JP5098098B2 - 銀粉およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、銀粉およびその製造方法に関し、特に、積層コンデンサの内部電極や回路基板の導体パターンや、プラズマディスプレイパネル用基板の電極や回路などの電子部品に使用する導電性ペースト用の銀粉およびその製造方法に関する。
従来、積層コンデンサの内部電極、回路基板の導体パターン、太陽電池やプラズマディスプレイパネル(PDP)用基板の電極や回路などの電子部品に使用する導電性ペーストとして、銀粉をガラスフリットとともに有機ビヒクル中に加えて混練することによって製造される導電性ペーストが使用されている。このような導電性ペースト用の銀粉は、電子部品の小型化、導体パターンの高密度化、ファインライン化などに対応するため、粒径が適度に小さく、粒度が揃っていることが要求されている。
このような導電性ペースト用の銀粉を製造する方法としては、銀塩含有水溶液にアルカリまたは錯化剤を加えて、酸化銀含有スラリーまたは銀錯体含有水溶液を生成した後、還元剤を加えることにより銀粉を還元析出させ、その後に乾燥する方法が知られている。このような方法において、凝集が少なく分散性に優れた銀粉を生成するために、銀塩含有水溶液にアルカリまたは錯化剤を加えて、酸化銀含有スラリーまたは銀錯塩含有水溶液を生成し、還元剤を加えて銀粒子を還元析出させた後、銀含有スラリー溶液またはそのろ過中に分散剤として脂肪酸、脂肪酸塩、界面活性剤、有機金属化合物、キレート剤、高分子分散剤のいずれか1種以上を加えることにより、表面を分散剤で被覆した銀粉を生成する方法が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
特開平10−88206号公報(段落番号0002−0004) 特開2005−220380号公報(段落番号0013)
導電性ペーストに使用する溶剤として水溶性の高い有機溶剤を使用する場合があるが、導電性ペーストに使用する銀粉が溶剤に馴染まないと、銀粉が導電性ペースト内に分散せずに塊状になって、導電性ペーストを基板などに塗布する際に導電性ペーストの膜厚が不均一になるため、導電性ペーストの焼成により形成される導体の導電性や接着強度が悪化する。
そのため、導電性ペーストの溶剤として水溶性の高い有機溶剤を使用する場合には、その導電性ペーストに使用する銀粉として、水溶性の高い有機溶剤に馴染むような表面水分量がある程度高めの銀粉が望まれているが、従来の銀粉の製造方法では、水溶性の高い有機溶剤を使用する導電性ペーストに適した表面水分量の銀粉を製造することができなかった。
したがって、本発明は、このような従来の問題点に鑑み、水溶性の高い有機溶剤を使用する導電性ペーストに適した表面水分量の銀粉を製造することができる、銀粉の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、銀イオンを含有する水性反応系に還元剤を加えて銀粒子を還元析出させる銀粉の製造方法において、銀粒子の還元析出前または還元析出後あるいは還元析出中に2種以上の分散剤を添加することにより、水溶性の高い有機溶剤を使用する導電性ペーストに適した表面水分量の銀粉を製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明による銀粉の製造方法は、銀イオンを含有する水性反応系に還元剤を加えて銀粒子を還元析出させる銀粉の製造方法において、銀粒子の還元析出前または還元析出後あるいは還元析出中に2種以上の分散剤を添加することを特徴とする。この銀粉の製造方法において、2種以上の分散剤の各々が、脂肪酸、脂肪酸塩、界面活性剤、有機金属化合物、キレート剤および高分子分散剤からなる群から選ばれる分散剤であるのが好ましく、2種以上の分散剤が、親水性分散剤と疎水性分散剤を含むのが好ましい。親水性分散剤は、ゼラチンまたはコラーゲンペプチドであるのが好ましく、疎水性分散剤は、ベンゾトリアゾール、ステアリン酸、オレイン酸およびこれらの塩からなる群から選ばれるのが好ましい。また、還元剤は、アスコルビン酸、アルカノールアミン、水素化硼素ナトリウム、ヒドロキノン、ヒドラジンおよびホルマリンからなる群から選ばれる1種以上の還元剤であるのが好ましい。
