JP3735046B2 - 銅安定化NbTi系超電導線材及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はNbTi系超電導線材に関する。詳しくは、高臨界電流密度(Jc)、低交流損失、及び高い熱的電気的安定性を備えたNbTi系超電導線材及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近の核融合装置用NbTi線については、高電流密度、低交流損失(特にヒステリシス損失)、及び高い熱的電気的安定性を備えており、更に安価であることへの要望が強い。要望特性の特徴を以下に説明する。臨界電流密度(以下Jcと表現する)はフィラメント直径に依存し、高Jc特性を得るための適正値は15〜30μmとなる。ヒステリシス損失は(1)式で表され、Jc及びフィラメント直径に比例する。従って、ヒステリシス損失はフィラメント直径が小さくなるほど低い値となるので、要求性能に応じてフィラメント直径が設定される。
【0003】
【数1】
【0004】
高い熱的電気的安定性を得るには、安定化に用いるマトリクス材料に、例えば電気伝導性及び熱伝導性とも大きい銅を使用し、かつNbTiに対する銅の使用比率(以下銅比といい、銅体積/NbTi体積で表わす)を高めた線材とすれば良い。フィラメントの健全性を維持するために用いる高価な補強材、例えばCuNi(10%Ni)、CuSi、アルミナ分散銅に換えて銅を用いるとより安価な線が製造できる。
【0005】
ここで、健全性とは「形状の健全性」のことを言い、具体的には真円度が高く、長手方向の断面積変化が小さく、横断面内の場所による断面積変化が小さいことである。健全性が悪いと、特に長手方向の面積変化において健全性が悪い場合、面積極小部で通信容量が制限され、Jcの低下につながる。また、真円度が小さく、隣り合うフィラメント同士の間隔が狭くなると、交流損失(結合損失)が増大する。
【0006】
NbTi線の製造方法の概略を示すと以下のようである。NbTiはTiの含有量が重量比40〜60%のものが用いられる。中にはTaを数%加える場合もある。このNbTiロッドを、例えば銅製パイプなどの母材に挿入して線引きし、単心線を作る。次に多数の単心線を必要な断面形状、例えば断面が円形の銅心の外側に並べ、これを銅製の円形パイプに挿入し、必要な回数の線引き、押出し、熱処理等を繰返す、いわゆる縮径加工を行ってNbTi線を得る。このNbTi線について要求される性能は、例えばJcが2900A/mm2(5T)、銅比は7、フィラメント直径は10〜15μmである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、マトリックス材料に用いる銅の比率を単に高めただけで超電導線材を製造すると、例えば押出、伸線等の縮径加工の際にフィラメントの異常変形が生じる。そのため、線材の長さ方向でフィラメント直径が大きく変動する、いわゆるフィラメントソーセージング現象が発生したり、フィラメントが断線し易くなるという問題がおきていた。この現象等が発生すると電流密度が著しく低下するので、従来はフィラメント直径は20μm、銅比は5程度、Jcは2700A/mm2が限界であると考えられていた。
【0008】
ところで、フィラメントの周囲あるいはフィラメント集合体のフィラメント群の周囲に、銅よりも変形抵抗の大きい材料を配置した構造とすると、フィラメントの異常変形が著しく改善され、サブミクロンオーダー直径の健全なフィラメントが得られることは広く知られている。交流用超電導線では、フィラメント周囲にCuNi、CuSi等の高電気抵抗、高変形抵抗材料を配置することにより、低交流損失化とともにフィラメント損傷の抑制を実現している。
【0009】
しかしながら、CuNi(10wt%Ni)等は純銅に比べて電気伝導性及び熱伝導性が小さいため、これを用いた超電導線の熱的電気的安定性は低くなる。また、CuNi等を横断面に配置した構造に加工するには、超電導線のみならず、Cu心、CuNi心線を六角線に仕上げてくみ上げる等の複雑なビレット設計をしなければならない。そのため、CuNiが高価なことと相まって、ビレットの作製に多大な労力を必要とするので線材が高価となる。
