JP4237341B2 - Nb3Sn化合物超電導線およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、Nb3Sn化合物超電導線およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、実用化されている超電導線としては、Nb3SnやNb3Al等の化合物系超電導線を用いたものや、合金系Nb―Ti超電導線を用いたものが知られている。それらの線を用いて送電ケーブルや電力をほとんど消費することなく強磁界の形成が可能な超電導コイル等への実用化が進められている。
【0003】
このように化合物超電導線を用いた超電導線は、予めSnを添加してあるCu系マトリックスを使用するブロンズ法や、Sn棒やNb棒をそれぞれ配置したCu系マトリックスを使用する内部Sn拡散法、Nbチューブの中にSn棒を挿入し、Cu系マトリックスを使用するNbチューブ法等によって製造されている。
【0004】
前述のブロンズ法を適用したNb3Sn化合物超電導線は、図7の横断面図に示すように、複数のCu―Sn合金(ブロンズ)チューブ1と各チューブ1内にそれぞれ埋設されたNb芯線(ニオブ・フィラメント)2とからなるニオブ・ブロンズ複合体10と、拡散防止材3、安定化材4、例えば安定化銅が同心円状に配置されている。
【0005】
このような構成の超電導線は、例えば以下のようにして製造される。まずCu―Sn合金チューブ1内にNb芯線2を埋設した複合体を多数複合し、拡散防止材3、安定化材4とを一体化した後、スエージングマシン等によって所定の外径まで減面加工を施す。この後、Nb3Snの生成温度で熱処理を施すことによって、Nb芯線2とニオブ・ブロンズ複合体10中のSnとを反応させて、Nb芯線2の外周側にNb3Sn超電導体層を形成する。
【0006】
前述のように超電導線の断面構成の中で、超電導時の安定性を保持するために安定化材を構成する安定化銅4を必ず設けるが、隣接するニオブ・ブロンズ複合体10中のSnの安定化銅4への拡散による安定化銅4の純度低下を防止するため、安定化銅4とニオブ・ブロンズ複合体10との間に拡散防止材3を設けている。
【0007】
ところで、前述したようなNb3Sn等の化合物超電導体を用いた超電導線は、長手方向の引張り力や曲げ歪が加わった際に臨界電流密度等の超電導特性が低下するという欠点を有している。例えば、引張り特性は0.2%耐力で、160MPa程度しかなく、高いフープ力によって線材に160MPa以上の大きな引張り力が掛る高磁界マグネットの設計、製作には到底採用できず、工業化への大きな難点となっていた。
【0008】
最近では、10T以上の大型かつ高磁界コイルの要求も増えているが、そうしたコイルの作製が事実上困難であった。
【0009】
そこで、引張り特性等の機械的特性を改善するためにNb3Snの生成温度でも軟化しにくい例えばアルミナ分散強化銅を補強材として組み込んだものを製作した。なお、このアルミナ分散強化銅は、Cu中にAl2O3粒子を1〜2重量%程度の範囲で分散させることによって、分散強化させた強化Cu合金であり、例えば酸化銅粉末とアルミナ粉末との混合物を還元焼結させることによって得られる。その結果、引張り特性は0.2%耐力で260MPaとなり、従来より大幅に強度が上がり改善された。
【0010】
しかし、Nb3Sn生成熱処理条件が650℃で240時間と長時間であることから、アルミナ分散強化銅に含まれている未反応の残留Alが安定化銅に拡散するため、安定化銅の純度が悪くなり、線材としての残留抵抗比が小さくなる。
【0011】
すなわち、安定化銅の電気伝導率及び熱伝導率が悪くなる。こうした線材では、常電導に転移したときに、その大きな抵抗のために、多量の発熱が生じて、通電中に超電導線が焼き切れる事故が発生する。
【0012】
この対策として、安定化銅の厚さを十分厚くして長時間の熱処理時間に対して安定化銅がSnで拡散されない領域を設けることにより、安定化銅の純度を維持して超電導線としての安定性を維持できるようにする方法もある。
【0013】
