行なうことができる。また、X線検出用導管5とX線照射用導管2bを空間的に離して配置したので、X線源1や検出器9などの配置スペースを確保することが可能になる。
[溶液試料の測定]
液体や水溶液中の金属元素(例えば電極表面)を分析することは電池材料やめっき材料の向上にかかせないが、従来までは、液体中の金属などの材料表面を直接観察する方法はなく、これら材料を取り出すなどの操作をしてから各種の表面分析法を適用していた。
しかし本発明では、実施例1〜3のようなガラス製コリメーターを測定対象の水溶液に浸漬するだけで、水溶液中の金属表面や電解液中の電極材料の表面を水溶液中で観測することができるようになり、海水中の金属表面の腐食進行状況をモニターしたり、水溶液中の金属イオン濃度を直接測定したりすることも可能になる。
[非破壊的に測定]
蛍光X線分析法においても非破壊的に試料内を測定する要請はあるものの、これまでは非特許文献1で示したX線集光レンズを用いる方法以外は提案されていない。その微小部蛍光X線分析では試料の外部からX線を照射し、試料から大気側(もしくは真空側)に放射された蛍光X線のみを検出してきた。そのため、表面から測定できる試料の深さは数ミクロンから数ミリ程度に限定されてきた。
しかし本発明では、導管として、先端部が尖端となっているコリメータ、又は医療分野で薬液注入や血液採取などに使用されている注射針を用いた場合、やわらかい試料に限定されるが、深さ方向の制限は緩和され、試料表面から数センチ内部の固体試料内を非破壊的に測定することができる。
ここで、本発明における「非破壊的」とは、導管を挿入するが、測定後に導管を抜くことにより現状に近い状態に復帰することを意味する。特に試料が生きた生体試料の場合には、生体が回復することにより非破壊測定により一層近づくということができる。
試料に導管を挿入するため、厳密な意味では非破壊測定ではないが、試料の断面を切り出す方法に比べると非破壊に近い状態となり、導管を細くするほど、より非破壊に近い状態となる。
本発明では、X線照射機構で試料に照射するX線を導く導管2bの先端部とX線検出用導管5の先端部を、内部通路の軸線が延長線上で互いに交差するように3次元的に交点を結ぶように試料内部に配置するようにしたので、試料内部の測定部位の元素分析を非破壊的に行なうことができるようになるとともに、導管の長ささえあれば、数cm又はそれ以上深い部分の測定も行なうことができて、深さ方向の制限が緩和される。
導管として注射針を使用する場合、市販の注射針では内径0.2mm〜1.0mm程度のものが容易に入手できる。注射針としてはその先端径が0.2mm以下のものを作成することも可能であり、そのような微細な注射針を導管として用いるとμmオーダーの微小空間を測定対象とすることもできる。
また、試料内部の分析対象となる領域の大きさは導管先端の太さにも依存するが、適切な針状のものを用いることにより、数百μmから数mmの大きさを有する微小空間、又はそれよりも微小な空間を測定対象とすることができる。
図4は実施例1の装置を用い、固体試料の元素分析を行なった際のX線スペクトルであり、横軸はエネルギー、縦軸は強度である。なお、実施例1の装置説明では試料7は媒体8中に配置したが、この測定では試料7は水溶液等の媒体には漬けていない。
試料7としては厚さ0.5mmのFe板を用いた。
測定条件としては、X線源(ターゲットはMo)1を電圧20kV、電流40mAに設定してX線を発生させ、二次ターゲットとしてリング状のCuを用い、検出器9で検出された信号を増幅器や多重波高分析器を通じてエネルギー分析し、100秒間にわたって積分することで蛍光X線スペクトルを得た。また、試料7と導管5の先端部の距離は約2mmに設定した。
二次ターゲットからのCu蛍光X線に加え、試料からのFe蛍光X線が観測されたので、蛍光X線分析装置として用いることが可能なことが確認された。
図5は実施例3の装置を用い、液体試料中の元素分析を行なった際のX線スペクトルであり、横軸はエネルギー、縦軸は強度である。
液体試料としてはNiSO4 10mL(2800 ppm)を用いた。なおNiSO4の濃度は標準的なメッキ液の濃度に設定している。
