JP2007271365A - 試料容器及びそれを用いた測定装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】測定誤差を低減することができ、高精度な測定結果を得ることが出来る試料容器及びそれを用いた測定装置を提供する。
【解決手段】試料を保持する試料保持空間1aを形成する試料容器隔壁1と、試料容器隔壁1の少なくとも一部に設けられ、試料保持空間1aに対してパルス光を透過させる透過材料で構成された光透過部2と、を有し、光透過部2は、パルス光を集光させる集光形状3を備える試料容器。
【選択図】図2

Description

本発明は、試料容器及びそれを用いた測定装置に関し、特に、コヒーレントアンチストークスラマン分光法を用いた試料容器及びそれを用いた測定装置に関する。
血清や血液などを対象とした生化学定量分析は、健康診断におけるスクリーニングや医療診断において、以前より重要な情報を提供してきたが、最近では疾病の早期発見を可能とするいろいろなバイオマーカーが見つかってきたことにより、さらにその役割を増している。しかしながら、このような生化学定量分析は、一般に各々の成分を調べるため成分毎に異なった試薬を用いている。また、測定対象の成分毎にある量の試料が必要となる。そのために、測定対象となる成分数が増えるとともに分析に必要な試薬の数や、診断に必要な血液採取量などが増え、これが測定時間や検査コスト、さらには血液などを採取される人間の負担の増大を引き起こしている。そこで、試薬を用いることなく、かつ一度に複数の成分を定量できる方法が求められていた。
これを実現するためにレーザー光などを試料に照射し、試料からの散乱光を分析することにより成分を同定することのできる、いわゆる振動分光法を用いた生化学分析が検討されている。このような手法は、試料からの散乱光に含まれている、測定対象成分そのものが持っている固有の振動モードの情報から分析を行うため、試薬を用いることなく分子を特定できる。また、測定時に試料を変質させることが無いために同一の試料で同時に複数成分の分析が可能である。このように試料中の成分を分析する振動分光法としては、赤外線の吸収スペクトルを測定する赤外吸収法や、自発ラマン効果により生じる散乱光のエネルギー変化を用いる方法が良く知られているが、赤外領域の光は水により吸収されてしまうことから、血清や血液などの分析には不向きである。そこで、生化学分析への応用は、自発ラマン分光法を中心に研究が進められている。但し、現在のところ、この手法では臨床診断に用いることのできる精度を実現できていない。これは、自発ラマン効果による散乱光は、一般にその強度が非常に小さく、これが測定誤差の増大を引き起こす原因となっているからである。特に、正常な状態では血液や血清中に殆ど存在せず、ごく微量な変化を測定する必要のあるマーカー物質を分析する際には、この影響はさらに大きくなる。また、通常の自発ラマン分光法では、入射光よりも長波長側にシフトした散乱光(ストークス光)を用いることが多いが、血清や血液などの生体由来の試料には、いろいろな蛍光物質が含まれており、入射光よりも長波長側の散乱光の中には明確な構造を持たないこれらの物質からの光が含まれている。このことも測定誤差を生む大きな要因となっている。そこで、最近では3次の非線形光学効果を用い、通常の自発ラマン分光法よりも大きな散乱光強度が得られるコヒーレントアンチストークスラマン分光法を用いた生化学定量分析が検討されている(例えば、特許文献1)。また、この手法では、入射光よりも短波長側にシフトした散乱光(アンチストークス光)を利用するために、蛍光物質による影響を受けることなく測定が可能である。但し、コヒーレントアンチストークスラマン分光を行うためには、複数のパルス光が必要であり、一般的には狭帯域の周波数成分を持つポンプ光および、ポンプ光よりも周波数が小さく、かつ周波数がポンプ光よりも広帯域なストークス光といった二種類の光を試料に照射して散乱光を測定している。
特開平9−145619号公報
コヒーレントアンチストークスラマン分光法では、非常に強いエネルギー密度を持った光を必要とする。そのために、一般に入射光として、ピークパワーの極めて大きなフェムト〜ピコ秒程度のパルスレーザ光を用いている。但し、パルスレーザ光を用いただけでは、まだ光のエネルギー強度が不十分で、さらに集光レンズを用いて空間的に数ミクロンのオーダーまで集光することが必要となる。
一方、試料より発するアンチストークス光の強度Iは、入射光の強度に比例しない。具体的には、光の進行方向に沿った座標をxとして、試料中の位置xにおけるポンプ光、ストークス光のエネルギー密度をそれぞれip(x)、is(x)として、測定対象の密度などの情報を含む部分をDとすると、試料より発するアンチストークス光の強度Iは、
