JP5100459B2 - NbTi系超電導線材及びその製造方法 - Google Patents

NbTi系超電導線材及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、多数のNbTi合金のフィラメントを銅マトリクス中に埋設したNbT i系超電導線材に関し、特に高磁場領域で大電流を通電することができる超電導線材に係るものである。
MRI装置やNMR装置などに用いられる超電導マグネットは、超電導現象を利用して電気抵抗を可及的にゼロとした超電導線材に大電流を通電して、高磁場を発生させるものであり、永久電流モードすなわち電流を通電したままで長時間運転される。こうした永久電流モード運転を行う場合、例えば磁場減衰率が年0.01%程度以下の高い磁場安定性が求められる。
超電導マグネットの素材として実用化されている金属系超電導線材としては、NbTi系超電導線材がよく知られており、例えば、特開平2−10612号公報(特許文献1)には、多数のNbTi合金フィラメントを銅マトリクス中に対称的に配置し、銅比(銅マトリクスの横断面積/NbTi合金フィラメントの総横断面積)を3以上と大きくすることによって、高度な磁場の均一性を達成する技術が提案されている。また特開2002-304924号公報(特許文献2)には、NbTi合金フィラメントの直径を3〜20μmとし、銅比を6〜8の範囲とし、線材横断面積内におけるフィラメントの存在領域を中央部の外周に、例えばドーナツ状に選択的に配置することによって、押出、伸線等の縮径加工の際にフィラメントに異常変形が生じるこを防止して、フィラメントの健全性、ひいては臨界電流密度の低下を抑制した技術が提案されている。
これらのNbTi系超電導線材は、通常、銅ケースにNbTi系合金ロッドを挿入して熱間押出、伸線を行い単芯線を製造し、次に多数の単芯線を銅心の外側に並べて銅製パイプに挿入し、熱間押出した後、冷間伸線にて縮径加工し、冷間伸線の際にα−Ti相の析出熱処理を施すことによって製造される。
特開平2-10612号公報 特開2002-304924号公報
近年、MRI装置やNMR装置などの超電導マグネットにおいては、マグネットの高磁場化、コンパクト化に伴い、これに用いられるNbTi系超電導線材が7〜10T程度の高磁場領域で使用される傾向にある。このため、高い運転電流を流すことができるよう、超電導線材の臨界電流(Ic)も運転電流に応じて高いことが要望される。Icはフィラメントの直径(以下、「直径」は単に「径」ということがある。)に大きく依存するため、ヒステリシス損を考慮する必要がない永久電流モードでの使用では、超電導線材のフィラメント径は後述するn値の考え方もあり、大きい方が有利である。
また、線材の加工上も、フィラメント径が太い方が加工量が少なくて済み、長さ方向における横断面の面積変化が小さくなるので、超電導線材の健全性が確保され易い利点がある。超電導線材の健全性はIcに大きく影響するため、健全性が確保され易いことは、高Icを確保する上でも有利である。超電導線材の健全性は、永久電流モード運転中に超電導線材自身が発生する抵抗に係わる下記(1) 式における指数n(「n値」という。)で表され、n値は長さ方向におけるフィラメント径(横断面の面積)の均一性が高いほど、高い値を採ることが知られている。
V=Vc(Iop/Ic)n …(1)
但し、Vは超電導線材に運転電流を通電したときに発生する電圧であり、Iopは超電導線材の運転電流、Icは超電導線材の臨界電流、Vcは基準電圧である。
NbTi系超電導線材は、上記のとおり、冷間伸線の過程でNbTi合金フィラメントにα−Ti相を析出させるための熱処理が施される。フィラメント中に析出したα−Ti相は、超電導線体の内部に導入された量子化された磁束をピン止めし、磁束を動けなくして、臨界電流密度Jcの低下を抑制する作用を有する。