また、本発明による銀粉は、タップ密度が2g/cm以上、レーザー回折法による平均粒径が0.1〜5μm、BET比表面積が0.1〜5m/g、表面水分量が3〜6分子/nm2であることを特徴とする。
さらに、本発明による導電性ペーストは、上記の銀粉を導体として用いたことを特徴とする。
本発明によれば、アセトンやジメチルケトンなどのケトン類、酢酸エチルやジエチレングリコールエチルエーテルアセタートなどのエステル類、エタノールやイロプロピルアルコールなどのアルコール類、エチレングリコールやプロピレングリコールなどのグリコール類、エチルセロソルブやメチルセロソルブなどのグリコールエーテル類などの水溶性の高い有機溶剤を使用する導電性ペーストに適した表面水分量の銀粉を製造することができる。
本発明による銀粉の製造方法の実施の形態では、銀イオンを含有する水性反応系に、還元剤を加えて銀粒子を還元析出させる前または後に2種以上の分散剤を添加することにより、表面が分散剤で被覆され、所望の表面水分量を有し、水溶性の高い有機溶剤に対する分散性が良好な銀粉を生成する。
銀イオンを含有する水性反応系としては、硝酸銀、銀錯体または銀中間体を含有する水溶液またはスラリーを使用することができる。銀錯体を含有する水溶液は、アンモニア水、アンモニウム塩、キレート化合物などを硝酸銀水溶液に添加することにより生成することができる。銀中間体を含有するスラリーは、水酸化ナトリウム、塩化ナトリウム、炭酸ナトリウムなどを硝酸銀水溶液に添加することにより生成することができる。これらの中で、銀粉が適当な粒径と球状の形状を有するようにするためには、硝酸銀水溶液にアンモニア水を添加して得られるアンミン錯体水溶液を使用するのが好ましい。アンミン錯体中のアンモニアの配位数は2であるため、銀1モル当たりアンモニア2モル以上を添加する。また、アンモニアの添加量が多過ぎると錯体が安定化し過ぎて還元が進み難くなるので、アンモニアの添加量は銀1モル当たり8モル以下であるのが好ましい。なお、還元剤の添加量を多くするなどの調整を行なえば、アンモニアの添加量が8モルを超えても適当な粒径の球状銀粉を得ることは可能である。
還元剤としては、アスコルビン酸、亜硫酸塩、アルカノールアミン、過酸化水素水、ギ酸、ギ酸アンモニウム、ギ酸ナトリウム、グリオキサール、酒石酸、次亜燐酸ナトリウム、水素化硼素ナトリウム、ヒドロキノン、ヒドラジン、ヒドラジン化合物、ピロガロール、ぶどう糖、没食子酸、ホルマリン、無水亜硫酸ナトリウム、ロンガリットなどを使用することができる。これらの中で、アスコルビン酸、アルカノールアミン、水素化硼素ナトリウム、ヒドロキノン、ヒドラジンおよびホルマリンからなる群から選ばれる1種類以上を使用するのが好ましく、特に、安価であることからホルマリンを使用するのが好ましい。これらの還元剤を使用すれば、適当な粒径の銀粒子を得ることができる。還元剤の添加量は、銀の反応収率を上げるためには、銀に対して1当量以上にする必要がある。還元力の弱い還元剤を使用する場合には、銀に対して2当量以上の還元剤、例えば、10〜20当量の還元剤を添加してもよい。また、還元剤の添加方法については、銀粉の凝集を防ぐために、1当量/分以上の速さで添加するのが好ましい。この理由は明確ではないが、還元剤を短時間で投入することで、銀粒子の還元析出が一挙に生じて、短時間で還元反応が終了し、発生した核同士の凝集が生じ難いため、分散性が向上すると考えられる。したがって、還元剤の添加時間が短いほど好ましく、例えば、還元剤を100当量/分以上の速さで添加してもよく、また、還元の際には、より短時間で反応が終了するように反応液を攪拌するのが好ましい。