【0010】
従って、高安定性が要求され、結合損失の制約が比較的小さい環境で使用される線材の場合には、マトリクスを銅のみとすることが好ましい。なお、高変形抵抗材料として、粒子分散型銅合金や繊維強化型銅合金等を用いると、安定性は改善されるが、高価であることに変わりはない。
【0011】
本発明者等は、マトリクス材料用の銅量を多くすると、押出、伸線等の縮径加工の際にフィラメントが異常変形することについて原因を調査した。その結果、第1に、押出の際に過大な付加的せん断変形を受けること、第2に、マトリクス比(銅比)が高い構造のため伸線時に過大な引張応力が加えられることが原因であることが判った。
【0012】
第1の原因については、せん断変形は線材横断面の外周側に位置するフィラメントほど大きくなることが解明できた。第2の原因については、フィラメントに加えられる引張応力が横断面の中央部に向かうほど大きくいため、フィラメントの不均一変形は横断面の中央部に向かうほど大きくなることが解明できた。さらに、これら不均一変形は、フィラメント周囲の銅比が高いほど大きくなることが解明できた。
【0013】
上記の解明結果は、線材横断面のフィラメント配置を適正化するとフィラメントの異常変形が抑制できることを示唆するものであった。すなわち、本発明は、線材横断面のフィラメント直径の範囲及び銅比の範囲を限定し、フィラメントの存在領域を限定するとともに、フィラメント周囲の銅比を限定することによりフィラメント健全性を確保した線材を得ることを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明の第1の態様は、表面がNbで覆われたNbTi製のフィラメント及び銅マトリクスからなる線材であり、フィラメント径が3〜20μmで、かつ、銅比が6〜8であり、該超電導線材の外径をDとするとき、線材横断面内におけるフィラメントの存在領域が横断面の0.3D〜0.9Dの範囲であり、フィラメント周囲の銅比が0.2〜0.9であることを特徴とするNbTi系超電導線材である。
【0015】
本発明の第2の態様は、前記フィラメントで構成されるセグメントが線材横断面内に同心円上に配置されていることを特徴とするNbTi系超電導線材である。
【0016】
本発明の第3の態様は、前記セグメントは、2個以上が線材横断面の中心に対称に配置されたものであることを特徴とするNbTi系超電導線材である。
【0017】
本発明の第4の態様は、前記フィラメント周囲の銅比が0.2〜0.5であることを特徴とするNbTi系超電導線材である。
【0018】
本発明の第5の態様は、以下の工程からなるNbTi系超電導線の製造方法である、
(a)Tiの含有量が重量比40〜60%のNbTi製のロッド、Nb製のパイプ、銅製のパイプを用意し、
(b)前記NbTi製のロッドを前記Nb製パイプに挿入したものを更に銅製パイプに挿入し、フィラメント周囲の銅比が0.2〜0.9となるように縮径加工して単心線を作製し、
(c)超電導線材の外径をDとするとき、線材横断面内におけるフィラメントの存在領域が横断面の0.3D〜0.9Dの範囲となるように、多数の前記単心線を断面が円形の銅心の外側に並べ、円形の銅製パイプに挿入し、
(d)フィラメント直径が3〜20μm、銅比が6〜8のフィラメント及び銅マトリクスからなるNbTi線に縮径加工する。
【0019】
本発明の第6の態様は、以下の工程からなるNbTi系超電導線の製造方法である、
(a)Tiの含有量が重量比40〜60%のNbTi製のロッド、Nb製のパイプ、銅製のパイプを用意し、
(b)前記NbTi製のロッドを前記Nb製パイプに挿入したものを更に銅製パイプに挿入し、フィラメント周囲の銅比が0.2〜0.9となるように縮径加工して単心線を作製し、多数の単心線を集合させてセグメントとし、
(c)超電導線材の外径をDとするとき、線材横断面内におけるフィラメントの存在領域が横断面の0.3D〜0.9Dの範囲となるように、前記セグメントを断面が円形の銅に設けた孔に挿入して、