ところが、フィラメント径を太径にすると、フィラメントの健全性が低下するおそれはないものの、加工量が制限されるために、α−Ti相の生成量、生成したα−Ti相に対する加工度が低下し、十分な磁束のピン止め作用を得ることがでない。特に、高磁場領域でNbTi系超電導線材を使用する場合、使用される磁場の下での磁束間隔が非常に狭くなるため、それに応じたα−Ti相の間隔を確保する必要があるが、フィラメントに対して冷間で強加工することができないため、磁束の拘束が不十分となり、高電流、高磁場で使用するのに適した十分高いJcが得られない。実際、従来のNbTi系超電導線材では、フィラメント径が制限され、特許文献1の超電導線材では線材外径が1mm、銅比が6.6、フィラメント径が73μm 程度が実現されているにすぎない。なお、特許文献2に記載のNbTi系超電導線材は、核融合装置用線材であり、ヒステリシス損失を低減させるためにフィラメント径は30μm 以下の小径に抑えられている。
本発明はかかる問題に鑑みなされたもので、高n値を確保することができる太径のNbTi系合金フィラメントを備え、しかも磁束のピン止め効果が低下することなく、高いJcを有するNbTi系超電導線材およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明のNbTi系超電導線材は、銅マトリクス中に複数のNbTi合金フィラメントが埋設されたNbTi系超電導線材であって、銅比(銅マトリクスの横断面積/全てのNbTi合金フィラメントの総横断面積)が0.7〜3.5、前記NbTi合金フィラメントの平均直径dが100〜150μm であり、前記NbTi合金フィラメント中に層状のα−Ti相を有し、フィラメントの横断面における前記α−Ti相の面積率が15〜25%で、かつフィラメントの横断面の中心を中心として半径d/4の円周上において等間隔に配置された4部位で測定した前記α−Ti相の層間隔の平均が10〜20nmとされたものである。前記超電導線材は、その線径(平均直径)を1〜3mmとすることができる。
上記本発明のNbTi系超電導線材によると、0.7〜3.5の銅比の下で、NbTi合金フィラメントを100〜150μm と太径にするので、線材の線径を1〜3mm程度の比較的太径としても、線材の健全性を確保しながら高い臨界電流密度Jcを得ることができる。しかも、フィラメントの横断面における面積率が15〜25%で、かつ横断面の所定部位のα−Ti相の層間隔の平均が10〜20nmと狭くされた層状のα−Ti相を有するので、7〜9T程度の高磁場領域で使用した場合でも、フィラメント内での磁束ピン止め効果を有効に発揮させることができ、フィラメント内での磁束の運動に起因したJcの低下を抑制することができる。このため、高磁場領域での使用においても優れた超電導特性を発揮できることから、運転電流を大きくすることができる。
また、上記NbTi系超電導線材の製造方法は、銅マトリクス中に複数のNbTi合金フィラメントが埋設されたNbTi系超電導線材の製造方法であって、筒状銅ケースにNbTi合金ロッドを挿入して組み立てた単芯組立体を熱間押出して単芯押出材を得て、加工率RをR=ln(加工前の線材の横断面積/加工後の線材の横断面積)とするとき、前記単芯押出材を加工率4.0〜6.0で冷間伸線した後、α−Ti相析出熱処理を施して単芯伸線材を製作し、前記単芯伸線材の複数本を、銅比が0.7〜3.5となるように銅パイプに挿入して組み立てた多芯組立体を加工率0.5〜1.2で冷間伸線した後、α−Ti相析出熱処理を施す加工熱処理を2回以上行い、最後のα−Ti相析出熱処理後に加工率4.0〜6.0で冷間伸線して、前記NbTi合金フィラメントの平均直径dを100〜150μm とするNbTi系超電導線材を製造する方法である。上記製造方法において、超電導線材の線径(平均直径)を1〜3mmとすることができる。また、前記α−Ti相析出熱処理として、伸線材を380〜420℃の温度範囲内で、50〜100hr保持することができる。
上記本発明の製造方法によれば、単芯押出材に対して所定加工率での冷間伸線後にα−Ti相析出熱処理を施し、多芯組立体については熱間押出を行うことなく、その冷間伸線の際に所定加工率で冷間伸線した後にα−Ti相析出熱処理を施す加工熱処理を2回以上行い、最後の熱処理後に強力な冷間伸線を施すので、NbTi合金フィラメントの横断面における面積率が15〜25%で、横断面の所定部位における層間隔の平均が10〜20nmの層状のα−Ti相を容易に形成することができ、所期のNbTi系超電導線材を特殊な設備を用いることなく、容易に製造することができる。
