JP5096454B2 - オンボード電源電圧リップルに対してロバストに電磁制御弁の電流を制御するための制御装置および方法 - Google Patents

オンボード電源電圧リップルに対してロバストに電磁制御弁の電流を制御するための制御装置および方法 Download PDF

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Description

本発明は、オンボード電源のリップルに対してロバストに自動車ハイドロリックユニット向けの電磁制御弁の電流を制御する自動車制御装置に関するものであり、電磁制御弁の電流の制御と同時に、閉ループ回路の操作量として目標電流の飛びに対する動特性を改善する。
例えば自動車の自動変速機では、ハイドロリックユニットとして、ギア選択およびシフトチェンジを実現する種々のクラッチおよび/またはブレーキが液圧式に操作される。とりわけ自動車では、液圧式に操作されるクラッチおよび/またはブレーキはシャフトの結合または固定に使用される。この液圧操作は、これらのクラッチおよびブレーキの圧媒体の流量および液圧がいわゆる電磁制御弁とそのディジタル閉ループ回路とによって調整されるように行われる。それぞれの電磁制御弁の通過量は弁を流れるコイル電流に依存し、電流制御器により制御される。このために、それぞれの閉ループ回路のフィードバックパスには測定素子またはセンサが設けられており、この測定素子またはセンサを用いて電磁制御弁を流れる実際電流が求められ、ディジタル制御器の、特にPID制御器の入力側に渡される。圧媒体の液圧は、電磁制御弁の既知の特性図に基づき、測定された電磁制御弁を流れる電流から導き出される。
実際には、それぞれの自動車のオンボード電源電圧または供給電圧は不安定である可能性がある。とりわけ、オンボード電源電圧または供給電圧は種々の要因により数ボルトまで変動することさえあり得る。オンボード電源の供給電圧のこのような変動はそれぞれの電磁制御弁を流れる電流にも伝わるため、電磁制御弁の閉ループ回路の制御量に雑音が印加されてしまう。特に雑音が周期的である場合には、雑音の不都合な周波数(共振周波数)が、実際電流の、すなわち、閉ループ回路の電流制御器の出力側の制御量の、不所望な振動または急騰さえ生じさせることがあり得る。これに対しては、ディジタル閉ループ回路のフィードバックパス内にある遅いフィルタ、すなわち、フィルタ時間の大きなフィルタで対抗することができるだろう。だが、これでは結果的にディジタル制御器自体も不活発ないし遅くしてしまう。制御器の不活発な挙動はもちろん実用では不所望である。というのも、例えば自動変速機では、特に飛びのある目標電流推移を伴うシフトの際には、制御器の迅速な応答が必要とされるからである。
本発明の課題は、自動車ハイドロリックユニット用の電磁制御弁の電流の制御を改善するために、オンボード電源電圧のリップルに対して十分にロバストであると同時に、電磁制御弁の目標電流推移における意図的な飛びを迅速に補償する十分に高い動特性を有する自動車制御装置を提供することである。
この課題は、冒頭に記した形式の自動車制御装置において、ディジタル閉ループ回路のフィードバックパスに、目標電流のレベル変化によりフィルタ時間が動的に調整される少なくとも1つの適応補正フィルタを設けることにより解決される。
電磁制御弁向けのディジタルまたは離散閉ループ回路のフィードバックパス内の少なくとも1つのフィルタのフィルタ時間を電磁制御弁の所望の目標電流のレベル動特性またはレベル変化に応じて切換可能とすることにより、閉ループ回路は一方では目標電流の所望の飛びに高い動特性をもって、すなわち、迅速な補償動作をもって反応することができる。他方で、閉ループ回路は、静的な状態では、すなわち、目標電流のレベル変化が少ないときには、オンボード電源電圧のリップルに対して十分に安定ないしロバストなままである。