分散剤としては、脂肪酸、脂肪酸塩、界面活性剤、有機金属化合物、キレート剤、高分子分散剤などを使用することができる。脂肪酸の例としては、プロピオン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、アクリル酸、オレイン酸、リノール酸、アラキドン酸などを挙げることができる。脂肪酸塩の例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、バリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、鉄、コバルト、マンガン、鉛、亜鉛、スズ、ストロンチウム、ジルコニウム、銀、銅などの金属と脂肪酸が塩を形成したものを挙げることができる。界面活性剤の例としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩やポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩などの陰イオン界面活性剤、脂肪族4級アンモニウム塩などの陽イオン界面活性剤、イミダゾリニウムベタインなどの両性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテルやポリオキシエチレン脂肪酸エステルなどの非イオン界面活性剤などを挙げることができる。有機金属化合物の例としては、アセチルアセトントリブトキシジルコニウム、クエン酸マグネシウム、ジエチル亜鉛、ジブチルスズオキサイド、ジメチル亜鉛、テトラ−n−ブトキシジルコニウム、トリエチルインジウム、トリエチルガリウム、トリメチルインジウム、トリメチルガリウム、モノブチルスズオキサイド、テトライソシアネートシラン、テトラメチルシラン、テトラメトキシシラン、ポリメトキシシロキサン、モノメチルトリイソシアネートシラン、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤などを挙げることができる。キレート剤の例としては、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、セレナゾール、ピラゾール、イソオキサゾール、イソチアゾール、1H−1,2,3−トリアゾール、2H−1,2,3−トリアゾール、1H−1,2,4−トリアゾール、4H−1,2,4−トリアゾール、1,2,3−オキサジアゾール、1,2,4−オキサジアゾール、1,2,5−オキサジアゾール、1,3,4−オキサジアゾール、1,2,3−チアジアゾール、1,2,4−チアジアゾール、1,2,5−チアジアゾール、1,3,4−チアジアゾール、1H−1,2,3,4−テトラゾール、1,2,3,4−オキサトリアゾール、1,2,3,4−チアトリアゾール、2H−1,2,3,4−テトラゾール、1,2,3,5−オキサトリアゾール、1,2,3,5−チアトリアゾール、インダゾール、ベンゾイミダゾールおよびベンゾトリアゾールとこれらの塩、あるいは、シュウ酸、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、グリコール酸、乳酸、オキシ酪酸、グリセリン酸、酒石酸、リンゴ酸、タルトロン酸、ヒドロアクリル酸、マンデル酸、クエン酸、アスコルビン酸などを挙げることができる。高分子分散剤の例としては、ペプチド、ゼラチン、コラーゲンペプチド、アルブミン、アラビアゴム、プロタルビン酸、リサルビン酸などを挙げることができる。
上述した分散剤から2種以上の分散剤を適宜選択して、銀粒子の還元析出前または還元析出後あるいは還元析出中のスラリー状の反応系に添加することにより、所望の表面水分量の銀粉を製造することができる。導電性ペーストの溶剤として水溶性の高い有機溶剤を使用する場合、その導電性ペーストに使用する銀粉の表面水分量が3分子/nm未満では、銀粉がペースト内で分散しないで塊状になったり、あるいはその塊状の銀粉に力が加わってフレーク状の銀粉になり、6分子/nmを超えると、ペーストの保存性が悪化するなどの不具合がある。