JP5096648B1 - 有機elディスプレイパネル及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、ラインバンクに発光層を形成する場合でも、有機発光層の塗布ムラによる、輝度ムラや発光色ムラの発生を抑制し、表示品質が良好な有機ELディスプレイパネル及びその製造方法を提供する。本発明は、有機発光層の塗布ムラの原因となる絶縁層を有機発光層上に、かつ画素電極の縁を覆うように形成する。有機発光層の膜形状ムラを抑制することができ、輝度ムラや発光色ムラが少ない表示品質に優れた有機ELディスプレイパネルの提供及びその製造が可能となる。また、画素電極と対向電極との間の短絡が防止される有機ELディルプレイパネルの提供及び製造が可能となる。
【選択図】図1

Description

本発明は、有機ELディスプレイパネル及びその製造方法に関する。
有機ELディスプレイパネルとは、有機化合物の電界発光を利用した発光素子を有するディスプレイパネルである。有機ELディスプレイパネルは、カソード及びアノード、並びに両極の間に配置された電界発光する有機化合物層、を含むELデバイスを有する。この電界発光する有機化合物は、低分子有機化合物の組み合わせ(ホスト材料とドーパント材料)と、高分子有機化合物とに大別され得る。
電界発光する高分子有機化合物の例には、PPVと称されるポリパラフェニレンビニレンやその誘導体などが含まれる。電界発光する高分子有機化合物を利用した有機ELディスプレイパネルは、比較的低電圧で駆動でき、消費電力が低いことが特徴である。
また、電界発光する有機化合物は、有機溶剤に溶解させることによって、インクとすることができる。例えば、高分子有機化合物は、キシレンやトルエンなどの芳香族系の有機溶剤に溶解させ、インク化することが可能である。電界発光する有機化合物をインクとすることによって、インクジェット法などの印刷工法で有機発光層を形成することが可能となる。このため、ディスプレイパネルの大画面化に対応しやすいとされており、現在積極的にその研究開発が行われている。
電界発光する高分子有機化合物は、その発光する光の色(Red,GreenまたはBlue)に応じて、各画素にインクジェットなどの印刷技術を用いて配置される。例えば、高分子有機化合物と溶媒を含むポリマーインクを、インクジェットヘッドから吐出して各画素へ印刷する。各画素にポリマーインクを印刷するときに、隣接する画素にポリマーインクが浸入しないようにする必要がある。
隣接する画素にポリマーインクが浸入しないようにするため、以下の二つの方法が採用されている。
第一の方法は、画素を規定する隔壁(バンク)を設けて、各画素に正確にポリマーインクを印刷する。それによって、隣接する画素へのインクの浸入を抑制する(例えば、特許文献1を参照)。
第二の方法は、ライン状に配列された各画素を列毎にバンクで規定して、ライン状にポリマーインクを印刷する。このとき、ラインバンク内に配置された画素電極の縁で有機発光層の膜厚が薄くなることによって、有機発光層の上に配置される対向電極と画素電極が短絡することが起こり得る。これに対して、ラインバンク内に配置された画素電極の縁を覆うようにシリコン酸化物などの絶縁層を配置することで、画素電極と対向電極の短絡を防止することが知られている。(例えば、特許文献2及び3を参照)。
さらに、画素電極上の絶縁層によって画素電極の縁が直接覆われている有機EL素子(例えば、特許文献4参照)や、画素電極の縁が、直接又は正孔注入層を介して、バンク基部等の絶縁性の無機層によって覆われている有機EL素子(例えば、特許文献5〜8参照)などが提案されている。その他にも、透明基板上の着色剤層を隔てるバンクと、バンク上及び着色剤層の縁部を覆うブラックマトリックスとを有するカラーフィルタ(例えば、特許文献9参照)が知られている。
図5に特許文献2に記載の有機ELデバイス10の鳥瞰図を示している。ラインバンク230に沿う方向及びこれに直交する方向の両方向に沿って、画素電極210の縁を覆うように絶縁層220が形成されている。図5中、100は基板であり、240は第2バンクであり、300は画素領域である。
各画素にポリマーインクを印刷する第一の方法よりも、複数の画素を含むライン状にポリマーインクを印刷する第二の方法の方が、全ての画素に簡便かつ迅速にポリマーインクを印刷することができる。さらに、各画素に形成された有機発光層の膜厚均一性は、第一の方法よりも第二の方法の方が良好である。
これは、バンクの端部でポリマーインクが表面張力により引っぱられるためである。このため、有機発光層の膜厚均一性が悪化しやすい。よって、画素の四方をバンクで囲まれている上記第一の方法よりも、画素の側方しかバンクで囲まれていない上記第二の方法の方が、通常、膜厚均一性が高い有機発光層を形成することができる。
また、インクジェット法で有機発光層を形成する場合、インクジェットヘッドのノズル間の吐出体積のばらつきが懸念される。ノズル間の吐出体積のばらつきは、有機発光層の膜厚ばらつきに直結する。ピクセル状とライン状のバンクに吐出する場合、ライン状のバンクに吐出する方が、ピクセル状のバンクに吐出するよりも多くのノズルから吐出することになる。このため、ノズル間の吐出体積ばらつきの影響を小さくする効果がある。これらのことより、最近では上記第二の方法の研究の方が幾分盛んである。
特開2006−86128号公報 特開2009−200049号公報 米国特許出願公開第2009/0160322号明細書 特開2008−243650号公報 特開2009−70704号公報 米国特許出願公開第2007/0075618号明細書 米国特許出願公開第2005/0112341号明細書 特開2010−33972号公報 特開2006−243171号公報
上述の従来の構成において、ラインバンク内に配置された画素電極の縁を覆うように配置されたシリコン酸化物などの絶縁層は、塗布されるポリマーインクの下地となる。このため、下地には、基板材料と画素電極と絶縁層が存在する。下地を構成する材料が複数存在すると、有機発光層にムラが発生することがある。これは、下地の材料ごとにポリマーインクの濡れ性が異なるためである。よって、下地の材料の種類は可能な限り少ないことが望ましい。
また、シリコン酸化物などの無機物の絶縁層は、例えばスパッタリング法などの真空設備を用いて絶縁膜を形成し、フォトレジスト法を用いたフォトリソグラフィ法で絶縁膜をパターニングすることによって作製される。この方法では、製造プロセスが長くなり、高価な真空設備が用いられる。このため、製造コストが高くなってしまう。
絶縁層は数十nmの薄膜であることが望ましい。絶縁層は電極を絶縁する目的であるから、ある一定以上の膜厚であれば問題ない。しかしながら絶縁層が厚過ぎると、この上に印刷する有機発光層が均一に形成できなくなってしまう。絶縁層を、無機膜でなく、樹脂などを塗布することにより有機膜で形成する場合は、製造コストは低くなる。その一方、数十nmの薄膜で形成することは困難である。このため、均一な有機発光層を形成することは困難になる。
以上のように、従来の有機ELディスプレイパネルでは、有機発光層を印刷する面に形成された複数種の無機絶縁層により、有機発光層の塗布ムラが発生することがあった。このため、有機発光層の膜厚がばらつき、その結果、輝度ムラや発光色ムラが生じ、表示品質が低下してしまうという課題があった。
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、ラインバンクで規定された複数の画素電極が存在するライン状の領域に有機発光層を形成する場合でも、膜厚均一性に優れた有機発光層を形成し、輝度ムラや発光色ムラの少ない、表示品質が良好な有機ELディスプレイパネル及びその製造方法を提供することを目的とする。
すなわち、本発明の第一は、以下に示す有機ELディスプレイパネルに関する。
(1)基板と、前記基板上に配置された複数の画素電極と、前記基板上及び前記画素電極上に配置され、互いに隣り合う二以上の前記画素電極同士を連続して覆う有機発光層と、前記有機発光層上に配置され、隣り合う画素電極のうち対向する互いの縁を覆う絶縁層と、前記有機発光層上及び前記絶縁層上に配置される対向電極とを有する、アクティブマトリックス方式の、有機ELディスプレイパネル。
有機ELディスプレイパネル。
(2)前記有機発光層が、前記基板及び前記画素電極を連続して覆う、(1)に記載の有機ELディスプレイパネル。
(3)前記基板上に、複数の前記画素電極をライン状に規定する第2の絶縁層をさらに有する、(1)又は(2)に記載の有機ELディスプレイパネル。
(4)前記絶縁層は、前記第2の絶縁層の上面には配置されない、(3)に記載の有機ELディスプレイパネル。
(5)前記絶縁層は、紫外光を照射すると一定時間経過後に硬化する遅延硬化型樹脂組成物を硬化させてなる樹脂で構成されている、(1)〜(4)のいずれか一項に記載の有機ELディスプレイパネル。
本発明の第二は、以下に示す、有機ELディスプレイパネルの製造方法に関する。
(6)基板上に複数の画素電極を形成するステップと、互いに隣り合う二以上の前記画素電極を連続して覆う有機発光層を形成するステップと、前記有機発光層上に、前記画素電極の縁を覆うように絶縁層を形成するステップと、前記有機発光層上及び前記絶縁層上に対向電極を形成するステップと、を有する、アクティブマトリックス方式の、有機ELディスプレイパネルの製造方法。
(7)前記有機発光層を形成するステップが、前記基板及び前記画素電極を連続して覆うように前記基板上及び前記画素電極上に有機発光層を形成するステップである、(6)に記載の有機ELディスプレイパネルの製造方法。
(8)前記画素電極をライン状に規定する第2の絶縁層を形成するステップをさらに有し、前記第2の絶縁層で規定されたライン状の領域に、前記有機発光層が、前記基板及び前記画素電極を連続して覆うように前記基板上及び前記画素電極上に形成されること、
を特徴とする(6)又は(7)に記載の有機ELディスプレイパネルの製造方法。
(9)前記絶縁層を形成するステップは、遅延硬化型樹脂組成物を含有する絶縁層材料に紫外光を照射し、紫外線が照射された前記絶縁層材料を、前記画素電極の縁を覆うように前記有機発光層上に塗布し、塗布された前記絶縁層材料を熱処理して硬化させる、(6)〜(8)のいずれか一項に記載の有機ELディスプレイパネルの製造方法。
以上のように、本発明の有機ELディスプレイパネル及びその製造方法によれば、ラインバンクで形成された領域に有機発光層を塗布により形成する場合であっても、画素電極の縁と対向電極との短絡を防止できる。さらに有機発光層を均一に形成することが可能となる。これにより、有機ELディスプレイパネルの輝度ムラや発光色ムラの少ない、表示品質が良好な有機ELディスプレイパネルを低コストで提供することができる。
実施の形態1に記載の有機ELデバイスの平面図(A)と断面AA’図(B)と断面BB’図(C)を示す図 実施の形態2に記載の有機ELデバイスの平面図(A)と断面CC’図(B)を示す図 実施の形態3に記載の有機ELデバイスの平面を示す図 実施の形態4に記載の有機ELデバイスの平面図(A)と断面図DD’図(B)を示す図 従来の有機ELデバイスを示す鳥瞰図 画素電極の短手方向における膜のプロファイルと膜厚均一性との関係を示す図 画素電極の長手方向における膜のプロファイルを示す図
1.有機ELディスプレイパネル
本発明の有機ELディスプレイパネルは、一又は二以上の有機ELデバイスから構成され得る。
前記有機ELデバイスは、基板、画素電極、有機発光層、絶縁層、及び対向電極、を有する。前記有機ELデバイスは、TFT、平坦化膜、正孔注入層、中間層、及び第2の絶縁層(ラインバンク)、をさらに有していてもよい。
前記基板の材料は、有機ELデバイスがボトムエミッション型か、トップエミッション型かによって異なる。ボトムエミッション型の場合には、基板が透明であることが求められる。よって、前記基板の材料は、ガラスや透明樹脂などであればよい。一方、トップエミッション型の場合には、基板が透明である必要はない。前記基板の材料は、絶縁性を有していれば任意である。「基板」とは、画素電極が形成される表面を有する部材を言う。前記基板は、例えばTFT及び平坦化膜を含む。
前記有機ELデバイスは、通常、有機ELデバイスを駆動するための薄膜トランジスタ(駆動TFT)と接続されている。具体的には、有機ELデバイスの画素電極と、駆動TFTのソースまたはドレイン電極とが接続されている。有機ELデバイスは、TFTデバイス上に積層して配置される。
TFT上には平坦化膜が形成される。平坦化膜は、TFTの表面の凹凸を緩和して、有機ELデバイスを形成するため平坦な面を形成する。平坦化膜は、有機ELデバイスの画素電極と、駆動TFTのソースまたはドレイン電極とを接続するためのコンタクトホールを有する。平坦化膜の厚さは、通常3〜10μmであり、約5μmであり得る。
前記画素電極は、前記基板上に複数配置される。前記基板が平坦化膜を含む場合は、画素電極は、平坦化膜上に形成される。有機ELデバイスがボトムエミッション型の場合、画素電極が透明電極であることが求められる。透明電極の例には、ITO(Indium
Tin Oxide)やIZO(Indium Zinc Oxide)や酸化スズが含まれる。有機ELデバイスがトップエミッション型の場合には、画素電極は、光反射性を有することが求められる。このような画素電極の例には、例えば銀を含む合金、より具体的には銀−パラジウム−銅合金(APCとも称する)や銀−ルビジジウム−金合金(ARAとも称する)やモリブデン−クロムの合金(MoCrとも称する)やニッケル−クロム合金(NiCrとも称する)やアルミニウム合金が含まれる。画素電極の厚さは、通常、100〜500nmであり、約150nmであり得る。
前記有機発光層は、互いに隣り合う二以上の画素電極同士を連続して覆う。前記有機発光層は、前記基板及び前記画素電極を、直接覆ってもよいし、他の層を介して覆ってもよい。例えば、前記有機発光層は、前記画素電極が配置されている部分を除く前記基板の表面を覆う、ガラス等の無機材料による画素規制層や有機材料による中間層等の他の層の上に、配置されてもよい。また、前記画素電極と前記有機発光層との間には、正孔注入層及び中間層の一方又は両方が配置されてもよい。前記有機発光層が、前記基板及び前記画素電極を連続して覆うように、前記基板上及び前記画素電極上に配置されることは、有機ELデバイスの構造及び製法をより簡素にする観点から好ましい。
前記正孔注入層とは正孔注入材料からなる層である。正孔注入材料は、ポリスチレンスルホン酸をドープしたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT−PSSと称される)や、その誘導体(共重合体など)及び、WO(タングステンオキサイド)やMoO(モリブデンオキサイド)、VO(バナジウムオキサイド)などの酸化物や、これらの組み合わせ、例えばMoをドープしたWOなどであってもよい。正孔注入層の厚さは通常、10nm以上100nm以下であり、約30nmであり得る。前記正孔注入層は、通常、前記画素電極上に配置されるが、前記基板及び前記画素電極の両方を覆ってもよい。
前記中間層は、正孔注入層に電子が輸送されるのを抑制する役割や、有機発光層に正孔を効率良く運ぶ役割を有する。前記中間層は、例えばポリアニリン系の材料からなる層である。中間層の厚さは通常10nm以上100nm以下であり、好ましくは約30nmであり得る。前記中間層は、前記画素電極又は前記正孔注入層のみを覆ってもよいし、前記基板と前記画素電極又は前記正孔注入層とを連続して覆ってもよい。
前記有機発光層に含まれる有機発光層材料は、例えば高分子系発光材料である。高分子系発光材料の例には、ポリパラフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリアセチレン及びその誘導体、ポリフェニレン及びその誘導体、ポリパラフェニレンエチレン及びその誘導体、ポリ3−ヘキシルチオフェン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体などが含まれる。有機発光層材料は低分子系発光材料であってもよい。
有機材料からなる前記正孔注入層、前記中間層、及び前記有機発光層は、後述するラインバンクによって規定された領域内に配置することができる。
前記ラインバンクは、例えばポリイミドやアクリル樹脂からなる。前記ラインバンクを構成する樹脂は、フッ素を含んでいてもよい。フッ素を含む樹脂は、その高分子繰返し単位のうちの少なくとも一部の繰返し単位に、フッ素原子を有するものであればよく、特に限定されない。フッ素化合物を含む樹脂の例には、フッ素化ポリオレフィン系樹脂、フッ素化ポリイミド樹脂、フッ素化ポリアクリル樹脂などが含まれる。前記ラインバンクの基板からの高さは、通常、0.1〜3μmであり、特に0.8〜1.2μmであることが好ましい。
また、ラインバンクの形状は順テーパー状であることが好ましい。順テーパー状とは、バンクの壁面が斜めになっており、ラインバンクの底面の面積がラインバンクの上面の面積よりも大きい形状を意味する。ラインバンクの形状がテーパー状である場合、テーパー角度は、通常、20〜80°であり、特に30〜50°であることが好ましい。
ラインバンク上面の濡れ性は、低いことが好ましい。ラインバンクの上面とは、ラインバンクの頂点を含む面を意味する。また、ラインバンク上面の濡れ性は、ラインバンク壁面の濡れ性よりも低いことが好ましい。ラインバンク上面と水との接触角は80°以上が好ましく、より好ましくは90°以上である。ラインバンク上面とアニソール、中間層インクは又は有機発光層インクとの接触角は、30〜70°であることが好ましい。一方、ラインバンク壁面とアニソール、中間層インク又は有機発光層インクとの接触角は、3〜30°であることが好ましい。接触角が高いほど濡れ性は低い。
前記絶縁層は、有機発光層上に配置され、前記互いに隣り合う二以上の画素電極の、互いに対向する縁を覆う。前記画素電極の中央部上に位置する有機発光層の部分は、前記絶縁層によって覆われない。本発明は、画素電極の縁を覆う絶縁層が、有機発光層の上側(対向電極側)に配置され、有機発光層よりも下側(画素電極側)には配置されないことを特徴とする。絶縁層は、有機発光層上に直接配置されてもよいし、電子輸送層などの他の層を介して有機発光層上に配置されてもよい。
前記絶縁層は、通常、画素電極の長手方向と短手方向との両方向に沿って配置される。有機ELデバイスがラインバンクを含む場合は、ラインバンクは、通常、画素電極の長手方向に沿って画素電極の縁を覆うように形成される。よって、絶縁層は、有機発光層上に、ラインバンクと直交する方向に沿って配置される。絶縁層は、ラインバンク上に配置されてもよいが、対向電極をより平らにする観点から、ラインバンク間に位置する画素電極の縁上のみに配置されることが好ましい。
前記絶縁層は、紫外光と熱によって硬化する遅延硬化型樹脂組成物の硬化樹脂で構成されていることが好ましい。有機発光層上に配置した樹脂層に紫外光を照射すると、有機発光層材料が劣化する可能性がある。絶縁層を遅延硬化型樹脂組成物の硬化樹脂で構成することは、紫外線の照射による有機発光層の劣化を防止する観点から好ましい。このような樹脂組成物の遅延硬化によって形成される樹脂の例には、エポキシ樹脂が含まれる。絶縁層の厚さは1〜3μm程度が望ましい。
前記対向電極は、有機発光層上及び絶縁層上に配置される。前記対向電極の材料は、前記有機ELデバイスがボトムエミッション型か、トップエミッション型かによって異なる。前記有機ELデバイスがトップエミッション型の場合、前記対向電極には光透過性が求められる。よって、前記対向電極の材料の例には、ITOやIZOなどが含まれる。一方、前記有機ELデバイスがボトムエミッション型の場合、前記対向電極の材料は導電体であれば任意である。
本発明の有機ELディスプレイパネルは、前記有機ELデバイスを同一平面上にマトリクス状に配置して構成することができる。或いは、本発明の有機ELディスプレイパネルは、前記有機ELデバイスを同一平面上にライン状に配置して構成することができる。本発明の有機ELディスプレイパネルは、後述する製造方法によって製造することができる。
以上のように、ラインバンクで形成された領域に有機発光層を塗布法によって形成する場合であっても、画素電極の縁での対向電極との短絡を防止でき、かつ有機発光層が均一に形成することが可能となる。よって、有機ELディスプレイパネルの輝度ムラや発光色ムラの発生を抑制し、表示品質が良好な有機ELディスプレイパネルを低コストで提供することができる。
2.本発明の有機ELディスプレイパネルの製造方法
本発明の有機ELディスプレイパネルは、基板上に複数の画素電極を形成するステップと、互いに隣り合う二以上の前記画素電極を連続して覆う有機発光層を形成するステップと、前記有機発光層上に、前記画素電極の縁を覆うように絶縁層を形成するステップと、前記有機発光層上及び前記絶縁層上に対向電極を形成するステップとを含む。本発明の有機ELディスプレイパネルの製造方法は、本発明の効果が得られる範囲において、他の工程をさらに含んでもよい。本発明の有機ELディスプレイパネルの製造方法の例は、例えば前記有機ELデバイスを製造する方法を含む。
前記有機ELデバイスの製造方法は、例えば、1)基板上にTFTを形成する第1ステップと、2)TFT上に平坦化膜を形成する第2ステップと、3)平坦化膜上に画素電極を形成する第3ステップと、4)画素電極上に正孔注入層を形成する第4ステップと、5)正孔注入層の一部を覆うように配置され、2つ以上の画素領域をライン状に規定するラインバンクを形成する第5ステップと、6)ラインバンクによりライン状に規定された画素領域内の正孔注入層上に、中間層インクを塗布、乾燥、ベークして中間層を形成する第6ステップと、7)中間層上に有機発光層インクを塗布、乾燥、ベークして有機発光層を形成する第7ステップと、8)有機発光層上であってラインバンクと直交する方向に、画素電極と正孔注入層の積層膜の縁を覆うように絶縁層を形成する第8ステップと、9)有機発光層を覆うように対向電極を形成する第9ステップと、を有する。
1)第1ステップでは、基板上にTFTを形成する。TFTはシリコン系TFTでも、有機TFTでもよい。
2)第2ステップでは、TFT上に平坦化膜を形成する。平坦化膜は例えば、感光性樹脂を用いてフォトリソグラフィ法で形成する。平坦化膜にはTFTの電極と画素電極を接続するためのコンタクトホールを形成する。
3)第3ステップでは、平坦化膜上に画素電極を形成する。画素電極は、例えば、スパッタリング法などによって導電体薄膜を成膜して、エッチングによりパターニングすることで形成すればよい。画素電極の作製方法は限定されない。
4)第4ステップでは、画素電極上に正孔注入層を形成する。正孔注入層の材料は、遷移金属の酸化物や、PEDOT及びその他、塗布法で塗膜が形成される材料である。正孔注入層は、例えば、酸化タングステンを材料として、スパッタリング法によって画素電極上に形成される。
5)第5ステップでは、正孔注入層の一部を覆うようにして、2つ以上の画素領域をライン状に規定するラインバンクを形成する。ラインバンクの材料は、ポリイミドや、アクリル樹脂などの感光性材料から合成された樹脂である。前記樹脂中にフッ素が含有されていてもよい。バンクはフォトリソグラフィプロセス(塗布、ベーク、露光、現像、焼成)で形成する。前記ラインバンクは、通常、前記画素電極の長手方向に沿って、正孔注入層を介して画素電極の縁を覆うように作製される。
6)第6ステップでは、正孔注入層上に、中間層材料および溶媒を含む中間層インクを塗布する。溶媒は、中間層材料の種類に応じて決定される。溶媒の例には、アニソールなどの芳香族系の溶媒が含まれる。塗布する方法は特に限定されない。塗布する方法の例には、インクジェット法、ディスペンス法、ノズルコート法、スピンコート法、ダイコート法、凹版印刷法、凸版印刷法などが含まれる。好ましい塗布方法は、インクジェット法である。塗布されてなる膜を乾燥、ベークすることで中間層を形成する。
7)第7ステップでは、前記ラインバンクで規定されたライン状の領域に、有機発光層材料および溶媒を含む有機発光層インクを塗布する。塗布される有機発光層インクは、所望の発光材料および溶媒を含む。溶媒は、発光材料の種類に応じて決定される。溶媒の例には、アニソールなどの芳香族系の溶媒が含まれる。塗布する方法は特に限定されない。塗布する方法の例には、インクジェット法、ディスペンス法、ノズルコート法、スピンコート法、ダイコート法、凹版印刷法、凸版印刷法などが含まれる。好ましい塗布方法はインクジェット法である。塗布されてなる膜を乾燥、ベークすることで、前記基板及び前記画素電極を連続して覆う有機発光層を形成する。
8)第8ステップでは、有機発光層上に、前記画素電極の長手方向と直交する方向に、画素電極の縁を覆う絶縁層を作製する。絶縁層は、絶縁層材料を、スクリーン印刷法やディスペンス法やダイコート法などで塗布することによって形成する。ラインバンクがない場合、或いは、ラインバンクが画素電極の縁から離れて作製され、画素電極の縁がラインバンクによって覆われない場合には、画素電極の長手方向に沿って、画素電極の縁を覆う絶縁層をさらに作製する。
前記絶縁層を前記遅延硬化型樹脂で構成する場合は、遅延硬化型樹脂組成物を含有する前記絶縁層材料を有機発光層上に塗布する前に、前記絶縁層材料に紫外光を照射する。そして、紫外線が照射された前記絶縁層材料を、前記画素電極の縁を覆うように前記有機発光層上に塗布する。そして、塗布された前記絶縁層材料を熱処理することで硬化させて絶縁層を作製する。前記遅延硬化型樹脂組成物の例には、例えば特開2011−38090号公報に記載されている、エポキシ樹脂、エポキシ基および水酸基を有する脂肪族化合物、及びカチオン重合開始材を含有する組成物が含まれる。
9)第9ステップでは、有機発光層及び絶縁層を覆うように対向電極を形成する。対向電極は例えば、ITOなどの透明導電材料などをスパッタリング法で形成する。
なお、前記の有機ELデバイスの製造方法は、前述の方法に限定されない。例えば、前記製造方法では、平坦化膜を形成せずに画素電極を基板上に配置してもよい。この場合、第2ステップを省略することができる。また、前記製造方法では、中間層を形成せずに有機発光層を画素電極上及び基板上に形成してもよい。この場合、第6ステップを省略することができる。或いは、前記製造方法は、中間層を画素電極間の基板の表面から除去する工程をさらに含んでもよい。この場合、第6ステップと第7ステップとの間に、中間層インクの塗膜を基板の表面から除去する工程がさらに含まれ得る。さらに、前記製造方法は、画素電極間以外の基板の表面を画素規制層で覆ってもよい。この場合、第3ステップと第4ステップとの間に、画素規制層を形成する工程がさらに含まれ得る。
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
実施の形態1では、トップエミッション型の有機ELデバイスを説明する。
図1(A)は、本発明の実施の形態1の有機ELデバイス20の平面図を示している。図1(B)は、図1(A)中の有機ELデバイスのAA’断面図を示している。図1(C)は、図1(A)中の有機ELデバイスのBB’断面図を示している。なお、図1(A)、図2(A)、図3(A)、及び図4(A)では、透明陰極900を省略する。
図1(B)及び(C)における有機ELデバイス20は、基板500、画素電極600、正孔注入層610、有機発光層700、絶縁層800、ラインバンク400、透明陰極900を有する。基板500は、例えば、ガラス板である。
画素電極600は、基板500上に配置された導電層である。画素電極600は例えば、APC合金からなる。好ましい画素電極600の厚さは100〜200nmである。
正孔注入層610は画素電極600上に配置される。正孔注入層610は、タングステンオキサイド(WO)からなる。正孔注入層610の好ましい厚さは5〜30nmである。
ラインバンク400は、有機発光層700の領域を規定する。具体的には2つ以上の画素電極600をライン状に規定するようにライン状に形成される。また、正孔注入層610の少なくとも一部を覆うように配置される。例えば、ラインバンク400は、正孔注入層610を介して画素電極600の長手方向に沿う縁を覆うように配置される。ラインバンク400は、例えば、フッ素化アクリル樹脂からなる。好ましいラインバンク400の基板上の正孔注入層610からの高さは、0.1〜3μmである。また、正孔注入層610が露出されるようにラインバンク400が形成される。
有機発光層700は、正孔注入層610上に配置される。有機発光層700は、画素電極600間に位置する基板500上、及び正孔注入層610上を覆う一連の層である。画素電極600の縁は、正孔注入層610を介して有機発光層700に覆われている(例えば図1(B)の符号710)。有機発光層700の好ましい厚さは、50〜150nmである。有機発光層700は、ポリフルオレンの誘導体からなる層である。
絶縁層800は、有機発光層700上でラインバンク400と直交する方向に形成される。絶縁層800は、有機発光層700及び正孔注入層610を介して画素電極600の縁を覆うように形成される。画素電極600及び正孔注入層610上に形成される有機発光層700膜厚は、これらの層の縁で薄くなることがある。このため、画素電極600と透明陰極900が短絡することがあり得る。しかしながら、有機発光層700上に絶縁層800が形成されることで、この短絡が抑制される。絶縁層800の膜厚は0.5〜3μm程度が望ましい。絶縁層800は、ラインバンク400に沿って隣接する二つの画素電極600の一方の画素電極610の縁から基板500上を通って他方の画素電極610の縁までを連続して覆うように形成されている。
透明陰極900は、有機発光層700上及び絶縁層800上に配置される光透過性の導電層である。透明陰極900の材料は、例えばITOである。
画素電極600と透明陰極900との間に電圧を印加すると、画素電極600から正孔が、透明陰極900から電子が有機発光層700に注入される。注入された正孔および電子は、有機発光層700の内部で結合し、励起子が発生する。この励起子によって有機発光層700が発光し、透明陰極900を通して光が発せられる。
次に、有機ELデバイス20の製造プロセスを説明する。有機ELデバイス20の製造方法は、1)基板500上に画素電極600および正孔注入層610を形成する第1ステップ、2)正孔注入層610の少なくとも一部を覆い、2つ以上の画素電極600をライン状に規定するラインバンク400を形成する第2ステップ、3)正孔注入層610上に有機発光層700を形成する第3ステップ、4)有機発光層700上にラインバンク400と直交する方向に絶縁層800を形成する第4ステップ、5)透明陰極900を形成する第5ステップを有する。
1)第1ステップは、基板500上に、を蒸着法やスパッタリング法などにより画素電極600の材料膜を成膜するステップ、及び、材料膜をエッチングして、画素電極600をパターニングするステップを含む。さらに、画素電極600上に正孔注入層610を形成する。製造方法は画素電極600と同様であり、スパッタリング法などにより成膜し、エッチングによりパターニングする。
2)第2ステップでは、正孔注入層610上であって、その一部が露出するように、ラインバンク400を形成する。ラインバンク400は、例えばフォトリソグラフィ法によって形成される。具体的には材料塗布、プリベーク、露光、現像、ポストベークの工程である。特に限定されることはないが、例えばプリベークは、100℃で2分間の条件で行う。露光は、365nmがメインピークであるi線を露光量200mJ/cmの条件で行う。現像は、0.2%のTMAHで60秒間、リンスを純水で60秒間、の条件で行う。ポストベークは、クリーンオーブンで220℃60分間の条件で行う。
3)第3ステップでは、正孔注入層610上に有機発光層700を例えば、インクジェット法で形成する。インクジェット法で有機発光層インクを、ラインバンク400で規定された画素領域の全域に塗布した後、得られたインクの塗膜を乾燥、ベークさせる。乾燥は例えば、基板を真空チャンバに投入し、減圧することで行なう。減圧は、到達圧力5Pa程度まで真空ポンプで排気することで行なう。温度は25℃である。ベークは例えばホットプレートで130℃にて10分間行なう。
4)第4ステップでは、絶縁層800を例えばスクリーン印刷法で形成する。膜厚を1μmで画素電極600及び正孔注入層610の縁を覆うように、かつラインバンク400と直交するようにして絶縁層800を形成する。絶縁層800は、ラインバンク400上にも連続して形成する。材料には、遅延硬化型の感光性樹脂組成物を用いる。前記材料を塗布後に紫外光によって照射すると、有機発光層700が劣化することがある。このため、あらかじめ紫外光を照射した前記材料をスクリーン印刷法で塗布し、絶縁層800を形成する。紫外光の照射は、例えば波長365nmの光を露光量1J/cmの条件で行う。前記材料の塗膜を80℃で1時間加熱し、硬化させる。
5)第5ステップでは、透明陰極900は、例えば、有機発光層700上及び絶縁層800上に、蒸着法により形成される。
以上のような形態により、ラインバンク400で形成された領域に有機発光層700を塗布により形成する場合であっても、画素電極600の縁で画素電極600と透明陰極900とが短絡することを抑制できる。また、有機発光層700を均一に形成することが可能となる。
また、ラインバンク400を形成することにより、Red(赤色有機発光層710)、Green(緑色有機発光層720)、Blue(青色有機発光層730)の3色の有機発光層を塗り分けることができる。よって、フルカラーの有機ELディスプレイパネルの提供が可能となる。もちろん3色の塗り分けをせず、白色の単色有機ELデバイスにRed、Green、Blueの3色のカラーフィルタを重ねることでフルカラーの有機ELディスプレイパネルを提供することもできる。この場合、有機ELデバイスの寿命は、カラーフィルタにより輝度が減衰し、駆動電圧を高くすることが必要になることから、短くなることがある。
(実施の形態2)
図2(A)は本発明の実施の形態2の有機ELデバイス30の平面図である。図2(B)は、図2(A)における有機ELデバイスのCC’断面図である。
絶縁層800は、ラインバンク400に沿って隣接する画素電極600同士を跨ぐように形成されるのではなく、画素電極600の短手方向の縁のそれぞれを独立して覆うように形成されている。それ以外の構成は実施の形態1と同様である。
以上のような形態により、ラインバンク400で形成された領域に有機発光層700を塗布により形成する場合であっても、画素電極600の縁での画素電極600と透明陰極900との短絡を防止でき、かつ有機発光層700が均一に形成することが可能となる。
また、有機発光層700の上部に形成する絶縁層800の体積がより小さくなる。このため、絶縁層800からの出ガスをより少なくすることができ、有機発光層700の劣化をより抑制することができる。
(実施の形態3)
図3は、本発明の実施の形態3の有機ELデバイス40の平面図である。絶縁層800はラインバンク400上には形成されない。ラインバンク400で規定された画素領域内のみに絶縁層材料を間欠的に塗布することで、絶縁層800を、画素電極及び正孔注入層の縁を覆うように形成する。それ以外の構成は、実施の形態2と同様である。
以上のような形態により、ラインバンク400で形成された領域に有機発光層700を塗布により形成する場合であっても、画素電極の縁での画素電極と透明陰極との短絡を防止でき、かつ有機発光層700が均一に形成することが可能となる。また、ラインバンク400の上面に絶縁層800を形成しないことにより、有機ELデバイスの上面の凹凸はより小さくなる。有機ELデバイスの発光特性は、環境中の酸素や水により劣化していく。このため、樹脂や薄膜で封止層を形成することが一般的である。封止層には被覆性が求められる。被覆対象物の凹凸が大きいと、被覆性が悪くなることは明らかである。よって、デバイスの凹凸を小さく出来る実施の形態3の有機ELデバイスでは、封止層の被覆性がより向上する。このため、発光特性の劣化がより少ない有機ELデバイスを提供することが可能となる。
(実施の形態4)
図4(A)は、本発明の実施の形態4の有機ELデバイス50の平面図である。図4(B)は、図4(A)中の有機ELデバイスのDD’断面図である。実施の形態4ではバンクは形成していない。スピンコート法やスリットコート法で、画素電極600を有する基板500の表面の全域に拡がる白色有機発光層750を形成する。白色有機発光層750を介して画素電極600の縁を覆うように、白色有機発光層750上に絶縁層800を井桁状に形成する。白色有機発光層750及び絶縁層800を覆うように透明陰極900を形成する。以上により、白色の有機ELデバイスが形成される。
以上のような構成により、画素電極の縁で有機発光層の膜厚が薄くなることによる画素電極と対向電極との間の短絡を抑制することが可能となる。よって、発光特性に優れた有機ELデバイスを提供することができる。
実施例では、有機発光層を塗布する面に反射電極のみ配置されている場合と、反射電極と絶縁層が配置されている場合とで有機発光層の膜形状が異なることに関して、実験データを用いて説明する。
(実施例)
旭硝子株式会社製ガラス基板AN100(370mm×470mm×0.7mm)上に画素電極として銀−パラジウム−銅(APC)膜を150nmの厚さでスパッタリング法により形成した。
APC膜を形成したガラス基板上に、ラインバンクをフォトリソグラフィ法により形成した。ラインバンクの材料は旭硝子製のアクリル樹脂材料を用いた。スピンコート法によりアクリル樹脂材料の塗膜を形成し、温度100℃、2分間でプリベークを行なった。次に、フォトマスクを介して紫外光を照射した。今回用いたバンク材料はネガ型材料であり、露光された部分が架橋反応し硬化する。紫外光の波長は365nmをメインピークとするブロードである。露光照度は20mW/cmで、露光時間は10秒間である。次に0.2%のTMAH水溶液(東京応化製NMD−3)を用いて現像した。純水にて現像液の洗浄を行なった後、ポストベークをクリーンオーブンにて温度220℃、60分間行なった。
次に有機発光層材料を含む有機発光層インクを、インクジェット法により、ラインバンクによって規定された領域内に印刷した。有機発光層インクの溶媒にはシクロヘキシルベンゼンを用いた。印刷したインクを減圧乾燥により乾燥させた。減圧乾燥は、基板を真空チャンバに収容し、真空ポンプでチャンバ内を排気することで行なった。排気速度は、大気圧から10Paまで30秒間でチャンバ内を排気する速度である。乾燥温度は25℃である。その後、ホットプレートにて130℃10分間のベークを行なった。
以上の方法で作製した有機発光層の膜形状を、原子間力顕微鏡(タカノ株式会社製 AS−7B)にて測定した。画素電極の短手方向(図1(A)のBB’線に沿う方向)における膜のプロファイルと膜厚均一性を図6(A)に示した。測定領域は並列する二つのラインバンクの間とした(図6(B))。また、画素電極の長手方向(図1(A)のAA’線に沿う方向)における膜のプロファイルを図7(A)に示した。測定領域は、並列する二つの絶縁層の間とした(図7(B))。
(比較例)
旭硝子株式会社製ガラス基板AN100(370mm×470mm×0.7mm)上に画素電極として銀−パラジウム−銅(APC)膜を150nmの厚さでスパッタリング法により形成した。
形成したAPC膜の縁を覆うように絶縁層を形成した。絶縁層は、スパッタリング法により形成した厚さ100nmのシリコン酸化(SiO)膜である。その上に、ラインバンクをフォトリソグラフィ法により形成した。ラインバンクの形成条件は実施例と同様である。
次に、ラインバンクで規定された領域に有機発光層を形成して、膜形状を評価した。有機発光層の形成条件及び評価方法は実施例と同様である。
(実施例および比較例の評価)
図6には実施例および比較例での有機発光層の膜プロファイルと、膜形状の指標である膜厚均一性を示している。膜厚均一性は(式1)で表わされる値である。
(式1)
膜厚均一性(%)={(膜厚最大値−膜厚最小値)/(2×平均膜厚)}×100
膜のプロファイルは、実施例より比較例の方がいびつな形状になっていることがわかる。画素電極の短手方向における膜厚均一性は、実施例では14.8%であり、比較例では33.4%であった。有機発光層を印刷する下地が、実施例ではガラスとAPC膜であるが、比較例ではガラスとAPC膜とSiO膜である。このように、下地の表面に部分的に分布する材料の種類が、比較例の方が実施例より種類が多くなっている。材料ごとに濡れ性が異なるため、下地の前記材料の種類が多いほど塗布ムラが発生しやすくなる。
以上より、有機発光層を印刷する下地の前記材料の種類はより少ない方が、より均一な膜厚の有機発光層を形成できることがわかる。有機ELディスプレイパネルにおいては、有機発光層の膜厚が不均一だと輝度ムラや発光色ムラが発生し、表示品質が低下してしまう。よって、本発明の有機ELディスプレイパネルは、有機発光層の膜厚が均一になり、表示品質に優れる。
本出願は、2011年4月22日出願の特願2011−095748に基づく優先権を主張する。当該出願明細書に記載された内容は、すべて本願明細書に援用される。
本発明の有機ELディスプレイパネルは、ラインバンクで形成された領域に有機発光層を塗布により形成する場合であっても、画素電極の縁での画素電極と対向電極との短絡を防止でき、かつ均一に発光することが可能となる、よって、表示品質が良好な有機ELディスプレイパネルを低コストで提供することができる。これは、例えば有機ELテレビへの利用に止まらず、ワープロ、パソコン等の携帯型情報処理装置、腕時計型電子機器など、各種の電子機器における表示部に好適である。
10、20、30、40、50 有機ELデバイス
100、500 基板
210、600 画素電極
220、800 絶縁層
230、400 ラインバンク
240 第2バンク
300 画素領域
610 正孔注入層
700 有機発光層
710 赤色有機発光層
720 緑色有機発光層
730 青色有機発光層
750 白色有機発光層
900 透明陰極

Claims (9)

  1. 基板上に配置された複数の画素電極と、
    前記画素電極上に配置され、隣り合う二以上の画素電極を覆う有機発光層と、
    前記有機発光層上に配置され、隣り合う画素電極のうち対向する互いの縁を覆う絶縁層と、
    前記有機発光層上及び前記絶縁層上に配置される対向電極とを有する、アクティブマトリックス方式の、有機ELディスプレイパネル。
  2. 前記有機発光層が、前記基板及び前記画素電極を連続して覆う、請求項1に記載の有機ELディスプレイパネル。
  3. 前記基板上に、複数の前記画素電極をライン状に規定する第2の絶縁層をさらに有する、請求項1に記載の有機ELディスプレイパネル。
  4. 前記絶縁層は、前記第2の絶縁層の上面には配置されない、請求項3に記載の有機ELディスプレイパネル。
  5. 前記絶縁層は、紫外光を照射すると一定時間経過後に硬化する遅延硬化型樹脂組成物を硬化させてなる樹脂で構成されている、請求項1に記載の有機ELディスプレイパネル。
  6. 基板上に複数の画素電極を形成するステップと、
    互いに隣り合う二以上の前記画素電極を連続して覆う有機発光層を形成するステップと、
    前記有機発光層上に、前記画素電極の縁を覆うように絶縁層を形成するステップと、
    前記有機発光層上及び前記絶縁層上に対向電極を形成するステップと、を有する、アクティブマトリックス方式の、有機ELディスプレイパネルの製造方法。
  7. 前記有機発光層を形成するステップが、前記基板及び前記画素電極を連続して覆うように前記基板上及び前記画素電極上に有機発光層を形成するステップである、請求項6に記載の有機ELディスプレイパネルの製造方法。
  8. 前記画素電極をライン状に規定する第2の絶縁層を形成するステップをさらに有し、
    前記第2の絶縁層で規定されたライン状の領域に、前記有機発光層が、前記基板及び前記画素電極を連続して覆うように前記基板上及び前記画素電極上に形成される請求項6に記載の有機ELディスプレイパネルの製造方法。
  9. 前記絶縁層を形成するステップは、
    遅延硬化型樹脂組成物を含有する絶縁層材料に紫外光を照射し、
    紫外線が照射された前記絶縁層材料を、前記画素電極の縁を覆うように前記有機発光層上に塗布し、
    塗布された前記絶縁層材料を熱処理して硬化させる、請求項6に記載の有機ELディスプレイパネルの製造方法。
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