本発明のNbTi系超電導線材によれば、銅比が低く、NbTi合金フィラメントが太径であり、しかもα−Ti相の面積率、平均層間隔が高磁場領域下での磁束ピン止め作用に適したものであるので、比較的太い線径であっても、高n値、高臨界電流密度を実現することができ、高磁場領域、永久電流モード下での使用に好適であり、MRI装置やNMR装置などで用いる超電導マグネットの超電導線材として好適に使用される。また、本発明の製造方法によれば、上記NbTi系超電導線材を特殊な設備を用いることなく容易に製造することができる。
本発明の実施形態に係るNbTi系超電導線材における銅比、NbTi合金フィラメント径、NbTi合金フィラメントにおけるα−Ti相の量、平均相間隔について順次説明する。
実施形態のNbTi系超電導線材における銅比は0.7〜3.5に設定される。7〜10T程度の高磁場領域で使用する超電導線材では、100〜300A程度の通電が求められるため、これに応じて、特に線径が1〜3mm程度の線材では、線材の臨界電流Icを高める必要がある。前記1〜3mm程度の線材は、装置の小型化等の要求から求められるサイズである。また、高い磁場安定度を確保する必要もある。これらの要求を満たすには、銅比を3.5以下にする必要がある。一方、銅比が0.7未満になると、伸線中にNbTi合金フィラメントの周囲に配置される安定化銅層に割れが生じ易くなり、健全な冷間伸線加工が困難になる。このため、健全な加工性を確保するため、銅比の下限を0.7とする。
図1は、銅比が0.7及び3.5のNbTi系超電導線材(線径1mm)について磁場の強さと臨界電流Icとの関係を調査した結果を示すグラフであり、銅比が0.7のものでは10Tまで、銅比3.5のものでも9Tまで、Icが100A以上であることを示している。なお、この実験に使用したNbTi系超電導線材は、フィラメント材質がNb−47mass%Ti合金、フィラメント径(平均直径)が108μm 、後述するα−Ti相の面積率は19%、α−Ti相の平均層間隔は15nmである。銅比はNbTi合金フィラメントの本数によって調整した。
また、本発明の実施形態に係るNbTi系超電導線材におけるNbTi合金フィラメント径(平均直径)は100〜150μm に設定される。製造過程で線材に強加工を施すと、フィラメント径が小さくなるとともに、フィラメントの断面形状が不均一変形する可能性が高くなり、フィラメントの健全性(n値)が低下し、引いては臨界電流密度Jcが低下するようになる。これらの観点からフィラメントは太径の方が好ましく、本実施形態ではフィラメント径の下限を100μm 、好ましくは120μm とする。一方、フィラメント径が必要以上に大きくなると、冷間伸線の際の加工率が必然的に減少するため、高磁場下で必要とされる小さい層間隔の層状α−Ti相が形成されず、ひいてはJcが低下するようになる。また、フィラメント径が150μm 超になると、磁場中に置かれた超電導線材に電流を通電していくと、太径フィラメントに起因する磁束ジャンプが頻繁に生じるようになる。このような超電導線材でマグネットを製作すると、励磁や消磁中に頻繁にクエンチが発生し、実用的でない。このため、フィラメント径の上限を150μm とする。なお、フィラメントの横断面形状が円形でない場合、例えば六角形の場合、その断面積が等しい円を想定し、その円の直径(相当円直径)をフィラメント径(平均直径)とすればよい。
前記NbTi合金フィラメントを形成するNbTi合金としては、通常、Ti:40〜60mass%(好ましくは45〜50mass%)、残部NbからなるNbTi合金、あるいはNbの一部に代えて、Ta、Hf等の元素を5mass%程度以下含有するNbTi合金が用いられる。
