JP5098071B2 - ヘッドレスト装置のロック機構 - Google Patents

Description

本発明は、車両用シートに係り、より詳細には、車両が後方から追突された場合に、着座者のムチ打ち障害を低減するヘッドレスト装置のロック機構に関する。

図６は、従来のヘッドレスト装置の内部構造を模式的に示した側面図である。ヘッドレスト装置７０は、ヘッドレスト３６、ヘッドレストフレーム３１、ヘッドレストフレーム３１の下端に固定される受圧板３２、ヘッドレスト３６を支える支柱３３で構成される。ヘッドレストフレーム３１は、シートバックフレーム２１の内側に傾動軸１２を介して、前後方向に傾動自在に取り付けられる。ヘッドレストフレーム３１は、通常時は受圧板３２付近で傾動ばね３９により白抜きの矢印のように付勢されており、これによりヘッドレストフレーム３１の上端が後方に傾動して、支柱３３がシートバックフレーム２１側に向かい合うように押されている。傾動ばねは、図６に示すような受圧板３２を前方に引っ張るコイルスプリングや、特許文献１に示すような、シートバックフレームの両側を基点にして受圧板３２に架け渡たされるコ字形の棒ばね（カンチレバー）で実現される。

車両が追突されると、車両は衝撃で前方に加速されるので、着座者Ｍは反動で車両シート後方に押し出される。受圧板３２が着座者Ｍの荷重を受け、傾動ばねに抗して後方に押されると、ヘッドレストフレーム３１が傾動軸１２を軸に回動してヘッドレスト３６を前方に傾ける。これにより着座者Ｍの頭がヘッドレスト３６で支持され、ムチ打ち症となる頭の急激な後方移動が防止される。ヘッドレスト３６は、衝撃後、引き続き傾いた状態にロックされることが望ましい。特許文献２には、シートバックフレームとヘッドレストフレームの間にラチェット機構（１４）を設け、追突された後、ヘッドレストフレームが元の位置に戻らないようにしたロック機構が示されている。特許文献３には、追突された後のヘッドレストフレームを戻り止めストッパ（８１）で受け止め、元の位置に戻らないようにしたロック機構が示されている。

上記のラチェットを用いたロック機構は、着座者がストレッチで体を後方に伸ばしたような場合にヘッドレストが前方に動いてしまうおそれがある。また、歯の噛み合いが不完全だとロックが弱い。上記のヘッドレストフレームの外周部に当接する戻り止めストッパを用いたロック機構は、追突された時、ヘッドレストフレームが元の位置に戻らないようロックするが、通常時の、ヘッドフレームをシートバックフレームに確実に係合させ保持する機能は有していない。ヘッドレストフレームの上端をシートバックフレーム側に押し付けて保持するのは、傾動ばねの力によるが、それだけでは係合が弱いので確実な係合が求められている。ここで、例えば傾動ばねを強くして対策すると、受圧板の動きが鈍くなるので、追突された時にヘッドレストが前に倒れにくくなってしまい、解決にはならない。
特開２００２−１４４９３８号公報 特開２００２−２７４２４０号公報 特開平１０−１３８８１３号公報

本発明の目的は、ヘッドレストフレームがシートバックフレームに係合した通常時の状態と、追突された時のロック状態を確実に保持することができるヘッドレスト装置のロック機構を提供することにある。

上記目的を達成するため、本発明による請求項１に記載のヘッドレスト装置のロック機構は、上部にヘッドレストが連結され、追突された時の着座者にかかる後方荷重を受ける受圧板と前記ヘッドレストを後傾させる付勢部材が設けられて、シートバックフレームの内側に傾動可能に取り付けられるヘッドレストフレームを備えたヘッドレスト装置において、前記シートバックフレームの上部に取り付けられ、上下の折り曲げ部に水平なスリットが設けられるベースブラケットと、前記スリットに移動可能に装着されるロックブラケットと、前記ヘッドレストフレームの上部に取り付けられ、通常時は、前記ロックブラケットの側端に当接して前記ロックブラケットの水平移動を拘束するとともに、追突された時は、前記受圧板が後方移動し前記ヘッドレストフレームが前傾して前記ロックブラケットの拘束が解除され、水平移動した前記ロックブラケットに当接し、通常時の位置への移動が前記ロックブラケットによって拘束されるストッパーブラケットと、一端が前記ベースブラケットに他端が前記ロックブラケットに接続され、前記ロックブラケットを前記ストッパーブラケット方向に付勢する圧縮ばねと、前記ロックブラケットを通常時の位置に戻すロック解除レバーと、が備えられることを特徴とする。

本発明の請求項１記載のヘッドレスト装置のロック機構によれば、ロックブラケットの側部に当接してロックブラケットの水平移動を拘束するストッパーブラケットを設けたので、通常時には、ヘッドレストフレームをシートバックフレームに確実に係合させ保持できる。圧縮ばねでロックブラケットを水平方向（図１での左方向）に押すので、水平方向（左方向）は、付勢部材によるヘッドレストフレームを後傾させる力の向きである後方向とは直交する方向ため、付勢部材を変更せずに保持力を向上させることができる。ストッパーブラケットは、追突された時、水平移動したロックブラケットの側部に当接して、通常時の位置に戻ることがロックブラケットによって拘束されるようにした。そのため、ロック状態が確実に保持できる。ロック解除レバーを圧縮ばねに抗して水平方向に動かせば、ロックブラケットを簡単に通常時の位置に戻すことができる。

以下、図面を参照して、本発明によるヘッドレスト装置のロック機構について説明する。

図１は、本発明によるヘッドレスト装置に設けられたロック機構の斜視図である。ヘッドレスト装置７０は、図４の従来構成と同じで、ヘッドレスト３６、ヘッドレストフレーム３１、ヘッドレストフレーム３１の下端に固定される受圧板３０、ヘッドレスト３６を支える支柱３３で構成される。図１では、ヘッドレスト３６と支柱３３の図示は省略した。シートバックフレーム２１と、シートバックフレーム２１の内側に傾動軸１２を介して傾動可能に取り付けられるヘッドレストフレーム３１は、いずれもパイプを加工したものであり、全体が逆Ｕ字形に湾曲されている。シートバックフレーム２１の下部は、リクライニング機構に強固に連結される。ヘッドレストフレーム３１は、その上部に２つの支柱ホルダ１１が取り付けられ、この支柱ホルダ１１に支柱３３が挿入され、支柱にヘッドレスト３６が取り付けられる。ヘッドレストフレーム３１の下部には受圧板３２が設けられる。受圧板３２の後方にはヘッドレストフレーム３１を傾動させる傾動ばねが取り付けられる。ここでは、傾動ばねとしてカンチレバー３４を採用しており、カンチレバー３４の両端はシートバックフレーム２１に装着され、カンチレバー３４の中央部が、後方にやや突出した受圧板３２に取り付けられてねじられるため、図１下方の白抜きの矢印に示すように、ヘッドレストフレーム３１の下部を前方に押し出す力が付勢される。このため、ヘッドレストフレーム３１の上部及び支柱ホルダ１１は、図１上方の白抜きの矢印に示すように、シートバックフレーム２１に係合するように後方側に付勢されている。

図１に示すように、ロック機構５０は、シートバックフレーム２１に取り付けられるベースブラケット１、ロックブラケット２、ヘッドレストフレーム３１に取り付けられるストッパーブラケット３、圧縮ばね６、ロックブラケット２に取り付けられ、水平方向に動かしてロック状態を解除するロック解除レバー４を含んで構成される。ベースブラケット１は、引き出し円の中に示すように、シートバックフレーム２１の上部に溶接で取り付けられる。ベースブラケット１の上下の折り曲げ部には、上部水平スリット５ａと下部水平スリット５ｂからなるスリット５が設けられる。

図２は、ロック機構５０を構成するベースブラケット１、ロックブラケット２、圧縮ばね５、ストッパーブラケット３の位置関係を示す斜視図である。圧縮ばね６の一端はベースブラケット１の突起８に、他端はロックブラケット２の突起７ａに挿入して装着する。ロックブラケット２の突起７ｂには、ロック解除レバー４のキャップ４ａが装着される。ロックブラケット２はベースブラケット１のスリット５に挿入されて使用される。圧縮ばね６によりロックブラケット２が左側方向に水平移動されるが、ストッパーブラケット３がベースブラケット１の間に入り込んで側面に当接される。そのため、通常時は、ロックブラケット２の水平移動が、ストッパーブラケット３によって拘束される。

図３は、ロック機構５０を構成するベースブラケット１の平面図（Ａ）と正面図（Ｂ）と側面図（Ｃ）である。図３（Ｃ）に示すように、ベースブラケット１は溶接でシートバックフレーム２１に取り付けられる。ベースブラケット１は、左側にロックブラケット２が装着される形状としたが、反対にして、右側にロックブラケット２が装着される形状としてもよい。

図４は、ロック機構５０を構成するロックブラケット２の正面図（Ａ）と側面図（Ｂ）である。図４（Ｂ）においてロックブラケット２の脚が斜め下を向いているが、この足と直角の方向にベースブラケット１が取り付けられる。図５は、ロック機構５０を構成するストッパーブラケットの正面図（Ａ）と側面図（Ｂ）である。ストッパーブラケット３の上部は折り曲げ部が設けられ、この折り曲げ部が、ちょうどベースブラケット１のコ字形に形成された折り曲げ部の間に挿入される形となる。ストッパーブラケット３は、ヘッドレストフレーム３１に溶接で取り付けられる。

次にロック機構５０の動作を説明する。通常時は、ヘッドレストフレーム３１がカンチレバー３４によって後傾されており、ロックブラケット２が圧縮ばね６で左方に付勢されている。つまり、ストッパーブラケット３で左側方向への水平移動が拘束されている。そのため、ヘッドレストフレーム３１をシートバックフレーム２１に係合させた状態が確実に保持される。つまり、ヘッドレストフレーム３１は、カンチレバー３４の付勢力と引っ張りばね６の付勢力の両方で確実にその位置に保持される。

車両が追突されて、乗員である着座者Ｍの人体が後方に押し出されると、受圧板がカンチレバー３４の付勢力に抗して後方に押されるので、ヘッドレストフレーム３１が傾動軸１２を中心に回動する。これに伴いヘッドレストフレーム３１上部のストッパーブラケット３が前方に移動する。そのため、ストッパーブラケット３による拘束が解除され、ロックブラケット２は圧縮ばね６の付勢力により、スリット５に沿って左方向に水平移動する。

ヘッドレストフレーム３１は、追突の衝撃後、通常時の位置に戻ろうとするが、ロックブラケット２が、ヘッドレストフレーム３１の後方への移動を拘束する。すなわち、ストッパーブラケット３が左方に移動したロックブラケット２の側部に当接して、その移動がブロックされる。つまり、ストッパーブラケット３がロックブラケット２によって拘束される。ロックブラケット２は圧縮ばね６があるので右方には動かず、ストッパーブラケット３はカンチレバー３４の付勢力でその位置に保持されるから、確実なロックができる。

ロック状態を解除するのは、ロック解除レバー４を圧縮ばね６に抗して水平に引き戻すことによる。ロックブラケット２が引き戻されると、ストッパーブラケト３は、カンチレバー３４の付勢力により通常時の位置に復帰する。

本発明によるロック機構は、車両用シートのヘッドレスト装置に好適である。

本発明によるヘッドレスト装置に設けられたロック機構の斜視図である。（実施例１） 図１のロック機構を構成するベースブラケット、ロックブラケット、圧縮ばね、ストッパーブラケットの位置関係を示す斜視図である。（実施例１） 図１のロック機構を構成するベースブラケットの平面図（Ａ）と正面図（Ｂ）と側面図（Ｃ）である。 図１のロック機構を構成するロックブラケットの正面図（Ａ）と側面図（Ｂ）である。（実施例１） 図１のロック機構を構成するストッパーブラケットの正面図（Ａ）と側面図（Ｂ）である。（実施例１） 従来のヘッドレスト装置の構造を模式的に示した側面図である。

符号の説明

１ ベースブラケット
２ ロックブラケット
３ ストッパーブラケット
４ ロック解除レバー
４ａ キャップ
５ スリット
５ａ 上部水平スリット
５ｂ 下部水平スリット
６ 圧縮ばね
７ａ ロックブラケットの突起
７ｂ ロックブラケットの突起
８ ベースブラケットの圧縮ばね装着用の突起
１１ 支柱ホルダ
１２ 傾動軸
２１ シートバックフレーム
３１ ヘッドレストフレーム
３２ 受圧板
３３ 支柱
３４ カンチレバー
３６ ヘッドレスト
３９ 傾動ばね
５０ ロック機構
７０ ヘッドレスト装置
Ｍ 着座者

Claims (1)

1. 上部にヘッドレストが連結され、追突された時の着座者にかかる後方荷重を受ける受圧板と前記ヘッドレストを後傾させる傾動ばねが設けられて、シートバックフレームの内側に傾動可能に取り付けられるヘッドレストフレームを備えたヘッドレスト装置において、
   前記シートバックフレームの上部に取り付けられ、上下の折り曲げ部に水平なスリットが設けられるベースブラケットと、
   前記スリットに移動可能に装着されるロックブラケットと、
   前記ヘッドレストフレームの上部に取り付けられ、通常時は、前記ロックブラケットの側端に当接して前記ロックブラケットの水平移動を拘束するとともに、追突された時は、前記受圧板が後方移動し前記ヘッドレストフレームが前傾して前記ロックブラケットの拘束が解除され、水平移動した前記ロックブラケットに当接し、通常時の位置への移動が前記ロックブラケットによって拘束されるストッパーブラケットと、
   一端が前記ベースブラケットに他端が前記ロックブラケットに接続され、前記ロックブラケットを前記ストッパーブラケット方向に付勢する圧縮ばねと、
   前記ロックブラケットを通常時の位置に戻すロック解除レバーと、が備えられることを特徴とするヘッドレスト装置のロック機構。

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