測定条件としては、X線源(ターゲットはMo)1を電圧20kV、電流40mAに設定してX線を発生させ、二次ターゲットとしてCuの表面にZnを被膜したものを用い、検出器9で検出された信号を増幅器や多重波高分析器を通じてエネルギー分析し、300秒間にわたって積分することで蛍光X線スペクトルを得た。「Preset Time」は測定時間のことである。二次ターゲットとしてZn板を用いたのは、Ni蛍光X線を効率よく励起するためである。
ROI Intensity(ピーク面積強度)は、
ZnKα: 19802 (NET) 40059 (GROSS)、
CuKα: 778 (NET) 11438 (GROSS)、
NiKα: 21798 (NET) 25075 (GROSS)、
FeKα: 1255 (NET) 2795 (GROSS)、
となった。
ここでNETはバックグラウンド強度を差し引いた正味のピーク強度を意味し、
GROSSはバックグラウンド強度を含む全ピーク強度を意味する。
Niの濃度は2800ppmであり、液体試料中に図3の導管5を挿入することにより、液体試料内の蛍光X線を得ることができた。この結果より、本発明が液体中(例えば、廃溶液、めっき浴など)の金属元素濃度の簡易モニター法として有効であることが確認された。
なお、二次ターゲットはCu表面にZnを被覆したものであるので、図5のスペクトルにはCuも検出された。
図6は実施例3の装置を用いた際の液体試料の試料濃度と検出強度の関係を表わしている。
液体試料としてはCoSO4水溶液の濃度を変えたものを用いた。
測定条件としては、実施例3と同じ装置を用い、X線源1を電圧20kV、電流40mAに設定してX線を発生させ、検出器9で検出された信号を増幅器や多重波高分析器を通じてエネルギー分析し、300秒間にわたって積分することで蛍光X線スペクトルを得た。
各液体試料に対して5回の測定を行った時の平均値をプロットするとともに、標準偏差に対応するエラーバーも示している。相関係数Rは0.9994となり、良好な直線関係が確認された。さらに、この直線の傾きと濃度ゼロ、つまり、ブランク溶液試料でのCoKαのピークにおけるバックグラウンド強度との関係から検出下限を評価すると、27.9ppmであった。この測定結果はCoSO4水溶液試料測定時の検量線として利用することができる。
図7は実施例3の装置を用い、液体中の固体試料の元素分析を行なった際のX線スペクトルであり、横軸はエネルギー、縦軸は強度である。
液体としてはNiSO4 10mL(2800ppm)を用い、試料7としては厚さ0.5mmの鉄板を用いた。
測定条件としては、X線源1を電圧20kV、電流40mAに設定してX線を発生させ、検出器9で検出された信号を増幅器や多重波高分析器を通じてエネルギー分析し、300秒間にわたって積分することで蛍光X線スペクトルを得た。また、試料7と導管5の先端部の距離は約200μmに設定した。
ROI Intensity(ピーク面積強度)は、
ZnKα: 18714 (NET) 36927 (GROSS)、
CuKα: 1475 (NET) 11199 (GROSS)、
NiKα: 17672 (NET) 24434 (GROSS)、
FeKα: 22747 (NET) 25652 (GROSS)、
となった。
NiSO4水溶液中のFe金属材料に対して水溶液中で測定したX線スペクトルから、Feの特性X線が明確に測定でき、例えば、電解溶液中の電極表面の直接その場分析、海水中の金属腐食過程のモニターなどにも応用できることが分かる。
図8は実施例3の装置を用い、液体中の固体試料の元素分析を行なった際のX線スペクトルであり、横軸はエネルギー、縦軸は強度である。
液体としてはNiSO4 10mL(2800ppm)を用い、試料7としては厚さ0.05mmのNi板を用いた。
測定条件としては、X線源1を電圧20kV、電流40mAに設定してX線を発生させ、検出器9で検出された信号を増幅器や多重波高分析器を通じてエネルギー分析し、300秒間にわたって積分することで蛍光X線スペクトルを得るようにした。また、試料7と導管5の先端部の距離は約200μmに設定した。
ROI Intensity(ピーク面積強度)は、
ZnKα: 8775 (NET) 45968 (GROSS)、