したがって、水溶性の高い有機溶剤を使用する導電性ペーストに使用する銀粉の表面水分量は3〜6分子/nmであるのが好ましい。上述した分散剤から2種以上の分散剤を適宜選択して、銀粒子の還元析出前または還元析出後あるいは還元析出中のスラリー状の反応系に添加すれば、表面水分量が3〜6分子/nmの銀粉を製造することができる。特に、表面水分量が3〜6分子/nmの銀粉を製造するためには、ベンゾトリアゾール、ステアリン酸、オレイン酸およびこれらの塩などから選ばれる疎水性分散剤と、ゼラチンやコラーゲンペプチドなどの親水性分散剤を組み合わせて使用するのが好ましい。なお、各々の分散剤の添加量は、水性反応系に仕込まれる銀に対して0.05〜2質量%の間で銀粉が所望の特性になるように調整すればよく、また、各々の分散剤の添加量の比率は、銀粉が所望の特性になるように調整すればよい。
得られた銀含有スラリーを濾過し、水洗することによって、銀に対して1〜200質量%の水を含み、流動性がほとんどない塊状のケーキが得られる。このケーキの乾燥を早めたり、乾燥時の凝集を防ぐために、ケーキ中の水を低級アルコールやポリオールなどで置換してもよい。このケーキを強制循環式大気乾燥機、真空乾燥機、気流乾燥装置などの乾燥機によって乾燥した後、解砕することにより、銀粉が得られる。解砕の代わりに、粒子を機械的に流動化させることができる装置に銀粒子を投入して、粒子同士を機械的に衝突させることによって、銀粉の粒子表面の凹凸や角ばった部分を滑らかにする表面平滑化処理を行ってもよい。また、解砕や平滑化処理の後に分級処理を行ってもよい。なお、乾燥、粉砕および分級を行うことができる一体型の装置((株)ホソカワミクロン製のドライマイスタや、ミクロンドライヤなど)を用いて乾燥、粉砕および分級を行ってもよい。
このようにして得られた銀粉は、タップ密度が2g/cm以上、好ましくは3g/cm以上、さらに好ましくは3.5g/cm以上、レーザー回折法による平均粒径が0.1〜5μm、好ましくは0.5〜3μm、BET比表面積が0.1〜5m/g、好ましくは0.1〜2m/g、表面水分量が3〜6分子/nmであり、水溶性の高い有機溶剤に対する分散性が良好である。なお、タップ密度が2g/cmより小さいと、銀粒子同士の凝集が激しくなり、ファインライン化への対応が難しくなる。また、レーザー回折法による平均粒径が0.1μmより小さいと、ファインライン化への対応は可能であるが、粒子の活性が高く、銀粉を焼成型ペーストに使用する場合に500℃以上で焼成するには適さない。一方、レーザー回折法による平均粒径が5μmより大きくなると分散性が劣ることになり、やはりファインライン化への対応が難しくなる。さらに、BET比表面積が5m/gを超えると、ペーストの粘度が高過ぎて、印刷性などが悪くなる。一方、BET比表面積が0.1m/g未満であると、粒子が大き過ぎて、ファインライン化への対応が難しくなる。
以下、本発明による銀粉およびその製造方法の実施例について詳細に説明する。
[実施例1]
銀54kgを含む硝酸銀水溶液4300kgに、25質量%のアンモニア水203kgと、25質量%の水酸化ナトリウム水溶液18kgを添加し、銀アンミン錯塩水溶液を得た。この銀アンミン錯塩水溶液の液温を20℃とし、銀の量に対して0.2質量%のコラーゲンペプチド(ゼライス社製のNCG−10)の水溶液を添加した後、18.5質量%のホルマリン水溶液480kgを加えて、銀粒子を析出させた。ホルマリン水溶液の添加が終了した後、銀の量に対して0.3質量%のベンゾトリアゾールのNa塩の水溶液を添加して、得られた銀含有スラリーを濾過し、水洗し、ケーキを得た。
得られたケーキのうち11.3kgを、内容積100Lの真空乾燥機によって75℃で16時間乾燥し、乾燥粉10.0kgを得た。この乾燥粉が乾燥していることを赤外水分計によって確認した。得られた乾燥粉を解砕した後、分級し、所望の粒径の銀粉を得た。