Figure 2007271365
と表せる。ここでs(x)は、位置xにおいて光が集光されている面積である。
したがって、パルス光を試料中で集光することによりエネルギー密度を変化させた場合、アンチストークス光の発生は、試料中で最もパルス光が集光された位置で最大となり、この領域から離れると急速に低下することになる。
また、ポンプ光、ストークス光のトータルエネルギーをip、isとし、それが最も集光されている面積をsとすると、ip(x)、is(x)のピーク値は、ipmax=ip/s、ismax=is/sとなり、これにより光エネルギー密度の高い領域の体積の目安をVとすると、式(1)は
Figure 2007271365
と見積もることができる。すなわち、測定結果であるアンチストークス光の強度Iより成分濃度の情報を持っているDを評価するためには、パルス光の最大エネルギー密度を知ることが必要である。このこと自体は自発ラマン分光法においても同様であるが、自発ラマン分光法の場合と以下の2点において大きく異なっている。すなわち、自発ラマン分光法の場合、集光している面積はその半径がmm程度のオーダーであることが多く、照射光面積のμm程度の誤差はエネルギー密度の評価に殆ど影響を及ぼさない。しかしながら、コヒーレントアンチストークス分光法の場合には集光している面積の半径がμmのオーダーとなっているため、μmのオーダーのずれが大きな評価誤差となる。また、自発ラマン分光法の場合には、測定結果はエネルギー密度に比例しているのに対し、コヒーレントアンチストークス分光法の場合には、式(2)に示すように、3乗に比例しているため、仮に同じエネルギー密度の評価誤差であっても、コヒーレントアンチストークス分光法の方が最終的な誤差は大きくなってしまう。
このように、非線形光学効果を用いた定量分析においては、僅かな集光状態の変化が、測定対象となっている成分の濃度見積もりに対して大きな誤差を生んでしまうことになる。したがって、測定においては、測定装置の光学系を厳密に調整することにより試料中の集光面積を変化させないようにすることが望まれる。
しかしながら、集光面積の調整は、試料容器の形状、材料、試料容器を設置する位置関係などにより、その集光面積が大きく変化してしまう。例えば、図13に示すように、試料101を保持する試料容器102に設けられた光透過部103から、パルス光104を透過させて試料101を測定する場合において、試料容器102の光透過部103における隔壁の厚さt、隔壁を構成する材料の屈折率等が若干異なる複数の試料容器を使用する時は、試料容器102の光透過部103を透過するパルス光104の屈折率が変化するため、試料101中のパルス光集光領域105の集光面積が使用する試料容器毎にそれぞれ変動してしまう。さらに、光透過部103における隔壁の平行度、しいては、試料容器102を保持する試料容器保持部106の平行度等が悪い場合は、試料容器102を試料容器保持部106に設置する毎に、パルス光104の透過角度が変化してしまい、同様に、試料101中のパルス光集光領域105の集光面積が変化してしまう。
このような問題を解決するためには、生化学成分定量装置の光学系に対し、常に、同じ位置に、同じ試料容器を固定することで、試料容器の形状、材料、配置位置等の起因による集光面積の変化を抑制することができる。しかしながら、血清などの試料を保持する試料容器は、試料の交換等を行うため、測定装置内に、常に固定しておくことは困難であり、例えば、同じ試料容器を用いた場合でも、試料を交換した場合、その設置位置は、交換毎に、μmオーダーの制御不能な誤差が発生してしまう。
また、試料より生じるコヒーレントアンチストークス光、ポンプ光、ストークス光の振動数をωas、ωp、ωsとしたときに、それぞれの関係は
Figure 2007271365
を満たす必要がある。すなわち、コヒーレントアンチストークス光の振動数を固定した場合、ストークス光の中で、式(2)に現われるismaxは帯域が広いストークス光全体のエネルギー密度ではなくストークス光の中で(3)の関係を満たす振動数成分の強度を意味している。したがって、ストークス光のエネルギーの振動数依存性が常に一定である場合には、ストークス光の全エネルギーから式(3)を満たす周波数のエネルギ−を見積もる事ができるが、レーザー光のエネルギーの周波数依存性はさまざまな要因により変化しており、この不安定性も測定対象の濃度を見積もる際の誤差原因となる。
そこで、本発明は、上述した測定誤差を低減することができ、高精度な測定結果を得ることが出来る試料容器及びそれを用いた測定装置を提供することを目的とする。