CuKα: −4667 (NET) 15517 (GROSS)、
NiKα: 100927 (NET) 100996 (GROSS)、
FeKα: 1013 (NET) 3953 (GROSS)、
となった。
NiSO4水溶液中のNi金属材料に対して水溶液中で測定したX線スペクトルから、Niの特性X線が明確に測定でき、例えば、電解溶液中の電極表面の直接その場分析、又は海水中の金属腐食過程のモニターなどにも応用できることが分かる。
図4〜図8は実施例1及び3に示した装置を用いて測定した結果であるが、実施例2においても同様、又はそれ以上の結果が得られると予想される。
[実施例4]
図9は図1に示す実施例において、X線検出用導管5の先端部で二次ターゲット3と先端開口部の間にポリキャピラリーハーフレンズ20をX線集光素子として取り付けたものである。ポリキャピラリーハーフレンズ20を設けた点を除いて他の構成は図1に示した実施例と同じである。
ポリキャピラリーハーフレンズ20は多数のキャピラリーレンズが束ねられたものである。ポリキャピラリーハーフレンズ20は図10の斜視図で示すように、互いに平行に形成された面積の広い端面21aと狭い端面21bをもち、端面21aから端面21bに向かって直径が小さくなっていくように変化しながら束ねられている。外形は円錐台の側面をわずかに外方に膨れるように湾曲させた形状をしている。この例では軸方向に垂直な断面形状が円形であるが、正多角形であってもよい。ポリキャピラリーハーフレンズ20では、面積の広い端面21aに入射した平行X線がキャピラリー中を全反射しながら伝播し、面積の狭い端面21bから出て焦点に集光する。
ポリキャピラリーハーフレンズ20は、二次ターゲット3から発生した二次X線を集光させて先端部から試料7へ照射する際に、試料7上の微小部に集光させる機能をもつ。さらに、試料7の微小部から発生した蛍光X線をポリキャピラリーハーフレンズ20が集光し、ほぼ平行なX線としてX線検出器9へ導く。より具体的には、ターゲット3からの二次X線はポリキャピラリーハーフレンズ20の周辺部分を通って試料上では数十μm程度の微小部に集光して照射することができ、試料表面の数十μmの領域から発生した蛍光X線を今度はポリキャピラリーハーフレンズ20の中心部を通って集光しつつ、リング状のターゲット3の開口部から内部通路4を経て検出器9へ導く。このように、この実施例では、ポリキャピラリーハーフレンズ20はX線を微小部に照射する機能と、微小部から発生した蛍光X線を受光する機能の両方を1つのポリキャピラリーレンズで実現している。
[実施例5]
図11は図3に示した実施例において、X線照射用導管2bの先端部にポリキャピラリーハーフレンズ20aを設けたものである。ポリキャピラリーハーフレンズ20aを設けた点を除いて、それ以外の構成は図3に示したものと同じである。試料7から発生した蛍光X線は図3の実施例と同じように検出器9へ導かれる。
この実施例の場合、ターゲット3から発生した二次X線がポリキャピラリーハーフレンズ20aによって集光されて試料7上の微小領域に照射される。ポリキャピラリーハーフレンズ20aの構成及びその機能は図9、図10の実施例において説明したものと同じである。
この実施例においても試料7の微小部のみを二次X線で照射することができる。
[実施例6]
図12は図3に示した実施例において、X線検出用導管5の先端部に蛍光X線を受光するためのポリキャピラリーハーフレンズ20bを設けたものである。ポリキャピラリーハーフレンズ20bを設けた点を除いて、それ以外の構成は図3に示したものと同じである。
この実施例ではターゲット3からの二次X線により試料7が励起され、発生した蛍光X線がポリキャピラリーハーフレンズ20bによって受光されて検出器9へ導かれる。ポリキャピラリーハーフレンズ20bは試料7上の微小部からの蛍光X線のみを受光することができ、試料7の表面が二次X線である程度広い範囲が励起されても、ポリキャピラリーハーフレンズ20bによってその内の特定の微小部からの蛍光X線のみがポリキャピラリーハーフレンズ20bにより受光され検出器9に導かれる。
[実施例7]