得られた銀粉について、タップ密度、レーザー回折法による平均粒径、最大粒径、BET比表面積および表面水分量を求めた。タップ密度は、タップ密度測定装置(柴山科学社製のカサ比重測定装置SS−DA−2)を使用し、銀粉試料15gを計量して20mLの試験管に入れ、落差20mmで1000回タッピングし、タップ密度=試料重量(15g)/タッピング後の試料容積(cm)から算出した。レーザー回折法による平均粒径D50(累積50質量%粒径)および最大粒径Dmaxは、銀粉試料0.3gをイソプロピルアルコール30mLに加え、出力50Wの超音波洗浄器により5分間分散させ、マクロトラック粒度分布測定装置(ハネウエル(Honeywell)−日機装社製のマクロトラック粒度分布測定装置9320−HRA(X−100))を使用して測定した。BET比表面積は、BET比表面積測定器(カウンタークロム(Quanta Chrome)社製のモノソーブ)を使用してBET1点法により測定した。表面水分量は、電量滴定方式自動水分測定装置(三菱化学株式会社製のCA−100(気化装置VA−100))を使用して、気化温度100℃で銀粉試料1gから出た水分量(ppm)を測定し、表面水分量(HO分子/nm)=銀粉試料1gから出た水分量(ppm)÷10÷18.0×(6.02×1023)÷BET比表面積(m/g)×1018から算出した。その結果、タップ密度が4.3g/cm、レーザー回折法による平均粒径が1.4μm、最大粒径が5.5μm、BET比表面積が0.74m/g、表面水分量が3.5分子/nmであった。
[実施例2]
銀68kgを含む硝酸銀水溶液4100kgに、25質量%のアンモニア水253kgと、25質量%の水酸化ナトリウム水溶液22kgを添加し、銀アンミン錯塩水溶液を得た。この銀アンミン錯塩水溶液の液温を20℃とし、銀の量に対して0.2質量%のコラーゲンペプチド(ゼライス社製のNCG−10)の水溶液を添加した後、18.5質量%のホルマリン水溶液600kgを加えて、銀粒子を析出させた。ホルマリン水溶液の添加が終了した後、銀の量に対して0.3質量%のベンゾトリアゾールのエタノール溶液を添加して、得られた銀含有スラリーを濾過し、水洗し、ケーキを得た。
得られたケーキのうち75.5kgを、500Lの真空乾燥機によって70℃で24時間乾燥し、乾燥粉63.5kgを得た。この乾燥粉が乾燥していることを赤外水分計によって確認した。得られた乾燥粉を解砕した後、分級し、所望の粒径の銀粉を得た。
得られた銀粉について、実施例1と同様の方法によりタップ密度、レーザー回折法による平均粒径、最大粒径、BET比表面積および表面水分量を求めた。その結果、タップ密度が4.3g/cm、レーザー回折法による平均粒径が1.4μm、最大粒径が5.5μm、BET比表面積が0.69m/g、表面水分量が5.2分子/nmであった。
[実施例3]
銀54kgを含む硝酸銀水溶液4500kgに、25質量%のアンモニア水203kgと、25質量%の水酸化ナトリウム水溶液18kgを添加し、銀アンミン錯塩水溶液を得た。この銀アンミン錯塩水溶液の液温を20℃とし、37質量%のホルマリン水溶液240kgを加えて、銀粒子を析出させた。ホルマリン水溶液の添加が終了した後、銀の量に対して0.5質量%のベンゾトリアゾールのエタノール溶液を添加し、その後、銀の量に対して0.2質量%のコラーゲンペプチド(ゼライス社製のNCG−10)の水溶液を添加して、得られた銀含有スラリーを濾過し、水洗し、ケーキを得た。
得られたケーキのうち17.1kgを、使用風量15m/分、入り口温度90℃、出口温度60℃に設定した気流式乾燥機((株)セイシン企業製のフラッシュジェットドライヤーFJD−4)によって10分間乾燥し、乾燥粉15.8kgを得た。この乾燥粉が乾燥していることを赤外水分計によって確認した。得られた乾燥粉を解砕した後、分級し、所望の粒径の銀粉を得た。
得られた銀粉について、実施例1と同様の方法によりタップ密度、レーザー回折法による平均粒径、最大粒径、BET比表面積および表面水分量について求めた。その結果、タップ密度が4.3g/cm、レーザー回折法による平均粒径が1.4μm、最大粒径が4.6μm、BET比表面積が0.80m/g、表面水分量が5.6分子/nmであった。