(d)フィラメント直径が3〜20μm、銅比が6〜8のフィラメント及び銅マトリクスからなるNbTi線を縮径加工する。
【0020】
本発明の第7の態様は、前記フィラメントで構成されるセグメントが線材横断面内に同心円上に配置されていることを特徴とするNbTi系超電導線材の製造方法である。
【0021】
本発明の第8の態様は、前記セグメントは、2個以上が線材横断面の中心に対称に配置されたものであることを特徴とするNbTi系超電導線材の製造方法である。
【0022】
本発明の第9の態様は、前記フィラメント周囲の銅比が0.2〜0.5であることを特徴とするNbTi系超電導線材の製造方法である。
【0023】
【実施の形態】
(実施の形態1)
図1の略図を用いて説明する。図1において、6は銅である。7はフィラメント部である。8は銅心である。9は線材の直径でありDで示す。本発明は、表面がNbで覆われたNbTi製のフィラメント及び銅マトリクスからなる線材であり、フィラメント直径は3〜20μmであり、銅比(銅体積/NbTi体積)は6〜8である。更に、該超電導線材の外径をDとするとき、線材横断面内におけるフィラメントの存在領域が横断面の0.3D〜0.9Dの範囲であり、フィラメント外側の銅比が0.2〜0.9である。
【0024】
本発明ではフィラメント直径は3〜20μmである。その理由は、20μmを超えるとヒステリシス損失が過大となり、3μmを下回るとフィラメント健全性が維持できなくなるからである。
【0025】
本発明では、フィラメントのNbTi体積に対するマトリクスの銅体積の比を6〜8とする。その理由は、8を超えるとNbTi量が小さくなってIc(臨界電流値)が小さくなるためであり、6を下回ると安定性が損なわれるからである。
【0026】
さらに、線材横断面におけるフィラメントの存在領域を0.3D〜0.9Dの領域に限定するとともに、フィラメント周囲の銅比を0.2〜0.9、好ましくは0.2〜0.5に限定することにより、フィラメントの健全性が確保できる。
【0027】
フィラメントの存在領域は、線材の直径Dに対して0.3D〜0.9Dの範囲に限定する。フィラメントの存在領域とは、線の中心に対してドーナツ状同心円に、すなわち、円の中心から半径が0.3D/2〜0.9D/2の同心円内にフィラメントの領域が存在することを意味する。ここで、存在領域の範囲を限定する理由は、押出加工時に受けるせん断変形は、線材横断面の外周側にフィラメントが位置するほど大きくなり、横断面中央部に向かうほど伸線加工時のフィラメントの不均一変形も大きくなるからである。
【0028】
ここで、フィラメント周囲の銅比について、図2の銅マトリクスNbTi系超電導線材の略図を用いて説明する。フィラメント周囲の銅比とは、銅マトリクス1のNbTiフィラメント3の直径をフィラメント直径4とし、フィラメント3同士の間隔をフィラメント間隔5とした場合に下記の数式2で示される値である。
【0029】
【数2】
【0030】
ここで、フィラメント周囲の銅比を0.2〜0.9に限定する理由は、フィラメント周囲の銅比が高いほど過大なせん断変形や引抜応力によるフィラメントの不均一変形が大きくなるが、逆に銅比を小さくし過ぎると結合損失が増大してしまうためである。
【0031】
このようなNbTi線は次のように作成する。Tiの含有量が重量比40〜60%のNbTi製のロッド、Nb製のパイプ、銅製のパイプを用意し、NbTi製のロッドをNb製パイプに挿入し、これを銅製パイプに挿入して線引きし単心線を作る。NbTiにはTaを数%加えても良い。次に、必要な数の単心線を断面が円形の銅心の外側に並べ、これを所定厚さの銅製の円形パイプに挿入する。次に、必要な回数だけ線引きを繰返して、フィラメント直径が3〜20μmで、かつ、銅比が6〜8であり、線材の外径をDとするとき、線材横断面内におけるフィラメントの存在領域が横断面の0.3D〜0.9Dの範囲であり、フィラメント周囲の銅比が0.2〜0.9のフィラメント及び銅マトリクスからなるNbTi線を得る。
【0032】