図13は図3に示した実施例において、二次X線を試料7の微小部に照射するためのポリキャピラリーハーフレンズ20aをX線照射用導管2bの先端部に設け、かつ試料上で二次X線が照射された微小部から発生した蛍光X線を受光するためのポリキャピラリーハーフレンズ20bをX線検出用導管5の先端部に設けたものである。ポリキャピラリーハーフレンズ20aとポリキャピラリーハーフレンズ20bは試料7の表面上の同じ微小部に焦点を結ぶように配置されている。
この実施例ではターゲット3からの二次X線がポリキャピラリーハーフレンズ20aにより試料7上の微小部に集光されて照射され、その微小部から発生した蛍光X線がポリキャピラリーハーフレンズ20bにより受光されて検出器9へ導かれる。
実施例4から実施例7で用いたポリキャピラリーハーフレンズ20,20a,20bの集光性能をみるための予備的な実験を行った。
図14は用いたポリキャピラリーハーフレンズ30の仕様を示したものである。ポリキャピラリーハーフレンズ30は実施例におけるポリキャピラリーハーフレンズ20,20a,20bとして使用されるものを示している。ポリキャピラリーハーフレンズ30の外形はほぼ正六角錐台状をなしている。両端面31a,31bの面積は一方の端面31aが他方の端面31bよりも広くなっており、端面31aの最大寸法は10mm、端面31bの最大寸法は8mmであり、両端面31a,31b間の長さは50mmである。側面は厳密な意味では平面ではなく、わずかに外側に膨れるように湾曲している。
ポリキャピラリーハーフレンズ30の大きい方の端面31aから平行X線を入射させると、小さいほうの端面31bから出射したX線が焦点距離の位置に微小な像を形成する。その焦点距離は29.8mmであり、像の大きさは直系が110μmとなるように設計されている。
次に、このポリキャピラリーハーフレンズ30の実際の集光性能を調べた。
図15はポリキャピラリーハーフレンズ30が実際にX線を導くことを確かめる予備的な実験装置である。ターゲット3からの二次X線をポリキャピラリーハーフレンズ30で導いて試料7としての鉄板上に照射した。鉄板の厚さは0.5mmである。鉄板7から発生した蛍光X線を検出器9としてのSi−PIN検出器で直接受けて検出した。
その試料7からの蛍光X線を検出したスペクトルを図16に示す。このときの1次X線源の照射条件は、Moターゲットを使用し、電圧を40KV、電流を40mAに設定してX線を発生させた。測定は300秒間にわたる積算結果である。鉄のKα線とKβ線が検出されており、ポリキャピラリーハーフレンズ30が確かにX線を導いていることが確認できる。
図17も同様にポリキャピラリーハーフレンズ30がX線を導くことを確かめるもので、ターゲット3からの二次X線をポリキャピラリーハーフレンズ30により検出器9としてのSi−PIN検出器に直接導いてターゲット3からの二次X線を検出した。このときの1次X線源の照射条件は、Moターゲットを使用し、電圧を40KV、電流を40mAに設定してX線を発生させた。図18はそのときの検出スペクトルであり、二次X線の銅のKα線とKβ線が検出されている。測定は1000秒間にわたる積算結果である。
次に、このポリキャピラリーハーフレンズ30の視野を測定するための実験を行った。図19に示されるように、X線検出用導管5にポリキャピラリーハーフレンズ30を取り付け、ポリキャピラリーハーフレンズ30に入射した蛍光X線を検出器9としてのSi−PIN検出器へ導いて検出するようにしたものである。試料としては直径が30μmのタングステンワイヤー40を用い、タングステンワイヤー40に対しX線源1からの1次X線をコリメータ42で平行X線として照射した。コリメータ42から照射されるX線の光束の直径は3mmである。
タングステンワイヤー40は平坦な台上に固定しておき、1次X線を照射することにより、固定された位置からタングステンの蛍光X線が発生している状態としておく。検出器9に取り付けたポリキャピラリーハーフレンズ30は検出器9とともに水平面内で移動可能に支持し、図でX方向として示されるように、ワイヤー40を横切るように10μmピッチで走査し、各位置でタングステンワイヤー40から発生したタングステンLα線の強度をプロットした。その結果を図20に示す。このときの1次X線源の照射条件は、Moターゲットを使用し、電圧を40KV、電流を30mAに設定してX線を発生させた。図20中の各プロットの測定値は各位置での60秒間にわたる積算結果である。図20の測定結果をガウス分布とみなしてその半値幅を求めると152μmであった。このことから、このポリキャピラリーハーフレンズ30の視野は152μmと評価することができる。