[実施例4]
銀54kgを含む硝酸銀水溶液4550kgに、25質量%のアンモニア水169kgと、25質量%の水酸化ナトリウム水溶液16kgを添加し、銀アンミン錯塩水溶液を得た。この銀アンミン錯塩水溶液の液温を20℃とし、37質量%のホルマリン水溶液240kgを加えて、銀粒子を析出させた。ホルマリン水溶液の添加が終了した後、銀の量に対して0.5質量%のベンゾトリアゾールのエタノール溶液を添加し、その後、銀の量に対して0.2質量%のゼラチン(ゼライス社製のE−200)の水溶液を添加して、得られた銀含有スラリーを濾過し、水洗し、ケーキを得た。
得られたケーキのうち17.1kgを、100Lの真空乾燥機によって70℃で24時間乾燥し、乾燥粉14.0kgを得た。この乾燥粉が乾燥していることを赤外水分計によって確認した。得られた乾燥粉を解砕した後、分級し、所望の粒径の銀粉を得た。
得られた銀粉について、実施例1と同様の方法によりタップ密度、レーザー回折法による平均粒径、最大粒径、BET比表面積および表面水分量について求めた。その結果、タップ密度が4.3g/cm、レーザー回折法による平均粒径が1.3μm、最大粒径が5.5μm、BET比表面積が0.69m/g、表面水分量が3.7分子/nmであった。
[比較例1]
銀108kgを含む硝酸銀水溶液4450kgに、25質量%のアンモニア水214kgと、25質量%の水酸化ナトリウム水溶液40kgを添加し、銀アンミン錯塩水溶液を得た。この銀アンミン錯塩水溶液の液温を30℃とし、37質量%のホルマリン水溶液264kgを加えて、銀粒子を析出させた。ホルマリン水溶液の添加が終了した後、銀の量に対して0.4質量%のオレイン酸を添加して、得られた銀含有スラリーを濾過し、水洗し、ケーキを得た。
得られたケーキのうち10.1kgを、100Lの真空乾燥機によって60℃で24時間乾燥し、乾燥粉8.2kgを得た。この乾燥粉が乾燥していることを赤外水分計によって確認した。得られた乾燥粉を解砕した後、分級し、所望の粒径の銀粉を得た。
得られた銀粉について、実施例1と同様の方法によりタップ密度、レーザー回折法による平均粒径、最大粒径、BET比表面積および表面水分量について求めた。その結果、タップ密度が3.8g/cm、レーザー回折法による平均粒径が2.4μm、最大粒径が7.8μm、BET比表面積が0.47m/g、表面水分量が1.1分子/nmであった。
[比較例2]
銀54kgを含む硝酸銀水溶液4500kgに、25質量%のアンモニア水225kgを添加し、銀アンミン錯塩水溶液を得た。この銀アンミン錯塩水溶液の液温を40℃とし、銀の量に対して0.3質量%のポリオキシエチレンアルキルエーテル(第一工業製薬製のノイゲンET−80)を水溶液中に添加した後、37質量%のホルマリン水溶液240kgを加えて、銀粒子を析出させた。このようにして得られた銀含有スラリーを濾過し、水洗し、ケーキを得た。
得られたケーキのうち46.5kgを、500Lの真空乾燥機によって80℃で16時間乾燥し、乾燥粉41.6kgを得た。この乾燥粉が乾燥していることを赤外水分計によって確認した。得られた乾燥粉を解砕した後、分級し、所望の粒径の銀粉を得た。
得られた銀粉について、実施例1と同様の方法によりタップ密度、レーザー回折法による平均粒径、最大粒径、BET比表面積および表面水分量について求めた。その結果、タップ密度が3.6g/cm、レーザー回折法による平均粒径が4.7μm、最大粒径が9.3μm、BET比表面積が0.30m/g、表面水分量が2.7分子/nmであった。
[比較例3]
銀54kgを含む硝酸銀水溶液4550kgに、25質量%のアンモニア水203kgと、25質量%の水酸化ナトリウム水溶液18kgを添加し、銀アンミン錯塩水溶液を得た。この銀アンミン錯塩水溶液の液温を40℃とし、37質量%のホルマリン水溶液240kgを加えて、銀粒子を析出させた。ホルマリン水溶液の添加が終了した後、銀の量に対してステアリン酸として0.2質量%のステアリン酸エマルジョンを添加して、得られた銀含有スラリーを濾過し、水洗し、ケーキを得た。