次に、前記NbTi合金フィラメント中の層状のα−Ti相の量および層間隔について説明する。磁場中に置かれた超電導導体の内部には量子化された磁束が導入される。この磁束が自由に動き回ると、超電導導体が発熱するようになり、著しくなると超電導状態が破壊される。この磁束をピン止めし、動けないようにするため、超電導導体となるNbTi合金フィラメント中にα−Ti相を導入する。フィラメント中に磁束をピン止めするα−Ti相を導入するには、後述するように、超電導線材の製造過程で、冷間伸線後にα−Ti相析出熱処理を施す加工熱処理を所定回数行う。これにより、フィラメント中に析出した粒状のα−Ti相が長さ方向に引き伸ばされ、α−Ti相とβーTi相とが不定形に屈曲した層状形態(このような形態を「リボン状」ということがある。)の組織を形成するようになる。
前記α−Ti相による磁束ピン止め作用は、NbTi合金フィラメントの横断面におけるα−Ti相の面積率と、その層間隔の平均によって評価することができる。この実施形態では、α−Ti相の層間隔の平均として、フィラメントの横断面を電子顕微鏡を用いて2万倍で観察し、フィラメントの平均直径をdとするとき、フィラメントの横断面の中心を中心として半径d/4の円周上において等間隔に配置された4部位でα−Ti相の層間隔を測定し、その平均値を用いることとした。本発明者の実験によれば、7〜10Tの高磁場で超電導線材を使用する場合、高Jcを確保するにはα−Ti相の層間隔平均を10〜20nmにすることが必要であり、またこのような層間隔平均を確保する場合、伸線加工後のNbTi合金フィラメントの横断面におけるα−Ti相が15〜25面積%となっていることが見出された。このため、本実施形態では、フィラメント横断面におけるα−Ti相の量を15〜25面積%とし、前記規定による層間隔の平均値を10〜20nmとした。
上記NbTi系超電導線材は以下のようにして製造される。まず、筒状銅ケースにNbTi合金ロッドを挿入して単芯組立体を製作し、この単芯組立体を熱間押出してNbTi合金の単芯押出材を製作する。前記単芯押出材の銅比は、円滑に熱間押出できればよく、通常、0.2〜0.8、好ましくは0.2〜0.6程度に設定される。前記単芯押出材は、加工率を4.0以上、6.0以下として冷間伸線した後、α−Ti相析出熱処理を施す。前記単芯押出材に歪エネルギーを導入してα−Ti相の析出を促進するため、加工率は4.0以上にすることが必要である。加工率を6.0超とすると、線径が1〜3mm程度の超電導線材を製造する場合、超電導線材中のフィラメント径を100μm 以上にする際の最終加工率が小さくなるため、加工率の上限を6.0とする。前記α−Ti相析出熱処理としては、通常、380〜420℃程度で、50〜100hr程度保持する。
前記α−Ti相析出熱処理後の単芯伸線材は、必要に応じて冷間伸線を施し、最終伸線として六角穴形のダイスに通して横断面を六角形に整形してもよい。線材断面形状を六角形断面とすることにより、単芯伸線材を密に束ね易くなる。単芯伸線材のα−Ti相析出熱処理後の加工率は制限されないが、通常2.0程度以下でよく、最終単芯伸線材の平均径は、通常4〜8mm程度、銅比は0.2〜0.8程度とされる。なお、加工率Rとは、下記式で表される値である。
R=ln(加工前の線材の横断面積/加工後の線材の横断面積)
次に、前記単芯伸線材の複数本を銅パイプに挿入して多芯組立体を組み立てる。多芯組立体の銅比は、単芯伸線材の挿入本数を調整して、目的の超電導線材の銅比が得られるように0.7〜3.5とする。このようにして組み立てた多芯組立体に対して、加工率を0.5〜1.2として冷間伸線した後、α−Ti相析出熱処理を行う加工熱処理を少なくとも2回行い、最後の熱処理後に加工率4.0以上、6.0以下の丸形断面の最終伸線を施し、所定のα−Ti相の量と層間隔平均を有するNbTi合金フィラメントが銅マトリクス中に埋設された超電導線材を得る。加工熱処理の最後のα−Ti相析出熱処理は、α−Ti相の析出を促進し、高加工度の最終伸線によって所定のα−Ti相量および層間隔を確保できるように加熱温度を400〜420℃、及び/又は保持時間を80〜100hrと高い目に設定することが好ましい。
次に、本発明のNbTi系超電導線材について具体的実施例を挙げて説明するが、本発明はかかる実施例によって限定的に解釈されるものではない。
[実施例1]