本発明による制御装置はとりわけ、所望のシフト動作の実行速度に対する快適さ要求とオンボード電源のゆらぎに対する不感度への要求がともに高いオートマチックトランスミッションのギア制御ユニットとして適している。
本発明はまた、自動車ハイドロリックユニット用の制御装置のディジタル閉ループ回路での電磁制御弁の電流の制御へのオンボード電源電圧のリップルの影響を低下させるとともに、閉ループ回路の操作量として目標電流の飛びに対する動特性を改善するための方法に関するものであり、ディジタル閉ループ回路のフィードバックパスにおいて、少なくとも1つの適応補正フィルタのフィルタ時間を目標電流のレベル変化に応じて調整することを特徴とする。
本発明のその他の展開形態は従属請求項に示されている。
以下では、本発明とその展開形態を図面に基づき詳細に説明する。
図1には、自動車ハイドロリックユニットの電磁制御弁のコイル電流を調節するディジタル閉ループ回路を備えた本発明による自動車制御装置の実施例としてギア制御ユニットが概略的に示されており、
図2には、図1のギア制御ユニットのディジタル閉ループ回路のフィードバックパスにおいて電磁制御弁の目標電流のレベル変化に応じて速い補正フィルタと遅い補正フィルタが動的に切り換えられる場合の制御比が、例示的な電流グラフにより示されており、
図3には、図1のギア制御ユニットのディジタル閉ループ回路のフィードバックパスにおいてディジタル制御器の出力された操作量のD成分に応じて補正フィルタが切り換えられる場合の制御比が、別の例示的な電流グラフにより示されている。
図1および3において、同じ機能および効果を有する要素にはそれぞれ同一の参照記号が付されている。図1には、自動車ハイドロリックユニットにおいて電気的なコントロールエレメントないしはアクチュエータEPを用いて圧媒体の、とりわけ、例えば圧媒油のような圧媒液の、体積流Qを調整するために使用される制御装置として、ギア制御ユニットCOが例示的に概略図で示されている。ギア制御ユニットCOは有利にはオートマチックトランスミッション用のオートマチックトランスミッション制御装置として形成されている。電気的コントロールエレメントないしアクチュエータEPは、主構成要素として、高電位ドライバ段HSDと低電位ドライバ段LSDの間に電磁制御弁CVを有している。電磁制御弁CVのコイル電流Iの調整により、作動シリンダ内のアーマチュアANは様々な深さでハイドロリックユニットHPの体積流Qの中に沈み込む。図面を簡潔にするため、アーマチュアANは図1では矢印だけで示されている。ハイドロリックユニットHPは実際には少なくとも1つのクラッチCLおよび/または少なくとも1つのハイドロリックブレーキにより形成されている。クラッチCLまたはハイドロリックブレーキは自動車のトランスミッションTRと作用結合している。電磁制御弁CVのコイル電流Iは特性図を介してハイドロリックユニットHP内の体積流Qの所定の液圧に対応付けられている。
電磁制御弁CVのコイル電流Iを目標電流の所定の時間的推移へとできるだけ正確かつ迅速に制御するために、すなわち、同じことであるが、ハイドロリックユニットHP内でコイル電流Iに相応して体積流Qの圧力の所望の時間的推移を形成するために、ギア制御ユニットCOはディジタル閉ループ回路CLSのフォワードパスFP内に動的なディジタル制御器PC、とりわけPID制御器を有している。制御器CVは高電位ドライバ段HSDを介してハイドロリックユニットHPの電磁制御弁CVに操作量信号ASを出力する。ここで、電磁制御弁CVとハイドロリックユニットHPは閉ループ回路CLSのプラントの一部を形成している。プラントの別の構成要素としては、電磁制御弁CVの実際電流CVSを測定する測定素子ないしセンサがある。この測定素子はディジタル閉ループ回路CLSのフィードバックパスFBの入力側の部分区間にあり、低電位ドライバ段LSDにつながっている。この実施例では、測定素子GMは検流計により形成されている。なお、この検流計は電磁制御弁CVのその時その時の電圧を所定の電気抵抗を介して電磁制御弁CVの実際電流CVSの尺度として求めるものである。測定された電圧値はオームの法則に従い相応のA/D変換により対応する離散的な実際電流値CVSに換算される。必要に応じて、電磁制御弁への電圧供給を逆の電位で行ってもよい。