本発明に係る試料容器は、試料を保持する試料保持空間を形成する試料容器隔壁と、前記試料容器隔壁の少なくとも一部に設けられ、前記試料保持空間に対してパルス光を透過させる透過材料で構成された光透過部と、を有し、前記光透過部は、前記パルス光を集光させる集光形状を備えていることを特徴とする。
本発明に係る測定装置は、少なくとも二種類の波長を有する複数のパルス光を発生させる光源と、前記光源から発生された複数のパルス光を同一光路に集光する光学系と、前記光学系により集光されたパルス光を透過する試料容器と、前記試料容器内に保持された試料から放出されるコヒーレントアンチストークス光を検出する検出部とを備え、前記試料容器は、試料を保持する試料保持空間を形成する試料容器隔壁と、前記試料容器隔壁の少なくとも一部に設けられ、前記試料保持空間に対してパルス光を透過させる透過材料で構成された光透過部と、を有し、前記光透過部は、前記パルス光を集光させる集光形状を備えていることを特徴とする。
本発明によれば、測定誤差を低減することができ、高精度な測定結果を得ることが出来る試料容器及びそれを用いた測定装置を提供できる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。以下の図面の記載において、同一の部分には同一の符号を付し、重複する記載は省略する。また、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものと異なる。更に、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
図1は、本発明に係る試料容器が用いられるコヒーレントアンチストークスラマン散乱顕微鏡の一例を示す概念図である。
本発明に係る試料容器が用いられるコヒーレントアンチストークスラマン散乱顕微鏡は、例えば、二種類の波長を有するパルス光(ポンプ光、ストークス光)を発生させる光源51、52と、この光源51、52からの2種類のパルス光を同一光路に集光して試料容器保持部54に保持された試料容器に導く光学系53と、試料容器保持部54に保持された試料容器内の試料より放出されるコヒーレントアンチストークス光を検出する検出装置55とで構成されている。
以下、本発明に係る試料容器を説明する。
(第1の実施形態)
本発明に係る試料容器の第1の実施形態を説明する。図2は、第1の実施形態に係るコヒーレントアンチストークスラマン散乱顕微鏡用の試料容器の一例を示す断面図である。
第1の実施形態に係る試料容器は、図2に示すように、試料を保持する試料保持空間1aを形成する試料容器隔壁1と、試料容器隔壁1の少なくとも一部に設けられ、試料保持空間1aに対してパルス光を透過させる透過材料で構成された光透過部2と、を備え、前記光透過部2は、前記パルス光を集光するための集光形状3を備えている。
ここでいう集光形状3は、例えば、図2に示すように、試料保持空間1a内に設けられた曲面形状を有する凸部で構成されている。
更に、光透過部2は、パルス光を透過させる透過材料として、シリカガラスが好適に用いられる。
図3は、図2に示す試料容器を、図1に示すコヒーレントアンチストークスラマン散乱顕微鏡の試料容器保持部54に設置させた場合の一例を示す概念図である。
本実施形態では、光学系53において、パルス光の形状を半径1mmのスポット径に絞り、例えば、シリカガラスで構成された図2に示すような試料容器の光透過部2に対し、パルス光4が平行に入射するように試料容器保持部54に設置されている。
図2に示すような試料容器を用いることにより、試料容器と装置側光学系との相対位置関係(平行度等)が、試料の取替え等により若干変化しても、光透過部2に設けられた集光形状3の存在により、試料保持空間1aに保持された試料1b内でのパルス光集光領域5の集光面積は変化することがない。
この焦点位置におけるパルス光の集光面積は、試料1bとなる溶液の屈折率に依存するが、溶液の屈折率とパルス光の面積の関係は幾何光学の手法で見積もることができ、さらに溶液の屈折率は事前に測定することが容易である。また、パルス光のトータルエネルギーは、試料1bに照射するパルス光をビームスプリッターで分割し、片方のエネルギーを測定することにより見積もることができ、さらに、試料1bに投入されたパルス光4のエネルギー密度を評価することができるようになる。
なお、図2では、パルス光4の集光のため、集光形状3を、試料容器の試料保持空間1a内に設けているが、図4に示すように、試料容器の外壁に設けても同様な効果を得ることが可能である。