このポリキャピラリーハーフレンズ30を実施例4〜7で示したようにX線を試料に照射する部分と蛍光X線を集光する部分の少なくとも一方に設けることにより、微小部分のみの蛍光X線分析を行なうことができるようになる。
本発明は、内部にポリキャピラリーハーフレンズを設ける形態の場合はポリキャピラリーハーフレンズを設けるためのスペースが必要であるため、導管の形状や大きさに幾らかの制約はあるが、内部にポリキャピラリーハーフレンズを設けない形態であれば、導管先端の形状や試料への挿入方向など、上記の実施例に限定されるものではなく、その他の形状や配置にすることも可能である。例えば、導管としては注射針など、他の形状のものを使用することもできる。材質もX線を導けるものであれば特に制約はなく、石英ガラス製キャピラリなどでもよい。
また、内部にポリキャピラリーハーフレンズを設けない形態であれば、導管は内部が中空でなければならないこともなく、X線を透過させる材質であれば中実のものであってもよく、中実の導管であれば内部に試料が侵入することがないので、導管の先端部に試料の侵入を防ぐカバーを設ける必要がなくなる。
さらに、内部にポリキャピラリーハーフレンズを設けるか否かに拘わらず、導管の先端部も開口である必要はなく、X線を透過できればよい。
内部にポリキャピラリーハーフレンズを設けない形態の場合、測定試料が生きた生体であれば、測定後に開放し、所定時間経過後に再び測定して特定元素の経時変化を測定するというような方法も可能になる。
内部にポリキャピラリーハーフレンズを設けない形態の場合、導管の長さを長くするだけでいくらでも深い部分を測定することができることから、1固体の生体試料について、複数個所の測定を行なうこともできる。
また、内部にポリキャピラリーハーフレンズを設けない形態の場合、人体についても体内に発生した癌細胞など、特定の部位の測定を行なうこともできる。
本発明は、生体試料や固体試料、液体試料、液体中の固体試料に対して、元素分析などを行なうX線分析装置に利用することができる。
本発明の第1の実施例を示す概略構成図である。 本発明の第2の実施例を示す概略構成図である。 本発明の第3の実施例を示す概略構成図である。 実施例1の装置を用い、液体中の固体試料の元素分析を行なった際の結果である。 実施例3の装置を用い、液体試料中の元素分析を行なった際の結果である。 実施例3の装置を用いた際の液体試料の検量線を表わしている。 実施例3の装置を用い、液体中の固体試料の元素分析を行なった際の結果である。 実施例3の装置を用い、液体中の固体試料の元素分析を行なった際の結果である。 ポリキャピラリーハーフレンズを備えた実施例4を示す概略構成図である。 同実施例で用いるポリキャピラリーハーフレンズを示す概略斜視図である。 ポリキャピラリーハーフレンズを備えた実施例5を示す概略構成図である。 ポリキャピラリーハーフレンズを備えた実施例6を示す概略構成図である。 ポリキャピラリーハーフレンズを備えた実施例7を示す概略構成図である。 用いたポリキャピラリーハーフレンズの仕様を示す正面図と両端面図である。 ポリキャピラリーハーフレンズの機能を確かめる予備的実験装置を示す概略正面断面図である。 得られた蛍光X線スペクトルを示す図である。 ポリキャピラリーハーフレンズの他の機能を確かめる予備的実験装置を示す概略正面断面図である。 得られた二次X線スペクトルを示す図である。 ポリキャピラリーハーフレンズの視野を測定するための予備的実験装置を示す概略正面断面図である。 得られたタングステンLα線の強度分布を示すグラフである。
符号の説明
1 X線源
2a X線入射用導管
2b X線照射用導管
4 内部通路
5 X線検出用導管
5a 開口
6 X線透過性保護膜
7 試料
8 溶媒
9 検出器
10 フィルタ
12 試料位置調整用ステージ
20,20a,20b,30 ポリキャピラリーハーフレンズ