具体的な数字を用いて、このようなNbTi超電導線の作成方法の例を以下に示す。長さが750mmで直径が150mmφのNbTi(47wt%Ti)製ロッドを、内径が152mm、外径が154mm、厚さが1mmのNb管に挿入する。これを長さが800mm、外径が200mm、内径が155mmの銅製パイプに挿入し、蓋閉めしてビレットを作製する。このビレットを、押出、伸線、銅取り加工等のいわゆる縮径加工を行って細径化し、銅比を調整して外径が5mm(NbTiは4.3mmφ)で銅比が0.5の単心線を得る。
【0033】
次に、この単心線272本を、中心に長さ760mm、直径が100mmの銅心を配置した長さ800mm、外径が200mm、内径が135mmの銅管に挿入する。単心線は導管と銅心の間に配置される。蓋閉めしてビレットとし、押出、伸線、銅取り加工等により縮径加工し、外径が0.7mm、フィラメント直径が15μm、銅比が7、フィラメント周囲の銅比が0.5であり、線の外径をDとするとき、フィラメントの存在領域が横断面の0.5D〜0.7Dの範囲であるNbTi線が得られる。
【0034】
(実施の形態2)
伸線時に発生する不均一変形を抑制する目的で、実施の形態の1のようにフィラメントを線の外周近くにドーナツ状同心円に配置すると、フィラメント数が同じ場合には、外周になるほどドーナツ状フィラメント群の半径方向の厚みが薄くなる。従って、フィラメント群のドーナツ状同心円の最外層と最内層に配置されるフィラメント数の割合が相対的に大きくなる。これら最外層と最内層のフィラメントは、銅マトリクスとの境界に存しており、周囲はフイラメント同士で拘束されていないので、押出加工や伸線加工中にフィラメントソーセージングを起こし易い。
【0035】
フィラメントソーセージングを回避するためには、銅マトリクスとの境目に位置するフィラメント数を少なくすれば良い。そこで、多数のフィラメントからなる複数のフイラメント群(以下セグメントという)を線材の横断面内で同心円上に配置することとした。図3に示したような構造とすることでフィラメントソーセージングを防止し、さらに高性能とすることができる。
【0036】
図3の略図を用いて説明する。図3において、9は銅マトリクスである。10はセグメントである。11は線材の直径でありDで示す。本発明では、線材の横断面におけるフセグメントの存在領域を0.3D〜0.9Dの範囲にするとともに、フィラメント周囲の銅比を0.2〜0.9、好ましくは0.2〜0.5に限定することにより、フィラメント健全性が確保できる。
【0037】
本発明ではフィラメント直径は3〜20μmである。その理由は、実施の形態1で説明したものと同じである。
【0038】
本発明では、フィラメントのNbTi体積に対するマトリクスの銅体積の比を6〜8とする。その理由は、実施の形態1で説明したものと同じである。
【0039】
セグメントの存在領域は、線材の直径Dに対して0.3D〜0.9Dの領域に限定する。この場合、セグメントの存在領域は、セグメントの線材の中心に近い位置から一番離れた位置までが、円の中心から0.3D/2〜0.9D/2の円周内にあることを意味する。ここで、範囲を限定する理由は、実施の形態の1で説明したものと同じ理由である。
【0040】
また、フィラメント周囲の銅比を0.2〜0.9、好ましくは0.2〜0.6に限定する理由は、実施の形態1で説明したものと同じである。
【0041】
図3でセグメントは円形であるが、特に限定するものではなく、楕円形、4角形、6角形、扇型を含めた定型形状、不定形形状に関係なく、セグメントに加工できるものであれば任意の形状を選択できる。
【0042】
セグメント数も6としたが、これに限定するものではなく、2個以上であり銅比とフィラメント数に応じた適正数を選択すれば良い。例えば、フィラメント本数が348本でセグメント数を6とする場合には、各セグメントのフィラメント数は58本となる。
【0043】