測定された離散的な実際電流値CVSは測定素子GMからフィードバックパスFBの適応補正フィルタKFIに転送される。なお、適応補正フィルタKFIのフィルタ時間は動的に調整可能である。補正フィルタKFIは図1では1点鎖線の枠で表されている。補正フィルタKFIは第1の遅いフィルタFI1と第2の速いフィルタFI2とから形成されており、第1のフィルタFI1の静的フィルタ時間FT1は比較的長く、第2のフィルタFI2の静的フィルタ時間FT2は比較的短い。したがって、FT1>FT2である。第1のフィルタFI1はフィードバックパスFBの第1の分岐路BR1にフィードバック方向(閉ループ回路出力側から閉ループ回路の入力側への方向から見て)で配置されている。第2のフィルタFI2は第1のフィルタFI1に並列してフィードバックパスFBの第2の分岐路BR2に配置されている。
例えばFI1ないしFI2のような各フィルタのフィルタ時間FT1ないしFT2は、有利にはフィルタのステップ応答の整定時間により表される。これらのフィルタ時間は特に、各フィルタのステップ応答が0dBから一定値KdBまで上昇する間の時間である。これらのフィルタ時間は、各フィルタが入力信号のレベルの飛びに対して出力側で相応するレベルの飛びで反応するために必要とする期間を特徴付けるものである。各フィルタのカットオフ周波数が高ければ高いほど、整定時間は短くなる。一般的に言えば、各フィルタのステップ応答のエッジ急峻度は各フィルタのフィルタ構造に遅延素子が多ければ多いほど低くなる。それには比較的長い整定時間が伴う。離散的なフィルタ構造において遅延素子が少なければ少ないほど、各ディジタル補正フィルタのステップ応答のエッジは急峻になり、整定時間は短くなる。整定時間の短いフィルタは整定時間の長いフィルタよりも速く入力側のレベル飛びに反応し、追随することができる。
各フィルタが例えば平均値算出器として形成されていれば、フィルタの整定時間は周波数領域における伝達関数の次数によって、したがってまた離散インパルス応答の長さによって決まる。これは、言い換えれば、印加された入力信号について所定の幅nTの窓にわたり離散的な平均値算出をクロック周期Tで行う離散フィルタの反応が緩慢であればあるほど、平均値算出に使用される離散入力信号値の個数は多くなるということである。なお、離散入力信号値は全体として1つの補正された離散出力値としてフィルタの出力側に生じる。逆に、このような平均値を算出するフィルタのフィルタ時間が短ければ短いほど、平均値算出に使用される離散入力値の個数は少なくなる。これらの離散入力値は全体として1つの平均された出力値を生じる。これにはフィルタの短い整定時間が付随するため、このフィルタは入力側でのレベル飛びにより迅速に追随することができる。
様々なフィルタに平均値算出器を使用する代わりに、有利にはPT1又はPT2、すなわち、1次又は2次の遅延素子を単純なローパスフィルタとして使用するようにしてもよい。また、その他のローパスフィルタも有効でありうる。
特にこの実施例では、低速フィルタFI1は、制御量CVSの平滑化フィルタとして、オンボード電源電圧リップルによる雑音を大幅に除去し、これらの雑音が減算素子DIFに伝わるのを大幅に防止する。
第1のフィルタFI1の分岐路BR1又は第2のフィルタFI2の分岐路BR2は、適応補正フィルタKFIの後段に配置されたフィードバックパスFB内の切換素子SWによりフィードバックパスFBに挿入され、フィードバックパスFBにおいて、閉ループ回路CLSの制御量として機能する測定された実際電流値CVSに作用する。なお、切換素子SWは分析/制御ユニットDAにより操作される。このために、分析/制御ユニットDAは、閉ループ回路CLSのフィードフォワードパスFPの入力側に供給される離散目標電流値SSのレベル動特性を評価する。分析/制御ユニットDAによる切換装置SWの操作は、図1では、制御矢印ないし作用矢印SL1によって示されている。
分析/制御ユニットDAは、例えば目標電流SSが近似的に一定である、すなわち、準静的なプロファイルを有していることを確認した場合、切換素子SWを用いて緩慢な第1のフィルタFI1を持つ分岐路BRをフィードバックパスFBに接続する。この第1のフィルタFI1は比較的長いフィルタ時間FT1を有しているため、緩慢に反応するので、オンボード電源の電圧リップルないし電圧揺らぎにより生じる制御量CVSの雑音に対して十分に不感であり、したがってロバストである。これらは、長いフィルタ時間と、平滑化を行う平均値算出の際に考慮される多数の測定された離散的な実際電流値とに基づいて、大幅に平均化される。このようにして、第1のフィルタFI1は、オンボード電源の電圧揺らぎによる雑音が大幅に除去された補正済み制御量CCVを出力側に生じさせる。
これに対して、分析/制御ユニットDAは、目標電流SSが短期的に高いレベル動特性を有することを確認した場合、切換素子SWを用いて、フィードバックパスFB内の第1のフィルタFI1の分岐路BR1をスイッチオフし、その代わりにフィルタ時間FT2の短い第2のフィルタFI2の分岐路BR2をフィードバックパスFBに挿入する。フィルタFI2の整定時間が短いおかげで、制御量CVSは測定された実際のCVSの急速な飛躍的変化に追従することができる。でなければ、目標電流SSのレベル変化は大きな制御偏差DISにつながり、制御器PCがこの制御偏差DISを操作量ASのレベルの飛びに変換してしまう。これは電磁制御弁のコイル電流Iを飛躍的に増大させることにつながり、このことがさらに測定された実際のCVSの飛びをもたらす。したがって、迅速に応答する補正フィルタFI2により、制御器PCは目標電流SSの所望のレベル飛びを電磁制御弁CVにおける実際電流Iの相応するレベル飛びに迅速に変換することができるようになる。この場合、閉ループ回路CLS全体は高い動特性を有する、つまり、目標電流推移SSの所望の変化に対する迅速な応答特性を有する。
図2は、電流グラフに基づき、互いに異なるフィルタ時間FT1,FT2を有する2つのフィルタFI1,FI2の間での動的切換が入力側の目標電流SSのレベル変化に依存してどのようにして行われるかを示している。電流グラフの横軸には時間tがプロットされており、縦軸には電流iがプロットされている。目標電流SSの時間的推移は実線によって示されている。目標電流値SSはまず時点t0から時点txまでの期間において実質的に一定値U1で推移する。時点txにおいて目標電流値SSはより高い新たなレベル値01まで電流変化値ΔS1だけ飛躍し、所定の期間の間このレベル値を維持する。時点t0から時点txまでの間の下方目標電流値U1のレベルでの実質的に一定の推移は図2ではUKで表されており、時点tx以降のより高いレベル01での実質的に一定の電流推移は図2ではOKで表されている。図2では、下方の一定の目標電流推移UKと上方の目標電流推移OKの間の飛びの位置に参照記号STが付されている。分析/制御ユニットDAは閉ループ回路CLSの入力側において減算器DIFFの前段にあって、閉ループ回路CLSの制御クロックに従って目標電流SSのレベル特性を監視する。分析/制御ユニットDAは、目標電流SSのレベル変化が所定の閾値ΔLを超えていないと判断する限り、長いフィルタ時間FT1の低速補正フィルタFI1がアクティブであるようにフィードバックパスFB内のスイッチSWを制御する。そうすれば、オンボード電源電圧の揺らぎに起因する制御量CVSへの雑音を除去する、とりわけ、平均化することができるため、ディジタル制御器PCの誤制御が防止される。電磁制御弁CVのコイル電流Iはオンボード電源電圧の揺らぎにより雑音に曝されるが、これらの雑音は図1では雑音矢印DSSで表されている。図2の実施例では、低速フィルタFI1は実質的に一定のレベル推移UKの間フィードバックパスFB内でアクティブである。図2には、レベル変化の上方及び下方限界が一点鎖線で記入されており、参照記号ED1が付されている。目標電流値U1は所定の閾値ΔLで変動することができ、分析/制御ユニットDAにより実質的に定常的ないし静的であると評価される。
分析DAは、時点txでのように目標電流SSが閾値ΔLよりも大きく変化したことを確認すると直ちに切換素子SWを用いて低速フィルタFI1のあるフィードバックパスFB内の分岐路BR1をスイッチオフし、代わりに高速補正フィルタFI2のある分岐路BR2をフィードバックパスFBに挿入する。目標電流SSが目標値変化分ΔS1だけ変化すると、この変化は制御量CVSの相応する変化として表れる。制御量CVSのレベル変化は高速フィルタFI2を実質的に通過し、減算素子DIFに達する。すると、制御偏差DISがより強く変化するので、ディジタル制御器PCはむだ時間ttを経た直後に所望のより高い目標電流値01へと調整される。図2には、電磁制御弁CVにおいて調整される測定された実際電流CVSの時間的推移がさらに破線で記入されている。閉ループ回路CLSは時間te−txの間の小さなオーバーシュートの後、新しい所望の目標電流値01へと制御される。時点te以降、実際電流CVSの電流レベルはもうほとんど変化せず、所望の目標電流推移OKに従って実質的に安定的に推移する。分析/制御ユニットDAでは、目標電流SSのレベル変化が所定の閾値ΔLを超える時点txから、実際電流CVSを新しい所望の目標電流値01へと制御するための期間を定めるタイムキーパーないしタイマーが開始される。分析/制御ユニットDAでは、電流の飛びΔS1の時点txから制御時点teまで、目標電流SSの変化に対して漏斗形に延びる帯域限界ED2が定められる。目標電流SSがこの漏斗形の帯域限界ED2内にある間は、高速フィルタFI2はアクティブである。
閉ループ回路CLSの新しい目標電流値01への制御が始まる時点te以降、分析/制御ユニットDAは、目標電流SSのレベル動特性が所定の閾値ΔLを下回っているか否かを分析する。今の実施例では、時点te以降、目標電流値SSのレベル動特性は所定の閾値ΔLを下回っている。そこで、分析/制御ユニットDAは長いフィルタ時間FT1の低速フィルタFI1を切換素子SWによって再びアクティブにする。このようにして、閉ループ回路の静特性から、オンボード電源電圧の揺らぎに起因する制御量CVSの雑音が補正フィルタFI1によってまた除去されるので、閉ループ回路CLSの制御特性はこれらの雑音から十分に無影響でいられる。これにより、このような雑音による不所望かつ不要な制御プロセスが大幅に回避される。こうして閉ループ回路CLSは電磁制御弁における実際電流Iを安定して所望の目標電流SSへと調整する。
場合によっては、複数の閾値が割り当てられた2つより多くの異なる高速フィルタをフィルタバンクとして設けることが有効であることもある。これら複数の補正フィルタは有利にはフィードバックパスFB内で互いに並列して配置されており、目標電流の求められたレベル変化がそれぞれの閾値を超えた場合には、多重スイッチによってそれぞれアクティブに切り換えられる。
あるいは、必要に応じて、2つの別個の静的フィルタFI1,FI2の代わりに単一の補正フィルタのみをフィードバックパスFBに設け、しかもそのフィルタ時間が目標電流SSの変化に従って動的に変化しうる、とりわけ階段状に適応変化しうるものとすることも有効でありうる。特に、単一の補正フィルタKFIのフィルタ時間に関する制御パラメータとして、ディジタル制御器PCの操作量ASのいわゆるD成分を考慮するようにしてよい。これは、図1において、制御器PCと適応補正フィルタKFIの間の一点鎖線矢印Dで表されている。例えばPID制御器の操作量ASのD成分Dは有利には次の関係式から求まる:
D成分D=CD(eneu−ealt)/Δt
ここで、CDは係数、eneuは現制御サイクルrにおける制御偏差、ealtは1つ前の制御サイクルr−1における制御偏差Δtは1つ前の制御サイクルと現制御サイクルの間の時間間隔である。特に、求められるD成分Dに上限と下限を設けると有効である。図1では、D成分Dを上閾値及び/又は下閾値T2,T1に制限するリミッタTUが制御器PCの中に一点鎖線で示されている。これにより、適応補正フィルタのフィルタ時間に対して上方及び下方の限界が定められる、つまり、フィルタ時間はこの上方及び下方の限界の間で可変に調整可能である。
制限付きD成分FDは有利には関係式FD=(min(10mA/msec,max(50mA/ms,|D|))ms/50mAに従って求められる。
制限付きD成分FDは最後の係数ms/50mAにより0と1の間の値にスケーリングないし規格化される。そこで、補正フィルタKFIは1つ前の制御サイクルr−1及び現制御サイクルrの実際電流CVSを用いてこのD成分FDから補正された制御量CCVを求める:
CCV=FDCVS(r)+(1−FD)CVS(r−1)、ここでrは連続する自然数である。
微分成分が操作量ASの修正されたD成分FDとして小さければ小さいほど、1つ前の制御サイクルr−1の実際電流は強く重み付けされる。微分成分FDが大きければ大きいほど、現制御サイクルrの実際電流CVS(r)が強く重み付けされ、1つ前の制御サイクルr−1の実際電流CVS(r−1)はあまり考慮されなくなる。もちろん、D成分Dないし制限付きD成分FDを求める際、補正された制御量CCVを生成するために2より多くの制御サイクルを考慮することも可能である。
図3には、図2と同じ目標電流推移SSにおいて、単一の適応補正フィルタKFIのフィルタ時間の動的変化が制御器PCの操作量信号ASの微分成分によってどのように行われるかが示されている。図3において、操作量信号ASの微分成分Dの変化の時間的推移は一点鎖線で記入されている。
つまり、要約すれば、フィードバックパス内の少なくとも1つの補正フィルタのフィルタ時間は動的に調整可能である。目標電流の所望の切換ないし変化の間は、制御器の動特性に対する要求に適応するために比較的短いフィルタ時間が選択される。静的な状態、すなわち、目標電流が狭く設定された限界内で変化する又はまったく変化しない場合には、少なくとも1つの補正フィルタのフィルタ時間は、オンボード電源電圧の揺らぎに起因する雑音の影響を制御量から取り除くために相応して長く選ばれる。
特に、図1及び2に従った実施形態の場合、電流制御器PCを閉ループ回路CLSのフォワードパス内に実現し、電流制御器PCがPWM(パルス幅変調)信号のデューティ比を操作量ASとして変化させるようにすることが有効でありうる。一方、PWM信号は出力段ドライバHSD(図1参照)を介して電磁制御弁CVの供給電圧をチョッパ制御し、これにより電磁制御弁CVを通る電流Iを制御する。電流Iは測定センサGMの測定抵抗を介して測定され、実際電流として、つまり制御量CVSとして、フィードバックパスFBを介して閉ループ回路CLSのフォワードパスFPの入力側にある減算器DIFへと戻される。減算器DIFでは、目標電流SSと実際電流との差が制御偏差DISとして求められる。制御偏差DISはディジタル制御器PCへの、とりわけPID制御器への入力量として供給される。操作量ASのPWM信号は有利には定周波数を有する。時間tの間の目標電流の変化の総和が閾値ΔLよりも少なく変化する場合には、測定された実際電流CVSは図1のFI1のような緩慢な又は不活発なフィルタを用いてフィルタリングされる。なお、時間tはとりわけ閉ループ回路の一般的な調整時間、ここでは特におよそ30msに相当する。実際上は、閾値ΔLは有利にはおよそ25mAとしてよい。不活発フィルタFI1は、図1及び図2の実施例では、有利には6つのPWM周期にわたる移動平均を形成する。目標電流が時間t内に所定の閾値よりも大きく変化した場合は、制御器の大きな動特性を生じさせるために高速フィルタFI2がアクティブになる。高速フィルタは、図1及び図2の実施例では、例えば1つのPWM周期にわたる平均値のみを形成する。
ただ1つの高速フィルタの閾値の代わりに、複数の高速フィルタに割り当てられた複数の閾値を選ぶようにするとまた有利である。
さらに、図3の実施形態に従い、ただ1つの適応補正フィルタだけを設け、しかもそのフィルタ時間が目標電流の変化に依存にして動的に調整される、すなわち変更されるようにするとまた特に有利である。
有利には、1つ又は複数の補正フィルタのフィルタ時間のこの動的な調整により、目標電流に飛びが生じた場合には、この飛びに対する閉ループ回路の迅速な応答が生成され、目標電流が安定した特性を示す場合には、オンボードリップルに起因する雑音があれば、不活発なフィルタ特性を有する少なくとも1つのフィルタを切り換えることよりその雑音を除去することができる。閉ループ回路は実質的に安定した挙動を示すので、フィードバックパス内の永続的に不活発な、すなわち定常的なフィルタによる挙動に類似する。したがって、制御量信号に重畳した高周波スプリアス振動は大幅に抑えられ、もはや制御偏差の計算に入り込むことがない。
自動車ハイドロリックユニットの電磁制御弁のコイル電流を調節するディジタル閉ループ回路を備えた本発明による自動車制御装置の実施例としてギア制御ユニットを概略的に示す。 図1のギア制御ユニットのディジタル閉ループ回路のフィードバックパスにおいて電磁制御弁の目標電流のレベル変化に応じて速い補正フィルタと遅い補正フィルタが動的に切り換えられる場合の制御比を例示的な電流グラフにより示す。 図1のギア制御ユニットのディジタル閉ループ回路のフィードバックパスにおいてディジタル制御器の出力された操作量のD成分に応じて補正フィルタが切り換えられる場合の制御比を別の例示的な電流グラフにより示す。

Claims (11)

  1. オンボード電源のリップルに対してロバストに自動車ハイドロリックユニット(HP)向けの電磁制御弁(CV)の電流を制御するディジタル閉ループ回路(CLS)を有し、前記閉ループ回路(CLS)の操作量として目標電流(SS)の飛び(ST)に対する動特性を改善するようにした自動車制御装置(CO)において、
    前記ディジタル閉ループ回路(CLS)のフィードバックパス(FB)に少なくとも1つの適応補正フィルタ(KFI)が設けられており、該適応補正フィルタのフィルタ時間(FT1,FT2)が目標電流(SS)のレベル変化(ΔS1)に基づいて動的に調整可能であり、
    前記適応補正フィルタ(KFI)は少なくとも1つの第1の定常フィルタ(FI1)と少なくとも1つの第2の定常フィルタ(FI2)とにより形成されており、第1のフィルタ(FI1)のフィルタ時間(FT1)は第2のフィルタ(FI2)のフィルタ時間(FT2)よりも長く設定されているため、第1のフィルタ(FI1)は第2のフィルタ(FI2)よりも緩慢であり、
    前記閉ループ回路(CLS)の制御偏差(DIS)を求めるために使用される前記閉ループ回路(CLS)の減算器(DIF)の前段には、目標電流(SS)のレベル動特性を監視するために分析/制御ユニット(DA)が設けられており、該分析/制御ユニット(DA)は、前記フィードバックパス(FB)内で切換素子(SW)により、目標電流(SS)のレベル動特性が小さい(SS<ΔL)の場合には長いフィルタ時間(FT1)を有する第1のフィルタ(FI1)のみをアクティブな状態に切り換え、目標電流(SS)のレベル動特性が大きい(SS>ΔL)場合には短いフィルタ時間(FT2)を有する第2のフィルタ(FI2)のみをアクティブな状態に切り換え
    前記適応補正フィルタ(KFI)のフィルタ時間は前記閉ループ回路(CLS)のディジタル制御器(PC)の操作量信号(AS)の微分成分(D)により制御可能である
    ことを特徴とする自動車制御装置。
  2. 前記フィルタ時間(FT1)は、前記目標電流(SS)が実質的に一定のレベル(UK,OK)を示す場合又は小さなレベル変化(ΔL)を示す場合には、オンボード電源電圧のリップルに起因する電流(I)の雑音(DSS)を低減するために、目標電流(SS)が大きなレベル変化(ΔS1)を示す場合よりも長く設定される、請求項1記載の自動車制御装置。
  3. 長いフィルタ時間(FT1)を有する第1のフィルタ(FI1)は、目標電流(SS)のレベル変化が所定の閾値を超えていない(SS<ΔL)場合に前記フィードバックパス(FB)内で活動状態に切り換えられ、短いフィルタ時間(FT2)を有する第2のフィルタ(FI2)は、目標電流(SS)のレベル変化が所定の閾値を超えている(SS>ΔL)場合に前記フィードバックパス(FB)内で活動状態に切り換えられる、請求項1又は2記載の自動車制御装置。
  4. 第1のフィルタ(FI1)及び第2のフィルタ(FI2)はそれぞれ前記閉ループ回路(CLS)の制御量(CVS)を形成する前記電磁制御弁(CV)の測定された実際電流の離散的な時間平均値の算出器として形成されている、請求項1から3のいずれか1項記載の自動車制御装置。
  5. 第1のフィルタ(FI1)及び第2のフィルタ(FI2)はそれぞれローパルフィルタとして、とりわけPT1又はPT2素子として形成されている、請求項1から4のいずれか1項記載の自動車制御装置。
  6. 前記制御器(PC)内にはリミッタ(TU)が設けられており、前記微分成分(D)を上閾値及び/又は下閾値(T2,T1)に制限する、請求項1から5のいずれか1項記載の自動車制御装置。
  7. 前記フィードバックパス(FB)内の適応補正フィルタ(KFI)は前記微分成分(D)を用いて補正された制御量(CCV)を求めるように形成されており、前記補正された制御量は、現制御サイクルの少なくとも1つの実際電流値(CV(r))とさらに少なくとも1つの先行制御サイクルの少なくとも1つの実際電流値(CV(r−1))とを考慮したものであり、先行制御サイクルの実際電流値(CV(r−1))は前記微分成分(D)が小さければ小さいほど、強く考慮される、請求項1から6のいずれか1項記載の自動車制御装置。
  8. 前記自動車ハイドロリックユニット(HP)は少なくとも1つのクラッチ及び/又は少なくとも1つのハイドロリックブレーキにより形成されている、請求項1からのいずれか1項記載の自動車制御装置。
  9. 前記閉ループ回路(CLS)の制御器(PC)はPID制御器として形成されている、請求項1からのいずれか1項記載の自動車制御装置。
  10. とりわけ請求項1からのいずれか1項記載の自動車ハイドロリックユニット(HP)用の制御装置(CO)のディジタル閉ループ回路(CLS)での電磁制御弁(CV)の電流(I)の制御に対するオンボード電源電圧のリップルの影響を低下させるとともに、前記閉ループ回路(CLS)の操作量として目標電流(SS)の飛びに対する動特性を改善するようにした方法において、前記ディジタル閉ループ回路(CLS)のフィードバックパス(FB)内で少なくとも1つの適応補正フィルタ(KFI)のフィルタ時間(FT1,FT2)を目標電流(SS)のレベル変化(ΔS1)に依存して動的に調整することを特徴とする方法。
  11. 前記ディジタル閉ループ回路(CLS)のフィードバックパス(FB)内で、少なくとも1つのフィルタ(KFI)のフィルタ時間を前記閉ループ回路(CLS)の制御器(PC)の目標電流(SS)のレベル動特性により動的に調整することにより、入力側に供給される目標電流(SS)のレベル動特性が小さい(SS<ΔL)場合には、オンボード電源電圧のリップルに起因する電流(I)の雑音を低減するために、前記フィルタ(KFI)のフィルタ時間(FT1)を目標電流(SS)のレベル動特性が大きい(SS>ΔL)のときよりも長くし、目標電流(SS)のレベル動特性が大きい(SS>ΔL)の場合には、前記制御器(PC)の補正の迅速性を高めるために、目標電流(SS)のレベル動特性が小さいときよりも短くする、請求項10記載の方法。
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