Nb−47mass%Ti合金のロッド(外径100mm)を純銅製の筒状ケース(外径125mm)に密に挿入し、先端部および後端部を銅製蓋材で封止し、押出ビレット(単芯組立体)を製作した。図2の製造工程図に示すように、この押出ビレットを熱間押出して単芯押出材(外径60mm)を製作した。この単芯押出材を加工率R=4.5で冷間伸線した後、400℃で60hr保持するα−Ti相析出熱処理を施した。その後、さらに冷間伸線して丸形断面の単芯伸線材を得て、さらに最終伸線として六角穴形のダイスに通して横断面径状を六角形に整形した最終単芯伸線材を得た。最終単芯伸線材の平均径は6.3mm、銅比は0.4であった。
次に、前記単芯伸線材を55本束ねて、純銅製の銅パイプ(外径60mm、内径50mm)に挿入して多芯組立体を製作し、この多芯組立体を丸断面のダイスに通して冷間伸線した。この伸線加工中に、図2に示すように、加工率1.0で伸線した後、400℃で60hr保持するα−Ti相析出熱処理を2回行った。2回目(最後)の熱処理後、さらに5.0で冷間伸線を行って最終多芯伸線材(超電導線材)を得た。この最終線材の平均径は1.5mmであり、銅比は1.0、NbTi合金フィラメント平均径は150μm であった。
また、NbTi合金フィラメントの横断面を電子顕微鏡を用いて6000倍で観察し、観察画像を画像処理し、視野10μm ×10μm におけるα−Ti相の面積率を測定した。画像処理に際して、画像にコントラストを付けるとα−Ti相は黒色、マトリックス(NbTi)は白色となるので、黒色領域の割合からα−Ti相の面積率を求めた。その結果、α−Ti相は21面積%であった。
また、NbTi合金フィラメント(平均直径d)の横断面を電子顕微鏡を用いて2万倍で観察し、フィラメントの中心を中心として半径d/4の円周上において等間隔に配置された4部位で層間隔を測定し、その平均を取ってα−Ti相の層間隔平均とした。その結果、層間隔平均は20nmであった。
さらに、上記超電導線材を用いてn値、外部磁場9Tにおける臨界電流Icおよび臨界電流密度Jc、n値を以下の要領により求めた。超電導線材を温度4.2K、外部磁場9Tの条件で通電し、4端子法によって発生電圧を測定し、この値が0.1μV/cmの電界が発生した電流値(臨界電流Ic)を測定し、線材の非銅部(フィラメント部)の横断面積で除してJcを求めた。また、Icと電圧の関係曲線において0.1μV/cmと1.0μV/cmの間のデータを両対数表示し、その傾きとしてn値を求めた。その結果、n値=31、Jc=635A/mm2 であった。
[実施例2]
Nb−47mass%Ti合金のロッド(外径100mm)を純銅製の筒状ケース(外径125mm)に密に挿入し、先端部および後端部を銅製蓋材で封止し、押出ビレット(単芯組立体)を製作した。この押出ビレットを熱間押出して単芯押出材(外径60mm)を製作した。この単芯押出材を加工率R=4.9で冷間伸線した後、400℃で60hr保持するα−Ti相析出熱処理を施した。その後、さらに冷間伸線して丸形断面の単芯伸線材を得て、さらに最終伸線として六角穴形のダイスに通して横断面径状を六角形に整形した最終単芯伸線材を得た。最終単芯伸線材の平均径は5.0mm、銅比は0.4であった。
この六角形断面の最終単芯伸線材を85本束ねて銅パイプに挿入し、組み立てた多芯組立体を、実施例1と同様にして、加工熱処理を施し、加工率5で最終冷間伸線を行った。但し、最後のα−Ti相析出熱処理の保持温度は80hrとした。その結果、最終線材の平均径が1.5mm、銅比が1.0、NbTi合金フィラメント平均径が100μm の超電導線材が得られた。この超電導線材のフィラメント横断面におけるα−Ti相の面積率、層間隔平均を上記実施例1と同様にして調べたところ、面積率は20%、層間隔平均は16nmであった。また、この超電導線材のn値、9TでのJcを実施例1と同様にして調べたところ、n値は26、Jcは658A/mm2 であった。
[従来例1]
Nb−47mass%Ti合金のロッド(直径100mm)を純銅製の筒状ケース(内径102mm、外径125mm)に挿入し、先端部および後端部を銅製蓋材で封止し、押出ビレット(単芯組立体)を製作した。図3の工程図に示すように、この押出ビレットを熱間押出して単芯押出材(外径60mm)を得た後、この単芯押出材を冷間伸線し、丸形断面の単芯伸線材を得て、さらに六角穴形のダイスに前記丸形断面の単芯伸線材を通して横断面が六角形の最終単芯伸線材を得た。最終単芯伸線材の平均径は6.3mm、銅比は0.4であった。