このようなNbTi線は次のように作成する。Tiの含有量が重量比40〜60%のNbTi製のロッド、Nb製のパイプ、銅製のパイプを用意し、NbTi製のロッドをNb製パイプに挿入し、これを銅製パイプに挿入して縮径加工して単心線を作製する。NbTiにはTaを数%加えても良い。次に、必要な数の単心線を集合させてセグメントとし、このセグメントを、断面が円形の銅に同心円上となるように設けた穴に挿入して、必要な回数だけ線引きと集合化を繰返して縮径加工して、フィラメント直径が3〜20μmで、かつ、銅比が6〜8であり、該超電導線材の外径をDとするとき、線材横断面内におけるフィラメントの存在領域が横断面の0.3D〜0.9Dの範囲であり、フィラメント周囲の銅比が0.2〜0.9のフィラメント及び銅マトリクスからなるNbTi線を得る。前記セグメントは、数が、2個以上線材横断面内の中心に対称に配置される。なお、詳細には実施の形態の1で説明したもの同様の方法を用いて作製できる。
【実施例】
(実施例1)
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。製作したNbTi線材の諸元、性能を図11としての表1に示した。また、断面構造を図1に示した。中心部に銅芯8を配置し、フィラメント7を外周側に配置して、伸線加工の際のフイラメン損傷の抑制を図った。
【0044】
その結果、線径は0.74mm、銅比は6、フィラメント直径は15μm、フィラメント数が348本、フィラメントの存在領域0.79D〜0.90D、フィラメント周囲の銅比0.3、ツイストピッチ10mmのNbTi超電導線材が得られた。フイラメントは健全で、Jcは2900A/mm2(5T)、n値は65(5T)、ヒステリシス損失は380mJ/cc(±3T;超電導部の体積当たり)であった。
【0045】
(実施例2)
実施例2は、実施例1の線材のフィラメント周囲の銅比のみを0.5にした線材である。外周フィラメントの位置を0.90Dに固定したので、フィラメント存在領域は実施例1に比べ中心寄りとなっている。製作したNbTi線材の諸元、性能を図11としての表1に示した。また、断面構造を図4に示した。
【0046】
その結果、線径は0.74mm、銅比は6、フィラメント直径は15μm、フィラメント数が348本、フィラメントの存在領域0.77D〜0.90D、フィラメント周囲の銅比0.5、ツイストピッチ10mmのNbTi超電導線材が得られた。フィラメントは健全で、Jcは2900A/mm2(5T)、n値は60(5T)と良好であった。
【0047】
(実施例3)
実施例3はフィラメント周囲の銅比を0.9まで高めた線材である。製作したNbTi線材の諸元、性能を図11としての表1に示した。また、断面構造を図5に示した。
【0048】
その結果、線径は0.74mm、銅比は6、フィラメント直径は15μm、フィラメント数が348本、フィラメントの存在領域0.73D〜0.90D、フィラメント周囲の銅比0.9、ツイストピッチ10mmのNbTi超電導線材が得られた。線径が0.74mmまで無断線で加工でき、若干のフィラメントソーセージングが認められたものの、Jcは2800A/mm2(5T)、n値は50(5T)であった。
【0049】
(比較例1)
銅比、フィラメント直径、フィラメント本数フィラメント周囲の銅比は実施例1と同様で、フィラメントの存在領域を0.20D〜0.48Dと中心寄りにした。製作したNbTi線材の諸元、性能を図11としての表1に示した。また、断面構造を図6に示した。
【0050】
その結果、線径は0.74mm、銅比は6、フィラメント直径は15μm、フィラメント数が348本、フィラメントの存在領域0.20D〜0.48D、フィラメント周囲の銅比0.3、ツイストピッチ10mmのNbTi超電導線材を得た。
【0051】
しかしながら、比較例1の線材は伸線工程において、線経が1mmφを下回ると、十数回/kgの断線を生じ、長尺線材を得ることができなかった。なんとか加工した線径が0.74mmの短尺線材も、フィラメント断線が顕著であった。線材のJcは2400A/mm2(5T)であった。
【0052】
(比較例2)
銅比、フィラメント直径、フィラメント本数フィラメント周囲の銅比は実施例1と同様で、フィラメントの存在領域0.85D〜0.95Dと外側にした線材を製作した。製作したNbTi線材の諸元、性能を図11としての表1に示した。また、断面構造を図7に示した。
【0053】