しかし、この方法では、安定化銅の厚さが厚くなりすぎて線材断面積が増すため、この線をマグネットとして巻いた場合の重量はかなり大きくなり、冷却のための冷媒量が増したり、大型冷凍機が必要になったりすることで実用的には扱いにくくなる欠点がある。また、ブロンズ中のSnがアルミナ分散強化銅へ拡散するため、ブロンズ中のSn濃度が低下しNb3Snの生成量が減り、臨界電流密度の低下を生じる等超電導特性を低下させる新たな問題点が生じていた。
【0014】
本発明はこのような課題に対処するためになされたもので、化合物超電導体にアルミナ分散強化銅などの強化材を用いても、臨界電流密度の低下も残留抵抗比の低下も引き起こさないNb3Sn化合物超電導線およびその製造方法を提供することを目的としている。
【0015】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、請求項1に対応する発明は、ニオブ・フィラメントを内包するニオブ・ブロンズ複合体と、純銅からなる安定化銅と、アルミナ分散強化銅からなる強化材と、Ta、Nbのいずれかからなり2層の第1及び第2の拡散防止材が同心円状に配置されるものであって、その横断面において中心から外周側に向けて、前記ニオブ・ブロンズ複合体、前記第1の拡散防止材、前記強化材、前記第2の拡散防止材、前記安定化銅を順次配列して部材を構成し、この部材に熱処理を施しNb3Sn層を形成してなることを特徴とするNb3Sn化合物超電導線である。
前記目的を達成するため、請求項2に対応する発明は、ニオブ・フィラメントを内包するニオブ・ブロンズ複合体と、純銅からなる安定化銅と、アルミナ分散強化銅からなる強化材と、Ta、Nbのいずれかからなり2層の第1及び第2の拡散防止材が同心円状に配置されるものであって、その横断面において、中心から外周側に向けて、前記ニオブ・ブロンズ複合体、前記第1の拡散防止材、前記安定化銅、前記第2の拡散防止材、前記強化材を順次配列して部材を構成し、この部材に熱処理を施しNb 3 Sn層を形成してなることを特徴とするNb 3 Sn化合物超電導線である。
【0017】
前記目的を達成するため、請求項3に対応する発明は、次のようにしたものである。
すなわち、前記ニオブ・ブロンズ複合体、前記安定化銅、前記強化材の体積比率が、それぞれ30―70%、10―30%、10―50%であることを特徴とする請求項1から請求項2のいずれか一つに記載のNb3Sn化合物超電導線である。
【0018】
前記目的を達成するため、請求項4に対応する発明は、次のようにしたものである。
すなわち、前記安定化銅の厚みが、20―150ミクロンの範囲であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一つに記載のNb 3 Sn化合物超電導線である。
【0019】
前記目的を達成するため、請求項5に対応する発明は、ニオブを内包するブロンズ合金からなる複合体と、純銅からなる安定化銅、アルミナ分散強化銅からなる強化材、Ta、Nbのいずれかからなり2層の拡散防止材として第1の拡散防止材と第2の拡散防止材を同心円状であって、その横断面において中心から外周側に向けて、前記ニオブ・ブロンズ複合体、前記第1の拡散防止材、前記強化材、前記第2の拡散防止材、前記安定化銅を順次配列して部材を作製する第1の工程と、
前記第1の工程で得られた部材を減面加工する第2の工程と、
前記第2の工程で減面加工された部材に熱処理を施しNb3Sn層を形成させる第3の工程と、
を具備したことを特徴とするNb3Sn化合物超電導線の製造方法である。
前記目的を達成するため、請求項6に対応する発明は、ニオブを内包するブロンズ合金からなる複合体と、純銅からなる安定化銅、アルミナ分散強化銅からなる強化材、Ta、Nbのいずれかからなり2層の拡散防止材として第1の拡散防止材と第2の拡散防止材を同心円状であって、その横断面において中心から外周側に向けて、前記ニオブ・ブロンズ複合体、前記第1の拡散防止材、前記安定化銅、前記第2の拡散防止材、前記強化材を順次配列して部材を作製する第1の工程と、
前記第1の工程で得られた部材を減面加工する第2の工程と、
前記第2の工程で減面加工された部材に熱処理を施しNb 3 Sn層を形成させる第3の工程と、
を具備したことを特徴とするNb 3 Sn化合物超電導線の製造方法である。