得られたケーキのうち18.8kgを、使用風量6m/分、入り口温度230℃、出口温度170℃に設定した気流式乾燥機((株)セイシン企業製のフラッシュジェットドライヤーFJD−4)によって25分間乾燥し、乾燥粉17.0kgを得た。この乾燥粉が乾燥していることを赤外水分計によって確認した。得られた乾燥粉を解砕した後、分級し、所望の粒径の銀粉を得た。
得られた銀粉について、実施例1と同様の方法によりタップ密度、レーザー回折法による平均粒径、最大粒径、BET比表面積および表面水分量について求めた。その結果、タップ密度が4.4g/cm、レーザー回折法による平均粒径が2.4μm、最大粒径が9.3μm、BET比表面積が0.47m/g、表面水分量が2.6分子/nmであった。
[比較例4]
銀65kgを含む硝酸銀水溶液4400kgに、25質量%のアンモニア水229kgと、25質量%の水酸化ナトリウム水溶液8kgを添加し、銀アンミン錯塩水溶液を得た。この銀アンミン錯塩水溶液の液温を20℃とし、37質量%のホルマリン水溶液317kgを加えて、銀粒子を析出させた。ホルマリン水溶液の添加が終了した後、銀の量に対して1.0質量%のベンゾトリアゾールのエタノール溶液を添加して、得られた銀含有スラリーを濾過し、水洗し、ケーキを得た。
得られたケーキのうち15kgを、使用風量12.5m/分、入り口温度130℃、出口温度80℃に設定した気流式乾燥機((株)セイシン企業製のフラッシュジェットドライヤーFJD−4)によって10分間乾燥し、乾燥粉12.6kgを得た。この乾燥粉が乾燥していることを赤外水分計によって確認した。得られた乾燥粉を解砕した後、分級し、所望の粒径の銀粉を得た。
得られた銀粉について、実施例1と同様の方法によりタップ密度、レーザー回折法による平均粒径、最大粒径、BET比表面積および表面水分量について求めた。その結果、タップ密度が4.4g/cm、レーザー回折法による平均粒径が1.3μm、最大粒径が5.5μm、BET比表面積が0.75m/g、表面水分量が1.6分子/nmであった。
[比較例5]
銀54kgを含む硝酸銀水溶液4600kgに、25質量%のアンモニア水122kgと、25質量%の水酸化ナトリウム水溶液8kgを添加し、銀アンミン錯塩水溶液を得た。この銀アンミン錯塩水溶液の液温を25℃とし、37質量%のホルマリン水溶液264kgを加えて、銀粒子を析出させた。ホルマリン水溶液の添加が終了した後、銀の量に対して0.5質量%のベンゾトリアゾールのNa塩の水溶液を添加して、得られた銀含有スラリーを濾過し、水洗し、ケーキを得た。
得られたケーキのうち10.0kgを、50Lの真空乾燥機によって90℃で18時間乾燥し、乾燥粉8.2kgを得た。この乾燥粉が乾燥していることを赤外水分計によって確認した。得られた乾燥粉を解砕した後、分級し、所望の粒径の銀粉を得た。
得られた銀粉について、実施例1と同様の方法によりタップ密度、レーザー回折法による平均粒径、最大粒径、BET比表面積および表面水分量について求めた。その結果、タップ密度が4.0g/cm、レーザー回折法による平均粒径が1.4μm、最大粒径が5.5μm、BET比表面積が0.70m/g、表面水分量が2.0分子/nmであった。
[比較例6]
銀81kgを含む硝酸銀水溶液4000kgに、25質量%のアンモニア水253kgと、25質量%の水酸化ナトリウム水溶液27kgを添加し、銀アンミン錯塩水溶液を得た。この銀アンミン錯塩水溶液の液温を20℃とし、18.5質量%のホルマリン水溶液720kgを加えて、銀粒子を析出させた。ホルマリン水溶液の添加が終了した後、銀の量に対して0.2質量%のゼラチン(ゼライス社製のE−200)の水溶液を添加して、得られた銀含有スラリーを濾過し、水洗し、ケーキを得た。
得られたケーキのうち14.5kgを、100Lの真空乾燥機によって75℃で20時間乾燥し、乾燥粉11.6kgを得た。この乾燥粉が乾燥していることを赤外水分計によって確認した。得られた乾燥粉を解砕した後、分級し、所望の粒径の銀粉を得た。