その結果、線径は0.74mm、銅比は6、フィラメント直径は15μm、フィラメント数が348本、フィラメントの存在領域は0.85D〜0.95D、フィラメント周囲の銅比は0.3、ツイストピッチ10mmのNbTi超電導線材を得た。
【0054】
比較例2の線は、0.74mmφまで無断線で加工することができた。しかし、マトリクスを酸で溶解して取り出したフィラメントには、押出時に発生したものと推定されるフィラメントソーセージングが認められた。また、線材のJcは2600 A/mm2(5T)、n値は50(5T)、ヒステリシス損失は500mJ/ccと、比較的低い性能であった。
【0055】
(比較例3)
比例例3の線材は、実施例1の線材のフィラメント周囲の銅比を大きくして1.0とした線材であり、フィラメント存在領域が中心寄りに広がったものである。製作したNbTi線材の諸元、性能を図11としての表1に示した。また、断面構造を図8に示した。
【0056】
その結果、線径は0.74mm、銅比は6、フィラメント直径は15μm、フィラメント数が348本、フィラメントの存在領域0.20D〜0.48D、フィラメント周囲の銅比1.0、ツイストピッチ10mmのNbTi超電導線材を得た。線径が0.74mmまで無断線で加工できたが、フィラメントソーセージングが顕著で、Jcも2400A/mm2(5T)と低かった。
【0057】
(実施例4)
実施例4では、実施例1を基本として、フィラメント配置だけを、複数のフィラメント群(セグメント化)を同心円状に配置するものにした。セグメント形状は円形とし、セグメント数も6とした。製作したNbTi線材の諸元、性能を図11としての表1に示した。また、断面構造を図3に示した。
【0058】
その結果、線径は0.74mm、銅比は6、フィラメント直径は15μm、フィラメント数が348本、フィラメントの存在領域0.54D〜0.90D、フィラメント周囲の銅比0.3、ツイストピッチ10mmのNbTi超電導線材が得られた。線径が0.74mmまで無断線で加工でき、フィラメント形状も良好で、Jcは3000A/mm2(5T)、n値は70(5T)、ヒステリシス損失は360mJ/ccと優れた性能であった。
【0059】
(比較例4)
比較例4は、銅比、フィラメント直径、フィラメント本数、フィラメント周囲の銅比は、実施例4と同様で、フィラメントの存在領域を0.25D〜0.61Dと中心寄りにした線材である。製作したNbTi線材の諸元、性能を図11としての表1に示した。また、断面構造を図9に示した。
【0060】
その結果、線径は0.74mm、銅比は6、フィラメント直径は15μm、フィラメント数が348本、フィラメントの存在領域0.25D〜0.61D、フィラメント周囲の銅比0.3、ツイストピッチ10mmのNbTi超電導線材が得られた。しかしながら、伸線工程において、線径が1mmφを下回ると数回/kgの断線を生じ、線径が0.74mmでもフィラメント断線が顕著で、Jcは2500A/mm2(5T)であった。
【0061】
(比較例5)
比較例5は、実施例4の線材のフィラメント周囲の銅比のみを1.0に変えた線材であり、フィラメント存在領域が中心寄りに広がるものである。製作したNbTi線材の諸元、性能を図11としての表1に示した。また、断面構造を図3に示した。
【0062】
その結果、線径は0.74mm、銅比は6、フィラメント直径は15μm、フィラメント数が348本、フィラメントの存在領域0.45D〜0.90D、フィラメント周囲の銅比1.0、ツイストピッチ10mmのNbTi超電導線材が得られた。伸線加工において断線は生じなかったが、フィラメント形状は悪く、Jcは2400A/mm2(5T)であった。
【0063】
【発明の効果】
以上、述べたように、本発明によると、高Jc、低損失、かつ高安定なNbTi超電導線材を安価に得ることができ、工業上顕著な効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、表1の実施例1に説明した銅マトリクスNbTi系超電導線材を示したものである。
【図2】図2は、銅マトリクスNbTi系超電導線材のフィラメント直径、フィラメント間隔、およびフィラメント周囲の銅比を説明するものである。