前記目的を達成するため、請求項7に対応する発明は、次のようにしたものである。すなわち、前記安定化銅の厚みが、20−150ミクロンの範囲であることを特徴とする請求項5又は6記載のNb 3 Sn化合物超電導線の製造方法である。
【0020】
請求項1、2及び請求項5、6のいずれか一つに対応する発明によれば、強化材に隣接する安定化銅との間に拡散防止材をそれぞれ設けることにより、Nb3Sn生成のための熱処理で生じるブロンズ中のSnやアルミナ分散強化銅中のAlの拡散を抑制できるため、残留抵抗比や臨界電流密度の低下のない実用的で信頼性の高いNb3Sn化合物超電導線およびその製造方法を提供できる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態につき図面を参照して説明する。
【0022】
図1は本発明によるNb3Sn化合物超電導線の第1の実施形態を示す横断面図である。本実施形態は、概略前述した図7の従来の構成、すなわちNb芯線2と、Nb芯線2を内包するCu―Sn合金(ブロンズ)チューブ1からなるニオブ・ブロンズ複合体10と、拡散防止材(第1の拡散防止材)3、純銅からなる安定化銅4と、強化材5を備えたものに、新たに第2の拡散防止材6を設けたものである。
【0023】
具体的には、その横断面において中心から外周側に向けて、ニオブ・ブロンズ複合体10、第1の拡散防止材3、強化材5、第2の拡散防止材6、安定化銅4を順次同心円状に配列したものである。
【0024】
このような構成の超電導線は、次のようにして製造される。始めに、Sn濃度10%からなるブロンズのパイプにNb棒を挿入しスエージングマシン等により一体化加工して所定の外形まで減面加工しながら外形が正六角形のロッドに成型する。この正六角形のロッドを多数本束ね、例えばTa管からなる拡散防止材3へ挿入し、再びスエージングマシン等により一体化して後、次に強化材5を構成する例えばアルミナ分散強化銅のパイプに挿入し一体化加工を施す。
【0025】
次に二層目の拡散防止材6を構成する例えばTa管からなる拡散防止材6を挿入し、スエージングマシン等で一体化加工を施す。最後に安定化銅4となる無酸素銅のパイプに挿入し、スエージングマシン等で一体化加工を施す。図1は、このようにしてできた超電導線の断面を示している。
【0026】
以上述べた実施形態によれば、強化材5を構成するパイプ状のアルミナ分散強化銅の内周面及び外周面にはそれぞれ拡散防止材3,6が存在する。この2層の拡散防止材3,6により、次のような作用効果が得られる。拡散防止材3は、Nb3Sn生成のための熱処理によってブロンズからのSnのアルミナ分散強化銅への拡散を防止してブロンズ中のSn濃度減少による臨界電流密度の低下を防ぎ、拡散防止材6はアルミナ分散強化銅中の未反応Alの安定化銅への拡散を防止し、安定化銅4の純度を維持する役目がそれぞれにある。
【0027】
また、Nb3Sn生成熱処理条件の650度240時間によるSnの拡散距離以上の安定化銅4の厚さを持たせることにより、強化材5と安定化銅4との間に拡散防止材6が不要になる場合が考えられるが、安定化銅4の厚さを厚くすることはそれだけ重量を増すことになり、構造支持材の増加や冷媒の増加、冷凍能力の増加等設計上の負担がより大きくなり、実用的には欠点がある。
【0028】
このため、やはり強化材5と安定化銅4との間にも拡散防止材6が必要である。この拡散防止層があると安定化銅4の厚さを必要最小限に抑えることが可能であり、線材重量の軽減、冷媒の軽減、冷凍機の冷凍能力の軽減等コンパクト化が可能となる利点がある。
【0029】
従って、超電導線の強度を高めるためにアルミナ分散強化銅を用いる場合、アルミナ分散強化銅の内周面及び外周面には、前述した拡散防止材3,6を設けることが必要条件となる。
【0030】
以上述べた拡散防止層を構成する拡散防止材3,6は、実施形態で使用したタンタル(Ta)に限定されるものではなく、他にニオブ(Nb)があげられる。また補強のために用いた強化材5としては、アルミナ分散強化銅の他に、Nb−Cu合金、Nbがあげられる。
【0031】
次に、本発明の超電導線の製造方法の具体例について、説明する。
【0032】
まず、Sn濃度10%からなるCu−Sn合金(ブロンズ)のパイプ(外径10.0mm、内径3.2mm)に、外径3mmのNb棒を挿入し、スエージングマシン等で一体化加工をする。