Claims (17)

  1. X線ビームを先端から試料に照射するX線照射機構と、
    試料から放出された蛍光X線を検出するX線検出器と、
    基端部に前記X線検出器を備え、試料に対して前記X線照射機構と同じ側に配置され、先端から入射した蛍光X線を内部通路を通って前記X線検出器に導くX線検出用導管と、を備え、
    前記X線照射機構の先端部と前記X線検出用導管の先端部は試料に前記X線ビームを照射し、試料からの蛍光X線が入射するように一つに合体されており、
    前記X線照射機構の基端部は一次X線源に結合され、前記X線照射機構内には前記一次X線源からの一次X線ビームを受けて二次X線ビームを発生し、前記先端部を経て試料に照射する二次ターゲットが備えられているX線分析装置。
  2. 前記X線照射機構で試料にX線を照射する部分とX線検出用導管は同軸上に一体化されており、前記二次ターゲットに穴が設けられ、試料からの蛍光X線はその穴を通ってX線検出器へ導かれる請求項に記載のX線分析装置。
  3. 前記X線照射機構で試料にX線を照射する部分はX線検出用導管内に配置されている請求項に記載のX線分析装置。
  4. 前記X線照射機構で試料にX線を照射する部分は前記X線検出用導管内に該導管とほぼ平行に配置されたX線照射用導管をなし、前記二次ターゲットはX線照射用導管内に配置されている請求項に記載のX線分析装置。
  5. 前記導管は先端部が尖端となっているコリメータ又は注射針である請求項に記載のX線分析装置。
  6. 前記X線照射機構で試料にX線を照射する部分と前記X線検出用導管は一つに合体した先端部から両基端部に向かって広がるように角度をもって配置されている請求項に記載のX線分析装置。
  7. 前記合体した先端部には、X線ビームを試料の微小部分に集光するポリキャピラリーハーフレンズ、及び試料の前記微小部分からの蛍光X線を受光するポリキャピラリーハーフレンズのうちの少なくとも一方を備えている請求項に記載のX線分析装置。
  8. 前記X線照射機構で試料にX線を照射する部分とX線検出用導管は同軸上に一体化されており、前記二次ターゲットに穴が設けられ、試料からの蛍光X線はその穴を通ってX線検出器へ導かれるようになっており、
    前記ポリキャピラリーハーフレンズは1つのみが設けられ、X線ビームを試料の微小部分に集光するポリキャピラリーハーフレンズと試料の前記微小部分からの蛍光X線を受光するポリキャピラリーハーフレンズを兼ねている請求項に記載のX線分析装置。
  9. 前記X線照射機構で試料にX線を照射する部分と前記X線検出用導管は一つに合体した先端部から両基端部に向かって広がるように角度をもって配置されており、
    前記ポリキャピラリーハーフレンズは前記X線照射機構の先端部でX線ビームを試料の微小部分に集光するポリキャピラリーハーフレンズである請求項に記載のX線分析装置。
  10. 前記X線照射機構で試料にX線を照射する部分と前記X線検出用導管は一つに合体した先端部から両基端部に向かって広がるように角度をもって配置されており、
    前記ポリキャピラリーハーフレンズは前記X線検出用導管の先端部で試料の前記微小部分からの蛍光X線を受光するポリキャピラリーハーフレンズである請求項に記載のX線分析装置。
  11. 前記X線照射機構で試料にX線を照射する部分と前記X線検出用導管は一つに合体した先端部から両基端部に向かって広がるように角度をもって配置されており、
    前記ポリキャピラリーハーフレンズとして前記X線照射機構の先端部でX線ビームを試料の微小部分に集光するポリキャピラリーハーフレンズと、前記X線検出用導管の先端部で試料の前記微小部分からの蛍光X線を受光するポリキャピラリーハーフレンズとをともに備えている請求項に記載のX線分析装置。
  12. 前記合体した先端部には開口を閉じるX線透過性保護膜が設けられている請求項1から11のいずれかに記載のX線分析装置。
  13. 前記X線透過性保護膜は高分子膜である請求項12に記載のX線分析装置。
  14. 請求項1から13のいずれかに記載のX線分析装置の前記先端部を試料の測定対象部位に接近させる工程と、
    前記X線照射機構の先端から試料にX線ビームを照射する工程と、
    前記X線ビームにより試料で発生した蛍光X線を前記X線検出器に導いて検出する工程と、
    を含むことを特徴とするX線分析方法。
  15. 固体試料の表面を分析するX線分析方法に適用され、前記X線ビームを照射する前記先端部を固体試料の表面に接近させる請求項14に記載のX線分析方法。
  16. 液体中に載置された固体試料を分析するX線分析方法に適用され、前記X線ビームを照射する前記先端部を液体中に載置された固体試料の表面に接近させる請求項14に記載のX線分析方法。
  17. 請求項に記載のX線分析装置の前記先端部を試料の測定対象部位に挿入させる工程と、
    前記X線照射機構の先端から試料にX線ビームを照射する工程と、
    前記X線ビームにより試料で発生した蛍光X線を前記X線検出器に導いて検出する工程と、
    を含むことを特徴とするX線分析方法。
JP2007182827A 2006-07-14 2007-07-12 X線分析装置及びx線分析方法 Expired - Fee Related JP5102549B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007182827A JP5102549B2 (ja) 2006-07-14 2007-07-12 X線分析装置及びx線分析方法