【図3】図3は、表1の実施例4に説明した銅マトリクスNbTi系超電導線材を示したものである。
【図4】図4は、表1の実施例2に説明した銅マトリクスNbTi系超電導線材を示したものである。
【図5】図5は、表1の実施例3に説明した銅マトリクスNbTi系超電導線材を示したものである。
【図6】図6は、表1の比較例1に説明した銅マトリクスNbTi系超電導線材を示したものである。
【図7】図7は、表1の比較例2に説明した銅マトリクスNbTi系超電導線材を示したものである。
【図8】図8は、表1の比較例3に説明した銅マトリクスNbTi系超電導線材を示したものである。
【図9】図9は、表1の比較例4に説明した銅マトリクスNbTi系超電導線材を示したものである。
【図10】図10は、表1の比較例5に説明した銅マトリクスNbTi系超電導線材を示したものである。
【図11】図11は、表1として示した実施例及び比較例の一覧表である。
【符号の説明】
1 マトリクス
2 Nb
3 NbTi
4 フィラメント直径
5 フィラメント間隔
6 銅
7 フィラメント層
8 銅心
9 銅マトリクス
10 セグメント
11 線材の直径D
Claims (9)
- 表面がNbで覆われたNbTi製のフィラメント及び銅マトリクスからなる線材であり、フィラメント直径が3〜20μmで、かつ、銅比が6〜8であり、該超電導線材の外径をDとするとき、線材横断面内におけるフィラメントの存在領域が横断面の0.3D〜0.9Dの範囲であり、フィラメント周囲の銅比が0.2〜0.9であることを特徴とするNbTi系超電導線材。
- 前記フィラメントで構成されるセグメントが線材横断面内に同心円上に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のNbTi系超電導線材。
- 前記セグメントは、2個以上が線材横断面の中心に対称に配置されたものであることを特徴とする請求項2に記載のNbTi系超電導線材。
- 前記フィラメント周囲の銅比が0.2〜0.5であることを特徴とする請求項1に記載のNbTi系超電導線材。
- 以下の工程からなるNbTi系超電導線の製造方法、
(a)Tiの含有量が重量比40〜60%のNbTi製のロッド、Nb製のパイプ、銅製のパイプを用意し、
(b)前記NbTi製のロッドを前記Nb製パイプに挿入したものを更に銅製パイプに挿入し、フィラメント周囲の銅比が0.2〜0.9となるように縮径加工して単心線を作製し、
(c)超電導線材の外径をDとするとき、線材横断面内におけるフィラメントの存在領域が横断面の0.3D〜0.9Dの範囲となるように、多数の前記単心線を断面が円形の銅心の外側に並べ、円形の銅製パイプに挿入し、
(d)フィラメント直径が3〜20μm、銅比が6〜8のフィラメント及び銅マトリクスからなるNbTi線に縮径加工する。 - 以下の工程からなるNbTi系超電導線の製造方法、
(a)Tiの含有量が重量比40〜60%のNbTi製のロッド、Nb製のパイプ、銅製のパイプを用意し、
(b)前記NbTi製のロッドを前記Nb製パイプに挿入したものを更に銅製パイプに挿入し、フィラメント周囲の銅比が0.2〜0.9となるように縮径加工して単心線を作製し、多数の単心線を集合させてセグメントとし、
(c)超電導線材の外径をDとするとき、線材横断面内におけるフィラメントの存在領域が横断面の0.3D〜0.9Dの範囲となるように、前記セグメントを断面が円形の銅に設けた孔に挿入し、
(d)フィラメント直径が3〜20μm、銅比が6〜8のフィラメント及び銅マトリクスからなるNbTi線に縮径加工する。 - 前記フィラメントで構成されるセグメントが線材横断面内に同心円上に配置されていることを特徴とする請求項6に記載のNbTi系超電導線材の製造方法。
- 前記セグメントは、2個以上が線材横断面の中心に対称に配置されたものであることを特徴とする請求項6に記載のNbTi系超電導線材の製造方法。
- 前記フィラメント周囲の銅比が0.2〜0.5であることを特徴とする請求項5又は請求項6のいずれかに記載のNbTi系超電導線材の製造方法。
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