【0033】
一体化加工途中で加工硬化するので、500℃で60分アルゴンガス中で熱処理を行い軟化させてから、さらに加工を加え六角形の形状にする。これを256本束ね、1層目の拡散防止層となるTa管(外径47mm、内径45mm)に挿入する。次に、それをアルミナ分散強化銅のパイプ(外径50mm、内径47.2mm)に挿入する。
【0034】
さらに2層目の拡散防止層となるTa管(外径52mm、内径50.3mm)に挿入する。
【0035】
最後に安定化銅のパイプ(外径55mm、内径52.3mm)に挿入後両端を溶接で密封する。これらの成型品を500℃の熱間押出し機で押し出して径を小さくするとともに、さらにスエージングマシン等による縮径工程と熱処理による軟化工程を繰り返すことにより、本発明の超電導線(線径2.2mm)を完成させた。
【0036】
このようにしてできた本発明の超電導線と比較を行うため、従来線材で行われているように、ブロンズからの安定化銅へのSnの拡散のみを防ぐ目的で、Ta拡散防止層がブロンズマトリックスと安定化銅との間に1層のみ存在する線材、すなわち、図1のTa拡散防止材3のみが存在する線材と、Ta拡散防止材6のみが存在する線材を作製した。更に、Ta拡散防止材3のみの従来線材と本発明の超電導線では定化銅の厚さを変えたものを用意し、残留抵抗比への影響を調べた。
【0037】
これらの線材を1.25×10-5 torrの真空中で、650℃で240時間の熱処理をおこなった。本発明の線と比較用の線の臨界電流密度と残留抵抗比を測った結果を図2〜図4に示す。
【0038】
図2は磁場B[Tesla]に対する臨界電流密度Jc[A/mm2]の特性について、本発明と従来例とを比較して示したものである。本発明による2層の拡散防止材3,6を設けた超電導線の磁場に対する臨界電流密度特性は、比較例として安定化銅と強化銅との間に1層の拡散防止材6を設けた場合よりも高く、本発明の有効性を示している。
【0039】
図3は、熱処理時間に対する残留抵抗比の特性を本発明と従来例とを比較して示したものである。1層の拡散防止材を設けた従来例では熱処理時間[H]が経過するにつれて残留抵抗比が徐々に低下する傾向を示すが、2層の拡散防止材3,6を設けた本発明の線材構成では熱処理時間が240時間以上でも残留抵抗比にほとんど変化はなく、本発明の有効性を示している。特に、臨界電流密度が実用的な500A/mm2(4K,12T)以上を確保するには、Nb3Sn線では一般的に、240時間以上の熱処理が必要であると言われており、こうした長時間領域での残留抵抗比が重要である。
【0040】
図4は従来例に見られるような拡散防止材3が1層の場合と、本発明の拡散防止材3,6と2層の場合を比較した結果である。熱処理は、650℃で240時間行った。明らかに拡散防止材が2層の本発明の場合が高い残留抵抗比が得られた。
【0041】
また、各場合で、安定化銅の厚みを変えて、残留抵抗比への影響を調べた。本発明のように拡散防止層2層の場合では安定化銅の厚さが20―50ミクロンと薄くても安定化銅とアルミナ分散強化銅との間に設けた1層目のAl拡散防止層のために安定化銅の純度は残留抵抗比100(臨界温度直上の抵抗率としては、1.0×10- 8Ωcmの低い値)以上を示している。
【0042】
拡散防止層が1層の従来例では、安定化銅の厚さが50ミクロン以下では残留抵抗比は約10、また、60―100ミクロンでは20―60のレベルであった。
【0043】
こうした低い残留抵抗比では、線材が超電導状態から常電導状態に転移したとき、高い抵抗値(臨界温度直上の抵抗率1.0×10- 6Ωcm)により、ジュール熱が発生して焼き切れる。すなわち、Taの拡散防止層が1層のみでは、線材を巻回して作製した超電導コイルが焼損し、超電導装置として使うことができない。
【0044】
また、図4には、1層のTa拡散防止材3のみの場合に、安定化銅の厚さを厚くしていった場合の残留抵抗比の変化も示した。この場合、150ミクロンの厚さでは、安定化銅が汚染される割合が少なくなり、残留抵抗比が105となるが、他方、線材重量が増加する大きな欠点を有し、実用的ではない。すなわち、超電導コイルの冷却系統の負担が大きくなり、非常に大型の超電導装置になってしまう。
【0045】
更に、図に示した具体例の他に、本線材の構成部の比率を変えたものを種々作製した。すなわち、ニオブ・ブロンズ複合体、純銅からなる安定化銅、強化材の体積比率の変化による残留抵抗比と、各構成で超電導線としての長尺加工が可能か、実用的な臨界電流密度が得られるかを調べた。その結果、ニオブ・ブロンズ複合体、純銅からなる安定化銅、強化材の体積比率が、それぞれ30―70%、10―30%、10―50%で長尺線材に加工でき、かつ、残留抵抗比も100以上の良好な値が得られた。
【0046】
ニオブ・ブロンズ複合体が30%以下では生成するNb3Snの量が少なく、十分高い臨界電流密度が得られない。また、70%以上では純銅の量が少なく、残留抵抗比も小さくなる。純銅については、その量が10%以下では残留抵抗比が10程度になり使えない。他方、30%以上では、臨界電流密度が減り、かつ、強化材の量も減るので、強度も低下する。強化材の量は、十分な強度を得るには10―50%が必要である。
【0047】
更に、Taの拡散防止層の厚みを調べた。1―50ミクロンの厚みで線材を設計し作製したが、5ミクロン未満では、線材の加工途中でTaの層が切れてしまい、拡散防止の役目を果たすことができないことがわかった。実用的な見地から、長手方向に連続性を保つためには、5ミクロン以上の厚みが必要である。
【0048】
以上述べた第1の形態によれば、化合物超電導体の超電導特性や残留抵抗比が低下することなく維持され、さらに機械的強度特性が改善されることから実用性を大幅に向上させたNb3Sn化合物超電導線が得られる。
【0049】
つまり、Nb芯線2が多数存在するニオブ・ブロンズ複合体10とアルミナ分散強化銅などの強化材5との間に拡散防止材3を設けると、ブロンズ中のSnのアルミナ分散強化銅への拡散が抑制されるため、ブロンズ中のSn濃度は減少しない。従って、SnとNbの反応が十分進み、各々のNb芯線2にNb3Sn超電導層ができて臨界電流密度の低下はおこらない。
【0050】
次に、また強化材5例えばアルミナ分散強化銅と安定化銅4との間にも拡散防止材6を設けると、アルミナ分散強化銅中の未反応Alの安定化銅4への拡散が抑制されるため、安定化銅4の純度が維持され残留抵抗比は高い値(抵抗率としては×10―8Ωcmの低い値)を示す。
【0051】
このため、超電導線は不安定要因によるジュール熱が発生しても低い抵抗率のため焼き切れることはなく、超電導マグネットの信頼性を高められる。
【0052】
前述の図1の実施形態では、各部材の構成は、線材の中心から外側に、順番に、ニオブ・ブロンズ複合体10、第1の拡散防止材3、強化材5、第2の拡散防止材6、安定化銅4であるが、もちろん、安定化銅4の純度を拡散防止材により保てばよいので、以下に示す構成も有効であった。
【0053】
すなわち、図5の概略横断面図に示すように、線材中心から外周側に、ニオブ・ブロンズ複合体10、第1の拡散防止材3、安定化銅4、第2の拡散防止材6、強化材5を順次配列したものである。
【0054】
また、図6の概略横断面図に示すように、線材中心から外周側に、安定化銅4、第1の拡散防止材3、ニオブ・ブロンズ複合体10、第2の拡散防止材6、強化材5を順次配列したものである。
【0055】
このように、図5及び図6は、いずれも純銅からなる安定化銅4が、例えばTaの拡散防止材3,6により隔離されているので、100以上の良好な残留抵抗比を得ることができた。
【0056】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、化合物超電導体にアルミナ分散強化銅などの強化材を用いても、臨界電流密度の低下も残留抵抗比の低下も引き起こさないNb3Sn化合物超電導線およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるNb3Sn化合物超電導線の第1の実施形態の概略構成を示す横断面図。
【図2】本発明及び従来例によるNb3Sn化合物超電導線の磁場に対する臨界電流密度の特性を示す図。
【図3】本発明及び従来例によるNb3Sn化合物超電導線による熱処理時間に対する残留抵抗比の特性を示す図。
【図4】本発明及び従来例によるNb3Sn化合物超電導線による安定化銅の厚さによる残留抵抗比の変化を示す図。
【図5】本発明によるNb3Sn化合物超電導線の第2の実施形態の概略構成を示す横断面図。
【図6】本発明によるNb3Sn化合物超電導線の第3の実施形態の概略構成を示す横断面図。
【図7】拡散防止層が1層のみの従来型Nb3Sn化合物超電導線の構成図。
【符号の説明】
1…Cu―Sn合金(ブロンズ)チューブ
2…Nb芯線(ニオブ・フィラメント)
3…第1の拡散防止材
4…安定化銅
5…強化材
6…第2の拡散防止材
10…ニオブ・ブロンズ複合体
Claims (7)
- ニオブ・フィラメントを内包するニオブ・ブロンズ複合体と、純銅からなる安定化銅と、アルミナ分散強化銅からなる強化材と、Ta、Nbのいずれかからなり2層の第1及び第2の拡散防止材が同心円状に配置されるものであって、その横断面において中心から外周側に向けて、前記ニオブ・ブロンズ複合体、前記第1の拡散防止材、前記強化材、前記第2の拡散防止材、前記安定化銅を順次配列して部材を構成し、この部材に熱処理を施しNb3Sn層を形成してなることを特徴とするNb3Sn化合物超電導線。
- ニオブ・フィラメントを内包するニオブ・ブロンズ複合体と、純銅からなる安定化銅と、アルミナ分散強化銅からなる強化材と、Ta、Nbのいずれかからなり2層の第1及び第2の拡散防止材が同心円状に配置されるものであって、その横断面において、中心から外周側に向けて、前記ニオブ・ブロンズ複合体、前記第1の拡散防止材、前記安定化銅、前記第2の拡散防止材、前記強化材を順次配列して部材を構成し、この部材に熱処理を施しNb3Sn層を形成してなることを特徴とするNb3Sn化合物超電導線。
- 前記ニオブ・ブロンズ複合体、前記安定化銅、前記強化材の体積比率が、それぞれ30―70%、10―30%、10―50%であることを特徴とする請求項1から請求項2のいずれか一つに記載のNb3Sn化合物超電導線。
- 前記安定化銅の厚みが、20―150ミクロンの範囲であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一つに記載のNb3Sn化合物超電導線。
- ニオブを内包するブロンズ合金からなる複合体と、純銅からなる安定化銅、アルミナ分散強化銅からなる強化材、Ta、Nbのいずれかからなり2層の拡散防止材として第1の拡散防止材と第2の拡散防止材を同心円状であって、その横断面において中心から外周側に向けて、前記ニオブ・ブロンズ複合体、前記第1の拡散防止材、前記強化材、前記第2の拡散防止材、前記安定化銅を順次配列して部材を作製する第1の工程と、
前記第1の工程で得られた部材を減面加工する第2の工程と、
前記第2の工程で減面加工された部材に熱処理を施しNb3Sn層を形成させる第3の工程と、
を具備したことを特徴とするNb3Sn化合物超電導線の製造方法。 - ニオブを内包するブロンズ合金からなる複合体と、純銅からなる安定化銅、アルミナ分散強化銅からなる強化材、Ta、Nbのいずれかからなり2層の拡散防止材として第1の拡散防止材と第2の拡散防止材を同心円状であって、その横断面において中心から外周側に向けて、前記ニオブ・ブロンズ複合体、前記第1の拡散防止材、前記安定化銅、前記第2の拡散防止材、前記強化材を順次配列して部材を作製する第1の工程と、
前記第1の工程で得られた部材を減面加工する第2の工程と、
前記第2の工程で減面加工された部材に熱処理を施しNb 3 Sn層を形成させる第3の工程と、
を具備したことを特徴とするNb 3 Sn化合物超電導線の製造方法。 - 前記安定化銅の厚みが、20−150ミクロンの範囲であることを特徴とする請求項5又は6記載のNb3Sn化合物超電導線の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP23155499A JP4237341B2 (ja) | 1999-08-18 | 1999-08-18 | Nb3Sn化合物超電導線およびその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
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