得られた銀粉について、実施例1と同様の方法によりタップ密度、レーザー回折法による平均粒径、最大粒径、BET比表面積および表面水分量について求めた。その結果、タップ密度が4.0g/cm、レーザー回折法による平均粒径が1.8μm、最大粒径が7.8μm、BET比表面積が0.73m/g、表面水分量が7.7分子/nmであった。
[比較例7]
銀54kgを含む硝酸銀水溶液4500kgに、25質量%のアンモニア水225kgと、25質量%の水酸化ナトリウム水溶液2kgを添加し、銀アンミン錯塩水溶液を得た。この銀アンミン錯塩水溶液の液温を40℃とした後で、37質量%のホルマリン水溶液240kgを加えて、銀粒子を析出させた。ホルマリン水溶液の添加が終了した後、銀の量に対して0.1質量%のラウリン酸を添加して、得られた銀含有スラリーを濾過し、水洗し、ケーキを得た。
得られたケーキのうち65.3kgを、500Lの真空乾燥機によって75℃で20時間乾燥し、乾燥粉49.7kgを得た。この乾燥粉が乾燥していることを赤外水分計によって確認した。得られた乾燥粉を解砕した後、分級し、所望の粒径の銀粉を得た。
得られた銀粉について、実施例1と同様の方法によりタップ密度、レーザー回折法による平均粒径、最大粒径、BET比表面積および表面水分量について求めた。その結果、タップ密度が4.3g/cm、レーザー回折法による平均粒径が3.8μm、最大粒径が15.6μm、BET比表面積が0.27m/g、表面水分量が2.7分子/nmであった。
[比較例8]
銀54kgを含む硝酸銀水溶液4500kgに、25質量%のアンモニア水225kgと、25質量%の水酸化ナトリウム水溶液2kgを添加し、銀アンミン錯塩水溶液を得た。この銀アンミン錯塩水溶液の液温を40℃とし、37質量%のホルマリン水溶液240kgを加えて、銀粒子を析出させた。ホルマリン水溶液の添加が終了した後、銀の量に対して0.1質量%のリノレン酸を添加して、得られた銀含有スラリーを濾過し、水洗し、ケーキを得た。
得られたケーキのうち62.5kgを、500Lの真空乾燥機によって70℃で20時間乾燥し、乾燥粉50.0kgを得た。この乾燥粉が乾燥していることを赤外水分計によって確認した。得られた乾燥粉を解砕した後、分級し、所望の粒径の銀粉を得た。
得られた銀粉について、実施例1と同様の方法によりタップ密度、レーザー回折法による平均粒径、最大粒径、BET比表面積および表面水分量について求めた。その結果、タップ密度が5.0g/cm、レーザー回折法による平均粒径が3.3μm、最大粒径が13.1μm、BET比表面積が0.30m/g、表面水分量が1.8分子/nmであった。
実施例1〜4および比較例1〜8の結果を表1に示す。
Figure 0005098098

Claims (5)

  1. 銀イオンを含有する水性反応系に還元剤を加えて銀粒子を還元析出させる銀粉の製造方法において、銀粒子の還元析出前または還元析出後あるいは還元析出中に親水性分散剤と疎水性分散剤を添加して得られた銀含有スラリーを濾過することにより、得られたケーキを乾燥して表面水分量が3〜6分子/nm2の銀粉を製造することを特徴とする、銀粉の製造方法。
  2. 前記親水性分散剤が、ゼラチンまたはコラーゲンペプチドであることを特徴とする、請求項に記載の銀粉の製造方法。
  3. 前記疎水性分散剤が、ベンゾトリアゾール、ステアリン酸、オレイン酸およびこれらの塩からなる群から選ばれる分散剤であることを特徴とする、請求項またはに記載の銀粉の製造方法。
  4. 前記還元剤が、アスコルビン酸、アルカノールアミン、水素化硼素ナトリウム、ヒドロキノン、ヒドラジンおよびホルマリンからなる群から選ばれる1種以上の還元剤であることを特徴とする、請求項1乃至のいずれかに記載の銀粉の製造方法。
  5. 前記銀粉が焼成型導電性ペースト用銀粉であることを特徴とする、請求項1乃至のいずれかに記載の銀粉の製造方法。
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