図2に示した試料容器を用い、試料としてグルコース水溶液を作製し、具体的にその値を評価した。なお、この測定に用いたパルス光の作製には、Ti:Sapphireレーザーを2台用い、それぞれの装置より出力される800nmの光をポンプ光、ストークス光として利用した。また、パルス光の繰り返し周波数は80MHz、パルス光の長さは100フェムト秒としたものを用いた。また、試料に照射したポンプ光1ショットのエネルギーは100pJであり、また、ストークス光としては、800nmのパルス光を、フォトニック結晶ファイバー中を通過させることにより広帯域化し、さらに800nmより短波長側をフィルターによりカットすることにより作製した、このようにして作製したストークス光1ショットのエネルギーは90pJであった。また測定に使用したグルコース溶液の濃度は、実際の生体中の濃度を参考に50[mg/dl]から450[mg/dl]まで10[mg/dl]刻みとしたものを使用した。測定は、低濃度側から行い、測定が終わると試料容器を洗浄し、次の濃度の試料を測定することを繰り返した。また、アンチストークス光の測定は、300から1500[cm−1] の領域で行い、 一回の測定には1秒を要している。
以上の測定結果を図5に示す。この評価における濃度誤差の平均値は4.7%であった。また、図13に示すような従来の試料容器を用いて同様な実験を行った結果を図6に示す。図6に示すように、従来の試料容器を用いた場合の測定結果は、多くの誤差を含んでおり、濃度誤差の平均値は9.0%であった。
以上より、本実施形態に係る試料容器は、試料容器のパルス光が透過する光透過部にパルス光を集光する集光形状が設けられているため、試料容器と光学系との相対位置関係(平行度等)が、試料の取替え等により若干変化しても、試料内のパルス光の集光面積の変化を少なくすることができるため、高精度な測定を行うことが可能となる。
(第2の実施形態)
本発明に係る試料容器の第2の実施形態を説明する。図7は、第2の実施形態に係るコヒーレントアンチストークスラマン散乱顕微鏡用の試料容器の一例を示す断面図である。
本実施形態に係る試料容器は、図7に示すように、測定試料を保持する測定試料保持空間11a及び標準試料を保持する標準試料保持空間11bをそれぞれ形成する試料容器隔壁11と、試料容器隔壁11の少なくとも一部に設けられ、測定試料保持空間11aに対してパルス光を透過させる透過材料で構成された第1の光透過部12aと、試料容器隔壁11の少なくとも一部に設けられ、標準試料保持空間11bに対してパルス光を透過させる透過材料で構成された第2の光透過部12bと、を有し、第1の光透過部12a及び第2の光透過部12bは、パルス光を集光させる集光形状13a、13bをそれぞれ備えている。
図8、図9は、図7に示す試料容器を、図1に示すコヒーレントアンチストークスラマン散乱顕微鏡の試料容器保持部54に設置させた場合の一例を示す概念図である。図8は、測定試料保持空間11aに保持された測定試料11aaに、図9は、標準試料保持空間11bに保持された標準試料11bbにそれぞれ、第1の光透過部12a、第2の光透過部12bからパルス光14を透過させる状態を示しており、例えば、測定試料11aaにパルス光14を照射して、測定試料11aaより生じるコヒーレントアンチラマンストークス光を測定し、更に、標準試料11bbにパルス光14を照射して、標準試料11bbより生じるコヒーレントアンチラマンストークス光を測定する。
この場合、測定対象の濃度および集光された面積や体積は既知であり、したがって式(2)において不明な量はismaxとなる。すなわち、この測定においては、ストークス光のエネルギー密度の周波数依存性の揺らぎ等に起因して生じてしまう濃度推定誤差を、標準試料11bbからのコヒーレントアンチラマンストークス光の測定より校正することが可能となる。
図7に示した試料容器を用い、測定試料としてグルコース水溶液を作製し、具体的にその値を評価した。また、標準試料として別の方法にて濃度が確認されているグルコース溶液(250[mg/dl])を用いた。なお、この測定に用いたパルス光の作製には、Ti:Sapphireレーザーを2台用い、それぞれの装置より出力される800nmの光をポンプ光、ストークス光として利用した。また、パルス光の繰り返し周波数は80MHz、パルス光の長さは100フェムト秒としたものを用いた。また、試料に照射したポンプ光1ショットのエネルギーは100pJであり、また、ストークス光としては、800nmのパルス光を、フォトニック結晶ファイバー中を通過させることにより広帯域化し、さらに800nmより短波長側をフィルターによりカットすることにより作製した、このようにして作製したストークス光1ショットのエネルギーは90pJであった。また測定に使用したグルコース溶液の濃度は、実際の生体中の濃度を参考に50[mg/dl]から450[mg/dl]まで10[mg/dl]刻みとしたものを使用した。測定は、低濃度側から行い、測定が終わると試料容器を洗浄し、次の濃度の試料を測定することを繰り返した。また、アンチストークス光の測定は、300から15001 [cm−1] の領域で行い、 一回の測定には1秒を要している。
以上の測定結果を図10に示す。この評価における濃度誤差の平均値は2.9%であり、図2に示す試料容器を用いた場合よりも更に誤差が低減されることが確認された。更に、図10において測定試料の濃度(横軸)150[mg/dl]から250[mg/dl]の範囲を拡大させた結果図を図11に示す。この領域の濃度評価誤差は1.5%となっており、標準試料の濃度近傍の評価はさらに精度が高いことが分かる
以上より、本実施形態に係る試料容器は、標準試料を保持する標準試料保持空間を更に備えており、標準試料保持空間に対する光透過部にも集光形状を備えているため、標準試料測定時においても試料内のパルス光の集光面積の変化を少なくすることができるため、さらに、高精度な測定を行うことが可能となる。
(第3の実施形態)
本発明に係る試料容器の第3の実施形態を説明する。図12は、第3の実施形態に係るコヒーレントアンチストークスラマン散乱顕微鏡用の測定治具の一例を示す断面図である。
本実施形態では、第2の実施形態で説明した標準試料11bbとして、固体を用いる場合に好適に使用される試料容器であり、標準試料保持空間11bに設けられている集光形状13bの曲率半径が、測定試料保持空間11aに設けられている集光形状13aの曲率半径と異なっている。その他の部分は、第2の実施形態と同様なため説明を省略する。
標準試料を用いて、測定試料の補正を行う場合において、標準試料内及び測定試料内のパルス光集光領域における集光面積は同一であることが好ましい。なお、標準試料は、液体のものと、固体のものと2種類存在する。しかしながら、液体と、固体では、当然、標準試料内におけるパルス光の屈折率が異なる場合があり、この場合において、集光形状の曲率半径が同じである場合には、標準試料内と、測定試料内において、入射したパルス光集光領域における集光面積が異なってしまう。このため、第1の光透過部12a、第2の光透過部12bのどちらか一方のパルス光を集光させる集光形状13a、13bの曲率半径を変化させることで、試料内のパルス光集光領域における集光面積を同一にすることができる。
なお、標準試料として固体を用いる場合には、例えば、ラマンスペクトルに構造ない母材のなかに、明確なピークを有する物質が均一に拡散されていることが重要で、さらには試料容器によるパルス光集光効果を実現するために、初めは液体状であり、試料容器に入れたのちに硬化することが望ましい。このような標準試料としては、例えば、エポキシ樹脂中にC60を均一に拡散させてものを試料容器に入れて硬化させた固体が好適に用いられる。この場合、エポキシ樹脂のラマススペクトルは1500[cm−1]近傍では殆ど構造が無いが、C60は1572[cm−1]に極めてシャープなピークを有している。また、試料容器形状から、エポキシ樹脂での集光面積が分かれば溶液中でのパルス光集光面積も推定できるが、本実施例ではなるべく同じ集光面積を得るために、屈折率の差を元に標準試料用と測定試料用の窪み内面の形状を変化させている。
図12に示した試料容器を用い、測定試料としてグルコース水溶液を作製し、具体的にその値を評価した。また、標準試料としてエポキシ樹脂中にC60を均一に拡散させてものを試料容器に入れて硬化させた固体を使用した。なお、この測定に用いたパルス光の作製には、Ti:Sapphireレーザーを2台用い、それぞれの装置より出力される800nmの光をポンプ光、ストークス光として利用した。また、パルス光の繰り返し周波数は80MHz、パルス光の長さは100フェムト秒としたものを用いた。また、試料に照射したポンプ光1ショットのエネルギーは100pJであり、また、ストークス光としては、800nmのパルス光を、フォトニック結晶ファイバー中を通過させることにより広帯域化し、さらに800nmより短波長側をフィルターによりカットすることにより作製した、このようにして作製したストークス光1ショットのエネルギーは90pJであった。また測定に使用したグルコース溶液の濃度は、実際の生体中の濃度を参考に50[mg/dl]から450[mg/dl]まで10[mg/dl]刻みとしたものを使用した。測定は、低濃度側から行い、測定が終わると試料容器を洗浄し、次の濃度の試料を測定することを繰り返した。また、アンチストークス光の測定は、300から15001 [cm−1] の領域で行い、 一回の測定には1秒を要している。
以上の測定の結果、測定試料の濃度(横軸)が50[mg/dl]から400[mg/dl]の間の誤差は約4%であり、従来の測定方法による誤差9%より小さい値が得られることが確認された。
本発明に係る試料容器が用いられるコヒーレントアンチストークスラマン散乱顕微鏡の一例を示す概念図。 第1の実施形態に係るコヒーレントアンチストークスラマン散乱顕微鏡用の試料容器の一例を示す断面図。 図2に示す試料容器を、図1に示すコヒーレントアンチストークスラマン散乱顕微鏡の試料容器保持部54に設置させた場合の一例を示す概念図。 第1の実施形態に係るコヒーレントアンチストークスラマン散乱顕微鏡用の試料容器の別の形態の一例を示す断面図。 図2に示す試料容器を用いて行った測定結果を示す結果図。 図13に示す試料容器を用いて行った測定結果を示す結果図。 第2の実施形態に係るコヒーレントアンチストークスラマン散乱顕微鏡用の試料容器の一例を示す断面図。 図7に示す試料容器を、図1に示すコヒーレントアンチストークスラマン散乱顕微鏡の試料容器保持部54に設置させた場合の一例を示す概念図。 図7に示す試料容器を、図1に示すコヒーレントアンチストークスラマン散乱顕微鏡の試料容器保持部54に設置させた場合の他の一例を示す概念図。 図7に示す試料容器を用いて行った測定結果を示す結果図。 図10において測定試料の濃度(横軸)150[mg/dl]から250[mg/dl]の範囲を拡大させた結果図。 第3の実施形態に係るコヒーレントアンチストークスラマン散乱顕微鏡用の試料容器の一例を示す断面図。 従来用いられている試料容器を説明するための概念図。
符号の説明
1 試料容器隔壁
1a 試料保持空間
1b 試料
2 光透過部
3 集光形状
4 パルス光
5 パルス光集光領域
11 試料容器隔壁
11a 測定試料保持空間
11aa 測定試料
11b 標準試料保持空間
11bb 標準試料
12a 第1の光透過部
12b 第2の光透過部
13a 集光形状
13b 集光形状
14 パルス光
15 標準試料
51 光源
52 光源
53 光学系
54 試料容器保持部
55 検出装置
101 試料
102 試料容器
103 光透過部
104 パルス光
105 パルス光集光領域
106 試料容器保持部

Claims (7)

  1. 試料を保持する試料保持空間を形成する試料容器隔壁と、
    前記試料容器隔壁の少なくとも一部に設けられ、前記試料保持空間に対してパルス光を透過させる透過材料で構成された光透過部と、を有し、
    前記光透過部は、前記パルス光を集光させる集光形状を備えていることを特徴とする試料容器。
  2. 測定試料を保持する測定試料保持空間及び標準試料を保持する標準試料保持空間をそれぞれ形成する試料容器隔壁と、
    前記試料容器隔壁の少なくとも一部に設けられ、前記測定試料保持空間に対してパルス光を透過させる透過材料で構成された第1の光透過部と、
    前記試料容器隔壁の少なくとも一部に設けられ、前記標準試料保持空間に対してパルス光を透過させる透過材料で構成された第2の光透過部と、を有し、
    前記第1の光透過部及び前記第2の光透過部は、前記パルス光を集光させる集光形状をそれぞれ備えていることを特徴とする試料容器。
  3. 前記集光手段は、曲面形状を有する凸部であることを特徴とする請求項2又は3に記載の試料容器。
  4. 前記透過材料は、シリカガラスで構成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の試料容器。
  5. 少なくとも二種類の波長を有する複数のパルス光を発生させる光源と、前記光源から発生された複数のパルス光を同一光路に集光する光学系と、前記光学系により集光されたパルス光を透過する試料容器と、前記試料容器内に保持された試料から放出されるコヒーレントアンチストークス光を検出する検出部とを備え、
    前記試料容器は、
    試料を保持する試料保持空間を形成する試料容器隔壁と、
    前記試料容器隔壁の少なくとも一部に設けられ、前記試料保持空間に対してパルス光を透過させる透過材料で構成された光透過部と、を有し、
    前記光透過部は、前記パルス光を集光させる集光形状を備えていることを特徴とする測定装置。
  6. 前記集光手段は、曲面形状を有する凸部であることを特徴とする請求項5に記載の測定装置。
  7. 前記透過材料は、シリカガラスで構成されていることを特徴とする請求項5又は6に記載の測定装置。
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