得られた最終単芯伸線材の55本を銅パイプに挿入して多芯組立体を組み立てて、熱間押出し、さらに冷間伸線を行った。冷間伸線中に、図3に示す加工率Rで伸線後、400℃で60hr保持するα−Ti相析出熱処理を3回施し、また最後の熱処理から最終線径(1.5mm)まで加工率3.0で冷間伸線した。このようにして製造された最終多芯伸線材(超電導線材)の銅比は1.0、NbTi合金フィラメント平均径は150μm であった。この超電導線材のフィラメント横断面におけるα−Ti相の面積率、層間隔平均を上記実施例1と同様にして調べたところ、面積率は12%、平均間隔は71nmであった。また、この超電導線材のn値、9TでのJcを調べたところ、n値は25、Jcは556A/mm2 であった。
[従来例2]
従来例1と同様にして六角形断面の最終単芯伸線材を製作し、この単芯伸線材の55本を銅パイプに挿入して多芯組立体を組み立てて、熱間押出後、冷間伸線を行った。冷間伸線中に、図4で示す加工率Rで伸線後、400℃で60hr保持するα−Ti相析出熱処理を2回施し、また最後の熱処理から最終線材径(1.5mm)まで加工率4.0で冷間伸線した。このようにして製造された最終多芯伸線材(超電導線材)の銅比は1.0、NbTi合金フィラメント平均径は150μm であった。この超電導線材のフィラメント横断面におけるα−Ti相の面積率、層間隔平均を上記実施例1と同様にして調べたところ、面積率は8%、層間隔平均は52nmであった。また、この超電導線材のn値、9TでのJcを調べたところ、n値は25、Jcは482A/mm2 であった。
本発明の実施形態に係るNbTi系超電導線材(線形1mm)の磁場の強さと臨界電流Icとの関係を示すグラフである。 実施例1に係る超電導線材の製造工程を示すブロック図である。 従来例1に係る超電導線材の製造工程を示すブロック図である。 従来例2に係る超電導線材の製造工程を示すブロック図である。

Claims (5)

  1. 銅マトリクス中に複数のNbTi合金フィラメントが埋設されたNbTi系超電導線材であって、
    銅比(銅マトリクスの横断面積/全てのNbTi合金フィラメントの総横断面積)が0.7〜3.5、前記NbTi合金フィラメントの平均直径dが100〜150μm であり、前記NbTi合金フィラメント中に層状のα−Ti相を有し、フィラメントの横断面における前記α−Ti相の面積率が15〜25%で、かつフィラメントの横断面の中心を中心として半径d/4の円周上において等間隔に配置された4部位で測定した前記α−Ti相の層間隔の平均が10〜20nmである、NbTi系超電導線材。
  2. 超電導線材の平均直径が1〜3mmである、請求項1に記載したNbTi系超電導線材。
  3. 請求項1に記載した、銅マトリクス中に複数のNbTi合金フィラメントが埋設されたNbTi系超電導線材の製造方法であって、
    筒状銅ケースにNbTi合金ロッドを挿入して組み立てた単芯組立体を熱間押出して単芯押出材を得て、加工率RをR=ln(加工前の線材の横断面積/加工後の線材の横断面積)とするとき、前記単芯押出材を加工率4.0〜6.0で冷間伸線した後、α−Ti相析出熱処理を施して単芯伸線材を製作し、
    前記単芯伸線材の複数本を、銅比が0.7〜3.5となるように銅パイプに挿入して組み立てた多芯組立体を加工率0.5〜1.2で冷間伸線した後、α−Ti相析出熱処理を施す加工熱処理を2回以上行い、最後のα−Ti相析出熱処理後に加工率4.0〜6.0で冷間伸線して、前記NbTi合金フィラメントの平均直径dを100〜150μm とする、NbTi系超電導線材の製造方法。
  4. 最終冷間伸線後の線材の平均直径を1〜3mmとする、請求項3に記載した製造方法。
  5. 前記α−Ti相析出熱処理は、伸線材を380〜420℃の温度範囲内で、50〜100hr保持する、請求項3又は4に記載した製造方法。
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