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006193523 2006-07-14
JP2006193523 2006-07-14
JP2007182827A JP5102549B2 (ja) 2006-07-14 2007-07-12 X線分析装置及びx線分析方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2008039772A JP2008039772A (ja) 2008-02-21
JP5102549B2 true JP5102549B2 (ja) 2012-12-19

Family

ID=39174921

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2007182827A Expired - Fee Related JP5102549B2 (ja) 2006-07-14 2007-07-12 X線分析装置及びx線分析方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5102549B2 (ja)

Families Citing this family (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010197229A (ja) * 2009-02-25 2010-09-09 Osaka City Univ 蛍光x線分析装置
JP5704711B2 (ja) * 2010-04-30 2015-04-22 公立大学法人大阪市立大学 蛍光x線検出装置及び蛍光x線検出方法
JP5636242B2 (ja) * 2010-09-29 2014-12-03 浜松ホトニクス株式会社 X線発生装置
CN108709898A (zh) * 2018-04-23 2018-10-26 浙江工业大学 基于组合x射线毛细管的微束x射线荧光分析系统
JP7377890B2 (ja) 2019-12-02 2023-11-10 株式会社 堀場アドバンスドテクノ 蛍光x線分析装置
JP7386259B2 (ja) 2019-12-02 2023-11-24 株式会社 堀場アドバンスドテクノ 蛍光x線分析装置

Family Cites Families (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP3593651B2 (ja) * 2000-01-21 2004-11-24 株式会社島津総合科学研究所 試料解析装置
JP3567185B2 (ja) * 2000-01-21 2004-09-22 株式会社島津総合科学研究所 試料解析装置
DE60237168D1 (de) * 2001-12-04 2010-09-09 X Ray Optical Sys Inc Röntgenquelle mit verbesserter strahlstabilität unssigkeiten
JP3724424B2 (ja) * 2002-01-16 2005-12-07 株式会社島津製作所 蛍光x線分析装置
JP2004093405A (ja) * 2002-08-30 2004-03-25 Horiba Ltd X線分析装置

Also Published As

Publication number Publication date
JP2008039772A (ja) 2008-02-21

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5102549B2 (ja) X線分析装置及びx線分析方法
JP6851107B2 (ja) X線分析装置
US9418767B2 (en) X-ray focusing device
JP5100063B2 (ja) X線分析装置
JP5159068B2 (ja) 全反射蛍光x線分析装置
EP1348949B1 (en) Apparatus and method for X-ray analysis with simultaneous optical imaging
JP4492507B2 (ja) X線集束装置
JP4540509B2 (ja) 蛍光検出方法及びフローセルユニット並びにフローサイトメータ
CN114729907B (zh) 用于计算机层析x射线荧光成像的系统和方法
JP3718818B2 (ja) カソードルミネッセンス用試料ホルダ、及びカソードルミネッセンス分光分析装置
Gao et al. 3.3 Polycapillary X-ray Optics
JP2006337121A (ja) X線集束装置
JP4837964B2 (ja) X線集束装置
WO2007026750A1 (ja) マイクロチップ並びにそれを用いた分析方法及び装置
JP2002528859A (ja) 毛細管光学系を含むx源を有するx線照射装置
EP1953537A1 (de) Vorrichtung zur Erfassung und/oder Leitung von Röntgenstrahlung unter Verwendung einer Röntgenoptik
JP4738134B2 (ja) 分析装置
JP4651473B2 (ja) 試料内微小部位の分析方法及び装置
JP2010197229A (ja) 蛍光x線分析装置
KR101412375B1 (ko) 미소부 x선 계측 장치
RU2300756C1 (ru) Способ реализации микрорентгенофлуоресцентного анализа материалов с трехмерным разрешением
JP4639971B2 (ja) X線分析装置
Falkenberg et al. A Single-bounce Capillary for Focusing of Hard X-rays
JP2007271365A (ja) 試料容器及びそれを用いた測定装置
JP2005233670A (ja) X線分析装置

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20100524

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20111208

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20111213

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20120208

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20120925

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20120928

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20151005

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees